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【言論StrongStyle】(226) 憲法を杓子定規に適用せず皇室の掟に任せることで、憲法と皇室は調和してきた



戦前の日本人には常識だった。憲法の前に皇室がある。憲法典は皇室の存在を確認しているに過ぎない。違っても、憲法典によって皇室の存在が規定されたのではない。ところが、敗戦により日本の総力を破壊する目的で日本国憲法が押し付けられた。それに媚びて、日本国憲法を聖書の如く崇拝する売国奴までも登場した。しかし、当時の日本人は徹底的に防戦。日本の総力破壊を防いだ。そして、その日本国憲法とも、皇室は上手く調和して、これまでやってきた。政治が憲法典の改正(※本来なら破棄すべきだが)を行なわず、このようなゲテモノを今に至るまで押し戴いているのだから、皇室も調和するしかない。では、どのように調和してきたか。例えば、法の下の平等を定めた憲法第14条である。〈すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない〉とある。これを杓子定規に適用したとする。おかしなことになる。具体的に説明しよう。現在の皇室典範では、皇族になる条件を血縁と婚姻の2つとしている。血縁とは、天皇・皇族を父とする子供を皇族とすること(※但し現行典範では庶子は皇族と認められない)。婚姻とは、天皇・皇族との結婚により、皇族の身分を得ることである。血縁による皇族身分の取得、つまり生まれた瞬間に皇族となるとは、それこそ身分制に他ならない。しかし、日本国憲法の第1章は“天皇”であり、最初に存在を認めている。天皇・皇族は国民ではないので、権利義務が同じではないし、一般国民と同様の人権規定が適用されるわけではない。第14条は第3章の規定なので、皇室の方々に杓子定規に適用されないと解釈されて実務(※政府の有権解釈でもある)は運用されているし、この解釈で通説に争いはない。抑も、皇室は世界一の“門地”だ。

では、婚姻のほうはどうか。現在の、上皇后陛下、皇后陛下、皇嗣妃殿下は御三方とも生まれた時は民間人だったが、皇族との結婚により皇族となられた。では、憲法14条が禁止する“性別による差別”か。特定の国民の中から、特定の人だけを皇族とするのが差別ならば、形式要件でそこだけ取り出したら差別である。先ず、女性だけが皇族になれるのは男性差別である。また、皇族になれる女性とその他の女性との間でも差別が生じている。ところが、誰もそんな恥ずかしいことは言わない。また、どの憲法学の教科書にも「婚姻により皇族となる時だけは憲法14条の例外」等とは書いていない。政府の有権解釈も通説も、皇室を“身分制の飛び地”としているのだ。平たく言えば「皇室のことは皇室にお任せする」であり、実際に誰を皇族とするかに関しては、憲法を杓子定規に適用するのではなく、皇室の掟に任せてきたのだ。最終的には皇室典範を国会が定めて、そうした運用に国民的承認を経てきており、皇室と憲法、君民の調和が保たれてきたのだ。では、国会が一時の多数決で好き勝手やって良いか。日本国憲法の条文の一部の“国会の定めた”だけを切り抜きすれば、そのような誤解も出てこようが、そんなものは憲法初心者の議論だ。日本で最も読まれている憲法学の教科書、芦部信喜『憲法』(※いわゆる“アシベの憲法”)の冒頭には、憲法には形式的憲法と実質的憲法があると書かれている。形式的憲法とは、文字に書かれた憲法典のこと。我が国では日本国憲法のことである。実質的憲法とは“国家の統治の基本を定めた法”であり、「成文であると不文であるとを問わない」とされる。日本国憲法の文字だけが憲法ではないのである。憲法の文字に書かれてあることを守るのが合憲、書かれてなくても守らねばならない掟を守るのが立憲である。例えば、民主的手続きに則れば“民主政治を止める”は許されるか。本当にやろうとした場合、止める方法はないが、やっていい筈がないのは子供でもわかろう。仮にそのようなことが行なわれた場合、合憲かもしれないが、非立憲である。

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テーマ : 天皇陛下・皇室
ジャンル : 政治・経済

【宇垣美里の漫画党宣言!】(119) これぞオタク女子の夢の住まい!

付き合いの長い友人達と飲む度に、「お婆ちゃんになったら絶対に同じマンションに住もうな」という誓いを立て合っている。たとえ結婚していようとしていなかろうと、子供がいようがいまいが、人生の最後は支え合って面白おかしく生きていこう、と。全員一人の空間が必要なタイプだから、シェアハウスじゃなくて、一部屋一部屋が独立した同じマンションのほうが気兼ねしなくていいかも…なんて希望まで。『同人女アパート建ててみた』は、そんな私達にとってまさに理想の住まい! というか、こんなのいつの世もどの世代の女にとってもロマンそのものでは? 銀行員であり、同人活動に励むオタクのA子には夢があった。それは、同人活動か創作活動をやっている女性限定のアパートを建てること。学生時代ひとりでオタク生活を送っていたA子は、皆で同じ空間で原稿を書いたり、一緒にアニメをリアルタイム視聴したりする、いわゆるオタクライフに並々ならぬ憧れがあったのだ。実家所有のボロアパートと土地を担保に5000万円の融資を受けて、新築の“同人女アパート”が無事完成。ところが、A子の掲げた特殊な条件と、相場より高めな家賃設定の為、入居者ゼロでスタートしてしまうことに。果たしてA子は初志貫徹し、同人女アパートの大家となれるのか。

