【ドクターXは知っている】(03) 鎮痛剤で注意すべきは副作用だけではない!

20170524 12
頭痛等の痛みを和らげてくれる鎮痛剤。ドラッグストアで購入できるものもあり、私たちは深く考えずに使いがちです。しかし、総合内科専門医の大竹真一郎先生は、鎮痛剤が抱える様々な問題を指摘します。「鎮痛剤のメリットは痛みを抑えるだけで、根本的な治療にはなりません。痛いとか苦しいというのは、体が発するアラームのサインですが、鎮痛剤はそのアラームを切ってしまう薬です。鎮痛剤によって、見逃してはいけないアラームを切ってしまう恐れもあります。鎮痛剤を使っても問題ないのは、ある程度症状の診断がついて、根本的に治すのが難しく、怖い病気でもないということが確認できた場合に限ります。例えば、急性腰痛症(ギックリ腰)等ですね」。鎮痛剤の中でも代表的なロキソニンは、ボルタレン等と共に非ステロイド性抗炎症薬に分類されるものです。痛みを強く抑える効果がある一方、副作用の心配もあり、市販薬は薬剤師しか販売できない第1類医薬品に指定されています。とはいえ、「ロキソニンを薬局で買えることには怖さを感じる」と大竹先生は言います。「ロキソニン等の非ステロイド性抗炎症薬は、痛み・炎症・発熱を起こすプロスタグランジンという物質の合成を阻害することで、鎮痛・消炎・解熱をしています。しかし、この物質は胃粘膜の保護や腎機能維持といった役目も果たしている為、副作用で胃潰瘍・胃炎・腎不全を起こす恐れがあるのです」。

ロキソニンの副作用対策として、整形外科等ではよく一緒にムコスタという胃薬が処方されますが、残念ながら効果は殆ど無いと言います。「ムコスタを朝昼晩と飲んでいる状態でロキソニンを服用した場合に、多少胃潰瘍が予防できる程度。一緒に飲むやり方は、治療ガイドラインでも勧めていません。他にも、非ステロイド性抗炎症薬は、抗生物質との組み合わせで痙攣を助長する場合があり、薬の飲み合わせに注意が必要です」(同)。また、鎮痛剤は解熱目的でも使われますが、インフルエンザでの使用は特に薬を選ぶ必要があります。「過去に、インフルエンザで非ステロイド性抗炎症薬を使用した子供が、ライ症候群やインフルエンザ脳症になってしまった症例があります。現在は、インフルエンザでは非ステロイド性抗炎症薬ではなく、比較的安全とされるアセトアミノフェンが配合されたものを使用するようになっています。ただ、これもあくまでデメリットが少ないというだけです。抑々、インフルエンザは熱を下げる必要がないですから」(同)。鎮痛剤に頼り過ぎることで起こるデメリットとして、痛みが余計に酷くなる場合もあるそうです。頭痛には緊張性頭痛や偏頭痛がありますが、これらを抑えようと薬に依存することで起こるのが“薬物乱用頭痛”です。「緊張性頭痛には非ステロイド性抗炎症薬、偏頭痛にはトリプタン製剤がよく使われますが、これらを日常的に服用していると、体が痛みに対して過敏に反応するようになる恐れがあります。痛みは体からのアラームで、鎮痛剤はそれを切るものです。飲み続けているうちに、体はもっと早くアラームを出すようになります。痛みのスイッチが入り易くなるんです」(同)。痛みを無くそうとすればするほど、痛みに敏感になってしまう…。そんな悪循環に陥らないよう、気を付ける必要がありますね。使い方によっては、メリットに対して割に合わない大きなデメリットを引き起こす恐れもある鎮痛剤。頼り過ぎることなく、慎重を期して使用しましょう。 (取材・文/編集プロダクション『アートサプライ』 宮田文郎)


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【ここがヘンだよ日本の薬局】(02) ジェネリック医薬品に潜む国と薬局の思惑

調剤薬局へ行くと、「ジェネリックにしますか?」と聞かれる。通常の医薬品と同等の成分で薬代を抑えられる為、ついそちらを選んでしまう人が多い。国がジェネリック医薬品を推進する背景には、膨らみ続ける医療費の抑制がある。そして、調剤薬局もその恩恵を受けているようだ。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

20170522 06
“2025年問題”という言葉をご存知だろうか? 凡そ800万人に上る“団塊の世代”が、この年一斉に75歳を迎える。我が国建国以来の人口ボリュームが一挙に後期高齢者の仲間入りを果たすことで、医療費が未曾有の領域に達することを指した用語だ。厚生労働省の発表によれば、2014年度の国民医療費は40兆8000億円。これが2025年度には55兆円にまで膨らむと予想されている。医療費抑制は我が国喫緊の課題であり、その為の切り札の1つにジェネリック医薬品の普及促進策がある。ところで、ジェネリック医薬品とは抑々何か? 医療用薬品には、同じ成分で同じ効き目でも高値の薬(※先発医薬品)と、安値の薬(※後発医薬品)とがある。このうち、後発品のことを一般にジェネリック医薬品と呼ぶ。先発薬は、新しい効能や効果を持ち、臨床試験等でその有効性や安全性が確認され、承認された医薬品で、特許によって守られている。ジェネリック医薬品とは、先発薬の特許が切れた後に販売され、先発薬と同じ有効成分、同じ効能や効果を持つとされる医薬品のことだ。通常、医薬品の新規開発には多額の費用がかかる。研究開始から承認の取得までに15年近くを要することもある上、開発成功の確率も低い。開発途中で断念したケースも含めると、「1成分当たりの開発費用は1000億円を超える」という試算もある。2011年度の製薬会社の売上高における研究開発費用比率は凡そ12%で、これは製造業全体の4%を大きく上回る数値だ。しかし、ジェネリック医薬品の場合、特許切れの成分を扱う為、開発プロセスを省略できることが製薬会社には大きなメリット。先発薬と違って、小規模の臨床試験を受けるだけで済む上、承認を得る為の審査が簡素化されているので、研究開発費は数千万円程度に抑えられる。開発年数も3~5年程度で済む。

