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【NHKはどこへ】(12) 制作の決定権者が圧倒的に高齢! NHKの若者向け番組が若者に刺さらない皮肉



20230612 04
「本当はテレビはあまり見ない。YouTubeをやりたいのだけれど、ウェブ動画制作会社は待遇が悪くて不安定。だから、テレビ制作会社を就職先として考えている」――。今、テレビ制作会社を志望している学生達の本音はこんな感じだ。修業のつもりでテレビ制作会社で腕を磨き、何れウェブ動画で勝負をかけたいと思う学生が増えている。『NHK』のインターネット業務を“補完業務”から“本来業務”へと格上げする議論が進んでいるが、放送を配信に変えれば済むほど簡単な話ではない。『テレビ朝日』(※放送)、『ABEMA』(※配信)、動画制作を目指す大学生達に教える立場(※若者)と、3つの立場を経験している筆者から見えるNHKの課題について述べてみたい。“テレビよりもウェブ”という意識のシフトは、学生だけではない。映像制作会社もテレビからウェブ動画制作へ軸足を移しつつある。地上波よりABEMAのほうが自由に制作できる。そして、最高峰の仕事とも言えるのが、『NETFLIX』等の海外配信の番組だ。制作費が桁違いに高額で、世界規模の勝負ができる。NHK等各局がインターネット配信に注力するのには、若者にも制作会社にもテレビが相手にされなくなりつつあることも影響している。学生達はNHKを見ているのか。答えは大きく二分される。敢えて表現すれば、放送局への就職を目指すような難関大の学生達はNHKをよく見ている。制作会社を志望する普通の大学生達は、ほぼNHKを見ない。番組の面白さという点で、“YouTube>民放>NHK”という図式は全ての若者に共通する傾向だ。NHKの番組で、学生が比較的見ているのが大河ドラマ、そしてニュースである。意外にも若者達は寧ろ高年齢層向けとも思える定番番組を好んで見ており、若年層をターゲットとしたNHKの番組をあまり見ていない。

何故、若年層にNHKの番組が刺さらないのか。大きな理由が思い当たる。テレビ業界とウェブ業界は制作環境が大きく違うことだ。ウェブの意思決定権者は兎に角、若い。ABEMAの例だと、トップの藤田晋氏(※『AbemaTV』社長)ですら40代。番組制作を統括するチーフプロデューサー級の決定権者は30代で、実働部隊のプロデューサーの主力は20代だ。若者が企画を提案し、若者が決裁して制作されるから、番組は当然、若者にぴったりフィットする。扱うテーマも恋愛等の身近なものが選ばれ、出演者も若者が共感でき、親しみの湧く人物が選ばれる。そして、制作にスピード感がある。ABEMAでは、視聴者数等の指標が目標に達しない番組は直ぐに打ち切られる。企画は採用され易いが、振るわなければ直ぐ終わる。テレビが基準とする1クールは3ヵ月で、だめな番組でも最低3ヵ月は続くのとは随分違う。一方、NHKの制作プロセスはABEMAとはまるで逆と言っていい。先ず、決定権者が圧倒的に高齢だ。チーフプロデューサーは50代、実働部隊のプロデューサーの主力は40代で、偶に30代の若いプロデューサーがいても、上司達が次々に口を挟み、自由にさせてくれないだろう。企画は高年齢の上司達が決定する。「若者向けの番組もやっています」とアピールできる企画を高齢者が選ぶので、必然的に“意識高め”の番組が増え、“若者達の政治参画意識は今”とか“国際社会の中で今、日本の若者は”のような説教臭いテーマの番組ばかりになる。その結果、若者番組の体ではあるものの、実際の視聴者は高齢者が殆ど。「そうか、今の若者はこうなのだな」と、高齢者が若者をわかったような気になる番組ばかりという皮肉な事態になるのだ。これで、果たしてNHKはウェブコンテンツ業界にとって脅威となり得るのか。それは“やり方次第”だ。先ず、ニュース制作力に関して言えば、NHKほどの取材網を持つ報道機関はない。NHKが全力で制作すれば、ウェブ最強となることも可能だろう。問題は娯楽番組だ。エンターテインメント・音楽の番組制作費は234億円に上る(※右下画像)。タレントの出演料に関して、NHKは民放に比べて驚くほど安い。特別な価格で出演してもらえるメリットがあり、“豪華な出演者をふんだんに使ったウェブ番組”を制作できる可能性がある。しかしながら、若者に受け入れられる面白いバラエティー番組を制作するのは、今のNHKの制作体制では難しい。ウェブ業界の中で、民業の脅威にはならないだろう。若者がNHKに違和感を持つ一番の理由は、NHKが“強制サブスク”と感じられることだ。音楽も動画もゲームも定額料金サービスが当たり前になっている若年層にとって、見たくなるような面白い番組がないのに、強制的に受信料を徴収されるNHKは、“止めたくても止められない”理不尽なサブスクと同じなのだ。

