【中外時評】 社会保険料という名の税

アメリカのロナルド・レーガン大統領は嘗て、消費税の導入論にこんな理由で反対したという。「人々が知らぬ間に税率が静かに上がってしまう恐れがある」。その裏には、導入が早かったヨーロッパでは、税率があれよあれよという間に上がり、政府の肥大化を許してしまったという認識があった。日本では考えられない話である。消費税率を上げようとすれば世の中をあげて大騒ぎになり、容易に実現しない。だが、知らぬ間に静かに、しかも着実に上がり続けている“税”が日本にもある。“社会保険料”という名の税だ。従業員が払う社会保険料率は今年、給与の15%近くに達し、10年で2割以上増える見通し。賃金が原資という点では、社会保険料も税も同じだ。アメリカは高齢者医療や年金の財源を、“給与税”と呼ぶ税で賄う。勿論、社会保険は保険料という負担に見合う形で医療や年金給付を受けられる仕組みで、政策目的で徴収される税とは本来別物だ。だが、保険料の性格は次第に税に近付きつつある。典型が健康保険料だ。料率が毎年上がっている主因は、健保組合員の医療費とは直接関係ない高齢者医療への支援金が増えていることにある。『健康保険組合連合会』の最近の発表では、今年度に従業員が払う保険料収入の44.5%が高齢者医療への支援金に充てられる。比率が5割を超す組合も約4分の1に達する。支援金は高齢化の加速に伴い、一段と膨らむ見通しだ。健康管理努力で組合員の医療費と保険料を抑えようとしても、焼け石に水。保険料率は限りなく上昇する恐れがある。一橋大学の佐藤主光教授は、「このままでは健保組合は持たない」とし、「支援金は高齢者への所得の再配分であり、本来は税金で賄うのが筋。組合員の為の保険料という看板を掲げて勤労者に負担を押しつけるのは不公平」と語る。

増税はできないが、保険料の引き上げなら抵抗は少ないから、これを活用すればいい――。そんなやり繰りは限界にきている。税と社会保険料の在り方をセットで考え、日本の社会保障が直面する課題に応える道を探る必要がある。課題は2つある。1つは、高齢化等に伴う医療費の膨張を抑えつつ、どうその経費を賄うか。2つ目は、社会保障の仕組みを“現役層が高齢層を支える”形から、“年齢に関係なく真に困っている人を困っていない人が支える”仕組みに転換していくことだ。医療費の抑制には、国の努力に加え、国民健康保険の運営主体になる都道府県等が医療効率化へ動くよう促す仕組みを作ることが欠かせない。改革は始まろうとしているが、「責任の所在が曖昧なままで、道は険しい」との声も専門家の間では多い。高齢者医療費については、支払い能力がある高齢者にもっと負担してもらう以外は、国民全体で広く薄く負担するしかない。増える費用の大きさも考えれば、消費増税がやはり第一の選択肢になろう。一方、佐藤教授は「健保の保険料の内、高齢者医療支援に充てている分は、金融所得等に課税ベースを広げた社会連帯税に転換すべきだ」と指摘する。真に困っている人を支える仕組みは、どう作るか。「保険料頼みのままだと、低所得労働者が豊かな高齢者を支える逆の再配分さえ起きる」と言うのは、中央大学の森信茂樹教授。「給付付きの勤労税額控除の導入によって事実上、保険料負担を軽減する仕組みや、豊かな年金受給者の課税強化等が必要だ」と説く。『日本総研』の西沢和彦主席研究員は、「誰がどの程度困っているのかを把握する行政インフラが整っていない問題がある」と指摘する。税務当局・市町村・『日本年金機構』等の間の情報共有化が必須だ。何れにせよ、税と社会保険料を同じ土俵に載せた制度設計が欠かせないが、現実には税は『税制調査会』、保険料は『社会保障審議会』といった縦割りを超えた議論は進まない。このままでは、ほぼ自動的に“賃金税”としての保険料が増えて、勤労者の手取り収入が減ったり、借金という形で将来世代にツケが回ったりするだけだ。それを見て見ぬふりをするなら、政治の責任放棄と言われても仕方あるまい。 (上級論説委員 実哲也)


⦿日本経済新聞 2017年4月27日付掲載⦿
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【労基署ショックが日本を襲う】(20) 菅義偉官房長官が最も心配する働き方改革の矛盾