共用スペースには複合機や人体工学に基づいた椅子、無線LANも完備してある最強の原稿部屋だけでなく、なんちゃってライブビューイングや、ゲームも大画面で楽しめるホームシアタールームも併設。創作系オタクにとっては夢の城のようなアパートの描写に、思わずうっとり。私自身は同人活動こそしていないが、彼女達と同じくらい〆切に追われている身、おまけに重度のオタクなので、この物件の良さは痛いほどわかり、共感が止まらない。誰かと一緒なら黙々と頑張れるのに、一人だと気づいたら延々とインターネットの海を徘徊しちゃっていること、あるよね…。同人活動や大人オタクならではのあるあるは勿論のこと、ローンの支払いや家賃収入等の不動産経営で直面する問題も学ぶことができる本作。夢の実現を前に立ちはだかる現実は、中々に世知辛い。が、そんな中でA子の夢を応援する同人仲間達や、仲間のサポートのおかげもあって、集まった入居者達の間に生まれる女性同士の緩やかな連帯が眩しく映る。性格や好きなジャンル、其々の同人活動の出力方法は違っても、根っこは同じな彼女達の会話を、いつまでも聞いていたいと思えた。作品の設定は2011年あたりとのこと。そこから推察すると、登場人物達各々のハマっているジャンルのモデルが何となく見えてくるところも楽しい。幾つもの困難を乗り越え、無事満室となった同人女アパート。肩の荷が下りて漸くイベントに出かけることができたA子だったが、そこで新たな問題が発覚する。不穏なラストにハラハラし、どうか私達の将来の夢そのままの同人女アパートが無事運営されていきますように…と神を拝みながら次巻を待っている。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。著書に『風をたべる』(集英社)・『宇垣美里のコスメ愛』(小学館)・『愛しのショコラ』(KADOKAWA)。近著に『風をたべる2』(集英社)。


キャプチャ  2024年4月11日号掲載

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

【劇場漫才師の流儀】(299) 横浜の高校生

やはり、色々な場所で漫才をやるべきですね。一昨年から昨年にかけて、『吉本興業』110周年を記念して、『わろてください!オール阪神・巨人です!』という全国ツアーをやったんですけどね。それから、色んな方から手紙を頂くようになりました。先日も、『ルミネtheよしもと』での公演に来てくれた横浜の高校生から手紙を貰ったんです。彼はお笑いが大好きで、僕達の漫才を見るのは初めてだったそうなのですが、「とても感動しました」と書いてくれていました。彼は、この4月から東京の私大への進学が決まっていて、ゆくゆくはお笑いの裏方の世界を学び、漫才師になりたいそうです。丁寧な手紙を頂いた時、僕はなるべく返事を書くようにしています。ただ、そこに自分の家の住所を書くかどうか迷うんです。会社の住所を書くのは、何か冷たい感じがするじゃないですか。なので、最近は『LINE』のIDを書いています。「何かあったら、今度はこちらに連絡を下さい」と。そうしたら、その横浜の高校生から、また連絡が来ましてね。「色々と聞きたいことがあるので、一度お会いすることはできませんか?」とお願いされたんです。とても熱心な子やったんで、「いつでもいいから来て下さい、会いますよ」って返したんです。僕は普段から、SNS等で繋がっているファンの方でも、「劇場に来られることがあったら楽屋へお越し下さい」って声をかけたりするんですよ。

この前も、それで初めて会った方がいました。SNSでやりとりをしていれば、常識のある人かどうか何となくわかりますからね。そして、横浜の高校生は早速、大阪まで来たんです。なので、僕の隠れ家マンションで『ガスト』のデリバリーで唐揚げやらを頼んで、3時間ぐらい話しました。賢い子なんやろね、ちゃんとした質問ノートを作ってきて、色々聞かれました。ネタはどのように作っているのかとか、舞台に立つ時の心構えとか。その翌日、彼は大阪にある吉本の劇場を3つ全部回ったそうです。『なんばグランド花月(NGK)』と、その隣にある『よしもと漫才劇場』と『森ノ宮よしもと漫才劇場』。其々どんな劇場なのか見てみたかったそうです。その後のやりとりで、舞台袖から僕らの漫才を見るのが夢なんです、と言ってきたんです。それも、この子だったら叶えてあげたいなと思いましてね。「NGKの週の出番やったらええよ」と返したら、初日に来ましたよ。そこまでしてあげたのには理由があったんです。最初に会ったとき、彼にサインを書いたのですが、彼の名前の漢字を間違えてしまってね。「あっ」と思ったんですけど、彼は咄嗟に気づかないふりをしたんです。その時に「心遣いのできる、頭のええ子なんやな」と思ったんです。彼が芸人になれるかはわかりませんが、ええ大人にはなるでしょう。いつかスター漫才師になっていたりしてね。 (聞き手・構成/ノンフィクションライター 中村計)


オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(ワニブックス)。近著に『漫才論 僕が出会った素晴らしき芸人たち』(ヨシモトブックス)。


キャプチャ  2024年4月22日号掲載

テーマ : お笑い芸人
ジャンル : お笑い

【安田理央の「アダルトカルチャーの今と未来」】(70) 規制反対を叫ばないAV業界で生きる人々の“ある習性”

施行2年目で見直しが迫っているAV新法について、AVメーカー社長のT氏に話を聞いています。「アダルト業界って、これまで色々な規制を押しつけられては、それに従いながらも、少し食み出したり、抜け道を探してきたりしたんですよ。陰毛がだめだった時代なら、剃っちゃったり、透けさせたりしてね。お上に歯向かう暇があったら生き延びる道を探したほうがいい、という習性が染みついちゃっているんです」。アダルト業界の人達は戦わないで抜け道を探す、というのは僕が長年アダルトメディアの歴史を研究してきた中でも実感していることです。陰毛表現の解禁に関しても、戦ったのはアート方面の人達でした。「確かに、AV新法によって面倒くさくなったことは多いけど、慣れるんですよ。昔からやっている人にとっては大変だけど、最近この業界に来た人にとっては『そういうものでしょう?』って。6年前に適正ルールが決まった時も大変だったけど、もうそれ以降に業界に入った人もかなり多くなっているから、あれが常識になっているんですよ」。AV新法の見直しに関しては、現在より厳しくなる可能性があり、本番行為の禁止も検討されています。そうなるとAV業界としては、大きなダメージを受けるのでは?

「本番禁止になっても、フェラチオがあるじゃないですか(笑)。うちなんかはフェチ系、マニア系の作品が多いから、本番に依存していない。寧ろ規制されたほうがいいくらいですよ」。以前、別の監督に話を聞いた時も、「たとえ本番が禁止になっても、演出でもっとエロいものを撮る自信がある」と言っていたことを思い出しました。制限がある中で全力を尽くすというのが、アダルト業界の人の方法論なのだと言えるのでしょう。このあたりに、AV新法見直し運動に対して、業界の人達の大半が今ひとつ盛り上がっていない理由があるのかもしれません。「エロいことをやってお金を貰っている我々が、世間様に偉そうなこと言っていいのかしら、とは思っています」。T社長はそう言いながらも、こう付け加えました。「でも、だからといって差別されるのは心外ですね」。AV新法がAV業界の人々を差別しているのではないかということは、2月20日に行なわれた『AV産業の適正化を考える会』のシンポジウムでも繰り返し言及されました。「AV新法は、表現の自由、そして職業選択の自由を侵害しているのではないか」という指摘もありました。「AVに出演している女性を全て被害者だと位置づけているのは、女性の自己決定権を無視していると思うんですよ。AV女優を責任の取れない子供だと決めつけているのは、やはり差別ですよ」。そう語るのは、同会発起人のひとりであるAV監督で作家の二村ヒトシ氏。何故、この運動を起こそうと考えたのか、二村氏に聞いていきます。


安田理央(やすだ・りお) フリーライター。1967年、埼玉県生まれ。雑誌編集者やコピーライターを経て、1994年からフリーに。著書に『AV女優、のち』(角川新書)・『ヘアヌードの誕生 芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる』(イーストプレス)・『日本AV全史』(ケンエレブックス)等。


キャプチャ  2024年4月22日号掲載

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

【Global Economy】(347) 中国のデフレ輸出が加速…過剰生産で歪む世界

中国企業が安値での輸出攻勢を強めている。中国国内の過剰な生産能力と需要の低迷が背景にあり、デフレ圧力が強まる中で、売れ残ったり、作り過ぎたりした余剰品を輸出に振り向けている。中国発の謂わば“デフレ輸出”は、世界各国との間で新たな貿易摩擦を生んでいる。 (中国総局 山下福太郎)



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〈カメラ付きドローン2224円〉〈旅行用キャリーケース3952円〉――。中国発のインターネット通販アプリ『ティームー(TEMU)』には、1桁小さいと見間違うような価格がずらりと並ぶ。2022年のアメリカを手始めに、現在、日本を含む50ヵ国超でサービスを展開するまで急成長した。格安サイトを運営するのは、中国のインターネット通販大手『PDDホールディングス』だ。仲介業者を挟まずに、主に中国国内メーカーの商品を直接売るビジネスモデルで、破格の安さを実現しているという。『シーイン(SHEIN)』という別の中国発の通販アプリも、日米欧を中心にダウンロード数が8億を超えた。中国発の2つのアプリは、安値を武器に世界のインターネット通販市場で人気を集めている。中国の安値攻勢は身近な消費財にとどまらない。中国の税関当局によると、昨年の鋼材の輸出量は9026万トンと、前年比で36%も急増した。これに対し、輸出額は8%減の845億ドル(※約13兆円)だった。単純計算では3割前後も安く輸出したことになる。特に不動産等の建設需要の鈍化で鋼材がだぶついた昨年5月以降、輸出価格は大きく下落した(※①)。輸出単価の大幅な下落は、肥料や太陽電池、自転車、塩等の幅広い製品で確認できる。その下落率は2~3割に達する(※②)。

