fc2ブログ

【WEEKEND PLUS】(435) 4歳、待ち続けた心臓…福井県の玉井芳和ちゃん、水分制限で我慢の限界



20231201 07
僅か4歳2ヵ月で旅立ってしまった。身長は80㎝に届かず、体重も8㎏に満たない小さな体――。昨年4月29日。心臓移植が叶わず、命を落とした玉井芳和ちゃんの頭を撫でながら、母の敬子さん(37)は何度も「ごめんね、ごめんね」と繰り返した。「国内での移植を選んでいなければ」「渡航移植を目指していれば」「親として何をしてあげられただろう」。無念や後悔に襲われ、只々自身を責めた。「移植待機を私達が勝手に決めたせいで、芳和には苦しいことばかり。人生を謳歌させてあげられなかった」。この世に生まれてきた日、こんな残酷な結末を予期し得なかった――。芳和ちゃんは2018年2月、福井県内で3人きょうだいの末っ子として生まれた。体重は約3400gあり、ミルクをよく飲んだ。敬子さんは順調な成長を信じて疑わなかった。夏に入るとミルクを残し始め、近所の小児科で“夏バテ”と診断された。点滴を受けて一時は持ち直したが、暫くすると状態が悪化。10月には離乳食を全く口にしなくなり、近隣の医療センターに入院した。見立ては急転した。強張った表情の医師が告げたエコー検査の結果は、夫婦の想像を遥かに超えた。「心臓が大きくなっていて、殆ど動いていません」。転院を繰り返し、11月に敬子さんの実家がある京都府内の病院へ。検査を重ねた末、診断名が確定した。『拡張型心筋症』。心臓を収縮させる心筋細胞の働きが悪くなり、心室が広がる病気で、悪化すると心臓移植や補助人工心臓(※VAD)が必要となる。「もう心臓移植しか(手段が)ないと思います」。医師の告知は衝撃的だった。「何故ちゃんと産んであげられなかったのだろう」と自身を責める敬子さんに、医師は問うた。「移植まで命を繋ぐ小児用の体外型VAD“エクスコア”ですが、東京の病院に1台だけ空きがあります。移植を受けるか否か、直ぐに決めて下さい」。

心臓移植を目指すか、生きることを諦めるか――。突如として我が子が人生の岐路に立たされた。敬子さんは「芳和の命を諦めたくない」と思う一方で、「他の子供の命を貰っていいのか」と一瞬ひるんだ。同席していた夫の芳英さん(40)は「助かるなら」と即座に決断した。その後も大きな判断を迫られる。国内で移植を待つか、渡航移植かという2択だった。子供の移植を巡る国内事情は極めて厳しい。15歳未満の子供の臓器提供も家族の同意があれば可能とした改正臓器移植法が2010年に施行されたが、『日本臓器移植ネットワーク』によると、6歳未満の脳死者からの臓器提供は2018年10月末までで計9例にとどまる。敬子さんは一抹の不安を覚えたが、国内待機を選んだ。幼い子供2人を連れて渡航するのは現実的ではないと考えた。一つだけ“幸運”に恵まれた。東京の病院にしか空きがなかったエクスコアが、大阪府吹田市にある『国立循環器病研究センター(国循)』で装着できることとなった。状態が改善した子供がいたので、空きが生じたのだ。ドイツの医療機器メーカー『ベルリンハート』製で、新生児や乳幼児に使える世界唯一のVADだ。冷蔵庫程の大きさの駆動装置(※ポンプ)と体をチューブで繋ぎ、心臓が血液を全身に送る働きを助ける。1台約4000万円と高額で、心臓移植の絶対数も少ないこと等から、国内稼働は約30台。夫婦は救われた思いで京都へ転居した。12月27日、芳和ちゃんは移植まで命を繋ぐエクスコアの導入手術を受けた。夫妻に示された移植までの待機年数は“凡そ3年”。しかし、病魔は容赦がなかった。更に検査を進めると、実は拡張型心筋症ではなく、国の指定難病『ミトコンドリア病』の心合併症である『ミトコンドリア心筋症』とわかった。ミトコンドリア病は、細胞内の器官であるミトコンドリアの働きが落ちて、臓器の障害や筋力低下、発育の遅れといった症状が表れる病で、治療法は確立していない。しかも、芳和ちゃんは術後の状態が芳しくなく、短期間で四度の開胸手術を受けた。「あと3年も頑張れるだろうか」。夫婦に不安が芽生えた。国循は患者家族の泊まり込みが許されていない。一家で大阪へ転居し、敬子さんが週に6日、芳英さんは日曜日に病院へ通った。付き添い時、エクスコアを装着して長さ約2mの管が届く範囲でしか動けない芳和ちゃんを、敬子さんはずっと抱っこした。懸命に生きる我が子と離れたくなかった。芳和ちゃんは体が強くなく、移植待機開始後も「ずっと低空飛行」(敬子さん)。容体が急変して集中治療室(※ICU)に入ることもあった。腸の働きの悪化による消化不良で食事も徐々に取れなくなり、発達も極めて緩やか。何れもミトコンドリア病の影響が暗い影を落としていた。それでも、芳和ちゃんからは生きる意志が感じられた。体は小さいままだが、顔つきがしっかりとして、言葉も徐々に増えた。「移植まで何とか持ってくれるのでは」。我が子の生を信じる夫婦の希望に繋がった。

