【「佳く生きる」為の処方箋】(49) 外科医の引き際

数年前から、“引き際”について考えるようになりました。若い頃は「外科医がメスを握っていられるのは55歳くらいまで」と思っていましたが、いざその年齢に達してみると、思い通りに手術はできるし、「まだまだ成長している」という手応えもありました。唯一気になっていたのは老眼ですが、それも遠近両用の二重焦点コンタクトレンズを用いることで、一気に克服しました。そうして天皇陛下の手術を執刀させて頂いたのが56歳の時。自ら思い込んでいた“外科医55歳限界説”は、いとも簡単に崩れ落ちた訳です。現在、61歳ですが、院長職も兼務しながら、年間400件ほどの手術を手がけています。まさか、この年齢でこれだけの手術をすることになるとは、若い頃には想像もしませんでした。ただ、そうはいっても、いつか外科医を辞める日はやって来ます。その日をどのように迎えるか。最近はそれを折に触れて考えるようになったのです。本音を言うと、今の自分の中では、「もっと外科医を続けたい」という気持ちと、「もうそろそろ外科医を辞めることを真剣に考えてもいいのかもしれない」という気持ちが綱引きをしています。天皇陛下の手術をした直後、ある先輩医師から言われました。「外科医として、これ以上名誉なことはない。ここでスパッと辞めて、他の道に進むのもよいのではないか?」と。この時は全くそんなつもりはありませんでしたが、病院長となって2期日の今は管理責任も増して、外科医としての時間的制約を受けざるを得なくなりました。

手術は、私にとって生きることそのものだと言っても過言ではありません。どんなに心配事やストレスを抱えていても、手術室に入れば全部忘れて、目の前の心臓を治すことに集中できます。休日にゴルフをしていても、「あっ、この展開は手術に生かせる」等と手術に関連付けて考えることも度々です。要は、頭から手術が離れないのです。これは裏を返すと、「自分から手術を引き算するとゼロになってしまうのではないか…」という不安にも繋がってきます。そんな風に思い巡らせていた折、ある方と出会いました。脳神経外科医の福島孝徳先生です。福島先生は独自の手術法を開発してアメリカに渡り、“ゴッドハンド”として賞賛され続けてきました。74歳になった現在も世界各国を回り、精力的に手術をされています。マスコミにもよく取り上げられていますから、ご存知の方も多いでしょう。実際にお会いして、圧倒されました。兎に角、手術への情熱も含め、“神って”いるのです。私よりもキャリアはずっと上ですが、今も患者さんや家族に直接手術の説明をしたり、励ましたり、また「少しでも手術がやり易いように」と、自ら医療機器の改良にも携わったりしています。その福島先生に、こんなことを言われました。「私は今、天野先生と同年齢くらいのつもりで仕事をしています。天野先生のほうは今、私の40代半ばと同じくらいの仕事をされている。まだまだこれからです」。正直、福島先生の前では自分は“凡人”だと思いました。外科医としての引き際を考えていたそのタイミングで福島先生に出会った意味を今、考えています。患者さんと正面から向き合い、手術で病気を治す。そういう外科医の仕事が、福島先生は本当に好きなのでしょう。それは私とて同じです。「このままでは終われない、まだまだ自分が外科医として役に立てる場所はある筈だ」――そんな熱い思いが蘇ってきています。アジアの心臓外科医療発展への貢献も含め、将来図を思い描いているところです。 =おわり


天野篤(あまの・あつし) 心臓外科医・『順天堂医院』院長。1955年、埼玉県生まれ。日本大学医学部卒。『亀田総合病院』『新東京病院』等を経て、2002年に順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。2012年2月18日に天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀。2016年4月より現職。著書に『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)・『この道を生きる、心臓外科ひとすじ』(NHK出版新書)等。