こういった事情から、厚生労働省は膨れ上がる一方の医療費抑制の為、ジェネリック医薬品の使用促進を進めている。同省の塩崎恭久大臣は、2015年6月の経済財政諮問会議の席上で、「ジェネリックのシェア目標を2020年度に80%超にする」と表明した。2015年9月時点での日本国内のジェネリック普及率が56.2%に留まっていることを考えれば、かなり強気の発言と言えよう。薬代が保険でカバーされる日本とは違って、全額自己負担が多い諸外国では、患者が薬価に敏感にならざるを得ないという事情は確かにある。しかし、欧米諸国のジェネリック普及率が60~90%であることと比べれば、我が国の普及率は未だ低い。何れにしても、今後も医療費が国家財政を圧迫し続けることは間違いない。財務省も、「特許切れの新薬をジェネリック医薬品に切り替えることで、年間1.5兆円の医療費を減らせる」としている。このような流れの中、2016年4月の調剤報酬改定で、薬局にジェネリック医薬品への切り替えを促す為、調剤報酬点数が見直された。従来はジェネリック医薬品の調剤割合が55%以上で18点、65%以上で22点という基準だったが、65%以上で18点、75%以上で22点へと其々変更されたのである。この基準を満たした薬局は、“後発医薬品調剤体制加算”を国に申請することができる。薬局が患者にジェネリック医薬品を勧める背景には、こうした国による強硬なプッシュがあったのだ。同一成分の製品でも薬価が低く抑えられるので、患者の薬代は下がり、国の保険料も安く済む。結果、医療費の削減に繋がるとされるジェネリック医薬品。一見、いいこと尽くめのようにも見えるが、安易な普及に警鐘を鳴らす専門家は少なくない。最も注意が必要なのは、「ジェネリック医薬品と特許が切れた先発医薬品は、完全に同じ薬ではない」という点だ。ジェネリック医薬品を製造・販売する為には、先発医薬品が持っている特許の内、物質に与えられる“物質特許”と、特定の物質に対する新しい効能に与えられる“用途特許”の2つの特許が切れている必要がある。しかし、薬の特許にはそれ以外にも、物質の新しい製造方法に与えられる“製法特許”や、調剤する上での工夫に与えられる“製剤特許”等があり、物質特許と用途特許が切れていても、後述の2つの特許が切れていないケースがある。製法特許や製剤特許の申請は、商品化が進む中で出願することが多いからだ。つまりは、特許にタイムラグがあるということ。製法特許が切れていないうちに開発されたジェネリック医薬品は、薬のコーティング部分に使用される添加物等を先発医薬品と同じにすることはできない。「飲み薬の場合、同じ成分が入っていても、添加物の種類や薬の剤形が変わるだけで、体内での吸収速度や有効成分が分解される状態が異なってしまいます。薬の作用そのものが大きく変わり、先発薬に比べて全く効かなかったり、反対に過剰に効き目が現れる場合が考えられるのです」。こう語るのは、東京都内でクリニックを営む開業医である。仮に全ての特許が切れた先発薬のジェネリック医薬品だとしても、製造法の細部まで明らかにはされないので、“完全に同一の薬”とは言えないという。

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政治家や官僚OBにマスコミOBまで手中に…“医学部新設”で凄まじき政治力とカネを巻き上げた『国際医療福祉大学』のドス黒い正体

私立大学の医学部としては最安値の学費が売りで、今年1~2月の一般入試の偏差値は『慶應義塾大学』や『東京慈恵会医科大学』と並ぶ最難関の『国際医療福祉大学』。100人の募集定員(※国際枠・センター利用枠を除く)に対し、出願者数は2769人で、倍率は27倍にも達した。しかし、この新設医学部は、高邁な理想・人気・難易度の陰で、異色の経営者・政官界・メディアとの持ちつ持たれつの関係が噂され、“医療政商”と揶揄する声も付き纏う。医療と福祉を掲げ、急速に膨張した学園の謎を解き明かす。

20170517 14
京成電鉄で東京都心から1時間半、千葉県成田市の公津の杜駅に降り立つと、真新しい瀟洒な大小の建物群が現れる。日本初の医療福祉の総合大学を謳い文句に、先月新設された『国際医療福祉大学』(以下“国福大”)医学部のキャンパスだ。昨年、37年ぶりに新設された『東北医科薬科大学』に続く81番目(※大学校を含む)の医学部だ。国福大医学部が耳目を集めた理由は、6年間で1850万円という低廉な学費だ。私大医学部の学費の平均約3300万円の半額強で、私大医学部では最も低い。この学費の安さが、国福大医学部の謎と闇を探る糸口だ。医学部の運営は、教授陣や設備への投資で巨費を要する。国立大学でさえ、年間50億円以上の税金が運営費交付金として投入されている。一方、私大医学部への一般補助(※国立大学の運営費交付金に相当)は、平均して20億円。この為、国立大との差額30億円超を学費で埋め合わせるしか術はない。私大医学部の定員は100人余りで、1人当たり学費は3000万円程度になる。私大医学部は学費が安いほど難易度が上がり、高くなるほど偏差値は下がる。学費を下げて大量の受験生を集めることができるのは、経営状態が良い一部の私大だけ。診療報酬が下がり続けて、大半の私大医学部は経営難に直面し、安定財源の学費には手をつけられない。何故、新設医学部の国福大がこんな大胆な手を打てたのか? 「それは、高木邦格理事長の政治力に尽きる」と、他の私大医学部関係者は口を揃える。高木氏は昭和32(1957)年、福岡県大川市に生まれた。実家は明治43(1910)年に開院した眼科医院で、父の代に規模を拡大。高木氏は3代目に当たる。15歳で上京して、麻布高校に進んだ。大学受験に失敗し、父の病院で事務職に就く。22歳で再び上京して、東京医科大学に入学した。大学時代は福岡県選出の衆議院議員で、内科医だった自見庄三郎氏の私設秘書に。この後、自見氏を介して、“ミッチー”こと渡辺美智雄氏の知遇を得る。この邂逅こそが、高木氏の人生の針路を決定付けた。