『第一生命経済研究所』の西浜徹主席エコノミストは、「中国による“デフレの輸出”の懸念は一段と高まっている」と指摘する。背景には、過剰な供給力と需要の低迷がある。国家統計局等によると、昨年の中国の粗鋼生産量は前年比0.1%増の10億1900万トンだった。これに対し、粗鋼の国内消費量は長引く不動産不況の影響で、3%減の9億3300万トンにとどまった。生産量から消費量を差し引いた約8600万トンは、昨年の鋼材輸出量とほぼ一致する。「国内に積み上がる在庫を吐き出すべく、価格を下げて輸出量を押し上げている」(西浜氏)という構図だ。輸出に振り向けた分は、粗鋼生産で世界3位の日本の生産量(※昨年=8700万トン)とほぼ等しい。中国の粗鋼生産量は世界の5割強と桁違いに多い。その一部が国外に向かっただけで、世界の市況に大きく響く。過剰供給と需要の低迷は、物価の押し下げに繋がる。消費者物価指数の上昇率は、昨年4月以降、0%前後に低迷する。卸売物価指数は2022年10月から1年半近くマイナス圏で推移する(※③)。鋼材等原材料価格の下落圧力が強い証しだ。安価な製品の輸出に拍車をかけるのが、外国為替市場で進む人民元安だ。対ドルの人民元相場は、昨年5月に節目の“1ドル=7元”台に下落し、現在は7.2元台前後で推移する(※④)。リーマンショック直前の2008年1~2月に迫る元安水準で、輸出競争力を増している。各国や企業の懸念は強まっている。インドは昨年9月、4~7月に中国からの鉄鋼輸入量が前年同期と比べて6割も急増したとして、一部の鉄鋼製品を対象に5年間の反ダンピング(※不当廉売)関税を発動した。先月にはアルミ箔でも反ダンピング調査に着手した。アメリカのジャネット・イエレン財務長官は先月の講演で、「中国の過剰生産能力は世界の価格と生産のパターンを歪め、世界中の企業と労働者に損害を与えている」と指摘した。イエレン氏は今月5・6日、訪問先の中国で何立峰副首相(※経済担当)と会談し、懸念を直接伝えた。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【防衛政策30年史】(03) 防衛費“冬の時代”の始まり

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2001年9月11日のアメリカ中枢同時テロの直後、首相の小泉純一郎は閣僚らと官邸の危機管理センターに集まった。錯綜する情報に苛立ちも募り、やり取りする声は大きくなっていく。「落ち着いて、落ち着いて!」。たまりかねた小泉は職員を制したが、これとは別の次元で、政府は落ち着くことが難しい時代を迎える。21日には海上自衛隊の護衛艦が、横須賀基地に停泊していたアメリカ軍の空母を太平洋沖まで護送した。自衛隊はその後、インド洋での給油活動やイラクの人道復興支援活動に派遣された。自衛隊にとって“テロとの戦い”が新たな課題となり、伝統的な脅威に対するのとは異なる発想が要求された。当時、内閣参事官として実務に当たった徳地秀士も頭を悩ませた。「テロは抑止が難しい。抑止は相手の意思に働きかけるものだが、何を大事だと考えているかわからない。抑止しようがないとすると、対処に重点を置かざるを得ないと考えた」と振り返る。本来であれば、対処と抑止は密接不可分な関係にある。抑止は、侵略を阻止するこちら側の意図と能力を相手側が計算し、報復や侵略失敗に伴う損失を恐れることで成り立つ。装備や軍事組織を整えても、実際に運用して事態に対処する能力がなければ、相手側に見透かされて抑止は破綻する。だが、テロはいつ、どこで、誰が攻撃するのかわからない。抑止する相手も、抑止する手段も明確ではなくなる結果、対処は抑止から切り離されて扱われるようになる。ソビエト連邦は崩壊し、1998年にはロシアがG7の仲間に入った。北海道に着上陸侵攻するような事態は、最早起こり得ないと考えられていた。

