元エンジニア副住職が考案したハイテク御朱印の効果

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御朱印にスマートフォンを翳すと、携帯の画面にお寺の最新情報が表れる! 副住職の考案したハイテク御朱印が、注目を集めている。長野県塩尻市にある浄土宗善立寺の小路竜嗣副往職(30)が作った『御朱In』だ。左の写真で小路副住職が手にしている御朱印の右下には、QRコードと呼ばれる四角のマークが印刷されている。スマートフォンでこのバーコードを読み取ると、善立寺のFacebookのページが表示される仕掛け。「ツイッターでも話題になり、9000を超える反響がありました」と小路副住職は嬉しそうに話す。背景には、元エンジニアならではの着眼点がある。小路副住職は兵庫県の在家の生まれ。信州大学工学部に進学し、善立寺の1人娘に出会ったのが縁だ。卒業後は『リコー』に入社し、エンジニアとしての勤務を経て、僧侶の道へ。一昨年、善立寺の副住職に就いた。寺務のデジタル化等を手掛ける中、目を向けたのが御朱印だ。「御朱印はお寺と参拝者を繋ぐものですが、参拝者は御朱印を集めれば集めるほど、1ヵ寺1ヵ寺の印象が薄れる。お寺も御朱印をお渡しするだけでは、その後のご縁を結び辛い。双方の困り事を解決する手立てが、誰でも無料で作成できるQRコードでした」と振り返る。更に、QRコードと併せて近距離無線データ通信(NFC)のシールも作成。完成したのが、集めるだけではない、お寺の最新情報も取り出せる『御朱In』だ。「以前に比べてデジタル化の敷居が下がり、小さなお寺でもお金をかけず、伝えたいことが発信できるようになりました。布教にも僧侶の学びにも、様々な局面で活用できたらと思っています」と話す小路副住職。布教の可能性は、いつだって無限大なのだ。


キャプチャ  2016年7月号掲載
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【私の履歴書】大村智(30) 伝承――北里イズム、次の世代へ

私の居室は、『北里大学北里生命科学研究所』の2階にある。この研究所は、長年の願いが叶って実現した、従来の学部-大学院研究科の縦型の教育研究組織から脱した、“大学院大学の研究部門”という位置付けだ。隣では、『北里研究所』本部管理棟等の新築工事が順調に進んでいる。これまで北里研究所の改革に力を注いできたのは、先人の残されたものをきちっと次代に引き継ぐ為だ。研究所には北里柴三郎先生の抗体療法と並び、志賀潔や秦佐八郎、そして秦藤樹先生へと続く化学療法に関わる研究の伝統がある。私は、この流れを秦先生から研究施設や多くの微生物と共に受け継いだので、自分の研究室『大村室』をスムーズに立ち上げられた。今日まで、実に多くの仲間に支えられてきた。私が『エバーメクチン』を最初に発表した論文の共著者である大岩留意子君は本当によくやってくれたが、残念ながら癌で亡くなった。ノーベル賞授賞式に出発する前にお墓参りし、写真を持って式典に臨んだ。名誉教授で創薬資源微生物学寄付講座コーディネーターを務める高橋洋子君は、高校卒業後、秦先生の研究室の研究補助員として採用された。本人は尻込みしていたが、私は博士号をとるよう勧め、アメリカ留学のお手伝いもした。見事に期待に応えてくれた。やはり、秦室以来の付き合いの増間碌郎君と共に、研究を発展させてくれた。

大村室からは、これまでに31人もの教授が出て、後を託せる人材も育ってきた。砂塚敏明教授は、化合物の合成や化学変換で実績を上げている。若い人たちを引き付け、資金集めにも努力している。スクリーニング(探索研究)を担当する塩見和朗教授も、研究室に欠かせないリーダーだ。池田治生教授は、微生物の遺伝子レベルの研究を引っ張る。放線菌の遺伝子操作による新規物質の創製は昭和60(1985)年、イギリスの『ジョン・イネスセンター』のデービッド・ホップウッド教授との共同研究により、世界で初めて実現し、抗生物質『メデルロジン』を作った。池田君は同博士のところに留学後、エバーメクチンを作る放線菌のゲノム(全遺伝情報)解読の中心となった。平成13(2001)年にカナダのバンクーバーで開かれた国際シンポジウムで、彼が解読結果を発表すると、主催者が思わず「有難う。そしておめでとう」と言うほどインパクトがあった。ゲノム解読には9億円かかった。半分を通商産業省(現在の経済産業省)の研究費で賄えたとはいえ、特許料収入が無ければできなかっただろう。この放線菌のゲノム上には、30を超える物質を作る遺伝子が載っていることがわかった。無駄なものを作らないよう、ゲノムの20%をカットしたものも作った。ここに、欲しい物質を作る遺伝子を組み込めば効率がいい。創薬革命に繋がる技術だ。そんな事に誰も気付かないうちから取り組んできたのが、私たちの強みだ。海外の多くの研究者と友好を深め、広い分野の知識を得られたことも力となった。天然有機物化学の大家で、昭和44(1969)年のノーベル化学賞受賞者であるデレック・バートン教授(故人)は、『第1回マックス・ティシュラーメモリアルシンポジウム』で講演して頂き、平成10(1998)年に亡くなるまで交流を続けた。平成13(2001)年のノーベル化学賞を受賞したバリー・シャープレス教授とは、今も共同研究をしている。


