【霞が関2017夏】(04) 財務省、“ホテル大蔵”の廃業はいつか

1943年に完成、今は耐震工事が進む財務省の本庁舎。歴史ある建物の入り口階段の裏、薄暗い通路の先に仮眠室がある。中を開けると、仕切りで区切られ、ベッドが8台並ぶ。1人あたりのスペースは2畳ほどだ。決して快適とは言えないが、予算編成の時期になると予約で満床になることもある。大蔵省を有名ホテルにかけて付いた俗称が“ホテル大蔵”だ。深夜に及ぶ超過勤務で、不夜城と呼ばれる霞が関。その中でも残業時間が長いと言われる財務省が、働き方改革に取り組み始めた。残業を抑制して定時退庁を推進する為、超過勤務の改善策を今月5日から試行。19時までの退庁を促している。「今までは残業時間を減らすことに取り組んでいた。これからは発想を転換して、定時退庁を前提にする」。働き方改革を担当する秘書課の職員は、こう訴える。先ず取り組むのが、時間管理のルール作りだ。財務省の職員の勤務時間は、殆どが9時30分~18時15分だ。19時までに退庁できない場合には、残業の必要性や見込み時間を上司に報告するようにした。仕事の効率性を高めて、だらだらと残業する残業ありきの雰囲気からの脱却を目指す。管理職にも意識変革を促す。終業時間のベルが鳴る18時15分。ある総務課長は、担当する部局の執務室を回って「皆、早く帰れ早く帰れ」と声をかけた。働き方改革は、管理職にとっても評価の基準になる。人事評価に定時退庁の状況を盛り込むよう義務付けた。

更に、各局の働き方改革の取り組みを募り、職員向けのニュースレターや働き方のセミナーを開いて、優良事例も共有する。人事院によると、各省庁の超過勤務は、2015年で1人あたり年363時間。個別の省庁の残業時間は明らかにしていないが、担当者は「財務省の超過勤務は霞が関でも上位」と明かす。徐々に変わろうとしている財務省だが、働き方改革に冷めた見方の職員も多い。ある幹部は、「働き方改革なんて無理。そんなに簡単にできる訳がない」と冷ややかだ。ネックになるのが、国会答弁の作成だ。答弁書の作成には6~8時間かかるといい、「もっと早く国会議員が質問を事前通告してほしい」という声も上がる。その他にも、国際局等海外と時差がある部局は、どうしても深夜に労働する場面が多くなる。超過勤務を減らすには、国全体での取り組みも必要だ。民間企業では働き方改革が進み、学生の間では残業時間の多い“ブラック企業”が忌避される傾向が強まる。人事院の国家公務員の新人を対象にしたアンケート調査では、人材確保に繋がる施策を聞いたところ、“超過勤務や深夜勤務の縮減”が58%と最多だった。民間が労働環境の改善へ取り組みを先に進める中、相対的に公務員の魅力も薄れつつある。今年度の国家公務員総合職の採用試験は、申込者が2万591人と前年度比6%も減った。霞が関でも、財務省の働き方改革への関心度は高い。その行方は、優秀な人材の確保にも直結する。“ホテル大蔵”が廃業する日は来るのだろうか――。 (逸見純也)


⦿日本経済新聞電子版 2017年6月27日付掲載⦿

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【南鳥島に注目せよ!】(13) レアアースの分離・精錬プロセス

