【コラム】 個人の嗜好まで奪う“不寛容社会”でいいのか?

最近、“不寛容社会”なる言葉が巷間を賑わせている。例えば、テレビCMや企業イべントでちょっとでも突飛な表現があろうものなら、視聴者から「直ぐに放送を中止しろ」「謝罪・訂正しろ」とクレームが入るとか。確かに、ものによっては公開すべきか慎重に判断しなければならない場合もあるが、私が見聞きしたそれらの多くは、殆どが問題ないものばかり。近代国家になって漸く獲得した言論の自由・表現の自由を、市民自らが足を引っ張るというのは何とも悲しい話である。もっと情けないのは、子育てを巡る話だ。周知の通り、首都圏では保育園が足りず、待機児童が問題となっている。昨年は国会でも、ある母親がブログに上げた“日本死ね”というフレーズを巡って論戦に沸いたが、この問題がややこしいのは、問題の所在が行政サイドだけではないことだ。問題は寧ろ住民同士の対立で、行政は間に立ってどちらの言い分も聞かねばならず、汲々としている。乳幼児を育てる母親たちは、我が子を保育園に預けて職場復帰したいが、入れられる園が見つからない。だから、保育園の建設を求める。ところが、建設予定地周辺の住民たちは、「子供の声が煩い」「楽器や遊具の音が煩い」と反対側に立つ。悲しいかな、この反対派には何と、小学生の子供を持つ母親も入っているという。この話を聞いた時は我が耳を疑った。どうして、同じ苦労を知る母親が反対に回るのか? なんでも、建設予定地が児童公園で、子供たちが日頃遊んでいる場所なのだという。つまり、「自分たちは保育園にもう用は無く、寧ろ今ある公園を使いたいから反対だ」と。数年前まで保育園を利用し、その苦労を知る人が反対に回るなんて、世知辛いとはまさにこのことだ。確かに、遊び場は1つ減るかもしれないが、小学生と乳幼児の発達度合いを比べれば、それは問うまでもない。弱者を優先するのが人の道理だ。読売新聞が今年1月に発表した調査によれば、「保育園の子供が出す音や声が煩い」という苦情は、アンケートに回答した146自治体中、109自治体が受けていたという。更には、苦情が原因で保育施設の開園を中止・延期したケースが16件もあるそうだ。社会が豊かになった一方で、人々は心に壁も設けてしまったようだ。日本人はここまで狭量になってしまったかと、嘆かわしい限りである。

不寛容社会と言えば、50余年の愛煙家の私にとって許せないことが1つある。それが、今、検討されている受動喫煙対策だ。健康増進法改正案として愈々法案提出が見込まれているが、人の嗜好にこれ以上国家が介入していいものだろうか? 周知の通り、これまでの事業者や店舗等の努力によって、分煙は十分に達成されている。ただでさえ愛煙家は肩身を狭くしているのに、今回の改正案が通れば、罰則規定が加わり、違反すると過料が取られるという。煙草を吸うことがそんなにも罪なのか? とんでもない法案が今、審議されている。先ず言いたいのは、国が法律で規制しなくとも、事業主や国民は色々と工夫しているということだ。今、どこの公共施設や商業施設に行っても禁煙が基本で、喫煙が許されるのは喫煙ルームのみ。愛煙家は、このルールにきちんと従っているし、分煙によって嫌煙者に迷惑はかけていない筈だ。これは飲食店も同様で、お酒落なレストランや拘りの割烹等は基本的に禁煙。代わりに別室に喫煙スペースが設けられていて、私たち喫煙者もそれに従っている。一般的な居酒屋だって禁煙席と喫煙席に分かれていて、お客さんも当然、それを承知して来店し、自分の席を選択している。仮に全面喫煙可の店だとしたら、「ここは喫煙者のいる店だ」と認識して入っている訳だ。当たり前のことだが、表示があれば人はそれを見て判断するので、法律改正する必要などなく、この店は禁煙か分煙か喫煙可か、店先にわかり易い表示を出すように促せば、全ては事足りる話なのである。因みに、国や一部の地方自治体は、分煙推進の為に、中小企業事業主向けに分煙対策の助成金を出している。若し、未だ分煙対策が必要な施設や店があるとすれば、これらを活用してくれればいいだけの話だ。今回の改正案が可決されると、従来の分煙では許されないらしい。厚生労働省が設置要請しているのが“喫煙室”というもので、要するに電話ボックスのような喫煙のみを目的とした小部屋の設置だ。駅の喫煙ルームのようなものだが、公共施設や大企業ならまだしも、個人の飲食店が果たして対応できるだろうか? 分煙の為、これまでに換気設備を用意した店等は、また一からやり直し。とんでもない負担がかかる。厚生労働省がしゃかりきになって健康増進法改正案を進めようとしているのは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、禁煙レべルを世界基準にしたいから。私は内閣の要請を受けて、海外出張に出ることも多いのだが、日本と海外では抑々、喫煙環境が異なることも指摘しておきたい。

