【徹底解剖!東京都庁】(12) 都庁一の有名職員・黒田慶樹さんの昇進にみる“都庁魂”

秋篠宮さまとは学習院時代からのご学友であり、今上天皇の内親王“サーヤ”と結婚した都庁マンの黒田慶樹氏。あくまで目立たず、地道にコツコツと生きるその“都庁マン魂”は、同僚たちにも高く評価されているという。 (取材・文/本誌編集部)

20170821 06
16万人以上の職員を抱える都庁出身者には、知る人ぞ知る“有名人”が数多くいる。昭和の時代、先ず有名人として名の通っていたのは、女優・吉永小百合の実の姉である片岡玲子さん(※一般社団法人『東京臨床心理士会』副会長)だった。1962年に東京教育大学(※現在の筑波大学)教育学部心理学科を卒業後、都庁に入り、民生局を皮切りに『練馬児童学園』園長や品川区厚生課長等を務め、東京都教育庁体育部給食課長に昇進。「当時は職員が7万人ほどの時代でしたが、女性課長がたった223人しかいない中で本庁課長にまで出世。その後、東京都児童会館長という福祉保健局の重要ポストを最後に退職し、城西国際大学や立正大学教授等を歴任した」(当時を知る都庁OB)。片岡さんが都庁に入った1962年といえば、妹の小百合は高校在学中。そして、この年に映画『キューポラのある街』(日活)で主演。ブルーリボン賞主演女優賞を受賞し、国民的アイドルとなっていた頃だから、その姉が堂々入都となれば、都庁も大騒ぎだったに違いない。また、作家の童門冬二は企画関係部長や広報室長を務め、美濃部都政の“スピーチライター”として活躍した幹部だったことで知られる。現在の若き夕張市長・鈴木直道氏も、高卒で都庁に就職した元都庁マンだ。では今、“都庁の有名人”と言って最も多く名前の出る人物は誰か? それは恐らく、“サーヤ”こと今上天皇の第一皇女・清子内親王と結婚した都庁港湾局総務部団体調整担当の黒田慶樹課長だろう。「2004年の婚約発表時には大フィーバーでしたが、今も堅実に都庁に勤務しています」と週刊誌記者が語る。

「黒田氏は管理職選考に合格し、今から8年前の2009年に課長に昇進。上手くいけばもうすぐ部長にも手が届くかという幹部コースです。このままいけば、最後は局長まで考えられるペースで、最後は皇族関係者が役職に就いている団体へ天下るというのが予定のコースとなりそうです」。都庁一の有名人でありながら、ひとつも目立ったムードを発しない、如何にも“ザ・地方公務員”という黒田氏の歩んだ略歴を、改めて振り返ってみよう。その人生は、如何にも“都庁的”である。黒田氏は1965年生まれ。父は『トヨタ自動車』に勤務するサラリーマンだった。1972年に学習院初等科に入学。ここで礼宮文仁親王(※現在の秋篠宮)さまのご学友になったことが、その後の人生を運命付けることになる。学習院大学時代にも秋篠宮さまの主宰するサークル『自然文化研究会』に所属しており、後に結婚することになる紀宮さまとは、それ以前から顔見知りだった。1988年に学習院大学法学部を卒業後、『三井銀行』(※現在の『三井住友銀行』)に就職する。しかし1996年、31歳の時に退職して都庁に転職。大手銀行から都庁への転職は中々珍しいが、その動機は「首都の都市計画に携わりたい」というものだったという。「この時、黒田さんは経験者採用で都庁に入っており、入って3年目で主任の資格を取ったことや、銀行での経験が加味され、同じ肩書きの職員よりやや格上だったことは間違いないでしょう」(同)。黒田氏は政策報道室(※当時)を振り出しに、希望する都市計画局(※現在の都市整備局)へ異動。婚約を発表した2004年当時は、都市整備局市街地建築部建設業課建設業指導係の次席(※係長級)だった。幼馴染の関係だった黒田氏と紀宮さまだったが、2003年に知人をしのぶ会で再会し、その後、交際に発展。翌年に婚約が発表される。「何しろ、皇族とのおめでたい話ですから、周囲は騒然となった。当時の石原知事にはSPが1人ついていましたが、黒田さんは“同僚”の警視庁から派遣されたSPが何と2人もついて、渋谷区のマンションまでの行き帰りは勿論、トイレに行く時ですら張り付くほどの“クロちゃんフィーバー”。黒田さん目当てに、カメラを持った一般人が都市整備局の内部をウロウロすることもあって、壁には撮影禁止の張り紙が貼られていましたが、当時の上司も『“黒田君”と呼んでいいのかな…』なんて困惑していましたよ。当時、黒田さんは39歳で、未だ係長級でしたが、入ったのが31歳ということを考えれば、普通のエリートコースと同じスピードで昇進していた。ただ、そういう事情は対外的によくわからないので、『黒田さんって40前で未だ係長なの?』みたいな声があったんです。だからわかり易く、『ここは特進させるべきでは?』という声もあったんですが、『あまり露骨にやるのも味が悪い』ということで、結局はそのままになった」(同)。

