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【中小企業のリアル】(59) カジワラ(東京都台東区)――食品加工機械で美味しさ求め



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「『この機械が完成したら俺に売ってくれ』と言ってくれた客がいて、開発に弾みがつきました。かっぱ橋ならではです」と語るのは、東京のかっぱ橋道具街の中央に本社を構える『カジワラ』の梶原徳二会長だ。飲食店が必要とする道具を売る店ばかり凡そ170軒が軒を並べるこの町で、1960年に焦げない餡練り機を開発し、以来、食品加工機械に注力してきた。カジワラは1939年、徳二会長の父で町工場の職人だった保男氏が独立したのが始まりだ。元々は蒲鉾製造用の小型のチョッパー(※魚肉を挽く機械)や魚肉撹拌機等、蒲鉾機械の修理が中心だった。当時の町工場では家族全員が働くのが当たり前で、徳二会長も中学生の頃からチョッパーの刃をみかん箱に入れて、赤羽橋(※東京都港区)周辺の浸炭焼き入れ屋に運んでいた。父親が“機械の病院”という看板を出していたので、色々な修理の依頼があったが、菓子職人から「これからは菓子の需要が増える」と、菓子用の餡を製造する機械の改良を頼まれたことから、菓子関係機械の製造と修理に特化することになった。当時の餡練り機は練っていると中心部が焦げることが多く、有名菓子店の餡練りは職人の名人芸に頼っていた。職人たちは小豆の細胞を壊さないように潰して砂糖と混ぜる為、へらを立てたり寝かせたりして鍋に密着した餡を掻き取っていた。徳二会長は、この動きを研究・工夫して、小豆を攪拌する羽根を自転公転させることを考えついた。「鍋の底に密着している部分も掻き取るには、羽根の回転軸を伸縮させればいい」と思いついたが、実際にどうすればいいか工夫することは非常に難しい。

悩んでいたある日、父が大八車で機械を運んでいる夢を見た。それがヒントになって、羽根の回転軸の中にローラーを入れて上下にスライドさせるアイデアを思いついた。完成した第一号機の価格は、これまでの餡練り機の3倍ぐらいになったが、冒頭に書いた試作品づくりを偶々目にして興味を持った和菓子屋が購入してくれた。実は徳二会長には長兄がいたので、家業を継ぐことは全く考えていなかった。大学は一橋大学商学部に入学。外交官になりたいと、3年生で法学部に転部。外交官試験に合格したものの、結核が見つかり、緊急避難的に家業に関わることになった。因みに故・石原慎太郎氏とは同窓で仲が良く、氏の都知事時代には徳二会長は中小企業関係施策のモニター役(※実質的ブレーン)だった。徳二会長の画期的な開発は、食品機械業界に大きな衝撃を与えた。1964年に『煮炊攪拌機』の名前で特許を取得。御法川発明賞と通産大臣賞を受賞した。世の中になかったものを作った喜びと、それが評価されたという満足感で、会社は大いに活気づいた。煮炊撹拌機の名称は、将来の市場を直感したからだ。「当初、営業担当は『そんな高いものは絶対売れない』と反対しましたが、結果的には成功しました。その後、菓子以外の業界にも浸透し、ジャムやカレールー等加熱攪拌を必要とする多くの調理加工食品に使用され、機種の開発も進み、マーケットが大きく広がったんです」(徳二会長)。1970年には更にハイスピードで、攪拌する軌跡も非常に複雑な、世界初の混合攪拌機を完成した。元々文科系の徳二会長だが、理科系の嗅覚も並大抵ではない。ヨーロッパに視察に行った時は、銅鍋にステンレスを溶接している製品を発見した。銅鍋は熱伝導率が高いが、耐熱性や衛生面ではステンレスが優っている。「これなら錆びない銅鍋が作れる!」と、日本でも銅とステンレスの溶接を実現しようと、日本大学生産工学部の教授に助っ人を頼んで研究し実現。これも世間をアッと言わせた。現社長の秀浩氏は1983年に入社し、父である徳二会長の右腕となった。会社の業務に役立ちそうなものを発見するのが得意で、商品開発や市場開拓に携わってきた。漫画コラムニスト・夏目房之介さんのファンで、カジワラの忍者のキャラクターを作ってもらった。カジワラ(=忍者)は表に出ず、裏で大きな役割を果たす…という意味を込めている。「海外の巨大展示会を見て、そのスケールに仰天し、『我が社も絶対出展しなくては』と思いました。また、海外の他社から、我が社の製品が食品だけではなく、化粧品や化学薬品にも使えるという示唆を受け、なるほどと納得しました」(秀浩社長)。埼玉県八潮市にある『カジワラカスタマーセンター』は、顧客が材料を持ち込んでカジワラの機械を利用し、試作する場所だ。機械を見てもらい、実験してもらい、機械の利用法の講習会も開く…という総合施設で、2004年の設立。海外展示会等、数多くの視察経験を持つ秀浩社長ならではの発想だ。「私が社長を引き継いだ途端にリーマンショックが来た。約3ヵ月間は仕事が少なく、お得意さんの機械のメインテナンスをして歩きました。おかげで赤字にならずに済んだし、次に何をやるかを考える良いチャンスになりました」(秀浩社長)。

