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【習近平3期目のリアル】(07) 無人機続々、中台緊張

5年に一度の中国共産党大会が明後日、北京で開幕する。習近平総書記(※国家主席)は台湾統一に強い意欲を示しており、台湾問題は重要なテーマとなる。緊張が高まる台湾海峡の最前線を取材した。



20230323 05
8月上旬の夜、中国南部の福建省アモイ市の沖合にある金門島。台湾が実効支配するこの島で防衛の任務に当たる台湾軍兵士の視界に、赤い閃光が走った。無人機(※ドローン)だ。夜間でも肉眼でそれとわかる程の近さを飛行していた。中国は8月2日のナンシー・ペロシ下院議長による台湾訪問に猛烈に反発し、4日から台湾を包囲するかのように大規模な軍事演習を実施。ミサイルを台湾近海に次々と落とした。金門島でも3日夜、中国軍の無人機とみられる機体が上空を通過したばかりだった。不穏な空気が漂う中で突然飛来した無人機。兵士はこう振り返る。「こんなに近くまで無人機が飛んで来たことはなかった。何が起きるかわからない状況下で、緊張感が高まった」。この時は上官の指示で赤外線を照射する等し、約5分後、無人機は去った。無人機はミサイルを搭載できる軍用も多く、現代戦で重要な戦力の一つだ。ウクライナ戦線でもウクライナ軍が無人機で戦局を好転させた。金門島上空の無人機を撃墜すれば、中国との緊張が更に高まりかねない。台湾軍は当初、撃墜許可を出さず、信号弾で警告するよう指示した。住民からは「台湾軍には対抗する方法がないのか?」と不安視する声も出た。台湾軍は金門島上空に再び飛来した無人機を実弾で撃墜した。報復が懸念されたが、その後、無人機の飛来は減少した。ただ、中国は小型無人機の世界最大手企業も擁する“ドローン大国”。大型の攻撃用を含む多種多様な軍用機種も揃える。いつか大量の無人機が金門島に襲来するのではないか――。そんな不安は尽きない。また、台湾海峡では今月に入っても中国軍機が台湾海峡の中間線を台湾側に越える事案が相次ぎ、緊張は常態化しつつある。台湾の邱国正国防部長(※国防大臣)は今月4日、強い警戒感を示した。「中国は台湾海峡でニューノーマル(※新常態)を作り出そうとしている」。

「ドローン等が境界線を越えてきたら“第一撃”と見做す」。邱氏は今月11日、立法院(※日本の国会に相当)でこう述べた。台湾では従来、敵の発砲を“第一撃”と見做し、対抗措置を取る基準としてきた。だがその定義を、軍機や無人機の“領空侵入”に変えたとみられる。台湾海峡の緊張が更に高まるリスクを負ってでも邱氏が中国を強く牽制するのは、市民の不安を払拭する為だけではない。中国軍がこれまでになく台湾に迫ってきているからだ。台湾統一を“歴史的任務”とする中国の習近平指導部は近年、米台への対抗措置等を名目に、台湾海峡での現状変更を図ってきた。2016年の台湾総統選で、対中融和路線を取る国民党から、中国が“台湾独立勢力”と見做す民進党の蔡英文政権への政権交代が起きると、2017年夏頃から中国軍機が台湾を周回するルートで頻繁に飛行し始めた。2020年8月にアメリカのアレックス・アザー厚生長官(※当時)が、1979年の米台断交後で最高位の高官として訪台すると、中国軍は台湾海峡周辺で軍事演習を実施。18機が台湾の防空識別圏(※ADIZ)に入った。ADIZ進入が日常的となり、昨年には年間で延べ900機超が進入した。そして、今年8月のペロシ下院議長訪台を機に、中台の事実上の停戦ラインと見做されてきた台湾海峡の中間線を中国の戦闘機等が台湾側へ越えることが常態化し、更には無人機が金門島周辺で領空侵入を繰り返すようになった。台湾国防部によると、中間線越えは今月上旬までの約2ヵ月で延べ計約400機。『台湾国防安全研究院中共政軍・作戦概念研究所』の舒孝煌副研究員は、「中国は(中台の)中間線や、台湾の領海、領空を崩そうとしている」と指摘する。ただ、中国側の強硬姿勢には焦燥感も滲む。中国は武力行使による統一の選択肢を排除していないものの、基本路線は平和的な統一だ。台湾企業への各種の支援や、台湾の若者が中国で進学・就職をする際の優遇措置等、様々な懐柔策を進めてきた。だが、台湾人の統一への抵抗感は強いまま。中国は、台湾に一定の自治を認める一国二制度での統一を呼びかけているが、8月に台湾で実施された世論調査では、これに85%が「反対」と答えた。中国共産党の習総書記が今回の党大会を経て異例の3期目に入ると、2024年前半には台湾総統選がある。総統は連続2期8年までとの規定がある為、2期目の蔡氏は出馬できない。民進党の後継候補は、行政院長(※日本の首相に相当)時代に「台湾独立の為に働く」と公言した頼清徳副総統(63)が有力視される。中国にとっては国民党候補の勝利が望ましいが、台湾への軍事圧力を続ければ台湾人の心が更に中国から離れ、総統選で民進党を利するジレンマを抱える。台湾側は警戒を強めており、対中政策を主管する大陸委員会の邱垂正副主任委員は12日、海外メディアとの記者会見で「党大会後の習氏の台湾政策はより強硬になるだろう」と述べた。また、習氏への権力集中に言及し、「絶大な権限を持つワンマン体制下では判断ミスを招くことがあり、その結果のリスクも大きい」と指摘した。台湾が中国に対抗する上でアメリカ軍の後ろ盾は極めて重要だが、アメリカがロシアの侵攻を受けるウクライナを支援する為の派兵を控えたことで、台湾では一部で「中国が台湾に侵攻してもアメリカは派兵しないのでは?」との疑念が生まれた。蔡氏は10日の演説で、「我々は自らを防衛する責任を担っており、座して運命を待つことはしない。一人ひとりが台湾の守護者だ」と台湾人を鼓舞した。 (取材・文/台北支局 岡村崇/外信部 金寿英)