20170428 09
退庁時間を過ぎても、霞が関のビル群には煌々と明かりが灯っていた。一方で、庁内に足を踏み入れると、「休むことも仕事です。今度こそ本気です」と書かれた、職員に早期退庁を促すポスターが目に飛び込んでくる。日本人が抱える働き方の矛盾を凝縮していると言える日本の権力中枢、霞が関。この官庁街のみならず、日本全国の職場で常態化している長時間労働は今度こそ、変わるのだろうか? 政府が本気であるのは間違いない。「今、政府が企業に求めていることは、生産性の向上と賃上げの2つ」(内閣官房中堅幹部)。これを実現する為に、長時間労働の是正を働き方改革の“本丸”に位置付け、強力に推し進めている。日本企業で横行してきた長時間労働の悲惨な実態を見る限り、首相官邸が取り組む改革には大義がある。しかし、だからといって、働き方改革の先に薔薇色の未来が約束されている訳ではない。厚生労働省幹部が「長時間労働が是正されたら、それを口実に残業代を減らしたり、払わない企業が増えるリスクがある」と危惧するように、賃上げの為に推進している働き方改革が逆に、年収減を引き起こすかもしれないからだ。政府が掲げる女性の活躍推進の大前提として、是が非でも働き方改革を実現したい菅義偉官房長官も、その点について危機感を持っている。菅長官は今月3日、本誌の取材に対し、「年収が減少するリスクを一番心配している。長時間労働の是正と労働生産性の向上はセットで議論すべき課題であり、それに見合った賃上げが重要。問題意識を持って取り組んでいる」との見解を示した。

20170428 10
長時間労働を是正する筈の法改正が、逆に長時間労働を助長するリスクも浮上している。永田町で継続審議中となっている労働基準法の改正案がそれだ。改正案の目玉は、ディーラー等高収入の専門職を労働時間規制から外す“高度プロフェッショナル制度”の創設。既に野党が「長時間労働に繋がる」と批判しているが、更に危険なのが“企画業務型裁量労働制”の対象拡大だ。企画業務型裁量労働制とは、企業の中枢部門で企画立案を担っているホワイトカラー層に認められた見做し労働制である。システムエンジニア等19職種に限定された“専門業務型裁量労働制”と同様、実働時間ではなく、仕事の成果で処遇することが妥当な職業に限定されているが、「乱用の恐れもある為、専門業務型に比べて要件は厳格になっている」(『労働政策研究・研修機構』)。ただ、徐々に適用対象は広がってきており、改正案では更に、法人顧客に対する提案営業にまで範囲を拡大する方針だ。元労働基準監督官で社会保険労務士の原論氏は、「裁量の対象を広げ過ぎている」と警鐘を鳴らす。裁量労働制は只でさえ、労務意識が低い企業に悪用されてきた経緯がある。今回も、単なる飛び込み営業を提案型営業と称するようなグレー企業に都合よく利用され、事実上のサービス残業の助長に繋がる危険性がある。国会対応に翻弄されるが故に、自らの長時間労働を改善できず、「中央省庁こそ最悪の不夜城職場」と自嘲する霞が関官僚。彼らが長時間労働の是正を巡る誤算に対応できなければ、改革・改正は改悪へと向かうだろう。 =おわり

               ◇

「あとどれくらいで原稿は出る?」――。デスクに聞かれてドキッとするフレーズ第1位です。「あと2~3時間だと思います」等と言って、時間を守れた例は殆どありません。原稿の執筆で悩むのは、読者を惹き付ける“ツカミ”、原稿の出だしです。いい取材が出来て面白いネタが揃うと筆が進みますが、そうでもない時は時間ばかりが無駄に過ぎていきます。すると、いつの間にかキーボードから手が離れ、スナック菓子や甘いものに手が伸びてしまいます。特集の取材を通して「自分も働き方改革をしなければならない」と思いましたが、先ずは原稿の執筆が行き詰まることを見越してお菓子を買い込んでいる自分の意識改革が必要そうです。 (本誌 鈴木崇久)

前号の『商社の英語』に続き、今号でも企業に緊急アンケートをかけました。詳しくは中身をご覧頂きたいのですが、100社中回答数は80社と近年稀に見る高回答率に、この問題に関する企業の意識の高まりをまざまざと感じました。といっても現実には、問い合わせで電話対応に追われた担当記者の“汗”も見逃せません。傍で聞いていると、回答せざるを得ないようなお願いぶりが光りました。企業にもドナルド・トランプ次期政権やボーナス調査と、他メディアからのアンケートが相次いだそうで、「残業を増やしているのは誰だ!」といった恨み節が聞こえてきそうです。企業の皆様、ご協力、心から感謝致します。 (本誌編集長 田中博)


キャプチャ  2016年12月17日号掲載

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【政治の現場・民進党1年】(05) 欠く求心力、迫る触手

20170428 08
今月6日、民進党内に新たなグループが誕生した。民主党と合流した維新の党系の議員23人の内、党代表だった松野頼久(56)が会長を務め、13人が参加した『創新会』(※松野グループ)だ。松野は記者会見で、「『民進党の中で新しいものを生み出していく一助になれば』という思いで今日スタートした。原点である行政改革を自分たちで進めていきたい」と語った。民進党に加わった維新の党系議員は一時、最大の勢力を誇った。しかし、昨年9月の代表選後、代表代行の江田憲司(60)に近い親執行部系と、松野らの反執行部系との路線の違いで分裂等した。同日の初会合では、「民主党を引きずったまま頭が切り替わっていない」「民主党政権時代を批判されても、『今は民進党だ』と言い返すぐらいの感覚を持ってもらいたい」等、執行部への不満が相次いだ。一方、江田も近く、維新の党系の議員たちを集めたグループに新たな名称を決めて、活動を活発化させる方針だ。新たなグループ誕生により、党内の主要なグループの数は、離党届を提出した元防衛副大臣の長島昭久(55)を中心としたグループを含めて12。大半は掛け持ちを認めているが、僅か約140人の国会議員が数人から20人程度のグループに細分化している。グループ間の人間関係もぎくしゃくしたままだ。