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【Global Economy】(313) G7、政策立案の指標見直し…脱経済偏重で“幸福を追求”

今月11~13日に新潟市で開かれたG7財務大臣・中央銀行総裁会議で、“幸福の追求”が議論された。経済成長に限らず、様々な側面から幸福度を捉え、政策に生かそうとする動きが広がっている。 (編集委員 二階堂祥生)



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G7で話し合う議題は、議長国の日本が設定した。金融システムの安定やウクライナへの支援といった喫緊の課題に加え、幸せを実現する為の政策をテーマにしたのは、GDPの成長が重要であることに変わりはないものの、それだけでは限界があるとの問題意識からだ。GDPは経済の大きさを測る指標として各国が重視しているが、無料のデジタルサービスや無償のボランティア等は反映されない。経済規模が大きくなっても環境が悪化したり、格差が拡大したりすれば、人々の幸せには繋がらない。G7では、GDPでは表すことのできない、多様な価値を重視した政策の在り方を巡って、意見が交わされた。今月13日に採択された共同声明では、「幸福をよりよく評価するための指標を、いかに実用的かつ効果的な方法で政策立案に組み込むか、検討する必要がある」との文言が盛り込まれた。幸福度を巡っては、影響を与える要因や測定方法等について、様々な研究が行なわれてきた。例えば、行動経済学の研究者でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏は、年収が7万5000ドル(※約1000万円)に達するまでは金額が増えるほど人は幸せに感じるが、それを超えると軈て横這いになることを明らかにした(※①)。他方、既に多くの先進国や国際機関は、幸福度を表す指標を作っている。幸せの程度は主観的な感情である為、「最近の生活にどの程度満足していますか?」といったアンケート調査で測定。失業率や平均賃金等、幸福度と関係の深い統計データを組み合わせ、指標群(※ダッシュボード)として示すのが一般的だ。政策現場での動きは、2008年のリーマンショックの後に目立つようになった。「過度な利益の追求が経済危機を招いた」との反省から、“豊かさ”を見直す機運が高まった。

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『経済協力開発機構(OECD)』は2011年、各国の生活の豊かさを示す“より良い暮らし指標”を作成した。国民生活に密接に関わる住居や仕事、健康等11項目で構成する。また、国連の研究組織は2012年以降、2014年を除いて国毎の幸福度を測定し、結果を『世界幸福度報告書』として公表している。測定では、アメリカ『ギャロップ』の世論調査をベースに“人生選択の自由さ”等を評価し、1人当たりGDPや健康寿命等6つの要素を基に数値化する。今年のランキングで、日本は137の国・地域のうち47位だった(※②)。これまでの順位を見ても40~60位台で推移しており、先進国では下位にある。上位に北欧諸国が目立つのは、毎年の傾向だ。尤も、このランキングには批判が多い。日本を始めアジア諸国では、人生に対する評価を聞かれて「普通」といった中間的な回答をすることが多く、個人主義的な傾向の強い欧米諸国に比べ、数値が高くなり難いとされる。幸福度の捉え方は、社会や文化によって異なるのが実情だ。幾つかの国は、幸福度指標を政策立案や評価に生かそうと取り組んでいる(※③)。イギリスでは2010年、当時のジェームズ・キャメロン首相が統計局に幸福度の計測方法を検討するよう指示。国民的な議論を踏まえ、データが整えられていった。現在は“人間関係”や“健康”等10分野で44の指標がある。生活満足度の1ポイントの変化は1万3000ポンド(※約220万円、中央値)に相当すると見做す等、主観的なデータの変化を金額換算する手法も開発しており、政策の費用対効果を議論したり、優先順位を付けたりするのに役立てられる。

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【農協と郵政・昭和型組織の末路】(14) 日本郵政に迫る“750億円減損リスク”…楽天とのチグハグ提携の末路

『日本郵政』は『楽天グループ』を事業のてこ入れ等のパートナーとして選び、出資した。だが、楽天の携帯電話事業や宅配等において、日本郵政の力を最大限に引き出す協力体制を築けていない。

