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【特別対談】 「ヤクザが仕切るAV業界は昔から最低最悪の世界だ」――太賀麻郎(元AV男優)×中村淳彦(ノンフィクションライター)

AV出演強要事件――。元AV女優が「望まない作品への出演を強要された」と主張し、業界が揺れに揺れている。人権派弁護士も登場し、騒動の収束は見えない。AV業界の黎明期からAV男優として業界を見てきた太賀麻郎に、気鋭のライター・中村淳彦が話を聞いた。

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中村「AV業界が大荒れです。2016年3月3日に、国際人権NGOの“ヒューマンライツナウ”が出演強要の調査報告書を発表し、6月12日にはプロダクション最大手“マークスジャパン”の村山典秀代表が逮捕。更に7月8日、キャンプ場でのAV撮影で52人が書類送検され、そして人気女優が『前所属事務所社長に騙されて出演させられた』と告発…。もう無茶苦茶」
太賀「『夢を利用されて騙された』って女優の話はおかしい。『騙された』『洗脳されていた』って言い方して、それが醒めたということだった。18歳・19歳の子が言っているならばわかるけど、成人だよ? カメラの前で泣いていて、『何それ?』って」
中村「プロダクションは、口説いて出演させるのに凄く時間をかけている。単体か企画単体で大きなカネにすること前提で、労力を費やした洗脳。騙されて怒るのは理解できるけど、嘘を自分が信じてAV出演したことを刑事で訴えるのは無理があるよね。嘘の勧誘が犯罪だったら、例えば介護業界とかリクルートとか皆、壊滅しちゃいますよ」
太賀「最低でも出演料を全額返還してから言わないと。売上にしたら何千万円か億単位の収入があった訳でしょ? 単体になって有名になってAV女優を続けていたって結果オーライなのに、全く意図がわからない」
中村「AV女優は、この15年で人気職になって応募が増えたから、騙して出演させるケースは減った。でも、それまで騙すのはずっと当たり前だった。問題だらけなことは確かで、怒る女優がいるのもわかる」
太賀「俺は、“騙している”って言い方がちょっと引っかかる。結局、女にも下心がある。プロダクションは“AV出演”って下心があって、女のほうは『有名になりたい』とか『芸能人になりたい』とか下心がある。結局、利害が一致したから出演した訳でしょ?」

中村「『AV出演が死ぬほど嫌だった』というなら、何本も出演しないし、パニックになって直ぐに訴えるよね。夢を利用する夢喰いみたいなことは何もAV業界だけじゃないし、あまりにも今の日本社会に溢れていること」
太賀「AV業界は、女優も男優も、監督もスタッフもギャラが高い。一般の仕事より高い。どうしてかというと、“リスク”があるから。“有害業務”だからですよ。今までの業界人は、『有害業務をしている』って覚悟があってやっていた訳。元々、AV業界は問題だらけなの」
中村「中途半端だったり、能が無かったり、不良だったり、一般社会から排除された人が流れ着く仕事だった。有害業務を自覚して、女の裸を利用しながら売り上げて、何とか生きていく…みたいな」
太賀「今、おかしくなっているのは、皆、覚悟が無いから。AVなんて、どう考えても普通の仕事ではない。昔の女優とか関係者は、お金が欲しかった訳ですよ。『本番するだけの約束だったのに、レイプされた』とか。そういうこともあった訳。でも、『お金を貰えるから』ってことで納得していた訳よ」
中村「AV業界の性質が変わったのは、この15年くらい。一般人が増えることは、個人的に歓迎すべき流れだったけど、大手セルメーカーが新卒採用を始めて、“普通の人”が業界で働くようになった」
太賀「普通の子たちが入ってくるから、“有害業務”とか“底辺”って意識が無い訳。それに、お金に困っている層って訳でもない。だから覚悟が無い。プロダクションも、『覚悟が無い女を“カネになるから”って適当なことを言って口説くのはどうなの?』って話」
中村「『AV女優になりたい』って応募が増える中で、プロダクションが態々時間と費用をかけて口説くのは、超美少女とか美人とかお嬢様とか。問題になったプロダクションは“夢”とか“家族”とか稚拙な言葉を使っていたけど、『今の時代に合わせて、そこまでお花畑な言葉を使っているのか?』って。何ていうか、騙される側が劣化しているよね」

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テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
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『LDH』が1億円でお買い上げ! 全く輝かない『日本レコード大賞』栄光の黒歴史