続きを読む

スポンサーサイト



テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

【『胚培養士ミズイロ』作者インタビュー】(下) 卵が生きる力を見守る

20231130 03
――不妊治療をテーマに漫画を描くことの難しさはありますか?
「これまで不妊治療は、個人的な夫婦間の問題として処理されてきました。治療中の人も中々言い出せず、言ったとしても周りに理解してもらえないことが多かった。昔から不妊治療自体はありましたが、実態は何十年間もベールに包まれてきました。かといって、“つらい”という点ばかり強調してしまうと、不妊治療をしている方への逆の偏見に繋がりかねない。読者の方に対して、どこまでどのように描けばよいのかというのは悩みどころです。漫画は教科書ではありません。でも、情報として嘘を描くわけにはいかない。抑も、不妊治療の漫画自体、そこまで数は多くなく、ジャンルとして成熟していません。私自身が取材の中で驚いたことや、『そうなんだ』と思ったことをできるだけ忘れないように描くことを心掛けています」
――主人公の水沢歩は中性的な感じがしますね。
「主人公をどういうタイプにするかはとても悩みました。胚培養士は、女性の卵子に触れられる立場の人なので、患者側から見るとある意味、神様です。その為、性別をどっちというわけではなく、中性的なタイプにしました。水沢はオタク気質で直感的で、仕事にのめり込むタイプです。(上司で同じく胚培養士の)一色亨はもっと客観的でドライなイメージです。ただ、2人とも“職人”ではあるので、ぶつかり合いながらも同じ道を進んでいく感じを描ければいいなと思っています。胚培養士は、顕微鏡を見ながら卵子に針で精子を注入する顕微授精を始め、顕微鏡を覗くことが多い仕事です。目に特徴を持たせたいと描いているうちに、2人とも目つきが悪くなってしまいました」
――水沢らの「胚培養士は卵の力を信じて見守る」といったセリフが何度か出てくるのが印象的です。
「(漫画執筆の為の)取材で感じたのは、胚培養士は卵に医療行為を加えるというよりも、卵にストレスを与えないように見守るのが仕事ということです。胚培養士がベストを尽くしたとしても、今の医療では受精や着床といった部分にまで力が及びません。卵が生きていこうとする力を、できるだけ邪魔しないようにしているという印象を強く受けました」
――連載を通じて、世の中に伝えたいことは何ですか?
「不妊治療の漫画なので、成功する事例も描きますが、実際の不妊治療では子供を授からないことのほうが多い。だから、子供がいようがいまいが、幸せの形は其々だということを描ければいいなと思っています。エンターテインメントとして漫画を楽しんでもらい、役に立つことが少しでもあれば嬉しいです」