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日本郵政グループは旧郵政省が母体となっているだけあって、その組織風土は“減点主義”の官僚機構に近い。だがその半面、数年に一度、トップダウンで電撃的に大型提携に乗り出す“癖”がある。“癖”とネガティブな書き方をしたのは、既に一度、巨額損失を出す失敗をやらかしているからだ。2015年に6200億円を投じた、オーストラリアの物流会社『トールホールディングス』の買収がそれである。海外での物流事業の知見がない日本郵政は、トールの経営陣をグリップできず、収益を改善できなかった。結果的に、2016年度に特別損失4003億円を、2021年度に同674億円を計上するに至った。失敗の主因は、買収当時、日本郵政社長の座にあった西室泰三氏が、十分な資産評価等をせずに巨額買収に突き進んだことだった。そして現在、トール買収の“二の舞”になりかねない巨額損失リスク案件が、日本郵政で進んでいる。楽天グループとの資本提携がそうだ。日本郵政が楽天に1500億円を出資したのは昨年3月のこと。それから1年半――。楽天の株価は出資当時(※1株1367円)から半値程度の水準まで下落している。企業会計では、保有する有価証券の時価が取得原価の50%以下に目減りした場合、減損処理を迫られる。日本郵政が楽天に出資した際の株式取得単価が1株1145円(※楽天が公表した第三者割当増資の募集価額)とすると、その半値である572.5円を時価が下回れば、減損損失の計上を余儀なくされる。減損の額は出資額の半分に当たる750億円に上る。こうした巨額減損リスクに晒されているのだから、日本郵政が楽天に出資したメリットが一つぐらいあってもよさそうなものだ。しかし、現時点で希望が持てそうな協業案件は見られない。両社の提携に暗雲が垂れ込めているのだ。

その最大の要因が、提携の柱である物流事業での協業だ。これまで楽天は、EC『楽天市場』の物流網を自社で構築しようと、8つの物流センターを建設してきた。だが、同センターの運営事業は収益性でも将来性でも行き詰まっていた。楽天は物流網の構築計画を撤回し、日本郵政に下駄を預けることにした。こうして設立されたのが『JP楽天ロジスティクス』(※株主構成は日本郵政グループで物流を担う日本郵便50.1%、楽天49.9%)だ。同社は、楽天の“ECの物量”と“自前の物流センター”に、日本郵政のリソースを掛け合わせて競争力のある物流代行サービスを生み出そうとしたが、その構想は絵に描いた餅に終わりそうだ。ビジネスモデルからすれば、楽天市場の出店者の大部分がJP楽天ロジスティクスによる物流代行サービスを使うようにならなければ、収益化は難しい。だが、「現状では同社の物流代行サービスの利用者は、出店者の2割以下にとどまる」(同社に詳しい物流企業幹部)とみられる。本来、JP楽天ロジスティクスの設立を機に、思い切った投資と価格改定を行なって出店者の利用率を高める必要があったが、現状は低水準のままなのだ。日本郵政側にも問題がある。『日本郵便』は宅配の配送を8割以上外部委託している為、宅配の知見が蓄積し難い。況して、物流センターを運営するノウハウはなく、楽天出身の社員に任せざるを得ない。結果的に、日本郵便はJP楽天ロジスティクスの主導権を楽天に握られている。「楽天本体との連絡窓口は楽天出身のJP楽天ロジスティクス社員が行なっており、日本郵便はきちんと関与できていない」(同)。子会社の事業をグリップできず、巨額損失を出したトール買収の失敗に酷似した構図だ。楽天の資本提携のもう一つの柱、携帯電話事業(※『楽天モバイル』事業)での協業も上手くいっているとは言い難い。楽天の株価下落の主因となっている楽天モバイルの収益改善は、減損リスクに直面している日本郵政の切なる願いだ。しかし、楽天モバイルに追い風を吹かせられるほど貢献できていないのも事実なのだ。というのも、楽天モバイルの申し込み受け付けは、ほんの一部の郵便局でしか行なわれていない。郵便局には大型の単独マネジメント局(※単マネ)と、小規模なエリアマネジメント局(※エリマネ)があるが、楽天モバイルの申し込みブースは単マネ281局、エリマネ6局にしかない。申し込み受け付け実施率は単マネで全体の23%、エリマネは0.03%しかない。実は、前述のJP楽天ロジスティクスの事業にも、エリマネは殆ど関わっていない。日本郵便関係者は、「楽天との協業において、エリマネは蚊帳の外だ。日本郵政のリソースを上手く投入できておらず、中途半端だ」と話す。日本郵政グループの社長がトップダウンで決断した巨額投資の失敗が繰り返されるのか。そうなれば、日本郵政は“過去の教訓を生かせない組織”の烙印を押されてしまう。経営へのダメージは、750億円の減損だけでは済まされない。


キャプチャ  2022年11月5日号掲載

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【京阪神・令和の三都物語】(18) 住友と三菱は万博出展も三井はスルー…三大財閥の“序列”と“掟”

大阪・関西万博には、住友と三菱の二大名門財閥がパビリオンを出展する。出展を決めたのはグループ企業の社長会、住友『白水会』と三菱『金曜会』だ。万博から財閥の掟を紐解こう。