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夏草や兵どもが夢の跡――廃墟と化したアテネオリンピック会場の無惨な姿

東京に昭和39年以来、64年ぶり2回目のオリンピックがやって来る。その2020年開催に向けて、競技場建設の本格的な準備が始まった。国民の期待を背負って造られる競技会場だが、過去の開催地では大会終了後、全く使われなくなって放置されたままの悲しい競技場も存在する。平成16年夏、世界を湧かしたアテネオリンピック。その競技会場が今、廃墟化しているのだ――。 (取材・文・写真/写真家 カイ・サワベ)

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【風俗嬢のリアル】(05) シズカの場合――2回目の群馬“人妻デリヘル”

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古びたローカル電車に揺られ、群馬のとある主要都市へと向かう。手動式ドアを手で押し開け、ホームに降りると、そこは恐ろしいほどひと気の無い駅だった。14時にも拘わらず、駅前の店は殆どが閉まっており、その先はただの民家である。コンビニに入ると、土産向けに群馬のゆるキャラ『ぐんまちゃん』グッズが置いてある土産物コーナーがあり、僅かに主要駅であることを感じさせた。実家を後にしたシズカは、1週間の予定で、ここ群馬にある人妻デリへルで働いていた。滞在中は、店が寮代わりに用意したビジネスホテルに泊まっており、そこは駅から歩いて50分ほどの場所に位置する。閑散とした駅前に比べ、ホテル周辺は寧ろ栄えており、完全な車社会であることが窺えた。とはいえ、近くにコンビニも無く、歓楽街も当然無く、デリへルの影も見えない健全な田舎街なのであった。その日、シズカは朝10時に出動し、3人の客を取って、17時きっかりに終えてホテルに戻ってきた。群馬に来て4日目。カーテンを締め切った部屋には、服や靴下が干してあり、洗面台には化粧品が並べられ、すっかり生活感が現れている。シズカの服装は相変わらず、いつもと同じグレーのトレーナーだったが、下だけは夏用の紺のズボンに変わっていた。「今回は下着も新しく買い換えたんですよ。毛玉だらけって書かれちゃったからね」。どうやら、私が原稿に書いたことを気にしたらしい。何年も使って汚れていた仕事用の下着は、2着とも新品に変わっていた。といっても、ストッキングは4日連続で洗濯しないまま穿いているらしく、必要最低限での暮らしぶりは全く変わっていなかった。

「群馬は、身体慣らしを兼ねて来た感じですね。先月は観光と実家で終わったら、丸々働いていないんですよ」。2週間ほど関東の実家に戻っていたシズカは、東京でも観光をしており、吉原のソープ街をフラフラと歩いたり、『オリエント工業』のショールームでシリコーン製の高級ダッチワイフ『ラブドール』を触ってきたという。「オリエント工業は、予約すると30分貸切で触れるんですよ。私は川端康成の“眠れる美女”を再現したくて、ファーストコンタクトはドールと徐々に距離を詰めていくというのを楽しみたかったんですけど、30分って言われたら焦っちゃって、がっついちゃったのが悔やまれますね。太ももから、くびれ、オッパイと揉んできましたよ。夢ちゃんという目を閉じている子が可愛かった」。シズカは、珍しく興奮した様子で語った。話を群馬に戻そう。実は、シズカが群馬に来るのは2回日である。1年半前にも同じ店で働いており、その為、今回は観光も少なくていいのだという。「群馬は、赤城山から吹き降ろす空っ風が本当に寒いんですよ」等と、こなれた台詞を言っている。因みに、この春で日本一周が終わり、2周目になると思っていたが、シズカはそれを訂正した。「取り敢えず、端から端までは行ったんで、1周はしたんですけど、未だ行っていない県もあるし、働いてない県もあるので、よくよく考えたら未だ1周は終わっていないですね。ちゃんと1周を終えてから、2周目に入ります」と拘りを見せていた。扨て今回、シズカが在籍する人妻デリへルは、平均年齢30歳で、90分2万円弱の店である。ホームページを開くと、エロティックなポーズで美脚を見せ付けるシズカの写真が大々的に掲載されていた。他の女の子たちも皆華やかで、如何にも美人風ばかりである。「ここの店も、穏やかな清楚系の子が多いですね。多分、リアル人妻ばっかりだと思う。昼に出勤する子が多いし、集客も昼がメインなんですよ。『日曜は子供が休みだったりするから、出勤する子がいなくて困る』って、店の人も言っていましたね。多分、皆、群馬の子で、遠くから出稼ぎに来てるような子は殆どいないと思いますよ」。店のスタッフも、働く女の子も、客も皆、群馬県民で、地元の人ばかりだという。「群馬の人は地元が好きみたいですね」とシズカは言った。私は、群馬に到着してからホテル近くにあるファミレスで時間を潰していたのだが、店内にいるヤンキー率の多さに驚かされた。それも、金髪にピアスにジャージというスタンダードなヤンキーファッションである。ところが、ヤンキーグループと思われた男女は、よく見ると中学生の子供と若いお母さんだったりして、余計に驚いた。また、ホテルの受付のお姉さんも茶髪に細眉で、どことなく元ヤン風の雰囲気を醸し出している。