キャプチャ  2023年5月20日付掲載

テーマ : 赤ちゃんが欲しい
ジャンル : 結婚・家庭生活

【『胚培養士ミズイロ』作者インタビュー】(上) 当事者より周囲の人に向けて

赤ちゃんが欲しいのに授からない――。不妊治療をテーマにした漫画『胚培養士ミズイロ』が反響を呼んでいる。『週刊ビッグコミックスピリッツ』(※小学館)で昨秋始まった連載は、知られざる不妊治療のスペシャリストが主人公。作者のおかざき真里さんにインタビューした。 (聞き手/デジタル報道センター 後藤豪)

20231130 02
――この作品を始めるきっかけや、描く際に心掛けていることは何ですか?
「小学館の編集担当者さんから『胚培養士という職業をご存知ですか?』と提案されたのがきっかけです。私自身、妊娠や出産を経験して初めて、不妊治療をしている方が沢山いることを知りました。私の子供とか近い親戚が当事者になるかもしれない。決して他人事ではないと思い、興味を持ちました。不妊治療をしている方は当然、自分で情報を沢山取りにいっています。別に漫画で情報を入れなくてもいい。だから、当事者というより、周りの人達に読んでもらえればなと思っています。『漫画が大好きってわけじゃないけど、何となく読んでいる』という方もいると思うので、兎に角、読み易く描くことを心掛けています。元々私は、自分の作品のセリフの文字数は少なくするタイプですが、今回は細かく説明を入れ、わかり易いコマ割りにしています」
――男性側が不妊症である夫婦が出てくる第2話は、「不妊の原因のほぼ半数は男性側にもある」という説明から始まります。別の夫婦が出てくる第10話では、夫が無精子症であるとわかった時、妻が「原因があるなら100パー(セント)私だと思っていたのに」と言うセリフが入ります。不妊の原因は女性側に多いと思い込み、自分事として捉えていない男性が多いということでしょうか?
「そうですね。男性不妊は、精子に問題があって妊娠できないケースも多いです。でも多くの男性は、自分の出した精液の中に精子がいないことがあるとか、運動率が悪かったり、形態が異常だったりすることがあるとは思っていない。セックスに関しても、男性側は主に快楽として捉えています。女性は違います。体の特徴が顕著になる第二次性徴の時から負担が多くなります。生理が来て、お腹が痛くなったり体調が悪くなったり、心身共に負担が続きます。女性は、このつらさの先に妊娠があると思って成長していきます。男女のその差は大きいと思います。更に、『女は結婚したら子供を産むべきだ』『女がメインで子供を育てるべきだ』といった日本の悪しき伝統も影響している気がしますね」


キャプチャ  2023年5月19日付掲載

テーマ : 赤ちゃんが欲しい
ジャンル : 結婚・家庭生活

【水曜スペシャル】(675) 「都会の片隅で皆の“心の止まり木”に」…精神科医の片上徹也さん、メンタルケアへの無理解無くす

20231115 09
その診療所は夜間しか開けていない。鬱や不眠、不登校等心の病や悩みを持った人達が集まる。職場に知られたくない、仕事を抜けられない、人目が気になって外出が不安――。だから昼間には通えない。向き合うのは“夜の守り神”と呼ばれる一人の医師。左半身に麻痺を抱えながら、大阪・キタのビル街の一角でひっそりと患者を迎える。「幸せそうな親子を見ると殺したくなる」と真顔で話す女子大生、リストカットを繰り返して全身傷だらけになった風俗店で働く女性、ストレスから盗撮事件を起こして逮捕された大企業の課長、幻覚に怯え続けるアパレル店員――。医師は「何に一番困っているの?」「一緒に考えましょうね」と声をかけ、時に自らの体験を明かして「生きているだけで幸せなことなんですよ」と語りかける。夜に活動する梟に因んで名付けた『アウルクリニック』(※大阪市北区)。院長の片上徹也さん(39、右画像)は日中、大阪府八尾市内の総合病院で精神科医長を務めている。夕方になると、電車を乗り継いでJR大阪駅前の第一ビルの地下1階にあるクリニックに出勤。オフィスビルが並ぶ中、比較的人通りが少なく、目立たない立地を選んだ。両親は共に医師。高校生の時、精神科医の和田秀樹さんの著書に感銘を受け、精神科医への関心が高まった。精神疾患への世間の偏見が根強いことも知り、何れは患者が通い易い夜間診療所を開業する夢を思い描いた。奈良県立医科大学を卒業し、研修医期間を終えた2012年3月。突如として病魔に襲われる。友人宅で鍋を囲んでいると、頭に激痛が走り、意識を失って倒れた。くも膜下出血だった。

