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【日の丸半導体の危機】(04) “日の丸”の厳しい現実

20210416 05
『台湾積体電路製造(TSMC)』が先月9日、茨城県つくば市に研究拠点を設立すると発表した。半導体生産で世界最大手の日本初進出に関連業界は色めき立ったが、誘致活動の過程で突きつけられたのは“日の丸半導体”の厳しい現実だった。「海外大手を呼び込め」。経済産業省で誘致計画が立ち上がったのは2019年の夏。『東芝』の半導体事業の再編等懸案が落ち着いた頃、改めて浮かび上がったのは日本の半導体産業の地盤沈下だ。『NEC』や東芝、『日立製作所』が世界上位にいた1980~1990年代の面影はない。「装置や材料も競争力を維持できない」。危機感が高まった。国内メーカーが伸びないなら誘致するしかない。経産省はTSMCや『インテル』等と相次ぎ接触した。照準を定めたのは“前工程”。シリコンウエハーに回路を形成する肝の工程だけにハードルは高いが、国内産業への波及効果も大きい。

期待はあえなく破れた。本命視したTSMCが昨年5月、進出先にアリゾナ州を選んだのだ。当時のドナルド・トランプ大統領は中国と貿易戦争を繰り広げ、半導体を囲い込む為、TSMCに熱烈に秋波を送っていた。「今回はお断りしたい」。TSMCから入った連絡を、経産省は黙って受け取るしかなかった。しかし、ここで諦めては先がない。昨年7月に経産省商務情報政策局長に就いた平井裕秀を中心に、再交渉に臨む。「(関連部材を組み付ける)後工程でどうか」「先ずは研究開発からでも」と食い下がった。TSMCでもサプライチェーンの多様化は課題だ。部材や製造装置等の集積がある日本には未だ魅力がある。平井らは昨年末のオンライン会議で、TSMCの首脳陣から「近いうちに業務範囲で合意しましょう」と言質を引き出した。結局、TSMCの進出は工場でなく、研究拠点になった。新設する拠点の資本金は186億円と、アメリカの工場の35億ドル(※約3800億円)より少ない。それでも、経産大臣の梶山弘志は「もう一度、日本に半導体のサプライチェーンを作りたい」と期待する。“日の丸半導体”のプライドを捨ててまで誘致にこぎつけたが、TSMCにはアメリカだけでなく、EUも域内生産の拡大を念頭に接触し始めた模様。本当の成果が問われるのはこれからだ。 《敬称略》 =おわり

                    ◇

中村裕・鳳山太成・広井洋一郎・小泉裕之・花田亮輔・杉原淳一・五艘志織が担当しました。


キャプチャ  2021年3月19日付掲載
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【日の丸半導体の危機】(03) 「足元をみられている」

20210416 04
「調達担当は何をやっているんだ。追加で支払ってでも必要な半導体を確保してほしい」――。1月中旬、『ホンダ』の製造担当幹部は焦っていた。鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で主力車『フィット』等の減産が始まり、影響の拡大が懸念されていた。状況が改善しない中、先月には半導体メーカーからの要求が伝わった。「値上げを求めます。但し、受け入れても供給量は保証できません」。ホンダ幹部は声を荒らげた。「完全に足元をみられている。自動車メーカーはその程度の存在なのか」。ガソリン車1台に使う半導体は400ドル(※約4万3000円)程度と、原価全体の数%に過ぎないが、1つ欠けても車は造れない。供給側にとっては当たり前の判断でもある。『台湾積体電路製造(TSMC)』等ファウンドリー(※半導体受託製造会社)の売上高に占める車向けは小さい。系列部品会社と異なり、急な増産に応じる義理はない。

