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【中国経済大失速】(11) 近付くジャック・マー引退…中国政府と衝突の可能性も



20190722 07
アジア最大規模のeコマース(※電子商取引)を展開する『阿里巴巴集団(アリババグループ)』を率いる創業経営者の馬雲(ジャック・マー、54)会長の引退が、今年9月に迫ってきた。二次元コード(※QRコード)決済の『アリペイ』等、アリババの事業は多岐に亘り、最早中国の社会インフラを担う企業と言っても過言ではない。マー会長の引退を巡っては、「中国政府と対立が生じている」との臆測もあり、カリスマ引退後の巨大企業の行方に早くも注目が集まっている。アリババグループの事業の柱は、企業間取引の『アリババドットコム』等に代表されるeコマースで、物流事業、実店舗の運営、クラウド事業、金融事業等にも手を広げている(※図1)。2018年3月期の売上高は398億ドル(※約4.4兆円)、営業利益は110億ドル(※約1.2兆円)へと急拡大した(※図2)。2014年には『ニューヨーク証券取引所』に上場し、先月末時点の時価総額は約4780億ドル(※約52.6兆円)と、世界6位の巨大企業だ。事業の多角化と同時に、IT関連技術の研究開発も積極的に進めており、量子コンピューターの開発にも取り組む。そうした技術力が垣間見えるのが、リアルの小売業への進出事業だ。アリババは、生鮮食品を扱うキャッシュレス決済のスーパーマーケット『フレシッポ』(※『フーマー』から名称変更)を2016年に開店し、2018年7月末時点で中国国内で64店舗まで拡大。利用者は商品に添付されたタグをレジに翳して、アリペイで支払う。

フレシッポは会員制のスーパーで、利用するにはスマホアプリでの会員登録が必要になる。アリババはアプリを通じて来店履歴や商品の購入履歴等のデータを取得・蓄積し、そのデータを使って仕入れを最適化して、常に新鮮な食品を揃える体制を整えている。商品に付けられたタグには価格に関する情報のみならず、流通経路等の商品情報も登録されている。利用者はそれらの情報をQRコードを使ってスマホで読み取ることができる。ここで使われているテクノロジーが、分散型技術のブロックチェーンだ。ブロックチェーンを使って商品のトレーサビリティー(※生産流通履歴)を確保すると共に、生産者のデータを蓄積している。ブロックチェーンの応用は、スーパーの運営だけに止まらない。アリババは2018年から、ブロックチェーンを活用した国際送金業務にも本格的に乗り出している。アリペイのアプリを使ってスマホ上で簡単に国際送金できる仕組みで、既にフィリピンやパキスタン等に対象を広げている。既存の国際間送金は、アメリカ主導の銀行間の国際決済ネットワーク『国際銀行間通信協会(SWIFT)』が使われている。アリババの国際送金は、このネットワークの外で国境を越えた送金を実現したことになる。これは既存システムへの挑戦であり、アメリカを始めとした先進国にとっては脅威に映るだろう。英語教師から身を起こし、今では“神様”とも呼ばれるマー会長。だが、彼の引退発言は、アリババと中国政府が微妙な関係にあることを浮き彫りにした。マー会長は2018年9月、1年後の2019年9月に退任することを発表した。退任後は会長の座を現CEOの張勇(ダニエル・チャン)氏に譲るという。マー氏は引退後も経営幹部で作る『アリババパートナーシップ』には関わり続けるとしているが、経営の第一線から退くことに変わりはない。この劇的な退任発表から3ヵ月経った11月末、中国共産党の党機関紙『人民日報』が、マー会長が共産党員であることを公にした。中国の経済発展に貢献した100人のリストにマー会長の名前を挙げ、その紹介文に彼が共産党員であると記載したのだ。ただ、マー会長はこれまで、自らが共産党員であることを明かしたことはなかった。裏を返せば、この一件は中国政府とマー会長の間に何らかの衝突があった可能性を示唆している。本人が公表を望んだとは考え難いからだ。マー会長は、中国の中小零細小売店の支援事業や地方活性化事業を手がける等、中国社会への貢献に強い思いを持つことで知られる。ジェフ・ベゾスCEO率いる『Amazon.com』が、eコマース躍進の陰で小売業を淘汰すると批判されているのとは対照的だ。

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テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

【クスリの大罪】(06) 大手新聞社と製薬マネー、広告料目当てに“名義貸し”