当時27歳。脳の広範囲を損傷し、生死の間を彷徨った。「手術が終わって目が覚めたら、左半身がピクリともしなくなっていた」と振り返る。入院とリハビリは約8ヵ月に及んだ。患者の苦しさを身に染みて知った。発病から約1年半後、漸く仕事に復帰。左足は何とか動くようになったが、左腕は麻痺したままだった。それでも夢を諦めず、「ハンディキャップのある自分にもできることはある筈」と開業準備を進めた。ライブハウス等が建ち並ぶ若者の街、大阪・ミナミのアメリカ村(※大阪市中央区)。片上さんはその一角に2014年7月、念願のアウルクリニックを開業した。雑居ビル3階にある4坪程のスペース。当初は患者がまるで来なかったが、口コミやインターネット上で評判が広がった。「ありとあらゆる人が来ます。心の病は特別でなく、誰でも発症する可能性がある。でも、通院できないと“診療難民”になってしまう。苦しんでいる人達に寄り添いたい」。患者の中心は30歳前後の世代。アメリカ村で開業したのは、生き難さを感じ、孤独や不安に苛まれる若い人達に気軽に来院してほしかったからだ。その考えは的を射ていた。いつしか“夜の守り神”と称されるようになった。先月、アメリカ村から現在地にクリニックを移した。片上さんは間もなく40代。精神医療では患者と医師の世代が近いほど相互理解が深まると言われ、働き盛りの中高年の心の病や悩みにより一層耳を傾けたいと思った。診療は午後7時から11時まで。週4日の完全予約制で、臨床心理士や看護師ら約20人のスタッフが支える。一日中働き詰めの日々に、「周囲から心配されますが、クリニックは僕の趣味みたいなもの。昼間の仕事で生活はできるので、肩の力を抜いてやっています」。大らかな言葉の裏にあるのは、リラックスした雰囲気を作り、患者が自然と笑顔になるような場所にしたいという思いだ。厚生労働省の調査によると、精神疾患の患者数は2017年時点で419万人。その15年前と比べて約1.6倍に増加した。5人に1人は生涯で何らかの精神疾患を経験すると言われ、メンタルケアは身近な問題になっている。現場の医師として片上さんは指摘する。「精神科受診のハードルはまだまだ高いと感じます。精神疾患への無理解や偏見もあり、世の中の認識が“メンタルケアは格好いいこと”という文脈で語られるぐらいにならないと、大きくは変わらないでしょう」。そして、“心の避難所”の運営について言葉を継ぐ。「頼ってくれる人がいる限り、ずっと続けていきたい」。5000人分近くになったカルテは、これからも増えていくのだろう。 (取材・文・撮影/大阪本社地方部 中川博史)


キャプチャ  2023年10月5日付夕刊掲載

テーマ : メンタルヘルス
ジャンル : 心と身体

【火曜特集】(675) 国内は薬不足でも自身は公金チューチュー…日医工“マイバッハ前社長”の横暴を許すな!

