【南鳥島に注目せよ!】(12) 揚泥に向けて進められる数々の実験

20170621 09
大量のレアアースが海底に存在していたとしても、それが開発できないのであれば意味はない。レアアース泥を如何に揚泥するかは、今後の大きな課題である。南鳥島の周辺海域において、レアアース泥の分布が見込まれているのは、水深5000~6000mの深海。そこから大量の泥を採取するとなると、一筋縄ではいかない。海底油田の開発と同じようなものに思えるかもしれないが、現在までに開発されている海底油田の最大深度と比較すると、何と2倍以上。この時点で、開発へ向けたハードルの高さを感じられることだろう。また、石油とは違ってレアアース泥は高粘性であり、その物理的性質についても不明な点が多いのだ。更に、揚泥した泥からレアアースを抽出した“後”にも、課題が残されている。泥が含有するレアアースの濃度は、高くとも2000~6000ppm前後であり、これはパーセンテージに直すと0.2~0.6%。つまり、99%以上が残渣となる計算だ。これを開発海域で処理するとなれば、環境への影響も考慮せねばならない。

このように、商業化が実現する可能性が非常に高いレアアース泥であっても、解決すべき課題はまだまだ山積み。つまり、それだけ海洋資源の開発というのは難しいのだ。とはいえ、手を拱いてはいられない。2013年から2015年には、レアアース泥の開発へ向けて様々な実験が行われた。例えば、模擬泥を使用しての水中掘削実験。海底からレアアース泥を揚泥する為には、どんなタイプの“集泥へッド”が最適なのかを、実験で明らかにしようという試みだ。また、集泥へッドが持つ水中掘削特性や改良点についても、事前にしっかり把握しておく必要があった。この実験では3種類のカッターへッドが試されたが、改良型であるスパイラル型やパドル型のほうが、掘削効率や集泥効率で従来型に勝ることがわかった。従来型のカッターへッドは刃に模擬泥が付着し易かったが、改良型の2種類では殆ど付着しなかったのである。左上に掲載しているのが、実験で用いられたカッターへッド。従来型と改良型であるパドル型で、形状が大きく異なるのが見てとれる。そして、レアアース泥を揚泥する“方法”も模索されている。先ず検討されたのが、海洋石油生産で実績があるエアリフト方式だ。その名の通り、圧力をかけた空気を送り込むことで対象を“持ち上げる”のだが、従来のエアリフト法式では、5000mを超えるような水深には対応できない。しかし、海洋石油開発で利用されている加圧タンクを使用し、高い圧力を保持することで、問題はクリアされた。こうして、従来のシステムに改良を加えた“加圧式エアリフト法式”が考え出されたのである。シミュレーション結果は良好で、連続的な揚泥が可能と示されたが、実際に使える保証は無いというのが正直なところである。実用化には、もう少し時間を要しそうだ。


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【南鳥島に注目せよ!】(11) 陸上のレアアース鉱床が抱える環境問題

20170614 09
レアアースの陸上鉱床は世界中に存在しており、その開発にあたっては環境への配慮が不可欠である。その中でも大きいのは、やはり放射性元素の処理方法である。例えば、環境規制が大変厳しいオーストラリアでは、次のような出来事があった。軽レアアース鉱床ながら、豊かな埋蔵量から大いに期待されている『マウントウェルド鉱床』の開発。『双日』との長期供給契約が締結される等、日本でも注目を集めている開発プロジェクトである。この開発を手がけているのが『ライナス』で、同社はこの鉱床で採掘した鉱石をマレーシアのクアンタンに運び、そこに建設した工場でレアアースを生産しようと考えていた。何故なら、オーストラリアよりもマレーシアのほうが、環境に対する規制が格段に緩いからだ。しかし、クアンタンの住人はこれに大反発。「レアアースの精錬過程で出る放射性元素のトリウムが投棄されるのではないか?」との懸念から、数千人が集結して抗議デモが行われる等、大規模な反対運動に発展した。リゾート地としても知られるクアンタンにとっては死活問題である。反対の声が強まる中で工場の建設が続けられたが、事態を重く見たマレーシア政府は建設の一時停止を決定。ライナスの目論見は、あっさり頓挫してしまった。