東京医科大学を卒業して父の病院の経営に関与した後、1995年に渡辺氏のお膝元である栃木県大田原市に、コメディカル(※薬剤師・理学療法士・作業療法士ら医師・看護師以外の医療従事者)の養成を目的とする国福大を設立した。渡辺氏の全面支援があったことは公知の事実。開学当初、息子の渡辺喜美氏が理事を務めた事実が、その絆の深さを物語る。当時、高木氏は37歳の若さだ。新設大学としては史上最年少の理事長の誕生である。渡辺氏の大田原市での威光は絶大で、高木氏はその政治力を存分に使う。国福大は大田原市から用地を無償提供され、栃木県からは36億円の補助金を受けた。後に“医療界の政商”の異名で呼ばれるビジネスモデルの原型である。その後、高木グループは破竹の勢いで急成長を遂げていく。1996年に名門の山王病院(東京都港区)を買収。2002年に『国立熱海病院』、2005年には『東京専売病院』を手中に収める。今や、大学や病院等を含めたグループ全体の売り上げは、約1000億円に膨らんでいる。基本技は、公金をフル活用する手法。例えば、2002年7月に国立熱海病院を転じ、国福大熱海病院を開設した際、買収価格は3億5000万円。「厚生労働省と交渉し、半数以上の病院職員を引き受ける代わりに、時価の1割で買収した」と医療業界誌記者は振り返る。一方、熱海市からは病院整備として30億円を受け取り、開院後3年間の赤字は熱海市と国に補填させる頭脳的な資金集めを成し遂げた。医療界では、「あまりに強引だ」と反発の声も強い。2006年に千葉県市川市の『国立精神・神経センター国府台病院』の移転跡地の払い下げが検討された時、厚労省が国福大への譲渡を公募前に決めていたことが同年の参議院行政改革特別委員会の追及で明らかとなり、払い下げが撤回された過去もある。それでも高木氏の野望は止まない。その悲願が医学部の新設だった。2009年8月には、北島政樹学長(※当時)が「医学部の開設を検討している」と言明した。だが、栃木県には『獨協医科大学』と『自治医科大学』があり、医学部の新設は認められない。高木氏にとって渡りに船だったのが、2010年2月に千葉県成田市が医学部誘致の検討を始めたことだった。同年12月の市長選では、現職の小泉一成氏が医学部誘致を公約に掲げ、再選を果たす。当時、成田市の関係者は海外の医学部誘致を真剣に考え、市議団はアメリカで大学医学部を視察して回った。成田の医学部新設問題に詳しい医師は、「高木さんから連絡があり、『成田市が医学部を誘致すると聞いたけど本当か?』と尋ねられた」と回顧する。高木氏が成田市に期待したのは、“成功の方程式”通り、その財政力だ。成田市は毎年、『成田国際空港株式会社』から固定資産税等で約160億円の税収があり、全国屈指の豊かな自治体。高木氏は小泉市長の懐に飛び込む。市長は地元出身の元旅館経営者。2010年12月の市長選の時点で、医学部誘致の為の人脈やノウハウなど持ち合わせていない。高木氏は、嘸かし強力な助っ人に映ったに違いない。そして2013年9月、成田市と国福大は共同で、国際戦略特区事業として“国際医療学園都市構想”を提案する。

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【ここがヘンだよ日本の薬局】(01) 「現状の薬局制度は薬剤師の尊厳とやり甲斐を奪っている」――狭間研至氏(『日本在宅薬学会』理事長)インタビュー

膨らみ続けた薬局の市場規模は、遂に縮小へと向かっていきそうだ。増え続ける医療費、加速する超高齢社会の到来等、様々な外的要因が囁かれているが、問題は他にもある。医師・医学博士にして起業家の狭間研至氏は、薬剤師の今後あるべき姿、“薬局3.0”を提唱している。「薬局は現在、成長期から成熟期に差し掛かっており、薬剤師の尊厳とやり甲斐を取り戻すことが、地域医療の発展に繋がる」と指摘する狭間氏に、薬局の未来像を伺った。 (聞き手/フリーライター 青木康洋)

20170515 06
――日本全国には何故、これほど薬局が多いのでしょうか?
「厚生労働省の統計では、2015年度末には日本中に5万8326軒の薬局があると言われています。調剤薬局は通常、病院に隣接しており、その病院からの処方箋を受けることで経営が成り立っているのです。こういった薬局ビジネスのスタイルは、1970年代から急成長してきました。国策である医薬分業推進事業が追い風になったのです。医薬分業によって、医師が書く処方箋の枚数が激増しました。1974年には年間100万枚ほどでしたが、2015年には8億枚を超え、調剤医療費は7兆8192億円に達しました。これは、医療費全体の17%を占める金額です。2000年代初頭の10年間、構造的不況によって日本経済が右肩下がりだった時でも、前年比10%で伸び続けたのが調剤薬局という業界だったのです」