『日医工』を追われた田村友一前社長。だが、あの手この手で日医工とその周囲を介して公金を吸い上げる“吸血鬼”が如き実態が暴かれた。 (取材・文/本誌取材班)



20231114 07
公金チューチュー、やりたい放題とはまさにこのことか――。後発薬大手で事業再生ADR(※私的整理の一種)に追い込まれた後発薬大手、日医工社長を今年3月に退任した“富山のマイバッハ”こと田村友一。本誌3月号で報じた通り、悠々自適なリタイア生活を送っているようだが、それを支える原資をどう生み出しているかが詳らかにされた。そこから浮かび上がってきたのは、自身や親族らが経営する会社や、その子会社を取り引きにかますことで日医工を食い物にしてきた構図である。国民から広く集めた社会保障費等、謂わば公金によって成り立つ国民皆保険制度の下、製薬企業が事業を営んでいることを考えれば、この“錬金術”を見逃してはいけない。「富山では公然の秘密。田村はいなくなりましたが、構図に変わりはありません」。関係者はこう訴えた。証言を元にした左のチャート図を見れば、あの手この手で日医工からカネを掠め取ろうとしていることが一目瞭然だ。錬金術の核をなすのが、『日工電設』という電気設備や空調設備等の工事を手がける会社。公式サイトによると社員数は42人と小ぶりだが、その主な取引先には日医工は勿論、『ダイト』や『富士化学工業』等後述する『日昇会』のメンバーがずらりと顔を並べている。「一見すると、どこにでもある会社のように思えますが、実は田村が実質的に支配しているのです」(同)。サイトには掲載されていないが、田村が会長を、その夫人・須美が社外取締役を其々務めているという。抑も、社長の竹田好秀が日医工の元営業部長であることからして“推して知るべし”だ。オーナー企業によくあるように、田村も自らの資産管理や投資等を担う会社を持っている。田村の場合、その名もずばり『TAMURA』。同社が「財務は不明瞭。パワハラも酷いらしい」(同)という日工電設を買収したのは2017年のこと。以後、錬金術の要として操ってきた。

その仕組みはこうだ。ルートは2つあり、先ず日医工が日工電設に発注するパターン。この際、地元の相場よりも高く発注することで日工電設を潤わせ、同社はその利益をTAMURAに株主配当として還元することで、田村の懐にチャリンと入るわけだ。更に、『千代田化工建設』の子会社である『千代田テクノエース』も、このスキームにはかんでいるという。もう一つが、日昇会のメンバー会社が日医工、即ち田村に忖度して発注するパターン。自社工場の工事等を「富山県の相場よりも3~4割高く」(同)日工電設に依頼し、その上積み分も含めて田村に利益が流れる構図だという。しかし、問題なのはこの後。高値で発注した分を、日昇会メンバー各社は、日医工との取り引きで取り戻しているというのだ。日昇会について、「弊社事業を円滑に進めることを目的とした、お取引様の会です」と日医工広報は説明するが、実態は田村に阿り、利益を分け合う集団だと言えよう。実際、「日医工に資材や製品、サービスを納入する時には通常より高い価格設定になっています」(同社関係者)。その結果、原価率が上昇し、日医工の収益圧迫要因の一つになっている格好だ。さて、ここで改めて日医工についておさらいしておきたい。日医工は富山市に本社を置く、1965年設立の製薬企業。ジェネリック医薬品とも呼ばれる後発薬では、国内で嘗て売り上げトップになる等、日本有数のメーカーに位置付けられる。経営悪化に伴い、出荷量は減らしているが、「それでも業界3位のポジションにあります」と後発薬業界関係者は説明する。転落のきっかけとなったのは、決められた手順で医薬品を製造していなかったとして、2021年3月に富山県から業務停止命令を受けたことだ。製品が出荷できなくなり、更には製造・品質不正が相次いで見つかったことで、業績が大幅に悪化。債務超過に陥った末、昨年5月にはADR申請を余儀なくされ、同年12月に成立した。これによって、日医工に融資していた金融機関15社は、最大で合計985億円の債権放棄に合意。また、経営再建に向け、投資ファンドである『ジェイウィルパートナーズ(JWP)』と医薬品卸大手の一角を占める『メディパルホールディングス』が出資する共同出資会社の傘下に入ることも決まった。今年3月には上場を廃止すると共に、田村は社長を退任し、現在は『アステラス製薬』出身の岩本紳吾がトップを務めている。数奇な命運を辿った日医工を語る上で、創業家出身の二代目社長、田村が果たした役割を外すわけにはいかない。1962年に日医工創業者、田村四郎の子として生まれた後、社長としてその座を継いだのは2000年のことだった。小さい頃は、後発薬が“ゾロ”とバカにされていたことから「苛められたこともあったらしい」(事情通)。