昨年9月の党代表選。元外務大臣の前原誠司(53)が出馬した際、前原グループに嘗て所属し、その後も近い関係にあると考えていた代表代行・細野豪志(45)の支援が得られると前原らは期待していた。前原自身も細野に直接支援を要請したが、細野は早々に代表・蓮舫(49)の支持を表明した。「今まで散々世話になっておいて、協力しなかった。細野だけは許せない」。前原グループの1人は、今尚不満を隠さない。一方、細野グループの議員は、「細野が2015年の代表選に出馬した時、前原は最後まで明確に支持を表明しなかった。批判される筋合いはない」と冷ややかな反応を示す。党再生を期待されて誕生した蓮舫体制になっても支持を伸ばせない中、党内には不協和音だけが目立ち、求心力は欠けたままだ。党幹部は自嘲気味に語る。「官僚出身者は『政策以外関心は無い』という態度だし、執行部は野田佳彦幹事長を始め、根回しができない。党内に組織管理をわかっている人がいない」。こうした現状を好機と見た自民党は、憲法改正の発議等を睨み、水面下で切り崩し工作を行っている。「離党、6月までに決断できませんか?」――。2月下旬、民進党の若手議員は、自民党の中堅議員から促された。この自民党議員とは既に、複数回の接触を重ねていた。「民進党にいても閉塞感はあるが、離党しても展望が開けるのかわからない」。この議員は迷ったままだ。複数の民進党議員が同様に、離党の打診を受けている。遠心力と党外からの触手。7月の都議選に向けて、民進党を取り巻く環境は更に厳しさを増すことになりそうだ。 《敬称略》

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【憲法考・施行70年】(02) 自・維、“教育無償化”で接近

20170428 07
2月21日夜、国会近くのホテルのレストラン。自民党の中谷元議員(憲法審査会与党筆頭幹事)から渡された1枚の紙を見て、『日本維新の会』の馬場伸幸幹事長らは小躍りした。教育無償化の必要性や課題を整理したもので、無償化の範囲・保育所の扱い・財源等の検討項目が並んでいた。教育無償化は予て、維新が主張してきた改正項目だ。中谷議員は「議論したら課題も出てくる」と語ったが、維新側は「自民党が真剣に検討を始めたサインだ」と受け止め、会合は一気に打ち解けた雰囲気となった。維新は昨年公表した憲法改正案で、3本柱の1つに教育無償化を据えた。憲法26条に「経済的理由によって教育を受ける機会を奪われない」との表現を加え、「幼児期の教育から高等教育に至るまで無償とする」とする条文案も示した。旗振り役は、維新の法律政策顧問である前大阪市長の橋下徹氏だ。「社会的・経済的事実として、教育無償化は国民が今、一番求めている」と説いてきた。今年に入り、安倍晋三首相もこれに呼応した。

「憲法が普通教育の無償化を定め、小・中学校9年間の義務教育制度がスタートした。本年はその憲法施行から70年の節目だ」。1月の施政方針演説では、憲法と教育を並べて語り、関連性を強く滲ませた。憲法改正への意欲を訴えた先月の自民党大会でも、「どんなに貧しい家庭に育っても進学できる。そういう日本を作っていこう」と呼びかけた。教育無償化を自民党が受け入れ、代わりに憲法改正で維新の協力を求める――。自民・維新両党の思惑はぴたりと一致した。時代の要請もある。子供の進学率が家庭の経済状況に左右されている。2015年の大学進学率(※短大含む)は全体では51%だが、生活保護世帯では半分以下の205だ。抑々、日本は国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合が低い。『経済協力開発機構(OECD)』加盟35ヵ国の内、日本は3.2%(2013年)と、ハンガリーに次いでワースト2位だ。維新幹部は、「憲法に明記されれば、政権の意向や財政に左右されずに無償化が担保される」と意義を訴える。最大の難関は財源だ。幼児から高等教育まで全て無償にした場合、政府は「約4兆1000億円が必要だ」と試算する。自民党内では“教育国債”を発行する案も出るが、「結局は借金(財務省の麻生太郎大臣)との批判も強い。憲法改正したところで財源が確保できなければ、“違憲”と指摘される可能性もある。無償化するにしても、「憲法改正は必要ない」という声もある。公明党は無償化には同調するが、憲法改正による対応には消極的だ。民進党執行部も「一般の法律で対応すべきだ」との立場で、「自民党は国民の理解を得易い項目から改正をしたいだけ」と訝しむ声が上がる。専修大学の棟居快行教授(憲法学)は、「戦後日本が成功したのは教育が機能したからで、教育を憲法改正のテーマとして扱うことは健全だ」と評価する。但し、国民不在の議論には警鐘を鳴らす。「何となく与野党が相乗し易いからではなく、筋が必要だ。国民が『うちは学費を払い終えたのに』といった損得勘定で考えるようになれば、国民投票で否決されることもあり得る」。