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「アフリカを攻めたい。アフリカの専門家を貸してくれ」――。大阪・関西万博の誘致活動が佳境を迎えていた時のことだ。『関西経済連合会』会長で『住友電気工業』の会長でもある松本正義氏から、『住友商事』の中村邦晴会長にこんな打診があった。松本会長は、2017年3月に発足した万博誘致委員会の会長代行を務めていた。打診を受けた住友商事はアフリカに精通する社員を探し出し、誘致委員会に出向させた。更に、松本会長からの要望は続いた。「住友商事はパリに事務所があるだろう。1室貸してほしい」。住友商事のパリ本社の一角は誘致委員会の事務所になった。「万博の誘致には、白水会は関与していない。松本氏と私の個人的な繋がりだ」と中村会長は説明するものの、開催が決まった後は白水会で万博の寄付金100億円の拠出を決める等、住友の「礎の地」(中村会長)である大阪の国家イベントの盛り上げに総力を挙げて取り組んでいる。万博には住友と三菱の二大財閥がパビリオンを出展する。出展を決めたのは、住友は白水会、三菱は金曜会という社長会だ。住友グループで参加する19社は全て白水会に所属。出展の実動部隊となる委員会の事務局に社員を送り込んでいるのは、『住友化学』・『三井住友銀行』・住友商事・住友電工・『NEC』の5社だ。万博への寄付金100億円やパビリオンの建設費は19社で負担するが、額は平等ではない。住友は病院等の福利厚生施設をグループで保有しているが、管理費用の負担率は元々、企業の資本金や売上高等で決まっているという。今回もその比率に即して、寄付金やパビリオン建設費の負担が決まっているそうだ。一方、三菱は金曜会に参加する25社に加え、『ローソン』等金曜会に所属していないグループ企業6社も加わった。「三菱グループ内に呼び掛け、参加を募った」(委員会事務局)。参加は勿論、パビリオン建設費の負担と引き換えだ。とはいえ、委員会の事務局を構成するのは、金曜会“御三家”の『三菱重工業』・『三菱UFJ銀行』・『三菱商事』の3社のメンバーだけ。公式資料に記載される3社の並びも、御三家が先頭で、金曜会参加企業、非参加企業の順と、明確な序列が見て取れる(※左画像)。また、出展を見送った三井グループの社長会『二木会』の広報担当者によれば、「二木会で万博の出展が議論された記録はない」。2005年の『愛・地球博』のパビリオン名は『三井・東芝館』で、『東芝』が果たした役割は大きかった。しかし今、東芝は経営の混乱が続いており、万博の出展どころではなかったのかもしれない。


キャプチャ  2022年10月22日号掲載

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【東芝はどこへ】(15) 事業の成長性通信簿④…リテール&プリンティング

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POS(※販売時点情報管理)レジ市場において、『東芝テック』のシェアは群を抜いている。日本でのシェアは約5割。海外でも2012年に『IBM』の事業を譲り受け、世界トップに躍り出た。POSレジは日々進化を遂げている。足元で力を入れているのが、無人決済店舗(※右画像)だ。高輪ゲートウェイ駅等13ヵ所に導入されており、全国展開も開始した。カメラによって客を捕捉し、端末で決済するとゲートが開き、外に出られる。人手不足に悩む流通・小売業界の需要は小さくないだろう。データを活用したビジネスにも注力している。POSで蓄積したデータを分析し、小売企業等に提供する。島田太郎社長一推しの“スマートレシート”も組み合わせ、企業と個人双方のデータを活用しようと目論んでいるわけだ。一方、問題を抱えているのが複合機のビジネス。東芝テックはオフィス需要に特化しているが、ペーパーレス化や在宅勤務の増加で苦戦している。抑も車谷暢昭社長時代には、撤退候補とされていた事業。2022年3月期は黒字に転換したものの、この事業の行く末がリテール&プリンティング事業の将来を左右すると言えそうだ。


キャプチャ  2022年8月27日号掲載

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【LEADERS・経営者に聞く】(143) 食品ロス削減へ“一意専心”――関藤竜也氏(『クラダシ』社長)

新興企業の『クラダシ』は、賞味期限間近や規格外の食品等を安価な価格で販売する通販サイトを運営し、利用者は46万人に上る。食品ロスの削減を目指して起業した関藤竜也社長に聞いた。 (聞き手/編集委員 二階堂祥生)



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日本の食品ロスは年間約522万トン(※2020年度)。1人当たり1日約113g、茶碗1杯分のご飯が捨てられている計算になる。「食品の大量廃棄が重大な社会問題になる。危機感を持ったのは、商社に入社し、1998年から2000年にかけて中国で勤務していた時です。本来は食べられるのに、形が揃っていない等の理由で、食品がどんどん捨てられていました。『廃棄される食品を売らせてほしい』。会社にかけあっても全く相手にされません。同じ問題は日本でも起きていて、『いつかはビジネスで解決しよう』と決意しました。同じ時期に国連が、貧困や教育等8分野で2015年末までに国際社会が達成すべき目標を採択しました。現在のSDGs(※持続可能な開発目標)の前身です。ビジネスにはタイミングが重要で、2015年には食品ロス問題への社会的な関心が高まっているに違いないと思い、起業の目標をその前年の2014年に定めました。未来から今を眺め、為すべきことを考える“バックキャスティング思考”です。2001年に商社を辞め、コンサルタントとして独立。食品流通の現場を調べ、起業に向けて貯金に励みました。同時に、どうすれば収益を上げながら食品ロス問題を解決できるか、徹底して考えました。ビジネスモデル作りに力を入れたのは、学生時代の阪神・淡路大震災での経験があります。大阪府豊中市に住んでいて、被災者を助けようとバックパックに救援物資を詰め込んで現地に向かったのですが、結局、殆ど何もできなかった。一人の力には限界があり、社会を変えるには多くの人を巻き込まなければいけないと痛感したのです。それには、自分の為に取った行動が、結果として社会貢献に繋がる仕組みが欠かせません」。