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【火曜特集】(608) 不正予算計上問題を契機に前会長時代の残り香を一掃か…NHKの権力闘争は終わらない

20230606 10
『NHK』が放送法に抵触しかねないインターネット配信予算を計上していた問題を巡り、局内には疑心暗鬼が渦巻いている。先月30日に一斉に始まった報道で、予算計上の稟議に関わったと名指しされたのは、1月に退任した前田晃伸前会長や、当時の副会長である正籬聡氏(※今年2月に退任)、そして経営企画担当の専務理事だった伊藤浩氏(※今年4月に退任)といった面々だ。伊藤氏は専務理事を退任後、NHKの関連団体や企業に再就職していない。ほぼ全ての専務理事経験者が天下りする為、その時点でNHK内部では「不祥事があったのでは、という声が上がっていた」(関係者)という。そして今回の一件が明るみに出た。実は、前副会長の正籬氏も関連団体に再就職していない。その為、「報道で言及されている今年4月よりも早い段階で、予算計上問題が浮上していたのでは」(同)との疑念も出ている。今後、稟議に関わった幹部らについて、「遡って処分が行なわれる見込み」(同)だという。ただ問題は、「不正予算計上問題を足がかりに、稲葉延雄現会長の体制が、前田時代の残り香を一掃しようと画策している」(同)ことだ。実は、NHKでは来月1日付の局長級人事の内示が遅れている。今回の問題での処分も見据えた上で、前田時代に抜擢された職員等を引きずり落とそうとする企図が見え隠れする。“みなさまの受信料”の使途は正しくあるべきだが、それをダシに権力闘争に明け暮れるのも不毛な話である。


キャプチャ  2023年6月号掲載

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【NHKはどこへ】(11) 「NHKがアーカイブ映像を駆使すれば民業圧迫になる」――砂川浩慶氏(立教大学教授)インタビュー

20230605 04
若い世代のテレビ離れ、『NHK』離れは著しく、NHKの受信料収入は既に減少基調に入っている。NHKとしては、新たな収益源としてインターネット受信料を徴収したい。総務省で議論を行なっている公共放送ワーキンググループは、現在、放送法で補完業務とされているインターネット事業を本来業務へと格上げすることを目的としている。インターネット事業を本来業務化する際に無料でスタートさせれば、後から有料化するのは難しい。NHKや総務省は、本来業務化と同じタイミングでインターネット受信料を徴収する仕組みを考案するだろう。だが、ここで問題が浮上する。NHKプラスの登録件数は、受信契約世帯の1割にも満たないのだ。私が教えている学生に向けたアンケートでも、「よく使う」と答えた学生は皆無だった。こんな状況下でインターネット事業の本来業務化など本当に実現できるのだろうか。公共放送WGで、NHKはインターネット事業を本来業務化して、一体どんなサービスを展開したいのか、一向に手の内を明らかにしない。不信を募らせる『日本新聞協会』や『日本民間放送連盟』が「民業圧迫だ」と批判を強めるのは当然だろう。では、NHKにはキラーコンテンツがないのかというと、そんなことはない。NHKは着々と新サービスの準備を進めている。最大の強みはアーカイブ映像だ。若い世代にとって、森繁久彌には興味がなくても、『乃木坂46』や『ジャニーズ事務所』所属タレントは魅力的だろう。NHKの過去の映像を全て視聴できるサイトがあったら、どんなに魅力的か。『NETFLIX』や『Amazonプライムビデオ』には持ち得ない、相当に強いコンテンツになる。NHKは既に、過去素材・番組をファイルベース化し、職員が検索できる仕組みを持つ。この仕組みを活用し、法的にもインターネット事業が本来業務化された時、NHKは民放や動画コンテンツ業界にとって、とてつもない脅威になるのではないか。 (聞き手・構成/本誌 野中大樹)