⦿読売新聞 2017年4月26日付掲載⦿

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ドナルド・トランプ政権の対IS作戦責任者に“ネオナチ”メンバー疑惑が浮上

20170428 06
アメリカのドナルド・トランプ大統領の副補佐官としてホワイトハウス入りしているセバスチャン・ゴルカ博士(右画像)が、ハンガリーのネオナチ政治団体『ヴィッツレンド』終身会員だったことが明らかになった。ゴルカ博士はロンドン生まれのハンガリー人で、ブダペストのコルビナス大学で博士号を取得した後、渡米。アメリカに帰化している。ゴルカ博士は反ユダヤ・反イスラム主義者とされ、昨年にはイスラム過激派組織『IS(イスラミックステート)』を殲滅する戦略を纏めた書籍を著した。スティーブ・バノン大統領首席戦略官とは数年前に知り合い、超保守系メディア『ブライトバートニュース』の編集者を務めていた。先月、ユダヤ系のメディアが明らかにしたところによると、ゴルカ博士は2002年、ハンガリーのネオナチ政治団体『ヴィッツレンド』に入会。今年1月20日のトランプ大統領就任式には、同団体から授与されたメダルを胸に付けて列席したという。国務省は同団体をネオナチ団体と認定しており、入国を一切禁じている。


キャプチャ  2017年4月号掲載

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『松竹』の舞台興行に内紛の種…歌舞伎から新派劇団への移籍が原因か

20170428 05
『松竹』が持つ舞台興行『劇団新派』の雲行きが怪しい。先月、歌舞伎の人気女形だった市川春猿(左画像中央)が新派に移籍。河合雪之丞と名前を改め舞台に立っているが、これに「新派の生え抜き組が不満を持っている」(演劇記者)という。河合はコアなファンが多い女形だった為、これまで新派の大物女優が演じてきた役等が「今後は河合に奪われるとみられている」(同)のだ。更に、河合は移籍に当たって、歌舞伎時代の3人の弟子を引き連れてきた。ベテランだけでなく、他の役者も立場を脅かされているのである。既に、「劇団内では“お家騒動前夜”の雰囲気」(同)だという。発表されたばかりの6月公演では、主役に河合が据えられ、しかも若手ばかりが出る演目が選ばれた。「松竹側が河合らに軍配を上げた格好」(同)だ。新派生え抜き組からは、「河合を追い出した澤瀉屋(市川猿之助)への恨み節まで出ている」(同)。つまり、「歌舞伎のほうで役に恵まれていれば、新派には来なかっただろう」という訳だ。松竹が、自社内の人事異動をするように移籍を認めたことがきっかけで、俄かに“歌舞伎vs新派”の構図まで生じている。


キャプチャ  2017年2月号掲載

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公明党委員長2人が相次ぎ身内に提訴されたのは先生逆鱗のせいか――都議選睨み知事に急接近? 『創価学会』最高幹部7人を訴えた理由

20170428 02
「我らは仏意仏勅の教団 大法弘通の“創価学会仏”」――。昨年11月、『創価学会』は会則を改正して、組織が丸ごと“創価学会仏”に昇格したことを宣言した。会員にとっては天にも昇る吉報である。でも何故、仏教系の宗教団体が唐突に“仏”になったのだろうか? 原田稔会長が総務会(※創価学会の重要決定機関)で、“仏”になった経緯についてこう説明した。2代会長・戸田城聖氏(故人)、3代会長・池田大作先生(※同期の会則改正で、同氏の敬称が“名誉会長”から“先生”に変更された)が、「創価学会の組織は何れ尊い“仏”の存在になる」と予言をしていたからだという。身内の歴代会長2人が残した言葉だけで“仏”の存在になった創価学会が、この7月に実施される大選挙、東京都議会選挙に臨む。公明党は創価大学卒11人を含む23人の候補者を承認しているが、支持・支援団体の創価学会が高貴な“仏”の組織になって初めての選挙戦である。大勝利で飾りたいところだろうが、例の都議選と異にして分厚い壁が立ちはだかった。目下、都民の人気が高い小池百合子知事を旗頭にする“小池新党”の風が吹いているのだ。選挙が近付くにつれ、大阪の橋下維新のように、風が強風に変わったらどうなるか。昨夏の都知事選で、小池氏に対抗馬を出して敗れた自民・公明の両党にとっては、旗色が極めて悪くなる。機に敏な公明党は昨年暮れ、ほぼ20年間も密月関係にあった自民党と決別した。同時に、都議選を睨みながら、小池知事が提唱する都政大改革に賛同を示す形で、擦り寄りを始めたのである。他方、年明け早々から原田稔会長は、都心部の各地を訪ね、会員の激励に余念がない。創価学会仏・公明党は、衆参の国政選挙よりも重要視している夏の都議選に向けて、もう選挙活動の幕が上がったようである。前回、創価学会に係る主な裁判ケースにスポットを当てた。引き続き、同会とは表裏一体の関係にある公明党の主な裁判についても触れてみよう。公明党の歴代委員長2人が順次、法廷に立つという、他党に例を見ない裁判が公明党史に残されている。最初は竹入義勝氏だ。昭和34(1959)年4月、田端に住む創価学会員の竹入義勝氏(1926年、長野県生まれ)が、創価学会の推薦を受けて文京区区議会選挙に立候補して当選。1963年4月の都議選で、今度は北区から『公明政治連盟』(※現在の公明党)の公認を受けて立候補し、当選した区議会議員時代、竹入氏の創価学会における役職は、青年部の部隊長という幹部要職であった。