製薬会社からマスコミへのカネの流れはガラス張りになっているだろうか――。病気や薬の情報は、マスコミを通じて患者に届く。そのマスコミに製薬マネーが流れ込めば、患者に必要な情報ではなく、製薬会社の宣伝に内容が偏る可能性がある。宣伝ではなくても、製薬会社に不利な情報は載らない場合もある。医師個人への支払いは、製薬各社は2014年から公開している。しかし、マスコミへの支払いはブラックボックスのままだ。ここに『朝日新聞社』の内部文書がある。朝日が医師を招いて開いた催しに関する経理資料だ。2015年4月1日、朝日の1面に「医師に謝礼 1000万円超 184人 製薬会社、講演料など」という見出しの記事が載った。経理資料は、この記事が載った後に急遽作られたものだ。朝日新聞はこの記事を受けて、掲載する予定だった社説を取り止め、営業部門の情報を集約した。「自分たちも同じようなことをやっている。それを棚に上げて製薬会社と医師を批判できない」(朝日幹部)というのが取り止めの理由だ。経理資料には、製薬会社との“蜜月”を窺わせる案件が幾つもあった。例えば以下だ。

日付(採録等掲載)  2014年4月27日
催事・企画名  第78回日本循環器学会市民公開講座
広告主  第一三共
名義等  朝日新聞社主催
掲載料  27200000
事業費  0
支払い元  広告主

同様の催しを手がけた『第一三共』の関係者は、資料をこう読み解く。「朝日の主催で循環器学会の市民講座を開いたが、費用は医師への謝礼も含め、第一三共が負担したということ。2720万円というのは、朝日が講座の内容を広告として掲載し、第一三共が支払った料金。朝日は元手をかけず利益を得る“濡れ手に粟”だ」。

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確かに、2014年4月27日付の朝日には、循環器学会の市民公開講座を伝える広告特集があった(※左画像)。タイトルは『心臓病とともに生きる』。6人の医師の話が、1ページを割いて掲載されている。主催は朝日の他に、公益財団法人『日本心臓財団』も入っている。後援には東京都と医師会。第一三共は協賛だ。第一三共にとって何の得があるのか? 同社関係者によれば、「朝日の名義を借りることで、『新聞社が主催だから中立公平ですよ』と言える。ポイントは東京都が後援に入っていること。行政の後援は製薬会社が主催だと取り難い。行政が後援に入れば、更に製薬会社の色を消せる」のだという。しかし、朝日なら医師への謝金くらいは負担できるのではないか。「製薬会社は直接、医師に“お小遣い”を渡したい。広告なので、内容は医師の了解があれば変えられる。何を話すかわかっている医師を選ぶので、内容に手を入れることは滅多にないが」(同)。朝日と第一三共はどう考えるのか? 両社の社長宛に質問した。朝日は、「病気について正しい理解を広め、早期発見・早期予防の一助としたいとの考えから企画・制作しています。“名義貸し”とのご指摘にはあたりません」と回答した。第一三共は、「疾患啓発活動の趣旨に当社として賛同し、またメディアを通じた疾患啓発効果の拡大が期待できた為、協賛した」と回答した。朝日の“名義利用”については触れなかった。

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テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
ジャンル : ニュース

【ファクトフルネス・常識を疑え】(07) 「人間の脳が正しい理解を妨げる」――アンナ・ロスリング・ロンランド氏(『ファクトフルネス』共著者)インタビュー

スウェーデン出身の医師で公衆衛生学者のハンス・ロスリング氏は、自身の著書『ファクトフルネス』の完成とほぼ同時期の2017年2月に膵臓癌の為、亡くなった。現在、その遺志を継ぎ、非営利教育組織『ギャップマインダー財団』の運営に当たるのが、同書共著者でハンス氏の息子であるオーラ・ロスリング氏と、その配偶者であるアンナ・ロスリング・ロンランド氏だ。ファクトフルネスの誕生秘話や同財団の新たな取り組み等について、アンナ氏に話を聞いた。 (聞き手/本誌 野村明弘)