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敢えて言おう、政治家が口利きをして何が悪い!――利益誘導は政治の本質、“権力は必ず腐敗する”という真理

学校法人『森友学園』・『加計学園』、そして『国際医療福祉大学』医学部を巡る安倍首相周辺の“ご意向”騒動。ここぞとばかりに野党やマスコミは追及しているが、政治の中では決して珍しいことではない。 (取材・文/編集プロダクション『清談社』 常盤泰人)

20170810 06
世間もマスコミも、一体何故、こんな大騒ぎを続けているのか? ここ数ヵ月、国会審議の中心となっている安倍晋三首相を巡る数々の疑惑のことである。「何を今更ですよ。政治家が口利きをするなんて当たり前のこと。地方自治体の公共事業を巡る予算配分等が典型ですが、自分たちの利益の為に行政を動かそうと、権限を持つ政治家に働きかけるのは、日本中の企業や団体が日常的に行っていることでしょう。今回は、当事者が国のトップである安倍首相ということで話題を集めていますが、この疑惑のせいで、他の重要問題の審議が蔑ろにされてしまっている。劇場型政治の悪い側面が出ていますね」。反安倍陣営の政界関係者からですらこんな嘆きが聞こえてくるほど、今の国会は安倍首相のお友だち疑惑で持ち切りだ。改めて整理しておくと、先ず最初に浮上したのが、森友学園グループに纏わる不透明な国有地払い下げ問題だった。同グループが設立を目指していた“安倍晋三記念小学校”の建設予定地として払い下げられた国有地が、市価から8億円近くも安くなっていた事実が発覚。安倍首相だけでなく、昭恵夫人が同学園グループである『塚本幼稚園』の名誉校長となっていたことや、森友学園グループの籠池理事長夫妻の特異なキャラクターも相俟って、テレビや新聞が連日のようにこの問題を取り上げ始めた。その最中、同様の構図として注目を集め始めたのが、安倍首相と加計学園グループとの関係だ。こちらも、加計学園傘下の岡山理科大学獣医学部の早期開設に際し、「首相の意向」「官邸の最高レベルが言っている」等と記された文書が残されていた通り、内閣府から文部科学省に対して不透明な力が働き、“国家戦略特区”として認められる等、様々な便宜が図られたのではないかという疑惑である。

同グループの加計孝太郎理事長と安倍首相は、共にアメリカの大学に留学して以来、家族ぐるみの付き合いを続けてきた無二の親友という関係である。更に、ここにきて“第3の忖度問題”として囁かれているのが、今年1月4月に報じられた、『高邦会グループ』(高木邦格理事長)が千葉県成田市に開設した国際医療福祉大学医学部に纏わる問題だ。加計学園と同様、同大学も国家戦略特区として認可されており、成田市から23億円相当の土地を無償貸与された上、成田市と千葉県が建設費用の約半分に当たる約80億円の補助金を負担している。「同大学の高木理事長は、政界に豊富な人脈を持ち、安倍首相の側近たちにも食い込んでいます。キーマンとして名前が挙がっているのは、安倍首相と親しい元フジテレビアナウンサーで現神奈川県知事の黒岩祐治。黒岩はフジを辞めた後、同大学グループに関連する国際福祉総合研究所の副社長になっていたこともある」(地方紙政治部記者)。まさに、次から次へと疑惑が浮上している状況だが、何れのケースでも問題視されているのは、利益を得た学園側のトップが安倍首相やその周辺と近い関係だったことにある。つまり、「安倍首相が、私的に交流のあった“お友だち”に便宜を図る為、行政側に指示、或いは行政側が首相の意向を忖度した結果、国民の税金が注ぎ込まれたのではないか?」という疑惑だ。だが、果たしてこれらは本当に大騒ぎをするほどの“疑惑”なのだろうか? 道義的に問題はあるのだろうが、かといって安倍首相側が何らかの利益を受け取っていた訳ではない。法の範囲内での政治献金は行われていたにしても、それは一般的なものでしかない。少なくとも現時点で、公職選拳法や政治資金規正法に触れるような違法性は証明されていない。ここにきて森友学園問題では、塚本幼稚園のPTA収支決算報告書の“社会教育費40万円”の摘要欄に、昭恵夫人の名前が書いてあったということが根拠となり、「夫人にカネが渡っていたのではないか?」という疑惑が浮上している。また加計学園問題でも、「安倍首相が年間14万円の役員報酬を受け取っていた時期があった」とも報じられている。「但し、森友学園側の証言はコロコロ変わっていますし、一方的に名前が使われたという可能性もあって、信憑性には疑問符が付きます。仮に事実だったとしても、摘要欄には他に4件の項目も列記されており、全額が昭恵夫人に渡った訳でもない。加計学園の件にしても、役員報酬を受けていたのは1993年からの数年間という昔の話です。第一、億単位の“便宜”の見返りがこんな少額だったとは、誰も本気で考えてはいないでしょう」(週刊誌記者)。指摘された以上、国民に対する説明責任は果たされるべきだが、だからといって、“疑惑”と呼ぶには、あまりにもお粗末な代物でしかないだろう。

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【小池流1年・これまでこれから】(下) 誰が知事をチェック?