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【習近平3期目のリアル】(06) 農村人口減、高まる輸入依存

20230323 04
中国の習近平指導部にとって、“食の安全保障”が大きな課題となっている。国土は広いものの、農村人口の減少や国内需要の増加等を背景に近年、輸入への依存が強まっている為だ。更に、ロシアによるウクライナ侵攻やアメリカとの対立激化等、懸念材料が重なる。習指導部は自給体制の構築を急いでいるが、舵取りを誤れば14億人の国民生活を脅かしかねない。中国内陸部、湖南省の省都・長沙市郊外。野菜の種の開発・販売会社『湖南湘研種業』の敷地内にある約20万㎡の畑では、トウガラシやスイカ等の栽培実験が行われていた。経営トップの何久春董事長(※右画像)は、「毎年100以上の新品種を市場に投入している。主力のトウガラシは6000種類ほど研究しているが、商品化しているのは納得できる5~6種類だけだ」と品質に自信を見せた。習氏は2020年9月に湖南省を訪問した際、地元幹部に対し「食糧安全保障の重責を担うべきだ」と指示した。これを受けて、同省農業農村庁トップの袁延文氏は「種子産業の革新を全力で促進したい」と表明。湖南湘研種業の親会社で中国最大の種子会社『隆平高科集団』と地元政府が今年6月、“種子のシリコンバレー”戦略に調印した。穀物や野菜等様々な種子企業を集積させ、研究開発や生産体制を強化する戦略で、湖南湘研種業はその中核を担う。習氏は今年4月、「我が国が種子を自らの手にしっかりと握ってこそ、食糧安保を実現できる」とも強調している。中国が種子の開発に注力するのは、多くの野菜の種を海外産に頼っている為だ。中国の農産物を巡っては、日本で育成された高級ブドウ『シャインマスカット』等が勝手に持ち出され、中国国内で栽培が急速に拡大していることが問題視されている。ただ、こうした無断栽培が通用するのは苗木が中心の果物に限られる。多くの穀物や野菜の栽培では近年、人工交配された種子が主流となっている。だが人工交配の場合、同じ品質の種子は一代限りしか収穫できない。種子を毎年購入する必要があり、中国ではニンジンやホウレンソウ、タマネギ等多くの野菜の種子は海外産が9割を超えている。

特にブロッコリーの種の自給率は5%程度で、多くは日本からの輸入に依存する。中国メディアは、「若し日本が輸出を停止したら、中国のブロッコリーは消滅(の危機)に直面するだろう」との懸念を報じている。今年3月には改正種子法を施行し、種子の知的財産保護の規定強化や、これに違反した場合の罰金の引き上げも盛り込んだ。種子の国内開発が不十分だった背景には、シャインマスカット問題のように「農産物の知財保護に対する農家の認識の低さがあった」(日中外交筋)とみられるだけに、制度面でも改善に乗り出している。中国が危機感を抱くのは野菜だけでなく、主食の分野にも及んでいる。米、小麦、トウモロコシ、大豆、芋類の昨年の合計輸入量は、前年比18%増の1億6454万トンと過去最高を更新した。国内生産量も6億8285万トンと過去最高だったが、伸びは2%にとどまり、輸入依存が拡大した。中国の食料自給率は2000年頃は100%近いとされていたが、年々低下しており、大豆に至っては15%程度だ。中国メディアによると、中国経済の司令塔である国家発展改革委員会の元副主任、杜鷹氏は今年1月、食料自給率について「低下の速度は(自給率が3~4割前後の)日本や韓国、台湾より早い。我が国のカロリーベースの自給率は2035年に65%と、1960年代の日本並みの水準まで落ち込む可能性がある」と指摘した。輸入元にも大きな不安を抱える。トウモロコシは激しい対立が長期化するアメリカに全体の7割近くを依存し、残りの多くはロシアの侵攻を受けるウクライナ産だ。小麦も、アメリカや、近年関係が悪化するオーストラリア産等に輸入の多くを頼っている。中国政府内からは、「輸入元の多様化を進めて問題解決を図るべきだ」との考えが出ている。だが、米欧等との対立が深まり、ウクライナ危機も長期化する中で、習氏は自給体制の強化を重視しており、「国際市場に依存した解決を追求してはならない」と強調。「中国人の茶碗は、主に中国産の穀物で満たされるべきだ」と発破をかけている。ただ、中国では都市部への人口流入に伴って農村人口が急激に減少している。中国政府の統計によると、農村人口は2000年までは8億人を超えていたが、2021年には5億人を割り込んだ。収穫量の大幅な増加には限界があり、品種改良等に頼る他ない。例えば、中国のトウモロコシは現在、「単位当たりの収穫量はアメリカ産の6割程度」(中国農業農村省幹部)といい、海外勢との差は大きい。中国の農業生産に詳しいある専門家は、「(中国政府は)効率良く収穫量を上げる為、遺伝子組み換えやゲノム編集技術を積極的に活用するかもしれない」と指摘する。習氏は2020年8月、突如として食べ残し撲滅運動を始め、「食料の浪費を断固阻止せよ」と訴えた。食糧安保対策の一環だったが、今では既に下火となっており、政策の揺れには焦りも滲む。自給体制の強化に特効薬はない。食糧安保は、来月16日に始まる秋の共産党大会で異例の3期目を目指す習氏の視界を曇らせる要因の一つとなっている。 (取材・文・撮影/中国総局 小倉祥徳)