『日本レコード大賞』の買収問題が世間を騒がせている。しかし、腐敗は何も今に始まったことではない。買収や談合絡みの審査方法は年季が入っており、歴代受賞者には疑惑ばかり。果ては死人まで出しているレコード大賞の実態を、満を持してここに記す。 (フリーライター 星野陽平)

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『紅白歌合戦』(NHK総合テレビ)と並ぶ年の瀬の風物詩である『日本レコード大賞』(TBSテレビ系、以下“レコ大”)に激震が走っている。『週刊文春』が、昨年末のレコ大で買収工作があったことを裏付ける請求書を公開したのである(右画像)。同誌の2016年11月3日号に掲載されたのは、“芸能界のドン”と呼ばれる周防郁雄社長が率いる『バーニングプロダクション』から、『EXILE』の所属事務所である『LDH』に対する2015年12月24日付の請求書で、金額は1億800万円。但し書きには、“年末のプロモーション業務委託費として”とある。文春の取材によれば、昨年末のレコ大では、バーニングから審査員に対して、EXILEの弟分である『三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE』(以下“三代目”)を強く推す働きかけがあり、実際にグランプリである日本レコード大賞を三代目が獲得したという。周防社長と言えば、芸能マスコミに大きな影響力を持っているが、レコ大の審査委員の多くは新聞記者が務めている。日頃から取材で世話になっているバーニングから、「今年のレコ大は○○で宜しく」と言われれば、審査員も抵抗できないのである。昨年のレコ大の審査が始まる前の下馬評では、約180万枚売れた『AKB48』の『僕たちは戦わない』が圧倒的に優位だったが、最終審査になると、15人の審査員の内の11人が、約20万枚売れた三代目の『Unfair World』に挙手した。この逆転劇が起きたのは、“芸能界のドン”の意向が大きく影響した為だった。まさに、“不公正な世界”が実現した瞬間だった。

レコ大と言えば、予てよりレコード会社や芸能事務所による談合疑惑や、審査員の買収疑惑が囁かれてきたが、今回の文春の報道では、その決定的な証拠が初めて明らかになったのである。最近のレコ大受賞曲を並べてみると、不自然さは一目瞭然だ。

2008年 EXILE『Ti Amo』
2009年 EXILE『Someday』
2010年 EXILE『I Wish For You』
2011年 AKB48『フライングゲット』
2012年 AKB48『真夏のSounds good!』
2013年 EXILE『EXILE PRIDE~こんな世界を愛するため~』
2014年 三代目J Soul Brothers『R.Y.U.S.E.I』
2015年 三代目J Soul Brothers『Unfair World』

EXILEグループとAKB48がほぼ交代で獲得しているのである。昨年のレコ大での工作が事実ならば、「それ以前にも同様のことがあった」と推測せざるを得ないだろう。レコ大は、今年で58回目を数える伝統ある音楽祭だが、ここまで悪事が暴露されながら、TBSは何事も無かったように今年も放送できるのだろうか? だが、レコ大の歴史は腐敗の歴史である。レコ大が創設されたのは1959年のこと。アメリカで『グラミー賞』が始まった翌年だった。当初、各レコード会社からは「大事な商品に傷を付けるつもりか?」と言われ、評判は芳しくなかったが、回を重ねる毎に受賞した歌手が次々とスターになっていくようになり、レコード会社側も対策に乗り出すようになった。“黒い霧”と呼ばれた醜聞が持ち上がったのは、1964年の第6回だった。この年のレコ大は青山和子の『愛と死をみつめて』が受賞したが、事前に青山本人が各審査委員の自宅を菓子折り持参で訪れ、挨拶回りをしていたが、「菓子折りに入っていたのはお菓子ではなかった」と噂された。翌1965年のレコ大は美空ひばりの『リンゴ追分』が受賞したが、この時も、ひばりが所属するレコード会社が各審査委員に林檎を送り、「林檎箱の中に実は…」という噂が流れた。以降、レコ大は無名歌手が新人賞を受賞する等して、毎年のように不正が囁かれるようになる。レコード会社は、審査委員にレコードの解説等を書いてもらい、高額の原稿料を支払ったり、芸能事務所は審査委員を接待漬けにしたりして、レコ大の票を獲得しようとした。何故、レコ大でカネが飛び交うのか? 当然、それは元が取れるからである。

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【ヘンな食べ物】(19) 不思議尽くし、チョウザメ探索記