20170628 10
レアアース泥を水深5000~6000mの海底から揚泥するのも大変だが、そこから先の工程にも課題は残されている。その最たるものが、泥からレアアースを“どのように”分離するかだ。その効率化の為に進められているのが、泥の中にある“レアアースが濃集された鉱物”だけを選別回収しようという試みである。南鳥島の周辺海域で採取されたレアアース泥を顕微鏡で観察してみたところ、そこにアパタイト(燐灰石)の存在を確認。その大半が、粒のサイズが20μm(1μmは0.001㎜)以上という比較的粗めのものだった。そして、この20μm以上のアパタイトに、泥が含有するレアアース全体の実に80%が濃集られていると判明したのである。粒のサイズがそれなりにあるので、篩にかけるような選別も不可能ではない。若しこれが叶えば、より効率よくレアアースを回収できるだけでなく、後に残る泥を処理する負担まで軽減できる。まさに一挙両得の好手だ。レアアース泥を篩にかける具体的な方法については、遠心力を利用した分離装置の一種である『ハイドロサイクロン』を用いた選別法が検討されている。

それ以外では、非鉄金属鉱山等で用いられる『浮遊選鉱法』も手応えがあった。これは、簡単に言えば、岩石の表面が親水性、逆に金属は疎水性であるのを利用し、水と油性溶液が混ざった液体中でかき混ぜて、鉱物を分離するという手法である。レアアース泥に含まれる主な鉱物は、チタン鉄鉱・磁鉄鉱・針鉄鉱・石英等である。これらをレアアース泥から分離することができれば、残った泥のレアアース濃度は一気に上昇する。実際に、この手法で分離を行うと、90%を超えるレアアースが回収可能だと判明している。このように、分離されたレアアース含有物は、揚泥された後に陸上へと輸送され、レアアースを精錬する作業に突入。先ずはリーチングという段階に入るが、具体的には、塩酸を用いてレアアースが溶け出した液体を作るという内容である。これを濾過して、レアアースが含まれる溶出液と、残渣として残った固体を分離。固体に残る塩酸を、水酸化ナトリウムで完全に中和して無害化するのも、環境に配慮する上で欠かせない工程だ。濾過されたレアアース溶出液を、今度は何種類かの吸着剤と組み合わせて、重レアアースと軽レアアースを別々に抽出。これらを再び塩酸に溶かすと、重レアアースの混合溶液と、軽レアアースの混合溶液が出来上がる。ここまでくれば、完成まであと一歩である。これらの溶液から、溶媒抽出法によって各レアアースを単体分離。そして、取り出された物質を焼成すると、最終生成物であるレアアース酸化物の完成だ。駆け足になったが、以上が現在検討されているレアアース泥の分離・精錬プロセスである。こちらも、中々骨が折れる作業と言えそうだ。


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“裏オプ”で毎月70万~80万円の荒稼ぎ…19歳はもうババア扱い、秋葉原JKビジネス最前線

20170628 09
秋葉原の路上にズラリと並んだ女子高生。知る人ぞ知る“アキバの裏名物”、JKビジネスの客引き風景である。少女売春の温床として問題視された為、違法ビジネスと思われがちだが、合法店(※キャバクラのように女性が隣で接客せず、カウンター越しに話すだけ)は現在も数多く存在している。今回は、そんな合法店の1つで、JKカフェ等を運営するお散歩コミュニティー『M』を取材し、現在のJKビジネスの実情を聞いた。店長曰く、Mが営業を始めたのが3年前。「秋葉原では、2006年頃にJKリフレが出始めたんですが、それが規制されてお散歩が主流になり、店を始めた3年前は『更に厳しくなりそうだぞ』って雰囲気でしたね」。規制が強まってから始めた店だけに、過激さこそ無いものの、“完全合法”で売り上げを伸ばしているという。現在、所属の女の子は15人ほど。16歳から19歳となった現在まで、長期に亘り勤めているという、あみ嬢(※左画像)に話を聞いた。あみ嬢のアキバデビューは、Mに所属する約1年前。15歳の時だ。『最初は友だちに『リフレで稼げるよ』って言われて始めました。カーテンで仕切られたところで、ハグ5秒でいくらとか、添い寝いくらとか」。当時は、“裏オプ”なる非公式のオプションサービスを売りにした違法店が最も横行していた。「体を触らせて1万円、お風呂入っただけで3万円、手や口でして1万~2万円、本番で3万~5万円くらいですね。私は十分稼げていたんで、やりませんでしたけどね」。裏オプをしなくても、当時の稼ぎは凄かったというあみ嬢。「裏オプをやっている子は、1日平均5万とか稼いでいたから、毎月70万~80万円くらいは稼いでいたと思いますね。オプションは女の子に100%バックだったので。私は添い寝とかハグだけだったけど、週3くらいで1日2万~3万円くらい稼げたんで、月で30万円くらい貰ってましたね」。それまでは月5000円だったという小遣いが、いきなり60倍に。「使い道は…遊びですかね(笑)。服買ったり、友だちに奢ったり、あとはサンリオが好きなんで、10万円単位で買い物したりとか」。