当時の竹入氏を知る古参幹部が、こう回想する。「私の記憶では、竹入夫婦は田端にある豆腐屋の2階に住んでおりました。竹入さんは青年部の部隊長という幹部で、私はその部員だったのです。当時、皆貧乏で、学会活動が終わる深夜12時頃、竹入宅を訪ねますと、奥さんがよく、かりん糖を袋ごと出してくれて、『食べなさい!』と勧めてくれたものです。あの時代、学会は『台東体育館』で毎月、本部幹部会を開催しておりました。最高幹部たちが入場する際、いつも先頭に立っていたのは、学会旗を持った竹入さんで、その後ろに池田大作3代会長が続いておりましたね。私たち直属の部員は、あの竹入さんの雄姿を誇らしげに見ていたものです」。1967年1月、公明党は衆議院議員選挙に進出する。竹入氏は10区(※現在の17区)から立候補して初当選(※以降、連続8回)し、公明党の中央執行委員長に就任した。1986年、政界在職20年の直前にして、委員長を退任。公明党最高顧問に就任する。1990年に政界から引退し、1997年に勲一等旭日大綬章を受章している。こうした経歴を持つ竹入氏が創価学会・公明党と争うきっかけになったのは、他でもない。1998年8月から9月にかけて、朝日新聞に12回に亘って掲載した『秘話 55年体制のはざまで』と題する政界回顧録の手記である。手記の一部に、創価学会と公明党との政教一体関係にさらりと触れた部分があったが、一般読者にはそれほど注視する内容でもなかった。ところが、どうやらこの竹入氏の回顧録が、池田大作名誉会長の逆鱗に触れたらしい。創価学会・公明党による竹入バッシングがスタートした。例えば、こんな調子である。聖教新聞2006年8月17日付に掲載された首脳座談会(※肩書は当時)では、

蒼木(理事長)「忘恩といえば竹入!」
秋谷(会長)「最近も、党の資金500万円を横領していたとして党から訴えられたばかりじゃないか」
原田(副理事長、現在は会長)「公明新聞にも、一般紙にも大きく出ていたな」
佐藤(男子部長)「訴えによれば、あいつは都内の高級百貨店で、女房に宝石の指輪を買った。それも党の資金から500万円もネコババして、指輪を買った。重大な着服、横領の疑いだ」
原田「金は怖い。権力は怖い。この狂いに狂った竹入のザマを見ろ!」
秋谷「ここまで人間が腐るという1つの証拠だ。この事実を知った全国の支持者の怒りが、どれほど凄まじいか、ファクスが、日本全国から殺到している」

4日後の同紙では更に、「竹入氏が高級料亭・銀座通い・芸者遊びをしていた」と非難し、青木理事長がこう罵倒している。「金、金、金、女、女、女。どこまで下劣か、畜生か、正体がいよいよ暴かれてきたな」「傲慢、ウソつき、インチキ、金狂い、恩知らず!」。創価学会が支持・支援してきた公明党で、20年間も委員長を務めてきた竹入氏に、「あいつ、狂っている、ネコババ、インチキ」と口汚い言葉を投げつけたのである。本人に対する罵倒に限らず、機関紙で竹入夫人や子息、死去した親族の名誉や人格にまで激しい攻撃を加えた。

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【Deep Insight】(09) アベノミクス、危機の足音

