【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(85) 遂に単行本化を達成した本連載の制作秘話

おかげさまで、本連載は3年目に突入である。文章を書くことなど全くの素人であった筆者に、果たして週刊誌のコラムなど務まるものだろうかと、当初は正直不安だった。ところが、あっという間に連載は2年を過ぎ、遂に単行本として発売することができた。この2年間、シュールなイラストを描き続けて下さった西原理恵子さんとの交流は、『ツイッター』が始まりだった。最初、ツイッター上で筆者に声をかけてきたのは高須先生である。恐らく、西原さんは高須先生の背後で、その様子を見ていたのだろう。ほどなくして、西原さんと筆者はメールのやり取りをするようになった。筆者への最初の質問は、今でも鮮明に覚えている。それは何故か、たこ焼きの話であった。「雨の日は大変ですね」「売り上げは1日いくらくらいですか」。筆者にはよく理解できない質問ばかり。どうやら、西原さんは筆者のことを、たこ焼きを売っているテキ屋の親方と思っていたようだ。こうして、筆者と西原さんは上手く噛み合わないまま交流を始めたのである。それから間もなく、筆者は西原さんと高須先生とで食事をすることとなった。初めて会った西原さんは、私がパンチパーマでないことを非常に残念がっていた。どうしても、筆者にはテキ屋の親方でいてほしかったようである。軈て、筆者はこのコラムを連載することとなり、イラストは西原さんにお願いすることにしたのだ。売れっ子で超多忙な西原さんがイラストを引き受けてくれるかどうか心配だったが、あっさりと快諾して頂いた。

連載開始直前となり、西原さんから猫組長のキャラが送られてきた。この時のことも筆者は鮮明に覚えている。猫組長のキャラは当然、猫である。ところが、猫の頭がパンチパーマだったのだ。しかも、猫なのに何故か腹巻きまで巻いているではないか。筆者は丁重に、遠回しに不満を伝えたのだが、何せ相手は大御所だ。あっさり却下され、猫組長はパンチパーマの猫となったのである。長靴を履いた猫なら知っているが、パンチパーマの猫など考えたこともない。西原さんがイラストのネタにするのは、普段の会話や筆者のツイッターだ。何げない会話やツイートが、いつの間にか漫画になっていて驚くことも多い。日常や旅先での面白い出来事を『LINE』で送ると、西原さんは食いついてくる。山口組が発行する新聞を送ったら、翌週にはイラストになっていて慌てたこともある。未だ配布前の最新号で、山口組の組員も見ていないものだ。西原さんは、組員の詠んだ川柳コーナーが甚く気に入ったようだった。“指一本 スマホと俺を 使う妻”。見事、西原さんから岩井志麻子賞を授与された川柳である。まさか自分の詠んだ川柳が岩井志麻子賞を受賞するとは、投稿した組員も驚いたことだろう。2年の間に、新しい猫組長キャラも誕生した。JK猫組長と、こねこの組長である。JK猫組長はパンチパーマではなく、金髪をピン留めしてセーラー服だ。矢鱈に女子力が高いメス猫だ。こねこ組長は、その名の通り、猫組長の子猫時代、若かりし頃の筆者である。兎に角、西原さんとの本連載は毎回エキサイティングだ。連載をいつまで続けられるかはわからない。だが、本連載は今や筆者のライフワークになっている。2年後、単行本の続編を出せるよう頑張りたいと思っている。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2018年6月12日・19日号掲載
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【言論StrongStyle】(08) トランプ大統領の外務大臣として忠勤する安倍晋三首相