「抑も、何故食品ロスが起きるのか。メーカーは通常、商品が返品されたり、包装に傷が付く等で販売できなくなったりしても、いわゆるディスカウント店に売ることを嫌います。大幅に値引きされるとブランドイメージが傷付きかねない為で、大抵は廃棄してしまう。起業には、このハードルを乗り越える必要がありました」。計画通り、2014年7月に会社を設立。翌年2月に通販サイト『Kuradashi』の運営を始めた。「クラダシは、捨てられる可能性のある食品をメーカーから買い取り、インターネットを通じてお得に販売しています。通常の半額程度が多く、中には9割超安い商品もあります。売り上げの一部を社会貢献活動に生かす仕組みがポイントで、利用者は買い物の際、動物愛護や環境保護団体等、支援先を選ぶことができます。寄付を売り上げに連動させたのは、利用者がいる限りは支援を届けられるからで、利益連動だと赤字の時にそれができなくなってしまう。この仕組みであれば、企業は廃棄コストを減らせるだけでなく、商品を安く売ってもブランドイメージを守れ、利用者にとっては通常より賞味期限が短いとはいえ、安値で買い物して社会貢献ができる。まさに“三方良し”です。新品を売り買いする一次流通、中古品の二次流通に対し、余った食品を買い取って販売することを“1.5次流通”と呼んでいます。社名やサイト名は、“お蔵入りになる食品に新たな価値をつけて世の中に出す”から付けました。サイトでは商品を纏まった数量で販売しているので、友人らと共同購入する方が多いようです。扱う商品は売れ残らないように値引き率を上げ、全て売り切ります。会社設立からサービス開始までの半年程は、苦労の連続でした。食品メーカーに取引を持ちかけても最初のうちはことごとく断られ、“100戦100敗”です。尤も、覚悟の上だったので諦めることは全くなく、少しずつ賛同企業を増やしていきました。2期目からは黒字です。これまで食品ロス問題に本格的に取り組む動きがなかったのは、食品の再流通が難しいことも理由の一つです。消費・賞味期限があり、アパレル等に比べて単価が安いので、輸送等のコスト負担が重くなる。ビジネスとしては未開拓の大きな市場が残っていると見ていました。40代での会社設立でしたが、遅いとは思わなかった。祖父が50歳で出版社を起業していて、自分は未だひよっこだと感じていたぐらいです」。2019年10月、食品ロス削減推進法が施行された。クラダシは同年から、大学生・大学院生を対象にした社会貢献型のインターンシップを実施している。

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【農協と郵政・昭和型組織の末路】(13) ゆうちょ銀行社長にメガバンク役員案浮上も…日本郵政トップ人事は難航

『日本郵政グループ』のトップ人事が停滞している。『日本郵政』の増田寛也社長と『ゆうちょ銀行』の池田憲人社長に交代論が出ているが、候補者の選定に時間を要しているのだ。

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元総務大臣の増田寛也氏は、『かんぽ生命保険』の不適切販売が発覚した直後、経営の経験がほぼないにも拘わらず、日本郵政の社長に抜擢された。増田氏は就任当初、記者会見で安定した答弁能力を見せたことから、「優れた経営者だ」(全国郵便局長会幹部)等と称賛されたこともあった。ところが、日本郵政がダメージコントロールを終え、事業の立て直しのフェーズに入った今、「増田氏は結局、役人であり学者。事業のことはわからない」(関東地方の郵便局長)と、当初とは全く逆の評価が定着しつつある。増田氏が重用する飯塚厚副社長が財務省出身者で、やはり官僚上がりということもあって、郵便局長達からは「日本郵政のツートップは現場の実態を知らない」という声が多く出ているのだ。実際、日本郵政の経営陣と郵便局の現場は信頼関係が築けておらず、保険の営業再開による事業の正常化への道筋は見通せていない。増田氏も手を拱いていたわけではない。『楽天グループ』と物流事業等で協業する為に資本提携に踏み切る等、手は打っていた。但し皮肉にも、この資本提携こそ業績を圧迫する元凶となりつつある。この提携に対する厳しい評価が定まりつつあることから、「後進に道を譲り、事業の再建は次期社長に任せるべきだ」という意見がグループ内で高まっているのだ。「日本郵政グループにとっての最大の不幸は、トップ人事を差配してきた菅義偉氏が首相を退任したことだ。若し首相を続けていれば、既に増田氏の後任も決まっていただろう」。日本郵便元役員は溜め息交じりにこう語る。

