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【水曜スペシャル】(166) 「名簿から国家機密まで何でも持ってくる」…もうオタクのシノギじゃない! 不良とハッカーの“密”過ぎる関係

ハッカーなんて映画の中だけに出てくる存在と思う勿れ。現実には、世界中に散らばる無数のハッカーたちが、裏か世界を操っているのだ。知られざるその世界を、業界の大物であるK氏に聞いた。 (聞き手/本誌取材班)



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――基本的な質問をします。ハッカーとは抑々、どんな仕事をしてお金を稼いでいるんですか?
「簡単に言えば、“データを盗む”ということにつきますね。仕事の内容は様々なんですが、例えば毎日大量に届く迷惑メールってありますよね。あのスパムメールを送る為には、送リ先のメールアドレスが記載された名簿がいる。他にもアダルトサイト、出会い系、ライブチャッ トとかも其々、客を掴む為には名簿がいるわけですよ。偶に大企業の顧客リストが何万件と流出することってあるでしょ? あれに関わっているわけです」
――そういった行為を行なうハッカーというのは、Kさん含め日本に何人くらいいるのでしょうか?
「さっき言ったような違法行為を行なっている日本人ハッカーは、あまり多くないです。リスクが高いので。逆に言えば、スキルのあるハッカーは食える。そういう事でしょう」
――闇社会の人間と話をしていると、必ずインターネット系のシノギの話が出てきます。やはり、Kさんもそういったつき合いはあるのでしょうか?
「勿論あリますよ。だって、ハッカーだけじゃ仕事になりませんから。僕らは、発注元があって初めて仕事ができる。中には趣味でハッキングして情報抜いてくるヤツもいるんでしょうけど、僕はそんな暇じゃないですし(笑)」

――昔からハッカーといえば、オタクのイメージがありました。ハリウッド映画に出てくるハッカーも皆、そうじゃないですか。うだつの上がらない田舎の青年なんだけど、パソコンを開くととんでもない才能を発揮するという…。
「まぁ、今でも皆、オタク気質といえばそうですよ。但し、抑々我々はインターネットができる前からグレーな行為をずっとしてきたわけじゃないですか。暴走族やったリギャングだったり。ああいう表に出るタイプの不良ではなくて、引きこもって悪いことしている集団っていいますか。類は友を呼ぶじゃないですけど、昔からハッカーと不良の距離は案外近いところにあったと思うんです。それがぐっと近くなったのは、インターネット系犯罪が増えた2000年代以降ですかね」
――先程、ハッカーのメインの仕事というのはデータを盗む事と仰いました。その名簿を使った犯罪も行なわれているんじゃないですか? 例えば振り込め詐欺とか。
「クライアントが抜いてきたデータを何に使うのかは、僕らには関係ありません。言われたら抜く。それだけですから。大体はわかりますよ。だって、詐欺をしたい業者が欲しい名簿っていうのは、同業他社が持っている詐欺に引っかかり易い人間の載った名簿なわけですから。漫画の“闇金ウシジマくん”でも、闇金業者が顧客リストが載った名簿の取り合いしている回があったでしょう? ああいう事を我々は暴力ではなくて、ハッキング技術を使ってやるわけです。仕事依頼は『このサイトを止めてくれ』『このサイトの名簿を抜いてくれ』のほぼ2つですね」
――では、1回の仕事でどれくらいの報酬が貰えるものなのですか?
「ピンキリですよね。リスクによっても違うし。よくあるケースで言えば、東欧の知り合いのハッカーに頼んで、ハッキングを代行してもらうんです。何故東欧かというと、日本から一番縁遠いんですね。バルト三国とかジョージアとか、ああいう小国の場合、日本の司法権が及ばない場所だし、彼らは抑々お金が欲しいので仕事を受ける。東欧に仕事を振るなら、彼らには精々50万円ぐらい払えばいいので、自分の取り分を50万円取るとして、合わせて100万円くらいじゃないですか。『10万円でいいよ』って連中もいるくらい」
――お話を聞いていると、詐欺グループとハッカーというのは密接な関係にあるのですね。私が先日取材した詐欺をシノギとする組織関係者は、「アイツらは名簿から国家機密まで何でも抜いてくる」と言っていました。
「国家機密とは大きく出ましたね(笑)。まぁ、やれと言われればやるかもしれませんが、大体お金になりませんから。北朝鮮やロシアは国家事業というか、軍事的にハッカーを養成していますけど、日本はだいぶ遅れていますね。官庁なんかは毎日のように海外からの攻撃に晒されていますから、そういう意味ではサイバー空間では戦争は日々行なわれているんです。若し国から仕事が来たら? ギャラ次第では考えますけど、普段から犯罪行為をしている人間には頼まないでしょう(笑)」

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【ヤフーの正体】(06) 2+2=5、では1+1=?