キャプチャ  2023年1月28日号掲載

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【NHKはどこへ】(10) 犇めく動画配信サービス…荒波に挑むNHKの勝算



20230529 04
今は“任意業務”のインターネット活用業務を“本来業務”に引き上げることが議論されている『NHK』。次期会長の稲葉延雄氏は昨年12月の会見で、「デジタル化のうねりの中で多くの企業が経営を翻弄されており、NHKも全く例外ではない。生き残りを懸けた努力がまさに問われている」と述べた。国内テレビ局では抜きんでた存在感があるNHKだが、インターネットで成功するとは限らない。インターネットとテレビ両方の統計データを取る『インテージ』によれば、インターネットに接続するスマートテレビの家庭内保有比率は、昨年4月時点で38.9%と右肩上がりに増えている。「高齢の視聴者が多いNHKでも、地上波の利用減少は避けられないトレンド」(同社メディアと生活研究センターの林田涼氏)だという。NHKが手がける動画配信サービスは、主に2つだ。常時同時配信&1週間の見逃し配信サービス『NHKプラス』と、見逃し&オンデマンド配信サービス『NHKオンデマンド』。他に『NHKワールドJAPAN』や『NHKワールドプレミアム』もあるが、前述の2つに比べて規模は大きくない。NHKプラスは、有料業務であるNHKオンデマンドとは違い、受信料財源業務として位置付けられる。その為、受信料が主要財源であるNHKとしては、是が非でも伸ばしていきたい分野だ。来年度予算におけるインターネット活用業務の費用配分は、NHKプラスを始めとする常時同時配信等業務が3割を超え、個別の項目では最も比重が高いとみられる。来年度のNHKプラスでは、平日午後6時台の地域向けニュース番組の配信を拡充し、全ての放送局の番組を提供する方針だ。総務省が認めるインターネット活用業務における費用上限は現在、年間200億円となっているが、この制限が外れればNHKプラスへの投資にアクセルを踏む可能性が高い。

では、NHKプラスを中心としたインターネット配信ビジネスの市場環境はどうなっているのか。左上画像に示す通り、NHKプラスが主戦場とするリアルタイム配信において、NHKとの競合が予想される動画配信サービスとその個別領域は多岐に亘る。勢いがあるのは、共に広告付きの無料動画配信サービスである『TVer』と『ABEMA』だ。在京民放キー局5社等が共同出資するTVerは、昨年12月時点の月間ユニークブラウザー数が2500万人を超える。強みは約600ある豊富な番組数だ。参加する放送局は115に及ぶ。同社の蜷川新治郎取締役COOは、「YouTubeのような個人投稿型のメディアを除けば、TVerはAmazonプライムビデオやNETFLIXをも上回るコンテンツ数を取り揃えている」と話す。昨年4月からは民放5系列揃ってのリアルタイム配信を開始し、同年12月からはTVerオリジナル番組も制作・配信する。『ビデオリサーチ』の調査によれば、TVerのジャンル別再生割合は60%以上をドラマが占め、バラエティーが30%近くある。「NHKは報道や教育系が圧倒的に強いが、エンターテインメントでは民放も負けない。寧ろ、NHKと相互送客をすることで、TVerの価値を更に高めることも考えられる」と蜷川氏は話す。FIFAワールドカップカタール2022の放映権獲得で知名度を上げたABEMAは、独自のニュース番組やドラマの制作が特徴だ。運営会社の『AbemaTV』には『サイバーエージェント』が55.2%、『テレビ朝日』が36.8%出資する。「恋愛リアリティーのような若者向けコンテンツが強みで、インターネット企業ならではのコンテンツに拘っている。正直、NHKのインターネット参入は脅威とは全く感じていない」(サイバーエージェント関係者)。ABEMAと連動した周辺事業の収益化も進んでいる。競輪のオンライン投票サービス『WINTICKET』の今年度第4四半期取扱高は、前年同期比1.7倍の779億円となった。リアルタイム配信ならではのコンテンツ活用で、NHKを含めた競合の一歩先を行く。これまではテレビ媒体が中心だった『WOWOW』や『スカパーJSAT』といった有料放送事業者も、インターネットでの配信サービスを強化している。スカパーは2011年から有料配信サービスを運営してきたが、既存の有料放送サービスを未契約でも利用できるようにする為、2021年に『SPOOX』としてリニューアルした。スポーツやエンタメ等様々なジャンルを揃え、好きなジャンルに合わせてプランを決定できる料金体系となっている。WOWOWも2021年1月、リアルタイム・オンデマンド視聴が可能な『WOWOWオンデマンド』をスタート。昨年7月には全体デザインを一新し、ダウンロード機能等を追加した。スカパーはプロ野球、WOWOWはサッカーやテニスの中継が人気コンテンツだ。地上波と衛星放送では放映権の棲み分けがあるが、インターネット配信にその境目はない。近年はスポーツの放映権料高騰が話題となっており、NHKと投資競争になる可能性もありそうだ。