20190722 04
――ファクトフルネスが世界の読者に受け入れられた理由を、どのように考えていますか?
「現在は大量のニュースが溢れ、人々は怯えて悲観的になり、バラバラに分裂している。この本に興味を持ってもらえたのは、世界の真の全体像と、人間が間違えてしまう脳のメカニズムの双方を示したことが大きな理由だと思う。この本によってニュースに対処する方法を身に付け、これまで世界について知らなかったことを学んでもらえれば嬉しい」
――ファクトフルネスという言葉は造語ですね。
「この言葉を発明したのはオーラだ。マインドフルネス(※今この瞬間の精神状態に意識を向ける為の瞑想やトレーニングを指す)から着想を得た。ファクトフルネスという言葉は、自分が事実を認識する精神状態について深く意識を向ける方法を見つけることを指している」
――本書ではネガティブ本能、過大視本能、単純化本能等、人間が間違えてしまう10の本能を指摘していますね。
「長年、世界中で講演を続ける中、いくら事実を示しても世の中に伝わらないことにフラストレーションを溜め込んだものです(笑)。しかし、そのうち人々が間違える理由に興味が移った。人の認知機能を調べてみると、人間の脳には事実を正しく理解することを妨げる機能があることがわかり、それを示せば、人々にもっと効果的に訴えかけることができると思った」
――それがファクトフルネスの執筆に繋がったと。
「世界開発についての本を読むと、第1章が教育、第2章が医療等と構成されているだろう。だが、これではあまり読者の興味を惹かない。どのような脳の働きによって我々は世界を間違って見てしまうのか、その視点と世界開発の事例を結び付ければ関心を持ってもらえると思った」
――しかし、人がドラマチックに世界を見てしまうことに抵抗するのは、わかっていても難しいですね。
「メディアや教育制度は、これについて何かできると思う。メディアは、ニュースをコンテクスト(※文脈)に沿って説明することで、状況を改善できる筈だ。例えばテロ事件があり、50人の死者が出たとする。その時、少ない言葉でもいいので、過去の流れからの位置付けを説明すべきだ。『過去50年間、テロ事件は増えているが、こんなに多数の死者が出たのは初めて』とか、『今回、この事件が起きたが、この国ではテロ件数は減っている』といった具合に。このように報道するだけで、その事件や事故が例外的なことなのだと、人々は正確に思い起こすことができるようになるだろう」

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テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

【ZOZOTOWN・終わりの始まり】(03) “ZOZO離れ”の先にある限界

プラットフォーマーの成長過程における歪みか、それとも単なる失策なのか。年初、アパレル業界を騒がせた“ZOZO離れ”の底流を辿ってみると――。



20190722 02
年初の『ZOZO』を“災厄”が見舞った。『オンワードホールディングス』・『ミキハウス』・『4℃』等が『ZOZOTOWN』から撤退。所謂“ZOZO離れ”報道が過熱し、前澤友作社長自身もSNSで過剰に反応した。その影響を語る前に、発端となった『ZOZOARIGATOメンバーシップサービス』について、従来あまり注目されてこなかったリスクを指摘しておく。ZOZOARIGATOとは昨年末にスタートした、同社の主力事業であるアパレルECサイトのZOZOTOWN上での割引サービスのことだ。買い物客が年間3000円、若しくは月間500円の会費を払ってメンバーになれば、購入価格から初月は30%、その後は10%、月に最大5万円まで割り引かれる。客は割引額を出店者のアパレルメーカーに返金したり、『日本赤十字社』等に寄付したりして、“ARIGATO”の気持ちを表現できる仕組みだ。ただ、有無を言わさぬ一律10%オフの方針に対してアパレル側が反発、一部の撤退に繋がったわけだが、値下げの原資はZOZOが負担する。寧ろ、それ故に生じる問題があるのだ。前澤氏は、1月31日に開催された2019年3月期第3四半期決算のアナリスト説明会で、左図のように、同期まで伸び幅が低迷していたZOZOTOWNの商品取扱高が、同サービスの効果により、第4四半期は25.9%に達する見通しを示した。

とはいえ、抑々ZOZOTOWNは出店者であるアパレル各社からの受託販売が大半で、商品価格の約2~4割を手数料として受け取り、これを自社の売上高とするビジネスだ。同図に示したように、『JPモルガン証券』シニアアナリストの村田大郎氏の試算では、新規会員が30%引きとなる入会初月に、ZOZOTOWNの年間平均購入価格に近い4万6000円分の買い物をすれば、ZOZOの値下げ負担分と販管費が手数料や会費等の収入を上回り、ZOZOの損失となってしまう。勿論、これは客1人当たりの一定の条件下での試算に過ぎない。しかし、他の市場関係者からは「値下げ負担により、会社全体で対2018年3月期比で2019年、2020年の3月期とも営業減益が続く」との予想も出ている。「最早、際限なくカンフル剤をばんばん打ち続けるように値下げをしている状況」(市場関係者)との懸念さえ聞かれる。ZOZOで既存の出店者との窓口や新規出店ブランドの開拓を進めるEC事業本部ディレクターの松田健氏は、「取扱高等は事前のシミュレーションの範囲内で推移しており、順調だ。短期的な集客ではなく、購入額の中長期的な増加を重視している」と話すが、今後の推移を見守るしかあるまい。扨て、ZOZO離れを考える上で無視できないのは、こうした動きが表面化する前から生じていた、出店者とZOZOとの間の“隙間風”である。右下図をご覧頂きたい。株式上場を果たした頃の2008年3月期、ZOZOTOWNの商品取扱高は直近の約15分の1とまだまだ小さかった。その半面、主要セレクトショップや、服好きの若者の間で知る人ぞ知るブランドが出店。それが、ZOZOTOWNがコアなファッション愛好家からの支持を集める要素となっていた。だが、次第にZOZOは規模を追求する。例えば、『ユニクロ』を擁する『ファーストリテイリング』の柳井正会長兼社長は、本誌の取材に「ZOZOから何度も出店要請があったが、全部断った」と明かした。前澤氏についても、「彼はショーマンだから」と厳しい評価を下す御仁である。その後も『ライトオン』、昨年には『しまむら』が入った他、セレクトショップ関係者の間で“楽天系”と揶揄される無名の格安ブランドも増加。あるセレクトショップ関係者は、「うちの商品がしまむらと並ぶのはちょっと…」とこぼしていたものだ。よって、主要セレクトショップ各社はZOZOTOWNで一定の売り上げ規模がある為、直ぐに撤退はしないまでも、高価格品を出さない等、ここ最近は販売する商品の選別を進めていると言われている。そして後述するように、ZOZOに頼らない自社ECをどんどん強化している。