「キャビアは高級食材として有名だが、その“親”であるチョウザメも美味い」――。そんな話を聞いていたので、イランのカスピ海沿岸部に行った時に探したのだが、「ウズンブルン(※ペルシア語で“チョウザメ”のこと)、この辺にないですか?」と訊くと、何故か皆が大笑いする。中には爆笑の余り、私に抱きついて涙を流す人までいた。一体、何がそんなにおかしいのか? 謎を解決してくれたのは、両替屋のオヤジだった。笑いながら、手を股間に当てて腰を振る下品な仕草をしてみせた。なるほど…。どうやら、食べると精力が付く、強いて言えばスッポンのような存在らしい。確かに、見慣れない外国人が道端でいきなり、「この辺にスッポンないですか?」と訊いてきたら皆、笑うだろう。そして、イラン版のスッポンは日本のものより入手が困難。散々訊いて回った挙げ句、見つけたのは闇取引の魚屋だった。500gで5000円近くもした。禁漁期だったのかもしれない。大枚叩いてゲットしたチョウザメ肉は、市場近くの食堂で頼み、炭火焼きにしてもらった。苦労の甲斐もあってか、これが劇的に美味い。脂がよくのっており、白身魚と鶏肉の中間のような、ちょっと魚離れしたような味。何とも不思議なことに、ここから1万㎞以上離れたアマゾンの名魚・ピラルクによく似ている。もっと言えば、ワニ肉をも彷彿させる。よく考えると、ピラルクもチョウザメも恐竜の時代から生きていた、世界的に稀な古代魚。勿論、ワニもその時代から存在する。「進化論的に、古代魚は爬虫類に非常に近い場所に位置しているのかもしれない」――。“イラン版スッポン”を食べながら、生物の進化に思いを馳せてしまったのだった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月29日号掲載

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【回顧2016・経済編】(上) “予想外”…トランプ氏、相場も覆す

2016年は、国内外で思いがけない経済ニュースが相次いだ。キーワードで1年を振り返る。

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「史上初や想定外が沢山起こり、“申年は騒ぐ”と言われる通りの相場となった」――。『日本取引所グループ』の清田瞭CEO(最高経営責任者)は、イギリスの『ヨーロッパ連合(EU)』離脱やアメリカ大統領選で揺れた市場を、“申年は騒ぐ”という相場格言を用いて振り返った。東京株式市場は、年始から大荒れの展開だった。中国経済の減速懸念から上海株が急落し、投資家心理が急速に悪化。日経平均株価は、算出を始めた1950年以降で初めて、年始から6日続落した。中国等新興国経済の減速に加え、産油国が減産に踏み切れなかったことを受け、原油価格は下降線を辿った。ニューヨーク市場の原油先物価格は、2月に12年9ヵ月ぶりの安値となる1バレル=26ドル台をつけた。「オイルマネーが世界の株式市場から引き揚げられる」との観測から、日経平均は1年4ヵ月ぶりに1万5000円を割り込んだ。市場に衝撃を与えたのが、6月のイギリス国民投票だ。

イギリスのEUからの離脱が決まった同24日に、円相場は1ドル=99円台まで急伸し、日経平均は再び1万5000円を割った。日経平均の下げ幅は歴代で8番目で、円相場の1日の値幅も過去最大級となる等、記録尽くめの1日となった。投資家の弱気なムードを一変させたのが、先月のアメリカ大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利だった。大半のエコノミストは「トランプ氏が勝った場合は円高・株安が大幅に進む」と予想していたが、全く異なる展開になった。開票が行われた9日こそ、日経平均は900円超下落したが、翌日は1000円超上昇し、その後も値上がり基調が続いた。「トランプ氏の掲げる大規模な減税や財政出動が、アメリカの景気を回復させる」との期待が膨らんだ。「共和党が上下両院で過半数を占めることになり、政策が進め易くなった」との見方も強まった。同月末に『石油輸出国機構(OPEC)』が減産で合意したことも後押しとなり、市場は活気付いた。ニューヨーク市場のダウ平均株価は、史上初の2万ドルに近付き、日経平均も昨年末の終値を超える水準で推移している。大手証券幹部は、「トランプ氏の政策が市場にプラスになるのは明らかだった。トランプ氏勝利を予想できなかったことより、その後の相場展開が読めなかったことが残念だ」と悔しがる。市場関係者の間では強気の見方が広がっているが、相場格言では“酉年も騒ぐ”とされる。2017年も、国内外の情勢次第で揺れ動く年となりそうだ。


⦿読売新聞 2016年12月27日付掲載⦿

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【回顧2016・政治編】(上) 民進低迷、“批判一辺倒”

