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【企業人必読!キャリアアップの為の組織防衛術】第1部・製薬会社広報編(03) 不祥事の内助の“巧”



【広報の会議室での勉強会】
入鹿(頭脳明晰で仕事の速い女性部長)「今日は国際政治学者の三浦瑠麗さんの件を事例研究してみましょう。身内が不祥事を起こした時に、どんな言動をしたらいいかしら?」
平目(上司へのごますりが上手な男性課長)「私は彼女のファンですけど、『夫を支えながら推移を見守りたい』というコメントには、内助の功を感じましたね。月刊誌の独占告白も読みましたが、家族の強い絆を感じさせられて、ジーンときました」
倉華(見た目と違って攻撃的な女性係長)「えーっ!? 私は逆です。夫の側についている印象を与えるから、犯罪を憎む姿勢、即ちコンプライアンスの欠如を感じました。特に『罪証隠滅の恐れもないはずで…身柄を拘束されて非常に残念』というあたりは、検察批判とも受け取られかねませんし、彼女が検察の事情聴取の中身を詳しく知っているかのようにも感じられます」
平目「でも、彼女は『夫の会社経営には全く関与していない』と言っているから、無実を信じているんじゃないかな?」
倉華「そこも問題だと思いますよ。写真週刊誌が『瑠麗さんの会社と夫の会社がコンサルティング契約を結んでいた』と報道しましたから、知らぬ存ぜぬは無理があると思います」
入鹿「まぁ、事実は今後明らかにされていくと思うけど、彼女のコメントは夫を庇っているとか、自分を蚊帳の外に置きたいという印象を与えるから、社会の処罰感情を解消する効果は低いわね」
平目「なるほど! そういえばそうですね。仰る通りです。私は敢えて夫に対する厳しい言葉や、自責の念を感じさせる言葉を発するべきだったと思います」
多古(ピント外れで軽率且つ未熟な男性新入社員)「『もう夫を信じられなくなりました。夫を監視しなかった私も悪いんです』とかですか?」
倉華「そこまで言わなくても、『私は政府の成長戦略会議で太陽光発電事業を推してきました。その分野で夫が起訴されるなんて慙愧に堪えません』とか」
入鹿「そのコメント、良いわね。でも、その前にコメントだけにするのか、記者会見を開くのか。それを決めなければいけないと思わない?」
多古「先日教えていただいた“謝・調・原・改・処”を順番に語るんですね」
平目「それを語るべきは瑠麗さんじゃなくて、夫だと思うがね」
倉華「瑠麗さんはマスコミに頻繁に登場してきた方ですから、記者会見を開いて説明責任を果たすべきだと思います。マスコミ出演でメリットを得てきた人が、デメリットのある時に逃げるのは身勝手だと思われますので」
平目「でも、東京地検特捜部の捜査を受けて、これから裁判が始まる中で色々語るのは如何なものかな?」
倉華「夫の会社経営には全く関与していないっていうのが本当なら、瑠麗さんの発言は捜査や裁判には影響が出ないんじゃないでしょうか」

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テーマ : 危機管理
ジャンル : ビジネス

【記者発365】(09) 少女の遺品に込められた思い

娘の骨壷を胸に抱き、故郷の北海道・新千歳空港に降り立った。さゆりさん(※仮名、47歳)は涙が止まらなかった。元気になって、手を繋いで戻ってくる筈だった。娘のりんさんは、10歳の誕生日を迎えたばかりの昨年7月5日、息を引き取った。2年と3ヵ月、心臓移植を待ち続けた末、長い入院生活にピリオドが打たれた。運動が大好きな女の子。だが、小学1年生の時に学校健診で異常が見つかった。精密検査を受け、心機能が低下する難病『肥大型心筋症』・『拘束型心筋症』と診断を受ける。医師からは「心臓移植しか完治はない」と告げられ、手術が可能な大阪大学医学部附属病院(※大阪府吹田市)に入院した。北海道から大阪へと引っ越し、さゆりさんは24時間、付き添った。入院生活は過酷だった。3本の点滴に24時間繋がれ、心臓に負担をかけないように厳しい食事制限があった。外出もできない。特に苦しんだのが水分制限だ。りんさんは「口が砂漠のよう」と喉の渇きを何度も訴えた。気を紛らわせたかったのだろう。『YouTube』で見ていたのは、大食い番組と、“ゴクゴク”と喉を鳴らす音声動画。さゆりさんは見守るしかなかった。入院が長引くにつれ、「私は幸せではない」「北海道に帰りたい」と訴えるようになっていた。弱音を吐く娘に、ついつい語気が強くなる。「皆が支えてくれているんだよ」「そんなことは言わないよ」。睡眠薬を服用せずには、ストレスで眠れなくなっていた。外の世界を見るのがつらいと、窓から眺めるのも止めた。それでも心が落ちついた時、「北海道から一緒に来てくれてありがとう」と笑顔を見せてくれた。入院仲間が、移植手術を受け退院していく。その姿に、「いつの日か」と希望を抱き、耐え忍ぶ日々だった。