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テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【テレビの裏側】(79) 福山雅治待ち伏せ、『嵐』の現場をSNSに投稿…大暴走する迷惑ファン

ファンの迷惑行為が止まらない。今年5月、ジャニーズ事務所は『Hey!Say!JUMP』の一部ファンのマナー違反を理由に、毎年恒例だったコンサートツアーを中止すると発表した。メンバー見たさに新幹線のホームに殺到したことが理由とされるが、ファンの暴走はジャニーズに止まらない。続く6月には福山雅治(50)が公式サイトで、『ファンの皆さまへのご注意とお願い』と題し、ロケ先等での待ち伏せ行為について釘を差した。「福山が主演したドラマ“集団左遷!!”(TBSテレビ系)の撮影現場に“偽エキストラ”が入り込んでいることが発覚。一時、騒然としたそうです。ただ、これは仕方ない面もある。ここ数年、どこの局も経費削減の為、ボランティアのエキストラに頼っているのが現状。彼らの多くが『ギャラはいらないから贔屓のタレントを近くで見たい』というファンです。素人さんに『情報管理を徹底しろ』と求めるほうが無理がありますよね。危険なのが、ドラマ放送開始後にエキストラの募集をかけるケース。勿論、募集要項には○○市内の商店街等、撮影場所の大まかな情報しか書かれていないのですが、ドラマを隅から隅まで観ているコアファンにしてみれば特定は容易。追っかけや野次馬が殺到して、撮影がストップするというトラブルが増加しています…」(ドラマ制作スタッフ)。また、「スタッフがファンに情報を漏洩するケースもある」と嘆くのはキー局ディレクターだ。

「2017年、嵐の番組に携わっていた10代の美術スタッフが、ツイッターの“鍵アカ”に収録風景を無断でアップして問題になりました。SNSに上げないまでも、ジャニオタであることを隠し、スタッフとしてジャニーズタレントに近付こうとする不届き者は少なくない。ただ、AD等の3K仕事はどこも人手不足。ファンだからこそ、きつくても熱心に働ける面もあるから、うちはスタッフがファンだとわかっても使っています…」。小さな劇場でライブをする機会が多く、ファンとの距離が近い芸人の場合、警察沙汰になることもある。「小劇場で出待ちをするファンで、生きた子猫を差し入れていた女性が出入り禁止処分になっています。元々、ピースの又吉直樹のファンだったそうですが、又吉以外の若手芸人に片っ端から声をかけるようになり、気味悪がられていました。触ろうとしつこく付き纏って逮捕されたファンもいますよ」(お笑い事務所関係者)。最も深刻なのが女性アイドルだ。元アイドルの女性が打ち明ける。「大手事務所に所属できるアイドルなんてほんの一握り。マネージャーがつかないのが当たり前だから、自分で自分を管理しなきゃいけない。イベント等の告知もSNSを駆使して本人がやる。複数のSNSを毎日、更新せねばならず、投稿が膨大な数になる。すると、どうしても位置情報を埋め込んだまま写真をアップするというミスが起きてしまう。収録先のスタジオや自宅の住所がばれて、ファンに待ち伏せされたり、同じマンションにファンが引っ越してくるなんて危険に、常に晒されているのです」。今の時代、タレントたちは大変なリスクを背負ってしまったのだ。