2012年2月に「放射性物質の永久貯蔵場所を確保する」との条件付きで操業許可が下りたが、その後も反対の声は収まらず、2014年の抗議デモは16名の逮捕者が出る騒動にまで発展。このように、レアアース陸上鉱山の開発は、非常に難しい問題を抱えているのだ。中国南部に存在する重レアアース鉱床においても、実に中国らしい環境問題が発生している。軽レアアース鉱床に比べると、トリウムやウランといった放射性元素の含有量が低めである重レアアース鉱床。しかも、レアアースが濃集されている層に弱い酸をかけるだけで、容易に溶液が回収できるという大きなメリットがある。しかし、この容易さがとんでもない荒技を生んだ。レアアースが吸着している風化花崗岩の“山”の内部に硫酸アンモニウムを流し込み、山の外部に流れ出たレアアース溶液を回収るといった開発手法だ。当然、山から染み出た溶液が外部に流れ出さないよう、しっかりと配慮する必要性がある。しかし、不法生産が横行している状況においては、そのような配慮など二の次だ。結果、溶液が河川等に流れ込み、深刻な土壌汚染を引き起こしている。近年は環境保護にも力を入れ始め、不法業者の取り締まりも強化されてる中国。とはいえ、“遅きに失した”という印象が拭い去れない。それに、軽レアアース鉱床ほど濃集されていないだけで、重レアアース鉱床にも放射性元素の間題は存在する。しかし、海底に眠るレアアース泥だけは、放射性元素を殆ど含まず、環境問題も引き起こさない。こういった観点からも、極めて有望な資源と言えるのである。


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【南鳥島に注目せよ!】(10) 高濃度なレアアース泥の分布を探る

20170607 11
レアアース泥が持つ資源としてのポテンシャルを調査する為、2013年度から2015年度の3年間に亘って、南鳥島周辺海域の調査が実施された。そこに投入されたのが、『石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)』の“旗艦”でもある海洋資源調査船『白嶺』。2012年に完成したばかりの最新鋭艦である。2013年度に行われた海底探査では、100㎞間隔の合計26地点からレアアース泥のコア試料を採取。持ち帰ったサンプルを分析した結果、高濃度のレアアース泥が期待できる濃集域が、南鳥島の南南西に位置する『拓洋第5海山』の周辺海域にあることが判明した。そこで、翌年度の海底探査では、拓洋第5海山の南側から東側にかけての海域において、今度は25㎞間隔でコア試料を採取。その結果、500ppm以上の高濃度なレアアース泥が存在するのは、ほぼこの海域に限られることが判明したのだ。これらの調査結果を纏めたのが、右画像上部に掲載している図である。南鳥島の南にある黄色や赤の点が固まっているエリアに、高濃度なレアアース泥が分布している。

このエリアを更に拡大したものが右画像下図。高濃度なレアアース泥が確認されたポイントが、拓洋第5海山の東側に集中しているのが見てとれる筈だ。2015年度には、これまで未調査だった海域でも100㎞間隔でコア試料を採取。レアアースの濃集域と認められた拓洋第5海山の東側でも、採取が行われている。入念に進められた海底探査の甲斐あって、高いポテンシャルを秘めることが証明された南鳥島周辺海域に眠るレアアース泥。また、開発にあたって“どこ”から揚泥するべきかも、かなり絞り込まれたと言える。拓洋第5海山の東側には、2000ppm以上という高濃度なレアアース泥が採取された地点が幾つも存在している。最も濃度が高かったコア試料からは、実に5366ppmものレアアースが検出された。中国のレアアース陸上鉱山と比較しても、資源としてのポテンシャルの高さは圧倒的。開発が進み、商業化が実現した場合には、採算性の高さも十分に期待できる。また、レアアース泥の“層”があった深さが、海底面から平均で8.87mと、予想よりも遥かに浅かったのも大きい。つまり、海底を深く掘削せずとも、レアアース泥を得ることができるのである。そして、更に重要なポイントがある。南鳥島周辺海域で採取されたレアアース泥は、中国にある特定の鉱床でしか採れない“重レアアース”を豊富に含んでいたのだ。含有するレアアース全体に占める割合は、何と平均で45.8%。しかも、スカンジウム(Sc)やイットリウム(Y)等、特に希少性が高く、高価な重レアアースが多く含まれている。今後のハイテク産業で更なる需要増が見込まれているだけに、日本国内での生産にかかる期待は非常に大きい。