今年の政界の分岐点を振り返り、2017年を展望する。

20161229 05
今月8日夜、東京都港区虎ノ門の焼き肉店に、民進党衆議院議員の松野頼久・今井雅人ら旧『維新の党』出身の民進議員約10人が集まった。松野は維新時代に代表、今井は幹事長を務め、共に民主党との合流協議を推し進めたが、蓮舫体制の発足に伴い、無役となった。この酒席では「今の執行部体制ではダメだ。自民党に勝てっこない」「いや、党を良くする案も無いのに執行部を『ダメだ』と言っても、生産性が無い。只の愚痴だ」等と、党を巡って侃々諤々の議論が続いた。1996年から20年続いた民主党の名が無くなり、維新と合流して民進党結党大会が開かれたのは、9ヵ月前の3月27日。当時の代表・岡田克也は同日、壇上で「(合流は)政権交代を実現する為のラストチャンスだ」と訴えた。1995年の参院選では、前年に“非自民”で結成した新進党が善戦した。民進党議員の誰もが、新党の合併効果に期待した。だが、民進党は参院選で改選議席の45を下回る32議席に止まり、自民党(55議席)に水を開けられた。岡田が退き、党の“顔”は蓮舫に変わったが、党勢は低迷したままだ。民主出身にも維新出身にも、現状を打破できないことへの苛立ちが募っている。

民進党内には、「党の支持率が上向かないのは、蓮舫代表の個人的な問題が大きい」とみる向きもある。9月の代表選は、党をアピールする格好の場だったが、蓮舫の“二重国籍”問題に焦点が当たった。岡田は嘗て、“穏健な保守”とされる自民党の派閥『宏池会』を立ち位置に掲げたことがあった。「政権交代可能な2大政党制の一翼を担うには、それが近道」と考えた為だ。蓮舫も、代表選で“提案路線”を掲げたが、民進党には“批判一辺倒”のイメージが付き纏う。進むべき道が不明確なことは、日本共産党との関係にも表れている。次期衆院選でも、民進党は日本共産党等との野党共闘を目指そうとしているが、民進党の支持団体である『連合』の反発を受け、立ち往生している。10月23日の衆議院福岡6区・東京10区の両補欠選挙で、民進党は「日本共産党と合同街頭演説はしない」と連合に約束したが、福岡6区でこれを反故にした為、連合は東京10区の選対からスタッフを引き揚げた。煮え切らない民進に不満を強めた日本共産党は、今月に入り、衆院選候補予定者約260人を発表した。両党の候補者調整は難航しそうだ。代表選で蓮舫に敗れた元外務大臣の前原誠司は、長島昭久や大島敦ら数人と勉強会を続けている。党内では、「“ポスト蓮舫”の話題が次の衆院選前に沸き起こることを、前原氏は想定しているのではないか?」との見方が出ている。松野ら維新グループが会合を持った翌日の今月9日夜、幹事長の野田佳彦が率いるグループ『花斉会』の十数人は、国会近くの中華レストランで忘年会を開いた。同会に所属する蓮舫も出席して賑わう中、野田は来年、還暦を迎えることに触れ、「(論語では)“六十にして耳順う”だ。来年は、党内の意見に一層、耳を傾けていきたい」と語った。民進党執行部に迷走を続ける時間は無い。 (高橋勝己) 《敬称略》


⦿読売新聞 2016年12月27日付掲載⦿

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【新聞ビジネス大崩壊】(06) 新聞広告費、10年で4000億円超減の衝撃――現役広告営業マン座談会

深刻な部数減に喘ぐ新聞業界だが、一方で広告収入の減少も重篤だ。インターネットの台頭で、新聞広告の現場はどのような状況になっているのか。新聞社で働く現役営業マンたちが、その内情を暴露した――。 (聞き手/フリージャーナリスト・元新聞記者 安藤海南男)

インターネットの台頭でメディア環境が激変し、苦境に立たされる新聞業界。急激な早さで進行する読者離れと共に、その足下をぐらつかせているのが、広告収入の落ち込みだ。購読料と共に新聞社の経営を支えてきたビジネスモデルが今、崩壊の危機を迎えているのだ。新聞広告の現場で起きている異変を、現役広報部員らが暴露する。