『日本臓器移植ネットワーク』によると、臓器移植法が施行された1997年10月から先月までの25年半の間で、749人が心臓移植を受けた。その一方、長い待機期間中に550人もの人が命を落としている。りんさんは、このうちの一人だ。2021年の内閣府の世論調査によると、移植に関心のある人が6割を超え、提供したい人も約4割に上った。だが、その意思が十分に生かされているとは言えない。背景の一つに、人の死の“ダブルスタンダード”がある。“脳死=人の死”とする欧米諸国と異なり、“心停止=人の死”とする日本では、臓器提供者に限って脳死を人の死と法律で定めている。心臓は脳死でないと移植はできない。移植待機患者とその家族を支援する非営利団体『トリオジャパン』の青山竜馬会長(43)は、臓器移植法改正の必要性を訴える。「世論調査からも提供意思がある人達が十分にいることは明らかです」と指摘し、「子供が脳死状態と診断され、臓器提供するとなれば、本来は医師が告げるべき“死”を、親が決めなければならない。それは残酷ではないでしょうか」と問いかける。心臓移植の待機者は、ドナー側の苦渋であろう選択を待つしかない。そのことを、りんさんも理解していた。「私も、誰かの為にできることがしたい」。自分で決めて、髪を寄付しようと黒髪を伸ばしていた。同じ小児病棟に、抗癌剤を服用しウイッグ(※鬘)を着けていた友達がいたから。「私は外で太陽の光を浴びることも、運動をすることもない。だから、綺麗な髪の毛を提供できると思うの」。入院中、りんさんは“帰ったらしたいこと”リストをノートに書いていた。3歳下の弟、りょうちゃんが大好き。面倒見がいい、優しいお姉さんの姿が思い浮かぶ。〈りょうとかくれんぼしたい〉〈りょうとおにごっこしたい〉〈りょうとおふろに入りたい〉〈こうえんに行きたい〉〈走りたい〉〈りょうりしたい〉――。心臓移植を待っていた10歳の少女が夢見ていたのは、何でもない日常だった。 (デジタル報道グループ 生野由佳)


キャプチャ  2023年5月28日付掲載

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

【WORLD VIEW】(60) 綺麗な環境、犠牲の上に



EUは2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を立てている。だが、その達成の為に必要な過程が、それほど綺麗なものではないことを、欧州各国の市民は実感し始めている。リチウムやコバルト等のレアメタル(※希少金属)は、電気自動車(※EV)の電池等に使う。EUは地球温暖化対策の一環としてEVの普及拡大を目指しており、こうした原材料の調達が不可欠となる。EUが促進する風力発電の発電機に使う永久磁石も、レアアース(※希土類)が原材料だ。希少金属や希土類は地球環境を良くするのに貢献する。これは、謂わば綺麗な表の顔だ。地球温暖化対策が世界で進むのに合わせ、リチウムの需要は2050年までに世界で57倍に増加し、永久磁石に使う希土類の需要も5.5倍に達すると予想される。一方で、希少金属や希土類には環境に悪影響を与える裏の顔がある。採掘や精製過程で有害物質を排出したり、採掘過程で使用する化学物質が地下水を汚染したりすることがある。また、採掘時に大量の水を使用し、農業用水や飲料水を減少させることもある。だが、こうした裏の顔は、欧州の市民に殆ど意識されてこなかった。何故か。希少金属や希土類が採掘、精製されるのは、これまで殆どが欧州から遠く離れた地域だったからだ。リチウムではオーストラリア、チリ、中国の3国が世界の産出量の8割以上を、コバルトではコンゴ民主共和国が約6割を占める。永久磁石に使う希土類のほぼ全ての精製や、リチウムの精製の8~9割は中国が担う。ベルギーのシンクタンク『ブリューゲル』の研究者、マリ・ルムエル氏は「中国は政策として環境規制より重要原材料の採掘、精製の拡大を優先してきた。環境規制が甘い分、価格が安く、世界が中国に依存する一因となった」と分析する。