続きを読む

テーマ : 医療ニュース
ジャンル : ニュース

【水曜スペシャル】(672) 塩野義製薬の手代木功社長に退任観測が浮上…後任は外国人執行役か

20231108 09
15年間という長期政権の『塩野義製薬』の手代木功社長の後継候補に、「外国人執行役の名前が取り沙汰され始めた」(業界関係者)。塩野義は、収益の柱であるHIV治療薬『ドルテグラビル』の特許が2027年前後に切れる。その為、ここが“特許の崖”となり、その後の先行きが不透明だった。手代木氏はこれまで、“崖”を超える目処が立つまでは退任しないと言ってきた。しかし、今年6月の中期経営計画発表の場で手代木氏は、「特許の崖が問題ではない」と言及。長時間作用型製剤の急成長という要因によるものだ。その為、手代木氏の退任に道筋ができた。社内で取り沙汰される後継候補は、研究開発部門の執行役員であるジョン・ケラー氏(※左画像)。外資出身で、2010年に塩野義入りし、“ミニ手代木”とも呼ばれる手腕。新型コロナウイルスの治療薬『ゾコーバ』の開発を主導した人物であり、社内的には「結果を出した有力候補」という評価だ。


キャプチャ  2023年11月号掲載

テーマ : 医療ニュース
ジャンル : ニュース

【渡米心臓移植を待つ1歳児】(下) “何気ない普通の日”の為に

20231108 05
重度の心臓病を患う1歳4ヵ月の女児、佐藤葵ちゃん(※東京都豊島区)は心臓移植でしか助かる道はない。父の昭一郎さん(41)と母の清香さん(38)夫妻は海外移植を決断し、葵ちゃんは30日にも渡米して移植を待つ。その日まで、小児用VAD(※補助人工心臓)の『エクスコア』を装着し、命を繋ぐことになった。ただ、エクスコアは脳梗塞を引き起こす恐れがある血栓と感染症のリスクが付き纏う。抑も、臓器移植が日常的な国での使用を念頭に半年~1年程度の装着を想定し、長期化すると管理も難しくなる。葵ちゃんの主治医で『埼玉医科大学国際医療センター』(※埼玉県日高市)小児心臓科の戸田紘一医師(40)は言う。「移植を待つ子は死と隣り合わせ。早く移植するに越したことはない」。戸田医師ら埼玉医大のスタッフらの尽力で、コロンビア大学病院が受け入れることになった。が、最大の難関が立ちはだかる。個人では賄いきれない必要経費をどうするか――。臓器移植等アメリカでの医療費は、日本の公的保険の適用外だ。医療用チャーター機も必要で、現地滞在費等含めて近年では3億円強程度が相場だった。それが、昨春以降円安が進み、葵ちゃんの場合は5億3000万円まで膨れ上がってしまった。