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【南鳥島に注目せよ!】(09) 地層から発見! 高濃度のレアアース泥

20170531 11
1998年から2008年にかけて、海上保安庁は南鳥島周辺海域の詳細な海底地形を調べる為、マルチビーム音響測深を行っている。これは、簡単に言えば海底に音響ビームを発信し、その反射強度を調べることで、海底を“面”で捉えた測量を可能とするものだ。そして、海底火山に見られるような硬い岩石は、音波を強く反射する。調査に携わった研究者たちも、「強い反射強度を示したある地点に存在するのは、海底火山の一種である“プチスポット火山”だ」と予測した。しかし、有人深海探査船『しんかい6500』で潜水調査を行ったところ、思いもよらぬ光景が待ち受けていた。そこにあったのは海底火山ではなく、地底を埋め尽くすほどのマンガン団塊だったのである。このマンガン団塊、実はレアアース泥と密接な関係にあると考えられている。例えば、ハワイの周辺海域。ここでは、レアアース泥の分布海域とマンガン団塊の密集分布域が見事なまでに重なっている。

また、その化学組成――つまり物質を構成する元素や化合物等の比率も、レアアース泥と非常によく似ている。マンガン団塊が生成される過程については第4回で解説しているが、レアアース泥がそこに大きく関わってくるパターンもあるのだ。レアアース泥が海底深くに埋没すると、そこに含まれていたマンガンや鉄は次第に海水へと溶け出していく。海水に含まれている酸素と混じり合って、マンガンや鉄は酸化。それらがコア(核)に吸着し、長い時間をかけて少しずつ大きくなり、軈て“塊”となる。こうして、レアアース泥からマンガン団塊が生み出されるのである。それ故に、海底にマンガン団塊が密集分布している海域では、レアアース泥も発見されることが多い。南鳥島の周辺海域等は、まさにそのケースと言える。では、ここで左上図をご覧頂こう。やや専門的になるが、これは南鳥島の周辺海域で採取された“コア試料”のデータだ。コア試料とは、ピストンコアラーを用いて採取した海底堆積物の試料のこと。長さ15mの管を、レアアース泥が存在しそうな海底に突き刺して、そこに含まれている物質や、その地層が作られた年代を調べる訳である(※第5回参照)。3つのコア試料データを掲載しているが、レアアースの含有量が多かったのは、やはり白亜紀である1億2000万年前~9000万年前に形成された“古くて深い”地層。火山活動が活発だった時期の層なのだから、当然といえば当然だ。ところが、海底面から10m前後の深さ、年代にして凡そ1500万年前~1000万年前という比較的“新しくて浅い”地層からも、1000ppmを超える高濃度のレアアース泥が採取されたのである。その理由は未だ解明されていないが、これが朗報であるのは間違いない。浅い地層であればあるほど、開発コストや難易度はグンと下げられるからだ。


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【南鳥島に注目せよ!】(08) 資源量が物語るレアアース泥の高い可能性

20170524 13
ここまで解説したように、レアアースは現在のところ、中国等の陸上だけで生産されている。しかし、レアアースは太平洋の底にも“泥”として堆積しており、しかもそれは陸上で採取されるものより高濃度である。ここで左図をご覧頂きたい。これは、太平洋の“海底面下2m”で採取された泥が、平均してどれだけのレアアースを含有していたかを図解したものだ。2011年7月4日に『ネイチャージオサイレンス』で発表された内容を簡略化した図である為、南鳥島周辺海域等、日本の排他的経済水域(EEZ)については触れられていない。その理由は、連載最終回の加藤教授インタビュー内で詳細に語られている。扨て、この図で大きめの黄色い円が集中しているのが、タヒチの東側海域である。総じてレアアースの濃度が高く、1500ppm以上のレアアース泥が採取されたポイントも少なくない。あとは、南アメリカ大陸のイースター島付近でも、高濃度のレアアース泥が採取されているのがわかる筈だ。また、ハワイ島の東側や西側等でもレアアース泥が発見されたが、タヒチ東側海域と比較すると、その濃度はやや低め。