キャプチャ  2019年7月26日号掲載

テーマ : 芸能ニュース
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【参院選2019・注目区を行く】(09) 女性対決、“子育て”前面

20190719 23
全国に32ある改選定数1の“1人区”で唯一、自民党候補と野党統一候補が共に女性となったのが福島選挙区だ。東日本大震災からの復興と並び、子育て支援や女性政策の訴えに力がこもる。「私は6年ほど保育士の仕事をしました。自分が母親になって、子供を預ける立場も経験しました」。野党統一候補で無所属の水野さち子(57)は今月13日、飾り気のない紺のスーツ姿でいわき市の個人演説会に立つと、自らの経験談を語り始めた。10月からスタートする幼児教育・保育の無償化については、「保育士がいなければ待機児童ができてしまう」と指摘した。応援に駆けつけた立憲民主党国会対策委員長の辻元清美(59)は、自民公認の森雅子(54)に矛先を向けた。「相手候補も女性ですけど、ちょっとタイプが違うでしょ。自民党の女性議員は安倍さんの周りの親衛隊みたいになっている」。森は首相の安倍晋三(64)に目をかけられ、当選1回だった2012年12月に消費者・少子化担当大臣に抜擢された。女性活力・子育て支援や男女共同参画も担当した。キャリアを重ねた森に対し、野党は敢えて同じ女性の水野をぶつけた。

擁立を主導したのは、2016年参院選福島選挙区で自民現職閣僚に勝利した国民民主党参院議員の増子輝彦(71)だ。「態と女性を出した。ソフトな印象の水野は、森との比較対象にもってこい」と周囲に説明する。水野陣営が意識するのが柔らかさだ。政策ビラには“はぐくむ”・“うみだす”・“いたわる”・“やすらぐ”といった表現を鏤めた。今回の参院選は、昨年5月に『政治分野における男女共同参画推進法』が施行されて以降、初の全国規模の国政選挙だ。同法は、公職選挙で男女候補者数の均等を目指すことを政党等に求めている。参院選では、全候補者370人の内、女性の比率は28.1%。過去最高ながら均等には程遠く、福島の戦いが目を引く形になっている。ただ、“女性vs女性”の構図は「主張が似通う」(陣営幹部)という事情もあり、選挙戦は必ずしも野党側の思惑通りに進んでいるわけではない。森にとっても、子育て支援や女性政策は勝負のし易い土俵だ。演説会で配るビラには、“保育料無料化(※3~5歳)を実現”・“乳児用液体ミルクの商品化に尽力”等と実績を列挙した。「私は未だ子育て中で、下は高校生、上も大学に行っています。私たちの世代は子育てと介護が一緒に来る。この問題を解決しなければなりません」。森は今月12日夜、福島市内での個人演説会に“2児の母として”と書かれた襷姿で臨むと、自らが関わった子育て支援策をアピールした。党女性局長の三原じゅん子(54)は、「女性の皆さんが社会にどんどん進出して、大活躍しているのも、森さんが頑張ったから」と援護射撃した。4日の公示前、森の演説は必ずしも子育てや女性政策に力点を置いていなかった。だが、女性対決との状況を踏まえ、森が所属する細田派幹部らが重点的に訴えるようアドバイスした。元総務大臣の野田聖子(58)や党筆頭副幹事長の稲田朋美(60)ら女性弁士も続々と福島入りし、森を後押しする。「野党の戦略ミスだ。女性同士の戦いだから、女性活力等を閣僚として担当していたことはアピールになる」。ある自民党衆議院議員は自信ありげに語る。参院選の投開票まであと2日。全国で候補者がラストスパートに入る。 《敬称略》 =おわり


キャプチャ  2019年7月19日付掲載

テーマ : 政治のニュース
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【参院選2019・注目区を行く】(08) 与野党、戦略様変わり

20190719 22
アメリカ軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設が争点の一つとなる沖縄選挙区。事実上の与野党対決の構図は2016年参院選と不変だが、共に戦略は様変わりしている。「右とか左とか、イデオロギー闘争はもう終わり。沖縄の政治を前に進めていく決意です」。自民党公認で新人の安里繁信(49)は今月10日、那覇市の県立武道館で力を込めた。会場前方は、安里のキャッチフレーズ“オキナワプライド”の文字と安里の似顔絵をあしらった紺色のTシャツを着た若者が陣取った。『日本青年会議所』元会頭の安里は、若手経営者に人脈を持ち、若年層や無党派層への浸透に注力している。8日には那覇市のタコス店で大学生と昼食会を開いた。狙いは、組織力に頼った従来の自民候補のイメージを打ち破ることだ。自民は近年、沖縄での大型選挙に国会議員や秘書を大量に送り込んだものの、連敗。陣営幹部は、「“沖縄カラー”を前面に出す。敗戦から得た教訓だ」と語る。昨年の県知事選では、官房長官の菅義偉(70)や衆議院議員の小泉進次郎(38)ら著名な弁士が連日のように沖縄に入ったが、今回は殆どない。