20170808 08
西新宿の高層ビル街の一角にある東京都議会。来月の本会議の論戦を控え、小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党『都民ファーストの会』の新都議たちが、ほぼ連日、都の政策課題の研修等を受けている。5人の都民フ都議のうち、地方議員の未経験者は25人。都民フ幹部は、「早く一人前になる為には勉強を続けるしかない」と明かす。研修に力を入れる背景には、都民フが知事の“チェック機能”を果たせるかどうかへの疑念が付き纏うことがある。地方自治体は、首長と議会を共に選挙で選ぶ“二元代表制”を採用。相互に監視し合うのが本来の姿だ。“小池支持勢力”が過半数を占めた今、「二元代表制が揺らぐ懸念がある」との批判が出ている。都議選前に都民フの代表に就任した小池知事は、都議選の投開票の翌日、代表を僅か1ヵ月で辞任。小池知事は「都民フの決定に関与しない」との姿勢を示しているが、別の党のある都議は「小池氏の応援を受けて当選した都議が知事をチェックできる筈がない」と切り捨てる。

都知事は、職員約17万人とスウェーデン並みの13兆円規模の予算を握る等、強い権限を持つ。一方で、予算案や条例案は議会の同意が無ければ成立しないほど、議会の存在感は大きく、歴代の都知事は議会との関係に苦労してきた歴史がある。1995年に就任した青島幸男知事は、『世界都市博覧会』の中止を巡って都議会と対立。提出した条例が相次いで否決され、苦境に立たされた。それとは対照的に、都議選の勝利で小池知事は都政と都議会の両輪を押さえ、自らの政策を推進できる環境が整った。3年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの費用の財源問題、受動喫煙防止対策、『築地市場』の『豊洲市場』への移転問題。1年目に積み残した政策課題は少なくない。“小池1強”の状況下、今後、都議会定例会で論戦が本格化。受動喫煙防止条例や豊洲の土壌汚染対策の予算等の審議がスタートする。これまで敵対してきた自民党は、小池知事の出方を窺う構えだ。十分な論議が尽くされず、知事提案の条例案や予算案が通過すれば、都議会の存在意義が問われかねない。様々な政策課題の論戦に、都民フはどう臨むのか? 元三重県知事で『早稲田大学マニフェスト研究所』の北川正恭顧問は、「小池知事と都民フが対等な立場にあるとは言い難い」とみる。その上で、「党内の議論をオープンにして、知事の言いなりではないことを証明する責任がある。それができない場合、小池知事と都民フは有権者からの信用を失うだろう」と指摘する。日本経済新聞が都議選で実施した出口調査では、小池知事の支持率は69.1%に達した。高い支持率を背景に、将来の国政進出が取り沙汰される小池知事。都政2年目の舵取りは、その行方をも占う。


⦿日本経済新聞 2017年8月3日付夕刊掲載⦿

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【小池流1年・これまでこれから】(上) 都政改革、次の一手は

東京都の小池百合子知事は、今日で就任1年を迎えた。都議選では、自身が代表を務めた地域政党『都民ファーストの会』が圧勝し、都議会を“小池支持勢力”主導に塗り替えた。開幕まで3年を切った東京オリンピックや『豊洲市場』移転の準備がヤマ場となる。就任1年を振り返り、小池都政2年目の展望を探った。

20170808 07
「我々は直前まで知らされていなかった」――。都議選の告示3日前の先月20日午後、都幹部はこぼした。その日の記者会見で、小池知事は築地と豊洲の“共存案”の基本方針を表明。環境相時代の部下だった環境省OBの小島敏郎氏ら顧問団が練り上げた案だった。都幹部は、「我々は信用されていない」と漏らした。小池知事は、“共存案”の具体像は語らず、その実現性は見えてこない。昨年に表明したオリンピックの競技会場新設見直しを進言したのも、小池知事が指名した特別顧問である慶應義塾大学の上山信一教授だ。小池知事は、「会場の座席数減等でコスト削減に繋がった」と胸を張る。だが、大会組織委員会の関係者は、「当初計画通りに新設することは変わらなかった。コスト削減も見た目だけであり、却って時間を浪費しただけだ」と反論する。小池知事のブレーンは現在、14人の外部顧問団からなる。担当範囲はオリンピックや市場問題に留まらず、入札改革から介護問題等と幅広く、都幹部は「我々が説明をしても聞いてもらえない」と嘆く。

