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【木曜ニュースX】(391) 何故か創価学会がひた隠す侍ジャパン・栗山英樹監督の母校訪問

20230914 02
今年は春に“ペッパーミル”(※WBC)、夏は“エンジョイ・ベースボール”(※慶應高校)、そしてこの秋には“アレ”(※阪神タイガース)といった、野球に関する言葉が何かと話題になっている。「3つとも、年末の新語・流行語大賞にノミネートされるのは間違いないでしょうね。昨年もヤクルトの“村神様”が大賞だったように、あの賞は野球枠だらけですから」(週刊誌デスク)。そんなWBCで侍ジャパンを世界一に導いたのが、誰あろう栗山英樹前監督である。現役時代やコーチとしての実績はなくとも、『北海道日本ハムファイターズ』で就任1年目にリーグ優勝を飾り、監督退任後は『栗山ノート』なる自著を出版、WBC後は続編も書き下ろした。今や“時の人”であり、7月には母校で『創価学会』直属の創価高校を訪問、特別授業まで行なっている。「ところが、創価高校が甲子園予選を勝てば“創価が快勝”、負けても“創価が堂々のベスト8”と、連日一面で伝える創価学会機関紙の聖教新聞が、栗山氏の母校訪問は一行も報じなかった。しかも、訪問当日は学校にとっても、創立者の池田大作氏に関わる特別の記念日。そのイベントについては翌日の一面トップを占めていましたがね(笑)」(創価学会ウォッチャー)。栗山氏は創価高校卒業後、国立の東京学芸大学に進学し、『東京ヤクルトスワローズ』に入団。どんな学校であれ、母校は母校に違いない。それを亡き者のようにしているのは、「ひとえに創価学会特有の陰湿で被害妄想な体質に他なりません。栗山氏の訪問は何ら隠すことなどない出来事ですけれど、爽やか過ぎる時の人が、学会とズブズブというイメージを避けたんじゃないですか。しかし、今年は衆議院解散・総選挙も近いと言われ、『監督が来た!』と選挙に最大限利用しようとする思惑も垣間見える為、そこを国民は認識してほしいと思います」(同)。栗山ノートには、改めて母校の黒歴史も記録されたかもしれない。


キャプチャ  2023年10月号掲載
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【部活動が危ない!】第2部(下) 都市部でもカネが課題



20230904 05
日本の学校部活動は長年、“教育の一環”の名の下に、教員のボランティア精神によって支えられてきた。文部科学省が進める民間クラブ等への地域移行では、商業主義の枠組みと無縁ではいられない。人的資源や財政面で優位に立つ都市部でも課題が残る。休日に部活を指導する教員には部活動手当が支払われているが、その額は十分とは言えず、不満の声も多かった。休日は部活指導から解放され、外部指導員に子供達を預けられるのなら、心身共に充実した週末を過ごすことができるとの期待が高まる。だが、「そう上手くはいかない」との声もある。既に部活の外部指導員制度を取り入れている自治体もあるが、民間事業者からは「報酬が低過ぎる」という声が聞かれる。部活動指導員は殆どがボランティアで運営されており、有償であっても時給換算で1000~2000円台が多い。例えば大阪市では、時給2510円に設定されており、月の指導上限は60時間以内と決められている。単純計算で月給は多くても約15万円だ。市内でトレーニング施設を運営する男性は、「指導するとなると、生徒や保護者に対してそれなりの責任もついてくることになる。それなのに月給15万円はどうか。このままでは、地域移行ありきの“やり甲斐搾取”になるのではないか」と憤る。東京オリンピック・パラリンピックのボランティアでは、SNSを中心に“やり甲斐搾取”との批判が寄せられた。地域移行では、指導の担い手が教員から外部指導者に変わっただけで、指導者にボランティア精神を強いる構図は同様だと男性はみる。抑も、保護者側が部活に割いてもいいと考える金額と、民間事業者が運営に想定する金額には大きな差がある。その格差は2.6倍――。首都圏を中心に学習塾や予備校等を展開する『城南進学研究社』(※神奈川県川崎市)が昨年度に実施したアンケートで明らかになった。

