【劇場漫才師の流儀】(02) “一発屋”と呼ばれる芸人は何故増えた?

最近、“一発屋”と呼ばれる人が増えたけど、それは昔に比べて笑いの世界のルールが曖昧になったからやろうと思うんです。昔の漫才には一杯ルールがあって、先輩から言われたのは「企業名は出すな」「個人名は出すな」「CMも歌ネタもダメ」「歌ネタは、音曲漫才というジャンルがあるから、その領域を侵してはならない」という暗黙のルールがあった。下ネタで笑わすのも「邪道や」と言われました。偶に舞台で下ネタをやると、師匠方に「あんなんやるなよ」と怒られました。でも、今の若手は師弟関係を持つ師匠がいないこともあって、注意されることもない。それと、テレビの放送コードが緩くなったこともある。昔は、NHKでは『吉本興業』と社名を言うのもNGで。“うちの会社”と言わないとあかんかった。“ウンコ”や“チンチン”もNG。でも、そういうのがセーフになって、どんどん何でもありになっていった。そういう意味で、僕はよう言うてるんですけど、昔の漫才は“プロレス”やったと思うんです。ルールがある中で、一番大きな音が出るところを叩いて、お客さんをワーッと沸かせるというか。それが今は、マジのナックルパンチを振り回して、それが当たったら勝ち。格闘技で言えば“バーリトゥード”っていうんですか。殆どルール無しのね。未だ、力の無いほうがあのリングの中で振り回したラッキーパンチが、偶々当たって勝ってしまうことがある。

でも、それだと次のリングに上がっても、先ず勝てません。だから、一発で消えていく人が沢山おるんやろね。そう考えると、ラッキーパンチはアンラッキーかもわからんな。未だ力が無いのに“強い”と思われてしまう訳やから。例えば、『8.6秒バズーカー』も不思議な面白さがあって、一時、えらく売れたけど、今は苦労しています。今は力を付けているところやろね。彼らはまだまだこれからやと期待しています。ただ、僕らも今は、厳密な意味ではプロレスをやっている訳ではないですね。例えば下ネタ。夏休みとか冬休みとか、子供さんがおる時、笑えるところが無いと申し訳ない。で、下ネタをちょっと入れる。子供さんは、“ウンコ”“チンチン”言うたら絶対笑うからね。でも、そこは下品になり過ぎんよう、気をつけています。いくら下ネタを言っても不思議と下品に聞こえない芸人っているんですよ。僕らも「下品に聞こえないよ」って言われますが…。今年の『R-1ぐらんぷり』(関西テレビ・フジテレビ系)で、お盆で股間を隠す裸芸で優勝した『アキラ100%』もそうやね。中々の男前で、非常に腰が低いし、真面目そう。あれがエエね。「彼だから、あの下ネタも許されるのかな」という感じがする。同じ裸芸でも、うちの会社の『とにかく明るい安村』とはちょっと違うところかもしれないですね。彼ももうちょっと男前やったらね(笑)。


オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(共にワニブックス)。


キャプチャ  2017年8月28日号掲載
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ジャンル : お笑い

【Test drive impression】(33) 『レクサス LX570』――その価格は1100万円! レクサス最強SUVの実力とは?

日本人の多くは、アメリカの文化なら大抵はわかった気になっているように思う。しかし、実際にアメリカに行ってみると、「全然違うじゃん!」って文化はメチャクチャ多い。例えば、2オンス(340g)もあるのにペロリと食えちゃうTボーンステーキや、紙バケツ入りの巨大なコーラ、そして巨大SUVだ。日本で売れるSUVといえば、『トヨタ自動車』の『C-HB』や『ホンダ』の『ヴェゼル』のようなスマート且つ無駄のない乗用車ベースの背高カーを思い浮かべるだろう。ところが、アメリカで売れるSUVの基本は、ラダーフレーム付きのトラック顔負けというタフなSUVだ。というのも、その骨格じゃなきゃボードやキャンパーを牽引できないし、耐久性も段違いだからだ。謂わば、カウボーイにとってのタフな馬代わり。しかも、それをゴテゴテ高級化した不思議な金ピカマッチョSUVまで存在する。それが『キャデラックエスカレード』や『リンカーンナビゲーター』といった、全長5mオーバーで車重2トン超の武闘派ゴージャスSUV。その和風版が2015年、日本に上陸した『レクサスLX』だ。謂わば、醤油味の走る本格Tボーンステーキだ! 久しぶりにLXに乗ってみたが、一見した時のこのクルマのバカバカしさったらない! 顔は超エラ張り系のスピンドルグリル! 自慢のX字のイバりが中央左右にドカ~ンと広がるでなく、ゴツゴツ感が半端ない。

3連LEDヘッドランプに派手なL字LEDフォグランプ付きで、今時調和の取れたレクサスデザインが多い中、“顔のデカさ”で勝負する珍しい和風プレミアムに仕上がっている。インパネもコージャスの一言。昔は『ランクル』の真面目さを引きずってたが、現行はシックでツヤツヤした本木目ウッドパネル。シートは日本車ならではの上質な鞣しが加えられたソフトで配やかなセミアニリンレザー。色もブラック、アイボリー、ブラウン、ホワイト、ガーネットから選べて、国際的な高級テイストである。ハイテクもふんだんで、センタ ーの12.3インチのモニターは、横幅が凄くてサイドミラーも巨大。勿論、最新の安全システムも標準で装備。歩行者検知機能付きのプリクラッシュセーフティー、レーンディパーチャーアラート、対向車の眩惑を防止するアダプティブハイビームシステム、全車速追従能付きレーダークルーズコントロール等だ。乗ってもゴージャス感は独特で、ランクル譲りのラダーフレームのおかげで床はバカ高! 子供や老人の乗り降りにはちと苦労するが、見晴らし感は上々。今時のSUVには無い「俺はてっペんにいるぜ!」という高揚感に包まれる。シートは北米基準の3列配置の8人乗り。3列目は流石に床が高くて、大人は体育座りを強いられるが、横幅はあるし、1列目・2列目はゆったり広々。

