【特別対談】 「ヤクザが仕切るAV業界は昔から最低最悪の世界だ」――太賀麻郎(元AV男優)×中村淳彦(ノンフィクションライター)

中村「AV業界が大荒れです。2016年3月3日に、国際人権NGOの“ヒューマンライツナウ”が出演強要の調査報告書を発表し、6月12日にはプロダクション最大手“マークスジャパン”の村山典秀代表が逮捕。更に7月8日、キャンプ場でのAV撮影で52人が書類送検され、そして人気女優が『前所属事務所社長に騙されて出演させられた』と告発…。もう無茶苦茶」
太賀「『夢を利用されて騙された』って女優の話はおかしい。『騙された』『洗脳されていた』って言い方して、それが醒めたということだった。18歳・19歳の子が言っているならばわかるけど、成人だよ? カメラの前で泣いていて、『何それ?』って」
中村「プロダクションは、口説いて出演させるのに凄く時間をかけている。単体か企画単体で大きなカネにすること前提で、労力を費やした洗脳。騙されて怒るのは理解できるけど、嘘を自分が信じてAV出演したことを刑事で訴えるのは無理があるよね。嘘の勧誘が犯罪だったら、例えば介護業界とかリクルートとか皆、壊滅しちゃいますよ」
太賀「最低でも出演料を全額返還してから言わないと。売上にしたら何千万円か億単位の収入があった訳でしょ? 単体になって有名になってAV女優を続けていたって結果オーライなのに、全く意図がわからない」
中村「AV女優は、この15年で人気職になって応募が増えたから、騙して出演させるケースは減った。でも、それまで騙すのはずっと当たり前だった。問題だらけなことは確かで、怒る女優がいるのもわかる」
太賀「俺は、“騙している”って言い方がちょっと引っかかる。結局、女にも下心がある。プロダクションは“AV出演”って下心があって、女のほうは『有名になりたい』とか『芸能人になりたい』とか下心がある。結局、利害が一致したから出演した訳でしょ?」
中村「『AV出演が死ぬほど嫌だった』というなら、何本も出演しないし、パニックになって直ぐに訴えるよね。夢を利用する夢喰いみたいなことは何もAV業界だけじゃないし、あまりにも今の日本社会に溢れていること」
太賀「AV業界は、女優も男優も、監督もスタッフもギャラが高い。一般の仕事より高い。どうしてかというと、“リスク”があるから。“有害業務”だからですよ。今までの業界人は、『有害業務をしている』って覚悟があってやっていた訳。元々、AV業界は問題だらけなの」
中村「中途半端だったり、能が無かったり、不良だったり、一般社会から排除された人が流れ着く仕事だった。有害業務を自覚して、女の裸を利用しながら売り上げて、何とか生きていく…みたいな」
太賀「今、おかしくなっているのは、皆、覚悟が無いから。AVなんて、どう考えても普通の仕事ではない。昔の女優とか関係者は、お金が欲しかった訳ですよ。『本番するだけの約束だったのに、レイプされた』とか。そういうこともあった訳。でも、『お金を貰えるから』ってことで納得していた訳よ」
中村「AV業界の性質が変わったのは、この15年くらい。一般人が増えることは、個人的に歓迎すべき流れだったけど、大手セルメーカーが新卒採用を始めて、“普通の人”が業界で働くようになった」
太賀「普通の子たちが入ってくるから、“有害業務”とか“底辺”って意識が無い訳。それに、お金に困っている層って訳でもない。だから覚悟が無い。プロダクションも、『覚悟が無い女を“カネになるから”って適当なことを言って口説くのはどうなの?』って話」
中村「『AV女優になりたい』って応募が増える中で、プロダクションが態々時間と費用をかけて口説くのは、超美少女とか美人とかお嬢様とか。問題になったプロダクションは“夢”とか“家族”とか稚拙な言葉を使っていたけど、『今の時代に合わせて、そこまでお花畑な言葉を使っているのか?』って。何ていうか、騙される側が劣化しているよね」
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