⦿日本経済新聞 2016年8月30日付掲載⦿

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【霞が関2016夏】(20) “復興五輪”笛吹けど進まぬ福島の住民帰還

「5年を目途に帰還困難区域を解除する」――。自民・公明両党の『東日本大震災復興加速化本部』は今月24日、東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けた住民の早期帰還を柱とした第6次提言を纏め、安倍晋三首相に手渡した。安倍首相は、「政府・与党一体となって復興を進めていく」と力強く応じた。政府は着々と避難解除を進めるが、既に解除された地域に帰還住民は少ない。住民の間に放射線への根強い不安があり、仕事環境も未整備な為だ。にも拘らず、政府が早期の避難解除を急ぐ背景には、政治的な思惑が透けて見える。福島県内の避難指示区域は、2011年の福島第1原発の事故を受けて政府が設定したもの。放射線量が低い順に、避難指示解除準備区域(緑)・居住制限区域(黄)・帰還困難区域(赤)の3種類に色分けしている。2011年4月には、11市町村に跨る1149㎢と東京23区の2倍近く、対象となる住民も約8万人に上っていた。政府はその後、“緑”と“黄”の区域の除染を重点的に着手。現在では、避難区域は8市町村の724㎢・約5万人にまで縮小した。今回の提言では、残る地区も今年度末までに解除し、“赤”の区域についても「5年後を目途に住民が戻れる地域を一部で作るべきだ」とした。ただ、肝心の住民帰還は進んでいない。復興庁によると、実際に解除された区域に戻ったのは1400世帯程度で、対象の1割程度とみられる。同庁が昨年実施した住民調査でも、同年に避難解除された楢葉町の住民の4分の1が「今後、楢葉町には戻らない」と回答。「戻るかどうか判断がつかない」とした人も2割強いる。自治体も、解除に慎重な姿勢を示す。一部が避難指示区域の圏内にある川俣町は先月上旬、当初は今月を目指していた解除時期の目標を、約半年先送りした。

理由は、「解除後の町民の生活再建に課題がある為」。同町の基幹産業は農業だが、「風評被害の懸念が強く、営農を再開しても将来の先行きが描き難い」とし、「拙速な解除では住民は戻らない」としている。除染には巨額の費用もかかる。環境省が震災以降、昨年度までに実施した除染費用は1.8兆円。今年度の当初予算と補正予算案で、計8000億円超を計上している。巨額の費用を投じても、住民が帰還しなければ無駄金になりかねない。にも拘らず、政府が早急に避難指示解除を推し進めようとするのは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えている為だ。政府は東京オリンピックを“復興五輪”と位置付け、「復興した日本の姿を世界にPRしたい」と意気込む。『東京オリンピック組織委員会』も、野球やソフトボールの一部試合を福島県内で開催する案を検討する等、前のめりだ。被災地住民の政府・与党への不満も懸念材料だ。先月の参院選では、福島選挙区で法務省の岩城光英大臣(当時)が落選した。原発事故への政府の対応に不信感があったとみられる。政府・与党は「復興に取り組んでいる」との姿勢を強調し、「住民の支持を得たい」との考えも透けて見える。ただ、それ以前に、昨年度の復興庁予算では、総額の34%に当たる1兆9229億円が執行されなかった。住宅再建・公共事業・風評被害対策で積み残しが多い。住民帰還、そして復興の為には、解除を急ぐだけでなく、地域の再生に向けた環境作りが何より重要であるにも拘らず、だ。復興庁幹部は、「“卵が先か、鶏が先か”の話。解除して戻る人が増えれば、生活に必要なサービスが増え、また人が増える」と話す。復興に向けて、そうした好循環を作ることが、政府、とりわけ復興庁に求められていることではないか。 (古賀雄大)


⦿日本経済新聞電子版 2016年8月30日付掲載⦿

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【霞が関2016夏】(19) 金融庁長官の“新憲法”…処分庁から育成庁