軍拡を続ける中国も、明確な脅威と位置付けられていなかった。内閣官房で2004年の『防衛計画の大綱』改定を担当した黒江哲郎は、「明確に中国を相手にするという意思統一はなかった」と振り返る。2001年にアメリカの大統領に就任したジョージ・W・ブッシュは、中国を“戦略的競争相手”と位置付けていたが、中枢同時テロ以降は協力を求めて関係改善を図る。当時、海上幕僚監部防衛部長だった香田洋二は、中国を想定した図上演習をアメリカ海軍に提案したが、「政府は認めない。予算もつかない」と断られた。2002~2004年まで防衛庁防衛政策課長を務めた高見沢将林は、「中国が1990年代末から2000年代頭でグッと伸ばしてくる間に、アメリカも日本も対テロ戦争に物凄く力を注ぎ、本家がお留守になっていた」と語る。“テロとの戦い”の一方、北朝鮮の脅威も強く意識されていた。1998年には、日本列島を飛び越える形で弾道ミサイルを発射した。防衛庁長官の石破茂は2002年12月に訪米し、国防長官との会談で、弾道ミサイル防衛(※BMD)について“将来の開発・配備”に言及する。石破の発言は勇み足だった。当時の小泉政権は、BMD配備について姿勢を明確にしていなかった。帰国後、石破は官房長官の福田康夫から叱責される。石破は「福田さんって人、好きだったので、この人から叱られたら『俺、間違っているんだろうな』と思う」と、独特な言い回しで“反省の弁”を語る。だが、この1年後の2003年12月、政府はBMD導入を閣議決定する。この閣議決定が歴史的なのは、BMD導入だけが理由ではない。陸海空自衛隊の大リストラを決めた閣議決定でもあり、既に小泉政権下で始まっていた防衛費削減の流れを決定づけた。防衛費の“冬の時代”は10年間続くことになる。当時、防衛官僚として内閣官房にいた増田好平は、「そんなにいじめる必要はないじゃないか」と受け止めた。閣議決定の文面は、戦車や護衛艦等について、これでもかと“縮小”の2文字が並んでいた。何故、こうなったのか。閣議決定に先立ち、防衛庁がBMDを導入する方針を報告すると、官房長官の福田が“待った”をかけたからだ。「ミサイル防衛を導入すると言うのなら、防衛力全体を見直せ」。小泉政権は基礎的財政収支の黒字化を目指していた。〈聖域なき構造改革〉を掲げた政権は、防衛庁にも“身を切る改革”を求めた。石破は官邸の方針をチャンスと捉えていた。「合理性のないもの、統合的な防衛力整備の思想に反するものは、これを機会になくそう」と考え、陸海空幕僚長に理解を求めたが、反発は残った。2003年の閣議決定では、もう一つ重要な方針が示された。新たな『防衛計画の大綱』の策定だ。先ずBMD導入と陸海空自衛隊の縮小が決まり、2004年12月に新たな防衛戦略が誕生することになった。 《敬称略》


キャプチャ  2023年5月9日付掲載

テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【台湾有事に備えよ!】(14) 製造のTSMCだけじゃない! 台湾の半導体産業の底力

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台湾の半導体産業と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、『台湾積体電路製造(TSMC)』が覇権を握る受託製造(※ファウンドリー)だろう。そして、半導体生産において重要な分野である設計でも、台湾勢の存在感が高まっている(※右画像)。台湾の調査会社『トレンドフォース』によれば、半導体の設計に特化し、自社工場を持たないファブレス半導体メーカーの世界トップ10社に、昨年、3社の台湾企業が入った。これまで米中のファブレス企業が上位を独占していただけに、台湾勢の活躍が目立っている。2000年に14%だった設計分野における台湾企業の世界シェアは、じわじわと上昇。昨年は22%を占めるようになった。半導体の設計とは、製品にどのような機能を持たせるか決め、その為の回路を作り込むプロセスである。高性能な半導体を作るには、複雑な設計技術が必要になる。台湾ファブレスメーカーの生産額は、足元で凡そ6兆円規模。TSMCが牽引する受託製造の市場には及ばないが、その約半分の市場規模であり、台湾にとって一大産業だ。台北で5月末から6月初めに開催されたコンピューター見本市『COMPUTEX2023』。メディアが詰めかけたのは、生成AIブームで一躍脚光を浴び、COMPUTEXでの基調講演を終えた直後にGPU(※画像処理装置)メーカーの『エヌビディア』が開いた合同発表会だ。同社が力を入れる自動運転車向け半導体の開発において、台湾ファブレス企業の雄『メディアテック』と提携することを発表した。日本での一般的な知名度は低いが、メディアテックは台湾を代表するファブレス企業だ。昨年度の売上高は5488億台湾元(※約2兆円)を誇り、世界ランキングでは5位に食い込む。スマートフォン向け半導体では、首位の『クアルコム』を抜き、世界トップだ。