キャプチャ  2022年9月14日付掲載

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【習近平3期目のリアル】(05) 脱貧困“達成”、格差は拡大

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中国の習近平指導部が格差解消の為に掲げる看板政策『共同富裕(共に豊かになる)』が正念場を迎えている。農村部で貧困地域への支援を強化し、脱貧困の達成は宣言したが、富の再配分を促す取り組みは停滞。格差解消に向けた道筋は描けておらず、このままでは“看板倒れ”に終わりかねない。中国内陸部、湖南省の省都・長沙市から西に400㎞以上離れた山岳地帯。少数民族のミャオ族1000人足らずが暮らす十八洞村(※左画像)の中心部に入ると、道路は罅割れもなく、コンクリートや石で綺麗に舗装されていた。新築の住宅や商店が建ち並び、僻地の農村とは思えない光景だ。十八洞村は中国の脱貧困のモデル地域。2013年には習国家主席(※共産党総書記)が現地を訪問した。「習総書記が訪問した時、私の家の電化製品は5ワットの電球だけでした。今、私は十分に食べ、十分に服を着て、幸せに暮らしています」。村民の石抜三さん(60)はこう言って笑顔を見せた。習氏の訪問後、地元政府の支援を受けた同村では、キウイフルーツや蜂蜜、ミャオ族の伝統文化の刺繍等の生産を強化。動画を生配信しながら商品を販売するライブコマース等も活用して販路を拡大した結果、当時僅か1668元(※約3万3000円)だった年間の平均所得は、2016年に8313元、2020年には1万8369元と急増した。村には観光客の姿も目立つようになった。同村のトップである村共産党支部書記の施金通さんは「独居老人もいなくなり、(都市部に出稼ぎに出ていた)100人以上の若者が戻ってきた」と、現在の活況ぶりに自信を見せた。習指導部は、全国各地でこうした脱貧困の取り組みを強化した。その結果、農村部に約1億人いた年収4000元(※約8万円)未満の貧困層がゼロになったとして、習氏は2020年12月に「我々は絶対的な貧困を解消した」と宣言した。更に、昨年3月の全国人民代表大会(※全人代)で「脱貧困は終点ではなく、新たな奮闘の出発点だ」と発言し、建国の父である毛沢東が唱えた共同富裕の実現に向けて意欲を示した。背景には、貧困層の所得が底上げされても社会の格差が寧ろ拡大していることへの危機感があるとみられる。

昨年の年平均の可処分所得は、農村部の1万8931元に対し、都市部は4万7412元。この差は10年前に比べてほぼ倍増している。欧州の金融大手『クレディスイス』によると、中国で上位1%の富裕層が持つ富は全体の30.6%を占める。20%前後の日本や英仏を大きく上回り、アメリカ(※35.3%)並みの格差社会と言える。中国では、この比率は2000年から約10ポイントも上昇した。この為、習指導部は昨年8月に「高過ぎる所得を調整し、高所得層や企業に社会還元を促す」との方針を決定。IT大手に対し、独占禁止法等に基づく取り締まりを強化した。各社は共同富裕のモデル地区建設や農村・低所得者支援等の名目で、数百億~1000億元規模の巨額の資金拠出を相次いで発表する等対応に追われ、取り組みは一気に動き出すかのように見えた。だがその後、新型コロナウイルス対策等に伴って中国経済の減速傾向が目立ち始めると、共同富裕の機運は急速に萎んでいった。格差是正に向けた税制改革も進んでいない。習指導部は昨年10月、日本の固定資産税に相当する不動産税を今後、一部の都市で試験的に導入する方針を打ち出していた。住宅価格の高騰が格差拡大に拍車をかけていることが念頭にあった。だが、住宅の販売不振が長期化したことで、試験開始は先送りされ続けている。不動産大手や個人の住宅ローンに対する規制も、一旦強化された後、緩和の動きが出ている。今年3月の全人代では、施政方針に当たる政府活動報告で李克強首相が共同富裕に言及したのは僅か一度。不動産税と並んで格差是正に繋がるとみられていた相続税の導入は、議論の俎上にすら上っていない。抑も、こうした所得再配分策の実現はハードルが高いと見られていた。先送りされた不動産税は元々、5年間の試験期間を経て本格導入の是非を最終的に判断する計画だったが、国営メディア記者は「当初から本当に導入できるかどうかは微妙だった」と言う。習指導部は不正蓄財等を名目に、政府高官や共産党幹部らの摘発を続けて権力基盤を強化しているが、「不動産税や相続税の導入は、より幅広い関係者の既得権益に踏み込むことになり、大きな反発を招くのは必至」(上海の金融系エコノミスト)な為だ。今年の成長率は、新型コロナウイルスを厳格に封じ込めるゼロコロナ政策の影響で3~4%にとどまり、コロナ禍以前の6%台を大きく割り込む見通しだ。中国の高度成長期が市場の予想より早く終わる可能性が高まる中、所得の伸び悩みも今後、顕在化しそうだ。格差が拡大している現状を放置し続ければ国民の不満が高まり、社会不安の火種にもなりかねない。習氏は先月16日に東北部の遼寧省を視察した際、「中国式の現代化は人民全体の共同富裕による現代化であり、少数が豊かになることではない」と改めて強調した。今秋の共産党大会を控え、共同富裕で具体的な新機軸を打ち出せるのか。それとも、このまま掛け声だけに終わるのか――。格差是正は共産党統治の根源にも関わる問題だけに、長期政権を狙う習氏の本気度が問われている。 (取材・文・撮影/中国総局 小倉祥徳)