「過去に成果を上げたからといって、従来の検査・監督のやり方をそのまま続ければ、却って弊害が生じかねない」――。金融庁の森信親長官は今月24日、新たな金融検査・監督の枠組みを議論する有識者会議の初会合で、こう強調した。金融庁は、『金融検査マニュアル』に代表されるようなルールに従わせる行政から、金融機関の主体的な取り組みを促す行政への転換を進めている。麻生太郎大臣は、「金融処分庁から金融育成庁への転換」と表現する。森長官が立ち上げた有識者会議には、「この流れを一過性で終わらせない」との強い思いが滲む。森長官は会議で、「金融庁は発足以来、個別の貸し出しが不良債権かどうか、銀行員に個別のミスが無いかだけに情熱を注いできたかのような印象が強いのではないか」とも語った。銀行側からすれば、「リスクを取った貸し出しが不良債権化し、金融庁から融資判断の妥当性を激しく追及されるくらいなら、リスクの少ない大企業や自治体向け融資を増やしたほうが得策」との考えが強かった。ただ、人口減少が進み、国際的にも低金利が続く中、こうした手法は成り立たなくなりつつある。それに合わせ、「金融機関の行動を大きく規定する金融庁の検査・監督手法も見直す必要がある」というのが、有識者会議の立ち上げの根底にある考えだ。金融庁は既に、銀行の個別の貸出資産の査定を止めており、検査官は銀行経営者と持続可能なビジネスモデルの在り方について議論している。金融機関に留まらず、その先にいる企業に対しても、初めて大規模な聞き取り調査を実施する等、新機軸を打ち出している。だが、森長官自身が「金融庁内・金融界共に、新しい取り組みが必ずしも十分に浸透していない」と漏らす。ある幹部は、「森長官をトップとする体制が代われば、形状記憶合金のように、再び“処分庁”に逆戻りするかもしれない。『ならば、やり過ごしたほうがいい』という意識が庁内外にある」と解説する。金融庁長官は絶大な権限や影響力を持っているが、民間企業のトップと違い、在任期間は歴代の最長でも3年だ。「事務方トップが代われば方針も変わる」と思われれば、森氏自身、“道半ば”と認める新しい取り組みは簡単に後戻りしかねない。金融庁として新たな検査・監督を体系立てて整理できれば、今後、何代もの金融庁長官の下でも憲法のような理念にもなる。有識者会議が年内を目途に纏める“考え方”は、憲法素案になるかもしれない。 (亀井勝司)


⦿日本経済新聞電子版 2016年8月26日付掲載⦿

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「山に親しむ機会を得て山の恩恵に感謝する」とか意味不明! 利権塗れの新たな祝日『山の日』と山に登る意識高い系バカが大迷惑な理由

今年から、新たな祝日『山の日』が施行される。メディアが“山に行こうキャンペーン”等を行い、それに乗せられるバカが増えるのは確実だ。正直、山の日も山に登る人間も、山そのものと社会にとって迷惑な存在でしかない。その理由を説明しよう。

今年から、8月11日は『山の日』になったらしい。あまりにも唐突で、「1月22日はカレーの日」「9月6日は松崎しげるの日」ぐらいピンとこないが、これでもれっきとした“国民の祝日”だ。先ず、“国民の祝日”自体がピンとこない。『国民の祝日に関する法律(祝日法)』の第1条には、こうある。「自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを“国民の祝日”と名づける」。ポエミーで支離滅裂な内容に1つずつツッコミを入れたいところだが、その辺りは一先ず置いといて、取り敢えず8月11日には挙って祝い、感謝しなければいけないようだ。法で定められているので、コレ強制。で、『山の日』って何? 再び、祝日法の第2条によれば、「山に親しむ機会を得て、 山の恩恵に感謝する」ことを趣旨としているのだとか。山岳信仰の山の民みたいな口ぶりが、妙に押し付けがましくてイラッとさせる。所詮、諸外国からの「日本は働き過ぎ」という言いがかりに対し、「労働こそ日本人の美徳だ」と言い返せず、無理矢理祝日を増やしているだけでしょうが。兎も角、日本の年間祝日数は16となった。先進国の中では断トツの多さだ。これで働き過ぎ? ゆとりか! 7月第3月曜日の『海の日』に対抗したのか、『日本山岳会』を始めとする“山業界”が『山の日』の制定を求めたのが事の始まり。“恩恵”だ何だのと綺麗事を並べているが、庶民の財布を半ば強引に抉じ開け、一部の業界にカネを落とさせるのが実際の趣旨。当然、祝日が1日捻じ込まれれば、製造や流通等社会全体の生産性は大きくダウンする。「登山客が増え、関連商品も売上アップ間違い無し!」とエゴ丸出しの山業界は、そうした代償までわかっているのだろうか? 当初は盆休みと連動させ易い8月12日を『山の日』とする案が採用されたが、1985年に発生した『日航ジャンボ機墜落事故』と同日だった為、「この日にお祝いをするのは違和感を覚える」と群馬県選出議員の小渕優子らが反対。群馬県知事も日付の見直しを求めたことを受け、「じゃ、前倒しにしましょーか?」と8月11日に大決定。いやいや小渕さん、論点ズレているでしょ! 強制的に休みを取らせ、消費活動を促すのが本来の目的であって、“祝う”つもりなんて端から無い筈。祝日の翌日に1日出勤して、その翌日からお盆休みとか、労働意欲も物理的生産性も一番落ちるヤツですから! 因みに、元々8月11日は、1936年のベルリンオリンピック女子200m平泳ぎで前畑秀子が優勝したことと、実況を務めたNHKの河西三省アナウンサーが「前畑ガンバレ!」と連呼したことから、『ガンバレの日』に定められている。美辞麗句を並べる『山の日』なんかより、よっぽど好感が持てる。前畑、もっとガンバレ!