北朝鮮という猛毒を持った蜂が蠢動している。そして、この厄介な蜂をどうしたものかと、東アジアという蚊帳の中で米中露の3大国が睨み合っている。では、日本は蚊帳の外なのか? それは絶対にない。何故ならば、日本が蚊帳そのものだからである。より正確に言えば、蚊帳の一部か。韓国という蚊帳が破れた以上、アメリカは日本を虫よけの蚊帳にしているのである。だから、日本が蚊帳の外などということは絶対にない。アメリカとしては、中国・ロシア・北朝鮮、その3国に媚びる韓国への壁にしたのだろう。だが、壁にするには脆弱過ぎる。よって、日本は蚊帳なのである。我が国の安倍晋三閣下がこれでいいと考えているかどうかは知らないが、少なくとも米中露と張り合えるような大国になる道を選んでいないことだけは確かだ。抑々大国とは、“その国の意向を聞かなければ話が纏まらない国”のこと、即ち発言力のある国のことである。では、何か問題が起きた時に話し合いで解決しなければ、どうするか? 軍事力により決着をつける。大国とは結局、軍事力のある国のことであり、究極の軍事力とは核兵器のことなのである。核兵器こそが発言力の象徴なのである。これが現実だ。だから、北朝鮮は世界中から嫌われようが、核武装の道を直走ってきた。日本人は「外国から嫌われまい」と心がけるが、北朝鮮は嫌われることなど何とも思っていないのだ。こんな国を相手に、力の裏付け無しに真面な話ができる筈がない。では、日本と北朝鮮、どちらが真面な国に見えるか? 勿論、“人を殺してはならない”という価値観が通じる一点で、日本が文明国であり、北朝鮮は野蛮である。しかし、国としての合理性で考えれば北朝鮮なのである。

北朝鮮は、生き残る為には手段を選ばない。中国やロシアに対しても堂々と自己主張し、場合によっては平気で裏切る。一方で、自分の命が危ないと思えば平気で土下座もできる。これまでのアメリカと違い、ドナルド・トランプ大統領が自分たちを甘やかさないと見るや、散々盾突いてきた中国の習近平に媚びへつらう。これが北朝鮮の合理性だ。“生き残る”の一点で、ぶれない。一方で、我が国はどうか? “トランプ内閣の外務大臣”として忠勤に励む――の一点である。しかも、それでリアリストを気取っているから始末に悪い。トランプ大統領は、大統領選挙の最中から世界中から目をつけられていた。理由を一言で言えば、「第2次世界大戦後の秩序を根底から変えようとしているから」である。中国やロシアのような“人を殺してはならない”という価値観が通じない国を甘やかさないという姿勢を明確にしたが、これは現状維持を求めるヨーロッパ諸国からも反感を買った。それどころか、自国の国務省が事実上のボイコットの態度なので、外交機能は麻痺に近い。だから、トランプ大統領の友人は、世界中にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と安倍首相しかいないとも言われる。特に、インドから東を見よ。インドは核保有国で力はあるが、伝統的に反米だ。建国以来、宿敵のパキスタンにアメリカが肩入れしてきたのを、インドは忘れていない。ASEAN諸国は中国の脅威があり、アメリカを頼ってきているが、如何せん軍事力が足りない。序でに言うと、韓国は力が無い癖に信用ならない。このような状況なので、インドやASEAN諸国とアメリカを仲介している日本の安倍首相は“トランプ内閣の外務大臣”なのである。安倍外交の基軸は、「世界中から嫌われているトランプ大統領と他の国の仲介をしていれば、誰からも根みを買わない」と考えていることだ。証拠もある。トランプ氏は大統領就任前後に、「日本には対等の同盟国としての態度を求める。自分の国は自分で守ってほしい。核保有も構わない。その為には、先ず防衛費をGDP2%にする努力から始めて、行動で示してほしい」と求めてきた。ところが安倍首相は、最初の訪米でトランプ氏が世界中から嫌われていることにつけ込み、“トランプ内閣の外務大臣”として忠勤することを条件に取引した。帰国後のNHKのインタビューでは、自主防衛や核武装は“終わった話”と切って捨てた。

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テーマ : 安倍晋三
ジャンル : 政治・経済

拉致問題対策本部“1億円予算”も北朝鮮のインターネット工作に無策

20180619 07
アメリカのドナルド・トランプ大統領は先月18日、安倍首相との共同記者会見で「拉致被害者救出に全力を尽くす」と明言した。日本も全力で拉致解決に臨まなければならないが、拉致対(※拉致問題対策本部)は重い腰を上げようとしない。アメリカでも漸く日本の拉致問題が周知されてきたが、一方で北朝鮮によるインターネット工作も激増している。その1つが、アメリカの『ヤフー』で“Megumi Yokota”と検索すると、“1994年3月13日に死亡”というデマが冒頭に表示される問題だ。これを見つけた関係者が拉致対を訪れ、ヤフーに削除させるよう求めたが、彼らは動かなかった。拉致対の予算には、国際世論を喚起する等の目的で、毎年1億円前後の“啓発費用”が計上されている。その予算で海外メディアを招き、拉致に関する記事を書かせているというが、これでは北朝鮮の思うツボではないか。