EUの域内にも量は多くないものの、希少金属や希土類はある。だが、EUは負の側面を遠く離れた国に任せ、恩恵だけを受けてきた。この状況にいつまでも甘んじられるわけではないと教えたのは、新型コロナウイルスとロシアだった。EUは新型コロナウイルスの感染拡大による供給網の寸断と、天然ガス輸入の4割を依存してきたロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにし、重要資源を特定の国に依存するリスクを思い知らされた。希少金属や希土類を獲得するルートを多様化し、可能な限り域内で採掘、精製しなければならないという危機感が増した。そこから生まれたのが、EUの執行機関である欧州委員会が3月に公表した重要原材料法案だ。念頭には主に中国がある。法案では、EUが年間に消費する重要な原材料の10%以上を域内で採掘、40%以上を域内で加工、15%以上を域内で再利用し、加工過程で65%以上を第三国に依存しないことを2030年までの目標とする。域内、域外での環境保護への努力も強める。原材料の産出国とのパートナーシップを強化し、インフラ投資を行なうこと等も想定する。何れも、希少金属や希土類の汚れた側面へのEUの関与を強める方向性を示している。だが、それは当然、痛みを伴う。環境を守る為の政策が、そのプロセスで環境を害する矛盾。欧州の取材でそれを強く感じたのは、昨秋訪れたセルビアだった。EU加盟国ではないセルビアには、EUの厳格な環境規制は適用されない。イギリスの豪資源大手『リオティント』は2004年、首都ベオグラードから南西へ100㎞の農業地帯でリチウム鉱脈を発見。欧州でのEV市場の拡大を念頭に開発に着手した。EUもセルビアを鉱物資源の供給網に入れる重要性を認識しており、開発に期待を寄せていた。

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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

【テレビの裏側】(251) スポンサーの顔色を窺う地上波テレビ

https://friday.gold/article/160047


キャプチャ  2023年6月9日号掲載

テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
ジャンル : ニュース

【宇垣美里の漫画党宣言!】(96) 好きなものにのめり込むことの尊さ

何度も何度も繰り返し読んだ聖典のような一冊、尻込みする度に脳内でリフレインさせて己を奮い立たせたあのキャラのセリフ、その世界で繰り広げられているあれやこれやがあまりに好き過ぎて言葉にすらできず、思わず本を抱きしめジタバタしてしまったこと。『これ描いて死ね』を読んでいると、人生に何度となくあった漫画に心揺さぶられた瞬間を思い出す。全てはフィクション、でもそこから受け取ったものは絶対に嘘なんかじゃない。漫画を愛し、漫画に救われ、今日まで生き延びてきた全ての者どもよ、これ読んで死ね(死んじゃだめ)。東京から120㎞南にある伊豆王島に住む高校1年生の安海相(※ヤスミアイ)は、漫画が大好き。幼い頃は漫画だけが友達だった彼女には、今でも“ポコ太”というたぬき型ロボットのイマジナリーフレンドがいる。そんなポコ太を生み出した憧れの漫画家、☆野0(※ホシノレイ)が同人誌即売会のコミティアで10年ぶりに新作を頒布すると知り、安海はいてもたってもいられず海を越え、東京へ向かうことに。そこで「漫画って自分で描けるのか!」と気付いた彼女は、運命的に出会った漫画家経験のある手島先生の助けも得て、作画担当の藤森心や編集者的立ち位置で漫画をジャッジする赤福幸ら友人たちと共に、漫画同好会を設立する。ポップで可愛らしい絵柄と、テンポよいコメディータッチの展開で侮ることなかれ、この作品の全てのページから漫画へのリスペクトと愛が迸り、命を燃やす程に好きなものにのめり込むことの尊さが詰め込まれている。一人ひとりが主役級の強烈な個性を持つ登場人物達は、表情を一目見るだけで喜怒哀楽がしっかり伝わってくる。