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<画像2枚> 上原多香子、年上の演出家・コウカズヤとお泊まり愛

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カラオケ終了後、棒つきキャンデーを咥えながら、大ハシャギで上原の自宅へ向かう2人。

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【大機小機】 オリンパス事件と取締役の責任

先月27日、オリンパス事件の株主代表訴訟の判決が東京地裁であった。報道等によれば、裁判所は16人の元役員の内、6人について取締役としての義務違反を認めた。6人中、刑事事件で有罪が確定した3人には、総額約590億円の賠償を命じたが、他の3人に対しては少額の賠償を命じたに過ぎないようだ。オリンパス事件は2011年に発覚した企業不祥事で、2つの不祥事の複合体だ。1つは粉飾。1990年代に生じた巨額損失を歴代社長が隠蔽し、2006年以降、M&A(合併・買収)手数料やのれん代に仮装し、処理した。もう1つは社長解任。雑誌で報じられた過去の会計処理に疑問を持ち、会長らの辞任と調査を求めた社長を、会長の意向に従って取締役会が解任した。粉飾に関与した元役員は責任を問われるのは当然で、賠償額が株主らが主張した約900億円だろうと、判決が認定した約590億円だろうと、大した違いは無い。役員賠償責任保険は粉飾等故意の違法行為には使えないから、元役員らの支払い能力は限定的で、会社側が現実に回収できる金額は僅かだろう。寧ろ、本判決で注目すべきは、粉飾に関与していない10人の元役員の責任を認めなかった点だ。実は、オリンパスの取締役会は社長解任の2週間前にも開催され、会長が持っていたCEOの地位を社長に与える決議をしている。短期間に社長のCEO昇任と解任の決議をした訳で、何とも不見識な取締役たちだ。尤も、社長解任から4週間ほどでオリンパスは粉飾の事実を認める結果になったから、社長解任が粉飾発覚を遅らせ、損害が増えたという訳ではないようだ。社長解任による信用毀損も生じたろうが、抑々、粉飾によってオリンパスの信用は大きく傷付いている。請求内容や判決理由の詳細はわからないが、裁判所は当時の取締役会の運営状況等に鑑み、「粉飾の事実を知らない取締役の法的責任を認め、損害賠償を命じるのは厳し過ぎる」と判断したのかもしれない。だが、粉飾を見逃し、不正調査を遂行しようとした社長・CEOの解任に賛成した取締役の“無罪放免”という結論に、釈然としない人も多いに違いない。本判決に関する今後の分析と評価を待ちたい。 (腹鼓)


⦿日本経済新聞 2017年5月23日付掲載⦿

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【Deep Insight】(18) 渋沢からサムスンへの助言