自民党側も「いつ誰がどこで議論して決めたのか。知事こそブラックボックスだ」としており、顧問団を重用する小池知事の政治手法には批判が付き纏う。一方で、昨年7月の都知事選で圧勝した小池知事は、“大改革の一丁目一番地”としてきた情報公開に着手。知事公表前の施策を事前に自民党に“根回し”することを禁じた他、情報公開請求に対して極力開示する方針に転換した。小池知事は、「都政の“見える化”を実現した」と自己評価する。待機児童対策に1381億円、無電柱化の推進に251億円、LED導入促進に90億円――。今年度予算には、知事選の公約集27項目の施策も殆ど反映させた。小池知事は1年目を“負の遺産の整理整頓”と位置付け、2年目以降を“新しい種をまいて、芽が出てくる時期”と明かした。日本経済新聞が都議選投開票日の先月2日に実施した出口調査では、都議に最も取り組んでほしい政策は「医療・福祉」(29.5%)がトップを占め、「都政改革」(20.5%)を上回った。有権者が身近な政策課題に関心を寄せていることが窺える。自民都連との対立関係を逆手に取り、注目を集めた小池知事。都議会で小池支持勢力が3分の2近くを占めた今、次に挑む政策とは何か? 中央大学の佐々木信夫教授(行政学)は、「1年目は自民党という“敵”を作ることでエネルギーを得た。何をしたいのか都民には見えない。残り3年の任期で、どの政策を進めたいのかを、改めて丁寧に説明していくべきだ」としている。


⦿日本経済新聞 2017年8月2日付夕刊掲載⦿

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【安倍改造内閣再浮上なるか】(下) 問われる“経済最優先”

20170808 06
安倍晋三首相は今月3日、政権の原点である“経済最優先”に立ち戻ると強調した。金融緩和と財政出動に始まるアベノミクスが一定の成果を上げたのは、日経平均株価が4年7ヵ月の安倍政権で倍になったことでも明らかだ。求められるのは、経済の好循環を後押しする構造改革に取り組む強い覚悟。その本気度が疑われれば、市場は賞味期限切れを察し、“アベ離れ”で応じるだろう。「アベノミクスは前進したが、目標は未達だ」――。今月末、『国際通貨基金(IMF)』はこう報告書で指摘した。中々デフレ脱却宣言に辿り着かない日本への視線には、もどかしさが滲む。企業は、世界経済の成長も追い風に最高益を記録し、設備投資にも前向きだ。完全失業率は3%を下回るほぼ完全雇用状態にある等、好条件も増えており、賃上げと消費増という自律回復の波に乗る一歩手前まで来た。この流れを止めず、本物にするのが改造内閣の大きな政策課題だ。人口減で労働供給の制約が強まる中、成長率底上げには、あらゆるモノがインターネットに繋がるIoTや人工知能(AI)を活用した生産性の向上が不可欠。報酬引き上げで従業員に報いる企業に、政府は税制等で支援する構えだ。「官民が呼吸を合わせられるかの分岐点にある」と、経済官庁の幹部は力を込める。

アベノミクスは、金融緩和と財政出動に続く“第3の矢”として、規制緩和を含む成長戦略を謳っていた。だが、農業や医療で岩盤規制は残る。学校法人『加計学園』の獣医学部新設を巡る問題では、国家戦略特区を認定するプロセスに疑惑が浮上したが、「特例を認めて改革の突破口にしよう」という特区の発想は、構造改革に必ず資する。既得権や省庁縦割りにメスを入れ、規制の岩盤を刳りぬけるのは、何といっても首相の強力な指導力だ。成長戦略の旗印だった『環太平洋経済連携協定(TPP)』が、アメリカの離脱で不透明になる中、安倍政権は『ヨーロッパ連合(EU)』との経済連携協定(EPA)合意で、自由貿易堅持の意志を示した。これを弾みに、アジアを軸とした自由貿易圏作りを主導すれば、成長戦略が再びはっきり見えてくる。地方創生・女性活躍・1億総活躍・働き方改革…。安倍政権は、毎年のように経済政策の看板を掛け替え、次は“人づくり革命”だという。教育や育児支援は大事だが、将来不安の根っこにある社会保障や財政の問題を避けて通れない。国は国内総生産(GDP)の倍の借金を抱えるのに、社会保障費膨張等で年30兆円以上の新たな借金を重ねる。公的保険から医療サービスに支払う単価である診療報酬と介護報酬は来年春、同時改定というタイミングだ。長期入院の患者が制度を跨いで介護に移り易くなるような仕組みを作り、広い視点で見直す好機になる。「2019年10月へ再延期した消費増税を、これ以上先送りすべきではありません」。今月中旬、安倍首相を囲む夕食会で経済界首脳が直言した。首相は昨年春、「世界経済はリーマン危機前に似ている」と唐突に表明。財政の苦境を改善する為の消費税率10%への引き上げを再び延期し、経済界を失望させた。税収で政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支を、2020年度に黒字にする――。そんな約束が絶望的になったのに、「経済成長で自動的に上向く楽な目標に切り替えてやり過ごそう」というムードが政府内に漂う。安きに流れるばかりでは不安は拭えず、首相の言葉も企業や個人に響かない。 (編集委員 上杉素直)


⦿日本経済新聞 2017年8月6日付掲載⦿

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【安倍改造内閣再浮上なるか】(上) 崩れた“1強体制”