キャプチャ  2018年5月号掲載

テーマ : 拉致問題
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『カルビー』の会長を退いた後も大人気…気になる松本晃氏の今後

20180619 06
2009年に創業家の松尾雅彦氏に請われ、『カルビー』会長兼CEOに就任した松本晃氏(70・左画像)。以来、9期連続増収増益を実現し、2011年に東証1部に上場させた大立者だが、今年6月で退くと突然の記者会見を行なった。松本氏は京都大学農学部修士課程卒業、1972年に『伊藤忠商事』に入社。『ジョンソンエンドジョンソン日本法人』社長を経て、カルビー社外取締役に。そして社長に就くや、徹底したコスト管理、社員の意識改革、女性社員の積極登用、健康ブームに目をつけたシリアル食品『フルグラ』のブランド強化等を次々と断行。グループ連結年商額をほぼ倍にし、利益率も11%以上と強靭な企業体質に変えた。但し、創業家の引き留めにも拘わらず辞めるのは、「最早、経営ノウハウのカードが無くなったからではないか」(全国紙経済部記者)という見方もある。後継指名もしなかった為、伊藤秀二社長兼COO(61)が引き継ぐ形になる。松本氏の元には早くも数社からオファーが届いているというが、数年前から医療分野に強い関心を持っており、幾つかの公職にも就いている。その為、暫くは理事長を務めるNPO法人『日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会』の活動に力を入れていくと見られる。


キャプチャ  2018年5月号掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

『コマツ』後継候補に黒本和憲氏…好調な大橋路線を継承か?

20180619 05
この4月で就任から丸5年が経過した『コマツ』の大橋徹二社長。その後継候補の名前が浮上してきた。2018年3月期の連結純利益(※アメリカ会計基準)は前期比40%増の1590億円と、減益予想から一転して大幅増益となる見通し。純利益は4年ぶりの水準に戻る。「全ての国で建機販売は前年比でプラスになる」(同社幹部)のは、大橋氏が市況の変動に耐え得る基盤を作り上げた結果だ。世界のライバル企業が犇めく先進国市場と比べ、コマツブランドが効く新興国市場で価格競争力を保ち、中国の他、インドネシア等の市場で安定した業績を上げてきた。また、鉱山機械事業も強化。アメリカの『ジョイグローバル』を買収し、今は『コマツマイニング』として早くも収益に貢献し始めた。後継候補は、「大橋路線を着実に引き継げる人物」(同)とされる。筆頭候補は黒本和憲専務執行役員(62・右画像)。主力の建機事業のマーケティングや、力を入れるICT、更にはジョイ社の買収等も手がけた。「まさにコマツの保守本流で、しかも技術に強い」(同)。建機の稼働状況や工事現場の状況を建設会社や運搬業者等に繋ぐIoT技術や、AIを駆使した無人建機等の開発にも陣頭指揮を執る。年齢は大橋社長の1つ下と大幅な若返りにはならないが、このまま業績を維持すれば交代の日も近い。


キャプチャ  2018年5月号掲載

テーマ : 経済ニュース
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誰が何と言おうと明治維新は正しかった――日本の植民地化を狙った欧米を排除、エビデンス無き“反薩長史観”を斬る!





