【誰の味方でもありません】(315) 野次馬精神と暴走する正義

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済
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昨年8月10日に経済安全保障担当大臣に就任して以来、各府省庁が取り組む経済安全保障施策の司令塔・調整役として、働いてきました。以来、4つの新制度の中で目に見えて進展したのは、“重要物資の安定的な供給の確保に関する制度”です。これは、国民の皆様の生存、国民生活や経済活動に不可欠な物資が供給途絶しないように、重点的にこれを確保する為の方策を講じていく“サプライチェーンの強靭化”に資する制度です。昨年9月に、各省庁にお願いをしてサプライチェーン調査を実施していただきました。つまり、供給途絶の蓋然性が高い物資や、今は日本国内で作っているけれども十分な生産能力を持っていない為に国内の需要を満たしていない物資等です。また、中国等による活発な企業買収によって他国企業の競争力が高くなり、日本企業の世界市場でのシェアが落ちていくことで、将来の事業継続性に問題が出てきそうな分野もあります。色々なパターンがありましたが、昨年12月には“特定重要物資”として11物資を政令(※閣議決定が必要)で指定しました。これに対して、令和4年度補正予算で1兆358億円の予算を措置し、今年から生産基盤の整備・供給源の多様化・備蓄・生産技術開発・代替物資開発等に、自発的に取り組んで下さる認定事業者を国が支援する取組が始まりました。11の特定重要物資を所管する経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省の大臣が取組方針を策定し、民間事業者が“安定供給確保の為の取組に関する計画”を作成します。所管大臣から認定を受けた認定供給確保事業者は、助成金や利子補給、ツーステップローン等の支援を受けることができます。本稿執筆日までに、経済産業省所管では半導体(※原料を含む)16件、蓄電池15件、クラウドプログラム3件、工作機械5件が、国土交通省所管では船舶部品7件が、農林水産省所管では肥料5件が、厚生労働省所管では抗菌性物質製剤2件が認定されました。合計53件が動き始めています。圧倒的に経済産業省案件が多いので、西村康稔大臣は大車輪で頑張って下さっています。この他、特定重要物資に指定したのは天然ガス・永久磁石・重要鉱物・航空機部品です。順次、取組が始まっていくと思います。私達は、どのようなリスクに直面しているのでしょうか。昨年9月のサプライチェーン調査の結果と特定重要物資指定に至った理由を、幾つか書いておきます。例えば、命に関わる物資として指定をしたのは抗菌性物質製剤です。βラクタム系抗菌薬は注射用に使われるものですが、原材料のほぼ100%を中国に依存していました。過去に原薬の供給途絶が起きたことがあり、手術を延期する事態になりました。供給正常化までには、約1年を要しました。今後、母核も含めて原材料から国内で作る、研究開発もする、日本に製造ラインも作るといった取組が必要です。半導体は、海外依存度が79%でした。昔は、日本は半導体に強いというイメージがありました。今でも種別に見ると強い分野ではあるのですが、より高度な、これから絶対に必要になってくる半導体もあります。エアコン、自動車、鉄道、情報通信機器等、私達に身近な分野で使われますので、できるだけ国内調達をしていくべきだということで、指定をしました。①重要物資の安定的な供給の確保に関する制度(※サプライチェーンの強靭化)…昨年8月施行
②先端的な重要技術の開発支援に関する制度(※デュアルユースとされるものを含む先端的な重要技術の研究開発促進と社会実装を産官で目指す)…昨年8月施行
③基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度(※基幹インフラへのサイバー攻撃等、役務の安定的提供を妨害する行為を防止する為、重要設備の導入や維持管理の委託について国が事前審査をする)…今年4月施行・来春に本格運用予定
④特許出願の非公開に関する制度(※安全保障上機微な発明の特許出願につき、特許法上の権利を得られるように保全指定をして公開を留保し、外国出願を制限。G20で制度がないのは日本、メキシコ、アルゼンチンのみ)…今年4月施行・来春に本格運用予定