日本郵政の社長ポストには財界の大物が就くことが多かったが、今では“リスキーな政治銘柄”と見做され、大企業の経営者から敬遠されている。初代社長の西川善文氏(※『三井住友銀行』元頭取)が民主党政権の誕生後に辞任に追い込まれたように、政治に翻弄されてきた。こうした経緯もあって、増田氏の後任の人選は難航している。社長ポストを狙う有能な経営者も、リーダーシップを発揮して人事を根回しする政治家も見当たらない。そうした中で唯一、具体的な人選が始まっているのが、ゆうちょ銀行の池田憲人社長の後継者だ。池田氏は地方銀行の盟主『横浜銀行』の出身で、ゆうちょ銀行と地銀との協業を進めることを期待されていた。だが、これまでのところ、本格的な“地銀からの業務受託”の実現には至っていない。「池田氏の力量ではゆうちょ銀行は御せず、地銀との提携は進まない」(金融筋)という諦めムードが広がった。地銀との提携の深化や収益力の強化に向けた妙案として浮上したのが、『三菱UFJ銀行』から幹部を招く案だった。日本郵政は嘗て三井住友銀行から西川氏を、『みずほ銀行』から長門正貢氏を社長として迎えたが、両者とも事実上の引責辞任に追い込まれた。そうした“トラウマ”があるので、両行からのトップ受け入れは考え難い。そこで、最後に残されたメガバンクの一角である三菱UFJ銀行にお鉢が回ってきたというわけだ。同行の中で、次期ゆうちょ銀行社長候補として浮上したのが、副頭取の林尚見氏である。林氏は、同行で1期下の後輩に当たる半沢淳一頭取とトップの椅子を争った実力者だ。とはいえ、「ゆうちょ銀行を動かす為には1人だけ送り込んでも無理がある」(金融関係者)。その為、同行から林氏を支えるチームを送り込むべく、人選等が議論されたと言われている。結果的には、昨年春のタイミングでの林新社長の誕生は見送られた。ゆうちょ銀行を含め、日本郵政グループの社長ポストは「役員報酬の割にリスクが高い」(前出の日本郵便元役員)と言われている。その中で、数少ない有力候補者である林氏が火中の栗を拾うのか否かが来春に向けての焦点だ。増田氏は日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の指名委員を務めている。事業の立て直しのフェーズに相応しい次期社長を選定できるかが、経営者としての最終的な評価を決める大仕事になると言えそうだ。


キャプチャ  2022年11月5日号掲載

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【京阪神・令和の三都物語】(17) ご褒美はミャクミャクの金ピカバッジ!? 万博建設費、苦難の寄付集め

“1970年万博”の夢よ、もう一度――。2025年大阪・関西万博への期待が高まるが、会場の建設費が膨れ上がる。在阪企業に集金ノルマが課されるが、「見返りはない」と突き放す声もある。

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1970年に大阪府吹田市の千里丘陵で開催された万国博覧会は、1964年開催の東京オリンピックに並ぶ、日本の高度経済成長期を象徴する国家的イベントだった。2025年、その万博が再び大阪にやって来る。但し、先立つものはカネ。会場建設費は当初、1250億円とされ、国、大阪府・市、民間で3等分し、417億円ずつ負担することとした。民間分は、大阪や関西の経済団体が各企業から寄付を募った。地元財界の関係者によると、2018年の大阪での開催決定を受けて、『関西経済連合会(関経連)』が主導して寄付金集めが行なわれた。関経連の松本正義会長(※『住友電気工業』会長)は2019年11月の記者会見で、寄付金について「200億円の目処は付いた」と述べていた。ところが、会場建設費は2020年末、1.5倍の1850億円に上昇。民間の目標額も617億円に膨らんだ。「万博協会の石毛さんが、これ、直々に持ってきてくれはったんですわ」。ある大阪財界幹部が手にするのは、万博の公式キャラクター『ミャクミャク』が描かれた、縦3㎝、横2㎝程の大きさの四角いピンバッジ。2つあるが、うち1つは一回り大きく、重い。その縁は金色に加工されて輝いている。“石毛さん”とは、経済産業省出身で2025年日本国際博覧会協会(※万博協会)ナンバー2の石毛博行事務総長のこと。金縁は寄付額が一定以上の場合に配布されると、大阪の財界人の間で噂されており、その額は5000万円とか1億円等と言われている。勿論、財界人を相手に金ピカの“ご褒美”が通じるわけもない。目標の617億円に対し、今年3月末までに集まった金額は376億円。関係者によると、寄付金は一括でも、3~5年間の“分割払い”でも可能とされるが、現状はどうなっているのか。