20180619 03
今年9月、慶応から明治へ改元されてから150年となる。政府は「明治の精神に学びたい」として、祝賀行事を予定している。またNHKでも、維新三傑の1人とされる西郷隆盛を主人公とした大河ドラマ『西郷どん』が放送されており、日本中が“明治150年”で盛り上がっているが、これに水を差そうとしているのが“明治維新過ち論”であり、“反薩長史観”なるものである。原田伊織氏の著書『明治維新という過ち』(毎日ワンズ)や、本誌2月号に武田鏡村氏が書いた「薩長の明治維新が日本を誤らせた」等である。論者による多少の違いはあるが、「明治維新とは、薩摩や長州がテロや殺戮等によりクーデターを起こし、天皇の名の下にそれを正当化させたもので、不当だ」という趣旨のようだ。筆者も、維新が綺麗事だけで成就したとは決して考えない。明治時代を通じ、薩摩閥や長州閥が弊害を齎したことがあることも認める。しかし、維新の最大の目的であり、果実でもあった“欧米列強に対抗できる中央集権国家”樹立への評価を抜きにして、その過程のみを批判し、貶めることは、日本人として看過できない。何点か反論したい。先ず、王政復古の見方である。慶応3(1867)年12月、岩倉具視ら革新派公家や大久保利通・木戸孝允ら薩長の指導者たちは、明治天皇の名による『王政復古の大号令』で新政権樹立を宣言すると共に、大政奉還を申し出ている将軍の徳川慶喜に、官位と領地の返上(※辞官納地)を命じた。狭義の意味での明治維新だが、「これは、武力を背景に薩長と朝廷が強引に幕府から権力を奪ったクーデターである」というのが反薩長史観派の主張である。

だが、この大号令を仔細に読めば、①摂政・関白という朝廷の機関と幕府を廃絶して新たな政治機関を設ける②神武創業の始めに基づいて高官・武人・身分の上下に区別なく公務に尽くせ――の2つに力点が置かれていることがわかる。“神武創業”とは、初代神武天皇による建国である。つまり、「公家政治でも武家政治でもない、全く新しい政治を始める」と呼びかけているのであり、新建国宣言だ。ペリー来航以来、「この国難を乗り切る為には、中央集権国家の樹立、つまり挙国一致政権しかない」というのが、狂信的暗殺者たちを除く当時のリーダーたちに共通した認識だった。特に文久3(1863)年、共に単独で西欧諸国と戦って敗れた薩摩や長州には、その意識が強かった。その有力なアイディアの1つが、将軍家や雄藩等武家と朝廷が一体となる公武合体論だった。徳川慶喜による大政奉還もその延長上にあり、慶喜は天皇の権威の下に、徳川家を議長とする諸大名の議会を作る意向だった。この為、反薩長史観論者は「平和裏に政権移譲が行なわれたのに、薩長がこれをブチ壊した」と批判する。だが実は、この公武合体政権の試みは既に一度失敗していた。元治元(1864)年2月、京都で『元治国見会議』が開かれた。孝明天皇も臨席、近衛忠房ら朝廷首脳部、それに将軍着任前の一橋慶喜、松平春獄ら有力諸侯が集まり、今後の政治の在り方や外交方針を話し合った。だが、何ひとつ決めることはできず、抜きん出たリーダーも現れなかった。これを見た岩倉や大久保らは、「公武体では挙国一致はならない」と判断。将軍も諸侯も朝廷首脳も排除した創業――主政復古に踏み切ったのだ。つまり、目的はあくまで中央集権国家の樹立であり、王政復古はそのひとつの過程だった。だから、新政府は「これでは不十分だ」として、明治4年には武士たちに自己犠牲を強いる廃藩置県にまで踏み込んだのだ。維新を単なる権力争いとすることが如何に浅薄な見方かがわかるだろう。因みに、王政復古の大号令では当初、公家たちの間から「神武創業ではなく、一時的に天皇親政を実現した“建武の中興”に倣うべきだ」との意見もあったが、「小せぇ小せぇ」とばかり却下された。そこには親政ではなく、“立憲君主制”の萌芽とも言えるものがあった。だから、王政復古は“時代錯誤”で、“天皇を現人神として崇める思想を強要する”ようなものでは決してなかった。次に、「武力を背景に天皇を利用した」という批判である。確かに、王政復古の大号令や廃藩置県の布告は、薩摩や土佐の兵士や御親兵が厳重に警備する中で行なわれた。戊辰戦争では新政府側が“錦の御旗”を掲げていた。しかし、大将である徳川慶喜が“恭順”の意を示し、事実上新政府を認めた以上、旧幕府軍は抵抗勢力でしかなかった。政府軍が抵抗勢力を抑え込もうとするのは当然だった。抑々、武力による権力奪取が不法というのなら、平家を討った源氏の鎌倉政権や、大阪で豊臣政権を壊滅にまで追い込んだ徳川政権の存立基盤はどうなるのか? 彼らも軍事力で政敵を破ると共に、天皇の権威を借りる形で政権を得た。それに比べれば、明治維新はまだまだ平穏に行なわれたと言ってもいい。