キャプチャ  2022年9月5日付掲載

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【習近平3期目のリアル】(04) 脱炭素、視界不良に

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中国の習近平指導部は気候変動対策の為、2060年に二酸化炭素(※CO2)排出量の実質ゼロを目指すとの目標を掲げている。中国は電気自動車等新エネルギー車(※NEV)の昨年の販売台数が世界一となり、この分野で脱炭素推進の姿勢を国際社会にアピールする。ところが同年、CO2排出増に繋がる石炭火力発電への回帰が急激に進み、習氏が掲げた脱炭素への道は視界不良となっている。中国内陸部、湖北省武漢市にあるNEVの製造工場。生産ラインには重厚なボディーのミニバンがずらりと並び、流れ作業で次々と部品が取り付けられていく(※右画像)。「我が国のNEVの強みは、市場全体が受け入れに熱心で、政府も強力に後押ししていることだ。短期間で非常に大きな経験を蓄積できている」。国有自動車大手『東風汽車集団』傘下の自動車販売会社で副総経理を務める劉展術氏は、こう強調した。2020年設立の同社では、30万元(※約600万円)超の価格帯の多目的スポーツ車(※SUV)やミニバンを市場に投入。今年6月には国営NEVメーカーで初めて海外進出を果たし、ノルウェーに販売拠点を開設した。劉氏は、「これを足がかりに他の北欧諸国やロシア等でも展開したい」と意気込む。『中国自動車工業協会』によると、昨年のNEV販売台数は前年比2.6倍の352万台。今年には500万台を突破すると予測されている。NEV推進は習指導部肝煎りの政策だ。習氏は2014年、NEVの発展について「我が国が自動車“大国”から“強国”に転換する上で必ず通らねばならない道だ」と強調。産業政策『中国製造2025』も、重点10分野の一つに位置付ける。政府は各メーカーに一定の比率でNEVの製造販売を求め、手厚い補助金制度を導入している。国策となった背景には先ず、この分野で技術的優位性を確保する狙いがある。中国は、ガソリン車やハイブリッド車(※HV)では技術的な蓄積の差が大きい日米欧等のメーカーに太刀打ちできない。そこで、官民挙げてNEVの技術開発と普及に集中投資し、主導権を握る戦略を描いた。海外進出もその延長線上にある。

中国工業情報省の辛国斌次官は6月、習指導部発足以来10年の実績を振り返る記者会見で、「NEVの発展は小から大に、弱から強へと成長し、世界の自動車産業の転換と高度化をリードするまでになった」と誇った。環境対策としての側面も大きい。中国は世界最大のCO2排出国だが、習氏は2020年の国連総会で「CO2排出量を2030年までにピークアウトし、2060年までに実質ゼロ実現を目指す」との“3060”目標を表明。その翌年には「国外での石炭火力発電所の新設をしない」等と宣言した。こうした国際公約の実現に向けて、排ガス規制や再生可能エネルギー推進等に積極的に取り組んでおり、NEVも柱の一つだ。中国が長年に亘り悩まされてきた大気汚染への対策としても有効で、『北京日報』は今年3月、大気の環境が観測史上最も改善され、「北京の奇跡を実現した」と大々的に報じた。この習指導部の脱炭素路線に水を差したのが、昨年9月に中国全土で深刻化した電力不足だった。北京市北部を走る石炭運搬専用鉄路・大秦線を見渡せる場所に立つと、黒々とした石炭を満載した列車が姿を現した。産炭地である山西省大同市を出発する大秦線の列車は約2.6㎞もの長さがあるとされ、眼下を走り抜けていく。中国では、CO2排出量の多い石炭火力発電が発電量の約6割を占める。習指導部は脱炭素推進の為、地方政府にエネルギー消費量削減を求め、石炭の産出量も抑制傾向にあった。だが、新型コロナウイルスの影響で落ち込んでいた企業の生産活動が回復したことで、電力需要が増加した。夏場の猛暑で電力使用量が増えたが、石炭価格が高騰していた為、電力会社は発電量を増やせず、各地で電力不足が深刻化。停電や企業の操業停止が相次いだ。危機感を抱いた中国政府は昨年9月、石炭の増産を指示。生産量は急増し、2021年通年で前年比5.7%増の41.3億トンと過去最高を記録した。増産は今年も続き、6月までの上半期で前年同期比11.0%増の21.9億トンと、2021年を凌ぐ勢いだ。大秦線で運ばれる石炭も、例年より増えている。李克強首相は3月の全国人民代表大会(※全人代)の政府活動報告で“電力の供給保障”を強調。“石炭火力発電のクリーン・効率化利用の強化”等に言及し、前年は「GDP創出に必要なエネルギー量を3%減らす」等と盛り込んだ単年度の数値目標の公表を取り止めた。秋の党大会を控える政治的に敏感な時期に国民の不満が高まる事態は避けねばならず、国際公約の推進よりも電力不足の解消を優先した形だ。国際情勢の変化も影響した。中国の石油の対外依存度は72%、天然ガスは46%。とりわけ天然ガスはアメリカからの輸入量が多い。ロシアによるウクライナ侵攻で世界的にエネルギー需給が逼迫して、原油価格等が高騰していることや、米中対立の長期化等を受けて、国内でほぼ自給可能な石炭に回帰したというわけだ。脱炭素の国際公約に逆行する動きだが、中国だけの問題とも言えない。ウクライナ危機を受けて、ロシアへのエネルギー依存度が高いドイツ等欧州諸国でも、石炭回帰への動きが出ている為だ。中国のエネルギー事情に詳しい政府関係者は、「中国政府は最近、“3060”の目標をあまり言わなくなった。欧州でCO2削減の目標達成が危ぶまれる中で、しめしめと思っているのではないか」との見方を示した。 (取材・文・撮影/中国総局 岡崎英遠)