キャプチャ  2017年4月27日号掲載

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

【男の子育て日記】(49) ○月×日

この頃、父のことをよく考える。54歳で逝った父のことを。父は優しい人だった。働き者だった。どうしてあんなに温厚な人だったのか。サービス精神が旺盛で、いつも皆を笑わせようとしていた。僕は一文がとても愛おしい。そして思う。「父も僕に、同じような気持ちを抱いてくれていたのか?」と。父に抱き締められた記憶は無い。かといって、父が冷たかったとは思わない。父の時代の家族像と、自分の時代のそれとは大きく違う。日曜日は決まって、近所のサウナとパチンコ屋に連れて行ってくれた。子供の愛し方がわからなかったが、父なりの愛情表現だったのだろうと思う。父は自分の父に、つまり僕の祖父に殴られて育った。父はよく言っていた。「だから自分は絶対に子供を叩かない」。それでも、父は僕に2度、手を上げたことがある。1度目は僕が小学生の時。日曜日の夜、肉屋を営んでいた父に「お母さんにも給料を払え」と意見した。「生意気を言うな」と頬に張り手を喰らった。2度目は僕が中学生だったか。夜、泥酔した父が帰宅して、自分の部屋で布団の中で寝転がっている僕を「何で未だ起きているんだ!」と怒鳴り、蹴り出した。しかも激しく泣きながら。僕も泣くしかなかった(※断っておくが、僕はこの場で父を断罪したい訳ではない。この手のエッセイにありがちな、親を実物以上の人間に祀り上げて、お涙頂載の美談にしたくないだけ)。父は普通の、気が小さい人だった。父は人並みに野心家で、肉屋以外に幾つも店を興したが、全て失敗した。自分に裏切られることに疲れ果てて、早く逝ってしまった。父が逝った時、自宅で検死官が取り囲む中、僕は彼の顔に近付いて心に誓った。「あんたの人生の復讐は必ずする」。その復讐は叶ったのだろうか? 生きていたら76歳。記子と会わせたかった。一文に会わせたかった。嘗て、ショーン・レノンは父親について、こう語ったことがある。彼の父親が殺された時、ショーンは5歳だった。覚えているのは1つだけ。愛と平和を唱えていた父親が、狂ったように自分を叱りつけている光景だという。ショーンは言う。「それでもパパに会いたい」。僕は父に会いたいとは思わない。父は僕の中にいるから。一文の中にいる。一文の笑顔に父を見る。僕と一文、兄と妹、妹の子供たち、父の弟と妹の子供たち、そして孫。皆が生きている限り、お父さん、貴男も生きています。育児日記、今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。 =おわり


樋口毅宏(ひぐち・たけひろ) 作家。1971年、東京都生まれ。帝京大学文学部卒業後、『コアマガジン』に入社。『ニャン2倶楽部Z』『BUBKA』編集部を経て、『白夜書房』に移籍。『コリアムービー』『みうらじゅんマガジン』の編集長を務める。2009年に作家に転身。著書に『日本のセックス』(双葉文庫)・『ルック・バック・イン・アンガー』(祥伝社文庫)・『さよなら小沢健二』(扶桑社)等。


キャプチャ  2017年4月27日号掲載

テーマ : パパ育児日記。
ジャンル : 育児

【ヘンな食べ物】(35) 巨大ムカデと人類の叡智

新宿区歌舞伎町の『上海小吃』でゲテモノ料理に挑むつもりが、間違えて生の虫を食べてしまった我々取材班。「Yさん、気付かなかったんですか?」と今更担当編集者を咎めると、「だって百戦錬磨の高野さんがパクパク食べているから…」との答え。私の百戦は“錬磨”でなく“連敗”だってことを、彼は知らなかったらしい。昔も、タイの市場で売っていた生の芋虫を間違えて食べてしまったことがある。何度も同じ間違いをするのが私の特徴だ。扨て、改めて調理された“虫の盛り合わせ”が運ばれてきた。「おおっ、食べ物だ!」とびっくり。姿揚げなので形状はそのままだが、質感が“生”とは全然異なり、ちゃんとした料理に見える。火を通すとこんなにも違うのか。ゲテモノ料理挑戦から解放された思いで、順番に気楽に摘んでいく。先ず、生の時は粉っぽくて死体じみた味がした(というか死体だったのだが)バッタは、カリッカリに揚げられ、塩味と唐辛子も効いており、まるでスナック菓子の『カール』みたいな食感。ビールが進む。セミの幼虫は、先程の(生の)むにゅむにゅしたタンパク質がどこへ行ってしまったかと思うくらいカスカス。栄養分が失われ、勿体ない気すらする。続いてタランチュラ。こちらは昔、カンボジアで食べた物と同じ味。前の虫2つより中身が詰まっている。運良く遅れてやってきて“生”を食べずに済んだ、同じく本誌の女性編集者・Iさんは、「土っぽい」と適確な表現。言い得て妙だ。足が焦げて炭化しているせいかもしれない。

お次はサソリ。長さ10㎝。巨大なハサミと、反り返った立派な尾を持っている。他の虫は北京から輸入しているが(※首都に各地の名産品が集まるらしい)、これは山東省から来たという(※「山東省はサソリで有名」と店長)。鋼鉄のようなボディーをしているだけあり、囓るとバリバリと大きな音がする。中には灰色の内臓があり、やや苦い。「ちょっとエビみたい」と、Iさんがまた鋭い指摘。確かに、ぷりぷりした肉の部分を除いたエビと考えるとしっくりくる。でも、一番美味い部分の無いエビって…。そして、ラストは愈々巨大ムカデ。長さ20㎝、幅は胴体が1㎝、足を入れると2㎝。これを生で喰わなくて本当によかったと思う。恐らく、これは熱帯の国から来たのではなかろうか。私も、東南アジアのジャングルで生きて動いているものを1~2度見た記憶がある。他の虫は串から外して1つずつ食べたが、これは串のまま囓る。サソリ同様、外側はサクサク(※ガサガサとも言える)、中はグレイな内臓だが、「こっちは薬っぽいですね」とIさん。確かに、ちょっと漢方系の香りがする。「Iさんは素晴らしい。常に冷静で適確な指摘をしてくれるこの女性が初めから居合わせてくれたら、私たちも虫を生で食べずに済んだだろう」と心底残念なほどだ。さてさて。虫の盛り合わせで、どれが一番美味かったか。答えは巨大ムカデ。実際、“取材”を終えて他の普通の料理(※こちらも美味しい)も頼んでいるのに、私はどうしてもムカデに手が伸びてしまう。理由はバランスの良さ。他の虫はハサミとか頭とか形状にばらつきがあるが、ムカデはどこを齧っても足・殻・内臓と均一で適度な香り・苦み・食べ応えがあり、火の通り具合も良い。生では超絶なゲテモノが、見事なつまみになっている。腕の良いシェフと“火の利用”を発見した人類の叡智に乾杯である。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2017年4月27日号掲載