だからこそ、ぎゅんとダイレクトに心を掴まれた。急な見開き、突然のカラーといった遊び心のある画面構成や、思わず拡大して見てしまった程細かい文字で羅列してある安海のアイデアメモ。ライバルの石龍光や心の描く漫画内漫画等は作者の妻であるトミイマサコさんが担当しており、そのタッチの違いにぐっときた。カバー下のおまけ漫画では登場人物が好きな漫画を紹介していたりと、隅から隅までサービス精神もりもりで、作者の漫画という表現への信頼が透けて見えた。高校生達の青い初期衝動が眩しい一方、巻末に掲載されている手島先生の過去エピソード“ロストワールド”では、作り手の苦悩や葛藤、狂気が外連味たっぷりに描かれている。創作の苦しみのあまり、心を覆い尽くす殺意にも似た感情に覚えがあり過ぎて、「本気で仕事をしていたら共通に抱える衝動なのかな」と何故だかホッとした。手島先生が同好会を始める時の約束として挙げた「“これ描いて死ね”などと漫画に命を懸けないこと」という言葉には、創作に向き合い続け摩耗してしまった過去を持つ彼女だからこそ出せる重みがある。果たして、安海達は手島先生の来た道を歩んでしまうのか。いや、きっと彼女達には先生と友達、皆がいるから、また違う道を歩めるような気もしている。寧ろ手島先生も安海達に感化されてまた描き始めてくれないかな、と期待せずにはいられない。初心者の同好会メンバーと共にゼロから漫画の描き方を学ぶことができる漫画ハウトゥー要素もあり、読んでいると描きたくなること間違いなし。きっと、創作を志したことのある人は、また刺さる角度が違うのだろう。それが知りたくて漫画を描いてみたいと心が少し疼いている。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。著書に『風をたべる』(集英社)・『宇垣美里のコスメ愛』(小学館)・『愛しのショコラ』(KADOKAWA)。近著に『風をたべる2』(集英社)。


キャプチャ  2023年5月4・11日号掲載

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

【石井聡の「政界ナナメ読み」】(13) “必勝しゃもじ論争”が映す平和ボケ

「侵略者に対しては、必要とあらば戦う用意があることを示す。平和を実現する最善の方法として、時には軍事力を行使することも吝かではない」――。エストニアのカヤ・カラス首相が先月、『ニューヨークタイムズ』に寄せたエッセイにこうある。エストニアは人口約130万人のバルト三国の一つ。侵略者と想定するのは、人口で100倍以上、面積では約400倍に及ぶ巨大な強権国家だ。ロシアによるウクライナ侵略を目の当たりにしたカラス氏は、『北大西洋条約機構(NATO)』のバルト三国への師団規模の駐留を求める。然もなくば、エストニアが地図から消えてしまうと案じるからだ。この言葉を知った頃、日本では国会で“しゃもじ論争”が重ねられていた。岸田文雄首相がウクライナを訪問した際に、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領への手土産として持参した宮島産の大型しゃもじである。簡単に経過を振り返る。本紙が先月23日昼、首相一行がポーランドで乗車した列車に積み込んだ『うまい棒』の段ボール箱の中身は何かを追跡し、岸田首相が署名と共に“必勝”と記したしゃもじだったという電子版記事を配信。その日の午後には、松野博一官房長官がしゃもじと“折り鶴をモチーフにしたランプ”を贈呈したことを公表した。すると、翌24日の参議院予算委員会で立憲民主党の石垣のり子氏が「必勝というのは不適切だ」と批判し、同党の泉健太代表も「戦争中の緊迫した国家の元首に必勝しゃもじを贈るのは違和感が拭えない」と続けた。維新の馬場伸幸代表も「ノーセンス」「お気楽過ぎるんじゃないか」等と批判した。