今月14日に元経済産業大臣の小渕優子(45)が沖縄入りした際も、安里は一緒に街頭に立たなかった。辺野古移設を巡っても、県連の方針とは一線を画す。“容認”を打ち出している県連は、安里にも踏襲するよう求めたが、安里は先月22日の政策発表の席上、「口が裂けても容認とは言えない。厳しい現状を(政府に)伝える」と述べた。「命どぅ宝(=命こそ宝)、島人ぬ宝(=島の人の宝)。沖縄の為に安倍政権の辺野古の工事強行を許さない」。今月12日夕、那覇市内の交差点で、野党統一候補の高良鉄美(65)はウチナーグチ(※沖縄の言葉)を織り交ぜながら声を張り上げた。ウチナーグチは、前知事の翁長雄志(※故人)が初当選した2014年以降、保守系の一部と革新系からなる『オール沖縄』勢力が公の場で積極的に用いてきた。国政政党の色は薄めて“沖縄色”を打ち出し、“政府vs沖縄”の構図を演出する為だ。だが、今回は様相が異なる。梅雨明けの炎天下となった1日昼。那覇市の県庁前での演説会に臨んだ高良の隣には、かりゆしウェアに身を包んだ立憲民主党代表の枝野幸男(55)、国民民主党代表の玉木雄一郎(50)、日本共産党委員長の志位和夫(64)が並んだ。「野党共闘の発祥の地は沖縄だ」(志位)等と、3人は次々と野党連携の重要性を口にした。昨年の知事選で、野党は共闘して玉城デニー(59)を当選に導いた。「野党共闘を強調するには、沖縄はうってつけの土地」(国民幹部)だ。その副作用もある。オール沖縄は自民党県連幹事長も務めた翁長を中心に、保守から革新まで幅広い勢力が結集して誕生した。だが、昨年8月に翁長が亡くなって以降、一部の保守系は野党色を強めるオール沖縄と距離を置いている。「日米安全保障条約は破棄すべきだ」。高良は先月29日の政策発表の記者会見でこう明言し、自衛隊も「違憲だ」と指摘した。終了後、沖縄社会大衆党の県議に「表現を和らげたほうがいい」と耳打ちされ、高良は「安保破棄は将来的な話。きちんと考えていきたいということだ」と付言した。「保革相乗りのオール沖縄は野党共闘に変わった。高良陣営は革新色が強過ぎる」。保守系の陣営幹部は不満を漏らす。其々の戦略は吉と出るか、凶と出るか。 《敬称略》


キャプチャ  2019年7月18日付掲載

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【参院選2019・注目区を行く】(07) 忖度vs落下傘、批判合戦

20190719 21
信濃川上流の山間にある新潟県津南町を、大物政治家が訪れることは稀だ。副総理兼財務大臣の麻生太郎(78)は今月13日午後、苦境の“子分”の為に一肌脱ごうと同町役場の駐車場に立ち、こう聴衆に頼み込んだ。「言いたいことはいっぱいあるだろうけど、100%完璧な人間はおらんから。そこは勘弁してもらおう」。新潟選挙区の自民党公認、塚田一郎(55)は嘗て麻生の秘書だった。麻生に続いてマイクを握ると、「大変皆様にご心配、ご迷惑をおかけ致しましたことを、改めてお詫びを申し上げさせて頂きます」と語り、深々と頭を下げた。「楽勝」(県連幹部)と目された選挙情勢は4月、国土交通副大臣だった塚田の失言で一変した。山口・福岡両県を結ぶ道路の調査費計上について、首相の安倍晋三(64)と麻生の意向を「忖度した」と口を滑らし、4日後に辞任に追い込まれた。森友・加計学園問題で苦しんだ安倍政権にとって、“忖度”は禁句だった。4月の衆議院大阪12区と沖縄3区の両補欠選挙で自民が敗北すると、塚田は“戦犯”の誹りを受けた。安倍は、自身が第1次内閣を退陣した直後の体験談を、人伝に塚田に伝えた。「這い蹲って地元を 回り、小さな集会を繰り返した。(2009年衆院選では)逆風の筈が、驚くような票で勝ったんだ」。