「サムスンは韓国あってこその企業だ」――。今から20年以上前、つまり、『サムスン電子』の李在鎔副会長が未だ慶応の大学院生だった頃、こう語っていたという。既に半導体で世界のトップグループに入り、韓国を代表するグローバル企業になっていた。それにも拘わらず、「母国である韓国が傾けばサムスンも危うくなる」というのは、経営修業中だった同氏なりの自戒だったのだろう。ところが、10年ほど前には考えが変わっていた。「韓国あってのサムスンとはもう言えない」。こう漏らしていたという。父の右腕であり、サムスングループの3代目が視野に入り始めた時期だ。収益源を見ると、彼の認識は正しい。2000年に50%強だった海外売上高比率は80%まで上昇し、今の90%に向かう道を突っ走っていた。同時に株の時価総額も高まり、グローバル化で企業価値を高める経営戦略を確立していた。存在感が大きいのは、韓国ではなく、顧客の大半がいる海外だった。筆者は、「こんな構図が続くうちに、韓国の国民感情がぶち切れる余地が生じた」と思っている。10年後の今年、李氏は逮捕された。容疑は朴槿恵前大統領への贈賄だが、“反財閥”の世論に押されての投獄でもある。サムスンは、韓国経済を支えている財閥の筆頭だ。サムスン電子1社だけで、売り上げが韓国の国内総生産(GDP)の12%に達する。グループで見ると、国の年間の法人税収入の1割弱を負担していると言われている。それでも反感を買うのは、貢献を実感できない人々の不満が強いからだ。韓国は年約3%の成長を続けているが、若年層の失業率は10%を超え、就職できない大学生が大勢いる。“地獄朝鮮”や“(銀ではなく)土のスプーン”といった自虐的な言葉も生まれた。成長しても国内の雇用が頭打ちになっているサムスン電子は、韓国の矛盾を映し出す。財閥と政権との癒着は昔からの問題だ。人々は成長を実感している間、そんな暗部には目を瞑っていた。だが、経済的に厳しい状況に置かれた上、『大韓航空』オーナーの長女によるナッツリターン事件に代表される財閥の常識外れの行動が続き、蓄積した不満が「自分らだけ何だ」と噴出した。人々の怒りが企業を翻弄する“国民感情資本主義”は、サムスンに極端な形で表れた。だが、世界的な傾向でもある。やはり、グローバル化への反発が根っこにある。

先ずアメリカ。ドナルド・トランプ大統領は、アメリカ企業の海外進出で雇用停滞が続く“ラストベルト(錆び付いた工業地帯)”の人々の不満を背景に当選した。トランプ大統領は、『フォードモーター』が計画したメキシコ工場の新設を撤回させた。そしてイギリス。人々がグローバル化に背を向けた結果であるブレグジットは、世界の金融機関を振り回している。『ゴールドマンサックス』は、『ヨーロッパ連合(EU)』から離れるイギリスに経営資源が集中することを恐れ、ヨーロッパ大陸の拠点を増強し始めた。同社は、本社をニューヨークからロンドンに移そうと考えたことがある。ニューヨークは成長するアジアと昼夜が逆で不便だが、ロンドンは午前がアジアの午後、午後がアメリカの午前と重なり、日中に世界中とやり取りができる。そんな戦略はもう描けまい。国民感情資本主義の原点は、2008年のリーマンショックだ。ウォール街の暴走は社会を傷付けた。人々の怒りは、2011年の大規模デモ『ウォール街を占拠せよ』で爆発。共感は世界に広がった。だが、危機からもう9年目になる。人々が企業の暴走を牽制する仕組みは欠かせないが、このまま人々が怒り続け、グローバル化を前提とする企業の成長が阻まれると、それもまた危うい。両者はそろそろ長期的な視点を持ち、和解の道を探してはどうか? ボールは企業にある。筆者は、「明治期に株式会社制度を導入、500以上の会社設立に携わり、“日本の資本主義の父”と呼ばれた渋沢栄一(1840-1931)に学ぶべきだ」と考えている。渋沢はグローバル主義者だった。アメリカで日本からの移民に対する排斥機運が強まっていた1920年、米紙との会見で、日米の企業の合併やトップの交流を訴えた。「企業こそが、共に成長を目指すことで反グローバル化と戦うべきだ」という主張だった。だが、成長に取り残される人々への配慮も忘れなかった。東京を頭脳、地方を全身に例え、「全身に血が通わなければ、日本は“文明の出来損ない”になる」と警告し、地方の振興を訴えた。新潟県長岡市では、渋沢の影響を受けて岸宇吉(1839-1910)が呼応した。銀行・電力・鉄道等、社会基盤を担う企業を続々と興して、戊辰戦争で荒廃した長岡を復興し、“長岡の渋沢”と尊敬を集めた。サムスンが助言を求めたら、渋沢はグローバル化を遠慮なく進めるよう説くだろう。同時に、韓国に生まれ育った企業として、苦しんでいる国民を救う事業を提案した筈だ。「経営者が大富豪になっても、社会の多数が貧困に陥るようでは正常な事業とは言えない」とは、格差の危うさを知る渋沢が残した名文句である。渋沢の没後、韓国の財界人が渋沢を追慕する碑をソウルに建てている。サムスングループである『新羅ホテル』に当たる場所に、その碑はあったという。 (本社コメンテーター 梶原誠)