今回の提携は、自動運転車向けOS等の共同開発に主眼を置いたもの。既に自動運転車の制御等で実績のあるエヌビディアが、スマホ向け半導体で高い技術力を持つメディアテックを頼ったという見方もできる。メディアテックを始め、台湾ファブレス企業の強さとして挙げられるのは、TSMCとの物理的な距離の近さだ。その強みが発揮されたのは、コロナ禍での半導体不足の時期。世界の半導体メーカーがTSMCの生産枠の確保に四苦八苦する中、「台湾のファブレス企業は他の国の企業より生産枠を厚めに確保できていたようだ」と、半導体産業に詳しい『アジア経済研究所』の佐藤幸人上席主任調査研究員は分析する。実際に、2019年にはメディアテック1社しか入っていなかった半導体設計トップ10ランキングに、台湾勢は2020年以降、3~4社が顔を出すようになっている。「台湾勢はTSMCの中で何が起きているのか、雑談レベルの情報交換を通じてよく知っている。交渉のし易さが競争力に直結しているのではないか」(アジア経済研究所の川上桃子上席主任調査研究員)。もうひとつ、台湾ファブレスが急成長した理由として挙げられるのは“二番手戦略”だ。アメリカのファブレス企業よりも創業時期が遅かった台湾勢は、クアルコム等が先端品で開拓した市場に後から参入し、安価な製品を大量に販売する戦略で成功を収めてきた。例えば、メディアテックが急成長を遂げるきっかけになった中国のスマホ市場。2010年代に市場が勃興した当初は、多くのスマホメーカーがクアルコムのチップを使っていた。が、高性能なチップを使いこなすには、スマホメーカー側にもノウハウが必要になる。メディアテックはそこで、そうした技術力のないスマホメーカーに、チップと併せてソフトウェアやスマホの設計等に関する技術へのサポートも提供し、市場に浸透。現在では『OPPO』や『vivo』等、中国の有力スマホメーカーの多くで同社のチップが採用されている。台湾が製造の他に強みを持つのは設計だけではない。材料の分野でもシェアは日本に次ぐ。その中心は、半導体チップの基板となるシリコンウェハーで世界3位の『グローバルウェーハズ』だ。同社は、これまで積極的な買収を行なってきた。2012年の旧『東芝セラミックス』のウェハー事業取得を皮切りに、2016年にはデンマークやアメリカの同業を買収。“ウェハー2強”と呼ばれる日本の『信越化学工業』・『SUMCO』に肉薄する世界3位の規模まで駆け上がった。2020年には世界4位、ドイツの『シルトロニック』の買収を発表。シェア30%を超すトップ企業に躍り出る筈だったが、ドイツ当局の認可を得ることができず、買収を断念している。それでも怒濤の投資攻勢は止まらない。現在はテキサス州に50億ドルを投じて新工場を建設中。TSMCがアリゾナ州で建設中の最先端工場へのウェハー供給を念頭に置いたものとみられ、TSMCとの結び付きをてこに、シェア拡大へと邁進する。半導体の設計、材料、製造装置、製造の4分野のうち、製造だけでなく設計や材料でも競争力を強める台湾企業。台湾の存在感は益々高まりそうだ。 (取材・文/本誌 石阪友貴)


キャプチャ  2023年8月5日号掲載

テーマ : 台湾
ジャンル : 政治・経済

【楽天の末路】(10) 近年は“ジジ殺し”の神通力が枯渇気味? 三木谷総帥の政財界人脈25人

三木谷総帥は人脈構築術を駆使して、ベンチャーの雄から“政商”と呼ばれるまでに成り上がった。華麗なる三木谷人脈を紐解くことで、『楽天グループ』の成長と停滞の軌跡を追う。



20240415 12
三木谷浩史会長兼社長は“ジジ殺し”の異名を取る。有名学者の父を持ち、帰国子女。年長者に物怖じすることなく直言する経営者気質――。昭和の暴れん坊だった大物経営者達は、毛並みの良さと生意気さを併せ持つ三木谷氏を高く買った。左表が、三木谷氏を支える政財界人脈25人リストだ。その中核は、三木谷氏の古巣である旧『日本興業銀行』時代の人材だ。『みずほコーポレート銀行』元頭取の斎藤宏氏は三木谷氏の上司だったことがあり、三木谷氏が独立を目指して興銀を辞する際には「お前は将来の頭取候補だ」と言い、強く慰留したとされる。『みずほフィナンシャルグループ』社長の木原正裕氏は、三木谷氏の1期下の後輩だ。興銀出身者の中でも三木谷氏が全幅の信頼を寄せているのが、ベンチャーキャピタル『WiL』共同創業者CEOの伊佐山元氏だ。シリコンバレー在住の伊佐山氏は、ITビジネスに通じているだけではなく、今もみずほFGとも近い。三木谷氏の知恵袋的な存在である。『三井住友銀行』頭取や『三井住友フィナンシャルグループ』社長を歴任した西川善文氏との親交も深かった。三井住友銀行出身の國重惇史氏の仲介により、楽天が同行系インターネット証券の『DLJディレクトSFG証券』(※現在の『楽天証券』)を買収した際に、西川氏は三木谷氏のきっぷの良さに惚れ込んだという。三木谷氏は、アメリカの投資ファンド『ブラックストーングループジャパン』会長の重富隆介氏とも親しい。重富氏は、興銀を経て『モルガンスタンレー』に入社。2008年に『三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFJ)』がモルガンスタンレーに出資したことにより、三木谷氏は重富氏を介してMUFJとの関係性を強めていった。結果的に三木谷氏は、メガバンク3行全てと良好に付き合う術を手に入れたことになる。