中高生と保護者には、現在の部活動負担額(※遠征費等を除く)と、地域移行に伴い妥当な負担額を聞いた。その結果、前者は月額1279円、後者は3659円だった。保護者が地域移行により、約3倍の負担増を想定していることが判明した。ところが、スクール等を運営する民間企業や団体を対象とした調査になると、数字は大きく跳ね上がった。部員20人を前提とし、部活の受け皿となる際に想定される会費について尋ねたところ、週2回の活動では平均月額9500円で、保護者が“妥当”とする金額との格差は2.6倍になった。平日を含めた週5回の活動では、平均月額が2万1250円に達した。自由記述では、「現状の人員から受け皿となる余力がない」(プロスポーツチーム)等と人材難を訴える声も上がった。文科省が“次のステップ”と位置付ける平日の地域移行もなされると、格差は5.8倍に跳ね上がる。同社の担当者は、「期間限定ならば“教育の為”で無償実施もあり得るかもしれないが、そうでなければ民間はやっていけないだろう」と話す。プロコーチではなく、学生指導員や教員の兼業によって人件費を圧縮し、行政からの補助金等を想定した上で、部員を20人から50人規模とすることで漸く、保護者側が想定する妥当な負担額に近付く試算を得た。部活を研究するびわこ成蹊スポーツ大学の黒澤寛己教授(※スポーツ教育学)は、「教員の働き方改革に伴って、待ったなしでプランが動き始めてしまった。財源が確保されていない状態で地域移行しようとしており、見切り発車した感が否めない。これまで教員が負担していたものを民間に押しつけようとしても、上手くいくかは疑問だ」と指摘する。財政が豊かな都市部の自治体の中には、地域移行をプラスに捉え、新たな地域社会像の構築に取り組むところもある。「3対2で、こっちの勝ちです」「はい、下がって下さい」。東京都渋谷区の合同クラブ、ボッチャ部の活動で笑顔を浮かべながら審判役を務めるのは、渋谷区立鉢山中学校の特別支援学級に通う三浦夕依さん(14、右下画像の中央左、撮影/小林悠太)だ。一緒にプレーした幅広い世代のコーチらスタッフは、温和な表情で“審判”の指示に従う。試合形式の練習を終えると、全員で拍手を送り合った。豊富な財源を生かして、多様で新しい部活像を構築しようとしているのが、商業ビルが多く並び、文化の発信地でもある渋谷区だ。年齢を問わない合同クラブを運営する一般社団法人『渋谷ユナイテッド』は昨秋、区立中学校の生徒が参加できるダンス部やeスポーツ部等を創部した。渋谷ユナイテッドは区が昨年設立した一般社団法人で、区から部活支援の業務を委託され、事業を展開している。区の担当者によると、運営費の99.9%は公費で、区は今年度の予算で9800万円を充てている。ユニークな実施種目は、生徒のアンケートを踏まえて決めた。専門指導員は地域のプロチームや企業等から派遣され、生徒は中学校の既存の部活との掛け持ちも可能だ。長谷部健区長(50)は「部活の地域移行に大賛成。(都会でも)少子化になっている上、約4割の子供は私立中学校に進む為、公立では学校単位でチームを組み難い。解決方法として学校の枠を超えないといけない」と説く。

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【部活動が危ない!】第2部(中) 地域移行、受け皿模索



20230904 04
学校部活動の地域移行では、受け皿となる実施主体として、総合型地域スポーツクラブやスポーツ少年団、民間事業者やフィットネスクラブ等が想定されている。だが、受け皿の体制や人手確保等を巡っては、先進自治体でも試行錯誤が続く。本紙取材班に“本校における部活クライシス”と題する1通のメールが届いた。小学生の子供を持つ三重県伊賀市の保護者からで、「今後の部活動の存続が危ぶまれている」等と悲痛な言葉が綴られていた。過疎化が進む山間の地域で、人気バレーボール漫画『ハイキュー!!』に影響を受けた小学6年生達が楽しげにボールを追いかけていた。「中学生になったらチームとして活動したいね」。だが、その夢は“学校か地域か”の選択の中で宙に浮いている。伊賀流の忍者発祥の地として知られる伊賀市は、平成の大合併により、6市町村が合併して誕生した。中でも約2000人が暮らす旧島ケ原村は少子高齢化が著しく、人口減少率はこの25年で25%を超え、65歳以上の高齢化率は50%に迫る。昨年には国から過疎地域に指定された。島ケ原地区の小中学校は其々1校しかなく、同じ敷地内にあってグラウンドを共有している。来年、中学生になる小学6年生は14人だ。漫画に影響を受けた児童を中心に、男女9人が中学校で「バレーをしたい」と希望した。だが、島ケ原中の女子バレー部は2年前に部員がゼロとなり、休部状態になっている。保護者から復活を求める声が毎年のように上がっているが、同中学の全校生徒は32人。部活を担当できる教員らは6人と限られる。村松篤盛教頭は、「学校の適正規模で部活動を設けている」と説明する。