これに対し岸田首相は、「祖国や自由を守る為に戦うウクライナの人々の努力に敬意を表するもの」と説明した。日本の各種選挙で“祈必勝”と揮毫された色紙が飛び交うのは見慣れた風景で、ドメスティックな習慣から手土産が考案されたのは確かだ。しゃもじが持つ“敵を召し(※飯)取る”との意味が、外国に上手く伝わるかという疑問もある。だが、受け取ったウクライナ側は駐日大使、在日大使館のコメントを通じて歓迎し、謝意を示した。懸念は無用だろう。問題は、しゃもじ批判の背景に“伝えるべきは平和”といった平板な和平論が見て取れることにある。ロシアの侵攻当初は、即時停戦を求める国際世論が強かった。その後、ウクライナ側の善戦で戦争は長期化しているものの、ロシアが不当に侵略し、支配地域を残す現状は変わらない。その固定化に繋がりかねない停戦や和平交渉を、ゼレンスキー大統領は望まない。“プーチンの戦争”を許さない欧米の国々にも、ウクライナの立場への支持が広がった。現実とずれた和平論が立法府で容易く語られるのは、やはり“遠くの出来事”としか事態を見ていないからではないのか。因みに、予算委質疑は“しゃもじ一色”だったわけではない。日本企業がロシアで事業を継続し、多額の納税を行なう是非を正す別の立憲民主議員もいた。大勢の子供をウクライナから連れ去る等のロシアの戦争犯罪が指摘されている。日本では新たな非難決議や制裁を求める動きはみられない。侵略者を許さず、若し侵入したら徹底して追い出す。そうしなければ侵略者は居座る。領土問題を抱える日本がその教訓を忘れているなら、由々しき兆候である。 (本紙特別記者 石井聡)


キャプチャ  2023年4月7日付掲載

テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【ときめきは前触れもなく】(172) 自由あってこその“子供”

https://dot.asahi.com/wa/2023051700058.html?page=1


キャプチャ  2023年5月26日号掲載

テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

【佐藤祥子の「力士、燃ゆ」】(27) 翠富士(伊勢ヶ濱部屋)――春場所を沸かせた業師に“功労賞”を!

3月の大相撲大阪場所は“荒れる春場所”と言われ、まさに文字通りの荒れ模様で幕を閉じた。先の初場所で優勝し、綱取りに挑んだ大関・貴景勝が負傷して、7日目から休場に追い込まれる。横綱・照ノ富士も全休していた為、横綱や大関が不在となり、これは昭和以降初めてのこと。優勝争いは縺れ、結果、関脇の霧馬山が優勝決定戦で小結・大栄翔を下し、するりと逆転初優勝を決めた。春場所を沸かせた立役者のひとりが、前頭五枚目の小兵、翠富士だった。身長171㎝・体重117㎏で、得意技は鮮やかな肩透かし。10日目まで無傷の10連勝で俄然注目を浴びたが、11日目にはその肩透かしが決まらずに土がつき、まさかの5連敗を喫す。しかしながら、体重差60㎏の元大関・髙安の強烈なかちあげにも怯まず、真向勝負で白星をもぎ取る等、業師でありながらも技に溺れず。見どころの乏しい春場所を後半戦まで盛り上げ、まさに“功労賞”に値する活躍だった。2016年9月に近畿大学を中退し、同級生の錦富士と共に伊勢ヶ濱部屋に入門して初土俵を踏む。2021年初場所では新入幕ながら技能賞を受賞。9勝したうち、何と5回も肩透かしを決めた他、多彩な技を見せたことが評価されての受賞だった。“銭の取れる相撲”を取れる貴重な存在でもある。愛弟子の快進撃に、師匠の伊勢ヶ濱親方から「『勘違いするなよ~』と冗談交じりに声を掛けられた」と自ら明かしたが、4敗目を喫した時点で優勝戦線から脱落してしまう。「初めてのことで良い経験になりました。今後、この経験が活かせればいい」と吹っ切れた表情を見せていたものだ。千秋楽の一番に勝てば敢闘賞受賞だったが、惜しくも逃してしまった翠富士。同期生の錦富士が、こう明かしてくれた。「横綱に『お前は気持ちが弱いんだよ~』といじられていました。僕も同じ10勝5敗の成績で『よう、相星!』と翠富士が声を掛けてきましたが、僕は何も言えませんでした。三賞を逃したのは堪えていたようで、気持ちが落ち込んでるように見えたので…。昔から少年みたいなヤツで、自分の気持ちに正直な男なんです」。悔しさをバネにして、伊勢ヶ濱部屋同期生コンビの更なる飛躍に期待大だ。


佐藤祥子(さとう・しょうこ) 相撲ライター。日本相撲協会認定・相撲健康体操指導員。1967年生まれ。週刊誌記者を経て、1993年からフリーに。著書に『相撲部屋ちゃんこ百景』(河出書房新社)・『知られざる大鵬』(集英社)等。


キャプチャ  2023年5月号掲載

テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

【誰の味方でもありません】(298) “時間にルーズ”は“適当”なのか?