途方に暮れた佐藤さん夫妻を、夫妻の友人や知人、恩師らが支えた。昨年8月に『あおちゃんを救う会』が発足、11月から募金を始めた。昭一郎さんが長年熱中したアメリカンフットボールで培った人脈に救われた。昭一郎さんは東北大学から社会人リーグの最高峰『Xリーグ』1部の鹿島で活躍し、清香さんも同大でマネージャーを務めた。アメフト界の呼びかけにサッカー等他競技のチームも呼応し、支援の輪が広がり、寄付金は僅か1ヵ月で5億3000万円に達した。ずっしり重い無数の善意に夫妻は思った。「葵の命はもう家族だけのものではない」。ただ、複雑な思いも消えない。「心臓移植を国内で待っている子供や親御さんのことを思うと」――。日本では2010年に改正臓器移植法が施行され、15歳未満の小児も含め、本人が生前に拒否していない限り、家族の承諾があれば臓器を提供できるようになった。それでも、脳死の捉え方や臓器提供体制の不備等から提供数は低調なままだ。一方のアメリカは多民族国家で、ドナーの10~15%がアメリカ国籍ではない。この為、前年度に施行した心臓移植数の5%を外国籍に優先配分するルールがある。渡航移植の受け入れも否定されていない。ただ、渡航移植は多額の経費がかかり、現実的には断念せざるを得ない家庭が殆どだ。風当たりも強い。「それを子供の命を繋ごうと必死の親御さんに向けるのは筋違い」と戸田医師は指摘する。「寧ろ、エクスコアを装着し、命がけで空路渡米するリスクを冒してまで渡航移植を選ばざるを得ない日本の臓器移植の現状にこそ向けてほしい」。移植が国内で一般的だったなら、葵ちゃんも渡航の必要はないのだ。だが、現実は異なる。渡航を目前に控えた現在の葵ちゃんの容体は安定し、順調に発育している。ただ、容体は予断を許さず、昨年11月下旬にエクスコアのポンプを交換する手術を受ける等、綱渡りの日々が続く。また、空路での渡米は困難を極める。移植まで半年程度と見込まれるものの、いつ受けられるかは“縁次第”。移植後も、提供心臓を守る為、免疫抑制剤の服用が一生続く。昭一郎さんは公的な支援の必要性を訴える。「国内の状況が改善されるまでの“ブリッジ”的な役割として、巨額の寄付を集めなくても、渡航移植を支援する制度を国に考えてほしい。国内での提供数を増やすのが第一義だが、苦しむ子供を見捨てないでほしい」。心臓移植を受け、家族4人で自宅に帰ることができたなら――。夫妻が思い描く夢は小さく、切ない。「葵をぎゅっと抱きしめたい。何気ない“普通の一日”を送りたい」。

          ◇

(医療プレミア編集部)倉岡一樹が担当しました。

          ◇

■移植手術のご報告と両親からのメッセージ
https://ao-sukuukai.jp/custom/移植手術のご報告と両親からのメッセージ/


キャプチャ  2023年3月29日付掲載

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

【渡米心臓移植を待つ1歳児】(上) 細い腕、笑顔でこちらへ

生まれつき重度の心臓病を患う1歳4ヵ月の女児、佐藤葵ちゃん(※東京都豊島区、右下画像、『あおちゃんを救う会』提供)が間もなくアメリカへ渡る。命を繋ぐ心臓移植の為だ。空路による移動にはリスクが伴う。円安で膨れ上がった巨額の費用は、寄付金で集めるしかなかった。葵ちゃんの闘病の歩みと、渡米移植にかけざるを得なかった両親の苦悩とは――。

20231108 04
葵ちゃんは、会社経営の昭一郎さん(41)と清香さん(38)夫妻の次女として、2021年10月に生まれた。3歳年上の姉(※長女)がいる。出産翌日に医師から心雑音を指摘され、生まれつき右心室と左心室を隔てる心室中隔に穴が開いている『心室中隔欠損』と診断された。“試練”の幕開けだった。入退院を繰り返し、昨年1月にその穴を塞ぐ手術を受けたが、合併症の不整脈が出てしまい、僅か半月後にペースメーカーを入れる手術を受けた。その後、医師から告げられた。「左心室の筋肉が4割程動いていない」。葵ちゃんはミルクを飲むことすらできなくなり、見る間にやせ細った。4月に病院へ駆け込むと、医師から「いつから入院しますか?」と聞かれた。「時間的な猶予を与えられたということは(入院したら完治や退院はできず)葵はもう厳しいということか」。絶望の淵に立たされた佐藤さん夫妻は「せめて葵がいた証しを形として残そう」と、長女と葵ちゃんを交えた家族写真を撮る等“思い出づくり”を重ねた。葵ちゃんの人生を終える準備だった。5月、遂に医師が切り出した。「助かる道は、もう(心臓)移植しかありません」。診断名は“先天性心疾患 心内修復術後 重症心不全”。心臓のポンプ機能が落ちて血液を送り出せない、重度の心臓病である。心臓移植まで命を繋ぐ小児用補助人工心臓(※エクスコア)を装着する手術を受けるか、決断を迫られた。