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カネという恩恵を信仰する山業界と、その口車に乗せられた議員たちの目論見通り、既に“山の日商戦”は始まっている。『阪神電鉄』ら鉄道グループ会社2社は、『山の日キャンペーン』と題した各種施策を実施。また、老舗登山雑誌『山と渓谷』を出版する『山と渓谷社』では、期間限定で電子書籍と雑誌の半額販売を行う。来たる8月11日に向け、山絡みの企画や特集を組む便乗企業や扇動メディアは、今後も出てくるだろう。こうした空騒ぎにまんまと踊らされるのが、愚かなほどお人好しな(一部の)ニッポン国民たち。「今、山がキテる!」「カレとカノジョの山デート」「山の空気が、心を浄化してくれる」「お山のお陰で夜尿症が治った!」等々、根拠の無い煽り文句にホイホイと乗せられる。『ブルータス』やら『オズマガジン』やら、トレンド系雑誌の表層的な特集記事を読んで、「あ、何か素敵かも」と週末の山登りを急遽決定。彼らみたいな“踊らされ層”全体に共通しているのが、よく言えば行動的、有り体に言えば腰も考えも軽いという点だ。碌な装備も揃えず山に入り、最低限のマナーすら守れない。抑々、マナーを守れるような品性があるなら、一部業界の要望で作られた祝日なんかに乗せられはしないのだから、まぁ当然の帰結だ。2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された富士山や、“世界一登山客が多い山”としてミシュランガイドに掲載された高尾山も、年々登山客を増やす一方で、遭難やトラブルの数まで“過去最高”を塗り替えている。冗談のような話だが、革靴やハイヒールを履き、背広やスカートを着て、雨具も持たずに入山する人が未だに少なくないのだとか。また、山では「持ち込んだものは持ち帰る」というのが基本ルール。ゴミは勿論、トイレが利用できない状況ならば、携帯用トイレで排泄物も持ち帰るのがマナーだ。にも拘らず、登山道の脇には投げ捨てられたゴミや、「土に帰るから大丈夫」とこっそり落としていった排泄物が散乱している。「山の空気は澄んでいて美味しい」というありがちな台詞も、ゴミとウンコに囲まれた中では不条理なギャグにしか聞こえない。実際、このまま富士山が汚され続ければ世界遺産の取り消しもあり得る話で、ユネスコの諮問機関は入山規制の導入も勧告している。『山の日』は俄かアルピニストを増やし、“美しかった”山の環境を更に悪化させようとしている。近い将来、『誰が山を殺した』なんてドキュメンタリー番組をNHKスペシャル辺りがやってくれそうで、ちょっぴり楽しみだ。どんな分野においても、浮薄な流行に釣られた初心者というのは傍若無人で厄介だ。ただ、俄かアルピニストだけが厄介なのかと言うと、実際はそうでもなさそうである。

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東京都知事選強行出馬→圧勝! 小池百合子、“風見鶏”人生の罪と罰

ポスト舛添を選ぶ東京都知事選がスタートした。本命とされるのは元環境大臣の小池百合子だが、東京都民は、このオバサンがどれだけ性質が悪いか、知っているのだろうか。小池百合子の正体を暴いてみた。

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まるで盛り上がらなかった参院選とは対照的に、候補者選びの段階から注目を集めている東京都知事選。中でも“本命候補”と目されているのが、環境大臣等を歴任した小池百合子だ。先月29日に突然、「崖から飛び降りる覚悟」等と大袈裟なことを言って出馬表明すると、与野党が参院選の真っ最中なのをいいことにとんどん準備を進め、今月7日には正式に立候補を宣言。しかも、彼女が巧妙だったのは、この出馬会見で推薦を巡って一悶着あった自民党都連のことを「ブラックボックスのよう」と批判し、選挙公約として“東京都議会の冒頭解散”“利権追及チームの設置”舛添問題第三者委員会”を挙げたことだろう。自民党都連は“利権の伏魔殿”と言われ、一部の大物幹部が牛耳って党本部も手を出せない独立国。前知事の舛添要一を担ぎだしたのも、舛添の公私混同疑惑を有耶無耶に終わらせたのも、全て都連の仕業だ。一方の小池は、小泉純一郎政権で環境大臣に務め、小泉が自民党の守旧派を“抵抗勢力”と呼んで仮想敵とし、世論を味方に付けたやり方を間近で見ている。そこで、会見で都連を悪者に仕立て、「知事のスキャンダルが続く都政を変えられるのは自分しかいない」と世論にアピールした訳だ。実際、今や小池の人気は鰻上りで、情報番組やワイドショーに毎日のように露出。彼女に振り回された自民党は、今月9日現在、未だ候補者も正式決定していない。自民党が元岩手県知事で元総務大臣の増田寛也を擁立しても、世論調査や都知事選の選挙分析等を見る限り、最早小池女史の圧倒的有利は動かない情勢なのである。全く、本当に東京都民は懲りないバカと言うしかない。確かに、小池は元ニュースキャスターで、もういいお歳とはいえ、嘗ては政界を代表する美女だった。そのイメージから考えて、舛添や猪瀬直樹に比べたら遥かにマシに見えるだろう。しかし、断言するが、若し彼女が都知事になったりしたら、都政の混乱は舛添時代どころではなくなる。小池百合子は、それくらいトンデモな政治家なのだ。