更に深く掘ることで、より高濃度なものが見つかる可能性もあるが、この海域には“海底の水深が深い”というネックがある為、開発は容易ではない。海底から揚泥するにあたって、水深が浅いほうがベターなのは自明の理だ。このような背景から、世界中の注目を集めているタヒチの東側海域。しかもこの海域は、世界最高水準の海洋資源開発技術を有するフランスのEEZなのだ。つまり近い将来、日本だけでなくフランスもレアアース資源国となる可能性がある。レアアース泥の魅力を語る上で欠かせないのが、資源量の多さ。堆積している範囲が広いだけでなく、堆積層の“厚み”も凄いのだ。例えば、赤道よりも北の中央太平洋では、何と50mもの厚さでレアアース泥が堆積しているという。南太平洋海域と、ハワイ周辺の中央太平洋海域の2つを合わせたレアアース泥の資源量は、凡そ120億トンと推測されている。アメリカ合衆国西海岸のファンデフカ海嶺の西側も、レアアース泥が厚く堆積している海域。海底から15mほど掘り進むと、そこには30mほどの厚みでレアアース泥の堆積層が存在している。こういった“海底に眠るレアアース”の資源量を試算すると、陸上におけるそれの実に1000倍以上になるのだ。また、開発にあたっての資源探査が容易であるのも、レアアース泥が注目を集めている理由の1つ。調査海域の4点を探査するだけで、凡その資源量が把握できてしまうのだ。コスト高になり易い海洋資源の開発において、これは非常に大きなメリットである。レアアース泥が如何に大きな可能性を秘めているか、これらの内容だけで十分に感じられる筈だ。


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【“地震予知”という名のニセ科学】(07) 新保険料率増減リスト掲載! 地震保険料率引き上げのカラクリ

戸建て新築時や分譲マンション購入時に誰もが加入を迷ってしまう地震保険だが、保険料率は年々上昇している。加入率や地域別のリスク判定はどうなっているのか? (取材・文/フリーライター 高島昌俊)

20170522 04
住宅ローンを組む際、火災保険は完済までの加入が義務付けられている。任意である賃貸の場合でも、多くの世帯が入っている筈だ。それに対して地震保険は、持ち家・借家に関係なく全て任意だ。『損害保険料率算出機構』の調べによると、2015年度の地震保険の加入世帯率は29.5%と、全世帯の凡そ3割。それでも、調査開始の1994年時点では9%しかなかったものが、毎年右肩上がりで上昇を続け、約20年間で3倍以上に増えている。特に1995年の阪神淡路大震災、2004年のスマトラ沖地震の後は例年以上の伸びを見せており、2011年の東日本大震災の後は5年間で実に5.8%も増えている。とはいえ、地震大国という日本の事情を考えると、加入率は低いと言わざるを得ない。2016年11月現在、我が国で加入できる地震保険は商品単体で独立している訳ではなく、全てが火災保険の付帯保険という扱いだ。わかり易く言うと、オプションとして用意されている保険に過ぎない。そんな“おまけ”みたいな扱いの地震保険だが、保険料は加入を躊躇してしまうほど上昇の一途を辿っている。2014年7月には全国平均で15.5%の保険料率引き上げを実施したが、2017年1月にも5.1%が引き上げられる予定だ(※変更後の料金は下表の通り)。但し、引き上げがこれで終わりかといえばそうではない。同年以降も時期は未定ながら数年の間に2回の改定が控えており、2017年1月時点の料率よりも平均19%も高くなることが確定している。「地震が起きた場合のことを考えると加入しておきたいですが、家計の面から考えると、これほどの急激な保険料率の上昇は、間違いなく大きな負担になるでしょう」。そう話すのは、地震保険を始め各種保険に詳しい生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏だ。

地震保険料率は各都道府県によって細かく分けられているが、2017年1月は多くの自治体で引き上げとなる中、逆に下がっている地域もある。これは何故なのか? 「地震保険の保険料率は、各都道府県や発生リスクに応じて1~3等地に区分され、同じ等地でも更に細かく料金が分かれています。保険料率は構造によって、主に鉄筋コンクリートの建物・木造建築の2種類が存在しますが、それが予てより懸念されている南海トラフ地震のリスクを反映させて、震源モデルを更新しました。結果、地震リスクが最も高いとされる3等地→2等地、2等地→1等地へと引き下げられた自治体もあった。全体的には保険料率自体は引き上げになったにも拘わらず、等地ランクが下がったことで、対象地域においては事実上の値下げになってしまった訳です」(同)。具体的には、愛知県・三重県・和歌山県で15.3%のダウン。逆に埼玉県は14.7%、茨城県・徳島県・高知県では14.4%増と、平均以上の大幅引き上げとなっている。とはいえ、常に新しい震源モデルが反映される為、これはあくまで現時点でのものに過ぎない。しかし、本来なら保険商品の料金引き上げは、そう簡単に行われることはない。にも拘わらず、何故地震保険の保険料率だけが短期間でここまで引き上げになるのだろうか? 「大地震の発生リスクを考えた場合、『従来の財源では十分にカバーすることができない』と判断したからです。抑々、地震保険は生命保険や自動車保険等のように、各保険会社が用意する保険商品と性格が異なります。形態こそ各保険会社の火災保険の付帯保険という扱いになっていますが、地震保険は国が運営に携わっている特殊な保険。つまり、国の政策が反映されているのです」(同)。確かに、1966年に『地震保険に関する法律』が施行され、1980年に改正。条文には、「地震等による被災者の生活の安定に寄与するため、次の要件を備える地震保険を保険会社が引き受けた場合に、政府は再保険を行なうことができる」と定められている。更に同法には、「保険の対象は住居や家財のみ」「地震や噴火、それによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害のみを填補」「独立させた保険ではなく特定の損害保険契約に附帯させる」「保険金額は、附帯される損害保険契約の保険金額の30~50%に相当する金額が原則」といった内容が盛り込まれている。要は、地震を起因とする災害が保険適用の対象だが、補償額は付帯元の火災保険の50%を超えることはない。あくまで完全復旧ではなく、被害者の生活再建が目的なのだ。そして、地震保険の独占禁止法の適用除外も明記されている。その為、地震保険は各保険会社で取り扱う火災保険に付帯されているが、中身自体に大差も無ければ、どれだけ地震保険の加入世帯が増えても保険会社の利益にはならない。営利目的の販売ではない、謂わば“護られた保険”なのだ。とはいえ、冒頭でも触れたが、肝心の地震保険の加入世帯は期待したほど増えず、阪神淡路大震災で支払われたのは783億円。当初の想定を大きく下回った。その後、東日本大震災では加入世帯が増えたことで、支払われた地震保険は1兆2579億円と大幅に増えたが、震災直前の岩手県の世帯加入率は12.3%、福島県も14.1%と平均以下。地震保険に入っていなかったことで、生活の立て直しに苦労した世帯も多かった。

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【南鳥島に注目せよ!】(07) 待ち望まれるレアアースの国内生産

20170517 02
陸地面積は狭いが、その分、海洋面積の面では恵まれている日本の国土。海洋資源の開発に目が向くのは自然の成り行きで、その中でも特に大きな可能性を秘めているのがレアアース泥である。何よりも魅力的なのが、岩盤の掘削等を必要としない採取のし易さ。深海の底とはいえ、広々とした地形上や窪地に堆積しているケースが多い為、揚泥の障害となるものが少ないのだ。また、堆積層の厚さが十分にあるので、質だけではなく“量”の面でも期待できる。海洋資源の開発は得てしてコスト高となるものだが、レアアース泥は他の資源に比べると、格段に低いコストで開発できる。レアアース泥以外では、世界初の商業化を目指すプロジェクトが急ピッチで進められている“海底熱水鉱床”も注目すべき存在だ。これは、海底の地中から熱水と共に噴出した鉱物が堆積したもの。金や銀等の貴金属に、銅や亜鉛といったベースメタル等、多くの鉱物元素を含んだ鉱床である。海底火山の火口付近にある鉱床ながら、水深700~1600mと比較的浅いところに分布。