夫妻の苦悩は深まった。「葵は小さな体で何度も手術を受けている。これ以上、痛い思いをして移植までして生きて幸せなのだろうか。看取ってあげたほうがいいのではないか」。夫妻は追い詰められ、諦めへと気持ちが傾きかけた。そんな時、あどけない笑顔を浮かべ、細くなった腕を親のほうへと伸ばす葵ちゃんの姿が目に入った。我が子は生きている。その成長する姿に生きる強い意志を見て取った。「葵に生きてほしい」。移植へ進む覚悟が固まった。6月15日、『埼玉医科大学国際医療センター』(※埼玉県日高市)で『エクスコア』を装着した。新生児や乳幼児に使える、世界で唯一の補助人工心臓(※VAD)だ。心臓移植の絶対数が少ないこと等から、国内稼働は30台程度だけで、空きがほぼない。昭一郎さんがセカンドオピニオンを求めたある医師が、同センターに空きを見つけてくれたのだ。我が子を救いたい親の一心が“幸運”をたぐり寄せた。昭一郎さんは同センター小児心臓科の戸田紘一医師(40)に渡航移植を相談し、アメリカで心臓移植をした子供の家族の話にも耳を傾けた。「移植を決めた当初から渡航以外の選択肢は考えられなかった。体験したご家族の話を聞くうち、葵の未来を鮮明に思い描けた」。夫妻をそこまで追い詰めたのは、日本における移植医療の厳しい現実だった。日本ではドナー(※臓器提供者)が極めて少ない。人口100万人当たりの脳死等による日本のドナー数は0.62人で、アメリカ(※41.88人)やスペイン(※40.2人)に遠く及ばない。一方、心臓移植を待つ10歳未満の患者は1月末現在で46人いるが、6歳未満の脳死患者からの臓器提供は、2010年施行の改正臓器移植法で可能になって以降、25件(※6歳以上18歳未満は40件)にとどまる(※先月1日現在)。大人の心臓を子供に移植することはほぼ不可能で、子供からの提供を待つ他ない。昭一郎さんは決断した。「移植するか、看取るのかというギリギリの判断を迫られた際、日本の臓器移植を取り巻く厳しい環境は直ぐに変わらないと割り切った。移植がいつになるかわからない国内待機では死のリスクが高い。一刻も早く葵の苦しみを取り除きたかった」。


キャプチャ  2023年3月22日付掲載

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

【火曜特集】(669) 中堅後発薬メーカーが行き詰まり…危惧される医薬品供給体制への影響

20231031 03
後発薬メーカーの苦境が続き、医薬品供給への影響が拡大しかねない雲行きになっている。大阪府に本社のある中堅後発薬メーカー『共和薬品工業』が今年春以降、水面下で事業再生ADR(※裁判外紛争解決)の手続きを進めていたことが明らかになった。同社は嘗てインドの後発薬大手『ルピン』の傘下にあったが、2019年に独立系ファンドの『ユニゾンキャピタル』に売却された。その後、2021年に製品への異物混入が発覚。翌年には国の承認を受けていない添加剤を使って医薬品を製造販売したことが露呈し、業務停止命令を受けた。こうした状況下で、早くも債務整理を求める状況にまで追い詰められたようだ。しかも、ADRの手続きが済んでも「経営環境は綱渡りが続く」(業界関係者)という。「後発薬メーカーの体力を直接圧迫しているのは、薬価の安さ」(医薬専門紙記者)。採算ラインを割った医薬品でも製造し続けなければならないルールがネックだ。今後、メーカーの弱体化が進めば供給体制への影響は不可避で、足元で起きている咳止め薬の不足等が深刻化する可能性がある。


キャプチャ  2023年10月号掲載

テーマ : 医療ニュース
ジャンル : ニュース

【新型コロナウイルス・危機の教訓】(03) ワクチン戦略、アメリカと落差

https://www.yomiuri.co.jp/medical/20230502-OYT1T50240/


キャプチャ  2023年5月3日付掲載

テーマ : 医療ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接