⦿日本経済新聞 2017年5月5日付掲載⦿

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【Deep Insight】(17) ミレニアル世代が創る世界

来年、生誕90年を迎える漫画家の手塚治虫氏(※故人)。代表作の『鉄腕アトム』は「50年後を想像して描いた」と、作品を管理する『手塚プロダクション』の松谷孝征社長は話す。ただ、登場する人間は未来的には描かなかった。ケンちゃん・四部垣・タマちゃん…。アトムの同級生は、2000年代という時代設定とは対照的に、いがぐり頭や丸眼鏡の小学生が多い。手塚氏は敢えて、昭和の雰囲気を織り交ぜ、読者との距離を工夫していた。では今、その同級生たちが実在していたらどうだろうか? 頭の中は昭和ではない筈だ。今風に言えば、友達は皆“ミレニアル(千年紀)世代”に属するからだ。1980~2000年に生まれ、今年17~37歳になるミレニアル世代。世界でベビーブーマーより多いとされるこの層が、存在感を強める。ドナルド・トランプ大統領の長女で大統領顧問を務めるイバンカさんと、夫のジャレッド・クシュナー同上級顧問、アメリカ情報機関の個人情報収集を暴露したエドワード・スノーデン氏、『Facebook』のマーク・ザッカーバーグCEO、人気歌手のレディー・ガガさん。日本ではテニスの錦織圭選手、大リーグ『テキサスレンジャーズ』のダルビッシュ有投手、小泉進次郎議員らが代表的だ。パソコンやスマートフォン、或いは交流サイト(SNS)を幼少期から日常的に使いこなし、“デジタルネイティブ”・“スーパーコネクテッド”とも言われる。『デロイトトーマツコンサルティング』の土田昭夫執行役員によれば、「ダイバーシティー(多様性)や移民に寛容で、既成の秩序に物足りなさを感じている。政治家や経営者については、名声より未来の可能性で評価する」そうだ。そんな特徴の一端が表れたのが、投資家としての彼ら・彼女らだろう。電気自動車を生産する『テスラ』が先月、自動車大手の『ゼネラルモーターズ(GM)』や『フォードモーター』を、株式時価総額で追い抜いた。原動力はミレニアル世代の投資家だったとされている。投資のセオリーで言えば、年間の販売が8万台弱のテスラには考え難い株価だ。『QUICKファクトセット』によれば、テスラの2018年業績予想に基づく株価収益率(※PER=株価が1株利益の何倍まで買われているかを示す)は、今月1日終値で300倍を超す。年間1000万台を売るGMは6倍、アメリカ企業の平均は16倍で、極端に“買われ過ぎ”の状態だ。だが、「ミレニアル世代は、バリュエーション指標より経営者(=イーロン・マスクCEO)の世界観をみている」と、『アクセンチュア』マネジングディレクターの川原英司氏は指摘する。