テーマ : 海外旅行
ジャンル : 旅行

【警察・腐敗する正義】(16) 時には摘発、時には癒着…風俗と警察の腐れ縁

20170427 08
風俗と警察は切っても切り離せない関係だ。店の存続に関わる風営法や売春防止法の運用は、其々の警察に裁量が任されている。風俗店で実質的に合法なのはデリへルのみ。暫定的に営業が認められている本番サービスのソープランドとか、立地が営業禁止区域に該当する既存の店舗型へルスやピンサロといったグレーゾーンの業態は、いつ摘発があってもおかしくない。風俗店にとって、警察対策は頭の痛い問題である。一方、警察には其々の所轄毎に摘発ノルマがある。その達成の為にターゲットにし易いのは、グレーゾーンで営業する店舗型風俗店だ。風俗店は、「暴力団の資金源だから摘発した」等と大義名分を付け易く、摘発しても市民から苦情が来ることは無い。ノルマ達成という内部事情をクリアする為の格好のターゲットとなっている。警察事情に詳しい大手週刊誌記者に話を聞いた。「風俗店・ストリップ劇場・外国人パブの経営者や店長は其々、警察対策をしています。一番ポピュラーなのは、所轄の生活安全課の刑事に遊ばせること。外国人パブだったら無料で飲ませたり、ヌキが好きな刑事には無料か、若しくは女の子に支払うお金だけで遊ばせたりしています」。地元の警察官に性的サービスを無料提供し、仲良くなるという戦法である。取締りや摘発の情報は、所轄の生活安全課では共有されている。生活安全課の刑事に貸しを作れば、情報をリークしてくれる可能性も高まるのだ。「署長が交代した時には、風俗店から警察にお金が集まる。風俗店や組合が新署長に祝い金を渡す訳です。『歌舞伎町の管轄では、署長が代わると1億円以上が集まる』なんて噂もありました。纏まったお金は、何人かの幹部で山分けするようです。最近は警察の内部監査が厳しくなって減っているようですが、少なくとも2000年代半ばまでは、風俗店が署長に現金を包むのは常識でした」(同)。地域にもよるが、繁華街を管轄に持つ警察には、基本的に風俗店からの賄賂が飛び交っている。中には、あぶく銭に溺れる署員もいるという。

生活安全課の刑事の仕事は、管轄内の繁華街を自分の足で歩き、生の情報を集めること。刑事は其々、個人の裁量で街の風俗関係者と繋がりを持ち、情報を集め、悪質な店舗を摘発する。刑事は、風俗関係者と情報収集の段階で繋がりができる。知り合った経営者や店長に誘われ、無料で遊んだり、小遣いを貰ったりといった親密な関係になる場合も多い。「遊んだ見返りは情報提供です。末端の刑事が其々の風俗店に、摘発や内偵の情報を流す。刑事も借りのある店には捕まってほしくないから、知っている情報を流して逃がす訳です。所轄刑事と風俗店は、どこもそんなズブズブの関係で、情報が漏れている。警視庁や県警の上層部も、それはわかっています」(同)。所轄警察署が担当すると、風俗関係者に情報が漏れる。その為、「本庁の意向で必ず摘発する」という案件では、違う所轄に担当させるという。警察と風俗店の癒着はあまりにも大量過ぎる為、揉み消されるケースが多い。警察も、風俗関係者と人間関係を築かなければ、有力な情報を得ることができない。警察と風俗店には、持ちつ持たれつの関係があるのだ。2013年9月、『国際オリンピック委員会』が2020年夏季オリンピックの開催都市を“TOKYO”と発表し、多くの国民が歓喜の声を上げた。そんな世間の浮かれ具合とは裏腹に、落胆に暮れていた人々もいた。そう、東京の性風俗関係者である。日韓ワールドカップや洞爺湖サミット等、過去の例を見ればわかる通り、国際的な催しと風俗の浄化作戦はワンセットになっているからだ。現在、風俗関係者は、東京オリンピックに向けた浄化作戦に怯えている。警察や行政は、「外国人たちに綺麗なTOKYOを見せたい」と考えている。摘発対象は、街に風俗の看板を掲げる店舗型の可能性が高いが、無店舗型も例外とは言い切れない。吉原・池袋・渋谷・錦系町・歌舞伎町・上野・大塚・巣鴨・高円寺・吉祥寺・立川・町田――。どこも店舗型風俗店が数多く存在する東京の地域である。東京オリンピックを前に、各風俗街の同業組合や地元組織は危機感を強めている。コンプライアンス遵守や、ボッタクリやキャッチを撲滅しようと自ら奮起しているのだ。「風俗店は反社会勢力とは無関係で、地域のルールを守り、外国人客も安心して遊べる」と、警察や市民にアピールする為だ。警察が徹底的に浄化作戦をするとなれば、風営法を改正して摘発をすることになるだろう。営業禁止区域を広げるだけで、店舗型風俗店を絶滅させることは可能だからだ。風俗店だけではなく、ラブホテル・レンタルルーム・アダルトショップ・出会い喫茶・テレクラ等、東京の“ウラの文化”が絶滅の危機に曝されているのだ。 (取材・文/ノンフィクションライター 中村淳彦)