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テーマ : 新車・ニューモデル
ジャンル : 車・バイク

【Deep Insight】(36) 米欧の亀裂、明日は我が身

今日、世界の目がヨーロッパに注がれる。米欧やアジアの指導者が集まり、ドイツで20ヵ国・地域(G20)首脳会議が始まるからだ。国際政治が激動する時、ヨーロッパは良くも悪くもその発端となってきた。2つの世界大戦の口火を切った他、米ソ冷戦に幕を引いたのもベルリンの壁の崩壊だった。ヨーロッパの出来事は他人事ではなく、形を変えてアジアにも押し寄せるとみるべきだ。その意味で今、注目に値する変化がヨーロッパで起きている。「アメリカにおんぶにだっこでは、自分たちの平和を守れない」――。こんな不安が強まり、自前の安全保障を探らざるを得なくなっているのだ。先月、会議で訪れたヨーロッパで、そんな張りつめた空気をひしひしと感じた。印象的だったのが、バルト海に面し、ロシアの軍事挑発に曝されるスウェーデンだ。来年1月、遂に徴兵制を復活させるという。中立を守る為、同国は1901年から100年以上、徴兵制を続けてきたが、2010年に一旦廃止した。再び導入する理由について、現地のヨーロッパ外交筋はこう明かした。「万が一、ロシアから侵略されても、アメリカが介入するかどうかわからない。スウェーデンはそう感じ、徴兵を再開するのだ」。スウェーデンは、米欧の軍事同盟『北大西洋条約機構(NATO)』に入っていない。だが、NATOに加入し、アメリカの“安保の傘”に守られている筈の国々も、真剣に自衛強化策を議論している。例えばドイツだ。ベルリンでは戦後、ずっとタブー視されてきた核兵器保有論が俄かに飛び出し、物議を醸していた。ドイツの高級紙『フランクフルターアルゲマイネ』の編集者が最近、核保有を唱えるコラムを書き、安保専門家も似たような意見を発表した。「賛同者はごく少数だが、核保有が公然と議論されるだけでも、以前なら考えられない」(ドイツ政府ブレーン)。変化の直接のきっかけは、言うまでもなく、同盟を軽んじるアメリカのドナルド・トランプ大統領の言動にある。極め付きは5月25日、トランプ大統領を初めて迎えたNATO首脳会議だった。彼の機嫌を損ねないよう、ヨーロッパ側は1人あたりの発言を数分内に制限し、結束を取りつけようとした。ところが、トランプ大統領は演説で、「ヨーロッパへの防衛義務を履行する」とは確約しなかった。内情を知るヨーロッパ外交筋によると、トランプ大統領は「夕食会等では更に非礼な態度を取り、アメリカは信用できない印象を植え付けた」という。先月9日、『ヨーロッパ委員会』のジャン=クロード・ユンケル委員長は、「ヨーロッパの防衛はもう、外国任せにできない」と演説した。アメリカとの同盟は堅持するものの、対米依存度を少し下げる為、EUは独自の安全保障協力を深めていく方向という。

では、この動きをアジアはどうみたらよいのか? 2つの正反対の仮説が考えられる。1つは、「ヨーロッパとアジアでは事情が大きく違う為、似たような問題は日米や米韓同盟には起きない」というものだ。日本の政治家や官僚と話すと、こちらの楽観論のほうが多い気がする。実際、トランプ大統領は日米や米韓同盟への露骨な批判は控えている。アジアでは北朝鮮が核・ミサイル開発で暴走し、中国が影響力を増す。国内総生産(GDP)でロシアの5倍超の中国と渡り合う上でも、アジアの同盟国は大事にせざるを得ないという訳だ。だがもう1つ、全く逆な仮説も成り立つ。「米欧同盟の軋みはアジアの“先行指標”であり、程度の差こそあれ、日米や米韓にも波及する」という予測だ。筆者はどちらかと言えば、こちらの見方のほうが正しいように思う。米欧同盟の軋轢は構造的なものであり、2003年、当時のジョージ・W・ブッシュ政権がイラク戦争を強行した時から始まっていたからだ。その後、「ヨーロッパがアメリカに防衛をただ乗りしている」と怒り、応分の負担を迫ったのはバラク・オバマ政権だ。彼はNATOの全加盟国に、2024年までに国防費をGDPの2%まで引き上げるよう約束させた。長年、外交に携わったヨーロッパの元高官は、こう語る。「アメリカとの不協和音はブッシュ時代から始まっていた。ただ、ブッシュ元大統領やオバマ前大統領は、人間としては信頼できた。トランプ大統領の問題は、人間としても信頼できないことだ」。つまり、トランプ大統領は米欧不仲の元凶ではなく、だめ押しに過ぎない。主因は寧ろ、中東等での10年以上の戦争に疲れ、世界の警察役を果たす気力と体力をアメリカが奪われていることにある。だとすれば、アジアにも当てはまる問題だ。トランプ大統領がいずれ日韓にも防衛ただ乗り批判の矛先を向けても不思議ではない。現に、トランプ大統領は先月30日の米韓首脳会談で、在韓米軍の駐留経費をもっと払うよう密かに迫ったとされる。それでも、韓国の国防費はGDPの2.6%と、主要な同盟国の中で一番高い。日本は最下位(0.9%)だ。「南シナ海問題? それは日本が何とかするだろう」。トランプ大統領は大統領就任前、周囲にこう語っていたという。この認識が改まった保証はない。仮にアメリカとの同盟に空洞が生まれても、ドイツやフランスには助け合える友好国が周りにいる。だが、核兵器を持った北朝鮮や中露に囲まれ、韓国とも不仲が続く日本には、そうした選択肢が乏しい。ならば、ヨーロッパの苦悩は日本にとってこそ、より切実だ。 (本社コメンテーター 秋田浩之)