20200525 04
『ヤフー』という企業名の語源は、ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』に出てくる人間をモチーフにした下等動物である。ヤフーは、理性を持った馬(※フウイヌム)が支配する国で、“家畜”として暮らしている。ヤフーは、この国で採れる“光る石”に目がなく、必死に溜め込もうとし、争いも起こす。スウィフトが描くヤフーは、人間の心に宿る醜さの象徴である。ヤフーに嫌悪感を抱いたガリバーは、常識に従い、徳が高く、感情や偏見で物事を決めないフウイヌムに心酔し、この国で一生を終えたいとまで思う。この国に政治権力は存在せず、フウイヌムにとって大きな美徳である友情と仁慈によって統治されている。彼らの国でシステムは完成している。嘗て、政治学者の高坂正堯が鮮やかに分析(※『近代文明への反逆』、PHP研究所)したように、馬の国を支配しているのは理性であり、共有された常識としての“世論”だ。果たして、ガリバーが考えたように、フウイヌムは理想の国なのだろうか? 高坂は、フウイヌムの国を“権力なき全体主義社会”と呼んだ。この国には“意見”が存在しないからだ。理性が集団の規範となり、反することへの自由が失われた時、行動の幅はどんどんと狭まる。争いは起きないが、冒険のダイナミズムは失われる。それを知っていたからこそ、創業者たちはヤフーに、理性に対する反骨心を込めた“ならず者”という文脈を読み込んだのだろう。

日本のウェブメディアにおける現実のヤフーは、ならず者ではなく、寧ろフウイヌムの国に近い。ヤフーが作り上げたシステムの中で生きるメディアこそがスウィフトの描くヤフーとなり、光る石(=PV)を求め、トラフィックに酔う。ヤフー帝国の“理性”に従えば、何も考えずに生きていける。それはある種のユートピアだが、反することへの自由は同時に、自らの手によって失われる。ヤフーの一歩は、ニュースの未来に大きな影響力を与える。そうであるからこそ、求められるのは川邊が言う“ジャーナリズムを健全に発達させていく為”の具体的な施策と人材だろう。「ヤフーがLINEと組んだのは、GAFAの台頭に対抗する為だ」と、川邊自身も強調している。アメリカでは、巨大プラットフォーマーのみのエコシステムに対するメディアからの異議申し立てが続く。先月22日、コロンビア大学ジャーナリズムスクールのトウセンターが発表した調査報告書『プラットフォームとパブリッシャー 一つの時代の終焉』によれば、アメリカでは『フェイスブック』や『グーグル』等の巨大プラットフォームに頼って、マスに配信する時代が終わり、如何に自分たち独自の有料読者を確保するかに、ゲームの流れが変わってきたという。プラットフォーム依存では十分な収益が見込めないと気付いたからだ。ニュースアプリを開発するベンチャー『スマートニュース』のトップである鈴木健は、筆者のインタビュー(※『Forbes JAPAN』2020年1月号→前編後編)で、システムを作り上げる側、つまりプラットフォームの社会的責任に言及した。社会思想の研究者としても注目された鈴木は、社会の歴史を振り返りながら、「システムをつくるエンジニアの設計一つで、社会に大きな影響を与えることができる」と、マスメディアと同等の責任が自身にも課せられると語った。メディアと同様に、プラットフォームも“社会的責任”を果たせるか否かの攻防が始まっている。メガプラットフォーマーに対し、意見を言えずに沈黙するしかなくなってしまった日本のメディアは、更に巨大化していくヤフーに何を思うのだろうか。彼らの理性を全面的に信頼し、先ずはご同慶の至りとでも言うべきか。或いはユートピアへの感謝を述べるべきか――。 《敬称略》 (取材・文/ノンフィクションライター 石戸諭) =おわり


キャプチャ  2019年12月17日号掲載

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【ヤフーの正体】(05) 黄昏の既存メディア…日本経済新聞がヤフーに記事を配信しない理由