中学には現在、野球部、男女卓球部、女子テニス部がある。野球部も部員不足で、他校との合同チームを組み、近い将来の廃部危機が迫っている。仮に野球部がなくなれば、男子は卓球部だけとなってしまう。地域住民の有志による陸上クラブがあるが、選択肢は限られる。市内には中学生を対象とした民間のバレーボールチームがあるものの、練習場所は島ケ原地区から約10㎞離れ、公共交通機関での移動は困難で車では30分程かかり、保護者の送迎は欠かせない。6年生の森下姫凪さん(11)は、「部活でなくてもいいので、皆でバレーがしたいんです」と目を輝かせる。母の有希さん(39)は、「平日の1時間でもいいので、子供のやりたいことをさせてあげたい。“改革集中期間”はふわっとしており、娘達の学年は最も影響を受けるのではないか…」と表情を曇らせる。スポーツ庁の有識者会議は先月、来年度からの3年間を“改革集中期間”と銘打ち、公立中の休日の部活を積極的に地域移行させる提言を室伏広治長官に提出した。現在の小学6年生は中学生活を送る3年間が、この集中期間にぴたりと当てはまる。地域移行に向け、試行錯誤を続ける中で3年間が終わってしまう危惧もある。PTA役員を中心に、中学に対してバレー部の復活を望む声を伝えてきた。学校側からは当初、地域移行の流れに乗る形で、「学校を提供するので、保護者がチームを運営するのも一つの手段だ」とも勧められた。だが、地域で競技経験のある指導者は見当たらない。最近の学校との話し合いの中では、「学校から比較的近い場所に拠点を設ければ、地域外から指導者も呼べるのでは」との打開策も検討されている。中学生になった子供達が、コートに立てる日は来るのか。ある保護者は、「医療や福祉と同じで、僻地だからと切り捨てられるのではないか。子供達のスポーツをする機会だけは確保してもらいたい」と話した。地域移行に伴う指導者の確保は、自治体共通の悩みの種だ。だが、先駆的な取り組みでは、あの手この手で突破しようとする動きもみられる。名古屋市は市立小学校全262校で部活動を廃止し、運営をスポーツスクール事業会社『リーフラス』に委託している。同社から各校に派遣される指導者で最も多いのが、教員を志望する大学生だ。先月下旬、市立平針南小学校の音楽室では、放課後に児童20人が木琴やアコーディオン等でバーチャル歌手、初音ミクの曲『千本桜』を奏でていた。練習を受け持つ愛知学院大学3年の坂野未果さん(21)は、4月に音楽部の指導員になった。中高時代は吹奏楽部でパーカッションを担当。全国大会の出場経験がある実力派だが、今は“兎に角楽しく”を意識して、練習プランを立てている。

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【部活動が危ない!】第2部(上) 地域移行に議会が“待った”

連載第2部は、国が示す部活の地域移行を巡り、試行錯誤する自治体や教育現場に迫る。



20230904 02
オホーツク海沿岸に着く流氷を訪ね、多くの観光客が足を運ぶ北海道紋別市。今年の冬、港の近くにある市教育委員会の教育長室に職員が決裁を求めて持ち込んだのは、事業の失敗を伝える報告書だった。〈部活動に対する基本的姿勢に大きな隔たりがあり、議会を巻き込む地方政治の問題に発展した〉。堀籠康行教育長(57)は書き直しは求めず、中学校の部活改革が市議会を巻き込む騒動になり、頓挫したことを敢えて記録に残した。報告書は道教委を通じてスポーツ庁に提出された。堀籠氏は本紙取材に対し、「これこそが多くの自治体が直面する課題になるんだとの思いがあった」と力説した。「全国各地域において地域移行の実践研究を実施する」。昨年1月、スポーツ庁と文化庁がこんな謳い文句で事業の公募を始めた時、紋別市教委は率先して名乗りを上げた。事業は、2023年度から公立中学で休日の部活指導を地域の人達に任せていく“地域移行”のモデルを探る為、全国の取り組み事例を集めようというものだ。政府が示す地域移行は、少子化で部活の維持が困難になることに加え、多忙を極める教員の働き方改革が背景にある。市の人口は約2万1000人。過疎化で昨年度に市立中学3校に通う生徒は約400人で10年前の約7割となり、最大規模の紋別中の部活数も6に半減した。道教委の人事畑でキャリアを重ねた堀籠氏にとって、部活改革は2020年1月の就任時から最大のテーマだった。指導で家を空ける顧問教員の妻が自らを“部活未亡人”と揶揄していることも、インターネット上で広まる前から知っていた。教育界で顧問の在校時間の長いことは常識で、教員の出退勤時間がわかるシステムを自らパソコンで分析すると、過労死ラインとされる月80時間残業を度々超えていた。