https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05250555/?all=1


キャプチャ  2023年5月25日号掲載

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

【呉座勇一の「問題解決に効く日本史」】(27) 長続きする組織にはカリスマより家族的な運営が求められる理由

ひとりのカリスマが成長させた組織は、そのカリスマが不在になると勢いを失う場合が多々見られる。現代でも、『日本電産』(※現在の『ニデック』)の創業者であった永森重信氏が2021年6月にCEOを退任すると、その後の業績は悪化。僅か1年足らずでCEOに復帰した例がある。カリスマの後継者は、その組織の維持に難儀し易いものだ。その点、室町後期に浄土真宗本願寺派の信徒を拡大した蓮如は、自らをカリスマ化することを避け、家族的な組織運営で強大な宗教団体を築き上げた節がある。今回は、その功績を振り返りたい。浄土真宗の宗祖・親鸞の教えの核心は、阿弥陀如来の衆生救済の本願(※全ての人を救済するという誓願)への“信心”によって極楽往生が約束される点にある。そして、親鸞の子孫である蓮如は、戦乱と飢饉によって地獄と化していた室町後期を生きる人々に対し、久しく忘れられていた親鸞の教えを広め、来世での救済を保証した。「阿弥陀如来を信じるだけで極楽往生できる。何の努力も必要ない」という親鸞・蓮如の教えは、宗教的善行を積む資力や能力のない多くの人達にとって、誠にありがたいものであった。では、信心によって往生が決定した本願寺の門徒達は、以後の人生をどのように生きていけばいいのだろうか。蓮如は、「商人は商いをしながら、奉公人は奉公しながら、阿弥陀如来を信じればいい」と言う。其々の身分・職業に応じ、今まで通り生きればいいというのである。真面目に日常生活を送るだけで十分で、特別な何かをする必要はない。これを“平生業成”という。蓮如は「阿弥陀如来への感謝として、念仏を称えることを怠ってはいけない」と説いてはいるが、1日に何回称えろといった決まり事があるわけではない。各々ができる範囲でやれば問題ないのである。

しかしながら、“そのままの生き方でいい”という教えは、門徒の側からすれば曖昧で不安が残る。また、この教えを徹底すると、究極的には本願寺教団は不要となる。実際、親鸞は教団の組織化には否定的で、「親鸞は弟子一人も持たず」と語っていた。結果として親鸞の弟子達は各々独立し、親鸞の教えから離れていってしまった。この問題を解決したのが“報謝行”である。蓮如は阿弥陀への感謝を表す念仏を推奨したが、それだけではなく、蓮如の御文(※教義をわかり易く説いたもの)を読誦する、阿弥陀本尊を礼拝するといった諸々の宗教的行為も、報謝行として位置付けられた。更に重要なのは、門徒達が本願寺に対して汗水垂らして種々の奉仕をすることも報謝行と見做されたことである。これと並行して、蓮如は年中行事を整備した。年に一度の報恩講(※親鸞聖人の命日である11月28日前後に勤める法要)、毎月28日の親鸞忌、毎月18日の存如忌(※蓮如の父の命日の法要)等の行事が本願寺や傘下の地方寺院・道場等で営まれ、それらに出仕することが報謝行として位置付けられていった。こうして、蓮如は本願寺の求心力を高めたのである。本願寺は他の寺院と異なり、世では唯一と言っていい世襲の寺である。門徒達は蓮如の先祖である親鸞聖人を共に供養し、蓮如の父親である実如を共に供養する。本願寺教団は疑似的な大家族集団の様相を呈しており、宗祖親鸞を他の善知識(※高僧)から超越した絶対的な存在として仰ぐ集権的な組織となった。当時、一宗を束ねる本山のような中核寺院を持つ宗派は珍しく、本願寺を頂点に地方寺院・道場を系列化した蓮如教団は斬新で先駆的だった。蓮如は自身をカリスマ化することなく、一般門徒とも対等に接する一方で、教団のヒエラルキーを構築した。“従業員は家族”的な大家族主義に基づく組織づくりの天才と言えよう。


呉座勇一(ござ・ゆういち) 歴史学者・信州大学特任助教・『国際日本文化研究センター』機関研究員。1980年、東京都生まれ。東京大学文学部卒。著書に『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)・『頼朝と義時 武家政権の誕生』(講談社現代新書)・『戦国武将、虚像と実像』(角川新書)等。


キャプチャ  2023年5月23日号掲載

テーマ : 歴史
ジャンル : 学問・文化・芸術

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