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有名な話だが、小池には“政界渡り鳥”“マダム回転寿司”“永田町の女狐”等々と、如何にも性質が悪そうな渾名がある。この内、“渡り鳥”“回転寿司”というのは、その時々で最も勢いと権力を持った大物政治家に取り入り、政権中枢の地位を手に入れてきたことを指す。例えば1992年、彼女が政界入りにした時に接近したのは、『日本新党』ブームの中心人物で、翌年の細川連立政権で総理となった細川護熙だった。その細川が金銭スキャンダルで失脚すると、小沢一郎が作った『新進党』に参加。小沢の側近となり、新進党が『自由党』に変わって『自民党』と連立を組んだ際には、経済企画庁の政務次官に就任している。その後、自由党が分裂すると小沢に見切りをつけ、『保守党』を経て自民党に移籍。すると、党内第2派閥の森派(後の町村、細田派)に入って、今度は小泉元首相に近付き、環境大臣に任命されて初入閣を果すのだ。小池がよく「私が考えた」と自慢気に語るクールビズは、この環境大臣時代に残した数少ない実績だ。更に、2008年には同じ町村派の中川秀直元官房長官に擦り寄り、女性として初めて自民党総裁選に出馬し、3位の得票を得る。党員票だけを見れば、トップの麻生太郎に次ぐ2位。“初の女性総理”誕生も夢ではないところまで上り詰めた訳である。色気という武器で政界の実力者に取り入り、権力を握る為に節操無く政党を渡り歩いてきたのが、小池百合子というオンナなのだ。しかも、優先されるのはいつも自分の上昇志向だけで、全てを自分の手柄のようにマスコミにアピールする。勿論、他人の迷惑等一切考えない。小泉内閣で環境大臣になった時は、派閥のボスである森喜朗の反対を押し切って、勝手に首相官邸に就任を承諾。総裁選も全く同じで、森は以降、小池を毛嫌いするようになった。選挙の手法も滅茶苦茶だ。『統一教会』や『立正佼成会』に支援を頼んだかと思えば、2009年の衆院選では、信じられないことに『幸福の科学』に選挙協力を依頼している。権力を手に入れる為なら、政治信条など二の次。だから、政党を渡り歩くのも平気なのである。こうした小池女史の政治スタンスがよく現れていたのが、2012年の総裁選だろう。安倍晋三・石破茂・石原伸晃等が出馬したこの総裁選で、小池は当初、安倍を推していた。実際、彼女は直前の安倍陣営の勉強会に出席し、しかも司会として三原じゅん子を連れて行って、安倍を喜ばせている。ところが、石破に党員の支持が多いと知ると、小池は掌を返すかのように、三原と共にあっさりと石破に寝返ってしまうのだ。

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日本企業襲う空売りファンド、理はどこにあるのか――日本企業が相次ぎ標的に、どぎつい手法に割れる賛否

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「事実誤認の多さや下品な表現を見て、非常に驚いた。当社のビジネスモデルも全く理解されていない」。『サイバーダイン』の山海嘉之CEOは、困惑を隠し切れない。「世界で最も途方もなく低価な株券」――。今月15日、日本の有望ベンチャー企業の1つとされるサイバーダインに突然、こんなリポートが突き付けられた(右写真)。発行したのは、アメリカに拠点を置く『シトロンリサーチ』。証券会社等から株を借りて売却し、値下がり後に買い戻して利益を得る“空売りファンド”だ。リポートの内容は、競合企業と比較して株価の割高感を指摘するもの。中には同社株を排泄物に擬える等、あまりに品位に欠ける表現も含まれる。だが、市場は敏感に反応した。翌16日のサイバーダインの株価は、一時、前日比225円安の1852円まで売り込まれた。19日にはサイバーダインが「事業特性を理解せず、分析が非常に浅い」等詳細な反論書面を公開したが、株価の反発力は鈍い。6月にサイバーダイン株の空売りを表明していた香港に拠点を置くファンド『オアシスマネジメント』創業者のセス・フィッシャー氏は、「サイバーダインの反論には新しい情報が殆ど無い」と冷ややかだ。空売りファンドが日本企業を標的にするケースは、初めてではない。先月27日には、『グラウカスリサーチ』が『伊藤忠商事』についてのリポートを発行。伊藤忠の株価は一時、約10%下落した。伊藤忠の会計処理が、減損損失を意図的に回避する等、“不正に”操作されている可能性を指摘するものだった。今月2日、伊藤忠の鉢村剛CFOが、第1四半期の決算説明会で「減損等は全て、監査法人から適正意見を貰い、処理している」等と反論したが、今月23日時点でリポート発行前の株価水準を取り戻せていない。ある市場関係者は、こう解説する。「空売りファンドは違法ではなくとも、“グレー”な部分を指摘し、それで株価が下がればいい。多数の投資先を持ち、複雑なグループ内取引がある商社や、将来性を見極め難い技術系ベンチャー等は標的になり易い」。イギリスの調査会社『アクティビストインサイト』によれば、2010年からアメリカの417社が空売り目的の調査リポートのターゲットになっている。