「北海道でやるなら紋別市が手を挙げます」。モデル事業のスタートが春に迫った昨年初め、古巣の道教委に掛け合って、国が開いた説明会に出席させてもらった。都道府県教委の担当者が対象の為、市町村教委からの参加は堀籠氏一人。発言のチャンスもなかったが、国や道教委に熱意を伝えるには十分だった。市教委は、3つの中学を巡回する“部活動バス”等の改革アイデアを次々と提案。各校にある部の数は減っても、他校にある希望の部活に参加できるように送迎するものだ。道教委は紋別をモデル事業の実施地にうってつけと見ていた。だが、地元では市教委の部活改革に反発が起きていた。紋別中では2020年度、野球部が廃部に。生徒が減り、メンバーが揃わなくなることを見据えた判断だ。市内に小学生チームや高校野球部があるが、紋別中の学区は中学だけに空白ができる形になり、市議会では「子供が成長する機会をこのままなくしてもいいのか」と疑問の声が上がった。30年以上前から地域の茶道教師が指導してきた茶道部も、少子化で消えた。昨年度から、琴やダンスを交えた“地域部活”としてNPO法人に指導を任せた。この活動は文化庁のモデル事業に参加し、市教委は成功例と位置付けていた。教員の働き方改革以前の問題として、特に地方は学校単位で部活が成り立ち難くなっている。改革は不可欠だが、地域移行への理解を得るのは難しく、地元市議は「学校教育から部活を取り出す意義が理解できない」「拙速な地域移行に反対だ」と納得しない。市教委が部活改革に乗り出して以降、市議16人の半数近くが一般質問で疑問を呈し、堀籠氏は「拙速に進めようとは考えていない」等と答弁を重ねた。ただ、“愛校心”や“青春”といった言葉も出る議場の議論に、「“部活は学校でやるもの”というイメージが抜けないのではないか」との懸念を抱いたという。「提案ですが…」。議論が平行線を辿る中、昨年12月、教育を所管する市議会常任委員会で、副委員長が、机を囲む市議7人に生徒や保護者、教員へのアンケートの実施を持ちかけた。当事者の意見を踏まえ、議論を仕切り直そうというのだ。間を置かずに響いた「異議なし」の声は、部活改革の青写真も崩れることを意味した。アンケートの結果が出るまで、モデル事業で目指した地域移行の議論を止めざるを得ないからだ。今年3月、スポーツ庁のホームページに、全国の自治体がモデル事業を終えて提出した報告書がアップされた。地域移行に向け準備を始める自治体の参考資料となるものだ。紋別市の報告書は、一連の改革が躓いたことを全国に示した。堀籠氏は、「この先、紋別と同じ議論が多くの自治体で起きるだろう。地域の説得こそが改革の壁になる」と言う。そして、報告書のアップと前後し、アンケートの結果が明らかになった。

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【高校部活の今】(下) 強豪校、街おこしの核

20230828 06
富士山麓にある体育館で、少年少女達がかけ声と共に拳を突き出し、空手の形や組手を学んでいた。今年4月29・30日に静岡県御殿場市で開かれた講習会には、幼稚園児から中学生までの約500人が全国から参加した(※左画像、撮影/栗山泰輔)。同市では“空手のまちづくり”が進められており、講習会はその一環だ。同市内にある御殿場西高空手道部は全国でも強豪で、『全国高校総体(インターハイ)』では女子団体組手が4連覇中だ。2021年東京五輪の空手イタリア代表チームの合宿地にもなり、同市は五輪レガシーとして、昨年度から高校年代の空手大会を開いている。4月の講習会は、同部OBが全日本強化選手を招いて開き、同部の部員達が練習試合の審判を務めた他、突きのプレッシャーのかけ方やフェイントの方法等を指導した。参加した部員の小川凌平選手(※3年)は、「小学生の動きにヒントを得て、自分の空手に組み込むこともあった」と振り返る。5月の県大会では男子個人と団体で優勝。インターハイは「高校の集大成となる大会」と全国制覇を目指す。秋田県能代市の能代工バスケットボール部は、全国に知られる強豪だった。2021年に統合して能代科学技術となった今も、市は官民一体で“バスケの街”として盛り上げを図る。能代工は全国大会の優勝58回を誇り、日本人初の『全米プロバスケットボール協会(NBA)』プレイヤーとなった田臥勇太選手らを輩出した。能代科技も3年連続のインターハイ出場となる。中心市街地には、能代工や能代科技のユニホームやNBA等のグッズを展示する『能代バスケミュージアム』があり、マンホールの蓋にもバスケットボールがデザインされている。同ミュージアム解説員の小林尚子さん(64)によると、遠征費を補助してくれる市民への恩返しと、誰に見られても恥ずかしくない練習が必要との意味で、能代工時代からバスケ部の練習は一般公開されている。人気アニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』の登場校のモデルとされ、県外からの見学者も増えている。小林さんは、「観光客からも能代科技を応援してくれる声をよく聞く。インターハイも頑張って、明るい話題を能代に持ち帰ってほしい」と期待を込めた。長崎県諫早市では、諫早湾干拓事業をきっかけに整備されたローイング(※ボート)コースを拠点とする大村高(※大村市)漕艇部が躍進している。県や市は合宿の誘致に力を入れ、“ボートの聖地”を目指す。諫早湾に注ぐ本明川のボートコースは、5000mの直線距離と8コース分の川幅がある上、流れが緩やかなのが特徴。県等が艇庫や周辺道路の整備を行なっており、同部は2016年に練習拠点を漁港から移し、インターハイの上位に名を連ねる強豪になった。男子かじ付き4人スカルで出場する同部の浜辺咲太郎主将(※3年)は、「コースの整備に力を注いでくれた地元の人達への感謝の気持ちを持って、全力で漕ぎたい。好成績を収めて地域を盛り上げたい」と話した。高校生の活躍が地域に活気を齎し、地域はその活動を支える。その協力関係は地方創生の核となり得る。