塚田は頭を丸め、約3ヵ月の“お詫び行脚”に臨み、100超の県内支部を殆ど訪れた。それでも、ある自民県議は「4月の県議選でも失言が直撃して苦しんだ。塚田の為に本気にはなれない」と突き放す。悪い材料ばかりではない。民主党政権で政務官を務めた衆議院議員の鷲尾英一郎(42、新潟2区)が、3月に自民入りした。鷲尾は2万人近い個人後援会を持ち、連合新潟との関係も良好で、野党票切り崩しの期待がかかる。“移籍組”の驚尾にとっては格好のアピールの場だ。新潟2区では、2017年衆院選で鷲尾が勝利した自民党衆議院議員の細田健一(55、比例北陸信越)との公認争いが待ち受ける。今月2日には塚田の妻を伴い、燕市の金物や洋食器の町工場を回り、「塚田さんに色々な感情をお持ちかと思うが、どうか今回は当選させて頂きたい」と頭を下げた。新潟では2016年参院選と県知事選で野党系候補が勝利し、2017年衆院選でも県内6小選挙区の内、4選挙区を野党側が制した。2018年は与党が県知事選と新潟市長選で連勝しただけに、野党は流れを引き戻そうと敵失を攻め立てている。「上ばかり見る忖度政治ではなく、誰一人取り残さない政治を始めていきたい」。野党統一候補で無所属の打越さく良(51)は今月13日、長岡市の繁華街で演説し、声を張り上げた。応援に立った立憲民主党会派で衆議院議員の菊田真紀子(49)が塚田を“忖度君”と皮肉れば、国民民主党参議院議員の森裕子(63)も「忖度政治は終わらせよう」と繰り返した。ただ、打越にも弱みがある。北海道出身で、新潟には地縁・血縁のない“落下傘候補”という点だ。選考では国民等から懸念が出たが、立民が弁護士としての実績を評価して押し切った。打越は街頭で「新潟県弁護士会に登録替えができた。正真正銘の新潟県人です」と説明するが、塚田陣営は「新潟を知らない候補」と揶揄する。安倍も昨日、上越市の街頭演説で「(打越は)東京で弁護士をやっていた人。恐らく、落選すれば直ちに東京に帰るんでしょう」と語気を強めた。野党系衆議院議員はこう呟く。「“忖度vs落下傘”の戦いだ。お互いに急所を攻撃し合っている」。 《敬称略》


キャプチャ  2019年7月17日付掲載

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【参院選2019・注目区を行く】(06) 共産公認、遠い一枚岩

20190719 20
「共産党候補の応援マイクを持つとは、5年前には思っていなかった」――。今月10日夜、福井市の県民ホールで開かれた日本共産党公認の新人、山田和雄(52)の演説会で、立憲民主党代表の枝野幸男(55)はこう切り出した。「今回もどうしようかなと思ったが、安倍首相に『福井県民だったら誰に入れるのか』と挑発された。当然、山田さんに決まってるじゃないですか」。枝野の言葉に、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。続く日本共産党書記局長の小池晃(59)は、「歴史的な演説会に参加した皆さんは幸せ者だ。本当に感激した」と興奮気味に語った。福井選挙区は、全国に32ある“1人区”で唯一、共産公認候補で野党が一本化された。更に、首相(※自民党総裁)の安倍晋三(64)が批判の矛先を向けたことで、一層注目を集めることになった。安倍は3日午後の党首討論会で、自衛隊を巡る立民と共産の立場の違いを質し、枝野に福井県民だったら共産候補に投票するのかどうかを迫った。枝野は討論会では明言を避けたが、夜のテレビ番組で「野党統一候補に投票する」と言い切り、共産を安堵させた。枝野の福井入りは「野党共闘の結束をアピールする為」(立民幹部)、演説会の数日前に急遽決まった。