20170808 05
「国民の声に耳を澄まし、謙虚に丁寧に国民の負託に応える為、全力を尽くす」――。安倍晋三首相は、内閣改造直後の今月3日の記者会見で8秒間、目を閉じて頭を下げた。首相から見える政治風景は、この数ヵ月で変わった。高支持率を背景に異論を封じてきた“安倍1強”体制は崩れ、内閣改造後の緊急世論調査でも小幅上昇に留まった。嘗てなく人選に悩んだ。「世論の空気をわかっていない」。自民党三役に盟友の元経済財政再生担当大臣・甘利明氏を起用しようとすれば、献金疑惑での辞任を引き合いに反対された。挙党態勢を訴える為に起用した野田聖子総務大臣は、足元を見るように同日の就任の記者会見で、来年の党総裁選への出馬に意欲を示した。高い支持率と、2012年の政権交代前の衆院選を含む国政選挙で4連勝という選挙の強さが、安倍1強の基盤だった。ところが、学校法人『森友学園』・『加計学園』の問題への対応や、今月の東京都議選の惨敗で、首相はそのどちらも失った。つい数ヵ月前まで無風と言われた来年秋の党総裁選での3選も見通せない。首相は経済分野で実績を重ね、支持率が回復するのを待つ戦略だ。先ずは党内の不満を鎮める為、融和の人選に腐心した。

憲法9条改正に慎重な岸田文雄前外務大臣を党政調会長に充てたのも、その一環だ。首相は5月に2020年までの新憲法施行を目標に掲げたが、4日の日本テレビの番組では、「スケジュールありきではない。私の考えは申し上げたので、後は党で議論して決めてほしい」とトーンダウンした。これまでのトップダウンの政治手法を改め、表向きは積み上げ型の意思決定に映る。首相と距離を置く元党幹部も、「以前の首相なら、異論封じで盟友重用の人事にした筈。反省は感じられる」と話す。尤も、これで再び政権基盤が安定軌道に戻る訳ではない。最大の関門は野党だ。安倍内閣の支持率低迷に反比例するように、民進党も代表選の実施等、生気が出てきた。野党が秋の臨時国会で対決姿勢を強めるのは必至だ。与党内では追い込まれる前の早期解散論も囁かれる。首相は「旧民主党政権よりマシ」と、野党との違いを際立たせた対決型政治で、政権と自民党内に求心力を生んできた。今ではその対決型が非難され、支持率急落の一因になっている。今後、国会では採決強行を繰り返す従来の対決型の手法は取り難い。臨時国会は、働く時間ではなく成果に応じて賃金を払う“脱時間給制度”を含む働き方改革関連法案が焦点となる。政府と一旦、修正案で合意した連合執行部が、内部で「政権と対峙する姿勢に欠ける」等の批判を受けて撤回した。衆議院解散は来年12月までにはある。与野党対決法案となれば、野党と共通点を探って法案成立を目指す熟議の政治は難しい。対決を避ける為に法案成立を先送りすれば、改革の停滞を招く。政争に傾斜せずに、経済分野で着実に成果を上げる知恵を絞るしかない。日本を取り巻く安全保障環境は厳しい。弾道ミサイルを発射し続ける北朝鮮や、台頭する中国等、北東アジア情勢は緊迫の度を増す。経済を活路に政権立て直しを急がなければ、地域の安定もままならない。 (政治部 島田学)


⦿日本経済新聞 2017年8月5日付掲載⦿

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【徹底解剖!東京都庁】(11) 給料“爆上げ”伝説も…島嶼勤務、そのミステリアスな日々

大島・新島・青ヶ島…。島嶼勤務は厳然と存在する。東京都庁職員もよく知らないと言われるその仕事内容と、驚きの待遇メリットとは? (取材・文/本誌編集部)

20170807 01
東京都には、民間人が住む11の島と、海上自衛隊や気象庁関係者だけが常駐する2つの島(※硫黄島・南鳥島)がある。島が東京都に属する以上、そこで働く都の職員たちがいる。この島嶼動務は、都庁で働く職員たちの格好の話題の1つであり、都民からも高い関心を持たれている。世界最大の経済規模を誇るメガシティー・東京のど真ん中で働く筈だったのに、配属先は人口数百人、海に囲まれた何も無い南国の離島――。そのギャップは想像するだけでもユニークだが、現在、11の島で500名近い都の職員・臨時職員・教職関係者が働いている。そして、この島勤務は、若い世代の職員たちにも高い人気を集めるかなりの人気部署であるという。左表の通り、11の島は東京都総務局に属する4つの支庁の下に管轄されており、其々、大島支庁(※大島・利島・新島・式根島・神津島)・三宅支庁(※三宅島・御蔵島)・八丈支庁(※八丈島・青ヶ島)・小笠原支庁(※父島・母島)といった具合に分かれている。其々の支庁には勿論、数十名から100名以上の職員が働いているが、島に出張所がある場合、そこにも10名程度。更に、どの島にもある小中学校では都の教職員が働いており、また島嶼保健所の栄養士や港湾・空港職員、更に非常勤職員として自然保護レンジャーや農芸員等が配備されている島もある。東京の島は、例えば大島であれば大島町、青ヶ島であれば青ヶ島村といったように、其々独立した町村なのだが、その町役場や村役場とは別に、都の職員も業務の為に島で働いている訳だ。