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『ヤフー』とどう付き合っていくのか――。メディアはジレンマの中にいる。ここまで指摘したような問題があることは知っている。では、どうしたらいいのか? 先月1日、千代田区竹橋。『毎日新聞社』本社ビル5階にある役員用の応接間で、筆者は久しぶりに元上司と向かい合うことになった。小川一。警視庁のエース記者として名を上げ、社会部長、そして編集部門のトップである編集局長まで務めた。逸早く『ツイッター』のアカウントを開設し、社内から批判されながらも、“ツイートする局長”として注目を集めた。小川は、SNSのポテンシャルとインターネットのダイナミズムを経験的によく知っているメディア人である。突き詰めれば、彼に聞きたかったことは一つしかない。今年10月から、毎日新聞は人事交流の一環として、ヤフーに若手記者を1人派遣している。そして、同紙はヤフーに最も古く、1996年7月から配信している大手メディアである。ヤフーとの関係をこれからも深めていくのか。だとするならば、どのようなビジョンを持っているのか。「当時から毎日新聞は、幾つかのパソコン通信サービス向けに、ニュースを有料課金で配信していた。ヤフーは同じように、配信先の一つという認識だった。1995年にIT革命だ何だと言われていた時も、未だ紙の発行部数は伸びていたから、配信に危機感はなかった」。軈て、ヤフーとの関係は深まっていき、毎日新聞のウェブサイトへの流入は50%がヤフーからという時期もあった。だが、潮目は変わってきているという。

現在は10~15%に落ち着き、『MSN』と連携していた時代(※2004~2007年)に達成した月間5億PVまではいかないにしても、自社の発信力を高め、『LINE』等他のプラットフォーマーからの流入も増えている。「日本にはヤフーがあったから、ニュースがGAFAの草刈り場にならずに済んでいるという功績もある。ヤフーが配信料を払っているから、他のプラットフォーマーにも払えという交渉ができるのは大きい。だけど、未だ足りない。取材のコストを考えれば、プラットフォーマーは配信元にもっと利用料を払うべきだ」。先にも書いたように、ヤフーのメディア事業を支えているのは、多額の広告収入だ。2019年3月期のメディア事業の営業利益は1410億円に上る。1次取材のコストは配信元が負担し、その分、コストをかけずに記事を集めて大きな広告収入を得るという現在の仕組みを作り上げたのも、またヤフーだ。新聞社の売り上げは下がり、紙の新聞が今後、売り上げを伸ばすことはないという現実がある。かといって、ウェブメディアが新聞を代替する道筋も見えてこない。1000人単位で大量の記者を確保している新聞に及ばないにしても、雑誌同様に数十人規模の専属記者を抱え、日夜取材にコストをかけられるウェブメディアは、未だに存在しない。では、現実にニュースのコストを誰が負担するのか。ニュースを安く買い叩いてきたプラットフォームではないかというのが小川の主張だ。ヤフーの引力の影響は受けるが、そこだけに依存せず、コンテンツを配信する新聞社が如何に主導権を握れるか。模索は続く。「ジレンマに悩まされるくらいなら、ヤフー主導のゲームに参加せず、独自の道を選ぶ」――。そこで成功を収めたのが『日本経済新聞社』だ。日経は、他の新聞各紙と違って、ヤフーに記事を配信していない。月額4277円の日経電子版の有料購読数は現在70万部に迫り、中長期的な目標としてきた100万部が視界に入ってきた。日経電子版の立役者は現在、常務を務める渡辺洋之だ。日経本紙ではなく、グループ出版社の『日経マグロウヒル』(※現在の『日経BP』)でキャリアをスタートさせた渡辺は、世の中がインターネットの威力を知る1995年から3年弱、シリコンバレーに駐在している。「インターネットビジネスの最先端をアメリカで知った経験は大きかった。渡辺さんはデータの強さを知っていた。日経電子版はサブスクリプション(※一定期間の利用に対して代金を払う方式)であると同時に、70万人分の顧客データベース。PV数に基づく広告モデルで利益を上げるには巨大な規模が必要になるが、そこでは日経は勝てない。ならば、購読料と共に顧客データを集めて、広告戦略を練るほうが勝てる」(渡辺の部下)。

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【新型コロナウイルス・ICTで戦う】(中) 1日半で対策サイト