――“調剤バブル”とも言われますね。
「調剤薬局には、他のビジネスモデルにはない3つの強みがあリます。1つ目は、国民皆保険制度で行われる事業の為、顧客(患者)が費用の全額を負担する訳ではないこと。2つ目は、病院やクリニックに隣接して薬局を開局し、薬剤師を配置すれば、取り敢えず仕事は始められるというシンプルなビジネスモデルで、参入障壁が低かったことです。異業種からの参入も相次ぎました。3つ目は、与信管理が必要ない守られた業界であることです。報酬の支払い相手が健康保険制度を管理する国なので、支払いが滞ることは先ずありません。こうして、国の手厚い保護の下で病院の前に乱立した調剤薬局は、私のところも含めて、これまでこの世の春を謳歌してきたのです」

――大病院の前等に何軒もの薬局が軒を連ねている様子は、“門前薬局”と表現されますね。
「そうです。これまでは大病院近隣の土地さえ押さえてしまえば、黙っていても薬局が儲かる仕組みがありました。しかし、そういったスタイルは早晩、終焉を迎えます」

――何故、従来の薬局ビジネスが曲がり角に来ているのでしょうか?
「外的な要因と内的な要因とがあります。外的な要因とは、社会の変化です。日本は未曾有の超高齢社会に突入しました。今後も高齢者率は上がり続けます。年齢を重ねると疾病の罹患率は増えます。高齢化の更なる進展は、外来に通院できない患者を生み出します。つまり、患者数は増えているのに在宅や介護施設で病を養うケースが増えるのです。今までのように病院に来てくれる人が減る訳ですから、コバンザメのように病院前にただ出店しているだけの薬局には、厳しい未来が待っているでしょう。内的な要因は、薬剤師側にあります。薬剤師の資格を得る為には、大学の薬学科で6年間学ぶ必要がありますが、薬剤師の多くはその間に学んだスキルを十分に生かせていないのです。残念ながら、医師の処方箋に従ってただ薬を出すだけの業務に終始しているのが現状です。薬は、患者が服薬してどのくらいの時間で効き始めるかが大事なのですが、そういう専門知識を薬剤師は持っています。しかし、国家試験に合格して働き出した薬剤師は、皆さんよくやっているとは思いますが、薬を飲むまでの指導しかしていない。本当は服用後の薬歴管理が大切なのです。現状の制度の犠牲者的な部分もありますね。窓口で薬を渡すだけの作業なら、何れはロボットが取って代わる時代がくる筈です」

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【ドクターXは知っている】(02) 普通の風邪に抗生物質は無意味! 乱用で耐性菌を増やすリスクも

20170510 05
夜も眠れないような歯の痛みが立ちどころに治まったり、鬱陶しい膀胱炎の症状から解放されたりと、抗生物質(抗生剤)は明らかな効果を実感できる薬です。だからこそでしょう、抗生物質を“万能薬”と誤解している人も多いようです。麻酔科医の筒井冨美先生は、医療現場の不適切な対応も含めて、問題点を指摘します。「風邪を引いて『抗生物質を処方してほしい』と病院にやって来る患者さんも多いのですが、そのリクエストは医学的には意味がありません。抗生物質とは細菌を殺す薬であり、風邪・インフルエンザ・エイズ等の原因となるウイルスや、水虫等の真菌には無効です」。前回、大竹真一郎先生も説明している通り、普通の風邪はウイルスが原因ですから、抗生物質の投与は無意味という訳です。では、医学的根拠にも拘わらず、風邪で訪れた患者に抗生物質を処方する医師が少なくないのは何故なのでしょうか? 筒井先生は、次のように説明します。「患者のご機嫌を損ねてクリニックの評判が下がることを恐れる医者、特に開業医は、内心『意味無いよ!』と思いつつも、処方してしまうことが多いというのが実態です。同様に、ずらりと患者が並び、“3時間待ちの3分診療”と言われるような大病院の医者も、時間をかけて説明して納得してもらうよりも、サクッと処方してスムーズにお帰り頂くことが多いものです」。効果が無いとわかっていても、医師が風邪の患者に抗生物質を処方する背景には、「医師の保身もある」と総合内科・循環器専門医の池谷敏郎先生が語ります。

「一部の医師は、風邪で診療を受けた患者がその後、肺炎となった時に、『誤診と疑われるのではないか?』と恐れています。それで、『肺炎の予防もしておきました』という言い訳ができるように、抗生物質を出しておく訳です。実際は、抗生物質で肺炎を予防できるとする医学的データは無いのですが…」。また、「抗生物質は、正確な診断を前提に使用しなければならない」と断じるのは、総合内科専門医の大竹真一郎先生です。「僕は、抗生物質を使う必要がありそうな時は先ず、原因菌を調べる検査をします。例えば、膀胱炎の患者さんならおしっこの培養をして、原因になっている菌の種類を特定します。膀胱炎で多いのは大腸菌ですが、それが特定できれば、大腸菌に効く薬をピンポイントで出せる訳です。一方で、風邪に抗生物質を出す医者というのは、そういうことを何も考えていない。間違った知識のまま、惰性で薬を出しているんですね。目の前の患者さんのメリットやデメリットを全く考えていない訳です」。更に大竹先生は、肺炎によく処方される『クラリス』という抗生物質が無用に使われ過ぎた結果、効果がすっかり失われた問題を指摘します。大竹先生によれば、肺炎の原因となる肺炎球菌やマイコプラズマには、クラリスという抗生物質は8~9割がた効かなくなっているのだといいます。それは、風邪等でクラリスが広く処方され過ぎた結果、菌に耐性がついてしまったからです。「抗生物質で弱い菌は死んでも、偶々強い菌が生き残ることがある。そして、生き残った菌はどんどん増えていき、抗生物質が効かなくなります。耐性菌の対策として、WHOも『抗生物質の処方は最低限に』ということを提言しているのですが、勉強不足の“なんちゃって内科医”が風邪に抗生物質を使うこと使うこと…。僕ら医者側が耐性菌を作らないように、患者さんがしっかり治るというメリットを持った抗生物質を、決まった日数で正しく使うようにしなければ、いくら新しい薬を開発したって耐性菌は増え続けます」。今や社会問題となっている院内感染も、元凶は安易な抗生物質の大量投与なのです。 (取材・文/フリーライター 浅羽晃・編集プロダクション『アートサプライ』 宮田文郎)