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テーマ : 歴史
ジャンル : 政治・経済

薩長の明治維新が日本を誤らせた――“薩長史観”は真っ赤な嘘! 吉田松陰・西郷隆盛・勝海舟の大罪





20180619 02
薩長史観とは何か? それは、明治維新で薩摩や長州が行なった様々なテロ・殺戮・強奪・強姦等の犯罪行為を、絶対的天皇主義の下で正当化する史観のことである。今年、安倍政権は明治維新150年を記念して盛大な事業を行なおうとしている。菅義偉官房長官は「大きな節目で、明治の精神に学び、日本の強みを再認識することは重要だ」と語っているが、果たして明治維新の精神は真から礼賛に値するものなのであろうか? 明治維新は、薩摩の西郷隆盛や大久保利通、長州の木戸孝充らの徳川幕府を倒した英雄的な活躍ばかりに目が向けられている。だが、彼らは国内を二分する無益な戊辰戦争を強引に引き起こして、日本の国土を血に染めたのである。“無益な国内戦争”と言ったのは、既に無血の政権移行が行なわれていたからである。徳川慶喜による朝廷に政権を返還した大政奉還である。これは“慶応維新”と言うべきもので、平和的な権力の移譲だった。坂本龍馬はこれを絶賛して、新政府の組織と人事に着手している。何が何でも武力による政権奪取を狙っていた薩長は、龍馬を目の仇として暗殺したという説には頷けるものがある。更に薩長は、大政奉還を無効にする為に、幕府直轄領の返納を強要したばかりか、天皇の名を騙って“討幕の密勅”をでっち上げる等、様々な策を弄して幕府軍を挑発した。西郷隆盛は直接、薩摩藩士に命じて、江戸で強盗・殺人等“薩摩御用盗”と言われる騒乱を起こさせ、江戸城を放火して大坂にいる幕府軍を憤激させ、鳥羽伏見の戦いを惹起したのである。

この時に“錦の御旗”が掲げられたが、“官軍”を自称する為に、これもでっち上げられたものである。そして“官軍”の美名の下で、逆らうものを“朝敵”や“賊軍”として、暴虐の限りを尽くすのである。薩長史観では語られないものが未だある。長州の吉田松陰が軍事テロを唱え、それが天皇がいる御所を襲撃する蛤御門の変に繋がっていたことである。自ら“尊王”と言いながら、天皇を拉致して政治的に利用しようとした。松陰はまた、朝鮮を始め近隣諸国を侵略して支配することを説き、それが明治政府の軍国主義と侵略主義に深く影響していたことである。松陰の松下村塾の門下生は様々なテロを実行したが、特筆すべきは初代内閣総理大臣になった伊藤博文は、まったく無辜の国学者を暗殺していた殺人者であったことである。明治維新の過程で血に塗れた人物が政治のトップに立っていたということは、明治政府の体質を如実に表わしている。薩長は“尊皇攘夷”を叫んで、開国した幕府を揺さぶったものの、下関戦争や薩英戦争で大敗すると、攘夷を棄てて尊皇を基軸として討幕を目指す。だが、孝明天皇の理解が得られないとわかると、岩倉具視の協力を得て天皇を毒殺。代わって、薩長の息がかかった明治天皇を擁立する。そして、薩長が行なった数々の暴虐行為は、天皇を絶対視することですり替えたのである。“王政復古”という時代錯誤の号令は、薩長の行為を糊塗して、国民が一致して天皇を現人神として崇める思想を強要するものであった。こうした思想の強制は『教育勅語』に表わされる。「一旦緩急あれば義勇公に奉じ、以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」。これは「いざという時には一身を捧げて、皇室国家の為に尽せ」というもので、「無条件に天皇に命を捧げることが愛国心だ」というものである。だが、実際は天皇というよりは、薩長の為政者が恣意的に国民を支配し従属させる為の愛国教育に他ならなかった。こうした軍国主義・侵略主義・絶対天皇主義は明治維新によって生じたもので、これが太平洋戦争の敗戦まで続いたのである。明治維新の精神と行動を容認する薩長史観が、日本を滅亡に導いたといっても決して過言ではない。薩長史観が触れることのない明治維新の歴史的な汚点は未だある。西郷隆盛と勝海舟の会談による江戸城無血開城は、「明治維新が薩長主導の下で平和裏に行なわれた」という印象を与えてきた。だが、これもまやかしで、“官軍”による“賊軍”の掃湯が密約されていたのである。希代の陰謀家である西郷は、開城の条件として「徳川慶喜を助けた藩主は厳罰に処す」として、「これに異を唱えるものは断罪する」とした。勝はこれに同意して、暴挙を起こした者は“官軍”が鎮圧するとの要請を受け入れている。つまり勝は、“官軍”に逆らうものを“賊軍”として討伐することを容認していたのである。後に福沢諭吉は、無抵抗に西郷に屈した勝の卑劣な態度を糾弾する。賊軍征討の名目を得た西郷は、凄惨な戊辰戦争を強行した。西郷は“敬天愛人”を唱えたというが、実際の行動は“汚天殺人”と言っていいほどである。