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【NHKはどこへ】(09) 財務から見たNHK…まるで投資ファンド! 金融資産が急膨張



20230522 05
『NHK』の“貯め込み”が加速している。昨年9月末時点のNHKの連結剰余金残高は5135億円(※図1)。営利を目的としない特殊法人でこの数字というだけでも貯め込み過ぎの観があるが、それより注視すべきは8674億円もの金融資産残高だ(※図2)。剰余金残高の1.7倍近くに上る。受信料収入は2018年度(※2019年3月期)に過去最高の7235億円を計上したが、営業スタッフによる戸別訪問を段階的に廃止した影響で、昨年度の受信料収入は6896億円へと約340億円減った。にも拘わらず、一般事業会社の連結営業キャッシュフロー(※CF)に該当する連結事業CFは、2019年度から2021年度までの3年間の累計で3696億円となり、2018年度までの平均的な金額である年間1200億円前後を維持した(※図4)。昨年度の事業CFは1056億円で、前年度に比べ約380億円の急減となった。だがこれは、東京オリンピック・パラリンピック関連の放送費用(※放送権料以外)180億円と、五輪等国際催事放送の放送権料80億円の計260億円を払った上でのことで、これらがなければ2019~2021年度の事業CFの累計は3956億円にもなる。NHKがCF計算書の開示を開始したのは2008年度から。多少のばらつきはあるが、特別な事情で多額の資金流出があった年度を除けば、毎年1000億円を超える事業CFを生んできた。そして、その半分強が設備投資等に回り、残りは余資となり、国債等公共債での運用に回されてきた。その結果として積み上がったのが、7360億円もの有価証券である。これに現預金を加えた金融資産の残高が、冒頭で紹介した数字になる。

金融資産は総資産の6割を占めており、この他に保有不動産の含み益が136億円ある。まるで資産運用を生業としているファンドのようなバランスシートだ。何故、こんな芸当が可能なのか。第一に、収入が減ってもそれ以上に支出を抑え、しっかり利益を稼いでいるからだ(※図3)。その利益はどう生み出されているのか。2018年度と2021年度の連結決算で比較してみよう。昨年度の経常事業収入は7508億円。3年前と比べると6.2%減少した。これは、NHK単体での受信料収入が約339億円減ったことが主因だ。一方、昨年度の経常事業支出は7057億円で、3年前と比べ8.5%減少した。収入は6.2%しか減っていないのに、支出は8.5%減ったのだから、昨年度の経常事業収支差金(※営業利益)は2018年比で50%以上も増えた。支出減の主因は連結放送事業運営費が481億円減ったことにある。連結放送事業運営費の内訳は開示がなく、具体的に何が減ったのかは不明なので、内訳開示がある単体にヒントを求めてみる。単体の国内放送費、国際放送費、番組配信費の合計額は、3年前比で382億円減っている。内訳は、番組配信費が125億円増えた一方で、国内放送の番組費が461億円減っている。これら放送関連の費用以外では、契約収納費、つまり受信料の徴収にかかる費用が158億円減ったのに、人件費は28億円増えている。この10年程、NHKの番組では、番組の最後に流れる制作者の表示に、NHKの子会社や外部の制作プロダクションの名前が頻繁に登場するようになっている。良質な番組制作に外部の力を借りること自体は批判の対象になる話ではないが、NHKは番組制作予算が減った分を、外部の制作会社に皺寄せしていないと言い切れるのだろうか。NHKは「外部の制作会社には適正な対価を支払っている」と胸を張るが、外部のディレクターからは「出張ロケの現場では、NH K本体の人達は宿代始め、費用は全てNHK持ちなのに、制作するフリーランスは自分が知る限り、基本自腹。宿代や移動費を払える資力がないフリーランスは出張ロケにすら参加できない」という声が出ている。