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【ドクターXは知っている】(01) 風邪薬は百害あって一利無し! 胃や脳への副作用の恐れも

20170502 11
毎年秋になると大量に流れるのが、風邪薬のテレビCMです。症状別に効き目を謳うものもあり、つい頼ってしまいたくなりますね。また、寝込んでいられない時等には、病院に駆け込んで薬を処方してもらうという人も多いでしょう。しかし現在、多くの医師は処方薬・市販薬を問わず、「風邪薬にはデメリットのほうが多い」という見解です。総合内科専門医の大竹真一郎先生が、次のように説明します。「病院で出される“PL”という薬には、鼻水止めと、喉の痛みを和らげて熱を下げる解熱鎮痛の成分が入っています。市販の総合感冒薬は、そこに更に咳止めの成分が入っていることが多いですね。“風邪は咳から?”と宣伝している薬には咳止めの成分が多く入っていて、“鼻から?”なら鼻水止めの成分が、“喉”とか“熱”なら痛み止めや熱冷ましの成分が多く入っているということです。でも、鼻水・咳・熱が出るのは、“治ろう”とする生体反応なのです。それらを抑え込む薬を飲むことは、治ろうという体の働きを邪魔して、治癒を遅らせるだけです」。風邪薬はあくまでも症状を抑える為の薬で、根本的治療の効果はありません。それどころか、症状を無理に抑え込むことは、人間の体の理に適ったメカニズムを壊すことになるといいます。発熱・鼻水・咳等は、ウイルスを追い出す為に必要な反応なのです。

「風邪を引き起こすのは約200種類のウイルスで、原因となるウイルスは毎回違います。全てのウイルスに効く薬は開発されておらず、抑々、風邪は薬を飲んでも飲まなくても、1週間ほどで治る病気です」と大竹先生は言います。「風邪の症状は、『ウイルスが入ったからしんどい、休んでくれ』という体のサインです。拗らせてもいいから、どうしても無理する必要があるという場合なら、薬に頼るのもありかもしれませんが…」(同)。その場合は総合感冒薬ではなく、咳なら咳と、特定の症状にのみ効く薬を病院で処方してもらうのがお勧めだそうです。但し、風邪と自己判断して放置すると危険な場合もあります。「患者さんが『風邪で…』と来たら、風邪なのか、それとも風邪とよく似ている別の病気なのかを見極めるのが、僕たち内科医の仕事です」(同)。一見すると風邪のような症状でも、実は風邪ではない病気が色々あるそうです。特に小児科等では、一歩間違えれば命に関わるような病気が潜んでいるケースもあるのだとか。「例えば、扁桃腺に膿がべっとりくっ付いて凄く腫れていたら、溶連菌という黴菌が悪さをしている場合があります。これは、溶連菌の検査をすれば10分ほどで結果が出るので、そのように診断したら直ちに適切な治療をしていく。また、咳が長引いている患者さんなら、風邪とは全く関係ない肺癌かもしれないし、肺結核かもしれない。そんな人にPLを出して終わり…というのはヤブ医者の仕事です」(同)。また、総合内科・循環器専門医の池谷敏郎先生は、「風邪薬が諸症状を緩和するメリットよりも、副作用のデメリットのほうが大きい」と考えています。「総合感冒薬に含まれる解熱剤は胃を荒らすし、鼻水止めは眠気を誘う働きがあります。他にも副作用は幾つかあり、中でも最悪なのが、皮膚や粘膜の過敏症であるスティーブンスジョンソン症候群の合併症です。私は医学の知識を得てからの数十年、風邪薬は飲んだことがありません」。スティーブンスジョンソン症候群の初期症状は、発熱や咽頭痛等、風邪に似ている為、総合感冒薬を飲んで重症化させてしまうケースがあり、死亡例も報告されています。安易に風邪薬を飲むことには、思わぬ危険も潜んでいるのです。 (取材・文/フリーライター 浅羽晃・編集プロダクション『アートサプライ』 宮田文郎)


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【不養生のススメ】(01) 認知症患者の人生の終え方

20170502 16
2年ほど前の『ニューヨークタイムズ』で、筆者の自宅から車で30分くらい離れたマサチューセッツ州デダムに住む、引退した弁護士のジェローム・マダーリ氏(88)の記事を読んだ。彼は認知症に苦しむ知人を目の当たりにし、若し我が身に同じことが起きたら「死にたい」「少量のウオッカにバルビツレート(※安楽死に用いる薬剤)を溶かして飲みたい」との心境を吐露している。だが、アメリカでは認知症への安楽死の適用は認められていない。そこでマダーリ氏は、仲間が推奨するように、“医療委任状”をプラスチックのケースに入れて、玄関の戸棚に吊るすことにした。医療委任状には、終末期の心肺蘇生、人工呼吸器や栄養チューブ等の生命維持治療の拒否を示している。日本では、認知症になってもできる限りの治療を施し、頑張って生きることが善とされるが、アメリカではマダーリ氏のように、余計な医療の世話にならずに死を迎えることを望んでいる人は多い。これは18年前の、ミネソタ大学の研究者らの論文が示している。研究者らは、認知機能の正常な高齢者を対象に、「若し認知症になったら、どのような生命維持の処置を受けたいか?」という希望を調査した。結果(※右表)は、どのレベルの認知症でも多くは生命維持治療を望まなかった。特に重症になると、95%以上が生命維持治療を拒否した。筆者は、この結果に驚かない。何故なら、多くのアメリカ人は、尊厳を失い生きることは、死ぬことより恐ろしく感じているからだ。