キャプチャ  2022年9月3日付掲載

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【木曜ニュースX】(322) 劇的な英語力向上の裏にある想いとは…佳子さまは小室眞子さんと同じ道を辿るのか?

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姉の眞子さんが小室圭さんと結婚して皇室を離れて以降、お出ましの機会が増え、女性皇族としての存在感を高めている佳子さま。先月16日には国内ブランド『STRAWBERRY-FIELDS』の約3万円のワンピースで、『現代女流書100人展』をご鑑賞。佳子さまを案内した書家の大川壽美子さんが語る。「一つひとつの作品を丁寧にご覧になっていて、『楽しいです』と。桜をテーマにした作品を観た時は、『広がる空間が綺麗ですね』と仰っていました」。今月6日には、嘗て雅子さまや美智子さまも視察された、身近な発明品のコンクール受賞作品を展示する『なるほど展』をご訪問。「一昨年はリモートでのご参加だったのですが、今回同じ発明品をみて、『こちら、あの時の!』と仰って。覚えていて下さったのだと、感激しました」(主催の『婦人発明家協会』広報担当)。この日は水色のセットアップを着用していたが、「2017年の秋篠宮さまとの宮城県ご訪問時にもお召しになっていたもの。ただ、イヤリングがパールから雫型の水色の石が付いたものに。皇族の多くはパールを選ばれる中、公務でもデザイン性の高い品を着けるのは眞子さんの特徴でした。佳子さまも自分の公務スタイルを模索する中で、影響を受けられたのでしょう」(皇室ジャーナリスト)。一方、眞子さんの結婚を巡って“距離”が生まれていた親子関係は、依然として変わらないという。

「昨年9月に秋篠宮邸の改修工事が終了し、ご一家は仮住まいの御仮寓所からお引越しをされた。しかし、佳子さまは一人、御仮寓所の自室にとどまられています」(宮内庁担当記者)。秋篠宮家関係者が背景を明かす。「お引越しをされないのは佳子さまのご意向。今後も分室で過ごされるようです。ご両親も、離れた場所ではないし、敢えて反対する理由はないとお考えなのです」。そんな中、記者達が目を見張った場面がある。先月14日、佳子さまは赤坂東邸で国際交流プログラム『世界青年の船』の参加者と約1時間に亘り面会。海外からの参加者と、身振りを交えながら英語で交流される映像が公開された。「佳子さまは元々、英語があまりお得意でないと言われており、眞子さんは英語で書いた国際基督教大の卒論も日本語で書かれていた。2018年の公務では初めて英語でのスピーチを披露されましたが、原稿に視線を落とされたままでした」(別の宮内庁担当記者)。更にはこんな出来事も。「2019年にオーストリアとハンガリーを訪問した際、宮内庁側が相手国に『母国語で話して下さい』と通知する“英語禁止令”が出されたのです。英語で話しかけたら英語で返さないといけなくなるが、母国語なら通訳を挟めるからという理由でしょう。今回、通訳を介さずに会話をする様子が公開されたのは、“英語力が向上した”というアピールともとれます」(同)。4年前とは見違える英語力の“激変”。佳子さまが目指されているものとは――。「佳子さまは渡米後の眞子さんに『会いたい』と伝えているそうです。海外公務の際にアメリカを経由すれば、上手く時間を作って再会することも可能になります。英語の勉強は今後、海外公務に励む為に備えているのでしょう」(小室夫妻の知人)。その先に見据えるのは、眞子さんが辿った道である。「紀子さまは、南米での公務で体調を崩されながらも過酷な日程をこなした眞子さんの姿に心を打たれ、結婚を許された。同じく結婚して皇室を出ることを望んでいる佳子さまも、何れは海外で自由な生活を送る――という選択肢を視野に入れ、英語の勉強に注力されているのでは」(前出の皇室ジャーナリスト)。あと2年で、佳子さまは姉上が結婚した年齢となる。


キャプチャ  2023年3月23日号掲載

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【堀江宏樹の「セックスで読み解く日本史」】(07) 江戸時代の“極上名器”の条件とは!?