20160830 07
世界を見渡せば必ずしも珍しい存在ではないが、“どぎつい”手法に初めて直面した日本の株式市場が動揺した。独立系運用会社『ミョウジョウアセットマネジメント』の菊池真代表は、「これまでに無いファンドの登場で、投資家が相当動揺したのだと思う。投資家が慣れれば、徐々に空売りファンドの株価への影響は小さくなるのではないか」と見る。果たして、空売りファンドに理はあるのか。見方は分かれる。空売りファンドが提示するのは、飽く迄も特定銘柄の株価についてのファンドとしての見立てだ。市場が反応して株価が下落すれば、手仕舞いして利益を確定する。サイバーダインの山海CEOは、「シトロンとサイバーダインの問題という以上に、証券市場と空売りファンドの問題。それだけに、『毅然と対応する必要がある』と考えて、反論を出した」と説明する。『日本取引所グループ』の清田瞭グループCEOは、伊藤忠とグラウカスの事例を受けて、「倫理的に若干疑問がある」と発言した。伊藤忠は、「グラウカスは、台湾で2014年に風説の流布等で訴えられ、損害賠償の支払いを命じられている」(広報)と指摘。グラウカスは否定しつつ、こう反論する。「エンロンの粉飾事件に最初に警鐘を鳴らしたのは、我々空売りファンドだ。市場は幅広い投資家を必要としている」(同社リサーチディレクターのソーレン・アンダール氏)。空売りファンドの“襲来”が齎している教訓は何だろうか。「伊藤忠は付け込まれる余地があった」。株式市場には、そんな声がある。例えば、伊藤忠は今年1~3月期にヨーロッパのタイヤ事業や青果のドール事業の減損等で、約900億円の損失を追加で計上。岡藤正広社長は、『三菱商事』と『三井物産』が減損で最終赤字に転落する見通しとなり、「急遽、落とせるものは落とした」と記者会見で打ち明けた。今年3月期の業績で商社トップの座を維持できる範囲で、恣意的に減損処理したと受け取られかねない発言だ。「日本企業は情報開示が不十分で、市場が非効率的なので、標的になり易い」(アクティビストインサイトのジョシュ・ブラック編集長)。『東芝』の不正会計で、企業の要求に監査法人が抗い切れない実態が明らかになり、日本市場の信頼感を損なった後遺症は大きい。企業は、標的とならない為にどうすべきなのか。IR(投資家向け広報)支援会社『ジェイユーラスアイアール』の岩田宜子代表取締役は、「透明性を持ったガバナンス体制を作り、日頃から投資家の信頼を得ておくことに尽きる」と指摘する。 (広岡延隆・大竹剛)


キャプチャ  2016年8月29日号掲載

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【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(14) 移植手術の優先順位をカネで買う“非情な市場原理”の実態

映画『ハンニバル』(メトロゴールドウィンメイヤー)に登場するメイスンは、レクター博士の策に嵌り、自らの顔の皮を剥ぎ取って犬に食わせる。顔の皮膚を失ったまま生きるメイスンの恐ろしい風貌は、今も鮮明に覚えている。2005年、フランスでメイスンと同じように、顔を飼い犬に食べられた女性がいた。こちらは現実に起こった悲劇だが、鼻・唇・顎までを失った顔は、メイスンよりもリアルなだけに衝撃的だった。彼女の名はイザベル・ディノワール。当時38歳の彼女は、事故から数ヵ月後に世界初となる顔面移植手術を受け、顔を取り戻すことに成功する。イザベルに顔面を提供したのは、同世代の自殺した女性だった。フランスには、『推定同意の原則』が医療界に定着している。これは、ドナーとなり得る患者が発生した場合、本人や家族が拒否していない限り、臓器や身体組織を摘出、移植に使用して良いというものだ。スイスやベルギー等では『推定同意の原則』が適用されており、中でもフランスは臓器移植において、積極的且つ高度な技術を持つ国である。その為、近隣諸国、とりわけ中東の富裕層が臓器移植を行う場合、フランスが選ばれることが多い。ところが、臓器移植が活発であれば、必然的にドナー不足となるのは当然のことだ。腎臓ならば、法律や倫理は別として、健常者から提供も受けられるし、乱暴な言い方をすればカネで買うこともできる。しかし、心臓や肝臓となるとそうはいかない。ドナーの数に対してレシピエントの絶対数が多く、適合の問題もあるからだ。日本で唯一の公的組織である『日本臓器移植ネットワーク』によると、心臓移植の場合、レシピエントの登録から移植手術までの平均待機期間は978日となっている。