ところで、“医療委任状”という言葉は耳慣れないかもしれない。アメリカでは、日本と異なり、法的に医療を拒否する権利が認められており、個人の意思を“事前指示書”に示すことができる。事前指示書は主に、自分の意思を実現してくれる代理人を指定する“医療委任状”と、自分で意思を記す“リビングウィル”に分類される。これらは、本人が自己決定能力のある時に作成し、自己決定が不可能になった時に有効となる。各州で制度が異なり、マサチューセッツ州は医療委任状が法的文書である。マダーリ氏の医療委任状の代理人は妻であり、夫の望みを十分に理解している。ところが、折角事前指示書を作成しても、緊急時に救急隊や医師に希望が伝わらないことがある。例えば、1人暮らしで自宅の戸棚に事前指示書を保管していたら、誰も気が付かない。また、リビングウィルは“回復の見込みの無い場合の生命維持治療の拒否”という表現をよく使用するが、医療の現場では回復の見込みは少なくともゼロではないことが多く、医師は患者の意思に反して救命する場合がある。更に、終末期医療の現場は、関係者の感情が不安定で混乱が生じ易く、代理人が医療委任状の指示に従い難い場合が多い。そこで、事前指示書の補助となる『生命維持治療に関する医師指示書(POLST)』が全米で普及している。POLSTは、患者が医師と終末期医療について話し合い、医師がその希望を医療記録に保管するものだ。つまり、POLSTは治療計画の先決めである。このPOLSTにより、認知症患者が自己決定権を失う前に人生の終わり方を選択できる。しかし一般的に、認知症患者が生命維持治療を必要とするのは、長い年月を経てからのことだ。それ故、マダーリ氏は「愛する人を認識できない」「纏まった考えや文章を明確に述べることができない」等、10のリストを作成し、その内の3つの状態が数週間続いたら“食事の介助や水分補給の拒否(自発的飲食停止:VSED)”を希望している。VSEDは、倫理に反し、残酷と感じる人もいるだろう。『ニューイングランドジャーナルオブメディシン』の2003年の論文によると、VSEDを選択した患者の多くは、「死を迎える覚悟ができており、生活の質が悪く、生存し続けることを無意味と判断」したことを理由としている。そして、飲食中止後15日以内に患者の85%が死亡した。VSEDに携わった看護師による死亡の質の評価(※0=非常に悪い死から9=非常に良い死)では、評価の中央値は8であり、VSEDを選択した患者が“良い死を迎えた”と判断されている。抑々、飲食は医療行為ではない。飲食の拒否は個人の自由で、他人が飲食を強いれば人権の侵害となる。

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不必要な矯正治療を子供に強いる歯科医たち――食うに困ったトンデモ歯科医たちが施す歯科矯正の呆れた実態

20170414 16
日本の歯科矯正人口は年々増加傾向にあり、正確な統計調査は実施されていないものの、矯正治療に使う消費材料から推測すると、約25万人(※2013年データ)と言われている。歯科矯正先進国のアメリカでは、約200万~250万人が矯正治療を受けているというが、人口は約3億人。人口比で考えれば、日本でも今後更に数は増え、約80万~85万人が治療対象者となり、現在の4倍以上になるとの予測もある。読者の中にも、治療経験があるという人は少なくないのではないだろうか。歯科治療の中でも、保険診療を行うことができず、自由診療制で高額な治療費がかかる歯科矯正。今、この歯科矯正治療に、様々な被害事例が報告されているのをご存知だろうか。そしてその背景には、日本の“少子化”が大きく影響している。一体、どんな被害報告が上がっているのか、そしてそれは何故起こっているのか。それを明らかにする為に、昨年9月、日本で初めてできた歯科矯正の治療ガイドラインについて、先ずは知って頂きたい。2016年9月、メディアを集めた記者会見が、『日本歯科矯正専門医学会(JSO)』によって千代田区大手町で行われた。テーマは“歯科矯正初のガイドライン説明”。その内容は、「上の前歯が出ている小児(※7歳から11歳)は、早期の矯正治療を行わないことを強く推奨する」というものだった。ここでいう早期とは、永久歯が生え揃う前の乳歯と永久歯が混じり合った混合歯列期にある子供のことである。つまり、この診療ガイドラインでは、「混合歯列期に上の前歯が出ている状態(所謂“出っ歯”)に対して、矯正治療は行うべきではない」ということを示している。