20161229 03
A「景気のほうはどうですか? うちは全然ダメですけど…」
B「いやぁ…ダメですね、うちも。いいところなんて無いんじゃないですか」
C「どこもそうでしょう。最近は見ないですけど、一時、経済専門誌で“新聞崩壊”・“新聞不況”なんて特集が組まれた時期があったじゃないですか。あの時よりも状況は悪くなっていますからね」
A「全社的に部数も落ち続けていますからね。日本新聞協会の調査では、2000年に約5370万部だった一般紙・スポーツ紙を含む日刊紙の発行部数が、2015年には約4424万部に減少したそうです。事態はかなり深刻です」
B「この15年で1000万部近く顧客が離れた計算になる。消えた紙の数が、発行部数1位の読売新聞(※2015年7~12月期時点で約913万部)の部数を上回っている」

C「広告収入も、部数減に伴って下落する一方でしょ?」
A「日本新聞協会が公表するデータには、2005年に約1兆円あった新聞広告費は、2015年には5679億円まで下落したとある。10年で4000億円超が吹っ飛んでしまった格好です」
C「広告媒体としての新聞の価値は、物凄い勢いで下がっている。この流れが止まることはないでしょう」
B「これを見て下さいよ。電通が発表した“2015年 日本の広告費”というリポートです。テレビ・新聞・雑誌・インターネット等、あらゆる媒体の年毎の広告費を媒体別・業種別に推定したものなんですが…」
A「全媒体の総広告費は6兆1710億円で、前年比100.3%です。4年連続でプラス成長を遂げていて、随分と景気がいい話ですが、我々には全く実感が沸きませんよね」
C「そりゃそうです。ここに出ているのは、電車の中吊りやディスプレー等、全ての広告を網羅した数字ですからね」
B「雑誌(前年比97.7%)・ラジオ(同98.6%)・テレビ(同98.8%)と、何れもマイナスを記録しています。その中でも、最も激しい落ち込みをみせているのが新聞(同93.3%)です」
A「“若者のテレビ離れ”なんて言われますが、テレビは何だかんだ言っても未だ媒体としての影響力がある。最近ではスマホアプリ・ゲーム関係の広告が増えています。一方で、新聞広告に新たな収益源等、いい材料はありません。実際は、明らかになっている数字よりももっと厳しい状況になっているというのが実感です」
C「月毎の売り上げでみると、前年比2割減・3割減ということもある。このままいけば、経営が立ち行かなくなる新聞社も出てくるのは間違いないでしょう」

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テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
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【労基署ショックが日本を襲う】(02) “ガリバー”野村に労基署のメス…花形部門の競争力が急低下?

証券業界最大手の『野村證券』に労基署のメスが入り、長時間労働が常態化していた投資銀行部門が、大幅な残業削減を含む働き方改革を追られていたことが、本誌の調べでわかった。

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野村證券の投資銀行部門に勤務する中堅社員は悩んでいた。「平日は大体、18時から遅くても20時には退社しなければいけなくなった。このままでは、うちのビジネスが成り立たなくなってしまう」。一見、ワークライフバランスが取れたいい会社のように思えるが、どうしてここまで強い危機意識を持っているのか。この中堅社員によれば、今年の夏頃、同社に労基署のメスが入り、投資銀行部門の長時間労働が問題化した為、それまでとは一転、残業が厳しく制限されるようになったという。残業の大幅削減でビジネスモデルの転換を迫られているのは、大手広告代理店の『電通』だけではないのだ。「1ヵ月に45時間までしか残業できない上、外部からリモートログインしている時間もチェックされる」と同社関係者は明かす。深夜残業が当たり前だった同社の投資銀行部門においては、事実上の“残業禁止令”と言えた。

抑々、投資銀行部門とは、M&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務や資金調達(株式・債券の発行)に関する引き受け業務等、機関投資家向けの証券業務を担う花形部門である。「各社とも激務で知られ、夜中の2時・3時までプレゼン資料作りに追われるのは当たり前。バリバリ働きたい知的肉食系が集まる」(外資系証券幹部)。そんな長時間労働が大前提の職場で残業ができないとなれば、ビジネスに影響が出るのは必至だ。グローバルに展開している同社のライバルは、残業規制などお構いなしの海外の大手金融機関であり、1人当たり労働投入量で劣る同社の競争力低下は避けられない。だからこそ、冒頭の中堅社員は、ビジネスモデルの崩壊リスクを意識するまでの危機感を抱いたのだろう。同社社内からは、「海外出張させて、日本の労働基準法の枠外で仕事をさせている」「自習室を設定して、そこで自主的にプレゼン資料作りをさせている」等、残業減少分を補完する為の“裏残業”に関する話題も漏れ聞こえてくる。だが、投資銀行の世界は、そんな抜け道を使って対応できるほど甘くはない。会社側も、その点は十分理解していたようだ。本誌の取材によると、同社は問題発覚後に大規模な人事異動に踏み切り、投資銀行部門の中でもM&A部門の人員を増強。今年3月末と比較して、人員を20%も急増させているのだ。異動の規模からは、会社側の危機意識の高さが窺えた。更に、案件獲得の生命線となる資料作成については、海外の子会社との連携を強化して、生産性を向上させていく考えだ。