この浅さは大きな魅力だが、火山の噴火口から噴き出す熱水や、掘削機器へのダメージが大きい酸性度の高い海水等、開発に立ちはだかる壁も大きい。更に、自然環境への配慮といった課題も残されており、期待は大きいが容易ではないというのが正直なところだ。世界初の商業化がなるかどうか、今後も要注目と言える。後は、レアアース泥と同様に海底に沈殿しているコバルトリッチクラスト(マンガンクラスト)も、世界各国が開発に着手している海底資源の1つ。その名の通り、コバルトを豊富に含む鉱物だが、レアアースも平均で2000ppm前後と高い含有率を誇っている。2012年には、コバルトリッチクラストの公海上での探査を、日本と中国が国際海底機構に申請している。これが2014年1月に認められ、日本は世界に先駆けて、15年間の探査契約を結ぶことになった。これがどのような成果を齎すか、先々が実に楽しみだ。このように、海洋資源の獲得に向けた日本の動きは、近年、かなり活性化している。しかし、大本命はやはりレアアース泥。南鳥島の周辺海域だけで、何百年分もの国内需要を賄える埋蔵量がある。何よりも急ぐべきは、中国による支配からの脱却だ。ハイテク産業に不可欠なレアアースの生産を中国が独占している限り、いつまた“レアアースショック”が起こっても不思議ではない。それに備え、また中国の強硬姿勢に対抗する為にも、先ず先鞭を付けるべきはレアアース泥の開発。その開発が順調に進み、商業化が果たされた暁には、これまでとは全く違う“未来”が待ち受けている。資源を輸入して、ものづくりで儲ける国として歩んできたこれまでの日本。しかし、レアアース泥という資源は、そんな日本を一変させる可能性を秘めているのだ。


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【“地震予知”という名のニセ科学】(06) 地震予知が可能と謳う民間の地震予測会社の実態

「国がやらないなら民間で」ということなのか? 怪しい“民間地震予測会社”が増えている。その背景には、科学者たちの事情もあるようだ。 (取材・文/フリーライター 槍田創)

20170515 05
民間の地震予測会社が存在することをご存知だろうか? それらの会社のホームページには、夢のような言葉が並ぶ。「巨大地震発生を○日~○日前後に予測する」「M7以上の地震の予兆について、○~○週間前までに会員に情報を提供する」といった具合である。日本の地震学者でさえ短期予知を困難としているが、彼らは先行現象を捉え、数日~1ヵ月単位での予測が可能としている。「非常に懐疑的である」と語気を強めるのは、東京学芸大学の鴨川仁准教授(物理学)だ。「私自身、地震発生の前触れとされる先行現象を研究していますが、我々の研究を含め、地震予測が可能な確かな先行現象は今も確認できていません。多くの民間地震予測会社は、『地震発生前に起こる異常を様々な手法で観察し、それを基に地震の予測を行う』としていますが、地震とそれら先行現象に相関関係があるとは言い切れない筈です」。鴨川氏は、アマチュアの天文学者であり、地震予知者としても有名な八ヶ岳南麓天文台の串田嘉男氏による“FM電波の地震予報”を例に挙げ、こう続ける。「彼はFM電波を用いた流星エコーの観測中、流星のものとは異なる電波の変動を発見し、それが地震活動と関連があるとの結論を出しています。それが彼の地震予測法で、串田氏は阪神淡路大震災以降、会員向けに地震予知情報の配信を行っています」。月額5000円を支払うと、ファックス又はメールで、月に数回情報が配信される仕組みのようだ。串田氏の著書によると、普段は届かない遠くのFM放送局の電波が、地震発生前に震源の上空で散乱して受信強度に変化が現れる為、これを解析することで地震予測が可能としている。