島での仕事は、自然災害等が起きた時は別として、基本的にはのんびりしている。支庁であれば未だオフィス的だが、小さな島の出張所等は田舎を通り越した僻地だ。ただ、それだけに、自然を受し、海を愛する野生派、特に独身者にとっては魅力溢れる勤務で、「一生と言われれば躊躇いもあるが、2~3年であれば是非行って見たい」と、人事の度に思わぬ数の希望者が名乗りを上げるという。学校の教員や警視庁の警察官も一応は都の職員なので、その意味では全ての島に、広い意味での“東京都職員”がいる訳である。「ただ、伊豆諸島や小笠原諸島は、沖縄や鹿児島などの島と違って、あまり情緒的ではないですね」と語るのは、長年に亘って日本の島を取材して歩いたカメラマンだ。「島の住人は方言も殆ど無いし、食生活が大きく変わるでもない。インターネットもあるので情報が遅れることもないし、案外、内地からやってきた職員たちも、期待していたような南国パラダイスではなかったことに拍子抜けするみたいですね。都庁の人間は、どうも杓子定規というか、柔軟な対応ができる人が少ないので、現地民と馴染んで飲みに行ったり、釣りに行ったりという人は少ないですよ」。都庁職員が敢えて地元に馴染まず、行政マンぶるのには、「人間関係の狭い島で、人間関係を急速に深め過ぎるのは良くない」という長年の“教訓”もあるのだという。島では恒常的に人材が不足しており、過去には支庁で勤務していた都の職員が村の助役を頼まれるようになり、一旦、都を退職して村の助役になった後、また都に復職したケースな等が実際にあった。しかし、島に深入りすると、大抵は政治的な対立に巻き込まれ、その収拾係になるのがオチだという。「2003年、青ヶ島村の村役場総務課長が、内地に出て援助交際をしていたところを逮捕され、大騒ぎになったことがあった。実は、東京の島で働く地方公務員が、都会の歓楽街で女遊びをして羽目を外すというのは定番なのですが、人口200人もいない島でスキャンダルが報じられたら、仕事などできなくなってしまいますからね」(同)。離島といっても、ヘリコプターを使えば、青ヶ島から羽田空港までは待ち時間を入れても2時間程度。それほど長旅でもない為、都会が恋しくなると下世話な目的で密航してくる公務員も少なくない。しかし、中には小さな島に深い愛情を注ぎ、学校の教え子たちと一生の関係を築くような教員や職員もいるという。「例えば、西新宿に青ヶ島屋という居酒屋がありますが、この店は都庁にも近く、島の行政関係者が都庁へ出張した時等は必ず寄る等、情報交換の場として有名です。やはり23区辺りでは経験できないネタが色々あるので、本庁で働く島嶼勤務経験者たちのコミュニティーもあったりするくらいですから、都庁職員たちにとって、島での生活は特別な思い出になることが多いんでしょうね」(同)。

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小泉進次郎が推す神奈川県三浦市長に噴出した“公用車でソープランド”不正使用疑惑

20170804 17
「『市長が公用車でソープランドに行っていた』なんて恥ずべき話をあちこちで耳にする。インターネット上にもチラホラ出ているというじゃないか。それでも、6月の市長選では4選確実と言われているんだから、おかしな話だよ」――。こう言って憤慨するのは、神奈川県三浦市の市政関係者・A氏だ。三浦市といえば、神奈川県の南東部・三浦半島に位置し、マグロの水揚げで有名な三崎港や三浦海岸等の観光地で知られている。その三浦市で6月8日投開票の市長選が行われるが、4選を目指している現職市長にとんでもない疑惑が取り沙汰されているのだ。渦中の吉田英男市長(61・左画像)は、『橫浜銀行』に入行後、葉山支店長や神奈川県庁支店長を経て、2005年に三浦市長選に出馬。初当選すると、以来、2度の市長選で再選を果たし、現在は3期目にあたる。「2009年と2013年の選挙では、対抗馬となる立候補者が出ず、無投票で当選しています。それなのに何故か、『自分は選挙に強い』『市民の支持を得ている』という自負が強い。嘗ては親族を市役所に勤務させて、市から給与を支払わせていたこともありました。流石に周囲から指摘を受けて、別の市の関連施設に転職したようですが、この12年間は我が物顔で市政を完全に牛耳っています」(A氏)。まさに市政の“私物化”を象徴するのが、冒頭に記した公用車の破廉恥な私的使用問題だ。その噂が流れたのは2期目の最中だという。別の市政関係者・B氏は、こう証言する。「6年ほど前、つまり吉田市長の2期目のことですが、市長が公用車で川崎のソープ街に乗りつけて、人目も憚らずに店や女の子を物色して、実際にプレイもしたっていうんです。未だ舛添さん(※前東京都知事)の問題が取り沙汰される前のことで、ある意味、かなり大らかな時代だったかもしれない。でも舛添さんは、税金で賄われる公用車と運転手を使って、神奈川県湯河原町にある別荘を毎週のように往復したり、東京ドームで巨人戦を観戦していたのがバレて、辞職に追い込まれた。『昔のこととはいえ、吉田市長にしっかりと説明責任を果たしてもらいたい』という声が上がり始めたんです」。