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【US Affairs】(29) トランプ派の知識人拠点…共和党を支える名門大学

アメリカは今、卒業式のシーズンを迎えている。各地の大学から若者たちが巣立っていく。その巣立ちに力点を置いて、アメリカの大学で卒業を“コメンスメント(始まり)”と呼ぶのは、とても好感が持てる。大統領や副大統領ら、時の政権の重鎮が大学卒業式に出掛けて行なうスピーチは、時に重要な政策表明になることがある。例えば、9.11テロの翌年2002年6月、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領が陸軍士官学校卒業式で行なった演説は、“善と悪との戦い”における“先制攻撃”の可能性に言及。翌年の対イラク侵攻への道筋を示すことになった。今年の卒業式シーズンはどうだろうか? ドナルド・トランプ大統領はアナポリスの海軍士官学校で演説したが、所謂ペップトーク(※激励演説)で、とりたてて政策的な内容は無かった。寧ろ注目されたのは、マイク・ペンス副大統領のほうだったかもしれない。副大統領はミシガン州のヒルズデール大学の卒業式に出席した。信仰の大切さを訴え、福音派へのアピールを狙った演説の中身も然ることながら、大学の選択が一部の事情通に注目された。アメリカの大学といえば、東部のアイビーリーグ名門校か名門女子大学、乃至はミシガン大学やカリフォルニア大学等著名な州立大学ばかりに注目している日本では、ヒルズデールと言ってもピンとくる人は先ずいないだろう。だが、同大学はトランプ政権誕生で俄然注目されている。東部名門校から人材を多く取り込む民主党政権に比べて、保守政党である共和党は異なる伝統を持つ別種の“名門校”にも人材を求める傾向があるように思える。ヒルズデール大学は1844年、州に昇格して間もないミシガン州南部に創設された。未だ奴隷制の続くアメリカで、人種や性別に拘わらず門戸を開き、その後、エイブラハム・リンカーンの共和党を支えて、南北戦争でも北軍に人材を送り込んだ。まさに共和党と共に歩んだ大学だ。学生数1400人程度ながら、古典教養教育を核にして、中西部を中心に共和党支持の保守的父母らから強い支持を受けている。

大学の教育方針に一切の介入を許さないよう、連邦政府や州の補助金を受け付けず、連邦や州の奨学金を得て入学しようとする学生には、それを返上させて自前の基金で補填するほど、徹底して官からの独立を保っている。ヒルズデール大学がトランプ政権と強い繋がりを持つとみられているのは、ラリー・アーン学長の采配による。2016年の大統領予備選挙開始段階で、共和党主流派の政治家や知識人が挙って反トランプを打ち出していた頃、アーン学長は数少ないトランプ支持知識人の代表格となり、ラジオのトーク番組等で応援した。更に、共和党系の外交・安全保障専門家らが公開書簡でトランプ候補を批判し、当選しても政権入り拒否を打ち出したのに対し、アーン学長を始め、ヒルズデール大学の有志教員数人も加わり、全米の学者・知識人約140人が連名でトランプ支持を表明した。そうした経緯もあり、トランプ政権発足時には、ヒルズデール大学の卒業生が大統領のスピーチライターや法律顧問として加わった。他の省庁や議会幹部のオフィスにも、同大卒業生の採用が目立つ。では一体、アーン学長は何を狙っているのか? 学長は元々、ロサンゼルス郊外のクレアモント・マッケナ大学院を出て、シンクタンクや『クレアモント研究所』所長を務めていた政治学者だ。この大学院と研究所は、亡命ユダヤ系ドイツ人の政治哲学者であるレオ・シュトラウス(1899-1973)門下の1人で、政治思想家のハリー・ジャッファ(1918-2015)が拠点としていた。ジャッファはシュトラウス哲学を応用して、アメリカ国家や歴史の意味を考えた思想家だ。リンカーンの研究で知られる。ジャッファや、その教え子のアーンは、ロナルド・レーガン政権以降、共和党政治を思想面で主導してきたネオコン集団と対峙してきた。そのネオコンたちは一昨年の大統領選中にトランプ氏を批判し、政権入りを拒絶した。その空白を埋めるかのように、アーンがヒルズデール大学とクレアモント研究所の同志を率いて動き出している。トランプ時代という特殊な環境の中で、アメリカに新しいナショナリズムを打ち立てようとしている――。それが筆者の見立てだ。