⦿日本経済新聞 2017年7月7日付掲載⦿

テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

【有機EL&半導体バブル】(08) メモリーバブルは続き、大型M&Aも相次ぐ

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世界半導体産業の景気指標であるフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は、今年3月、16年半ぶりに1000を突破して、愈々2000年来のバブルの様相を見せている。2016年後半からメモリー半導体の需給が急に逼迫し、読み書きが高速で行えるが電源を切ると情報は消えてしまうDRAM、読み書きは遅いが電源を切っても情報が消えないNANDフラッシュメモリー共に、価格が高騰し続けているからだ。本誌2016年10月25日号でも触れているように、データセンターのサーバーで、記憶装置がハードディスク(HDD)からNANDへ急速に移行している。一方で、主力のスマートフォン市場では、2017年1~3月期は前期比23%も売り上げが落ちた(※『トレンドフォース』調べ)。パソコン(PC)も2.4%下落した(※『ガートナー』調べ)。これら民生用がマイナス成長だったにも拘わらず、メモリー半導体は需給が逼迫している。PCについては、台数は減っているにも拘わらず、動作の高速化が求められ、HDDからフラッシュメモリーへの置き換えが急速に進んでいる。また、スマホは1台当たりのDRAM・NAND搭載量は共に急増している。今秋発売予定の『Apple』の新型iPhoneには、ノートパソコン並みの容量のメモリーが搭載される。アメリカの半導体市場調査企業『ICインサイツ』は、今年の半導体産業成長率予測を、年初に発表した5%から、4月には11%に上方修正した。ガートナーも同様に、7.7%を12.3%に上方修正している。「メモリー逼迫は、少なくとも今年前半、或いは1年を通して続く」と判断し直した為である。直近の2017年1~3月期と2016年の世界半導体企業売上高ランキングトップ10(※右表)を見ると、メモリーバブルの勢いがわかる。首位の『インテル』は、2017年1~3月期もその座を守ったものの、2位のメモリー最大手『サムスン電子』との差は僅か4%程度とかなり接近してきた。ICインサイツは、4~6月期のサムスンの売上高がインテルを追い抜き、史上初めて念願のトップに躍り出る可能性を予測している。『SKハイニックス』や『マイクロン』も2016年から順位を2つずつ上げる等、メモリーメーカーの好調さが目立つ。

一方、スマホ用のロジック(演算・制御用)半導体メーカーは苦戦している。中国向けスマホ用プロセッサーに強い台湾の『メディアテック』の2017年1~3月期の売上高が、前期比18%も落ち、ランク外となった。スマホ用アプリケーションプロセッサー(※ホームページ閲覧や検索を始め、様々なアプリ処理を担うマイクロプロセッサー)最大手の『クアルコム』も、順位を3つ下げて6位に留まっている。メモリーバブルを横目に、アメリカ勢は新たな策に出ている。成長の鈍ったPCやスマホ分野から脱皮し、今後成長の見込めるIoT(モノのインターネット化)・自動車・データセンター・AI(人工知能)分野へ迅速にシフトする為の大型M&Aに打って出ているのだ。相次ぐM&Aは、生き残りをかけた自己変革と捉えることができる。インテルは今年3月、先進運転支援システム、その為の画像処理用半導体チップを供給する『モービルアイ』を153億ドル(約1兆7000億円)で買収すると発表した。PC全盛時代に我が世の春を謳歌してきたジャイアントのインテルでさえ、モバイル時代には散々な思いをした。PCで培われた思想で、伝統的に低消費電力化より高速高性能化を優先する社風が災いしたからだ。その後、IoT時代を見据えて、データセンターの高速高性能サーバー向けプロセッサーを新たな事業の柱にして、既にシェア9割を握るに至った。しかし、その牙城である筈のデータセンター分野には、クアルコムや『アドバンストマイクロデバイセズ(AMD)』、更にはイギリスの『ARM』陣営も参入し、追い上げている。インテルもうかうかしていられない。モービルアイの買収は、車載ビジネスを逸早く次の事業の柱にする為の戦略だ。車載半導体を供給するには、数年かけて安全性や耐久性の認証を受ける必要がある。インテルは、モービルアイが築いてきた自動車関連機器メーカーとの密接な関係も利用でき、車載半導体の参入が容易になる。世界最大のファブレス(※製造設備を持たないメーカー)で、スマホ用アプリケーションプロセッサーの雄であるクアルコムが、半導体史上最高額の470億ドル(約5兆円)でオランダの『NXPセミコンダクターズ』を買収するのも、伸びが鈍化してきたスマホ向けから、車載・IoT向けへと舵を切る為の自己変革と言える。メモリーバブルは必ず弾ける。時期を巡っては見解が分かれている。しかし、バブルの始まりを誰も予測し得なかったように、需給の駆け引きや技術革新等、様々な要因が絡み合う複雑な環境では、終わりも予測し難い。昨年は全ての調査会社が半導体マイナス成長を予測していたが、後半からメモリー需要急増でプラス成長に転じたのだ。新型iPhoneの売り上げによっても、メモリー需要は変動するだろう。需給バランスなど無視した中国の巨大半導体工場建設計画では、2019年のメモリー量産開始を目指しているようだが、実現すれば、液晶ディスプレイ同様、供給過剰は必至だ。但し、バブル崩壊は産業衰退を意味しない。世界半導体市場規模の推移を見ると、需給変動による半導体景況感の大きな波を乗り越えて、マクロに見れば大きく成長しているのだ。今世紀に入り、半導体市場規模は倍増している。半導体を衰退産業にしてしまったのは日本企業だけだ。今はメモリーばかりに目が行きがちだが、半導体はIoT・自動運転・ロボット・AI等、今後成長が期待される分野の中核エンジンとして未来を開く知識創造型産業である。半導体産業の本当の勝負はこれからだ。激しい時代の変化に備えた足場を今のうちから築き、新たなメガトレンドに乗って、大きなチャンスを掴めた者だけが勝ち残るだろう。 (『服部コンサルティングインターナショナル』代表 服部毅)