          ◇

鈴木日和・稲葉りお・栗山泰輔・藤田陽平が担当しました。


キャプチャ  2023年7月21日付掲載

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【高校部活の今】(中) 審判で夢舞台へ、続々

20230828 05
全国高校総体(※インターハイ)に審判として参加する高校生もいる。選手とは違った学びも期待できると、高校生に審判を任せる競技団体が増えている。「選手はこの大会にかけている。一時も気を抜かず、ジャッジしたい」。卓球・北海道予選の女子団体戦準決勝で敗れ、インターハイ出場を逃した札幌東商(※札幌市)の高谷咲稀乃さん(※3年、右画像、撮影/鈴木日和)は、審判に選ばれて、そう決意を語った。北海道でのインターハイ開催が決まり、同校卓球部は2年前から部員達に講習会を受講させる等、『日本卓球協会』の公認審判員の資格を取得させている。高谷さんは2021年11月に試験に合格。「ネットを張る高さ等、今まで気にしていなかったルールを練習でも意識するようになった」と話す。「全国レベルの選手を間近で見られるのは、又とない機会。技を習得したい」と前向きだ。今年のインターハイで、卓球は男女各シングルスとダブルス、団体戦の全試合で主審と副審を高校生が務める。総勢約120人で、全試合で審判を高校生が務めるのは初めてだ。高体連卓球専門部は「運営に携わることで、自主性を養うことができる」と、意義を強調する。陸上競技では、石狩南(※北海道石狩市)陸上部の選手とマネージャー計11人がC級の審判資格を得て、大会に参加する。陸上競技の大会は、複数の種目が同時進行する為、場内アナウンスや用器具の準備にも審判資格が求められる。『日本陸上競技連盟』は、幅広い人材確保の為、2021年、高校1年生まで対象範囲を広げたC級の審判資格を設けた。同校の主将である渡辺結月さん(※3年)は、「大会を支えたい」と意気込む。母の奈穂美さん(47)は1993年のインターハイで400mリレーに出場した。母と同じ舞台に選手として立つことはできなかったが、昨年取得した審判資格を生かすことにした。渡辺さんは、リプレイ映像や記録を映し出す大型スクリーンの操作を担当する。「将来の五輪選手が北海道に来る。目に焼き付けたい」と期待している。サッカーでは、『日本サッカー協会』3級の資格を持つ北見柏陽(※北海道北見市)の鈴木辰汰さん(※3年)らが審判団に加わる。鈴木さんは高校での練習や試合の合間に、小中学生や社会人の試合で審判としての腕を磨いてきた。それによって、選手の動きの予測や、サッカーの戦術、ルールの理解が深まり、選手としての成長にも繋がったと感じている。北見柏陽は予選で敗退したが、鈴木さんはボールがタッチラインを割ったかを判定する副審や、選手交代の手続き等をする第四審判を任される予定だ。「審判がいなければ試合が成立しないので、責任が大きい。やってきたことを出し切りたい」と話す。ジャッジや大会運営の経験を通じて、選手としては気付かなかったスポーツの一面が見えることもある。きっと得難い財産になる筈だ。


キャプチャ  2023年7月20日付掲載

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【高校部活の今】(上) 合同チーム、選手に希望

全国高校総体(※インターハイ。本社共催)が今月22日、北海道を主な舞台として開幕する。4年ぶりに新型コロナウイルスに関する制限がなく開かれる予定だが、少子化の進行等を背景にインターハイの姿も変化している。高校の部活動の今をリポートする。

20230828 04
「しっかり守っていこう」。高知市の高知丸の内高校のグラウンドで今月9日、ソフトボール女子の選手達がノックを受けたり、打撃練習をしたりしていた(※左画像、撮影/鈴木日和)。今年のインターハイに高知県代表として出場する丸の内、窪川(※四万十町)、佐川(※佐川町)、高知追手前(※高知市)の4校合同チームだ。丸の内はインターハイの常連だったが、昨夏、3年生の引退で部員が8人となった。選手達は中学時代の部活仲間に声をかける等して、合同チームを結成、選手は14人になった。このうち、窪川の長山莉央選手(※3年)は入学した同校にソフト部がなく、帰宅部だった。今春、丸の内の小野真央投手(※3年)に誘われ、合同チームの左翼手になった。今は毎週末、列車で片道1時間半かけて丸の内に通い、平日は自校で他の運動部の練習に交じって筋力トレーニングに励んでいる。諦めていたソフトができる喜びをかみしめ、長山選手は最初で最後のインターハイを心待ちにしている。インターハイは部活動の一環の為、学校単位での出場が原則だ。しかし近年、部員がチームの必要人数に達せず、出場できない学校が増えた。そこで『全国高校体育連盟』は今年1月、水球、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、サッカー、ラグビー、ソフトボール、アイスホッケー、ホッケーの9競技について、合同チームでの参加を認めると発表した。高知は中学や社会人を含めてソフトが盛んだが、昨年度の高校生の競技人口は男女合わせて294人で、2012年度(※609人)から半減。チーム数も32から16と激減した。合同チームの岡村佳子監督(49)によると、部活がない為、高校での競技継続を断念する新1年生は多いという。岡村監督は「競技人口の減少を食い止めてくれる」と、高体連の決断を歓迎した。この夏は先ず1勝が目標だ。今月8・9日、宮城県で開かれた水泳の東北大会で、水球の青森連合がインターハイ出場を決めた。青森山田、青森北、青森南、青森の4校(※何れも青森市)による合同チームで、各校の部員は1~6人。チーム結成には7人必要で、青森山田は昨年、競泳選手を借りて東北大会に出場したが、全国には届かなかった。青森連合の選手は13人となり、青森山田の花岡晃成主将(※3年)は「水球専門の選手でチームができて技術力が上がった。体力の消耗が激しい競技で、試合中に交代できるのもありがたい」と手応えを感じている。「『インターハイに出られるかもしれない』となった途端、選手の目の色が変わった」と、青森山田水泳部の舘山将司監督(42)は振り返る。全国大会出場への可能性を広げる合同チームについて、「試合の機会を増やし、生徒たちの能力を育てられる」と効果を強調している。部員不足に悩む高校生にとって、諦めていた舞台がぐっと身近に感じられる夏になりそうだ。