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テーマ : 警察
ジャンル : 政治・経済

【憲法考・施行70年】(01) 改正論議、じれる首相

日本国憲法は来月3日、施行70周年を迎える。70年前から一字一句変わらない憲法で、この国の未来を描けるのだろうか? 憲法改正論議の現状を報告する。

20170427 07
「改正するなら9条だ」――。安倍晋三首相は冗舌だった。今月7日、首相公邸。夕食を囲んだ国会議員らに、9条改正の持論を語り始めた。「(戦力不保持を定めた)9条2項は色々議論になる。そこに触れずに自衛隊をどう書くかだ」。自衛隊の存在は憲法に明記が無い。歴代政権は「自衛隊は合憲である」との立場を取ってきたが、リベラル勢力からは批判が絶えなかった。9条に自衛隊の根拠規定を設けることは、首相を始め、保守勢力にとって憲法改正の本丸だ。自民党が2012年の憲法改正草案で提案した緊急事態条項ではなく、9条に言及したことに、出席者は“首相の強い拘り”を感じ取った。首相は今年2月24日の衆議院財務金融委員会でも、防衛費の増加を批判した日本共産党の議員に苛立ちをぶつけた。「『(自衛隊を)憲法違反だ』と言っておきながら、いざという時は『命をかけろ』(と日本共産党は言うのか)。そんなことはできない」。首相は表向き、憲法改正で踏み込んだ発言を控えてきた。野党の反発を避け、改正の機運を高める為だ。一方で、気心の知れた相手には陰に陽に発破をかけてきた。同月中旬には、自民党組織運動本部の山口泰明本部長を首相官邸に呼び、自民党大会で発表する運動方針の書き換えを指示した。“憲法改正原案の検討・作成を目指す”との表現は、“原案の発議に向けて具体的な歩みを進める”と変わり、発議を目標とすることが盛り込まれた。

先月4日、東京都内のホテルで開かれた保守系の議員連盟の会合でも、「憲法施行70年の節目に、自民党から憲法改正を発議できるよう、議論に入らなければいけない」と踏み込んだ。首相は来年9月の党総裁選での3選を目指し、最長で2021年9月までの長期政権を視野に入れる。だが、衆参両院で改憲に前向きな勢力が3分の2以上を占める“この70年間で最高の政治状況”を、その後も手にできるかは予断を許さない。更に総裁選後には、来年12月に衆議院議員の任期満了を迎え、再来年夏の参院選と国政選挙が続く。憲法改正の実現には「来年秋の臨時国会までには、衆参両院の憲法審査会で改正項目の絞り込みを終える」(政府関係者)ことが望ましく、「首相も残り時間が少ないことは自覚している」(首相周辺)という。ところが、肝心の憲法審査会は足踏み状態だ。昨年の臨時国会以降、実質審議は衆議院は5回、参議院は1回に留まる。ブレーキとなったのは、天皇の退位と憲法を絡めようとした民進党の対応だ。民進党は憲法審査会で天皇制を議題に取り上げるよう求め、与党は「静かな議論が必要だ」と慎重姿勢を崩さなかった。与党内の足並みも思うように揃わない。憲法審査会の自民党メンバーには、「憲法改正は与野党協調で進めるべきだ」との考えが根強い。改正には国会発議だけでなく、国民投票の過半数の賛成も必要で、「与野党が対立して世論の分断を招くことは望ましくない」という訳だ。公明党も「党憲法調査会でゼロから議論する」と、慎重姿勢を崩していない。首相は党大会で、憲法制定に関わった芦田均元首相の言葉を引用した。「芦田首相は敗戦後、『日本はどうなるのか?』と悩む若者たちに、『どうなるのかではなく、どうするかだ』と語った。この気概を持たなければならない」。笛吹けど進まぬ憲法論議を“どうするか”。首相は、次の一手に頭を捻る。