キャプチャ  2017年6月13日号掲載

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
ジャンル : ニュース

【Global Economy】(50) 進まぬ財政再建論議…“言い訳探し”脱却の時

日本の財政再建を巡る議論が停滞している。“増税棚上げ”を勧めるアメリカの経済学者の理論が注目され、政府の財政再建目標は達成が難しくなっているが、先送りが許される時間は残り少ない。 (本紙編集委員 佐々木達也)

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“ワニの口”(※グラフ①)――。国の歳出と税収をグラフにしたものをこう呼ぶ。開いた口の部分を埋める為に発行されるのが、国の借金となる国債だ。国と地方を合わせた借金(長期債務)の残高は、既に1000兆円を超える。にも拘わらず、財政への危機感は高まらない。その中で、ある経済理論に注目が集まった。「(デフレ脱却には)金融政策以上に財政支出の拡大が有効だ」「『増税はしない』と宣言する必要がある」。ノーベル経済学賞の受賞者であるプリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が、今年2月、都内での講演会で持論を展開した。“シムズ理論”と呼ばれる。理論の中身を要約するとこうだ。①デフレ脱却に向けて政府が増税を否定した上で、財政支出を増やす②国民は増税に備えて貯蓄する必要が無くなる③「物価が上がる」との予測が広がり、その前にモノを買おうとして消費が増える④一時的に財政は悪化するが、物価上昇(インフレ)で税収が増え、財政再建にも繋がる――。従来、物価を左右するのは中央銀行の金融政策だと考えられてきた。しかし、シムズ教授によると、政策金利がゼロになって利下げの余地がない日本のような状況では、合わせて財政支出を拡大する必要がある。財政再建は永遠に放棄する訳ではなく、「物価上昇を実現した後で消費税率を引き上げればいい」と唱える。“劇薬”と言える理論だけに、異論も多い。先ず、増税を棚上げしたとしても、「物価が上がる」と国民が考えるかどうか。既に、『日本銀行』が2%のインフレ目標を掲げ、異次元の金融緩和に踏み出したが、目標を達成できていない。

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1990年代に大規模な財政出動が何度も行われながら、日本経済の低迷は続いた。一時的に増税が棚上げされても、財政の危機的状況を知る国民が、将来不安も棚上げして消費にお金を回す保証はない。インフレになれば、実質的に国の借金を減らす効果を齎すが、副作用に注意が必要だ。「物価が2倍になると名目の税収も2倍に増える」と想定される一方、借金額は変わらず、実質半分の負担で返済できる。ただ、国民が持つ預貯金等は価値が大幅に下がる。インフレが止まらなくなれば、国民生活は困窮する。それでも、金融政策の限界が指摘され、デフレ克服策に手詰まり感が漂う日本にとって、シムズ理論は都合のいい理論となり得る。2019年10月の消費税率引き上げは、景気状況を見て慎重に判断する必要があるが、経済学者の中には「消費増税を再延期する際に、シムズ理論が根拠として使われるのではないか?」と勘繰る向きもある。「2020年度に基礎的財政収支を黒字化する」という政府の財政再建目標も危うい。先月、内閣府が発表した試算では、名目成長率が3%前後になる楽観的な“経済再生ケース”でも、2020年度に8.2兆円の赤字が残る。消費税率は10%が前提だ。政府は目標を撤回していないが、6月に閣議決定された『経済財政運営と改革の基本方針』に、“債務残高の対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げ”との目標が加わった。確かに、世界では財政状況を示す指標として、債務残高のGDP比が一般的だ。日本は突出して高い(※グラフ②)。内閣府の試算では、“経済再生ケース”で2016年度の190%から、2025年度に163%に下がる(※グラフ③)。財政出動でGDPを増やせば比率が下がる為、経済界からは「『GDPを増やせば借金をしてもいい』という言い訳に使われる」との声が聞かれる。勿論、財政再建には経済成長が欠かせず、経済の実力を示す潜在成長率を引き上げる為に、必要な歳出は惜しむべきではない。ただ、無駄な支出の拡大を防ぐ意味で、基礎的財政収支の黒学化も重要になる。

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【労基署ショックが日本を襲う】第2部(08) 前科者『ゼンショー』・『ワタミ』の試行錯誤