現在の店に移って、売り上げはだいぶ落ちたが、それはリフレからの転向や、年齢の問題もあるという。「19歳って、扱い的にはもうババアなんで。合法の年齢になっちゃうと、ぶっちゃけ風俗でも会える訳じゃないですか? レア感が無くなるというか」。店長曰く、売り上げのピークは16歳。17歳になると売り上げは落ちるという。「今の店に移ってからは、1日1万ちょいとかで月20万円ですね。今でも自分を推してくれるお客さんはありがたいです」。先日、小金井で起きた地下アイドル殺人未遂事件も他人事ではない。「私じゃないけど、客引き中に話した人がずーっと付いてきて、駅まで来たこととかありましたよ。女の子から泣きながら電話がかかってきて」。彼女たちもまた、体を張って最前線に立っている“ローカルアイドル”なのだ。精神的に安定していないというあみ嬢にとって、Mで働くことに、お金意外の意味を見出していることも事実。プライベートで半年前に起きた事故の結果、歩行も困難な状況にあるあみ嬢。現在通っている高校は休学中。そんな中で、Mへの出勤が心の支えになっているのだ。「自分の居場所になっています。やっぱり、アキバって独特な街。集まってくる子は病んでいる子が多いです」。既にアキバ歴4年を超えるキャリアの彼女に、将来の展望はあるのだろうか? 「実家暮らしなんで、食べるのにも困っていないし、本当に何も考えてなくて…。基本的に働きたくないんで、早く結婚して家事をするのが夢ですね。でも、もうすぐMでバーを作る計画があるので、それでやっていこうかなと思っていますね」。15歳でアキバに飛び込んだ女子高生が大人になり、彼女のように、全盛期を経験した世代が、合法的に新たなビジネスを始めようとしているという。JKビジネスは、まさにビジネスとして新たな段階を迎えているようだ。一方、未だ過激な営業を続ける違法店は、アンダーグラウンドに潜り続ける。「身分照会を緩くして、アンダー(※18歳以下の女性)を入れている」のだという。「そういう店は、『(身分証明が)怪しいな』って思っても働かせちゃうんですよ。恐らく、『近いうちにまた一斉に取り締まりが来る』という噂ですけどね。合法的にやっているウチが煽りを食わないかが心配です」(前出の店長)。果たして、いつまで続けられるかわからない――常に不安定な側面を持ちながら、今日も多くのJK・元JKにとっての受け皿になっているJKビジネス。その行く末は…。 (取材・文/フリーライター 小島チューリップ)


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多重債務者を追い詰める闇金グループの手口…『五菱会』事件の目撃者が回想、宇都宮健児に潰された闇金黄金時代