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【NHKはどこへ】(08) 「“公共性”という体のいい言葉に視聴者はそろそろ怒ったほうがいい」――立岩陽一郎氏(元NHK記者)

20230515 04
受信料制度は、『NHK』に希少価値があり、民放との力の差が圧倒的だった時代には成立していた。しかし、今はその希少性が薄れている。世論に訴えるよりも、政治家の力を使って、インターネット時代でも受信料制度を維持しようという姿勢だ。NHKの国民への影響力は薄れているが、政治家にとっては国会中継や選挙報道等にNHKの存在価値が残っている。1日経ったら結果が出る選挙の開票速報に記者を総動員する選挙報道は意味があるのか。取材で得た選挙情報を政治家に伝えることが、国会対応の武器にも使われている。1997~2005年に会長を務めた海老沢勝二氏の時代に、政治との癒着とも言える状態が問題になり、海老沢氏退任後は経営委員会の機能が強化された。しかし、首相の選んだ委員が政府に都合のよい会長を任命するという流れができ、結果的に政治の介入が強まってしまった。制度を変えても意味がなかったのだ。政治家を懐柔できても、国民はNHK維持の為にお金を支払うことに納得しないだろう。過労死した佐戸未和さんについても、報告書すら作成していない。自己批判して検証する姿勢こそが本当の公共性だ。それをせずに、「受信料を維持することが公共性だ」と体のいい言葉に言い換えて乗り切ろうとしている。視聴者はそろそろ怒ったほうがいい。 (聞き手・構成/本誌 野中大樹・井艸恵美)


キャプチャ  2023年1月28日号掲載

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【火曜特集】(595) 日テレとの“合同”出口調査計画が破算に…NHKの飽くなき権力闘争

20230509 06
『NHK』の報道局長人事が物議を醸している。今月15日付で報道局長が山下毅氏から原聖樹氏に交代するが、山下氏は解説委員室特別主幹となり、「出世コースから外れる」(NHK幹部)という。山下氏は政治部長時代、安倍晋三元首相と近かった部下の岩田明子氏との関係が悪化し、熊本放送局に飛ばされた過去がある。だが、同じ自民党宏池会担当だった正籬聡氏が副会長になったことで、2年前に報道局長として復活した。ただ、今回は永田町絡みが理由ではなく、「NHK内部の派閥抗争」(全国紙政治部デスク)との見方がある。山下氏はこの間、正籬氏の下で『日本テレビ』と選挙の際の出口調査を一緒に行なう計画を進めていた。日テレ常務で報道担当役員の粕谷賢之氏は、正籬氏と同じ早稲田大学政治経済学部の出身という縁もあり、数億円かかるとも言われる調査費用の削減の為に接近したのだ。着々と準備が進んでいたが、今年2月にNHKで稲葉延雄会長、井上樹彦副会長の体制がスタートし、事情が変わる。NHK内部で「受信料を使って調査をするのに、一部の社とだけでは不公平になる」との意見が出て、協力計画はご破算になってしまったのだ。解散総選挙が囁かれる中、「日テレ側は今更どうしてくれるのかと怒り心頭」(NHK関係者)だという。山下氏には、その責任があると判断され、けじめをとらされたようだ。山下氏の激しい浮き沈みに、NHKにおける熾烈な権力争いの一端が窺える。


キャプチャ  2023年5月号掲載

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【NHKはどこへ】(07) 「“公共メディア料”としてウェブインフラを支えるシステムに進化させるべき」――境治氏(メディアコンサルタント)