例えば、マスクCEOの事業は家庭用蓄電池・太陽光発電・宇宙ロケットにも広がる。世界で網の目のように設置するという充電ステーションと車・家庭・発電所を繋ぎ、再生可能エネルギーとビッグデータの“プラットフォーマー”の座を狙う。その一方、環境保護で“地球と人類を救う”等の壮大な理念も掲げる。目指すのは二酸化炭素を出さない社会だそうだ。ディーラー網や在庫は持たず、インターネットで受注生産する。太陽光や風力で発電し、充電費用はゼロという、俄かには信じ難い仕組みも模索する。テスラには、『Apple』等からの転職者が増えている。夏から生産する普及型の新型車には、日本車等からの乗り換えで約40万件の予約も入った。転職者や購入者の多くはミレニアル世代だ。自身もミレニアル世代だという『浜銀総合研究所』主任研究員の深尾三四郎氏は、「この世代のキーワードは“exponential(指数関数的)”だ」と話す。3の2乗は9、3乗は27という、乗数に似た加速度的成長軌道を表す。テスラで言えば、「従来の車・エネルギー・宇宙企業ができなかったことを短期間で実現し、指数関数的な速度で追い抜いていく可能性を感じる」(同)そうだ。従来の自動車産業は、世界での売上高の平均成長率が年間2~3%であり、新興プラットフォーマーがある時点であっという間に抜き去ってしまうという。exponentialな企業は他にもある。アメリカでは、写真・動画共有アプリ『スナップチャット』を運営し、今年3月に株式上場した『スナップ』や、未上場ながら1000億円規模の企業価値があるベンチャー企業群『ユニコーン』の経営者は、ほぼミレニアル世代に属する。人工知能(AI)の進歩を追い風に指数関数的成長を語り、注目を集める。日本のミレニアル世代はどうか? 突出した起業家は未だ少ない。大企業でも就職氷河期の入社組が多く、人数は少なめとされている。だが、半導体材料等を生産する『JSR』の小柴満信社長は、「この世代の呑み込みの速さや創造性を見込んで、今から最先端のIT教育を受けさせたい」と、10年かけて理系社員100人をアメリカに送り込むという。コンピューター技術の進歩により、「研究開発の現場は、今後5~10年で手法もスピードも様変わりする。新事業は全部、この世代に任せるくらいの割り切りが必要」とも話す。『国立社会保障・人口問題研究所』によれば、日本の人口は2053年に1億人を割る。この年、ミレニアル世代は53~73歳を迎え、生産年齢人口の大半を、彼らと次の“ポストミレニアル世代”が占めるようになる。人口オーナス(※人口減という成長の重荷)の時代を任される世代であり、それを跳ね返すような技術革新や産業構造の変革を期待したい。この世代を支援する価値は十分にある。教育や活躍の場を与えることこそが、上の世代の役割だろう。 (本社コメンテーター 中山淳史)


⦿日本経済新聞 2017年5月3日付掲載⦿

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【警察・腐敗する正義】(20) ヤクザやDQNにからかわれても「なんくるないさー!」…日本最弱を誇る沖縄県警の素晴らしき日常

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地元民から“泣く子も笑う”と揶揄される弱小警察、それが沖縄県警である。暴走族は勿論、成人式で荒れ狂う若者すら取り締まれない不甲斐無い組織である。沖縄県警が駐留アメリカ軍・自衛隊・ヤクザ・左翼よりも下の存在だということは、県民なら誰でも知っている。しかし、県民に愛されていることも確かなのだ。“沖縄の背骨”たる国道58号線では、今夜も暴走族が大挙して騒音をまき散らしている。本土で見られなくなって久しい改造二輪車の大規模迷惑走行だ。その後ろを、回転灯を光らせたパトカーが、注意警告を発しながら控えめについていく。「無理に追いたてることで事故を誘発してはならない」と言うのだが、何とも緩い。長きに亘り激しい“戦世”が続いていた沖縄ヤクザだが、現在は『旭琉會』として一本化されている。しかし、2011年の抗争終結までの戦いは極めて過酷だった。警察など完全に無視して、そこかしこで銃撃戦が行われた。1972年の沖縄本土復帰前からアメリカ軍の重火器が横流しされていた為、手榴弾やマシンガン等が普通に出回っていたのだ。特に有名なのは、1977年8月11日の銃撃事件だ。琉真会事務所を警戒する機動隊がいる中、殴り込んできた旭琉会は、カービン銃と手榴弾で正面から銃撃戦を演じた。県警は、抗争で沖縄ヤクザの7割強となる幹部146人を含む588名を検挙するも、壊滅には至らず、抗争は止められなかった。毎日のように報道されるアメリカ軍基地移設問題。辺野古は勿論、移設が予定されている普天間基地周辺等には、本土からの応援組を含めた左翼活動家が様々な集会を行っている。工事関係者の作業やアメリカ軍基地住人の出入りを邪魔するといったかなり強引なパフォーマンスにも、県警は手を出せず、彼らを排除することはしない。民事不介入や強引な執行によるバッシング等、弱腰になる材料が多く、雁字搦めの事情は大いに察する。それにしても、このだらしなさは、冒頭の暴走族と一緒にツーリングをするかのような長閑な光景となって表れるのである。