先月9日、ホンダ副社長の倉石誠司は決算記者会見で、「半導体不足がなければ昨年度を上回る営業利益を報告できた」と悔しさを滲ませた。予想を上方修正した2021年3月期の連結営業利益だが、前期比18%減を見込む。半導体不足で販売台数の見通しを10万台引き下げた為だ。『フォルクスワーゲン(VW)』等世界大手も減産を迫られ、『東海東京調査センター』シニアアナリストの杉浦誠司は、1~6月に世界で150万台の減産、約3兆8000億円の減収になる可能性があると話す。「生産に影響は出ていませんか?」。『トヨタ自動車』の調達本部は、半導体不足が顕著になった1月以降、平時であれば1日数回程度だった調達先との電話会議を、多い日には10回も開いた。業績への影響は限定的ながら、調達の現場では綱渡りが続く。系列メーカーを抱え、産業ピラミッドの頂点に立っていた筈の車メーカーが求めても手に入らない半導体は、車の電動化時代の厳しさの予兆と言える。電気自動車(※EV)に使う半導体は、ガソリン車の約2倍。同業だけでなく、他業界とも奪い合いになる。電池やモーター等新たな部品も必要だが、新規参入組が強い分野もあり、「最早、系列からだけでは全てを調達できない」(ホンダ幹部)。ホンダ系の部品会社3社は、『日立製作所』との共同出資に再編された。部品構成が大きく変わるEV普及を睨み、系列中心のサプライヤーという自動車産業は形を変え始めている。 《敬称略》


キャプチャ  2021年3月18日付掲載

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【日の丸半導体の危機】(02) 自社生産か外部委託か

20210416 03
「今更、何を言っているんだ」――。今月、台湾の半導体企業に勤める日本人技術者は、こう吐き捨てた。嘗て働いた半導体大手『ルネサスエレクトロニクス』を振り返り、語気を強める。「工場を持つのは悪だと教えられ、多くがリストラされた。ルネサスにもう自社生産の力はない」。同社が外部委託か自社生産で揺れるのを冷ややかにみる。「海外の競合が、台湾積体電路製造(TSMC)等の生産受託会社(※ファウンドリー)に手数料を上乗せして“横入り”している」。ルネサスの各部門のトップが集まった昨秋の会議。TSMCに世界中から注文が集中し、同社にルネサスが委託している製品の納期が見通せなくなり、対応策を議論した。自社で作れば、外部委託に比べて電気代や材料調達費等が嵩む。ただ、「顧客を待たせられない」との意見は根強く、TSMCに委託する一部製品を自社生産に切り替えることにした。

「TSMCの枠を1回外すと、『必要になったから直ぐに下さい』とはできない。覚悟を持った決断だ」とルネサス関係者は話す。背景にはファウンドリーとの力関係の変化がある。半導体業界は2000年代から開発と生産を分離する水平分業が進んだ。ファウンドリーが生産を引き受け、『クアルコム』といった主要メーカーは設計開発に特化。ルネサスもその流れに乗って委託を増やし、国内の生産拠点数を10年前の22から9へと減らした。その間に、特に先端の半導体をつくる技術でファウンドリーに追い抜かれた。先月13日夜に起きた福島沖地震。ルネサスの主力工場、那珂工場(茨城県ひたちなか市)の電力供給は2時間強、途絶えた。同工場は2011年の東日本大震災で被災した際も、約3ヵ月間、生産を止め、その影響で車大手の工場の稼働が止まった。足元で車載半導体が不足し、フル生産状態が続く中、稼働停止が長引けば再びルネサスショックを起こしかねない。14日朝から数百人体制で装置の状態を調べ、16日から生産を再開。今回は影響の長期化を免れた。「(外部の製造委託を活用して自社工場を最小限にする)ファブライトの方針は変わらない」。ルネサス社長の柴田英利はこう話す。平時なら効率を高められても、急変動する需要や災害時のような有事には対応が難しい。そこまで見据えて、自社と外部の生産の比率をどうバランスさせるか。その解はなお見えていない。 《敬称略》


キャプチャ  2021年3月17日付掲載

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【WEEKEND PLUS】(107) 森喜朗辞任で蒸し返された橋本聖子キスセクハラ事件、世界20ヵ国以上で拡散