世が世ならば、日本は今、消費税の話題で溢れていた。2017年4月1日に予定した税率10%への引き上げを、安倍晋三首相が2年半延期すると表明したのは昨年6月。10ヵ月前のことだ。首相が増税再延期の理由とした“世界経済の下振れリスク”は杞憂だった。企業の景況感は4年ぶりに、先進国と新興国で同時に改善傾向を示す。日本の2月の完全失業率は2.8%と、22年ぶりの低水準にある。翌月の参院選で与党は大勝し、負担増の先送りは民意の支持となった。二度あることは三度ある。「2019年10月の増税も延期になる」との見方がじわじわと広がっている。筆者が深く懸念するのは、増税延期を境に、将来世代を思って中期的に財政や社会保障を立て直す機運が、日本の中で大幅に後退したように思えることだ。長期政権を謳歌する安倍内閣が、『アベノミクス』という看板の下に、短期志向の政策を積み重ねる。その構図に国全体が慣れ、近未来の困難に鈍感になっている。アベノミクスに“危機感の欠如”という危機が静かに迫っている。『経済同友会』が出した今年の年頭見解を読んで、「おやっ?」と思った。構造改革・生産性の革新・自由貿易体制の拡充と大事なテーマが並ぶが、財政問題は「経済成長と財政健全化の同時達成路線」と末尾にさらりと触れただけだ。同友会は2015年、消費税率を段階的に17%に上げ、社会保障費を毎年5000億円削減する提言を出した。小林喜光代表幹事は昨春、「増税延期はポピュリズム(大衆迎合)の一種」と明言した。「安倍政権に是々非々で臨む同友会にしては大人し過ぎるのでは?」。こう小林氏に質すと、こんな答えが返ってきた。「聞く耳を持たないのだから、同じことを繰り返しても仕方がない」。“諦め感”は、財務省や財政制度等審議会の関係者にも共通だ。長期金利を0%前後に留める『日本銀行』の金融緩和で、政府の利払いが軽くなり、「借金が巨額でも財政が悪化しない姿が描けてしまう」というのだ。『国際通貨基金(IMF)』によると、今年の日本の長期債務は国内総生産(GDP)の253%。2020年度に基礎的財政収支を黒字(※税収と税外収入で政策経費を賄う状態)にする財政健全化計画は、アベノミクスの果実の筈の税収の不振で達成に暗雲が垂れ込める。一方、内閣府が試算する債務残高のGDPに対する比率は、「実質2%の経済成長が続く」という強気の前提の下で、当面は下がっていく。安倍首相ら閣僚は、こちらの“成果”を強調する。

首相ブレーンが支持する“2%の物価上昇まで消費増税を凍結”というノーベル賞学者の勧めが、増税の再々延期の観測を高めている。こんな繰り返しでいいのか? 経済活性化を後押しするアベノミクスの方向性は否定しない。残業時間の上限規制や『同一労働同一賃金』の働き方改革も未だ入り口だが、緒に就いた。岩盤規制・地方創生・1億総活躍――。安倍政権は、短期での前進を訴えるのが巧い。だが、逆風を承知で中長期の構造改革を進めようとする発想には、決定的に乏しい。筆頭に社会保障の改革がある。今年度予算で、介護の自己負担引き上げや所得の多い高齢者の医療費負担の増額等、一部の見直しは進んだが、根本的に給付や負担を改革する議論は不発だ。残された時間は驚くほど少ない。日本には3つの“2020年問題”が控えている。1つは高齢化の圧力だ。2020年代前半には、戦後のベビーブーム生まれの団塊世代が75歳以上に達し、社会保障の支出が急速に膨らむ。第2に東京オリンピック・パラリンピック前後の波だ。消費や建設需要の反動減に加え、日本を取り巻く高揚感の後退で、海外投資家が日本の構造問題に関心を移す可能性がある。対比したくはないが、ギリシャの長い苦境は、2004年の夏季オリンピックを境に始まった。3番目に、黒田東彦総裁の下で日銀が進めた異次元金融緩和の“手仕舞い”が非常にきつくなる。発行残高の4割の国債を持つ日銀は、年70兆~80兆円のペースで長期国債を買い続けている。成長期待でアメリカやヨーロッパの金利が上昇し、圧力が日本にも及べば、日銀はゼロ金利維持へ更に強力な買い取りを迫られる。「今夏にも買い入れの限界を迎える」(『日本経済研究センター』)との予測もある。短期国債は、日銀保有を除く9割を海外勢が持ち、中期の国債にも保有が広がる。格付け会社『フィッチ』の日本国債格付けは“シングルA”。2段階の格下げで、投資適格では最低の水準になる。増税延期や日銀緩和の限界論が、海外勢の売り要因として浮上する。次の増税の有無は、2019年度予算編成で結論を出す必要がある。あと1年半後だ。増税論議との重複を避けながら、腰の据えた社会保障改革を考えるなら、今年度に協議を始める必要がある。昨年初に本格的な議論を始めた働き方改革の実現は2019年度。着手の先送りは、将来世代を一段と苦しくする。2012年に民主党(※現在の民進党)・自民党・公明党が結んだ“社会保障と税の一体改革”を巡る3党合意は、増税延期で塩漬け状態だ。今や、当時を超えた骨太な社会保障改革を探るのが本来の姿だ。学校法人と首相の関係を巡る国会攻防が続き、景気も程々堅調だ。桜の季節、微温的な空気の流れる日本だが、厳しい時間との勝負は背後で進行している。 (本社コメンテーター 菅野幹雄)


⦿日本経済新聞 2017年4月5日付掲載⦿

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【Deep Insight】(08) 2人の“商人”と車の未来