ギャンブル好きな県民性からか、沖縄は非合法賭博天国である。ウチナーグチ(沖縄弁)では“マシン屋”と呼ばれるパチンコ店が大規模に多数聳え立つのは全国的に見られる光景だが、営業時間は平日で朝の9時、土日祝日は8時から深夜0時近くまで、盆暮ともなれば終夜営業という凄まじさだ。そんなマシン屋の周りや繁華街、更には国道沿いには、無数の裏ギャンブル店が存在する。花札ゲームは“喫茶店”、スロットやパチンコは“ビリヤード・ダーツ場”として、どこか怪しげな風体で眠らない鉄火場となっている。不思議なのは、その堂々たる様子。中には、“新台入荷”と花札模様のペナントを掲げる所さえある。携帯電話での出会い系売春が人気の沖縄だが、裏風俗が盛んなのも沖縄の特色だ。東京下町のソープ街からその名をとった吉原や新町等の無数のちょんの間(※1回5000円程度の簡易本番をスナックの体で営業)地域は、2010年からの一斉検挙でほぼ壊滅した。しかし、まるで分裂して飛び散るドラゴンボールのように、沖縄各地に分散して商いを続けている。那覇の一部を走るモノレール以外に電車が存在しない沖縄では勿論、駅も無い訳で、ところどころに突如として盛り場が現れるが、如何にも怪しい雰囲気の店であろうと、不思議と検挙は少ない。「これらが成り立つのは、一部の警察官の情報漏洩によるのだ」と、沖縄の闇ギャンブルや裏風俗に精通する関係者は語る。「東京だと闇カジノとか当たり前ですけど、沖縄のギャンブルや売春で動く金額なんてたかが知れたもの。でも、非番の警察官が遊びに来た時にはちょいと勝たせたり、飲み食いし放題のサービスをしたりする。警察官たちは少しずつたかっているんです。正確な数はわからないけど、結構な人数ですよ」。更に呆れる話もあるという。「それでも時々、収賄で解雇になる警察官はいるんだけど、そいつらが今度は裏ギャンブルや売春を商売にしたりするんですよ。警察OBとして、捜査情報なんかは入り放題なんでしょうねぇ…」。無論、極一部とはいえ、そうした警察官もいるのである。しかしその半面、庶民への優しさを大いに感じることもある。那覇の繁華街では路駐切符は大抵切られるし、危険な酔っ払い運転の取り締まりは徹底しており、それらの点で大いに島の平和が守られている。親しみのあるお巡りさんは多いし、ある意味で“弱さは優しさ”なのだ。一概に批判されるものではないだろう。美ら島に伝わる“チムグクル(思いやり)”を持つ弱くも優しい愛すべき警察官たちには、琉球の伝統である。 (取材・文/フリーライター 金崎将敬)


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【ニッポン未解決事件ファイル】(19) 『赤報隊事件』(1987)――犯行予告が次々と一致! どうしても忘れられない“自称”赤報隊からの電話

記者2名が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件。『赤報隊』を名乗る犯人は、1987~1990年にかけて、『朝日新聞』を主な標的としたテロ活動を起こし、反米・右翼的な思想を犯行声明文で表明した。これら『赤報隊事件』で最重要の“容疑者”とされたのが、当時、新右翼団体『一水会』の会長だった鈴木邦男氏だ。事件から29年、鈴木氏が禁断の告白をする――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小川寛大)