20210416 01
女性蔑視発言で辞任した東京五輪・パラ組織委員会の森喜朗会長だが、その後任は“森一派”から選ばれることが既定路線だった。組織委関係者は「森さんは利権作りのボスだから」だと言って、その裏側を解説する。「つまり、巨額のカネを山分けする役目。あらゆる力が働いて奪い合いになりますから、ヤクザの親分みたいな絶対権力者が必要ということ。だから、彼が役職を抜けても、その構図は誰も変えたくなく、森院政を敷こうとなる。当初、森さんのイエスマンである川淵三郎さんが指名されていたのも、それが理由です」。しかし、その川淵氏は皮肉にも森氏と同じ“口が軽い”という致命的欠点があり、マスコミにペラペラ喋ったことで、あっさり白紙となった。その流れを「待ってました」とばかり、政府は橋本聖子五輪担当大臣を送り込んだ。こちらも“娘”と自称するほど森一派のど真ん中だが、大きく違うのは政府の紐付きであることだ。「コロナ禍による延期もあって、五輪関連は東京都よりも国が主導権を持つ傾向にありますが、これから中止になった場合の後始末でも、カネに関することは国が森さんと調整して采配していくのが基本です。橋本さんはマスコミ対応をしていればいい」(同)。

早速、橋本新会長はマスコミ向けに「丁度いいサンドバッグ」(同)となった。彼女には7年前のソチ大会の打ち上げの席で、男子フィギュアスケートの高橋大輔選手に無理矢理キスをするセクハラ騒ぎの前歴があったからだ。「この話が蒸し返されたのは、実は森さんにとって好都合。新たな人権問題として、本丸のカネの問題がそっちのけになるからです」(同)。ただ、問題は世界に対して更なる日本のイメージダウンとなったことだろう。海外メディアの日本への取材を仲介するコーディネーターによると、何とこのキスセクハラ事件について、20ヵ国からの問い合わせがあったという。「私たちの仕事は取材サポートで、依頼があると通訳を用意して、証言できる関係者へのインタビューを翻訳作業込みで繋ぐんですが、今回は20ヵ国語にも及ぶ依頼がありました。これは緊急事態宣言発令時を含め、コロナ禍関連を含めても最大の量です」。2014年の発覚当時も世界配信はされたが、今回はそれ以上の勢いだという。「前任者が性差別主義者と報じられた後に、この人選ですからね。日本が如何に奇異な国か、海外メディアにとってはとても興味深い話なのでしょう」(同)。更に、こうも付け加えた。「こうして海外でも話題を呼ぶセクハラ事件ですが、日本ではその酷さが“若し男性役員が女性アスリートに強引にキスをしていたら”と男女を入れ替えて例えないと伝わらない。そのことも、時代遅れの社会風土を示しています」。そんな日本の現状がオリンピックの舞台で露わになってしまうことこそ情けない。


キャプチャ  2021年4月号掲載

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【水曜スペシャル】(297) タイが賭博解禁を模索…闇カジノ利権に手を伸ばす軍

20210414 08
軍主導のタイのプラユット・チャンオチャ政権が、カジノを含めた賭博の合法化に舵を切る動きを見せている。闇カジノで新型コロナウイルスのクラスターが発生したことを受け、「合法にして監視すればウイルスの温床にならない」と言い出したわけだが、「どさくさ紛れに軍の利権を拡大したいだけではないか」との批判が出ている。闇カジノは、賭博がご法度のタイでこれまでも営業され、警察官の汚職の温床にもなってきた。プラユット首相は実態調査を命じると共に、「賭博を減らすのは難しい。合法化も現実的な対応だ」と、法制化に向けた公聴会を開催する考えを示した。


キャプチャ  2021年3月号掲載

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【水曜スペシャル】(296) インドがサウジアラビアにワクチン提供申し出…出稼ぎ労働者の出国と引き替えに

20210414 07
サウジアラビアが新型コロナウイルスの感染防止の為、海外との航空便を停止。これによって、同国で働くインド人も出入国ができなくなっている。この為、インド政府は自国製のワクチン数百万本をサウジアラビアに提供することを条件に、航空便を再開し、労働者の往来を認めるよう求めている。サウジアラビア政府は昨年9月から、インド、ブラジル、アルゼンチンとの航空往来をストップ。サウジアラビア国内の外国人労働者はインド人が最大勢力で、約260万人が長期に滞在していると言われる。この5ヵ月間、数十万人のインド人が航空機に乗れず、所得の持ち帰りや家族と会う為の機会を失って、不満が激増している。インド政府は、『アストラゼネカ』とオックスフォード大学で共同開発し、同国で生産しているワクチンをサウジアラビアに提供することを持ちかけた。ワクチンを航空機で運び、併せて旅客便の運航も再開させたいとの思惑がある。