移植が必要なレシピエントにとって、約2年9ヵ月の待機期間は耐え難いのだろう。その為、海外での移植手術を希望する人が出てくるのだが、最近はカネで移植順位を優先させる富裕層患者のせいで、費用が高騰しているらしい。その背景には、「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすべき」という、2008年に『国際移植学会』が採択した『イスタンブール宣言』がある。これは、臓器売買と移植ツーリズム、それに伴う人身売買を無くす目的のものだが、結果として正常な移植手術の費用高騰と、違法な臓器ビジネスを増長させることになった。臓器移植を必要とするレシピエントは、世界中に存在する。そこで順位を優先させるのが“カネとなるのは、市場経済の原則である。自由経済では、個人の消費行動は、自己責任において自由に行われるのが基本である。臓器の需要に対して供給が著しく不足すれば、価格が高騰するのは当然だ。正常な市場では、「超過需要で価格が上昇すると、需要が減って均衡する」というメカニズムが働く。ところが、臓器という価値のある“商品”には、「総需要に対して総供給が合わされる」とされるケインズの『有効需要の原理』が働くようだ。これは“臓器バブル”と言っても過言ではないだろう。そして臓器ビジネスは、「富める者が貧しい者から搾取する」という構図を作り出すが、これも自由経済の宿命だろう。世界の需要に対して、臓器の最大供給国はインドである。インドの首都・デリーにあるオールドデリー駅の近くに、GBロードという所がある。ここが、地上に存在する最も悍ましい場所ではないだろうか。オールドデリーの混沌とした街並みに3~4階建ての古い雑居ビルが並び、1階は雑貨やスパイスを売る商店が入っている。その2階には、鉄格子の隙間から多くの女たちが通りを見下ろしている。この異様な光景と臓器売買との関連については、次回触れたい。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2016年8月30日号掲載

テーマ : 国際問題
ジャンル : 政治・経済

【私の履歴書】大村智(29) 美術館を建てる――女性画家の作品一堂に

『女子美術大学』の100周年記念事業では、1つの大きな出合いがあった。記念展『ヴィーナスたちの100年』に出品されていた、卒業生の岡本彌壽子さんの作品『暁の祈り』の前で、ぴたっと足が止まってしまったのだ。矢を持った女性は、心配事か何かで神社にお参りした帰りなのだろう。祈りの雰囲気が実によく描けている。男性の絵では、こうはいかないだろう。これを機に、「理事長として卒業生の絵を集めてみよう」と思い立った。家内に「後で売れなくて困るわよ」なんて言われながらも、次々に購入した。1点10万~20万円のものもあれば、100万円を超えるものもあった。素人にも拘らず、「よくこれだけ良いものを集めたな」と褒められる。自分で言うのも何だが、眼識があるのだろう。軈て置き場が無くなってきたので、「美術館を作ってしまおう」と考えた。「日本には無い、女性画家の作品を集めた美術館にしよう」。そう思って平成19(2007)年10月、実家の隣接地に『韮崎大村美術館』を開館した。2階の1部屋だけは、私が好きな鈴木信太郎の作品を集めた。女性画家の常設展がある美術館は、世界でもアメリカに1つあるのみと聞く。2階には、3面に大きな窓を配した展示室兼用の展望カフェも設けた。自分で足場に乗り、八ヶ岳や富士山が見えるように窓の高さを決めたので、眺望には自信がある。