⦿読売新聞 2017年4月25日付掲載⦿

テーマ : 憲法改正論議
ジャンル : 政治・経済

【韓国大統領選2017・安哲秀研究】(下) 文と因縁対決、支持陰り

20170427 05
韓国大統領選で2度目の戦いに挑む中道左派の野党第2党『国民の党』の安哲秀は、保守と左派の2大勢力が支配する韓国政界に、たった1人で舞い降りた“宇宙人”のような存在だ。全国行脚したトークショーで、既成政治に飽き足りない若者の熱望を一身に集め、政治の表舞台に躍り出てから6年。2大勢力の間で埋没するか、両勢力を糾合して“国民統合”を成し遂げるか、正念場を迎えている。前回2012年は、本選で保守の朴槿恵と戦う前に、左派の文在寅との候補一本化で辞退。「組織の無い無所属の悲哀」(選挙参謀)を味わった。保守候補が低迷する今回、文との“因縁の一騎打ち”に臨んでいる。「2012年の大統領選は完走できず、失望した国民がいることはわかっている。その時より1000万倍強くなった」――。今月4日の党候補者受諾演説。安は両手を振り上げ、野太い声を絞り出してこう語り、「ひ弱な姿は過去のものだ」とアピールした。朴・文・安の三つ巴の争いだった前回。文と安の候補一本化に向けた直談判で、文は「一歩も譲らなかった」(同)。安は告示2日前に記者会見し、「(これ以上)対立すれば国民に申し訳ない」と涙ながらに辞退表明した。本選で安が文の応援遊説に駆けつけたのは、選挙戦が始まって10日後。おざなりであることは明白だった。安は投開票当日、結果を見ずに渡米。文は惜敗した。文は今年1月に出版した対談エッセーで、安の応援は「物足りなかった」と吐露。安は「獣でも口にしない言葉だ」と罵り、遺恨の深さが浮き彫りになった。

20170427 06
文との争いは、安が2013年4月の国会議員補選で無所属候補として初当選し、翌2014年3月に文と野党『新政治民主連合』(※現在の『共に民主党』)を結成した後も続いた。2015年4月の再・補欠選で同党が敗北すると、安は党代表だった文の引責辞任を要求。文が拒否すると、安は同年12月、「党革新は不可能との結論に達した」として離党した。安は2016年2月、同党反主流派を率いて、新党『国民の党』を設立した。同年4月の総選挙で、幹部は文がいる『共に民主党』との選挙協力を主張したが、安は「荒野で死んでもいい」と突っ撥ねた。結果は20議席から38議席へと躍進。安は「政治的困難の中で突破力と成果をみせた」と、当時の“意地”を振り返る。しかし、既成政治にどっぷり潰かった安に、往時のカリスマは無い。安に対する若者の熱狂も冷めている。安が足場とする『国民の党』は、全羅道を地盤とする左派の元大統領・金大中の信奉者集団。安が打倒を叫ぶ“古い政治”・“地域主義”そのものだ。若者の支持は寧ろ、朴の弾劾要求集会に参加し続けた文に向かう。文は、保守系政党から連帯論がある安を、「(朴)政権延長の代理人」と批判する。出馬直後、文に肉薄した安の支持率は、ここへ来て失速している。社会コンサルタント会社『オピニオンライブ』世論分析センター長の尹熙雄は、「文を当選させたくない保守票が、テレビ討論をみて安から離れ、組織固めを進めた保守系候補に流れた」と分析する。“金大中党”にいながら保守票に手を伸ばす安は、今月19日のテレビ討論会で、金大中の対北朝鮮融和政策を継承するか問われ、「良いところも悪いところもあった」と歯切れの悪さを曝した。10日付の朝鮮日報社説は、「文は(朴)弾劾、安は文に対する幅広い拒否感のおかげで2強になったが、多くの有権者は(2人とも)大統領に相応しいか疑問視している」と批判した。勝利のカギは、「“アンチ文”を超える国家ビジョンと価値」(5日付同紙社説)を示せるかどうか。安は「あらゆるものがインターネットに繋がるIoT等を活用した第4次産業革命で韓国経済を活性化できるのは、IT企業家だった自分だけだ」と説き、最大の武器である頭脳と商才をアピールしている。 《敬称略》

               ◇

ソウル支局 宮崎健雄が担当しました。


⦿読売新聞 2017年4月22日付掲載⦿

テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

【韓国大統領選2017・安哲秀研究】(中) 企業家で成功、頑固者

20170427 04
抜群の頭脳を持ち、企業家としても成功。蓄財には関心が無く、社会貢献に熱心――。韓国大統領選に挑む野党第2党『国民の党』の候補・安哲秀(55)は、韓国社会で典型的な“優等生”と見做されているが、指導者としての資質は賛否両論に分かれる。韓国メディアによると、安は少年時代、内気で口数が少なく、時計やラジオ等機械を分解するのが好きだった。将来の夢は“人類を救う科学者”だったが、釜山で開業医をしていた父親の勧めでソウル大学医学部に進学。患者と向き合うより、1人で病気の原因を探る病理学の研究を選んだ。医学博士課程で人生初の転機を迎える。使用していたパソコンがコンピューターウイルスに感染したのをきっかけに、徹夜を続けて対策ソフトを開発。一般国民向けに無料で配布した。1995年、新興企業『安哲秀コンピューターウイルス研究所』を創業した。社員の給料を支払う為に借金を重ねた。アメリカの情報セキュリティー会社から「1000万ドルで買収する」と提案されても、「従業員が解雇され、国民は無料のウイルス対策ができなくなる。お金より公益が重要だ」と断った。会社が軌道に乗ると、1500億ウォン(約142億円)相当の持ち株を投じ、教育や雇用創出の慈善団体『トングラミ財団』を設立した。安と10年来の知人は、「貧しい地域の開業医だった父親の影響で、公益に関心が強い」と話す。