こうした歯科医師向け診療ガイドラインを作らればならないほど、乱脈治療が行われている現状があるのだ。しかも、この診療ガイドラインは、最も信頼度の高い世界基準『GRADE』で作成されている。厚生労働省に委託されて、エビデンスの普及推進を行っている公益財団法人『日本医療機能評価機構(Minds)』EBM医療情報部にきちんと評価選定されてもいる。Mindsの厳格で公平な評価方法は、現在の国内における最高レベルのものと言っていい。医師も含めて、医療系科学者なら知らない者はいない組織だ。つまり、誰も否定できないほどのガイドラインということになる。この診療ガイドライン作成に携わった大野秀徳さん(JSO副会長・『おおの矯正歯科医院』院長)は、こう話す。「永久歯が生え揃う前の子供に対して、『早ければ早いほどいい』『早く始めれば早く終わる』という矯正治療には、科学的根拠が全くありません。寧ろ、早期治療が不必要に多く行われている現状があります。これに歯止めをかけたいと発表したのが、今回のガイドラインです。乳歯と永久歯が混合している時期に出っ歯の治療をしても、永久歯が生え揃ってから再治療をしなくてはならなくなるケースが数多くあります。こうした必要のない治療を行う歯科医師に警告を発すると共に、患者さんにもこのことを知ってほしいと思ったのです」。今、全国でどのような不必要な治療が横行しているか、その一例を写真と共に紹介しよう。上の前歯が出ている11歳の男児に対して、ある小児歯科医は「このままだと窒息する」と親に話し、歯を抜かずに『リンガルアーチ』という裏側矯正装置を装着した。このリンガルアーチという装置は、無理に歯列を拡げるので、とても痛い。子供は親に「頑張りなさい。綺麗になるから」と叱咤激励され、悼みを我慢して行うことが多い。いい子ほど我慢して頑張るのだ。この男児も約1年間頑張った。しかし、「上の前歯が前に出てきて口が閉じ難い。前歯でものが噛み切れない」という状態になった。そのことを母親がこの小児歯科医に訴えると、「では、唇を閉じられるようになるトレーニングをしよう」と、男児に口を閉じるトレーニングをさせたという。当然だが、そんなことをしても一向に改善しなかった。そこで母親は、理由をこの歯科医師に尋ねると、「親の愛情のかけ方が悪い」「もっと顎を前に出して噛めばいい」と逆に怒られた。この段階で装置代約30万円、調整料約4万5000円を支払い済み。しかも、あろうことかこの歯科医師は、「更に2段階目の治療が必要ですね。治療費が更にかかりますよ」と、約40万円プラス調整料を新たに請求。母親は流石に堪忍袋の緒が切れ、子供を連れて別の矯正歯科専門医を訪ねた。百聞は一見に如かず、左下の写真①がその小児歯科医の“治療後”の状態だ。口は閉じず、前歯は出たままである。

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テーマ : 医療ニュース
ジャンル : ニュース

“安心して産めない国”を作り上げた『日本産科婦人科学会』の大罪――カネ儲けに勤しむ学会幹部、「福島で働きたい」という女医の夢が幻に

20170221 09
2016年生まれの子供の数が、1899年に統計を取り始めて以来、初めて100万人の大台を割り込む見通しとなり、日本の少子化は加速度を増す。晩婚化・経済事情・保育所問題…。その主因が指摘され、政府はその対策に腐心するが、どんなに策を弄したところで、産婦人科医がいなければ産みたくとも産めない“お産難民”が続出してしまう。だが今、「産科医は日本産科婦人科学会の主導した利己的な制度により激減しており、人手不足に拍車が掛かっている」という不都合な事実は殆ど知られていない。元凶である『日本産科婦人科学会』の幹部は、自らの蹉跌など知らぬ顔で、濡れ手で粟の如くカネと利権を貪る。そして、その体質が産科医のなり手を更に遠ざける悪循環に陥っている。産科医は子供の減少を凌駕するスピードで減っており、このままでは医療現場の絶滅危惧種になりかねない。日本の産科医療が崩壊の瀬戸際にある現実を示すのは、皮肉にも、同学会の代議員で『日本産婦人科医会』の常務理事である日本医科大学の中井章人教授が、2014年11月に発表した報告に凝縮されている。2012年度の産科医数は1万868人で、10年前より166人減。新たに産科を希望する医師は、2010年度の491人から2013年度には390人へ急降下した。地域格差も深刻の度を増す。東京都と沖縄県の人口10万人当たりの産科医数は11.1人だが、茨城県では4.8人と2倍以上の開きがある。この現状を踏まえ、報告書の中で対応策が提言されている。曰く、「産科医が減少する理由は、長時間に亘る過酷な勤務体制である。それを改善する為には、都道府県毎に地域の中核に“基幹施設”を設け、10~20人の産科医をそこに集約する。産科医の数が多ければ、当直や休日勤務の回数が減る」――。当時、産科医を筆頭に病院関係者は、何でも自分たちのお墨付きを強要する学会の提言を受け入れた。それが全くの逆効果になり、地方の産科医不足に拍車を掛ける事態になるとも知らぬままに。その誤謬の影響は全国で相次ぐが、ここでは『東京電力』福島第1原発事故の惨禍を被った福島県の事例を明らかにしたい。