江戸後期にあたる文政期(※1818~1830年)には多くの艶本が発行され、話題を呼んだことが知られています。例えば、この時期に“おまんこ”という単語が歴史上、初めて活字化されたことも有名ですね。但し、当時の“おまんこ”は可愛らしい幼児語だそうで、現代日本で“おまんこ”に相当する単語は“ぼぼ”でした。当時の書籍を見てみると、“玉門”と書いて“ぼぼ”と読ませていたようです。江戸時代では“ぼぼ”より“おまんこ”というのが女性器の丁寧な呼び方だったとか…。この頃の艶本は、現代のエロ本に相当すると考えられがちですが、実際は有名絵師が挿絵を描いていたり、内容にも妙に深遠な広がりがあって、エロ本等と訳すと怒られそうな代物です。文政8(1825)年に刊行され、有名絵師・渓斎英泉も参加した『和合淫質録』という艶本には、“極上の玉門”についての記述があります。名器の条件のひとつは“上付き”であること。極論すれば、臍側に女性器があるのがベストで、肛門に近い“下付き”ではだめでした。「上付きは欧米人に多く、下付きはアジア人に多い」(著・土屋英明『中国の性愛術』)そうですが…。しかし、直ぐには理解できないような奇妙な名器の条件が他に挙げられているのは見逃せません。“極上の玉門”の内部には“玉英”と呼ばれる玉があるそうで、現代人には馴染みのない発想ですが、江戸時代後期にはかなり一般的だったことには驚かされます。この“おまんこ玉”については、かなり多くの艶本で触れられているのです。『房内戯草』という本では、上品(≒あげまん)の女の女性器内部には3つの玉があり、其々“せん玉・ほう玉・ひょう玉”という名前が付いていると定義しています。

内部に玉が多い女性器は性交中に愛液の分泌が多く、男には快感なのだとか。それどころか、男を健康にし、寿命を伸ばす薬のような存在とさえ書かれていますね。逆に下品の女だと、内部の玉が少なく、しかも良くない場所に付いている為、セックスをしても男は快感が薄く、“260年”分の寿命まで吸い取られるのだとか。現代的に玉を解釈するなら“子宮膣部の頸管部”を指すという説もありますが(※著・渡辺信一郎『江戸の閨房術』)、実際はもっとシンプルで、“ミミズ千匹”や“数の子天井”等のイメージに近いのではないかと筆者には思われてなりません。さて、幸運にも玉だらけの上品おまんこの持ち主と巡り会えたのなら、セックスするだけではもったいないという発想が当時にはありました。女性が絶頂に達した時に分泌されるバルトリン腺液――江戸時代の言葉でいう精液を得る為のお作法がありました。洗浄した女性器の割れ目に指を入れ、ひたすら手マンした後に、揉んで柔らかくした紙の栓を差し込む。次いで女性器の外陰部を100回、内陰部を75回、外尿道口も75回舐めまくって、先程の紙を引き抜き、舌を割れ目の奥まで突っ込んで、出てきた液を飲み干すと、どんな消耗状態からも復活できるのだとか。これは、葛飾北斎が挿絵を描いた『陰陽淫蕩の巻』という艶本で紹介されている秘術ですが、抑も体力・気力がなければ、こんな呪術めいたプレイは出来ないし、同書では呪文の歌を歌いながら作った茹で卵でも代用できるとあるので、病人にはそちらをおすすめしたいです。語られる内容はお下品でも、上品や下品という仏教用語を女性器の状態を語る為に当てはめた事は、即ち江戸時代でも女性器に神秘的な価値があったということでしょう。江戸期の艶本の奥深さには目眩がする思いです。


堀江宏樹(ほりえ・ひろき) 作家・歴史エッセイスト。1977年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。日本・世界を問わず、歴史の面白さを拾い上げる作風で幅広いファン層を持つ。著書に『乙女の日本史』シリーズ(KADOKAWA)・『眠れなくなるほど怖い世界史』『愛と欲望の世界史』『本当は怖い日本史』(三笠書房)・『偉人の年収』(イーストプレス)等。


キャプチャ  2023年2・3月号掲載

テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

【水曜スペシャル】(579) バチカンで教皇と反対派が“内戦”…カトリック改革を巡り応酬

20230322 08
前ローマ教皇ベネディクト16世の昨年末の死去を契機に、バチカン(※ローマ教皇庁)が“内戦状態”になったとの見方が浮上した。アルゼンチン出身の現在のフランシスコ教皇(※右画像)は、カトリックの生き残りを懸け改革を急いでいるが、欧州を中心として「ベネディクト16世時代の改革を蔑ろにしている」との不満が出ていた。ここにきて反教皇派は、「生前のベネディクト16世は今のやり方に懸念を抱いていた」とリークし始めた。1月にはバチカンの元官僚が、フランシスコ教皇の側近集団を非難する書籍をドイツで発表。これに対し、フランシスコ教皇は反対派を「教会ではなく党派に属している」と強く批判している。