20170628 07
若林武史氏(仮名・34)は2000年頃、17歳で闇金業界に入り、その後も数々の裏稼業を転々としてきた経歴の持ち主だ。1990年代半ばにキャバクラのボーイをしていた頃、客として店を訪れた闇金業者の社長に勧誘されて、闇金で働くことになった。「僕がいたのは、当時、闇金組織としては一番でかかった梶山進の五菱会グループ。五菱会は当時、山口組の2次団体でした。その傘下のグループにいたといっても、五菱会グループの中の1つのグループの下のグループ、そのグループの中の1店舗です。うちのグループの社長は闇金を10店舗経営していて、僕はその1つの店舗の末端ということです。うちの社長より上の五菱会グループ幹部のことは知りません。飲み屋で同席したことはありますが、17~18歳の僕らからすれば幹部はいい親分ですからね。『恐いな』っていう印象しかないです」。五菱会は多重債務者をターゲットにし、顧客情報はセンターで管理していた。顧客の返済期限が近付くと、同グループの店舗が新たな融資を持ちかけ、その利息は10日で5割以上。若林氏は、「10日で10割は取っていた」という。そんな法外な金利では、一度借りると利息は増える一方。延々と利息のみを払い続けるという悪質な仕組みを構築した。「DMを大量に撤いた翌朝に出社すると、5台ほどの電話は1日中鳴りっ放しです。入った頃の仕事内容はテレフォンアポインターで、毎月の給料は15万円ぐらいしか貰えませんでした。ただ、5万円の貸し付けを取ると、相手には利息を引いて4万5000円しか振り込まない。そこから振込手数料を引いた金額を、月末に貰えることがありました」。手取りは25万円から30万円ほどだったが、事務所にいる時は煙草も飲み物も無料だ。飲みに行けば社長が払ってくれる。40万~50万円ほど貰っているような金銭感覚だったという。

20170628 08
若林氏は直ぐ、責任者に抜擢された。責任者といっても、若林氏のいた事務所は、店長を含め3人のみだが、10店舗合わせて50人ほどのグループを形成しており、グループ全体の純利益は月に10億円ほどあったという。それでも、五菱会グループの中ではピラミッドの最下部でしかないというのだから、グループ全体の利益は計り知れないほどだ。若林氏が店舗全体の貸し付けを管理するようになると、月の手取りは100万円ほどにアップした。「僕は店長ではなかったのですが、店長は仕事をせず『お前やれ』というような人でした。グループ全体の会議では、各店舗2000万円ずつ貸し付けるように言われていました。ただ、僕は1300万円しか貸さなかったんです。でも、利益は一番多かった。何故かというと、残りの700万円は不渡りなんですよ。そこを無理して貸しても、回収できる見込みがないんです」。1年半後、知り合いの名簿屋から「君、凄いよ。お金出してやるから自分でやりなよ。君の為に1億円用意するから」と言われて、独立を果たす。「ところが、用意されたお金は1000万円しかなかった。しかも時期が悪かったんです。弁護士の宇都宮健児っているじゃないですか。東京都知事選に立候補しかけた。アイツは当時、“闇金潰し”って言われていて、1年くらいで客が皆、宇都宮健児に相談に行って貸し付けが無効にされて。アイツに潰されたようなもんです」。2002年、闇金が社会問題とされた頃だった。若林氏が闇金業を抜けた翌2003年、若林氏のいた五菱会グループの東京の幹部が、次いでトップの梶山進が逮捕され、闇金全盛期は終焉を遂げた。「今でも闇金はありますけど、弁護士は闇金の顧客を飯の種にしているし、僕みたいな元闇金の人間は借りて返さない方法を知っているから、闇金は儲からなくなりました」。如何に巧妙な仕組みを作ったとしても、それが破られる日がいつかは来る。闇金の黄金時代は、あっさりと終わりを迎えたのだ。 (取材・文/フリーライター 池田潮)


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【不養生のススメ】(03) “抗がん剤信仰”がもたらす不幸