舞台は、原発事故の現場に隣接する南相馬市。震災前に5つの分娩施設が存在したが、現在は2つを残すのみで、病院は『南相馬市立総合病院』だけだ。原発事故後、避難した市民が帰還した為、同病院の分娩数は震災前のレベルを超え、今年度には年間230件に達した。これに対応する常勤医はたった1人だ。あまりに多忙で、彼は何度も辞意を漏らしている。そんな南相馬市に救世主が現れた。滋賀医科大学を卒業して初期研修中の女性医師が、南相馬市で産婦人科へ進むことを熱望した。ところが、産科医として被災地に寄り添おうと決心した彼女の夢は打ち砕かれた。『福島県立医科大学附属病院』の産科・婦人科の幹部医師から、彼女に諦めさせるメールが届いたのだ。「南相馬市立総合病院の産婦人科は、単独で専攻医は採れない施設です(現在も将来も)。基幹施設の福島県立医大学の研修プログラムで派遣されるのであれば可能という解釈でいいと思います。しかし実際は、産婦人科が1名しかいない病院に専攻医を派遣することはありません」。専攻医とは、専門医の資格を目指す医師のこと。産科医の専門医資格の取得を目指す若手医師は、学会が認定した“基幹施設”に所属し、そこから一定期間“連携施設”へ派遣される。基幹施設は主に大学病院、連携施設は地方の病院だ。要するに、彼女が南相馬市で働いても「産科の専門医にはなれない」という通告だった。福島県立医科大学産科・婦人科の藤森敬也教授も、「産科医は学会の専門医資格が無ければ生きていけない。症例数の少ない南相馬市立総合病院には医師を派遣できない」と周辺に語る。彼女の母校の産婦人科教授までが、自らの医局入りを勧めるメールを送り、「どこで研鑽を積むにせよ、研修プログラムの外でいくら技術を磨いても、残念ながら世間はそれを認めない」と諫めた。何れも、学会が勝手に決めたルールに縛られているからだ。何故、日本産科婦人科学会は専門医制度に拘るのか。これまでも、専門医は各学会が独自に認定してきた。「専門医の質に学会間でバラツキがある」という指摘を受け、専門医の質を評価する為の第三者機関である『日本専門医制評価・認定機構』(現在の『日本専門医機構』)が発足した。この組織の運営を主導したのは、2014年5月に同機構の副理事長に就任した京都大学産科・婦人科の小西郁生教授(当時の日本産科婦人科学会理事長)。専門医の評価を目的としてきた機構は学会と結託し、特定の病院に勤務しなければ専門医の資格を取れないよう、制度を改悪したのだ。「産科医療を崩壊へ導く諸悪の根源は日本産科婦人科学会です。この学会が大手を振るっている限り、日本の産科医療は絶対に良くなりません」。ベテランの産科医も、基幹病院への若手医師の集約を一刀両断する。学会は「過重な労働を軽減する」として、産科医を1ヵ所に集める拠点化を推し進めた。ところが、この独善的な構想が“絵に描いた餅”と化しているからだ。産婦人科の場合、福島県を含む24の県では、基幹病院は大学付属病院しかない。ただでさえ数が少ない医師をそこに集中させれば、基幹病院から遠い地域では、櫛の歯が欠けるように産科医が消えていくのは自明の理だ。

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テーマ : 医療・健康
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調剤薬局で偽造薬品、背景に経営悪化の構造問題――高額薬がターゲットに、“時給5000円”“家付き”待遇

20170214 09
C型肝炎治療薬『ハーボニー配合錠』の偽造品問題の全体像が見えてきた。偽造品は、奈良県を中心に59店舗を展開する薬局チェーン『関西メディコ』の店舗で受け取った患者の通報で発覚した。製造元の『ギリアドサイエンシズ』が関西メディコの店舗を調べ、偽造品5ボトルを発見。その後、厚生労働省が流通経路を追跡し、複数の問屋で更に10ボトルが見つかった。ハーボニーと差し替えられた中身は、サプリメント『ネイチャーメイド スーパーマルチビタミン&ミネラル』や漢方薬『小青竜湯』等。偽造品を問屋に持ち込んだ人物は特定されていないものの、大手卸を介さない非正規ルートの実態が明らかになった。見つかった偽造品には外箱や添付文書が無かったが、ボトルの外観は正規品と同じ。病院で廃棄されたボトルを流用した可能性が高い。ギリアドは、来月上旬までにボトルの使用を中止し、新たな包装方式を前倒しで導入する。調査会社『アイエムエスジャパン』によると、ハーボニーは昨年7~9月まで4四半期連続で国内医療用医薬品の売り上げトップ。価格は28錠入りボトルが約153万円。『小野薬品工業』の癌免疫薬『オプジーボ』と並ぶ高額薬の代表で、偽造の対象として目を付けられた可能性がある。従来、国内で見つかる偽造品は、インターネット通販を通じて個人輸入したものが大半だった。それに対し、今回は調剤薬局が処方したもの。偽造品を手にした患者は、服用前に異変に気付いた為に、健康被害者は出なかったが、調剤薬局への信頼が揺らいでいる。

通常、調剤薬局は『メディセオ』や『スズケン』等の大手卸から医薬品を仕入れる。だが、関西メディコは昨年5月、東京や大阪の“現金問屋”と呼ばれる業者からの仕入れを開始。現金問屋とは、調剤薬局の在庫等を現金で買い取り、それを大手卸よりも安く売る中間業者。少量多品種の在庫を抱える薬局では、在庫が膨らみ易いこともあり、現金問屋は調整弁として機能している。関西メディコは現金問屋との取引について、一部メディアに「安かったので仕入れた」等とコメントした。ただ、中小の『パパママ薬局』ならいざ知らず、関西メディコは奈良県最大のチェーン。「購買力を生かせば大手卸とも有利に交渉できた筈」と、東京都内の薬局経営者は首を傾げる。今月3日に厚生労働省で開かれた『医薬分業指導者協議会』でも、関西メディコへの批判が集中。『日本薬剤師会』の山本信夫会長は、「『患者や国民の命を、薬剤師は一体どう考えているのか?』と問われても仕方がない。このようなコメントをする薬剤師資格を持った仲間がいることに、嫌悪感を抱く」と強く非難した。ただ、偽造品の原因が「関西メディコの管理体制だけにある」とは言い切れない。非正規の流通ルートが広がる背景には、調剤薬局全体を覆う苦境がある。その1つのきっかけが、昨年4月の調剤報酬改定だ。“月間に法人としての処方箋受け付けが4万回を超え、特定の医療機関への集中率が95%超の薬局”の基本調剤料が引き下げられた。病院近隣の“門前”立地に頼る調剤薬局チェーンに対し、患者により高い付加価値を提供する経営を促す意図がある。この改定が、中堅の調剤薬局チェーンを直撃した。薬局専門のM&A(合併・買収)を手掛ける『MACアドバイザリー』の花木聡社長は、「一般的に30店舗を超えてくると、受け付け回数が4万回に届く」と話す。『アインホールディングス』や『日本調剤』のような数百店舗を傘下に持つ企業は、M&AやIT投資等によって効率を高めることで乗り切れる。

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