キャプチャ  2023年3月号掲載

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

【水曜スペシャル】(578) 移民を民主党知事の州に送り込み…フロリダ州知事が予算獲得

20230322 07
2024年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏に対抗して共和党候補を狙うフロリダ州のロン・デサンティス知事(※左画像)が先月10日、州議会から“アメリカに不法入国した移民を自由に移動させる権限”を認められた。民主党の知事がいる州への送り込みを強め、“不法移民に厳しい姿勢”を全米に示す構えだ。デサンティス氏は昨年9月、テキサス州に入った移民を富裕層の多いマサチューセッツ州マーサズビンヤード島に“空輸”した。富裕層に国境の州の苦しみを思い知らせれば「問題は改善される」としてきた公約実現の為だった。ただ、移送にフロリダ州の予算を使用したことから、「税金の不正利用だ」と訴えられていた。今回の州議会承認で移送予算1000万ドル(※約13億円)が用意され、こうした訴訟リスクは回避されるという。不法移民の増加を「ジョー・バイデン政権が甘いからだ」と責めるのは、最も効果的な民主党攻撃。テキサス州のグレッグ・アボット知事(※共和党)が、昨年4月から不法移民のワシントンやニューヨークへの“転送”を始め、保守派の喝采を浴びたのを確認した上で便乗した格好だ。


キャプチャ  2023年3月号掲載

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

【村西とおるの「全裸で出直せ!」】(191) “絶対”を口にする資格は私にはない…貴方にはあるか?

テレビや映画で観る上品な“人気女優”からは窺い知れないことですが、彼女達“女優”という人種の自己顕示欲と承認欲求は、半端なものではありません。嘗てアイドル兼歌手兼女優であったAのPVをハワイで撮影しました。その頃、彼女は高い視聴率のテレビ番組で有名司会者のアシスタントをしたり、レコードを出したり、写真集を出したりの活躍で、多くのファンを獲得していたのですが、プライベートでは人見知りする性格なのか、撮影していても神経を尖らせていて、気を許す気配はありませんでした。であっても、そこは味を知り染めた男と女のこと。満天の星の輝くハワイの夜で、“男と女”の関係となりました。一度関係を結んでしまうと“監督”と“女優”という垣根は取り払われ、日本に戻ってからも”お突き合い”が続きました。互いの体の相性の良さが原動力となったのです。突き合っているうちにAは、不安定な芸能界で生きていく不安を打ち明けました。「安定した収入が約束される副業を持ちたい」との彼女のご要望に応え、5000万円程かけて渋谷円山町のラブホテル街の入口に焼肉店をオープンさせたのです。そこで彼女に芸能界での活動の傍ら、店長をやってもらうことにしたのでした。今では芸能人の副業など珍しくもないのですが、当時はマスコミに取り上げられたこともあって話題を呼び、開店してからは連日大盛況となりました。

ところが、残念なことに順調にはいきませんでした。肝心の看板娘のAから芸能人気質が抜けず、誰彼とご来店のお客様に愛嬌を振りまくという当たり前の芸当ができなかったのです。信じられないことですが、テーブルに座ったお客がお店に出ている彼女を見て、「わぁ、Aちゃんだ!」と歓声を上げると上機嫌に接客するのでしたが、何も反応を示さないお客の時はご機嫌ナナメとなり、冷淡に接したのです。厨房から出来上がった料理を運んで行かず、代わりに厨房の人間が運ぶといったこともありました。料理長からそのことを知らされ、「お客様には分け隔てのない笑顔を」とAを諭しても、「私のファンでもないお客と口も利きたくない」と頑なです。お店は私が芸能人としてのパフォーマンスをするステージ、と信じている彼女の誇りは高く、「私を誰だと思っているのよ!」と鼻息荒く泣きじゃくる前に為す術もなく、1年が経ちました。気がつけばお店に閑古鳥が鳴き、Aもお店に出てこなくなり、「他の人間に店長を変えたら?」との考えもありましたが、「私のお店を他の誰にもやらせたくない」とのAの意向を汲んで、閉店の止むなきに至ったのです。お店に運転資金を入れて1億円を注ぎましたが、Aの“女優のプライド”の前に脆くも砕け散ったのです。


村西とおる(むらにし・とおる) AV監督。本名は草野博美。1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売や英会話教材のセールスマン等を経て裏本の制作・販売を展開。1984年からAV監督に転身。これまで3000本の作品を世に送り出し、“昭和最後のエロ事師”を自任。著書に『村西とおるの閻魔帳 “人生は喜ばせごっこ”でございます。』(コスモの本)・『村西とおる監督の“大人の相談室”』(サプライズBOOK)等。