万博協会のホームページでは、今年6月末時点までに会場建設費等を寄付した企業、団体、個人の名称を公表している。そこからピックアップした主な企業が左上表だ。目立つのは、やはり大阪を拠点としてきた住友グループ。中核企業でつくる社長同士の親睦組織『白水会』は2019年、100億円を寄付することを決定した。なお、コロナ禍の前には、関経連や『大阪商工会議所』等が纏めた関西の主要企業80社の寄付要請リストの存在が地元メディアに報じられた。これによると、関経連会長企業の住友電工が20億円、『関西電力』が15億円、関経連副会長企業や『大阪ガス』、『りそな銀行』には軒並み10億円の負担を求めるとされた。但し、関電は2019年、原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から金品を受け取っていた問題で、首脳が引責辞任。その結果だろうか、万博協会の一覧には今なお関電の名前がなく、『きんでん』等グループ会社が名を連ねる。尤も、リストに記載されるのは公表に同意したケースのみ。密かに寄付している可能性もあるが、関電の広報担当者は「現在までに寄付したかどうかは言及できないが、業績に応じて応分の負担をしていく」としている。現在、関経連副会長と大商副会頭を出している私鉄の雄『近鉄グループホールディングス』もまた、近畿日本鉄道名義でもリストに名前がない。近鉄GHDは関電のような不祥事はないが、コロナ禍で業績が大幅に悪化。2021年3月期は621億円の営業赤字で、2022年3月期は漸く営業黒字化したが、38億円に過ぎない。同期の最終利益は427億円に達したが、これは『都ホテル』ブランド等のホテル関連資産の売却によるもので、まさに経営立て直しの最中だ。同社の広報担当者は、「寄付は行なう予定だが、時期等を調整している」と回答した。大商会頭企業の『サントリーホールディングス』については、「大阪の企業の中でも別格。10億円を優に上回る寄付をしているのではないか」と大阪財界で囁かれている。副会頭企業のりそな銀行、『塩野義製薬』、『大和ハウス工業』といった巨大企業もリストに社名があり、一定額を寄付したとみられる。但し、大商は関経連と異なり、中堅企業も副会頭を出している。これらの企業もまた、規模に見合った寄付をしているとみられる。但し、ここ20年、大阪経済の地盤沈下は深刻だ。だからこそ、前述のようにコロナ禍前から寄付金集めに苦しんだ。また、万博協会の会長は関経連ではなく、『日本経団連』の会長が務めるのが慣例である。その為、大阪の財界人の間では「ナショナルイベントなのに、何故東京の会社がもっと寄付金を出さないのか」との不満が鬱積している。経団連の現会長は、白水会構成企業である『住友化学』の十倉雅和会長。昨年6月末時点と比べると、一覧表では、大阪に特別に縁があるとは言えない大企業の名前が増えた。大阪財界の願いが少しずつ、東京に届き始めたのかもしれない。そこで更に、白水会が100億円から寄付を上乗せするのかといえば、白水会首脳達は否定する。ある首脳は、「見返りもないし、これ以上はもう無理」と話した。大阪財界では「国がより多くを負担すべきだ」との声も出ている。ある関経連関係者は「関電も近鉄GHDも既に支払いを約束してくれている。寄付集めは難航していない」と胸を張るが、そんな強気の観測ばかりでは勿論ない。財界幹部の間では寧ろ反対の懸念が生じている。会場建設費は当初計画から1.5倍値上がりしたが、物価上昇で建設コストは更に上昇する恐れがある。にも拘わらず、寄付した企業側から、前述の通り分割で支払うと約束した金額について、「後になって『減らしてくれ』と言われるのと違うやろか」(財界幹部)というわけだ。万博協会の最新の寄付リストには、大企業だけでなく、個人名や、大阪府内の個人経営とみられる飲食店、算盤教室の名前も並ぶ。個人単位の小口の寄付が集まることは、機運醸成という点では寧ろ望ましい動きとも言える。とはいえ、大企業や経済界が資金集めで「もう無理」と悲鳴を上げる状況が、果たして万博の成功に繋がるのだろうか。


キャプチャ  2022年10月22日号掲載

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【東芝はどこへ】(14) 事業の成長性通信簿③…ビルソリューション

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『東芝エレベータ』、照明の『東芝ライテック』、空調の『東芝キヤリア』の3社で構成されるのがビルソリューションだ。この3社は、会社分割案が出た際に非注力分野とされ、売却対象とされた経緯がある。分割案で注力分野となった“カーボンニュートラル”や“インフラ強靭化”との親和性が低いと判断したからだ。ただ、どちらの事業も成長の余地はある。エレベーターや照明は、ビルが増えれば決まって必要になる。国内のみならず、海外での需要も期待できる。しかも、空調は近年、注目を集めている分野だ。温暖化対策として、海外を中心にヒートポンプ式エアコンへの乗り換えが進んでいる。特に、ボイラーに対する規制が厳しくなっている欧州では引き合いが強い。島田太郎社長は、これらのビジネスを再び中核事業に戻した。というのも個人利用が多く、中核ビジネスに位置付ける“データ”を収集し易いとみるからだ。しかし、空調に関しては、8月にアメリカの合弁先『キヤリア』に売却した。これら3事業は元々、連携強化を目的にインフラシステムから切り出された。その1つを失ってしまった影響は小さくない。