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「人手? 足りている訳ないじゃないですか。新人は入っても直ぐ辞めていくし、シフト通りに帰れたことなんてないですよ」。都内のとあるチェーン店に勤めるアルバイト店員は、諦め顔でそう愚痴をこぼす。「でも、どこもそんなもんじゃないですか」。人手不足が叫ばれて久しい外食産業。『ロイヤルホスト』や『すかいらーく』等が24時間営業の廃止に追い込まれる等、あまりにも人が集まらない状況に、遂に企業は音を上げ始めている。しかし、外食産業の“ブラック化”は今に始まったことではない。本を糺せば、労働者を“食い物”にすることで急成長した外食産業自身が、その竹箆返しを食らっているに過ぎない。2014年、牛丼チェーンの『すき家』は突如として、大量の一時閉店を余儀なくされた。理由はアルバイトの大量離職による人手不足だ。深夜のワンオペレーション(1人勤務シフト)や、社員の残業時間が月100時間を超えるような過重労働が常態化する中、手間のかかる新メニュー投入がとどめを刺した。遂にスタッフたちの我慢の限界を超えた。働き手がいなくなったすき家では、全国約2000店舗の内、最大250店舗で営業を一時取り止める羽目になった。時を同じくして、居酒屋チェーンの『和民』も、人手不足を原因に60もの店舗が閉店に追い込まれた。和民といえば、2008年に女性従業員が過労自殺したことが、当時、社会問題に。この問題を軽視するような創業者の渡邉美樹氏の発言もあり、和民は多くの批判に曝された。結果、“ブラック企業”の代名詞にもなったほどだ。労働者を酷使することで人件費を圧縮し、客単価よりも客数を重視する薄利多売路線を邁進。競合とは利益なき価格競争を続けた結果、自ずと外食業界にはブラック企業のレッテルが貼られることになった。

その代償として、一向に人手が集まらない現在の歪みを生んだ。デフレの雄と呼ばれた嘗ての外食チェーンの勇姿は見る影もなく、ビジネスモデル崩壊の危機に直面している。勿論、こうした現状に手を拱いているだけではない。すき家を運営する『ゼンショーホールディングス』は、過酷な勤務実態を詳らかにした第三者委員会の報告を受けて、抜本的な労務管理体制の見直しを行った。それまで1つだったすき家を地域毎に7社に分社化し、各分社の社長と労務担当の管理部長、組合代表を含めた時間管理委員会を組織した。時間管理委員会では、毎月半ばに、それまでの推移から、労働時間が長くなりそうな社員とその上司にヒアリングを実施している。その原因を話し合い、対策を施すことで、長時間労働を抑制する仕組みだ。実際、ピーク時には月100時間を超えていた社員の平均残業時間が、足元では同40時間前後まで激減し、2014年以降、1200以上の店舗で取り止めていた深夜営業も、管理体制の構築に伴って、既に9割の店舗で再開している。すかいらーくでは、2011年に『べインキャピタル』の傘下に入って以降、人事改革が加速。昨年10月には、それまで形骸化していた変形労働時間制の運用を変え、4~12時間の間で労働時間を変更できる新たな仕組みを導入した。「1年にも亘る労使の交渉の中で、インターバル規制等の対策も盛り込んだ。個人の実態に合わせて働き方の選択肢を増やすことで、従業員にとって働き易い環境を作った」(同社人財本部デピュティーマネージングディレクターの西山浩蔵氏)。しかし、各社の試行錯誤は続く一方、“人手不足”という根本は変わらない。すき家のある従業員からは、「深夜のワンオペは無くなったが、 午後の時間帯のワンオペは続いている。客が少なくても雑務は多く、辛いのは変わらない」という不満も漏れる。「“名ばかり店長”が復活するのではないか。そこが一番心配だ」。ある労働基準監督官は、そう警戒する。実際の権限が無いのにも拘わらず、管理職扱いされて残業代が支給されない名ばかり店長。残業時間の上限規制が導入されようとする中、「時間規制を逃れる為に名ばかり店長が復活するのでは?」というのだ。正攻法の人材確保が難しい以上、こうした“抜け道”を探る動きに、労基署は目を光らせる。同様に、社員をオーナーとして独立させることで、時間規制の対象外にするようなフランチャイズ化の手法にも注意を向ける。独立支援自体は従業員のキャリアプランにとって望ましい側面を持つ一方で、「フリーランスへの業務委託と同様に、人件費圧縮や労働の強制化のツールとして悪用されれば、大きな問題となる」と、ある労働関係に詳しい弁護士は指摘する。しかし、いずれも導入にはトラブルが付き纏う上、人手不足解消の決定打とはならず、企業は八方塞がりの状況だ。「最も単純な方法は、値上げして十分な人件費を確保することだ」とあるアナリストは言うが、企業規模が小さく、競争も激しい外食産業で、直接的な客数減に繋がる値上げは禁じ手に近い。「植上げに踏み切れる企業は稀だ」(同)。薄利多売と人材枯渇のダブルパンチが、外食チェーン淘汰の引き金を引こうとしている――。


キャプチャ  2017年5月27日号掲載

テーマ : 働き方
ジャンル : 就職・お仕事

【働き方改革の表と裏】(02) 残業100時間で書類送検、10年前より給料が減少した『HIS』

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6月14日、厚生労働省東京労働局は、旅行会社大手『エイチアイエス(HIS)』を“違法な長時間労働”を行った労働基準法違反の容疑で、東京地方検察庁に書類送検した。捜査を担ったのは過重労働撲滅特別対策班(※通称“かとく”)だ。容疑は、2015年6~9月、団体営業を担当する40代女性、店頭で接客を行う20代女性(※いずれも当時)に、労使協定(※繁忙期で月最大72時間)を超える100時間前後の残業をさせていたというもの。グループ代表の澤田秀雄社長兼会長の他、現場の労務管理担当者2人を書類送検した。かとくが間題視したのは、「違法な残業を許す風土があったこと」(統括特別司法監督官の戸谷和彦氏)。少なくとも、2010~2014年度の5年間で十数回の是正勧告を受けたが、改善が見られなかった。HISは同日夜に声明を発表。今年3月以降、社長を委員長とするプロジェクトを立ち上げ、労働時間管理の徹底や業務効率の見直しで、「現状では労務管理上の違法状態は解消した」としている。