20170628 05
今年2月、アメリカの医療政策等の通信社である『カイザーヘルスニュース(KHN)』に、進行性乳癌に苦しむマーリン・マッカーシーさん(73歳・ロードアイランド州在住)の話が紹介された。マッカーシーさんは44歳の時に乳癌と診断され、治療後約20年間落ち着いていたが、7年前に骨に再発した。2015年、その年に『食品医薬品局(FDA)』に承認された『イブランス』を使用したが、開始4ヵ月後、新しい骨転移が見つかった。別の新規抗癌剤『アフィニトール』もあったが、医師に多くのリスクを警告されて試さないことにした。今は痛みの為、杖無しでは歩けず、自分の病気が治らないことを理解している。マッカーシーさんは、FDAが“癌の治癒や延命に役立つ”という証拠無しに、抗癌剤を承認していることに不満を抱いている。確かに、FDAは早く新しい治療薬の使用を望む患者の期待に沿って、急いで抗癌剤の承認をしているが、実際は殆ど効果が無い。2014年のアメリカの医師会雑誌(※耳鼻咽喉科頭頸部外科版)による『アメリカ国立癌研究所』ティト・ホジョ博士らの報告では、2002年から2014年までに承認された71の抗癌剤の延命効果は、古い抗癌剤に比べて僅か2.1ヵ月だった。全体的にみると、過去10年間、癌患者の生存率は殆ど変化していない。更に、新規抗癌剤の多くは生活の質も改善しない。今年のアメリカの医師会雑誌(※内科版)による『アメリカ国立健康研究センター』ダイアナ・ズッカーマン博士らの報告によると、2008年から2012年の間に、FDAによって承認された抗癌剤の内、18種類を調査したところ、どの薬も延命効果は無かった。1種類のみ生活の質が向上したが、2種類は却って生活の質に悪影響を及ぼした。

例えば、最も高価な甲状腺癌の抗癌剤である『カボザンチニブ』は、下痢・疲労・睡眠障害・苦痛・記憶障害が悪化した。ロイター通信にズッカーマン博士は、「これらの抗癌剤が命を救うものではなく、生活の質を改善するものでもないことを発見し、ショックを受けた」という。ズッカーマン博士の報告では、FDAの抗癌剤の承認において、臨床的に有益であるという証拠が欠けていることを指摘している。FDAは、迅速に抗癌剤を市場に出す為に、臨床研究において、抗癌剤の効果を評価する為の目標として、従来の“生存率”の代わりに、“腫瘍の縮小効果”や“病気が進行するまでの時間”を使うことがある。つまり、癌の大きさが小さくなれば、延命や症状が改善しなくても「抗癌剤の効果がある」と判定される訳だ。こんな報告が続く中、多くの専門家が、特に高齢者の抗癌剤の使用のリスクを警告している。2016年の『メディカルケア』誌に、コロラド大学のキャシー・ブラッドリー博士らが、約2万人もの高齢の進行性大腸癌患者の抗癌剤治療の実態を報告した。ここ10年間で3種類以上の抗癌剤を使用した75歳以上の進行性大腸癌患者は、2%から53%にも上昇した。ところが、これらの患者の生存期間中央値は、僅か1ヵ月延長しただけだった。更に驚くことは、新しい治療法は古い治療法に比べて、治療に伴う下痢・脱水・腸壁の損傷・出血等の毒性の為、却って健康状態・生活の質が悪化したのだ。背景には、癌臨床試験のやり方の問題がある。一般に高齢者は、既往歴や併存症等の為、臨床試験の対象に入れてもらえない。2012年のアメリカ臨床腫瘍学会誌による『シーダーズ・サイナイ医療センター』ケビン・シェール博士らの報告によると、癌患者の59%が65歳以上で、30%が75歳以上であるのに、癌臨床試験の参加者の33%が65歳以上で、75歳以上は僅か10%であった。癌臨床試験の対象者の多くは50~60歳で、そのデータに基づいて高齢者の治療を行うことは倫理的に問題視されている。冒頭のマッカーシーさんは、国防総省の乳癌研究の臨床試験に参加を希望したが、70歳以上である為に2回拒否された。更にアメリカでは、新規抗癌剤の価格は暴騰(※左上表)し続けており、多くの高齢癌患者は、高価な治療の為に老後の蓄えが枯渇し、借金や破産に苦しむ。薬価暴騰の背景には、2003年に連邦法として定められた『メディケア処方薬剤改善・近代化法』がある。この法律により、製薬会社は薬価を自由に設定できるようになった。また、アメリカの公的医療保険制度『メディケア』を利用している高齢者らが、FDA承認の抗癌剤を使用した場合、政府には保険がカバーする額の約80%を支払う義務が生じた。製薬会社にとって、高齢癌患者は販売拡大の為の絶好のターゲットなのだ。