会田弘継(あいだ・ひろつぐ) 『共同通信』客員論説委員・青山学院大学地球社会共生学部教授。1951年、埼玉県生まれ。東京外国語大学英米語科卒業後、共同通信社に入社。神戸支局・大阪社会部・外信部・ワシントン特派員・ジュネーブ支局長・ワシントン支局長を歴任。同志社大学一神教学際研究センター共同研究員・上智大学非常勤講師等を経て現職。著書に『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮社)・『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)等。


キャプチャ  2018年6月16日号掲載

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【人が集まる街・逃げる街】(30) 東京都渋谷区代官山町…変化する“おしゃれタウン”

東京都渋谷区代官山町といえば、原宿や表参道と並び称されるおしゃれなファッション街として人気の街だ。しかし、代官山のファッション街としての歴史は意外と浅い。このような名称で持て囃されるようになったのは、1980年代後半の平成バブル以降である。それまでは渋谷の後背地として、松濤や桜丘町等と同じような閑静な住宅街だった。代官山は渋谷区の南東部にある。渋谷-恵比寿間を走るJR山手線と、青山・表参道方面から下る八幡通り、そして『東急電鉄』東横線に挟まれたごく狭いエリアに存在する。だが、代官山のおしゃれで気品のある街としての印象を強く打ち出したのは、隣町の猿楽町で開発された『ヒルサイドテラス』だろう。ここは、甲州武田家に仕えたとされる朝倉家が土地を所有してきた。1967年、オーナーの朝倉家と、建築家である槇文彦氏とが組んで『代官山集合住宅計画』を立ち上げたのが、同テラス開発の始まり。敷地内では、住宅を中心としつつも街としての賑わいを創出できるように、旧山手通り沿いの低層部に商業店舗を設けて話題を呼んだ。開発に約30年かけ、1998年にヒルサイドウエストが完成した。1996年には東急東横線の代官山駅前にあった『同潤会代官山アパートメント』36棟の再開発が始まり、2000年に『代官山アドレス』としてオープン。時代を反映した地上36階建て、総戸数387戸の超高層マンションとして生まれ変わった。敷地内には『ディセ』という商業施設や、『渋谷区代官山スポーツプラザ』も誕生した。

このようにして、これまでの高級住宅地としての面影を残しつつ、最先端のファッション店舗・物販・飲食店・超高層住宅等の新しい機能を取り込んできた代官山は、『リクルート』が調査発表する住みたい街ランキングでも上位の常連となったのである。ところが最近は、代官山の街にも変化が生じ始めている。東急東横線の地下化と『東京メトロ』副都心線との接続がきっかけだ。2013年3月に完了した地下化工事は、代官山駅から渋谷駅までの区間を、地上部の線路を撤去して地下化する大掛かりなものだった。線路が撤去された跡地には、商業施設『ログロード代官山』がオープンして話題を呼んだ。一方で、嘗て多く存在したブティックの閉店が増えてきているという。ファストファッションの隆盛や通販の発達により、路面店での売り上げが振るわなくなっていることも理由のひとつかもしれない。また、線路を撤去したことで代官山エリアが恵比寿方面と繋がり、これまでの狭いエリアに展開されてきた代官山の個性を希薄化させたとも受け取れる。鉄道会社同士の相互乗り入れで『東武鉄道』東上線や『西武鉄道』池袋線と繋がったことで、人の流れが拡散・分散した可能性もある。その結果、終点である渋谷駅の1つ手前のおしゃれタウンであった代官山のイメージが、単なる通過点の街に変質し始めているとも考えられる。こうした変化が、最近の住みたい街ランキングにも反映されている。2010年に11位にランクしていた代官山は、今年の調査では68位にまで順位を落とした。街にとって“人の流れ”は重要だ。流れの変化は、暮らし・働き・遊ぶ人の“顔”を変える要素を持っている。代官山の顔が将来、どう変化するか注目される。