ジジ殺しの才覚が十分に発揮されたのが、2004年にプロ野球球団を買収した時のことだ。球団経営の透明化を図る目的で設けられた経営諮問委員会メンバーには、錚々たる顔触れが並んだ。『トヨタ自動車』会長の奥田碩氏、前出の西川氏、『ウシオ電機』会長の牛尾治朗氏ら大物経営者に加えて、旧知の『カルチュアコンビニエンスクラブ』社長の増田宗昭氏、『ローソン』社長の新浪剛史氏、『有線ブロードネットワークス』(※現在の『USEN』)社長の宇野康秀氏ら12人がメンバー入りした(※肩書きは当時)。続く2005年、楽天が『東京放送』(※現在の『TBSホールディングス』)に買収を仕掛けた時には、前出の斎藤氏が事態の収束に立ち会った上、楽天相談役とTBS非常勤監査役を務めていた西川氏も仲介役を担った。このように、楽天グループに事業拡大の重大局面が訪れると、その度に大物経営者が三木谷氏のサポート役を買って出た。三木谷氏の野心はとどまるところを知らなかった。ベンチャーの雄から“政商”へ――。三木谷氏が政界との距離を縮めたのは、第二次安倍晋三政権(※安倍晋三首相、菅義偉内閣官房長官)以降のことだ。2013年に『産業競争力会議』のメンバーとして起用されたことを境に、安倍氏や菅氏からの信頼を得ていった。安倍・菅ラインとの蜜月は続く。2018年に楽天が携帯電話向けに割り当てられる電波を取得した時、官房長官だった菅氏が後押ししたとされている。それから5年。三木谷氏と岸田文雄政権との距離は遠い。政界と財界を繋ぐ重要会議のメンバーとして、三木谷氏はお呼びが掛かっていないのだ。岸田文雄氏まで歴代3政権で、経済財政諮問会議の民間議員として登用されている新浪氏(※現在は『サントリーホールディングス』社長)とは対照的である。三木谷人脈が細っているのは政界だけではない。金融・産業界でも、強力なサポート役だった西川氏や國重氏は鬼籍に入った。また、三木谷氏の応援団を務めてきた重鎮の多くは代替わりを経て、第一線から退いている。人脈の枯渇は楽天グループのビジネスにも影響を与え始めている。5月に、楽天グループが第三者割当増資で調達できたのは420億円。三木谷氏自身からの拠出300億円を除けば、『サイバーエージェント』からの100億円と『東急』からの20億円のみ。三木谷氏は巨大スポンサーを期待していた筈だが、結局、旧知の藤田晋氏(※サイバエージェント社長)と、本社開発で付き合いのある野本弘文氏(※東急グループ代表)しか助けてくれなかった。ジジ殺しの神通力に衰えが見えるのは明らかである。三木谷氏のワンマン経営ぶりは際立っている。楽天グループには、『ソフトバンクグループ』でいうところの大番頭、後藤芳光CFOのような重量級幹部がいない。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も独裁者ではあるものの、後藤氏を含めたチーム経営を実践しているのだ。最早、社内外に三木谷氏のワンマン経営に待ったをかけられる人材はいない。三木谷総帥の孤独感は深まるばかりだ。 =おわり

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【もはや絶望しかない中国ビジネス】(05) 日本の風力発電やEVが危うい! 再エネは“脱中国”が急務だ

20240415 11
日本政府は、2050年のネットゼロ(※温室効果ガス排出量正味ゼロ)達成に向け、2030年度の温室効果ガス排出46%減(※2013年度)を掲げている。2021年に策定した『エネルギー基本計画』では、2030年度の再生可能エネルギーの比率を36~38%に引き上げるのが目標だ。ところが、日本は脱炭素を巡る技術や製品では中国依存が進んでおり、サプライチェーン上の脆弱性が指摘されている。EV(※電気自動車)のバッテリーに欠かせないリチウムは、約55%を中国から輸入する。EVのモーターや風力発電機のタービンに不可欠なレアアースは、約60%を中国に依存する。これでは重要な国策の遂行が中国の意向に左右されてしまいかねない。今こそ、脱炭素と脱中国を同時に進めるグリーン経済安全保障政策が求められている。世界の再エネ分野の製品で、中国の競争力は強い。『国際エネルギー機関(IEA)』が昨年公表した報告書によると、太陽光パネルの主要製造段階における中国のシェアは8割を超える。主要素材であるポリシリコン(※多結晶シリコン)やウェハーは、今後数年で中国のシェアが95%にまで達するという。