キャプチャ  2021年3月号掲載

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【ミャンマーに激震走る】(04) 「時計の針が戻るとは」

20210414 04
シンガポールの実業家であるリム・カリンは今月9日、ミャンマー企業『バージニアタバコ』の持ち分を手放すと表明した。この会社には、同国の軍人らが株式を保有する国軍系企業『ミャンマーエコノミックホールディングス(MEHL)』が出資する。リムは国軍のクーデターに「深刻な懸念」があると指摘した。7日には『ミャンマーに正義を』と名乗る組織がインターネット上で、シンガポールのゲーム機器開発企業『レイザー』に、共同創業者のリムを役員から外すよう圧力をかけ始めていた。「新たな現地企業を迎えて続けたい」。今月15日の決算会見で『キリンホールディングス』社長の磯崎功典は前を向いた。5日にMEHLとの合弁解消を発表したミャンマーでのビール事業だ。解消を決めた際、キリンの幹部は嘆いた。「時計の針が戻るとは思わなかった」。国軍の迫害で隣国のバングラデシュに逃れた少数民族ロヒンギャ難民への関心が世界で高まり、批判を浴びた。国軍に合弁会社の資金が流れていると指摘されていた。

最大都市ヤンゴン近郊のティラワ経済特区。『住友商事』や『三菱商事』が主導した工業団地は混乱する。約20ヵ国から100社程が進出する。働き手が国軍への抗議デモに加わり、多くの職場で操業率が低下した。従業員のデモ参加を止めた進出企業の幹部は罵声を浴びた。「あんたは国軍の味方か!」。昨年からの拡張工事は不透明になった。今月1日、ミャンマー政府を率いていたアウン・サン・スー・チーの拘束を聞いた山口隆は、情報収集を急いだ。『大和証券グループ本社』が出資する現地証券の社長だが、一時帰国していた。大和が支援してきたヤンゴン証券取引所が終日停止と聞き、息を呑んだ。初めての事態だった。それでも、人口約5700万人(※アメリカ中央情報局推定)の“アジア最後のフロンティア”に引かれる企業は多い。ミャンマー企業と合弁で洗剤等を製造する『ユニリーバ』は沈黙を守り、事業計画を再点検する。『ミャンマー日本商工会議所』の会員は400社を超える。5日に『西村あさひ法律事務所』が開いたミャンマー投資のオンラインセミナーには、約500人が参加した。現地代表の弁護士、湯川雄介は話す。「リスクはあるが、投資で現地に貢献する道もある」。 《敬称略》 =おわり

                    ◇

新田裕一・村松洋兵・中村亮・竹内康雄・羽田野主・佐竹実・兼谷将平・松井基一・後藤健・長江優子が担当しました。


キャプチャ  2021年2月19日付掲載

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【ミャンマーに激震走る】(03) 「中国は友好的な隣国だ」

20210414 03
中国の在ミャンマー大使館は一昨日、国軍のクーデターで混乱する同国の現状を「中国は決して望まない」と批判する大使、陳海の発言を公表した。前日に取材を受けた地元メディアとの一問一答をウェブサイトに掲載。「政変があるとは事前に知らなかった」と指摘し、「国軍の背後にいる中国が黒幕だ」という噂を懸命に否定した。今月1日の政変後、ミャンマー最大の都市であるヤンゴンの同大使館前では連日のように、多数の市民らが抗議の声を上げてきた。「国軍を支持するな」「内政干渉を止めろ」――。この国を中国は経済・軍備で支えてきたが、国軍寄りだったとは言い切れない。拘束された民主化指導者、アウン・サン・スー・チーの文民政府も尊重した。先月、ミャンマーを訪れた中国の国務委員兼外務大臣の王毅は、スー・チーに「中国は(当時の与党)国民民主連盟(※NLD)の順調な施政を断固支持する」と伝えた。