2人の“商人”は違いが多い。1人は不動産王のドナルド・トランプ大統領、もう一方は『日産自動車』のカルロス・ゴーン社長だ。前者はドイツ移民の3世としてアメリカで生まれ育ち、家業を大きくして“president(大統領)”に上り詰めた。今日、日産の“president(社長)”を退く後者はレバノン系ブラジル人だが、フランスで教育を受け、ヨーロッパ・アメリカ・日本の自動車産業で成功を収めた。“単一か多様性か”だけではない。最も対照的なのは“時間軸”だろう。『トランプ自伝』によれば、トランプ大統領は「計画をたてる際はもっぱら現在に視点を合わせる」と語っている。経営の軸はどちらかといえば“短期”らしい。ゴーン社長は多分、長期だ。『PDCA』と言われる日々の業務管理やキャッシュフロー経営に厳格だと言われるが、実は長期の投資や事業戦略でも欧米のビジネススクールでは頻繁に研究対象になっている。社内で猛反発を受けつつ進めた“中国進出と成功”や、リーマンショックでも止めなかった電気自動車開発が代表例だ。2人の間には未だ直接対話が無い。だがトランプ大統領は、“アメリカファースト”という自国主義政策を掲げ、グローバル化の象徴である自動車産業、とりわけ日本のメーカーに対米投資の拡大を迫る。今月15日の業界を交えた会合では、『トヨタ自動車』と日産を再び名指しした。アメリカの自動車メーカーは快哉を叫んでいる筈だ。トランプ大統領は、日本の自動車市場が閉鎖的との議論や為替問題を蒸し返し、大型車の多いアメリカメーカーに配慮した燃費規制の緩和策まで検討しているという。一方、ゴーン社長は表向き、無言の構えだ。今年初め、トランプ大統領の政策について質問を向けたことがあるが、答えは「世界を見渡したらいい。アメリカも特別な国ではなく、政権が変われば政策も変わる。それだけのことだ」と簡単だった。要は、大統領が決めたなら“従うだけ”との立場である。だが、そこには無言の抵抗もあるかもしれない。ゴーン氏は日産の社長を退くが、今後も『ルノー』・日産・『三菱自動車』の取締役会議長であり、『ルノー日産アライアンス』の長でもある。日産社長という日常を離れれば、より大きな課題に時間を注ぐことが可能だが、ゴーン社長が今後取り組みたいと話すアジェンダ(論点)には、トランプ大統領が言うような単純な“アメリカ工場建設”は見当たらない。

では、ゴーン社長のアジェンダとは何か? 1つは、社長退任を発表した日に語った“ITと自動車の連携・融合”だろう。自動車産業は今、100年に一度の大きな転換期を迎えつつある。イギリスの『バークレイズ』が発表した調査報告書によれば、複数の人で車を保有するカーシェアリングや、『ウーバーテクノロジーズ』のようなライドシェアリング(乗り合い)が普及したら、世界の自動車需要は現在の6割程度にまで減少する可能性があるという。アメリカで言えば、『フォードモーター』や『ゼネラルモーターズ(GM)』の北米での自動車生産は半分以下に減るそうだ。日本も例外ではない。「自動車は既に、アメリカよりも低稼働な資本財になっている」と『みずほ銀行』産業調査部の斉藤智美調査役は指摘する。日本の1日当たりの車の平均利用時間は28~37分。乗車人数も1.3人だ。「カーシェアやシェアライドで十分」という世代が運転年齢人口で多数になれば、日本の自動車メーカーもハード重視のままではいられなくなる。車には、移動価値・体感価値・所有価値の3つがあるとされている。この内、移動価値と所有価値は徐々に陳腐化していき、経営の仕方も限られた販売台数を起点にどう高収益を上げるかに重心が変わる可能性がある。アメリカの『Google』や『Apple』等、IT産業からの新規参入企業も間違いなく、そうした状況を作り出そうと動く筈だ。異業種がそこまで影響力を持つのは初めてだ。産業界では今、人工知能(AI)の進歩を背景に、既存産業を揺るがす破壊的技術、所謂ディスラプションが生まれ易い状況だ。勿論、ハードは重要だが、付加価値が“繋がる車”や“モビリティー”と言われる情報サービス分野に流出するのは止めようがないだろう。今年1月。ゴーン社長が仕事始めに向かった先は、恒例の『デトロイト自動車ショー』ではなく、シリコンバレーだった。日産が『アメリカ航空宇宙局(NASA)』と進める自動運転の共同実験を視察した。車輪とハンドル、ガソリンエンジンの発明で産業の王に上り詰めた自動車産業には今、またイノベーションの大波が押し寄せる。ライバルも味方も散らばっているのは“世界”である。アメリカに閉じこもり、アナログな車を作り続けたり、反グローバルを叫んだりすることなど“あり得ない”のが、今なのである。歴史を紐解けば、「グローバル化やイノベーションの担い手は古来、国際商人だった」と、京都産業大学の玉木俊明教授は話す。ゴーン社長の遠い祖先、古代フェニキア人はアルファベットを発明し、地中海沿岸の貿易・商取引を活発にした。大航海時代・『東インド会社』・蒸気機関も、時々の商人たちの野心・ニーズが生んだものだ。国内の内なる成長に拘るトランプ大統領と、グローバルな産業再創造を志向するゴーン社長。歴史に進歩のダイナミズムを刻むのは、どちらの国際商人だろう。 (本社コメンテーター 中山淳史)