キャプチャ  2022年8月27日号掲載

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【LEADERS・経営者に聞く】(142) 真の“寄り添う”へ、率先垂範――白川儀一氏(『損害保険ジャパン』社長)

『損害保険ジャパン』が、20代の社員を管理職に登用する等、人事制度を大胆に見直している。企業内大学も拡充、リスキリング(※学び直し)を後押しする。白川儀一社長に聞いた。 (聞き手/編集委員 二階堂祥生)



20230519 06
旧『安田火災海上保険』に入社した。「損保業界を志望したのは、人が何か困っている時、手を差し伸べるような仕事をしたいと考えたからです。入社5年目ぐらいで船舶保険の営業担当だった頃、忘れられない経験をしました。景気が良くない時で、船を1隻所有していたある家族経営の船会社から、『保険金額を減らして保険料を安くしたい』との申し出がありました。その通りに対応したところ、数ヵ月後に船が沈没してしまった。保険金では船のローンの残りをカバーできず、社長は自己破産したのです。社長は私の胸ぐらを掴み、『何であの時、俺を殴ってでも100%の保険を付けさせなかったんだ!』と号泣された。勿論、保険料を引き下げたいと、自分から言い出したことをわかっていてです。頭を下げて帰るしかありませんでした。お客様に寄り添うことが大事だと言われ、私はそのつもりで社長の要望に応えた。でも、保険は万が一の備えです。本来やるべきは、その重要性をきちんと説明し、納得してもらうことでした。保険会社として、本当の意味で“寄り添う”とはどういうことか。仕事への向き合い方が大きく変わりました」。入社10年で退職。2年後に再入社した。「小学生の時から大学まで軟式テニスに打ち込み、世界大会への出場経験もあります。卒業後は普通に就職したわけですが、ある時、テニスの関係者から復帰を打診されました。仕事は面白く、生活も安定している。悩んだ末、もう一度コートで勝負をしようと決断しました」。

「実業団チームに入ったものの、残念ながら足の怪我で続けられなくなった。再就職にあたり、別の会社に入るつもりだったのですが、安田火災のある方に『戻ってこい』と声をかけてもらいました。正直、恥ずかしかったのですが、非常にありがたかったし、会社の度量の大きさも感じました。『一から出直そう』と思って再入社しました。昨年4月、51歳で社長に就任しました。前社長から後任を告げられた時は驚きました。ただ、業界を取り巻く環境の変化が厳しくなる中、会社の改革は避けられず、それにはトップの決断が必要です。自分の経験が生きるのでは、と決意を固めました」。若手の登用の他、管理職候補として見込まれている女性に指導役(※メンター)をつける制度を導入している。「年齢、性別を問わず働き易い環境を作るのが目標の一つで、特にジェンダーギャップについては大きな課題意識を持っています。管理職ポストに就いているのは男性が圧倒的に多い。会社都合による転勤を通じて様々な経験を積んだ結果として、社員を昇進させる仕組みが前提になっています。でも、人口が減る中で、いつまでもこんなやり方が通用する筈はない。過去には上手くいっても、その延長線上に未来はありません。現実的には、20代や女性の管理職が直ぐに大勢、登場するわけではないでしょう。とはいえ、一歩を踏み出さないと、前例踏襲では何も変わらない。柔軟な働き方ができる仕組みも含め、誰もが挑戦できる環境作りが重要です。こうした取り組みは制度を作って終わりではなく、その結果、会社にどのようなメリットが齎されたかが大事です。説明責任は私にあり、相応の覚悟を持って進めていきます。昨年10月、マーケティング等をオンラインで学べる社員向けの大学に、専門性の高いコースを新設しました。保険知識を詰め込むのではなく、今の時代に必要なスキルやノウハウを身につけてもらう為です。人材育成に本気で力を入れるというメッセージでもあります。入社4年目までの若手が対象の育成プログラムも始めています。幼い頃からデジタルに親しんでいて、その感性や経験をイノベーションに繋げてほしい。潜在能力に期待しています。高いスキルを持つ人材が多くなれば、転職者が増えるかもしれません。でも、今や会社に縛られる時代ではない。転職した人と新たな協業が生まれる等、オープンな形での仕事が増えていくのでは、と考えています」。事故調査や相手との交渉、保険金の支払いを担当する保険金サービス部門の改革を進めている。「損害保険会社にとって、事故対応は何より大事です。担当者は時につらい経験もしますが、営業等に比べてどちらかと言えば日が当たり難い存在で、何とかしたいと思っていました。保険金サービス部門は日々お客様に接していて、気付いた点を社内にフィードバックしてもらえば、より良い商品作りやサービス等に生かせる筈です」。

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