国軍総司令官のミン・アウン・フラインとも会い、NLDが大勝した昨年11月の総選挙(※上下院選)が「不正だ」という不満も聞いていた。中国にとってミャンマーは地政学上の重要国だ。ミャンマーを上空から見ると、西部から中国南部の雲南省まで2本のパイプラインが横たわる。中東・アフリカからの原油、ミャンマー沿海産の天然ガスを其々、中国に運ぶ。中国の輸入原油の多くが通過するマラッカ海峡と南シナ海が封鎖された場合、エネルギー供給の生命線になる。中国外務省の副報道局長である汪文斌は今月1日、クーデター後の記者会見で「中国はミャンマーの友好的な隣国だ」と言明した。一方、中国の官製メディアは盛んにミャンマーでの抗議デモを伝える。国軍が盤石だと中国の指導部はみていない。政変にどう対応するか決めあぐねているのは、周辺の東南アジア諸国も同様だ。バンコクで10日、タイ首相のプラユット・チャンオーチャーは報道陣に、全権を掌握したミン・アウン・フラインから「ミャンマーの“民主主義”を支持してほしい」という書簡が届いたと明かした。同じくクーデターを主導し、軍事政権トップから横滑りしたプラユットだが、表情を変えずに突き放してみせた。「ミャンマーの民主化プロセスを支持する。どう進めるかは彼次第だ」。 《敬称略》


キャプチャ  2021年2月18日付掲載

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【ミャンマーに激震走る】(02) 「選挙結果、消してはならない」

20210414 02
国軍がクーデターを実行したミャンマーへの制裁をアメリカ大統領のジョー・バイデンが表明した今月10日、アメリカ国務省高官は下院外交委員会向けの電話説明会で詰問された。「日本やシンガポールから、どうやって制裁措置を引き出そうとしているのか?」。国軍に圧力をかけるには、ミャンマーに多額を投資するアジア各国の協力が欠かせない。だが、高官は具体的な説明を避けた。クーデターは、大統領に就任したばかりのバイデンの外交にとって最初の試練になった。4日には国務省最大の外交レセプション会場『ベンジャミンフランクリン』での初の外交演説で、「信頼性の高い選挙結果を消し去ろうとしてはならない」と訴えた。しかし、11日公表の制裁内容は対象を国軍に限り、市民への悪影響を避けた。ミャンマーを追い詰めれば中国に接近するというリスクに配慮した面もあるが、国際協調への転換を強調する中で友好国との連携の難しさも滲む。

バイデン政権はなお万全でない。アジア担当の国務次官補は不在で、駐ミャンマー米大使は昨年12月に就任したばかりだ。アメリカ政府当局者はメディアに対し、政権内部がカオス(※混沌)の状態だと話した。日本は対応に苦慮する。バイデンが制裁を発表する直前の10日、ミャンマー情勢について電話をかけてきた国務長官のアントニー・ブリンケンに、外務大臣の茂木敏充は「役割を分担しよう」と持ちかけた。制裁には踏み込まなかった。周囲には「父親と母親の役割は違う」と漏らす。日本は戦後、東南アジア諸国で最も早く平和条約と賠償協定を結んだミャンマーに、1954年から経済支援を実施。軍事政権下でも米欧と一線を画し、経済協力を維持した。EUも慎重だ。欧州議会は11日、加盟国にミャンマーへの制裁を求める決議を採択した。外交安全保障上級代表(※外務大臣に相当)のジョセップ・ボレルは9日の演説で、「全ての選択肢を検討する」と述べていた。22日の外務大臣理事会ではミャンマー情勢を協議する見通しだが、EU高官は「先ずは圧力を強めたい」と話すだけだ。背景には、国軍が拘束するノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チーが、少数民族ロヒンギャの保護に熱心でないとの不信感がある。決議には次の一文が加えられた。「スー・チーはなおビルマ(※ミャンマー)の人々の(民主化の)象徴だ」。 《敬称略》


キャプチャ  2021年2月17日付掲載

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【ミャンマーに激震走る】(01) 「軍の狙いは独裁回帰だ」