安は、テレビ番組の出演をきっかけに2011年から、全国25都市を回りながら、若者向けのトークショーを行い、就職難や非正規労働等に悩む若者に希望を語りかける活動を開始。トークショーの主催財団と関係があった元大統領府経済首席秘書官の金鍾仁、元駐日大使の崔相龍、元環境大臣の尹汝雋らが安の政界入りを後押しし、一気に次世代政治リーダーとして注目を浴びた。しかし、安の元側近は、安が前回2012年の大統領選出馬を断念した際、「発表30分前に知った」と証言。「1人で決定する企業オーナーのやり方を政治でも続けている」と語った。安の周辺からは“頑固者”という評価も聞かれる。安は2013年4月、国会議員に初当選して野党生活を始めた。政界筋によると安は、共に野党の共同代表を務めたキム・ハンギルや、元大統領・金大中の側近で『国民の党』代表の朴智元といった“老練な有力政治家”の言いなりになることもない“手強い一面”があるという。安は2度、野党代表に就任したが、選挙敗北の責任等を取って辞任。側近から、「責任感が強過ぎる分、粘りが足りない」との不満が零れる。政治家として勢力作りに不可欠な包容力や意思疎通の不足も指摘される。母の影響で、妻にも敬語で話す。軍医時代は部下にも敬語を使い、恐縮させた逸話が残る。周辺からは、「参謀とよく議論するが、YES・NOを言わない」「政策提案したのに反応が無く、安の元を離れる人もいる」との声も聞かれる。韓国の歴代大統領は様々なタイプに分かれる。部下の話をよく聞く盧武鉉。開確な指示を上から下ろす李明博。密室で1人で決める朴槿恵。安は昨日、『韓国放送記者クラブ』の討論会で、側近や閣僚との意思疎通不足を批判された朴槿恵との共通点を指摘され、「(安が)国会議員になってから補佐官23人が交代した」として、リーダーの資質を問われた。安自身、「企業経営の時に従業員に顔色を読まれないよう、感情表現をしなかった。政治家としては欠点」と認めている。「安が当選すれば、国会(※定数300)で39議席しかない“国民の党”は、連立を余儀なくされかねない」との見方もある。安は「派閥に囚われないドリームチームを作る」と強調するが、チームワークで采配を振るえるのかどうか問われている。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年4月21日付掲載⦿

テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

【韓国大統領選2017・安哲秀研究】(上) 「安保大統領になる」

医師であり、IT企業家出身という異色の経歴――。来月9日投開票の韓国大統領選で、左派の最大野党『共に民主党』の候補・文在寅(64)を猛追する中道左派の第2野党『国民の党』の安哲秀(55)の人物像を探る。

20170427 02
「安全保障も外交も危機だ。“安保大統領”になり、韓国を最高の安保国家にする」――。安は一昨日、保守の牙城である大邱での遊説で、こう声を張り上げた。政治スタンスは、“経済は進歩・安保は保守”の合言葉で知られる。保守と左派に二分される韓国政界では、独特の立ち位置だ。2期続いた保守政治への失望感と、北朝鮮に対する警戒感を掬い上げ、追い風に乗った。文を追い上げる最大の武器が安保政策だ。北朝鮮への制裁強化を掲げ、南北交流事業である開城工業団地の即時再開に反対。在韓アメリカ軍への最新鋭ミサイル防衛システム『最終段階高高度地域防衛(THAAD)』配備も推進の立場だ。自分とアメリカ大統領のドナルド・トランプは共にペンシルベニア大学ウォートン校出身と語り、「共に実業家出身。未来互恵的な米韓関係を作れる」とアピールしている。「外部からの脅威に備えなければコンピューターはダウンする。国家も同じだ」。外交ブレーンが伝える安の安保観だ。ソウル大学医学部で病理学を研究し、企業家としてコンピューターウイルス対策ソフトを開発した安ならではの表現だ。しかし、反共親米の保守層が「安の安保観を全面的に信頼している訳ではない」(今月5日付の東亜日報社説)。過去の発言と食い違いがみられるからだ。安は、前回2012年大統領選への出馬を表明した際、北朝鮮との経済交流拡大を説いた。