テレビ出演時にも「M6以上の地震なら75%の確率で的中する」と発言する等、その手法には大きな自信があるようだが…。鴨川氏が続ける。「抑々、地震はマグニチュードが小さくなると、桁違いに数が増える。極端に言えば、マグニチュードの小さな地震を対象に警告を出せば、かなりの確率でその警告は当たったことになります。一方で、マグニチュードの大きな地震に対して警告を乱発していれば、かなりの確率で警告後に地震が発生する。当たっているとされる地震予測情報の殆どが、この何れかによって導き出された適中率・予測率の高いほうだけを宣伝していると思われます。ビジネスとしてやる以上、“○%当たった”等とわかり易い数字で宣伝しなければ、商売にはならないのかもしれません」。他の民間の地震予測会社のサービス内容を見てみても、確かに強気な数字が並んでいる。「震度5以上の地震はすべて的中」(メールマガジン『MEGA地震予測』)、「地震該当率92%」(富士防災警備株式会社のサービス)。MEGA地震予測では「GPSデータを用いた地殻変動解析により地震予測できる」とし、富士防災警備では「VLF/LF・ULF・GPSといったいくつかの観測手法で予測している」と、尤もらしい科学的根拠が書かれてあるのだが…。一体、この2つの会社は何なのか? 鴨川氏がこう続ける。「ここ数年、メディア等に登場し、有名となっているのが、東京大学の村井俊治名誉教授が顧問を務めるメールマガジン“MEGA地震予測”です。国土地理院が全国1240ヵ所に設置したGPSを用いて地殻変動を解析し、地震予測情報を有料メールマガジンとして会員に配信しています。国土地理院の方と随分協議を重ねましたが、地震の前兆としての地殻変動を見ることはできません。先行現象として、地震の直前に僅かな地殻変動がある可能性はゼロではないかもしれませんが、“地震予測として使用できる”との科学的な証明はなされていません」。メールマガジン同様、富士防災警備も権威ある専門家を抱え、サービスを展開しているようだ。ある地震学者がこう話す。「電気通信大学の早川正士名誉教授が顧問として関わっています。電磁環境学専門の早川教授は、地震の前になると電離層が2~3㎞下がることに注目し、『この電離層が下がる現象を観測すれば地震が予知できる』としています。具体的には、潜水艦の通信に用いられている超長波(VLF電波)を使用し、地表面のある地点から電離層までの届く時間を調べる。地表面と電離層を交互に反射しながら進むVLF電波は、電離層の高さに応じて進む距離が増減する為、電離層の高さによって時間の変化が起きるのです。早川教授は研究論文も数多く書いており、『VLF電波の電波異常も地震の先行現象である』と見られています。但し、地震予測として使えるものかどうかははっきりしません」。

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【電池バブルがキタ━(゚∀゚)━!!】(13) 「車向けは第2の波、次世代電池も開発進む」――吉野彰氏(『旭化成』顧問)インタビュー

20170512 07
――リチウムイオン電池の試作品完成から30年。これだけ普及している現状をどう見ているか?
「試作を経て商用化したのは1990年代。当初はビデオカメラ用を想定してのもので、市場は大きくなかった。しかし、1995年以降に急速にIT化が進み、パソコン・携帯電話・スマートフォン向けが急拡大した。IT機器用途など想定もしていなかったが、時代のニーズに乗って大きな市場を創ったと言える。今、世界の共通課題となっている環境問題を背景に、リチウムイオン電池は第2の大きな波に乗っている。その先頭にいるのが電気自動車(EV)だ」

――EVでは航続距離を伸ばそうと、各社が研究開発に熱心だ。
「自動車は、開発着手から世の中に出るまでに5年間かかる。実証実験や認証が必要だからだ。2015年にマイナーチェンジした日産自動車・リーフの航続距離は約300㎞だ。これは2010年頃の電池技術と言える。現在はニッケルの比率を高めたリチウムイオン電池が開発されており、400㎞まで到達したとみられる。2020年に商用化されるEVは、このレベルになるだろうという流れはできている」

――どこまで距離は伸びるのか?
「2025年に商用化されるEVは、500㎞までは行くだろう。しかし、それ以上伸ばすとなると、材料を根本的に変えなければ技術的に難しい。正極に使うニッケルの資源量が限られているという問題もある」

――日系電池メーカーは先行して市場に参入したが、中国・韓国勢に追い上げられた。部材メーカーも同じ道を辿る懸念はないか?
「EV用電池は現在、毎年のように技術改良をしている。日系メーカーは、最先端の技術開発・実用化には強い。改良ペースが速いうちは心配していない。中国の部材メーカーは、国内産業保護の観点から、中国国内では使われている。しかし、現段階で中国の部材メーカーが日本・ヨーロッパ・アメリカまでを席巻することは考え難い。ただ、技術開発ペースが落ちてくると追いつかれる可能性はある」

――リチウムイオン電池の次に実用化されそうな電池は?
「次世代電池として検討されているのが、全固体電池・空気電池・リチウム硫黄電池だ。この内、全固体電池の技術進歩は目覚ましい」