キャプチャ  2023年3月23日号掲載

テーマ : 人生を豊かに生きる
ジャンル : 心と身体

【高市早苗の月刊国会レポート】(13) 今年挑戦する8つの課題

豪雪被害やインフルエンザ患者数の増加等、今年も大変な冬ですね。皆様、お元気でいらっしゃいますか? 通常国会の前半は、衆参本会議の政府四演説と各会派の代表質問で、本会議場の雛壇に長時間座り続けることから始まります。予算委員会は、テレビ中継されるのは衆参其々通常3~5日程ですが、例年3月下旬頃までは予算案審議が続きますので、閣僚席は冷えや腰痛との闘いです。省エネの為だとは思うのですが、衆議院の予算委員会室は寒過ぎる! 臨席の鈴木俊一財務大臣は、「動脈が通っている太腿に懐炉を貼ると温かいんですよ」とドヤ顔で仰っていたのですが、数時間が経過すると「暑いっ…」と呟き始め、汗を何度も拭われ、暫く我慢した挙げ句にトイレに駆け込んで懐炉を外してこられます。懲りずに何度も同じことを繰り返しておられるので、妙におかしくなります。答弁に立つ西村康稔経済産業大臣の後ろ姿を拝見していますと、背中に長方形の型がくっきりと浮き上がっていますので、多分、背中に懐炉を貼っておられるのでしょう。暑くなり過ぎず、低温火傷の心配をしなくて済むには、懐炉をどこに貼るのがベストなのか…。ご存知の方が居られたら教えて下さいね。私が閣僚として令和5年に対応しようと考えている課題を、幾つかご紹介しますね。先ず、経済安全保障担当大臣としては、昨年12月から具体的な取り組みを開始した“重要物資の安定的な供給の確保に関する制度”(※サプライチェーン強化、令和4年12月に11物資を政令指定)と“先端的な重要技術の開発支援に関する制度”(※令和4年12月から第一次公募を開始、令和5年1月末日から第二次公募を開始)を、しっかりと推進していきます。これらは、海外に過度に依存し、供給途絶の蓋然性が高い物資について、国内で生産を拡大したり、代替物資の研究開発をしたりできる環境を整えると共に、安全保障等の観点から重要な技術の国内における研究開発を進める取り組みです。経済安全保障推進法の中で未施行の“基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度”と“特許出願の非公開に関する制度”の施行に向けても、準備を開始したところです。加えて、私の悲願だった“SC/セキュリティークリアランス(重要技術情報等を取り扱う者への資格付与)”の制度整備に向けて、力を尽くします。

昨年来、岸田文雄総理にSC制度整備の必要性について説明を申し上げてきましたが、去る2月14日に官邸で開催された経済安全保障推進会議の席上で、総理から正式にSC制度検討開始のご指示を頂くことができました。先進諸国がSC制度を整えている中で、日本企業が友好国の政府調達や民間企業同士の取引や共同研究から外されつつある現状を改善したく、歯を食い縛って制度整備に取り組む覚悟です。重要土地等調査法を担当する大臣としては、昨年12月27日に初回の区域指定(※58ヵ所)を行ない、2月1日に区域指定が施行されたばかりですので、土地・建物の利用状況調査をしっかり行なうことで、制度の実効的な運用に万全を期しつつ、次の区域指定の準備にも着手します。科学技術政策担当大臣としては、今年5月に開催されるG7仙台科学技術大臣会合の議長としてリーダーシップを発揮し、科学技術イノベーション分野における日本のグローバルなプレゼンスの向上を図ります。昨秋から順次、各国の科学技術担当大臣と会談して、議題の詰めを行なっています。また、一昨年に刊行した著書『美しく、強く、成長する国へ。私の“日本経済強靭化計画”』(※弊社刊)にも記した核融合炉(※ウランやプルトニウムが不要で高レベル放射性廃棄物が出ない重水素発電炉)の実現に向けた取り組みも進めています。昨年9月30日に『核融合戦略有識者会議』を設置して議論をスタート。同会議で続けてきた議論を取り纏め、今年4月を目途に日本初の核融合戦略を決定する予定です。クリーンで安全なエネルギーの安定供給は次世代への贈り物になりますし、発電開始以前であっても、現在のITER計画における日本企業の技術的優位性は高く、核融合研究から派生する多くの技術が日本の経済成長に貢献すると考えています。宇宙政策担当大臣としては、今年夏を目途に『宇宙の安全保障構想』を策定すると共に、民生分野や科学・探査分野も含め、3年ぶりに宇宙基本計画を改定します。国防や災害対応に必要な情報収集衛星や通信衛星の打ち上げを増やしていきたいと考えています。先月号にも書きました通り、スペースデブリ(※宇宙ごみ)を除去する実証衛星打ち上げと運用によって宇宙デブリへの対応を加速すること、公共調達等を通じて宇宙分野のスタートアップを支援することにも取り組みます。知的財産戦略担当大臣としては、日本のイノベーションを活性化し、国際競争力を強化していく為、スタートアップ・大学の知財エコシステムの強化、知財・無形資産の投資・活用促進メカニズムの強化、国際標準の戦略的な活用の推進、デジタル時代のコンテンツ戦略の推進等の施策を、官民一丸となって推進してまいりたいと存じます。健康医療戦略担当大臣としては、次世代医療基盤法について、個人情報を保護しつつ、医療情報の研究開発における利活用が更に進むよう、法改正にチャレンジします。特に経済安全保障については、まだまだ多くの課題意識があり、次の内閣改造までに着手できるか否か、時間との闘いですが、兎に角、懸命に働いてまいります。


高市早苗(たかいち・さなえ) 経済安全保障担当大臣。1961年、奈良県生まれ。神戸大学経営学部経営学科を卒業後、『松下政経塾』に入塾。1993年の衆院選で初当選後、自由党、新進党を経て自民党に入党。総務大臣や衆議院議院運営委員長等を歴任。著書に『歴史教科書への疑問 若手国会議員による歴史教科書問題の総括』(展転社)・『美しく、強く、成長する国へ。私の“日本経済強靭化計画”』(WAC BUNKO)等。


キャプチャ  2023年4月号掲載

テーマ : 政治家
ジャンル : 政治・経済

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