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テーマ : 働き方
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元プロ野球選手は何故、人を殺めてしまったのか?…獄に下ったヒーロー・小川博の真相

華やかなスポットライトを浴びて、大観衆の前で拍手喝采を浴びるプロ野球選手たち。しかし、近年は引退後の厳しい現実を映し出すテレビ番組が好評を博しているが、そこにすら登場できない元選手や、身を持ち崩してしまった者も少なくない。ここで取り上げる小川博もそんな1人。彼は何故、如何にして転落していったのか――。 (取材・文/ノンフィクションライター 八木澤高明)

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「ロッテに入って直ぐ、取材に行ったことがあったけど、ぶっきらぼうな上に生意気な口の利き方で、『人との話し方をわかっていないな』という雰囲気だったよね。ずっと“お山の大将”で野球をやってきて、怖いもの知らずだったんじゃないかな」――。大手スポーツ紙記者がそう証言するのは、プロ野球『ロッテオリオンズ』(現在の『千葉ロッテマリーンズ』)の元投手で、2004年に殺人事件を起こし、現在は服役中の小川博(現在54)のことである。“群馬の玉三郎”と呼ばれるほど精悍なマスクで、前橋工業高校時代には3度、甲子園に出場。その後は青山学院大学を経由して、1984年にドラフト2位でロッテから指名された。青山学院大学は、今でこそ野球部から何人ものプロ野球選手を輩出しているが、小川が在籍していた当時はそれほど実力があった訳でもない。逆に、その環境が小川の活躍だけを目立たせ、プロ入り後の態度に繋がったのかもしれない。しかし、ドラフト2位で指名されるほど、その実力は折り紙つきだった。「サイドから繰り出されるストレートはキレがあって、いいピッチャーだったな。入団した翌年には1軍に上がって、活躍し始めてね。ただ、当時のパリーグは今ほど注目される場所ではなかったので、いくら活躍してもあまり目立たない存在だった。そんな彼の一世一代の見せ場は、近鉄を相手にした“10.19”だっただろうね」(同)。入団翌年、1軍に上がった小川は、プロでも稀ながら、4年目の1988年には初めて2桁勝利を上げ(10勝9敗)、奪三振王のタイトルも獲得する。日本中が注目した『近鉄バファローズ』とのダブルへッダー、伝説の“10.19”を迎えたのは、その年の秋のことだ。

1980年代から1990年代にかけてパリーグに君臨していたのは『西武ライオンズ』であった。そのシーズン、近鉄は唯一、西武に対抗していたが、勝率で上回る為には、川崎球場で行われるロッテとのダブルへッダーで2連勝する必要があった。秋晴れの川崎球場。15時の第1試合プレイボー ル前に、普段は閑古鳥が泣く同球場が超満員の観客で膨れ上がった。あの時、筆者はテレビで“10.19”を観ていたが、人で溢れた川崎球場の様子に驚いたものだった。近鉄だけでなく、ホームのロッテすらも初めて見る光景だったに違いない。秋の斜光に、はっきりとした陰影が浮かぶ先発のマウンドを託された小川。実況を担当したアナウンサーは、開口一番に言った。「今日は近鉄の優勝の前祝いといった感じで、上空は雲一つ無い青空が広がっている川崎球場であります」。アナウンサーの言葉からも、近鉄の優勝を望み、「ロッテはグッドルーザーであれ」という願いが込められていた。それはアナウンサーだけではなく、日本全国の人間の殆どがそう思っていたことだろう。斯く言う筆者も近鉄を応援していた。謂わば、日本全国を敵に回したマウンドに立っていたのが、背番号26番を背負った小川だった。近鉄1回表の攻撃、バッターボックスに入ったのは大石第二朗(当時)。対する小川は、初球インコースにストレートを投げ込み、向こう気の強さを見せる。1回裏、ロッテは愛甲猛の2ランホームランで先制すると、勢いを得た小川は、近鉄打線を4回までパーフェクトに抑えた。当時の映像を見ると、ブライアントを内野フライに打ち取り、意気揚々と引き上げる小川の誇らし気な表情が流れていた。試合は近鉄が驚異的な粘りで、9回に小川をマウンドから引き摺り下ろし、変わった牛島和彦から梨田昌孝が勝ち越しのヒットを放って、辛くも勝利する。この試合の引き立て役に回ってしまったものの、近鉄に一時的に冷や水を浴びせたのが小川であった。ところが、この年を境に、小川の成績は急降下していく。前年から既に右肩は悲鳴を上げていて、以前のような勢いのある投球ができなくなっていたのだった。近鉄にとってスポットライトの当った“10.19”は、小川のプロ野球人生においても、最後の晴れ舞台と言ってもよかった。“10.19”から4年後の1992年に、小川は現役を引退。球団は、ドラフト2位で指名し、タイトルまで獲得した小川を見捨てることなく、引き続きコーチとして、引退後の生活も面倒を見ることとなった。一方で小川は、現役時代に味わった豪勢な生活が忘れられなくなっていた。現役時代の最高年棒は2200万円。外車を乗り回し、夜は銀座に出て豪遊をした。しかし、華やかなプロ野球選手としての生活は、小川の金銭感覚を間違いなく狂わせていた。