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1987年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件。同支局に侵入した黒い目出し帽の男が、勤務中の記者たちに散弾銃を発射し、1人が死亡、1人が重傷という結果を招いたテロ事件である。事件直後、犯人は赤報隊と名乗って犯行声明を発表。それは、「すべての朝日社員に死刑を言いわたす」「反日分子には極刑あるのみである」という激烈な調子を伴った一文だった。警察は主に右翼グループを犯人と見定めて捜査を展開したが、2003年3月に全ての関連事件を含めて時効が成立。犯人は未だわからないままである。この事件の発生直後より、警察から“最重要の捜査ターゲット”として狙われていたのが、当時、新右翼団体『一水会』の会長を務めていた鈴木邦男氏(※現在は作家・評論家)である。鈴木氏は当時の状況を、こんな風に振り返る。「当時は未だ、右翼・左翼問わず、非合法活動をやっている政治団体は結構あったんですよ。一水会でも若手が中心になって、他団体とも協力しながら“統一戦線義勇軍”という闘争組織を作っていた。アメリカやイギリスの大使館を襲撃したり、大企業の経営者の自宅に押しかけたりと、まぁ派手にやっていました。そんな中、1981~1983年にかけて、“日本民族独立義勇軍”と名乗る組織が、反米の主張を掲げながらアメリカ領事館や在日アメリカ軍関連施設等を放火・襲撃するという事件が起きた。彼らははっきりと社会の表舞台で団体活動をしていた訳ではなく、警察も彼らの起こした事件で犯人を特定・逮捕することはできていません。つまり、どのようなメンバーによって構成されていたのかは未だ謎な組織なのですが、我々一水会は色めき立ったところがあるんですよ。だって当時、反米を掲げながら日本民族の自立・独立を訴えるような活動をしている人たちというのは、一水会を始めとするほんの少数の“新右翼”しかいなかった。日本民族独立義勇軍の活動はまさに、我々の新たな仲間たちによるものに見えた。また、日本民族独立義勇軍という団体名は、何だか統一戦線義勇軍に似ていると思いませんか? 『ひょっとしたら彼らは、一水会を真似てこういう活動をしているのかな?』と思うと、親近感を感じるところさえあったんですね。そこで、当時のレコンキスタ(※一水会の機関紙)に、『彼らはまだ見ぬわれらの同志だ!』という風な、日本民族独立義勇軍を絶賛する記事を載せていたりしたんです。一水会に送られてきた彼らの声明文を、そのまま掲載したこともある。ところが、後から考えればこれが拙かった。1987年1月、朝日新聞東京本社の窓ガラスに銃弾を撃ち込み、“日本民族独立義勇軍別動赤報隊一同”と名乗って活動を始めた組織こそが、その年の5月に朝日新聞阪神支局を襲撃し、記者たちを殺傷したグループだったからです。警察はそれまでの経緯を見て、『赤報隊と一水会は繋がっている』と感じたのでしょう。仕舞いには、『一水会の会長である鈴木が赤報隊なのではないか?』とまで疑い、事務所や自宅を執拗にガサ入れされる等、徹底マークされるようになっていくのです」。

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【文在寅の韓国】(04) “反日大統領”の虚実

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「安倍に“直球”!」「出発点から正面衝突」――。韓国大統領・文在寅(64)の日本との“初仕事”を、韓国メディアは概ね評価した。就任の翌11日、首相の安倍晋三(62)との電話協議で、文は従軍慰安婦問題の日韓合意を「韓国国民の大多数が情緒的に受け入れられない」と言い切った。日本側に映った姿は、“反日大統領”では必ずしもない。関係者によると、冒頭、文は「安倍首相とは、小泉純一郎・盧武鉉両政権で官房長官と秘書室長の間柄だった」と切り出し、「またお話しできて嬉しい」と語りかけた。両首脳のシャトル外交の復活を提案する一方、大統領選の公約だった慰安婦合意の再交渉には触れなかった。「政治家だ。日韓どちらにも良い顔ができる」と、日本政府高官を唸らせた。小泉・盧武鉉時代は、日韓当局に残る苦い記憶だ。

竹島(※韓国名は独島)の領有権や小泉の靖国神社参拝を巡り、「外交戦争も辞さない」と盧が過激な表現で日本を非難した当時、参謀だったのが文。シャトル外交が途切れたのもその時だ。電話で“未来志向”の言葉を何度も使った文に、日本側は関係改善の意欲を感じ取った。が、文の“信念”への警戒は解いていない。2012年の前回大統領選時の『対日“5大懸案”解決に関する構想』が、その1つ。慰安婦問題に加え、竹島問題も「日本の挑発に絶対に妥協しない」。日本統治時代の朝鮮半島出身者の徴用工問題では、“日本の戦犯企業”への入札規制等を次々ぶち上げた。竹島には昨年7月に上陸。“盧DNA”が文に宿る。革新系政権が誕生した今月10日、『韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)』は、「日本軍性奴隷制の基本からもう一度始めよう」と、慰安婦合意の破棄を求める声明を出した。前大統領・朴槿恵(65)の弾劾・罷免要求デモを主導した市民団体や労働組合が、文の応援団から圧力団体へと変貌する。折しも、国連の委員会が「被害者対策が十分とは言えない」と慰安婦合意の見直しを勧告し、日韓新関係はいきなり試験台に立たされた。韓国で“反日”は結束し易い。安倍に見せた文の配慮が、いつまで続くのか。「『ピープルパワーで生まれた政権だ』と強調してほしい」。今月16日、文はこう指示し、日米中露の“周辺4強”に特使を送り出した。始動した文外交は、“民心”の風に漂う。 《敬称略》 =おわり

               ◇

峯岸博・鈴木壮太郎・山田健一が担当しました。


⦿日本経済新聞 2017年5月20日付掲載⦿

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