【宇宙開発サバイバル】(04) 「本物だけが生き残る」

「素早く原因究明し、次の打ち上げに向かう」――。実業家の堀江貴文らが出資するロケット開発ベンチャー『インターステラテクノロジズ』(北海道大樹町)。社長の稲川貴大は今月14日、この日の失敗をこう振り返った。小型ロケット『MOMO』の5号機を打ち上げたが、部品の故障で機体が制御できなくなり、緊急停止した。昨年5月に打ち上げたMOMO3号機は、国内企業が単独開発したロケットとして初めて高度100㎞の宇宙空間に到達した。だが、過去5回の打ち上げで成功したのは、この1回のみ。安価な部品でロケットを製造し、“価格破壊を起こす”とブチ上げて脚光を浴びた稲川だが、技術の確立は道半ばだ。日本の宇宙関連ベンチャーはざっと30社。イーロン・マスク率いる『スペースX』等に刺激を受け、未開拓市場を狙う起業家がじわりと増えつつある。
衛星の破片等“宇宙ごみ”除去の技術開発を目指す『アストロスケールホールディングス』(東京都墨田区)。創業から4年後の2017年11月、宇宙ごみ観測衛星をロシアで打ち上げるまでにこぎ着けた。だが、衛星を積んだロケットに不具合が発生。衛星もろとも海に消えた。失意から3年。現在、最終調整を進めるのが、今年打ち上げる宇宙ごみ除去の実験衛星だ。衛星に付いた磁石でごみを回収する技術を試す。CEOの岡田光信は、「世界で誰もやったことがない革新的な実験だ」とリベンジを誓う。ただ、華々しさとは裏腹に、厳しい現実も存在する。「宇宙は投資判断が難し過ぎる」。宇宙飛行機開発の『スペースウォーカー』(東京都港区)CEOの真鍋顕秀は、ある投資家からこう告げられた。同社が目指すのは2027年の有人宇宙飛行。時間がかかる宇宙ビジネスに、資金は簡単に集まらない。新興企業は補助金やクラウドファンディング等も活用しているが、資金調達は綱渡りだ。そこに新型コロナウイルスが襲った。ベンチャーキャピタル『グローバルブレイン』(東京都渋谷区)の青木英剛は、「宇宙産業は淘汰が加速し、本物だけが生き残る」と喝破する。ブームに乗っただけの企業は消える。危機を乗り越えた企業だけに、新時代の宇宙開発への挑戦権が与えられる。 《敬称略》 =おわり
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白石武志・鳳山太成・多部田俊輔・西岡杏・越川智瑛・藤田祐樹・五十嵐沙織が担当しました。

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