風力発電機でも中国勢が伸びている。国際団体の世界風力会議の調査では、2022年に導入された風力発電のうち、49%を中国が占める。発電機メーカーのシェア1位はデンマークの『ベスタス』だが、 2位の『金風科技(ゴールドウィンド)』を始め、上位15社中10社を中国企業が占めた。脱炭素と関わりの深いEVにおいても、基幹部品の原材料は中国に頼る。EVのモーターに使われるレアアースの生産(※精錬)は、世界シェアのうち中国が7割を占めている。中国はレアアースを用い、高性能磁石について原料採鉱から合金・磁石の製造まで自国で完結する体制を築きつつある。世界のEV市場で覇権を握ろうとしているのだ。脱炭素で世界をリードするEUは、中国依存の危険性に気づき始めた。今年3月に公表した『ネットゼロ産業法案』は、再エネ技術の製造に焦点を当て、域内調達を高めることを目的にしている。具体的には、2030年までに太陽光や風力、水素等ネットゼロ技術の40%を域内で生産することを目指している。対象製品は、太陽光パネル、風力発電機、電池、ヒートポンプ、エレクトロライザー(※余剰電力で水素を製造する装置)等だ。更に同法案では、脱炭素技術のサプライチェーンを可能な限りEU域内に形成することを目指している。EUはAIや半導体だけでなく、環境技術でも競争力を高めようとしているのだ。日本も資源調達の多角化や再エネの自主開発を進めている。コバルトやニッケルといった主要鉱物の産出国であるアフリカの資源国との関係強化に乗り出しているのは、その一例だ。太陽光パネルでは、薄型でエネルギー効率のよいペロブスカイト型と呼ばれる国産技術に期待がかかる。原料の国産調達が容易であり、サプライチェーンの観点からも好適とされる。昨年成立した経済安全保障推進法では、サプライチェーン上の特定重要物質として蓄電池や重要鉱物資源が指定された。また、今年成立したGX推進法によって、国を挙げて脱炭素投資を進めることが決まった。日本が脱炭素時代の新たな競争に生き残る為には、グリーン経済安保の観点が不可欠だ。日本が脱炭素を実現しようとする際、中国に首根っこを押さえられるような事態は絶対に避けねばならない。 (前国家安全保障局長 北村滋)


キャプチャ  2023年11月18日号掲載

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【企業人必読!キャリアアップの為の組織防衛術】第3部・自動車メーカー総務部編(17) 捜査は操作できるのか?



斜地(行動力はあるが怒りっぽい男性部長)「生古君、盗撮で逮捕された横浜支社の杉森君の件、何か新しい情報はあるかね?」
生古(保守的で自己防衛心の強い男性課長)「未だ何もありません」
宇仁(密かに素早く仕事をするが言葉に棘のある男性係長)「あっ、つい先程、警察OBの右京顧問から補足する情報が入りました」
生古「こ、困りますねぇ。直ぐに報告してくれなきゃ」
宇仁「すみません。今、警察は余罪を調べているようです」
布具(繊細で直ぐ膨れっ面になる女性新入社員)「えっ、警察OBってそんな情報まで取れるんですか!?」
生古「右京さんは警察大学校の校長まで務めた人だからねぇ。教え子が全国の警察署にいるんだよ」
宇仁「今回は教え子からの情報ではなくて、警察の動き方から推測したようです」
斜地「そりゃ、どういうことだね?」
宇仁「警察が杉森君の過去の勤務状況、即ちアリバイの有無を聞いてきたからのようです」
斜地「そうか、有休休暇を取っていたら、その日は勤務のアリバイが無いから、盗撮をしていた容疑が深まるってことだな」
生古「部長、右京さんのルートで、捜査に手心を加えてもらうという工作を試してみるのも一手ですね」
宇仁「それは無理かと思いますよ。日本大学だってOBの警察官に相談したけど、結局のところ学生は逮捕されましたから」
生古「そうだったけど…ねぇ」
宇仁「それに、あの厳格で実直な右京さんに頼めますか?」
生古「そりゃ、右京さんと親しい君に任せるよ」
宇仁「それは無理ですよ。精々マスコミに対して弊社の社名を伏せてくれるよう、警察署長に頼むくらいでしょう」
布具「そんな便宜を図ってくれるんですか?」
生古「警察は縦社会だからね。大先輩からの頼みなら無下にはできないでしょ」
斜地「それなら、いっそのこと現職の葉山法務大臣から圧力をかけてもらえんかね。うちは献金もしているし、元警視総監だろ」
宇仁「部長、捜査している神奈川県警と警視庁の関係が常に良好とは限りません。元警視総監から圧がかかったとなれば、縄張り意識から逆効果になる恐れもあると思います」
斜地「じゃあ、どうしたらいいと言うんだ!? 他に名案があるのかね?」
生古「や、やはり被害者との示談を早く済ませるのが一番かと。宇仁君は得意だろ、そういうの。被害者の親に取り入るとか」
宇仁「いえいえ、それは危ないです。この段階で被害者や家族に過度なアプローチをしたら、証人威迫と見做される可能性がありますから」
布具「えっ、被害者のところに謝罪に行っちゃいけないのですか!?」

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