キャプチャ  2023年7月19日付掲載

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【WEEKEND PLUS】(390) “かけっこ好き”が世界へ加速…陸上競技のサニブラウン・ハキーム選手、脚の運びは“天性のもの”



20230818 15
重圧をものともしない豪胆さに、空気を読まない淡泊さをスプリンターは持ち合わせている。つまりは、マイペース。好記録への期待に話を向けられても、苦笑いを浮かべて「どうなんですかねぇ…。気付いたら(良い)タイムが出ているパターンが殆どなので」と、いなす。意気込みめいたことは滅多に口にしない。日本陸上競技界を先導する男子短距離のサニブラウン・ハキーム選手(24、東レ)の取材対応は、いつもこんな感じだ。花形種目、男子100mには世界の快足自慢が犇めく。身体能力的に日本勢は不利とされてきたが、昨年の世界選手権(※オレゴン州)でサニブラウン選手は日本選手初の決勝進出を果たし、7位入賞した。オリンピックを含めても男子100mでのファイナル進出は、1932年ロサンゼルス五輪6位の吉岡隆徳さん以来、90年ぶりの快挙だった。オレゴンでの快走を上回るパフォーマンスが期待される今年は、中々エンジンがかからない。アメリカを拠点にしているサニブラウン選手にとって、6月の日本選手権(※大阪)は国内で1年ぶりのレースだった。大会最終日の最終種目に据えられた男子100m決勝はスタートから出遅れ、まさかの最下位(※8位)に終わった。理由は、スタート時に左脚が攣ったことにあった。違和感を拭えないまま走り、みるみる失速した。この大会は、今月19日開幕の世界選手権(※ブダペスト)の代表選考会を兼ねていた。サニブラウン選手は昨年の世界選手権入賞の実績から、参加標準記録(※10秒00)を突破すればブダペスト行きが内定する有利な立場にいたが、お預けに。その後に出場したレース結果等を基にするランキング制度により、今月7日に発表された世界選手権代表に滑り込んだ。

結果的に薄氷を踏む思いで手にした世界選手権の切符。だが、代表発表前のレースで10秒0台をマークし、持ち直したこともあり、「焦りというのはなくて。悪くない流れで(ブダペストに)入れると思う」。9日の単独取材で、そう語った。日本選手権で無理をしなかった理由について、「スタート(の時点)は『頑張る』という気持ちだったけど、思うように体が動いてくれなかった」と説明している。そんな姿に、彼の子供時代を思い起こした人物がいる。「走っている途中でも『もう決まり』って結果を見越したら、本気を出さないこともありましたね」。1996年アトランタ五輪男子1600mリレー5位入賞の大森盛一さん(51)は、主宰する陸上クラブ『アスリートフォレストTC』で小学生だったサニブラウン選手を指導。その後の飛躍の礎を築いた。ガーナ出身の父と、日本出身の母の間に生まれたサニブラウン選手。陸上選手だった母の勧めで、小学3年から陸上を始め、程なくして大森さんのクラブの門を叩いた。高校2年だった2015年に出場した世界ユース選手権の200mで、ウサイン・ボルトさん(※ジャマイカ)が持っていた大会記録を塗り替え、100mとの2冠を達成した。その才能は幼少期から発揮され、常に日本のトップにいた…わけではない。小学生の時は東京都内の大会で学年別の1位を逃したこともあった。しかし、「彼には天性のものがあった」と大森さんは語る。体の前方へ左右の脚を運ぶ動作の柔らかさだった。欧米やアフリカの選手と同様に骨盤が前傾する為、股関節の可動域が広く、自然と前に進み易いという。マイペースな性格は当時から。指導を受けていても、サニブラウン選手は「あー、はいはいはい」と生返事だったり、1本走る毎にパンを食べて「お腹が痛い」と練習を中断したり。大森さんも教えるうちに「勝負が決まってしまうと本気を出さない」性格を把握し、リレー種目では混戦になり易い第二走者を任せた。「最初から全力を出させるのが目的でした。『エースは2走だから』って本人に言って」。目先の結果よりも、加速力を伸ばすのが狙いだった。大森さんがガミガミ言わなかったのは、「ハキームが走るのが好きだということがわかっていたから」でもあった。練習は先ず休まない。大森さんが別の選手の指導をしていた、さいたま市内の競技場に、東京都内から来ることもあった。そして、ライバルと競り合ってレースを終えた後のサニブラウン選手の表情に全てが詰まっていた。大森さんが懐かしむ。「走りきって、皆で歩いて戻ってくる時に、清々しく笑っているんですよ。『いい顔してんなー』って。だから、走るのを嫌いにならないようにしておけばいいなって思ったんです」。生来のかけっこ好きに、トップランナーとしての自覚が根付きつつある。半ばレースを諦める形になった6月の日本選手権決勝だが、実は約4時間前に行なわれた準決勝の時点で脚は攣っていた。何故、決勝を走ったのか。サニブラウン選手は言う。「そこはプロとしての責任ですよね。本当に走れなかったら話は別ですけど、企業も背負っているし、応援に来て下さる人もいる。誠意を見せなきゃいけない部分が増えてくる」。関係者の証言も辿ると、世界を再び驚かせる日はそう遠くないと思えてくる。