20200514 06
東京都の『新型コロナウイルス感染症対策サイト』の閲覧数は、1日50万件に上る。感染者数や検査件数等、都内の最新動向や相談窓口を紹介し、英語や中国語、韓国語版もある。都は3月2日、IT技術者が集まる非営利団体『コードフォージャパン』に、対策サイトの制作を依頼した。都は「なるべく早く公開を」と要請し、ウェブデザイナーら10人がオンラインで自宅等を結んで作業した。相談件数等最小限の情報に絞り、発注から1日半後の3日深夜、最初の公開を果たした。行政サイトの制作は通常、1ヵ月以上かかる。都内の大学生でITエンジニアの池田達哉さん(23)は、「意思疎通に無駄がなく、効率良く作業が進んだ」と振り返る。公開後も、閲覧した市民から「言語選択のメニューは上に置いて」等の提案が舞い込み、対応している。都デジタルシフ ト推進担当課長の天神正伸氏(54)は、「サイトを改善する提案には感謝しかない」と話す。ICTを使って社会の課題を解決するシビックテック(※市民の技術)が、新型コロナウイルス対策で威力を発揮している。都のサイトは、IT関係者の間でも「グラフや数字が直感的にわかる」等と評価が高い。サイトの設計図にあたるプログラムを公開すると、同じ形式のサイトがほぼ全ての道府県と、アメリカや台湾に広がった。ボランティアで活動するIT関係者も目立つ。アプリの開発等を行なう企業『ジグジェイピー』の福野泰介会長(41)は先月中旬、厚生労働省の公開データを基に、全国の病床の使用状況が都道府県別に一覧できる無料のサイトを公開した。医療関係者ら1日約6万人が閲覧。「地元の現状がわかり、見易い」と好評だ。国の自治体が発信する感染者の公開データは、発表する内容や形式が自治体毎に違う為、比較や集計がし難い。AI開発を行なう東京の企業『シグネイト』の斉藤秀社長(44)は、全国のデータの入力形式を統一させる作業用サイトを作った。同社に登録するエンジニアら約3万人に協力を呼びかけ、これまで約200人がボランティアで入力作業に参加している。斉藤社長は、「感染症の素人でもデータの整理なら貢献できる」と意気込む。行政や医療機関が感染者の対応に追われ、十分に機能しない非常時だ。危機を乗り切るには、市民の力を生かす知恵が必要だ。


キャプチャ  2020年4月29日付掲載

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【新型コロナウイルス・ICTで戦う】(上) 位置情報、“人流”捉える

ICT(※情報通信技術)の進化で変わる感染症対策の現場を報告する。

20200514 05
霞が関で今月22日、新型コロナウイルス対策を検討する政府の専門家会議が開かれた。国の緊急事態宣言の発令等に伴い、人の移動がどう変化したかを表すデータが示された。「東京都市部への人の流入は大幅に減り、休日は8割減となった。しかし、公園には多くの人が出ている」。尾身茂副座長(70)は記者会見で、データを基に更なる外出自粛を呼びかけた。人から人へとうつる感染症は、人同士の接触を最小限に減らせば、感染の拡大を遅らせることができる。これまで国境で人や物の往来を止める水際対策、病院や施設での感染者の隔離はあったが、全国で人の接触を減らす試みは初めてだ。その効果を把握する武器が、スマートフォンから見える人の流れだった。厚生労働省クラスター対策班の西浦博氏(42、北海道大学教授)は、「スマホから収集した位置情報の活用は最良の手段。感染症対策で効果的に使われた初の例だろう」と話す。災害時に携帯電話の位置情報を使い、救助や救援が必要な人の居場所を特定する技術の重要性は、2011年の東日本大震災で注目された。その後、スマホの位置情報を匿名化して大量に集め、人の動きを追跡する技術が発展した。「集団の位置情報は、人の密集を避ける対策に使える筈だ」。今年2月、『ソフトバンク』の子会社『アグープ』の柴山和久社長(54)は、そう直感した。スマホのアプリには、道案内等で位置情報が頻繁に使われている。アグープの技術を使ったアプリの使用に同意すると、個人情報を外した匿名の位置情報がアグープに届く。アプリの普及率等から、特定地点で一定時間毎の滞在人数が割り出せる仕組みだ。アグープは災害用に全国2万地点の滞在人数を解析する技術を開発しており、これを利用した人の動きの分析を主要駅で始めた。政府は今月7日、7都府県に緊急事態宣言を発令。『NTTドコモ』やアグープ等から各地の人出の変化を示すデータの提供を受け、ウェブサイトで連日公表している。検索大手の『ヤフー』も10日、独自に分析した混雑データの公表を始めた。こうした民間データを国も分析し、専門家会議での議論や施策に反映させている。柴山さんは、「東日本大震災以降に改良を重ねた技術が、漸く命を救える手段になった」と語る。


キャプチャ  2020年4月28日付掲載

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【ヤフーの正体】(04) 嘗ては異端児、今は巨人…“日本版CNN”に乗っかるマスコミ業界