福井は保守地盤の壁が厚い。共産が統一候補に選ばれた経緯も、立民等による候補者発掘の不調に加え、32の1人区の党派バランスを考慮した“妥協の産物”だった。立民だけでなく、国民民主・社民両党も推薦は見送り、野党の結束は一枚岩とは言い難い状況だ。「比例選は国民民主党に投票をお願いしたい」。9日午後、原子力発電所が集中する同県嶺南地域にある敦賀市。マイクを握った国民県連代表で衆議院議員の斉木武志(45)は演説中、共産候補の山田には一切触れなかった。支持団体に『電力総連』を抱える国民は、立民と社民が市民団体を介して共産と結んだ政策協定にも参加せず、共闘と一線を画す。山田は「今動いている原発を全て止める」と訴えるが、斉木は「代わる飯の種がない中、動いている原発を止めろと言う主張には与しない。対抗馬を出さないことが最大の協力」と素っ気ない。自民党公認で現職の経済産業政務官、滝波宏文(47)も足元に課題を抱える。自民分裂選挙となった4月の県知事選で、滝波は自民推薦候補の応援に動かなかった。2017年の県連会長人事を巡る対立のしこりもあり、県連の一部では公認差し替えを求める声も上がった。6日に福井市で開かれた演説会では、挨拶に立ったベテラン県議が「一丸とならなければならないが、色々なことでゴタゴタしている」と思わず漏らした。同じ演説会には、滝波の上司にあたる経済産業大臣の世耕弘成(56)が駆けつけ、「こんなことになるとは思っていなかった。正直に言います。私が業務命令で『知事選に関与することはまかりならん』と言った」と滝波を弁護した。エネルギー政策を所管する経産省の政務官が、原発がある福井の知事選に関与すべきではないというわけだ。「そんなことあるわけがない。世耕さんはゴタゴタを収めようとして言ったんでしょ」。県連幹部は冷ややかだ。分裂したまま保守王国の戦いは続く。 《敬称略》


キャプチャ  2019年7月14日付掲載

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【参院選2019・注目区を行く】(05) 竹下王国、知事選のしこり

20190719 19
自民党王国・島根が揺れている。「島根で知名度がないのが最大の課題だ。どうか一人ひとりの支援の輪 を広げて頂きたい」。国宝・松江城天守が見下ろす島根県庁前で5日、鳥取・島根選挙区の党公認、舞立昇治(43)が出陣式に臨み、約800人を前に声を張り上げた。舞立の後ろ盾で鳥取県連会長の石破茂(62)も駆けつけた。舞立は2013年参院選で鳥取選挙区から初当選し、前日4日には鳥取で出陣式を行なった。ただ、2016年から合区で選挙区に含まれた島根には足場がない。浸透するには島根県内の首長や地方議員の協力が不可欠だが、出陣式に知事の丸山達也(49)の姿はなく、党島根県議会議員連盟の人の約半数も出席しなかった。4月の島根県知事選が尾を引いている為だ。自民党王国を築いた元首相・竹下登の弟で県連会長の竹下亘(72)や元官房長官の青木幹雄(85)は、知事選に元総務官僚の大庭誠司(60)を担ぎ出し、党本部の推薦を得た。だが、島根県議の多数派は「東京にいる青木らが上意下達で島根の物事を決定するのは時代に合わない」と反旗を翻し、元島根県政策企画局長の丸山を支援。44年ぶりに自民が分裂した知事選は、丸山が制した。

知事選は参院選に飛び火した。知事選では石破も島根に入り、大庭の応援演説に立った。丸山陣営は、昨年9月の党総裁選で青木が石破を後押ししたことへの“恩返しの茶番”と猛反発した。「石破さんには『島根・鳥取の関係を考えれば、軽挙妄動を慎んでほしい』と伝えて頂きたい」。島根県議会議員連盟会長で丸山を支える五百川純寿(70)は先月25日、県議会に挨拶に訪れた舞立に言い放った。分裂状態の島根県連では、五百川らが多数を占める。先月7日の県連常任総務会では、青木に近い県連幹事長の不信任動議が可決された。溝は深まるばかりで、県連に参院選の選挙対策本部すら設置できていない。本来なら仲介役として奔走すべき竹下が、食道癌の治療で入院中なのも混迷に拍車をかけている。竹下は先月21日に談話を発表し、「党所属の県議、党員、党友が手を携え合って、運動を展開する必要があります」と呼びかけたが、騒動は収まる気配がない。丸山に近い島根県議は、「舞立に恨みはないが参院選は休ませてもらう」と吐き捨てる。街頭演説には出向かず、選挙カーにも乗らないつもりだ。一方、舞立と戦う無所属の中林佳子(73)は今月4日、鳥取市での街頭演説で「本当に幅広い方々のお力をお借りしている」と述べ、野党統一候補の立場をアピールした。ただ、日本共産党元衆議院議員の経歴から、立憲民主・国民民主両党の地元県連は、鳥取・島根とも自主投票に止めた。自民が分裂しているとは言え、保守層の切り崩しは容易ではない。そのことがまた、自民の亀裂修復を遠退かせている。合区後初の2016年参院選では、鳥取県連は石破を先頭に青木の長男である一彦(58)を全面支援した。その恩義を感じる一彦は4日、鳥取市内での舞立の出陣式で「恥をかかせないような得票率を目指して戦っていく」とブチ上げた。だが、自民のベテラン島根県議は白け気味にこうこぼす。「竹下王国が崩れ落ちる時が来ている」。 《敬称略》


キャプチャ  2019年7月13日付掲載

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