――全固体電池の技術進歩とはどのようなものか?
「昨年、東京工業大学の菅野了次教授が、リチウムイオンの伝導率(※イオンが移動するスピード)が液体の2.5倍という画期的な電解質を開発した。この電解質を使うと、出力は25倍になることがわかった。これまで、全固体電池は『電解液を固体にするので、液漏れが無く、安全だ。しかし、イオンが動き難いので出力は低い』と言われていた。しかし、菅野教授が開発した電解質を使って作ってみると、逆の結果となった」

――全固体電池の試作はどの程度まで進んだか?
「リチウムイオン電池材料評価研究センターでは、スマホ大のものを試作した。スマホ程度ならば動かせて、今はドローン(小型無人機)を動かすまでの出力を目指している」

――EV向けリチウムイオン電池の航続距離が2025年に500㎞で限界を迎えるとすると、それ以降は全固体電池に期待がかかる。実用化の目途は?
「未だ時間がかかる。電解質の固体は粉末だ。『どのようにして大量生産用に電極に加工するのか?』という技術的な問題がある。コスト面の課題もある。EV向けに2025年までに実用化するのは難しい。ただ、EV普及前に、市場で電子機器等民生用に普及させて、実績を作らないといけない」 (聞き手/本誌 種市房子) =おわり


キャプチャ  2017年2月14日号掲載

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【南鳥島に注目せよ!】(06) 火山活動とマグマがレアアースの源

20170510 09
レアアース泥の成り立ちについて、これまでの繰り返しになってしまう部分もあるが、大変重要な項目なので、ここでより詳しく解説させて頂こう。レアアースを生み出す上で欠かせないのが、火山の活動である。海底に堆積するレアアース泥だけでなく、陸上に生成されるレアアース鉱床においても、それは同じだ。何故なら、火山活動によって地中から噴き出すマグマの中に、レアアースの主成分が含まれているからである。陸上のレアアース鉱床は、地上に噴き出したマグマが、地殻の割れ目等に染み込んでいく過程で、レアアースの成分が濃集されたものである。そしてレアアース泥も、海底火山の活動により発生したマグマだまりが熱水活動を促し、地中から海中へと鉄質懸濁物質が噴き出す…といった過程を経て生成されるものだ。何れも、火山活動の“副産物”なのである。海中へと噴き出した鉄質懸濁物質は、マグマの中にあったレアアースの成分だけでなく、海水に溶け込んだレアアースやレアメタルの成分も吸着するという特徴を持つ。

海中を漂いながら吸着を繰り返し、レアアースの含有量を上げつつ、軈て静かに海底へと沈殿していく。これらが途方もない年月をかけて海底に堆積したものが、レアアース泥の正体だ。その生成を助ける存在は鉄質懸濁物質の他にもあるが、基本的にはこれが、レアアース泥が生み出される一連の流れと言える。泥の中に高濃度のレアアースが集積される上で、鉄質懸濁物質と同様に大きな働きをすると考えられているのが、『フィリップサイト』という鉱物。灰十字泥石とも呼ばれる合水珪酸塩鉱物の一種である。フィリップサイトは、その空隙にレアアースを強く引き付ける特性を持っている。“空隙”とは聞き慣れない言葉だが、簡単に言えば岩石や鉱物にある“隙間”のこと。要するに、鉄質懸濁物質と同様、レアアースを吸着し易い物質なのだ。このフィリップサイトが海中で生成される理由については、未だ十分な検証がなされていない。しかし、フィリップサイトの起源物質は“火山ガラス”というガラス質の物質で、マグマが急激に冷やされる過程で生成されるのがわかっている。つまり、この物質も海底火山の活動が生んだ副産物と言えそうである。鉄質懸濁物質やフィリップサイトとは対照的に、レアアースの集積を阻害する作用を持つ物質があることも明らかになってきた。炭酸カルシウムを成分に持つ、有孔虫の死骸が堆積したケースがそれだ。炭酸カルシウムは、泥の中にあるレアアースの濃度を希釈してしまう。その為、有孔虫の死骸が化石化して海底に堆積している場合がある“水深4000mまで”の海域では、高濃度のレアアース泥が採取できない可能性が出てくる。しかし、海嶺や海底火山から遠く、海底が4000mよりも更に深い海域であれば、そのような心配は無用。高濃度のレアアース泥が十分に期待できる。


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