HISは2012年に半休制度を導入。店舗の営業時間の短縮も進めてきた。2004~2011年に月40時間程度だった平均残業時間は30時間台前半まで減少したが、2015年には再び38時間に増えている。社内調査では、「働き甲斐がある」と回答した比率が、2010年度の63%から年々下がり、2016年度は50%になっている。嘗て、「若手女性社員は殆ど店頭の接客要員。3年でほぼ全員が入れ替わった」(元社員)。現在、3年内離職率は推計で男性が3割弱、女性が4割弱にまで改善した。ただ、2015年の平均年齢は34歳と、10年前に比べて5歳以上上がったが、年収は逆に443万円と20万円以上も下がっている。毎年500人以上を採用するHISは、今年も大量の新卒採用を計画している。労働環境の改善を明確に示せなければ、人材確保はこれまで以上に困難になるだろう。尤も、旅行会社の労働環境は他社も似たり寄ったりだ。嘗て、『JTB』では2011年に団体旅行の担当者が月間250時間超の残業を苦に自殺したこともある。別の旅行会社に勤めていた30代の女性は、「もう、この業界では働きたくない」と話す。旅行の専門学校を経て3年半勤めたが、日中は店頭での接客、閉店後は書類の発行や発送業務に追われる日々。朝8時に店舗に出社し、退社は22時過ぎ。それでも給料は手取り20万円に届かない。「安いツアーだけが売れ、ホテル・旅館・バスの運転手も安い給料に抑えられてしまう」。負のスパイラルから抜け出す術はあるのか――。 (取材・文/本誌 松浦大)


キャプチャ  2017年7月1日号掲載

テーマ : 働き方
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【ここがヘンだよ日本の薬局】(14) 薬局とドラッグストアの違いは何か?

薬局で日用品を売っていることもあれば、ドラッグストアで薬を貰うこともできる。両者の明確な違いはどこにあるのか? どうやら、将来的な優位性はドラッグストアにあるようで…。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

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私たちが街を歩いていると、薬品を扱う様々な店舗を目にすることがある。調剤薬局や薬局店、また最近では調剤を行うドラッグストアも増えてきた。しかし、消費者や患者にとっては、その違いがわかり難い。抑々、医薬品・医薬部外品・化粧品といった人体に影響を及ぼしかねない製品の開発・製造・流通・販売は、薬事法で規定されている。処方薬やOTC薬(一般医薬品)を扱う薬局も同様だ。薬事法では、薬局は次のように定義されている。「薬剤師が販売もしくは授与の目的で調剤の業務を行う場所」。薬局を開設しようとする時には、薬事法で規定する構造設備や人的要件を満たした上で、都道府県に申請をしなければならない。因みに、“調剤薬局”という名称は薬事法には無い。厚生労働省の通知には一部言及したものもあるが、法律的には単に薬局である。また、ドラッグストアの許可も薬事法に基づいている。医薬品販売を行う店舗には、調剤機能の有無により、“薬局”と“店舗販売業”の2種類に分けられる。ドラッグストアを開設する際にも、薬事法上の許可は“薬局”ないし“店舗販売業”のいずれかで申請することになる。余談だが、“ドラッグストア”という名称は法的に位置付けられたものではなく、流通用語だ。但し、統計法に基づく日本標準産業分類の改訂(2007年)で、ドラッグストアは単独の業態として認められてはいる。

ところで、薬局とドラッグストアはどこが違うのか? 前述したように、薬局の定義は調剤を行う場所である。薬剤師が常駐し、薬を調剤する調剤室が併設されていなければならない。更に薬局では、医師の処方箋に基づいて薬を調剤する“医療用医薬品”と、一般医薬品である“OTC薬”の双方を取り扱うことができる。それに対して、ドラッグストアではOTC薬を取り扱うことはできるが、薬剤師の常駐や調剤室が無い場合は医療用医薬品を扱うことはできない。ただ、現在ではドラッグストアにも薬剤師を常駐させる店が増えてきた。調剤機能の併設は、調剤報酬を得られるのみならず、薬剤師が専門知識を生かした健康指導を客に行うことにより、健康食品等の販売にも繋がるからだ。業界内では「調剤を入れたドラッグストアは、従来よりも売上が平均2割は伸びる」という声もあり、今後も調剤機能を備えたドラッグストアは増えることが予想される。そんな調剤機能を備えたドラッグストア増加の追い風になりそうなのが、“健康サポート薬局構想”だ。地域包括ケアやセルフメディケーション推進の一環として、厚生労働省が2017年度からの実施を日指しているプランだ。その基本コンセプトは、「薬局の薬剤師が健康相談に応じながら医薬品や健康食品、食生活、運動、在宅医療、介護といった健康情報を幅広く提供すること」にある。つまりは、薬局の薬剤師を調剤業務ではなく、国民の健康管理の担い手として活用しようということだ。勿論、健康サポート薬局の認定には厳しい条件の設定が予想されている。2016年9月に公表された検討会の報告書では、次のような条件が示された。

①かかりつけの薬剤師が存在し、薬局の基本機能を備えていること。
②24時間対応、在宅対応の体制が整備されていること。
③地域の医療機関との連携が図れること。
④利用者が適切に選択できるだけの一般用医療品を置き、助言の体制を有していること。
⑤要指導医薬品・衛生材料・介護用品な等について相談し易い環境を作ること。

この中で、中小薬局にとって最も厳しいのは“24時間対応”だろう。となれば、資金力やマンパワーに勝る大手のドラッグストアが、健康サポート薬局の主役に躍り出る可能性が高い。厚労省は、現在5万7000店舗もあり、その7割が門前の調剤薬局を半数にまで削減して、2025年までに健康サポート楽局を1万ヵ所設ける計画を明らかにしている。近い将来、調剤機能を備えたドラッグストアが、健康サポート薬局として増加していくことが予想される。


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【東京五輪後の地方経済を読み解く】(12) リニア新幹線融資計画の3兆円を何故北海道経済の救済に回さないのか?