20200511 04
2018年10月31日、そして2019年4月3日――。元トピックス編集部員のブログが公開された。前者は“トピ編のエース”と呼ばれ、『LINEニュース』に移った葛西耕、後者はライターとしても活動している“ながち”こと永井千晴が、ブログで退職報告を配信した日付だった。一連のブログに、ヤフトピ第三の問題が象徴的に表れている。“ニュースのアクセサリー化”だ。青森の地方紙『東奥日報』の整理部(※見出しを付けて編集・レイアウトする部署)から『ヤフー』に転じた葛西のブログタイトルは、『ヤフトピ2万本に見出しを付けた編集者がヤフー株式会社を退職します』というもので、「日本で一番、総PVを稼いだと思っています」と、如何に自分が頑張り、PVを稼いだかが綴られている。新卒でトピ編に入った永井のブログでも、「ヤフトピの作成本数は編集部で2位になりました(えへん)。超がむしゃらでした」と、自分の努力が誇らしげに語られる。2人のブログの特徴は、ヤフーへの感謝や自分の仕事を誇ることはあっても、コストをかけて地道に取材し、記事を配信しているメディアへの感謝が全く書かれていないことにある。両者への取材は共に断られたが、文章を読解する限り、彼らにとって配信されてくるニュースは、自身のキャリアを華やかに彩るアクセサリーとして消費するものでしかないようだ。「自分たちがコストをかけて配信したニュースが、彼らのキャリアアップや、経歴に利用されるのか…。“えへん”の為に配信しているのかと思うと悲しくなった」(ウェブメディア編集長)という声が、配信メディアの怒りを表している。

こうした現状を、苦々しい思いで見つめている人物がいる。ヤフトピ成長の立役者であり、黎明期からヤフーのニュース部門を支え、2018年に退職して東京都市大学教授(メディア情報学)に転じた奥村倫弘である。「ウェブメディアでは、今も十分にトレーニングされた編集者やライター、記者が育ち切っていない。未成熟なままだ」。1992年に『読売新聞』に入社した奥村は、福井支局を振り出しに、大阪本社経済部を経て、1998年に設立2年目のヤフージャパンに入社した。奥村には、パソコンやインターネットという情報技術に対する高い理解と、新聞で培ったニュースを判断する力があった。新聞記者の地道な努力を知っているからこそ、配信元への敬意も当然あった。1998年前後、新聞の発行部数はピークに達していた。軈て来るインターネットの衝撃を理解していたメディア関係者が未だ少ない中で、奥村には確かに先見の明があった。入社と時期を同じくして、ニュース価値の高い記事をピックアップし、関連リンクを貼る“トピックス”が始まり、奥村はニュースチームの中核メンバーとなっていく。ヤフトピの基礎と原型を作り上げた奥村には、忘れられない光景がある。2003年に東証1部上場を成し遂げた後だったと記憶している。ある大手メディアからヤフーに転じてきた男性編集者の指が震えていた。初めてトピックスのトップにニュースを出す。その緊張に体が耐えられず、マウスを持つ手が震えていたのだ。「『これはヤバいな、本当に大きな影響力を持っているんだ』と思った。自分で記事を書いていた時以上に、ヤフーで見出しを付けてトップに出す時のほうが緊張するって言うんだよ。業界どころか、社会に強い影響力があると思って、怖くなった」。奥村たちは、ヤフーがベンチャーだった時代を知っている。「ニュースを配信してほしい」と頼んで回り、配信メディアにも利益が回るようなモデルを提案する。後に社長となる宮坂学は、プラットフォーム側の論理と新聞社の主張を調整し、言うなれば“共存共栄”の仕組みを模索した。彼らにとって、ニュースは確かにビジネスではあったが、同時にジャーナリズムは憧憬であった。社内で何人もが聞いている宮坂の口癖は、「ヤフーで日本版CNNを作りたい」だった。奥村は、最初期からの道程を登山に例える。麓から一歩一歩と歩みを進めていたら、いつの間にかポータルサイトのライバルはいなくなり、地上は見えなくなっていた。「今の社員は、いきなり頂上までヘリコプターで運んでもらって、綺麗な景色が見えるねっていうような感覚なんじゃないかな。ニュースを編集することの怖さを、嘗てほど感じなくなってきているのではないかと思う」。当時は、高さへの畏怖があったからこそ、手が震えていた――。インタビュー中、奥村が明確に間違っていたと振り返ったのは、ヤフトピの人材育成だった。2011年、ヤフーで初めて新卒で入社した社員がトピ編に配属された。当時、編集部の中核は30代のメディア経験者だった。現場経験のない新卒社員は、数字や世代の流行を捉える力こそあれ、ディスプレイの前だけで“報道マインド”を育てるには限界があった。そんな状況への危機意識から、奥村は自前で取材もできるようにと、ウェブメディア『THE PAGE』をヤフー発で立ち上げたが、意識は共有されないままヤフーを去ることになる。

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三井住友銀行の法人向けオンラインサービスで長期間“利用停止”のお粗末