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【ニッポン未解決事件ファイル】(01) 『アナタハンの女王事件』(1945-1950)――“女王”比嘉和子の数奇な運命

第2次世界大戦直後、太平洋に位置する孤島で発生した集団大量殺人事件。32人の男たちが共同生活の果てに、1人の女を巡って殺し合ったのだ。女は帰国後、「自分の命も危なかった」と涙ながらに語ったが、世間からは色眼鏡で見られ続け、失意の最期を遂げた――。 (取材・文/ノンフィクションライター 窪田順生)

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1950年6月28日、マリアナ諸島にあるアナタハン島の沖に停泊していたアメリカ海軍の船が、ジャングルの椰子の木に登って必死に布を振る女性を発見した。女の名は比嘉和子(当時27・右画像)。一緒に暮らしていた男たちが殺し合いをして、自分も殺されそうになって逃げてきたという。アメリカ海軍は首を傾げた。この島には、1945年に日本が降伏した後も、その事実を信じることができない日本兵たちが潜伏しているということを把握しており、この5年間、投獄を呼びかけていたが、反応は無かった。何故、ここにきて女性だけが。そして何故、“仲間割れ”をしているのか――。これが、32人の男と1人の女が繰り広げた、所謂『アナタハンの女王事件』発覚の経緯だ。物語は1944年、南方戦線も激しさを増していく中、アナタハン島の近くを通りかかった日本の食料補給船が空襲を受けたことに始まる。船は撃沈。兵士や船員は海に放り出され、31人が命辛々、島に辿り着いた。島には“カナカ族”という現地住民の他、2人の日本人がいた。現地でコプラ栽培をしていた『南洋興産会社』の現地所長、そして和子だ。彼女の夫も同社の社員だったが、戦況が激しくなった為、別の島にいる親族を迎えに行き、そのまま音信不通となっていたのだ。アメリカ軍の攻撃に怯えながら、助け合って生き延びる日本人たちだったが、軈て諍いや口論が絶えなくなる。原因は和子だった。“美人”とは言い難いが健康的で、何よりも肉感的だった。衣服も戦火でボロボロになったことで、木の皮を腰に巻いている以外、豊満な乳房は常に剥き出し。これで32人のオスの本能に火が点き、和子を巡る“争奪戦”が繰り広げられたのだ。