今月1日、ミャンマー国軍が実行したクーデターは、民主化の歩みを止めた。世界に与えた衝撃を追う。

20210414 01
「アウン・サン・スー・チーを解放しろ」「独裁は許さない」――。ミャンマー南部にある最大都市のヤンゴンでは、昨日もクーデターに抗議する市民らの声が響いた。デモは10日連続だが、参加者はぐっと減ったようにみえる。市内の要所には、一昨日夕から配備された装甲車や兵士が目立つ。13日夜には、市民を裁判所の許可なく逮捕できるようになった。国軍は威嚇と力で、デモを封じ込める構えだ。一昨日まで、ヤンゴンのデモは片側3車線の大通りを埋めた。拘束された民主化指導者、スー・チーの政党『国民民主連盟(NLD)』のシンボルカラーを纏って歩く群衆は、赤い大波のようだった。デモは中部の首都、ネピドー等各地で起きた。SNS上で呼びかけられ、公務員も参加した。指3本を掲げ、抵抗の意思を示す人も目立った。タイや香港での抗議デモに倣った。昨年11月の総選挙(※上下院選)でNLDに改選議席の8割を与えた世論は、国軍の同党弾圧に怒る。国家顧問兼外務大臣として事実上の政府トップだったスー・チーは、無線機を違法に輸入、使用した容疑で拘束された。昨日が勾留期限だと言われていたが、弁護士によれば明日までは司法機関が身柄を確保する。NLDは今月1日のクーデター後、「国軍の狙いは独裁への回帰だ」と批判するスー・チーの書簡を『フェイスブック』で公表していた。事前に用意していたという。国軍は正当化に懸命だ。8日夜、政変後初めて、テレビで国民へ演説した国軍総司令官のミン・アウン・フライン(※右画像)は、薄緑の軍服姿。制帽は脱ぎ、威圧感を極力抑えた。「(総選挙の)有権者名簿に多数の不正があった」「(全権奪取は)不可避だった」――。

言い訳のような説明を否定するように、ヤンゴンでは住民が鍋やフライパンを叩いた。総司令官は、新設した最高意思決定機関『国家統治評議会』のメンバーの半数が文民だと示し、「過去の軍事政権(の独裁)とは性質が異なる」と強調した。真に受ける国民は少ない。政変の背景がミン・アウン・フライン個人の野心だったとの見方も広がる。2011年から務める総司令官の定年を近く、迎える。正規の手段では、軍人枠の副大統領になるのが精いっぱいだ。スー・チーを超えられない――。「(総司令官は)数年前から(政変の)シナリオを温めていたようだ」。クーデター後、国軍の内情を知る人物は明かした。不穏な空気は、政変の1週間程前から漂った。「クーデターはあるのか?」。先月26日、総選挙の不正を告発したネピドーでの記者会見で受けた質問を、国軍報道官のゾー・ミン・トゥンは否定できなかった。同29日にかけ、国連事務総長のアントニオ・グテレス、ミャンマー駐在の欧米外交団が相次ぎ、国軍に自制を促す声明を出した。効果はなかった。今月1日午前4時(※日本時間同6時30分)前、多数の兵士を乗せた軍用車両が少なくとも4台、ネピドーの議員宿舎に乗りつけた。同日予定の連邦議会招集に備えていた約400人が一時軟禁された。NLD広報担当のミョー・ニュンらの証言、報道による政変当日の様子だ。国軍は並行して、スー・チーを大統領府に連行した。大統領のウィン・ミンに辞表を書かせるよう迫ったが、スー・チーは拒んだ。諦めた国軍は、大統領が職務執行不能に陥った場合の憲法規定を持ち出した。国軍出身の副大統領であるミン・スエが大統領代行に就き、1年間の非常事態宣言を発令。全権を総司令官に委ね、クーデターは整った。国軍は「複数の政党による、公正な」総選挙を将来、実施すると表明した。軍政下で制定された憲法に照らし、全権掌握は合法だと強弁する。総選挙は宣言解除から半年以内だが、宣言は1年の延長が可能だ。国軍支配は最長2年半、続く。1990年、スー・チーが自宅軟禁されたまま実施された総選挙でNLDは圧勝したが、国軍は受け入れを拒否。軍政は2011年の民政移管まで存続した。ヤンゴン市民の一人は嘆く。「国軍が権力を簡単に手放す筈はない」。 《敬称略》


キャプチャ  2021年2月16日付掲載

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