牧野和弘(まきの・ともひろ) 不動産事業プロデューサー。1959年、アメリカ合衆国生まれ。東京大学経済学部卒。『第一勧業銀行』(※現在の『みずほ銀行』)や『ボストンコンサルティンググループ』を経て、1989年に『三井不動産』に入社。『三井不動産ホテルマネジメント』に出向した後、2006年に『日本コマーシャル投資法人』執行役員に就任し、J-REET(不動産投資信託)市場に上場。2009年に『株式会社オフィス・牧野』、及び『オラガHSC株式会社』を設立し、代表取締役に就任。2015年に『オラガ総研株式会社』を設立し、代表取締役に就任。著書に『なぜビジネスホテルは、一泊四千円でやっていけるのか』(祥伝社新書)・『2020年マンション大崩壊』(文春新書)等。


キャプチャ  2018年6月16日号掲載

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【オトナの形を語ろう】(75) 独りで行動するリスクと敗れ去る覚悟について





日が落ち始め、周囲が暗闇になった田圃の中に身を屈めて、私は連中が来るのを待った。軈て笑い声が聞こえ、連中がやって来た。人影を見ながら人数を確かめた。1人、2人…5人である。その中に頭ひとつ大きな人影が見えた。「コイツを倒せば、後はそれからのことだ…」。通り過ぎるのをじっと待った。相手は5人の中央にいる。私が起き上がろうとした時、「ちょっと小便じゃ」と誰かの声がした。あのガキの声だった。連れ小便を皆がし始めた。笑い声を上げながら小便をしていた。長い時間に思えた。すると、それまで何ともなかった身体が震え出した。膝も、手も、足も震え、顎までおかしくなって歯がカタカタと音を立てた。生まれて初めて聞く、自分の歯の音だった。「下っ腹に力を込めて奥歯を噛むんだ。それで頭から突進しろ」。父に習った、相撲の立ち合いでの要領が耳の奥に甦った。中々奥歯が噛めなかった。手にした薪で顎を叩いた。小便が終わり、皆が歩き出した。相手は最後方にいた。起き上がり、相手に近付いた。私が声をかけると、相手が振りむこうとした。振り上げていた薪を持った手を下ろした。それで全てが終わった。

目の玉を剥いて、道に倒れている悪ガキと私を見ている連中に、自分が何を言ったかは覚えていないが、悪ガキ1人を残して連中は走り出した。悪ガキは後頭部を何針か縫ったらしい。翌日、親を伴って我が家に怒鳴り込んできた。父に呼ばれ、事情を話した。父は玄関に出て声を上げた。「そっちの倅が先にわしの息子に手を出した。『金まで持ってこい』と言ったそうだ」。悪ガキの父親も引き下がらない。父が大声を上げた。「なら喧嘩だ。お前の家も家族も、親戚も皆殺しだ」。――皆殺し? 私は父の言葉に驚いた。その後、母に呼ばれ、こっぴどく叱られた。「信じられません。相手に怪我まで負わせて、何て情けない子なの」。――相手は中学生だぞ。そんなことを口にしても、母に通じる筈はなかった。話はあっという間に近所・学校の中に広まり、私は乱暴者のレッテルを貼られた。「何故、あんなことをしてしまったのか?」と大人になって思うことがある。そうすると、答えはいつも1つしかない。「逃げ通すことはできないんだ」。それだけである。しかし、それは屁理屈である。「怪我まで負わせることはなかっただろうし、何か別のやり方があったのでは?」とも思う。そんな時、私は自分に言い聞かせるように、こう呟く。「口で言ってわからんヤツはやるしかない」。

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