和子も、男から強く求められると拒めない性格で、それが競争を更に激しいものとしたのである。軈て、日本が降伏したことで空襲がぱたりと止み、アメリカ軍から投降を呼びかけられる。カナカ族は素直に従ったが、33人は「罠だ」と身を潜めた。これで、和子を巡る争いが更に激化していく。彼らの中では“戦時下”だったが、空襲は来ない。故に生活も安定し、作物や自家製の椰子酒も作るまでになっていた。“生”が確保されれば、次に関心が向かうのは“性”である。男たちの獣のような視線に、流石に身の危険を感じた和子は、“護身”の目的で所長と結婚。暫くは平穏な日々が続いたが、一部の男たちが島の山中で『B29』の残骸を発見し、そこでピストル2丁を発見したことをきっかけに“死闘”が始まる。ピストルを手にした男が、和子を所長から奪い、逆にその所長に殺されるという事件が起きたのだ。その後も和子を巡る“殺し合い”は続き、結局、5人の男が和子の“夫”となり、その全員が全て殺されるという事態が起き、残された男たちの間でも、和子を巡って口論や対立が勃発。気が付けば、32人いた男たちは19人になっていた。「このままいけば皆殺しだ」。そう考えた男たちは話し合い、ある解決策を見出す。「全ての争いの原因は和子なのだから、あの女さえいなくなれば平和が齎される筈だ」。“私刑”されるということを察知した和子は、住んでいた小屋を逃げ出し、ジャングルを彷徨い歩き、命辛々、アメリカ軍へ投降をしたという訳だ。このショッキングなニュースは世界中に広がった。日本でも和子は“アナタハンの女王蜂”と呼ばれ、男たちを性で虜にした“悪女”、獣ののような性欲で男たちに君臨した“女王蜂”だと持て囃した。勿論、真相はわからない。和子の語ることと男たちが語ることには、微妙な温度差があった。誰が殺して、誰が悪いのか――。全ては南国の島に置き去りにされたのである。軈て、和子本人が主演する映画も作られ、地方巡業も行われた。こうして一躍、時の人となったが、ブームはあっという間に終わった。収入が無くなった和子は、ひっそりとガソリンスタンドで働き、言葉巧みに騙されてストリップショーに出演することもあった。その後、心身共に疲れ果てた和子は、故郷の沖縄に戻り、連れ子のいる男性と再婚。夫婦でひっそりとたこ焼き店を営み、49歳の生涯を閉じた。子供たちに残した最期の言葉は、「愛が足りなくてごめんね」だったという。


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【衝撃トランポノミクス・識者に聞く】(中) 2国間協定、時代に逆行――渡辺頼純氏(慶應義塾大学教授)

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アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は当選後、『環太平洋経済連携協定(TPP)』からの離脱を改めて明言し、2国間で貿易協定を結ぶ交渉を進める考えを示した。1970~1980年代にアメリカで起こった“ユニラテラリズム(単独行動主義)”を想起させる。アメリカでは当時、通商法301条等を制定し、2国間の貿易赤字が拡大すると、相手国の振る舞いを“不公正”と見做し、一方的に制裁を発動した。日本も自動車や農産物の市場開放を迫られた。世界貿易は、2国間だけの収支で完結するものではない。日米の貿易には、中国や『東南アジア諸国連合(ASEAN)』の国々も関係している。例えば、製造業の生産ネットワークは国境を超えており、日本から東南アジアや中国に部品が運ばれ、そこで作られた完成品がアメリカに輸出されているケースもある。日米間の貿易協定では、経済活動を十分に捉え切れない。

世界では既に約280件の『自由貿易協定(FTA)』が発効し、効果が限られる2国間FTAから、TPPや『東アジア地域包括的経済連携(RCEP)』といった“メガFTA”に収斂していく傾向にある。2国間協定は時代に逆行している。トランプ氏が通商政策と産業振興を統括する『国家通商会議』の新設を表明したことも気がかりだ。この組織のトップに就くカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナバロ教授は、対中国政策で“タカ派”の理論的指導者だ。「アメリカの製造業が衰退したのは中国が原因だ」というレトリックを駆使して、危機感を煽ってきた。中国製品等に高関税をかけて自国産業を守る保護主義的な政策を実施すれば、米中貿易摩擦に発展し、貿易の縮小を通じて世界経済も危うくなる。共和党は従来、経済活動の国家の強い関与を嫌い、自由な貿易秩序を作ることに積極的だ。トランプ氏は異例の大統領となりそうだ。TPPの発効が不透明になり、日本と『ヨーロッパ連合(EU)』の『経済連携協定(EPA)』の年内妥結が見送られたことで、メガFTAを推進する流れにブレーキがかかった。しかし、自由貿易は失って初めてその重要性に気付く、世界の無形の公共財だ。だからこそ、日本は自由貿易を守る為に、あらゆる選択肢を引き続き追求すべきだろう。TPPが塩漬け状態になっても、日本はRCEPや日中韓3ヵ国のFTA等を積極的に進めるべきだ。中国の市場をより自由化していくように働きかけることが重要だ。自由貿易の恩恵が大きいことが明白になれば、トランプ氏の翻意を促すことになるかもしれない。 (聞き手/国際部 青木佐知子)


⦿読売新聞 2016年12月24日付掲載⦿

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