美術館建設の原資は、私が構造を明らかにした抗生物質を基に薬を開発したアメリカの製薬大手『イーライリリー』からの技術指導料と、規定に基づく『北里研究所』からの特許報償金等だ。最初の1年間は自分で運営して、年間の維持管理費や人件費を計算し、市に示した上で平成20(2008)年に作品ごと寄贈した。館長は私だが、韮崎市立の美術館として運営している。開館10周年となる来年、私の記念室を作ってくれるそうだ。生家を“蛍雪寮”と呼び、『北里大学』の学生たちとセミナーを開いたことは前にも書いたが、風呂は近くの温泉にバスで入りにいっていた。「いっそ自分で掘ってしまおう」と2年以上かけて掘削し、良質な温泉を掘り当てた。学生の頃に地質学の知識を身に付けていたので、「この辺りは有望だ」と考えたが、地盤が強固で予定より難航した。『武田乃郷 白山温泉』と名前を付けた。億単位かかった。嘗て訪れたスイスの洗練された観光地を思い出し、看板は控えめにしてある。温泉は好評で、静岡県辺りからも日帰り客が来る。要望に応えて、隣に『そば処 上小路』も造った。両方とも私のコレクションから選んだ絵画をかけて、楽しんで頂いている。これだけの絵を鑑賞できる風呂屋さんや蕎麦屋さんは、中々無いだろう。故郷では、仲間との再会も楽しみだ。実家の近くに住んでいた友人の田辺達之さん、彼の紹介で知り合った山寺仁太郎さんと私の3人で始めた飲み会がどんどん広がって、“会”を作ることになり、私が『同事会』と名付けた。曹洞宗の教書『修証義』に出てくる言葉で、「差別をせず、皆で仲良くやろう」という意味を込めた。会員には、地元の名士や財界人が名を連ねる。ノーベル賞受賞後も、ゴルフ仲間の『明日の会』と共に真っ先にお祝いの会を開いてくれ、500人も集まった。故郷の様子がわかって有難い。


⦿日本経済新聞 2016年8月29日付掲載⦿

テーマ : 科学・医療・心理
ジャンル : 学問・文化・芸術

【アメリカ大統領選2016・現場から】(04) 通商政策…自由貿易へ“怒り”拡大

20160830 04
「自分たちは自由貿易の被害者ではないか」――。嘗て製造業等で栄えたが、経済のグローバル化で衰退した東部から中西部。“ラストベルト(錆び付いた工業地帯)”と呼ばれるミシガン、オハイオ、インディアナ州等では、中小企業や白人労働者層の間にこんな疑念が渦巻いている。「アメリカには安い製品がどんどん入ってくるが、こっちは輸出できないじゃない」。ラストベルトの一角であるニューヨーク州北部のローム市にある銅加工会社。営業担当者のエイミー・オシャウネシーさん(38)は吐き捨てた。同市は嘗て、全米の銅製品生産額の1割を占め、“銅の街”と呼ばれた。オシャウネシーさんの会社は、創業215年の老舗だ。だが、2000年頃から製品の納入先が次々と人件費の安いメキシコや中国に移転し、工場の閉鎖等で、500人以上の従業員の内、約170人がクビになった。同市の工場を案内してもらった。金属がぶつかる乾いた音と共に、手のひらほどの大きさの銅板を生産する機械が稼働していた。だが、その横では、生産縮小に伴い、幅3~4m・奧行き十数mの大型機械の廃棄に向けた洗浄が進められ、もうもうと蒸気が上がっていた。「ヒラリーが当選したら更に4年間、この状況が続く。負け組になった中間層の味方はトランプ氏」。オシャウネシーさんは20年近く民主党を支持してきたが、今回は同党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(68)でなく、共和党候補のドナルド・トランプ氏(70)に投票するつもりだ。

20160830 05
民主党の支持基盤の労働組合にも、同様の声が広がる。「北米自由貿易協定(NAFTA)が仕事を奪い、貧困を齎した。環太平洋経済連携協定(TPP)もそうなる。だからトランプ氏を支持することにした」。ペンシルベニア州ミラーズバーグ市の工具メーカーで労働組合長を務めていたロバート・ハーシュさん(54)は語る。395人いた従業員は、この十数年で、ハーシュさんを含め約4分の3が一時解雇された。「ここでは碌な仕事は見つからず、現実から逃避する為、酒や薬物に溺れる者が出た。その結果、犯罪も増えた」。ハーシュさんは、「自由貿易が地域を荒廃させた」と怒りを隠さない。自由貿易について、オバマ大統領は「アメリカの21世紀の繁栄を支える雇用や経済成長を生み出す為、アメリカ製の商品を輸出する新しい市場を世界で創出することが不可欠だ」として、推進する立場を取ってきた。だが、生産拠点の移転等で2000年以降、アメリカの貿易赤字は高止まりし、安価な中国製品等の輸入増加や工場の海外移転で、恩恵を実感できない国民が増えている。トランプ氏は、こうした有権者に狙いを定め、過去の選挙で民主党の勝利が続いてきたラストベルトの接戦州をひっくり返し、勝利する戦略を描く。共和党は自由貿易を擁護してきたが、トランプ氏はNAFTAやTPPを「雇用を無くす協定だ」と批判し、「クリントン氏は支持してきた」としつこく攻撃している。クリントン氏は批判を躱す為、TPP反対を明確にした。両候補は今後も保護主義的な姿勢を強調するとみられ、世界最大の経済大国であるアメリカの通商政策の在り方が大きく転換する恐れが現実味を帯びている。 (有光裕)


⦿読売新聞 2016年8月22日付掲載⦿

テーマ : 国際ニュース
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