20230508 05
日本は放送と通信の融合を先送りにしてきたが、漸く2020年に同時配信が始まった。『NHK』は公共放送から“公共メディア”に転換しようとしている。だが、インターネット中心の情報空間中でNHKがどのような姿を目指すのか、その実態が未だによく見えていない。インターネット利用者にとっての公共メディアの役割は何か。どのような受信料の仕組みにするのか。新会長に就任する稲葉延雄氏は、難しいパズルに直面することになる。その難題を解く為には、NHKで働く職員達も内側から声を上げ、内部で答えを出す努力が必要だ。更に、視聴者を巻き込んだオープンな議論にすることこそ、NHKが生き残る上での活路となるだろう。新聞や民放等民間メディアも巻き込むべきだ。民放もこれまで以上に公共性を考えねばならない。『ABEMA』も、サッカーW杯の配信では公共性を示せたのではないか。民放はこれまで「民業圧迫だ」と言ってNHKの足を引っ張ってきたが、ローカル局の経営難は深刻だ。受信料を“公共メディア料”に切り替え、NHKだけでなく、民放や新聞、ウェブメディアも含めたウェブインフラを支えるシステムに進化させる。そうした議論をする時だろう。一部から猛反発を受けるだろうが、無秩序なインターネット情報の中で真っ当な言論空間を構築するのが、公共メディアとしての責任だ。 (聞き手・構成/本誌 野中大樹・井艸恵美)


キャプチャ  2023年1月28日号掲載

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【NHKはどこへ】(06) 「インターネット受信料の対象はアプリを導入した人が最も現実的」――曽我部真裕氏(京都大学教授)

20230424 08
『NHK』のインターネット配信が本業になった場合、受信料徴収の在り方はどうなるのか。インターネット受信料は、①ラジオのように無料にする②アプリをインストールした人③端末所有者④全ての国民が支払う――といった選択肢がある。本来の受信料は放送の対価ではなく、公共放送機関そのものを支える国民負担だが、実際はテレビ受信機の有無も加味した制度になっている。国民の理解を得易いのは②だろう。インターネット空間の中で、公共メディアとしての役割をどこまで果たせるのかも重要だ。総務省は公共の役割として、情報空間での“インフォメーションヘルス”の確保を強調する。偽情報が飛び交うインターネット空間で信頼性の高い情報を発信することで、“情報の健康”を保つという考えだ。しかし、インターネット情報は“見たいものを見る”が大前提だ。インターネット上で存在感を示せれば解毒剤的な役割になる可能性はあるが、NHKの情報発信がインターネット空間を劇的に向上させるというのは過大な期待だ。規制のないインターネット空間では、信頼性の低い記事も高い記事も同列に扱われる。NHKだけでは公共の役割を果たすには不十分だ。メディアの多元性を考える上では、存続の危機にある新聞等の主要メディアを維持する為の政策も打ち出すことが必要だ。 (聞き手・構成/本誌 野中大樹・井艸恵美)


キャプチャ  2023年1月28日号掲載

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【NHKはどこへ】(05) 「NHKのお客様は視聴者であって政治家ではない」――相澤冬樹氏(元NHK記者)

20230417 04
私は森友事件の取材中に記者を外され、退職することになったが、『NHK』には“育ててもらった”という思いがある。先輩に教わり、同僚に刺激を受け、他社と競い合う中で記者のありようを学び、鍛えられた。インターネットの時代となり、放送や新聞は消えてゆく。では、効率優先でPV数や経営者の思惑により内容が左右されがちなウェブメディアに公共が担えるか。プロの記者は育つのか。これまでプロの記者を育ててきたのは新聞とNHKだった。だから、私はNHKをなくしてはならないと思う。日本の報道と映像制作の根幹を維持する組織として、NHKは今後も必要だ。問題は、この考えを普通の国民が理解してくれるかどうかだ。今のままでは理解してもらえない。お客様のほうを向いて仕事をしていないからだ。NHKのお客様は、受信料を払ってくれている視聴者。なのに、政治家をお客様だと勘違いしている。受信料の額をどうするかは経営の根幹に関わる話なのだから、本来、内部で必要な額を精査して決めるのが筋。だが、今回の値下げも政治の意向で決まった。若し私が会長だったら、「何で経営の現場を知らない政治家の意向で決められなきゃいけないんだ」と思うだろう。「政権を怒らせなければ組織は維持できる」等とNHKが考えているとしたら、国民から竹箆返しを食らう筈だ。 (聞き手・構成/本誌 野中大樹・井艸恵美)


キャプチャ  2023年1月28日号掲載

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