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2016年10月、2016年度の第2次補正予算(※総額3兆2869億円)が参議院本会議で可決・成立した。同補正予算は、8月に閣議決定した事業規模28兆円超の経済対策の一環。この経済対策には「リニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しするため」との理由で、『JR東海』に対してゼロ金利に近い超優遇金利での3兆円融資が盛り込まれている。政府はこれまでも、JR東海に対しては土地を取得する際の税金をゼロにすることを決定する等、リニア建設に関する優遇政策を進めてきた。リニアに詳しい全国紙記者のA氏は、「3兆円融資は意味不明」「国会で徹底的に議論するべき」と語る。「これまでJR東海は、『自力でリニア整備をする』と啖呵を切り、政治家が口を挟むのを嫌っていたのに、突然、融資が決まりました。JR東海内部では、『安倍晋三首相と懇意の葛西敬之代表取締役名誉会長との関係が背景にある」と囁かれています。安倍首相にとっては、莫大なキャッシュフローを誇る超優良企業のJR東海に融資するなら、焦げつく心配もなく、景気対策の“見た目”の金額を膨らますことができます。安倍首相の所信表明演説では、リニア中央新幹線への融資が『地方創生回廊になる』と言ったのですが、東京と名古屋と大阪の3大都市が便利になるリニアは、“地方創生”とは真逆の巨大プロジェクトです」。JR東海は「リニアで東京と大阪間の飛行機の需要は貰う」と鼻息が荒いが、航空会社の東京-大阪のドル箱路線が激減すれば、『全日空』や『日本航空』の経営に影響が出てくる。また、「今世紀中に南海トラフ地震が起こり、東海道新幹線が被害を受ける可能性は十分にある」と予測されているが、「その場合にリニア整備を進める余力がJR東海にあるのか?」と専門家は疑問提示している。「東海道新幹線のバイパス機能を果たす為にリニア中央新幹線が必要」という推進論もあるが、政権が掲げる国土強靭化と矛盾する。新しいタイプのリニア中央新幹線ではなくて、東海道新幹線と同じ車両を使う普通の“中央新幹線”であれば、新幹線車両を直ぐに回すことができるからだ。

更に、リニア中央新幹線ができると既存の東海道新幹線の本数は減るので、岡山駅や広島駅等中国地方で山陽新幹線を利用している人は、新大阪や名古屋で乗り換える必要が生じ、不便になる。しかも、リニアは京都を通らないので、日本を代表する観光地へのアクセスが悪くなってしまう。南アルプスの自然破壊、脆弱な地盤、不十分な住民合意等、問題が山積しており、こうした懸念についての十分な検証も国会審議もなされてもいないのだ。ドル箱路線の東海道新幹線を抱えるJR東海とは対照的に、『JR北海道』の赤字は年間約500億円。最早、自力での経営改善を断念する寸前にまで追い込まれている。「JR北海道は、『もう自力では再建できない』という“万歳宣言”を出そうとしています。北海道は人口減少に陥っていて、運賃収入が増える見込みはありません。JR北海道が経営危機に陥った一因は、道内で鉄道と並行する高速道路が整備されていき、しかも他地域に比べて無料区間が多いことがあります。高速道路を無料で走る車との競争に負けたのです。その結果、JR北海道は鉄道の維持管理費すら十分に捻出できずに繰ろうして、整備不足から事故が相次ぐことになり、それが更なる鉄道離れを招く悪循環に陥ってしまったのです」(A氏)。景気浮揚や政治的点数稼ぎも兼ねて、日本中に張り巡らされた道路網に敗北し、赤字規模は年間約500億円、10年間で約5000億円だ。2016年に株式上場した『JR九州』と比較すれば、「経営の理念が足りなかった」と批判したくもなるが、ここでは地域特性の違いに目を向けたい。JR九州は、分割民営化時の予想に反して、本州3社に続く4社目の上場を果たした。何故、JR九州とJR北海道で明暗を分けることになったのか? 地元記者はこう解説する。「不動産や流通の“副業”(※鉄道事業以外の収入)が急増した為です。JR博多駅の駅ビル等、駅前の不動産を活用した商業施設や賃貸用物件を運営、学童保育を始め、ドラッグストア・居酒屋・青果業にまで進出、多角経営化を図っている」。数字にもハッキリ表れていた。JR九州の収益は、鉄道部門の本業が全体の約4割であるのに対し、不動産と流通を合わせた副業でも約4割と肩を並べている(※2017年3月期予想)。『JR東日本』・『JR西日本』・JR東海の本業比率が6割以上であるのとは、大きな違いがあるのだ。JR九州が経営改善を進めていく中で特に注目されたのが、豪華観光列車『ななつ星』だ。博多を出発して、由布院等九州の主要観光地を巡って鹿児島に到着するのだが、価格が3泊4日で1人100万円以上でも予約が殺到するほどの人気なのだ。「乗客が圧倒的な西日本・東海・東日本は兎も角、九州も運輸事業の営業利益はずっと100億円以上の赤字です。但し、唐池恒二氏という“指宿のたまて箱”やななつ星等観光列車を生み出した地味ながらも傑物の経営者がいました。特急“ゆふいんの森”やSL快速“あそBOY”等のリゾート列車、博多-釜山間の高速船“ビートル”の企画も唐池氏が手がけ、会長に上り詰めます。こうした競争の背景には、永遠のライバルである西鉄の存在があります。今やはほ同じ業態内容(※鉄道・スーパーマーケットの流通・マンション建設等)で競い合っています」。