複数の関係者の証言を基に、当日の問題行動を再現する。その日、吉田市長は横浜市から弔問の為に、公用車で川崎市へ向かった。その後、吉田市長は運転手に現地のソープ街に行くよう指示する。その際の公用車は『日産自動車』の『フーガ』。只でさえ人目につき易い国産高級車にも拘わらず、吉田市長は窓から身を乗り出すようにして、店の前に立つソープランドの従業員に向かって「いくら? いくら?」と声をかける。見かねた運転手が市長を諫めた上で車を停め、美女がいる店を聞き出すと、市長は漸く納得したのか、そのまま店舗に入ってサービスを受けたという。またその際、市長は“口止め料”として、運転手にポケットマネーから5万円を差し出して、同じ店舗で遊ぶように指示した“贈賄”の疑いも持たれている。この問題を追及し続けてきた元三浦市議会議長の木村玄徳氏が言う。「ソープだけではありません。『市政とは全く関係のない民間企業からの接待やゴルフにも公用車を使っている』という話も耳にします。1期からの公用車の運転記録を全て、情報公開請求で取り寄せようとしましたが、『当時の記録は残っていない』ということでした。『ここ1年分しか保管していない』と公開を拒否し続けています」。木村氏は、この“公用車ソープ疑惑”を裏付ける重大証拠を握っている。それが、三浦市の職員であり、公用車の運転手の1人であるX氏との会話を録音したもので、その音声記録は、市長の知られざる素顔を浮き彫りにしていた。主要な箇所を、ここに引用したい。

――ソープ行ったっていうのは5~6年前でしょ?
X氏「そうですね。俺が運転手になって直ぐですよ。まぁ、『俺に気を使ってくれたんだな』と思った。【中略】でも、市長が出したんですよ。5万円を」

――市長の奢りだったんだね?
X氏「6万5000円だったんですよ。高級のところじゃなかったですよ。俺なんか行ったことなかったから」

――市長が5万円出して、あなた(※テープでは実名)が1万5000円出したんだね?
X氏「それならその分、金だけ貰えれば良かったと思った感じだったんですけどね。最初、『ふざけて言っているんだ』と思ったんですよ。【中略】でも、市長は何度も行っているようだった。詳しかったですもの。『あっちだ、そっちだ』って言って。【中略】市長が身を乗り出して箱乗りしているのが嫌だから、『ちょっと待って下さい。車を停めて聞いてきますから』と言った。顔見せがあったので、『いいのがいました』と言って、いい女は写真で1人だけだったんですが、市長は俺が最初に選ぶと思ったらしいが、俺が不細工のほうを選んだら『そうか』と言って、市長はいいほうを選んだ。それにしても、(公用車の)使い方が酷かった」

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【シンゾウとの距離・改造前夜】(07) 二階俊博…あうんの呼吸、いつまで

20170804 06
今月18日夜、自民党幹事長の二階俊博(78・右画像)は、滞在先のワシントンのホテルの自室に駐米中国大使の崔天凱を招き入れた。崔は米中経済対話で多忙な時期だったが、二階の訪米を聞いて駆けつけた。「長年の日中関係における尽力に敬服する」。5月に国家主席の習近平との会談を実現した二階の仕事ぶりを、こう評した。二階は大きく頷いた。内閣改造を2週間後に控える中、党の要である幹事長が日本を不在にできるのは何故か? 答えを解くカギは、自民党が惨敗した都議選直後の今月4日にある。「新しい課題に対応していきましょう」。首相の安倍晋三(62)は、首相官邸を訪ねた二階に語りかけた。昼食を交えた2人だけの会談は約50分。子細は明かさないが、「あの会談で幹事長続投が決まった」というのが大方の見立てだ。本来なら党執行部の責任問題に発展してもおかしくない都議選惨敗だったが、県議出身の二階は早い段階からこう語っていた。「県議選を党本部にやってもらったことはない。候補者や都連が努力しなきゃ」。敗戦必至とみて、党執行部や首相官邸には矛先が向かないよう布石を打つ為の発言でもあった。二階と安倍との間で、都議選への対応をじっくり打ち合わせた節はない。定期的に首相官邸を訪ねる際にも、細かい選挙や国会への対応で二階が指示を仰いだこともない。「阿吽の呼吸だ。細かいことは相談しなくてもわかる」。二階は周囲にこう語る。