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『三井住友銀行』の法人向けインターネットバンキングサービス『パソコンバンクWeb21』が、今年1月から2月にかけて、2週間に亘って利用停止となり、金融業界関係者から「中小企業を軽視している」との批判が出ている。利用停止の理由は、相次ぐ不正アクセスの対策の為とされ、停止期間中に振り込み等を行なう為には、店舗にまで出向き、窓口での振り込み手続きかATMを使用しなければならなくなった。細かい話ではあるが、振込手数料についても、インターネットバンクよりATMのほうが1件あたり110円高い。問題は、このパソコンバンクWeb21というサービスの利用者の多くが中小企業ということ。通常のインターネットバンキングサービスがこれだけ長期間に亘って停止すれば、利用者からの批判が噴出する。前出の金融業界関係者は、「中小企業であれば批判は抑えられるだろうと踏んだ節がある」という。抑々、原因が不正アクセス対策とはいえ、自らのシステムの脆弱性にも要因があることを考えれば、利用者に長期間に亘って不便を強いることは信義に悖るとの声が専らだ。


キャプチャ  2020年4月号掲載

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【ヤフーの正体】(03) 「私たちに権力はありません。あるのは影響力だけです」…“帝国”の代表者、斯く語りき



20200427 04
その後、『ヤフー』との交渉の結果、当初認められた編集部見学の許諾は下りなかったが、10月16日にトピックス編集部の代表が対面取材に応じるということで決着した。通されたのは、ヤフーが入っている『東京ガーデンテラス紀尾井町紀尾井タワー』18階にある会議室だった。トピ編には編集長というポジションが存在しない。代わりに代表として出てきたのは、スポーツ系の出版社から2016年にヤフーに転職した山内浩太だった。スポーツ以外のニュースを取材した経験はなく、社員歴も3年という山内の答えは、全てトピ編を代表する見解であると告げられた。広報の2人と、メディア統括本部編集2部部長の奈須川信幸、法務歴が長いという今子さゆりが同席した。NHK出身の奈須川は、北海道で10年近く記者経験があり、過去のインタビュー記事(※毎日新聞)によると、2005年に入社し、トピ編の現場でも活躍した。今子は法務のスペシャリストで、メディア経験はない。山内によると、ヤフーに配信されてくるニュースは1日当たり約5000本で、様々なメディアで取材経験がある中途採用組にヤフー新卒組を含めた約25人が、ローテーションでチェックしている。5000本の内、トピ編が全てチェックするのは見出しだけだ。多くのニュースは中身を読まれることなく、配信されるだけで終わる。配信された後、トピ編が気になる見出しのニュースを抜き出し、中身を精査した上で、トピックスに掲載するべきニュースを選び出す。

トピックスに入る記事は、“公共性(=世の中の大きな動きに関わる重要な出来事)”と“社会的関心(=世の中の多くの人が知りたいと思っている出来事)”という2軸で選ばれる。政治、経済、社会、国際ニュース等は公共性が高いと判断され、トピックスの上部に並ぶ。下に並ぶのは、エンターテインメントやスポーツといった社会的関心が高いとされるニュースだ。PV数だけで言えば後者が高くなるが、PV数だけでなく、伝えることが必要なニュースも選び出すことで、硬軟のバランスを保っているという。山内は、「トピ編の13文字見出しとは、配信記事をコンパクトに要約して伝える手法」だと説明した。では、どのような“ニュース観”を持った編集者がニュースを選んでいるのか。社内の育成システムについても聞いてみた。彼らのオウンドメディア(※企業が自社で運営するメディア)では、トピックス編集部に必要な能力について“価値判断力”という言葉が強調されている。ニュースの現場を知らない新人や、山内のようにスポーツ媒体以外の経験がない編集者が、どのように政治、経済、社会問題についての価値判断力を身に付けられるのか。ヤフーでは地方紙と提携して、新卒編集者に記者経験を積ませる等していたが、それも精々2年であることはオウンドメディアで明らかにされている。これまでのメディア業界にないような育成術があるのかどうかは、山内の説明からは判断できなかった。繰り返されたのは、ヤフーの新卒社員は優秀であること、そして社内教育の効果だ。教育というのは、ニュースをチェックして、次の日の新聞朝刊1面を予想する“新聞1面当てクイズ”や、次々と記事を読んで13文字の見出しを付ける“千本ノック”と呼ばれるものを指す。そして日々、多様なバックボーンを持つ“皆”で議論して見出しを決める。「新卒が現場を知らないのは事実ですが、私たちにはニュースを読む力、政治や経済、災害等公共性に関わる事例について、重要性を判断する力があります。驕りもありません」(山内)。しかし、山内が言う“新卒が優秀”だから大丈夫というのは、説明になっていない。ヤフーのニュース部門にいたあるメディア経験者は、「メディア経験がない新人は、多くの場合は基本的なことを知らないままトピ編の現場に入る。例えば、『シリア情勢って何が問題なんでしたっけ?』という感じ。これではちゃんとしたニュースを選ぶことはできないから、経験者が自発的に社内勉強会を開くこともあった」と証言する。