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【徹底解剖!東京都庁】(12) 都庁一の有名職員・黒田慶樹さんの昇進にみる“都庁魂”

秋篠宮さまとは学習院時代からのご学友であり、今上天皇の内親王“サーヤ”と結婚した都庁マンの黒田慶樹氏。あくまで目立たず、地道にコツコツと生きるその“都庁マン魂”は、同僚たちにも高く評価されているという。 (取材・文/本誌編集部)

20170821 06
16万人以上の職員を抱える都庁出身者には、知る人ぞ知る“有名人”が数多くいる。昭和の時代、先ず有名人として名の通っていたのは、女優・吉永小百合の実の姉である片岡玲子さん(※一般社団法人『東京臨床心理士会』副会長)だった。1962年に東京教育大学(※現在の筑波大学)教育学部心理学科を卒業後、都庁に入り、民生局を皮切りに『練馬児童学園』園長や品川区厚生課長等を務め、東京都教育庁体育部給食課長に昇進。「当時は職員が7万人ほどの時代でしたが、女性課長がたった223人しかいない中で本庁課長にまで出世。その後、東京都児童会館長という福祉保健局の重要ポストを最後に退職し、城西国際大学や立正大学教授等を歴任した」(当時を知る都庁OB)。片岡さんが都庁に入った1962年といえば、妹の小百合は高校在学中。そして、この年に映画『キューポラのある街』(日活)で主演。ブルーリボン賞主演女優賞を受賞し、国民的アイドルとなっていた頃だから、その姉が堂々入都となれば、都庁も大騒ぎだったに違いない。また、作家の童門冬二は企画関係部長や広報室長を務め、美濃部都政の“スピーチライター”として活躍した幹部だったことで知られる。現在の若き夕張市長・鈴木直道氏も、高卒で都庁に就職した元都庁マンだ。では今、“都庁の有名人”と言って最も多く名前の出る人物は誰か? それは恐らく、“サーヤ”こと今上天皇の第一皇女・清子内親王と結婚した都庁港湾局総務部団体調整担当の黒田慶樹課長だろう。「2004年の婚約発表時には大フィーバーでしたが、今も堅実に都庁に勤務しています」と週刊誌記者が語る。

「黒田氏は管理職選考に合格し、今から8年前の2009年に課長に昇進。上手くいけばもうすぐ部長にも手が届くかという幹部コースです。このままいけば、最後は局長まで考えられるペースで、最後は皇族関係者が役職に就いている団体へ天下るというのが予定のコースとなりそうです」。都庁一の有名人でありながら、ひとつも目立ったムードを発しない、如何にも“ザ・地方公務員”という黒田氏の歩んだ略歴を、改めて振り返ってみよう。その人生は、如何にも“都庁的”である。黒田氏は1965年生まれ。父は『トヨタ自動車』に勤務するサラリーマンだった。1972年に学習院初等科に入学。ここで礼宮文仁親王(※現在の秋篠宮)さまのご学友になったことが、その後の人生を運命付けることになる。学習院大学時代にも秋篠宮さまの主宰するサークル『自然文化研究会』に所属しており、後に結婚することになる紀宮さまとは、それ以前から顔見知りだった。1988年に学習院大学法学部を卒業後、『三井銀行』(※現在の『三井住友銀行』)に就職する。しかし1996年、31歳の時に退職して都庁に転職。大手銀行から都庁への転職は中々珍しいが、その動機は「首都の都市計画に携わりたい」というものだったという。「この時、黒田さんは経験者採用で都庁に入っており、入って3年目で主任の資格を取ったことや、銀行での経験が加味され、同じ肩書きの職員よりやや格上だったことは間違いないでしょう」(同)。黒田氏は政策報道室(※当時)を振り出しに、希望する都市計画局(※現在の都市整備局)へ異動。婚約を発表した2004年当時は、都市整備局市街地建築部建設業課建設業指導係の次席(※係長級)だった。幼馴染の関係だった黒田氏と紀宮さまだったが、2003年に知人をしのぶ会で再会し、その後、交際に発展。翌年に婚約が発表される。「何しろ、皇族とのおめでたい話ですから、周囲は騒然となった。当時の石原知事にはSPが1人ついていましたが、黒田さんは“同僚”の警視庁から派遣されたSPが何と2人もついて、渋谷区のマンションまでの行き帰りは勿論、トイレに行く時ですら張り付くほどの“クロちゃんフィーバー”。黒田さん目当てに、カメラを持った一般人が都市整備局の内部をウロウロすることもあって、壁には撮影禁止の張り紙が貼られていましたが、当時の上司も『“黒田君”と呼んでいいのかな…』なんて困惑していましたよ。当時、黒田さんは39歳で、未だ係長級でしたが、入ったのが31歳ということを考えれば、普通のエリートコースと同じスピードで昇進していた。ただ、そういう事情は対外的によくわからないので、『黒田さんって40前で未だ係長なの?』みたいな声があったんです。だからわかり易く、『ここは特進させるべきでは?』という声もあったんですが、『あまり露骨にやるのも味が悪い』ということで、結局はそのままになった」(同)。

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