昨年8月の幹事長就任後、二階の存在感を高めたのは、まさにこの“阿吽の呼吸”だった。就任早々に安倍の総裁3選を可能にする党則改正をぶち上げ、電光石火で党内論議を取り纏めた。二階は、「総理にはもっと感謝してもらわんとな」と満足げに語る。安倍は、自身に思想信条が近い“お友だち”で周囲を固めたい気持ちがある一方、二階や官房長官の菅義偉(68)といった異なるタイプの政治家を高く評価する。安倍は事ある毎に、「百戦錬磨、自民党で最も政治的技術を持っている」と二階を持ち上げ、二階も「ポスト安倍は安倍」と長期政権を支える立場を徹底してきた。安倍が悲願とする憲法改正は今秋、大きなヤマ場を迎える。「臨時国会までに党独自の改憲案を纏める」と宣言したからだ。実現できなければ、自らの求心力低下に繋がりかねない。それを纏めるには、“阿吽”の関係を持つ二階の腕力が不可欠になる。ただ、その腕力は時に軋轢を生む。二階が狙った無所属で自らの派閥に所属する衆議院議員・長崎幸太郎(48)の復党問題。先週になって突如、「今の執行部のうちに一定の結論を出したい」と党紀委員長を務める山東昭子(75)を嗾けた。書面提出で多数決にかける強行突破を試みた。しかし、18人の委員の内、二階の意向に沿って復党に賛成したのは6人。しかも5人は民間人で、国会議員での賛成は自派の河村建夫(74)だけ。二階は「党人事後の次の体制で審議する」となお執念をみせるが、党内からは「派閥を拡大する為に幹事長のポストを使っているだけだ」との不満も表面化する。安倍1強への逆風が強まる中、来年9月には党総裁選、年末には衆議院議員の任期満了が控える。「衆議院解散は総理の権限ですが、選挙は1人でできますか?」。衆議院解散風が吹いた3月中旬、二階は安倍にこうクギを刺したことがある。安倍と二階。阿吽の関係は、緊張関係の裏返しでもある。 《敬称略》 =おわり


⦿日本経済新聞 2017年7月21日付掲載⦿

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【シンゾウとの距離・改造前夜】(06) 小泉進次郎…互いの価値を値踏み

20170804 05
先月25日夜、自民党農林部会長・小泉進次郎(36・左画像)の発言が注目を集めた。「借りた恩の返し方は色々ある」――。“恩”とは、同日投開票された横須賀市長選。横須賀市は小泉家のお膝元だが、市長選は父親の純一郎の時代から2回連続で敗北した。今回は自民・公明両党が推す新人が当選した。背景にあったのは、首相官邸や自民党が展開した国政選挙並みの総力戦だ。そのおかげで小泉は面目を保てただけに、恩の返し方への臆測が永田町で広がった。というのも、来月上旬に予定される内閣改造で、小泉の人事が1つの焦点となっている為だ。東京都議選の惨敗で、1強を誇った政権の足元は揺らいだ。局面打開には、人気者の小泉は格好の目玉人事となる。衆議院当選3回ながら、衆目が一致する“将来のリーダー”。嫉妬の渦巻く永田町で、謙虚さを前面に慎重にキャリアを積んできた。2015年に抜擢された農林部会長としては、票田である『全国農業協同組合連合会(JA全農)』の改革に切り込んだが、先輩である農林族議員らは徹底的に立てた。部会が終わると、必ず農林族幹部らに「今日もありがとうございました。おかげ様で無事に終わりました」と丁寧に頭を下げた。部屋には最後まで残り、JA幹部ら出席者の意見を聞いた。

3月末に党内の若手議員らと提言した子育て支援の財源案“こども保険”。党内からは、厚労族議員を中心に反発も出た。小泉は自ら厚労族幹部らの事務所に電話して、面会を打診。断られれば国会で待ち伏せし、一生懸命説明して回った。だからこそ、改造で噂される“異例の抜擢”には不安も拭えない。「周りは俺の失敗を待っている」。経験を積む好機である半面、要職を受けて失敗すれば非難の嵐となりかねない。一方、官房副長官等政権の中枢に入れば、政権を擁護せざるを得ず、これまでの政権批判も辞さない清新なイメージは壊れてしまう。首相の安倍晋三(62)とは微妙な距離感を保つ。「時間軸が違う気がするんだよね」。こう評したことがある。実際、遊説や党内論議でアベノミクスに触れたことはほぼ無い。金融緩和や財政拡大等のカンフル剤的な政策にも一定の同調は示すが、「日本の課題は2020年以降に一気に顕在化する」と構造改革の必要性を訴える。2012年党総裁選で元幹事長の石破茂(60)に票を投じたのも、石破が訴える“持続可能な日本”に共鳴したからだ。一方、安倍の側にも複雑な感情が滲む。ある党幹部との会食の席。出席者によると、安倍は“ポスト安倍”候補を披露していた。そこで党幹部が「進次郎もいますしね」と水を向けると、返ってきた答えは「まぁ、そうだね」。閣外からの歯にきぬ着せぬ発言にも、不快感は隠せない。「色々言っていて頼もしいね」と安倍は最近、皮肉にも似た感想を周囲に漏らした。政権浮揚のカードだが、引き立てた結果、自らの後継者とは言えない政治家を育ててしまう恐れもある――。首相周辺は、「進次郎は首相にとって諸刃の剣でもある」と語る。「フランスのマクロン大統領は39歳。カナダのトルドー首相は45歳。俺と殆ど年の変わらない彼らの活躍は、凄く意識するね」。小泉は最近、周囲にこう語った。小泉にとって、トップを目指す戦いは遠い未来ではない。ここから積むキャリアは、大きく勝負を左右する。安倍は“進次郎カード”をどう利用しようとし、小泉はどう対峙するのか? 現リーダーと将来のリーダー候補が、互いの価値を慎重に値踏みしている。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年7月20日付掲載⦿

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