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テーマ : 陸上競技
ジャンル : スポーツ

【WEEKEND PLUS】(387) 僕は“僕が生きる地”の為にラグビーをする…あるニュージーランド出身選手の思い



20230804 09
ラグビーは境界を軽々と飛び越えるスポーツだ。国・地域の代表選手となるのに国籍は必要ない。居住歴等一定の条件を満たせば資格を得られる。自らが選んだ国・地域の為に力を尽くして競い合う――。そんな競技の特性を象徴する選手が、ラグビー日本代表にはいる。国立競技場で昨年10月に開催されたニュージーランド代表『オールブラックス』とのテストマッチ(※国・地域代表戦)。国歌斉唱で肩を組むジャパンの中で、201㎝の長身は一際目立った。NZ出身の日本代表FW、ワーナー・ディアンズ選手(21、『東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)』、右画像中央上、撮影/前田梨里子)。ポジションはFW第二列のロック。攻守の要で、大柄な選手が配置される。セットプレーの一つであるラインアウトでは、味方の選手に高々と持ち上げられて、空中でのボール争奪戦で優位に立つ場面が多かった。かと思えば、上体を折り曲げるようにして激しいタックルを相手に繰り出した。後半、ディアンズ選手は跳び上がって、NZ選手のキックを叩いてボールを掴んだ。すると、巨体からは想像し難い速さで40mを独走。自身の代表初トライを、母国NZから挙げた。日本は31-38で敗れたが、7点差はNZ戦での過去最少差だった。「キックオフから勝てる気持ちを持って試合に入った。最後の最後まで勝てる気持ちは持っていて、凄く楽しい試合だった」。先月、千葉県浦安市で始まり、同月から宮崎市に会場を移した日本代表の合宿に参加。9月8日に開幕するW杯フランス大会での代表入りを目指している。

日本選手と海外出身選手が混在するチームにあって、英語と流暢な日本語を駆使するディアンズ選手は、円滑なコミュニケーションに欠かせない存在となりつつある。W杯本大会のメンバーは来月15日に発表される。ディアンズ選手は、「ちっちゃい頃から夢だったW杯の試合に出るということに近付いてきている。凄く楽しみにしている」。日本との縁が生まれたのは、中学2年生だった2016年まで遡る。ラグビー選手だった父のグラントさん(58)が、旧トップリーグのNEC(※現在の『NECグリーンロケッツ東葛』)のコーチに就任し、母や妹と一緒に来日した。進学した千葉県の流通経済大学付属柏高校で活躍し、卒業した2021年春にTLの東芝(※現在の『BL東京』)に加入。同年秋には19歳で日本代表にデビューした。「ちょっと凄いなぁ。嬉しい」。当時、桜のエンブレムが付いた代表のジャージーに袖を通して、初々しい表情を浮かべた。日本では大学を経てプロ入りし、代表を目指す選手が大半なのだが、異例のキャリアを辿って、ジャパンに最短距離で到達した。周囲の人物評は“真面目”で一致する。所属チームの先輩であり、ポジションも同じロックだった元日本代表の大野均さん(45)は、ディアンズ選手の活躍に目を細める。そして、こう例えた。「若い時のリーチに似ている」と。リーチとは勿論、日本代表の大黒柱、FWリーチ・マイケル選手(34、BL東京)だ。ディアンズ選手と同じくNZ出身ながら日本の高校で学び、日本ラグビーの顔となった。大野さんは、「リーチはリーダーとして認められるようになって、メッセージを発信するようになった。ワーナーも、外国出身選手と日本人を繋げてくれる良いキャプテンになる」と成長を見守る。そして、日本代表歴代最多の98キャップ(※テストマッチ出場回数)を誇る大野さんは、「自分の98を超えるとすれば、ワーナーしかいない」と断言する。日本代表は、大野さん、リーチ選手が奮闘した2015年W杯イングランド大会で躍進した。過去7大会で通算1勝だったチームが、優勝候補の南アフリカを破る等3勝を挙げて、世界を驚かせた。前回2019年W杯日本大会ではアイルランド、スコットランド等を降して初めて一次リーグを突破し、決勝トーナメントに進出した。主将を務めたリーチ選手ら、多様なバックボーンを持つメンバーが一体となって勝ち進み、チームスローガン“ワンチーム”は流行語になった。あの熱狂から4年。W杯フランス大会での活躍を目指すラガーメンが汗を流し、努力を重ねている一方、インターネット上では「何故ラグビー日本代表には外国人が多いのか」「日本人だけなら応援するのに」といった批判的な声が未だに絶えない。SNSが普及した今、選手達もそのような意見を目にしている。葛藤や不満、憤りはないのだろうか。先月上旬の取材で、記者(※尾形)はディアンズ選手に尋ねた。即座に返ってきた答えは、「考えたことはないです。そういう言葉(=批判)も聞いていない」。自分が生きる地を代表してプレーするのは当然、と考えていることがありありと伝わってきた。幼少期はNZ代表に憧れていたディアンズ選手は、何故日本代表を選んだのか。どうして日本に強い愛着を覚えるのか。その道筋を辿った。