⦿日本経済新聞 2017年3月31日付掲載⦿

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【ニッポン未解決事件ファイル】(15) 『ロス疑惑事件』(1981)――無罪を主張し続けた三浦和義“謎の死”の真相

30数年前、新聞・雑誌・ワイドショーで連日のように報道され、日本中が大騒ぎとなったロス疑惑事件。マスコミに臆することなく、一貫して無罪を主張し、時代の寵児となった三浦和義だったが――。 (取材・文/ノンフィクションライター 窪田順生)

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1981年11月18日、ロサンゼルス市内の駐車場で、旅行中の日本人夫婦が銃撃された。妻は頭を撃たれて意識不明の重体。太腿を撃たれた夫は、「犯人はラテン系の男だった」と証言した。「何故、妻がこんな目に…」とマスコミに涙ながらに語った夫・三浦和義は、一躍“悲劇の男”として日本中にその名が知れ渡った。そして、襲撃から凡そ1年後、妻は意識が戻ることなく亡くなってしまう。アメリカの銃社会の理不尽さを象徴する悲劇――。そんな世の評価が180度覆ったのは、1984年1月からスタートした『週刊文春』の“疑惑の銃弾”という連載記事だった。そこでは、銃撃事件の直前に妻がホテルで何者かに殴打されていたこと、そして妻が亡くなったことで三浦が保険会社3社から計1億5500万円の保険金を受け取っていたこと等から、「妻を計画的に葬り去ろうとした保険金殺人だったのではないか?」という疑惑を報じていた。“悲劇の男”から一転、“疑惑の男”と名指しされた三浦は、ワイドショーや週刊誌から追いかけ回されるようになった。過熱報道に拍車をかけた背景には、三浦特有の“キャラクター”がある。石原裕次郎を世に出した有名女性プロデューサー・水の江滝子の甥として、幼いころからセレブとして育った三浦だったが、10代後半には強盗傷害事件等を起こして少年院に入ったこともあった。また、女性関係も派手で、愛人や、過去に関係を持ったという女性が次々と現れた。そんな疑惑に押し切られる形で、捜査機関が動き、ほどなく三浦は殴打事件で逮捕。銃撃事件前に妻が殴打されたことについて、「自分が実行した」と主張する、三浦の愛人だったポルノ女優が現れたことが、大きなきっかけとなった。

「“疑惑の男”も愈々年貢の納め時か」と誰もがそう思ったが、三浦は一貫して無罪を主張。それだけではない。抱置所の中から、“容疑者”段階にも拘わらず“犯人”と断定して報道したマスコミほぼ全てを相手に、名誉毀損訴訟を仕掛けて連戦連勝したのだ。因みに現在、逮捕された容疑者の手錠がテレビニュースでモザイク処理されるのは、三浦がテレビ各局に勝訴したからだ。斯くして2003年3月5日。殴打事件で実刑判決を受け、三浦は2年6ヵ月服役したが、銃撃事件に関して三浦は完全無罪を勝ち取った。この間、三浦が拘置所・刑務所にいた期間は16年に及んだ。 こうして、“疑惑の男”から“冤罪の男”となった三浦は、失われた時間を取り返すかのように、精力的に活動を開始。冤罪事件の支援・著述業・テレビのバラエティー番組出演、更には叔母のように映画のプロデューサーまで務めた。だが、僅か5年余りで再び堀の中に戻される。2008年2月22日、友人らと遊びに行ったサイパンで、現地に出向いたロサンゼルス市警に殺人容疑で逮捕されたのだ。日本では無罪となったが、アメリカの捜査当局では三浦は未だ銃撃事件の“容疑者”という説明だった。「そんな無茶な法解釈があるのか?」と日米で様々な議論がなされる中、事件は衝撃的な幕切れをする。ロスに移送された直後、留置所で三浦が死んでしまったのだ。警察の説明によると、シーツで首を吊ったということだった。「三浦の犯行の動機には、“ジェーンドゥ88事件”(88番目の身元不明女性事件)がある」という指摘がある。銃撃事件の2年前、ロス郊外でミイラ化した女性の遺体が発見された。その後の調査で、それが当時、三浦と交際していた女性だったということ、更には三浦が彼女のキャッシュカードで口座から現金を引き出していること等が判明していたのだ。日本では証拠不十分で無罪となったこの事件だが、ロス市警では捜査を続けており、「今回、サイパンで逮捕したのも、何か新たな“物証”を掴んだからではないか?」という指摘があった。「銃撃事件ならいざ知らず、こちらで何か出たらもう逃れようはない。その絶望が、三浦を死に追いやったのではないか?」というのだ。ただ、三浦の弁護士は「真相が明るみになるのを恐れた何者かが口封じをした」と“他殺”を主張。こうして“疑惑の男”は、最期に大きな“謎”を残して、この世を去った。


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