2012年出版の対談集では、中国重視の考えも披露し、「米中が偏らないよう均衡を取る努力が必要だ」と主張した。THAADを巡っても、昨年まで「国会批准と国民投票が必要」と慎重な構えだった。対北強硬姿勢を強調し始めてからは、北朝鮮に対して融和的な『太陽政策』を取った元大統領の金大中を源流とする国民の党との路線不一致が目立ち始めた。「国民の党は、安氏と正反対に近い妄信的な太陽政策論者の党。国民はどちらが本物かわかり難い」(今月5日付の朝鮮日報)と批判を受ける。今月13日のテレビ討論では、保守系候補から「太陽政策を継承するのか?」と踏み絵を迫られ、「今は制裁の局面だ」と躱すのが精一杯だった。安の保守傾向が敬遠された為か、国民の党の地盤である全羅道での支持率は44.8%と、文(47.2%)の後を追っている。日本に対しては厳しい一面も覗く。2015年末の慰安婦問題を巡る日韓合意は、「(元慰安婦)当事者の意思を反映しなければならない」として、“修正”を主張する。外交ブレーンによると、安は慰安婦問題を「国家間の約束とはいえ、人権問題だと考えている」という。大統領になれば、日本に再交渉を求める考えという。安自身は、1990年に九州大学医学部で2ヵ月間、訪問研究員をしたが、日本との縁は深くない。「数学者の広中平祐を信奉している」と自著に記し、2012年に日本で『ソフトバンクグループ』社長の孫正義と会ったとされる。政治家では、2013年12月と今年2月に民進党前代表の岡田克也と会った以外、目立った交流は無い。安は先月、ソウルの『外国人特派員協会』で行った講演で、日韓関係の理想像として1998年の日韓共同宣言を挙げ、「20年で信じられないほど後退したが、復元しなければならない」と力説した。ただ、安に会った日本人は、「宣言への回帰を繰り返すが、具体的な話は無く、信念があるようにみえなかった」と指摘した。国民の党は、国会(※定数300)で39議席しかなく、政権を獲っても少数与党。日韓外交筋は、「連立相手次第で外交・安保政策は変わる可能性がある」とみる。 《敬称略》

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【政治の現場・民進党1年】(04) 見えない“提案路線”

20170427 01
先月13日、国会内で開かれた民進党執行役員会。「何故、あのような発言をしたんですか?」。代表代行の細野豪志(45)が代表の蓮舫(49)に噛みついた。蓮舫は、「党の方針で決まっていることを言ったまでだ」と相手にしなかった。前日の党大会で、蓮舫は教育無償化について、「最大の課題は財源。憲法改正が必要との主張は、これを誤魔化すかのようだ」と力説した。教育無償化については、細野が憲法を改正して盛り込むよう主張しており、党外でも、日本維新の会が高等教育の無償化を明記する憲法改正を目指している他、首相の安倍晋三(62)も積極的だ。党内では、「蓮舫代表の発言は安倍首相に向けられたものではなく、細野代表代行への牽制だ」と受け止められた。役員会では、幹事長の野田佳彦(59)が「代表代行なんだから発言は慎重にしてくれなきゃ困る」と窘めたが、細野は表情を強張らせた。民進党は2016年参院選の公約で、「未来志向の憲法を国民と共に構想する」と掲げた。細野は、「党の政権担当能力を示す為、改憲の議論は欠かせない」との思いが強い。

しかし、党内で改憲論議は半ばタブー視されている。改憲に批判的な旧社会党系議員を抱え、党内の意見が割れる可能性が高い為だ。外交・安全保障政策についても、議論は停滞気味だ。2015年9月、集団的自衛権の限定的な行使を可能にする安全保障関連法が成立した。民主党時代、党は安保関連法を“憲法違反”と槍玉に挙げた。元外務大臣の前原誠司(54)や元防衛副大臣の長島昭久(55)ら保守系議員は、党の方針に不満を持つ。「日本の安全保障を強化する為の具体的な議論が必要」と考えているからだ。長島は2年近く、党の外交防衛部門会議に出席していない。その理由について、「民進党として安保関連法を『違憲だ』と主張しているのに、違うことを言えば『民進党はバラバラだ』と言われ、党に迷惑もかける。責任ある態度ではないかもしれないが…」と語る。ただ、「国民にも安全保障への強い不安がある中、現実的な安全保障政策を打ち出さなければ信頼が得られない」とも思い悩み、離党を決意した。蓮舫は昨年9月の代表選以来、“提案路線”を掲げてきたが、憲法や安全保障等、国の根幹に関する分野で目立った提案は無い。元民主党参議院議員で、鳩山内閣の官房副長官を務めた慶應義塾大学教授の松井孝治(56)は、「『分裂含みの党内議論は良くない』というのは、1つの進歩かもしれない。しかし、有権者にしてみれば、提案路線と言いながら、どう政策論争を展開しようとしているのかがよく見えない」と、党の現状を指摘する。 《敬称略》

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サボり・八百長は当たり前! 歴代横綱は英雄どころか品格ゼロのデブ揃いで最早“日本の恥”

19年ぶりに日本人の横綱・稀勢の里が誕生しました。横綱と言えば相撲の象徴であり、国民的英雄扱いされることも珍しくありません。ですが、彼らってそんなに立派な存在ですか? 歴代横綱の行いを振り返ると、サイテーな人物ばかりなのですが…。