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テーマ : ラグビー
ジャンル : スポーツ

【WEEKEND PLUS】(377) 地球温暖化でホームランの数が増えた!? アメリカの大学院生が発表した論文が話題に

地球温暖化はスポーツの現場にも影響を齎している。熱中症リスクの高まりを受け、東京オリンピックのマラソン等のように競技時間を変更する事例は知られているが、野球で勝敗をも左右しかねない記録に関係していると指摘する論文が発表され、注目を集めている。 (取材・文/ニューヨーク支局 八田浩輔)

20230721 02
「少しはメディアの関心を集めるかもしれないと期待はしていましたが、遥かに想像を超えていました」。そう語るのは、ダートマス大学の大学院生であるクリストファー・キャラハンさん。「大リーグでホームランが増えているのは地球温暖化のせいではないか」と考察し、アメリカで数多くのメディアが取り上げた話題の論文の筆頭著者だ。キャラハンさんらの研究チームは『全米気象学会』の会誌に発表した論文で、2010年以降の大リーグのホームラン数のうち、1シーズン平均60本近くが温暖化の影響だと考えられるとした。何故、そのようなことが言えるのだろうか。仮説はシンプルだ。中学校の理科で習うように、体積が同じなら暖かい空気は冷たい空気よりも密度が低い。分子同士の間隔が広がる為、空気抵抗は小さくなる。即ち、他の条件が同じであれば、空気が暖かいほうが打球はより遠くへ飛ぶ――。こうした考えは以前からあったが、ボールの構造の変化等様々な要因を除いて検証することが難しかった。研究チームは、1962年から2019年の大リーグ10万試合以上のホームランと気温のデータを合わせて、統計的な検討を試みた。重要な役割を果たしたのは、“スタットキャスト”と呼ばれるデータ解析システムが全球場に導入された2015年以降に入手できた22万件超の打球データだった。選手やボールの動きを高精度で分析するこのシステムでは、打球の飛距離を決める“初速”と“打ち出す角度”がハイスピードカメラで記録されている。例えば、初速と打ち出す角度が同じでも、ホームランになった場合とならなかった場合があれば、気温等他の要素が影響している可能性がある。

20230721 03
分析の結果、2015~2019年では最高気温が1℃上昇すると、1試合あたりのホームラン数が1.83%増えていたことがわかった。屋根のない球場で日中に行なわれたデーゲームでの増加率は、より大きくなっていた。更に研究チームは、人間活動が齎した温暖化がなかったと仮定した地球を模したプログラムでシミュレーションを繰り返し、2010~2019年で計577本のホームランが温暖化の影響で上乗せされていたと分析した。地球の平均気温は、産業革命前から1.1℃近く上昇している。このまま温暖化が進めば、今世紀半ばに1シーズンで200本近く、2100年には460本以上の“超過”ホームランが生まれる可能性があるという。研究内容も然ることながら、野球の常識を変えたとされるデータ革命が、気候変動とホームランの関係までも明らかにしたというストーリーも面白い。但し、多くの報道はここまでの説明で止まる。研究者達のメッセージは、その先にある。論文では、今回の研究の意義について「温暖化が既に生活のあらゆる側面に広く影響を及ぼしていることを象徴するものだ」と強調した。キャラハンさんは、「気候変動の野球への影響はホームランだけではありません。気温の上昇が続けば、選手、スタッフ、観客の熱ストレス(による健康影響)のリスクが高まるでしょう。特に高齢者や幼い子供のファンは、熱ストレスに脆弱です」と懸念する。この先、気候変動の影響を避ける為に大リーグができる対策について、「ドーム球場や、デーゲームからナイトゲームへの移行等は益々必要になってくる」と語り、最も重要な行動として、温室効果ガスの排出を減らす必要性を強調した。現在、博士号取得を目指すキャラハンさんの学位論文のテーマは、気候変動が私達の心身と社会的な健康に与える影響について。今回の研究は、子供の頃からの野球好きとしての“サイドプロジェクト”だそうだ。


キャプチャ  2023年7月18日付掲載

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