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【ヤフーの正体】(02) トピ編を悩ませる韓国記事への排外主義的コメント

20200420 01
『ヤフー』との取材交渉が始まったのは、今年8月だった。本誌編集部を介して、ヤフートピックスができる過程をヤフトピ編集部に密着して取材したい旨を企画書に纏め、広報担当者に送った。程なくして、広報から「取材を受ける」と返信があった。9月25日という具体的な取材日も決まり、ヤフー側から「どのような質問をしたいのかを事前に送ってほしい」と依頼があった。交渉はここから暗転する。筆者が解き明かしたい問題は2つあった。第一に、ニュースに対してどのような価値観を持った編集者が存在し、相応のコストがかけられた配信元の記事を読んでいるのか。第二に“社会的責任”、より具体的には、高まる排外主義的言説に対してどう立ち向かおうと考えているのか。トピ編にとってニュースの“公共性”とは何か、ニュースを選ぶことの権力性をどう認識しているかといった編集者の哲学と見識を問う質問に加えて、コメント欄、特に韓国報道に付いて回る排外主義的言説は、表現の自由だと考えるかという、ヤフーが直面している時事的な問題も入れた。背景はこうだ。インターネット世論を研究する立教大学教授の木村忠正(ネットワーク社会論)が、2016年7月と8月に16~70歳の男女1100人を対象に行なったウェブアンケート調査(※詳細は『ハイブリッドエスノグラフィー』、新曜社、2018年)によると、ヤフーニュースの利用率は72.5%に達している。コメント欄まで閲覧する人は利用者の内57.5%と半数を超え、自らコメントまでする人は約15%に上る。つまり、多くのユーザーはコメント欄までをワンセットにしてヤフーニュースに接触していることが、このデータから読み解ける。

木村の研究によれば、特に書き込みが多くなるのは韓国関連のニュースである。その中身も最近では、日韓の『秘密情報保護協定(GSOMIA)を巡るニュースのコメント欄に、「良い機会なので断交すべきだと思います」「今こそ断韓」「韓国には、資源も、研究力も、消費力も技術力も、道徳まで無いからな」「(韓国人は)凄いアホ」という書き込みが上位に並んでいた。大阪大学准教授の辻大介(社会学)の研究によれば、インターネットへの接触と排外意識の高まりには明確な因果関係が認められる。今年9月に『週刊ポスト』が“韓国なんていらない”という特集を組んで批判されたのは記憶に新しいが、新聞社や出版社が使ったら当然のように批判を浴びる言葉が、月間150億PVを誇るニュースサイトのコメント欄の上位に公然と残り続けている。つまり、ヤフーは巨大な影響力があるにも拘わらず、こうしたコメントを残し、多くのユーザーがニュースとセットで受容する環境を作り上げている。日本に蔓延る排外主義的言説を後押しする方向に、その力を行使しているのではないか。これで、巨大メディアの社会的責任を果たしているとは言えないだろう。『フェイスブック』や『グーグル』はアメリカの下院司法委員会の公聴会に呼ばれ、白人至上主義等ヘイトスピーチへの対策を求められている。『ロイター通信』によると、フェイスブックの担当者は「言論を広く認め過ぎて失敗している」と明言し、「人々に発言の機会を与えたいが、どこかで線引きをする必要がある」と説明している。こうした流れを踏まえ、ヤフー内部でニュースに関わる人たちの見解を正面から聞きたい――。質問にはこうした問題意識を込めた。質問を送ったところ、ヤフー側から突然、「今回の取材は受けられない」という連絡が来た。広報が説明した理由は、「課題意識を持って取材に来るのではないかと、トピ編から不安視する声が上がっている」「具体的には韓国についての質問項目等」というものだった。つまり、筆者が知りたかった第二の問題、社会的責任についての質問が引っ掛かったというのだ。断る理由を会って説明したいということで、広報担当者が2人で本誌編集部を訪ねてきたのは、9月10日のことだった。「課題意識というのは、韓国報道等についてです」。期せずして韓国報道についての質問が、取材拒否の大きな理由だったことが、広報自身の口から明らかになった。筆者が取材意図を一通り説明した結果、取材の可否を再度検討するということで、その日は散会になった。 《敬称略》 (取材・文/ノンフィクションライター 石戸諭)


キャプチャ  2019年12月17日号掲載

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【水曜スペシャル】(150) 機密情報盗られ放題の日本企業――NECの顔認証システムも被害に、サイバー攻撃“スパイ天国”の惨状