20170426 10
久々の日本人横綱誕生に沸く日本。テレビは新横綱・稀勢の里の話題でもちきりで、四半世紀ぶりに優勝した『広島東洋カープ』の人気に肖る為だけに存在している“カープ女子”宜しく、“相撲女子”と言われるファンまで登場する始末。でも、少し考えれば、ブヨブヨの体を恥ずかしげもなく揺らし、来る日も来る日もちゃんこばっか食べているヤツらを世紀のヒーローかのように持ち上げるなんて、おかしな話だと気付く筈。横綱になる為にどんな努力が必要だか興味も無いが、あんなデブが一般社会にいたら鼻摘みもの確定だろう。そんな社会から食み出した存在しかいない角界は、ダメ人間の集合体のようなものであり、そのような環境に長年身を置いている横綱は、言わずもがな最上級のダメ人間なのだ。横綱という響きに騙されて、何となく「お相撲さんすご~い!」と思っている人たちの目を覚ます為、横綱が如何に最低なヤツばかりかを検証していこう。横綱、即ち野蛮な存在だと世間に知らしめた最初の事件は、昭和にまで遡る。けんかっ早さと博打好きで知られ、“けんか玉”という愛称まで付いていた大関・玉錦(※後に第32代横綱)。そんな下品なあだ名を付けられて喜んでいたバカは、些細なことで喧嘩になった宝川関の下に、後に『山口組』3代目組長となる田岡一雄を派遣。暴力団は周知の通り、人の指を詰めるのが大好きな人種なので、田岡もご多分に漏れず、逃げ回る宝川関の指を2本も切断。宝川関は即引退に追い込まれた。一方、暴力団を使ってライバルを蹴落とした玉錦は、その半年後に横綱に昇進。裏社会にどっぷりの真っ黒な横綱が誕生することに。

暴力団と仲良しこよしの横綱もいれば、新興宗教にハマる横綱も。昭和22(1947)年、人々の不安を煽り、統制物資である米を大量に隠し持っていた為、警察から出頭命令が出ていた新興宗教『璽宇』。その教祖を守る為、第35代横綱・双葉山が警察相手に大暴れして逮捕された。この大捕物は『璽光尊事件』と言われ、双葉山のアホ丸出しの行動に多くの国民が失望したそう。双葉山は後に、「自分は悲しいかな、学問が無かった」と後悔していたというが、横綱はほんの少しの脳細胞も持ち合わせていない脂肪の塊であるという伝統を作った、ある意味偉大なる人物とも言えるかもしれない。「横綱って何だかバカばっかり。やっぱ、アイツら太っているだけだね」というムードが流れる中、昭和25(1950)年に羽黒山・照国・東富士の3人もの横綱が相次いで休場。世間の批判に焦った『日本相撲協会』は、横綱の権威を守る為に『横綱審議委員会』を発足させることに。因みに、この3人の横綱の内、特に権威もへったくれもないのが東富士。新興宗教にどっぷりハマっていた双葉山に大層可愛がられていた問題児で、引退後は協会から追われ、冴えないプロレスラーになった後、サラ金の社長に。絵に描いたような転落人生! “巨人・大鴨・卵焼き”で知られる第48代横綱・大鵬と、“大洋・柏戸・水割り”という大鵬の二番煎じ感強めのキャッチコピーを付けられていた第47代横綱・柏戸の2人も、拳銃所持の疑いで警察の捜査を受けている。廃業した元力士が拳銃を所持し、更には暴力団に売り渡していた疑いで逮捕されたことをきっかけに、この2人の悪事が白日の下に曝されることになったのである。後に国民栄誉賞まで貰った大鵬には、クリーンな英雄のイメージがあるが、それは大いなる勘違い。拳銃を持って歩く只のチンピラである。過度な肥満が原因で脳梗塞に倒れてからは、目も当てられないような無様な人生を謳歌。弟子は全員ボンクラ、娘婿の元関脇・貴闘力は野球賭博で解雇され、更に夫人は若手力士やレスラーを相手に不倫三昧…。晩年の大鵬は妻の行動を監視し、ストーカー宛らの行動を取っていたという噂も。現役時代から連日、節操なくスキャンダルを振りまいていたのは、第52代横綱・北の富士。暴力団関係者から多額の祝儀を貰って謹慎処分を受けたにも拘わらず、懲りずに引退後は弟子・千代の富士の結婚式に暴力団を招待する等、兎に角ヤクザが大好き。不眠症を理由に休場したかと思ったら、ハワイでサーフィン。前妻を捨てて元ホステスと電撃再婚、更には稽古そっちのけでキャバレーの経営に勤しむ等、取り組みよりも自身の話題作りに精を出していた単なる目立ちたがり屋。因みに、北の富士の弟子でタレント・秋元梢の父である第58代横綱・千代の富士も、黒いカネをがっぷり溜め込み、追徴課税を受けている。その額、何と1億3000万円! 兎に角ケチで、部屋中の電気を消して回っていたという、筋肉の塊のような体からは想像できない器が小さ過ぎるエピソードも存在する。

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