20200415 09
今年に入ってから、相次いでスパイ工作事件が明るみに出ている。最初に話題になったのは、日本が誇る先端技術の大手メーカー『三菱電機』。サイバー攻撃によって、自社の持つ情報だけでなく、同社がつき合いのある内閣府や防衛省、原子力規制委員会、資源エネルギー庁等の官公庁に加えて、重要インフラを担う電力や通信会社、JRや私鉄等の情報も盗まれた可能性が指摘された。このニュースの直ぐ後、今度は『ソフトバンク』がロシアのスパイ活動の餌食となっていたことが発覚。元社員が、次世代通信システムの5Gに関連する機密情報をロシア人スパイに渡していたとして起訴された。KGB時代から科学やテクノロジー分野のスパイ工作を担ってきたスパイ集団が暗躍していたとされる。更に、『NEC』や『神戸製鋼所』等もサイバー攻撃に晒されていたことが、相次いで発覚した。尤も、こうしたケースは偶々表面化しただけで、日本に対するスパイ工作のほんの一端に過ぎない。国防やインフラ等日本の機微情報が、多層的な手法で盗まれ放題となっているのが実情だ。NECのケースでは、サーバーに不正アクセスがあったことが発表されたが、同社は「情報流出等の被害は確認していない」と語っている。物は言いようだが、実際には情報が流出したかどうかも把握できていないのだ。日本に進出している国外のサイバーセキュリティー企業の幹部は、「過去10年以上に亘って、日本の軍事やインフラ、先端技術等を担う大手民間企業は、軒並みサイバー攻撃等によるスパイ活動の餌食になっている。大手企業が本当に、今になって漸くそれに気がついたとしたら、間抜けにも程がある」と指摘する。

また、こんな戦慄の事態が水面下で起きているとも証言した。NECが力を入れている先端技術の顔認証システムが、中国政府系ハッカー集団にサイバー攻撃で盗まれてしまっているというのである。NECの顔認証システムは、2019年にアメリカの『国立標準技術研究所(NIST)』による顔認証技術のベンチマークテストで世界1位の評価を得る程、レベルが高い。中国側からしてみれば、喉から手が出るほど欲しい技術だ。中国は、サイバー攻撃等を駆使したスパイ工作で世界から先端技術を盗んで、国内企業を成長させてきた過去がある。有名なのは、2010年に発覚した中国政府系ハッカーらによる『グーグル』へのサイバー攻撃で、ハッカーらはグーグル検索のソースコードを盗んで、中国の検索エンジン『百度』に提供したと言われている。更に憂慮すべきは、NECの顔認証システムが、7月に開催予定の東京オリンピックで使われる事実である。NECの技術が、約30万人の大会関係者が会場に出入りするのを管理する。国外のサイバーセキュリティー企業関係者たちはこれまで、中国のハッカーらが東京オリンピックを妨害する為に、サイバー攻撃による工作を仕掛けるだろうと警鐘を鳴らしている。中国政府系ハッカーらにしてみれば、史上最もハイテクな大会を喧伝する東京オリンピックで日本が失態を晒せば、ライバル国である日本の評判を落とすことができる。勿論、システム構造を盗み取ったNEC顔認証システムも、格好の攻撃ターゲットとなる。こう見ていくと、問題は最早、日本がスパイ活動の格好の標的になっていることではない。それよりも、スパイ活動の主流がサイバー攻撃になるにつれ、盗まれた側が、何を、いつ盗まれたのかもよくわからなくなっていることだ。抑々、三菱電機は社内の8000人分程の個人情報(※社員、退職者、就職志願者)や社内情報が流出した恐れがあると発表しているが、本当はどこまでの情報が盗まれているのか把握していない可能性が高い。事実、三菱電機は軍事やインフラの情報が漏れていないと発表した後、防衛機密情報が流出した可能性に気が付いた。結果的に、被害の全容を把握していないことを露呈した。日本の技術系大手企業を狙うのは、圧倒的に中国政府系ハッカーが多い。中国のハッカー組織は2000年頃から、先進国の政府や軍、大手民間企業を広範囲に攻撃してきた。アメリカでは政府機関や軍部、民間企業まで中国からの執拗な攻撃が報告されているが、日本でこれまで表面化したものを挙げると、三菱重工業や『日立製作所』、『日本年金機構』等、数は多くない。これは明らかに不自然で、単に被害を把握できていないだけというのが専らの評判である。NECのケースも然りだ。同社が今回、サイバー攻撃を受けていた事実を発表した理由は、2018年に社外からサイバー攻撃を受けていると指摘されたからに過ぎない。結局、独自にはサイバー攻撃を受けたことも、自社の看板技術である顔認証システムのプログラムが盗まれていることも気が付かないのである。

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テーマ : ITニュース
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