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米中つなぐ精鋭育成校、初の卒業生――米中欧のエリート集う、日本はかやの外

アメリカの投資会社『ブラックストーングループ』のスティーブン・シュワルツマンCEOが、私財を投じて中国の清華大学に設立した『シュワルツマン学院』。今年7月に初めての卒業生約110人を送り出す。どんな学校なのか訪ねてみた。 (中国総局 原田逸策)

20170628 02
周囲を歩けば軽く1時間はかかる広大な清華キャンパス。中央やや北寄りにシュワルツマン学院があった。灰色の煉瓦造りの低層の建物は、緑に囲まれ、違和感無くキャンパスに溶け込んでいた。入り口付近の壁に“蘇世民書院”と書いてある。蘇世民は、シュワルツマン氏の中国語名だ。シュワルツマン氏が学院創設を公表したのは2013年。清華大学に1億ドル(※約110億円)を寄付して奨学金プログラムを作り、校舎も新設した。「中国で共に学び、中国を理解し、何かあれば電話1本で話ができる将来のリーダーを、50年間で1万人育てる」という構想だ。同氏が参考にしたのが、イギリスの大富豪で首相も務めたセシル・ローズによる『ローズ奨学金』。アメリカ等、世界の優秀な学生をオックスフォード大学で学ばせるもので、アメリカのビル・クリントン元大統領もその1人だ。米英間の深い絆は、アメリカの政官界にオックスフォード大学で学んだ人が少なくないことが関係する。ローズがアメリカを将来の大国とみたように、シュワルツマン氏は「中国が更に巨大化する」と睨み、中国とアメリカのパイプ作りを進める。学生は、45%がアメリカ、20%が中国、残りがヨーロッパ等その他の国々。応募できるのは、30歳以下で学士以上の学歴を持つ人。初年度の学生は約110人だが、今後は200人まで増やす。

興味深いのは、陸軍等アメリカの若い軍人も数人が学んでいること。単なる奨学金プログラムではなく、アメリカの安全保障分野でも“知中派”を育てる狙いが浮かぶ。校舎に入ると先ず、ロビーに並んだ国旗が目に飛び込む。真ん中に米中の国旗があり、全部で30ヵ国以上の国旗が飾られる。生徒の出身国という。国旗の脇にはシュワルツマン氏の肖像画もあった。絨毯が敷かれ、高級ホテルのような雰囲気だ。豪華ではないが落ち着いている。家具や調度品も、品の良いものが置かれる。全て、シュワルツマン氏の夫人が選んだという。地下1階に下りると中庭があり、生徒が運動していた。地面を掘り下げていて、授業を受ける教室が並んでいる。先生が真ん中に立って講義し、両側から挟み込むように階段状に生徒の机が並ぶ。黒板を背に授業をする中国や日本の大学とはだいぶ異なる。『ハーバードビジネススクール』を参考にしたという。授業は全て英語で行われる。4学期制で忙しい時には、朝9時から17時までずっと授業があるという。卒業論文があり、1年で学位を取得できる。国際経済・国際関係・公共政策の3つのコースから選ぶ。アメリカの金融機関やコンサルティング会社から既に内定を得ている学生も多く、国際経済の人気が高いという。中国語の授業もある。清華大学やエール大学の教授が教えることが多いが、アメリカのローレンス・サマーズ元財務長官、ジェイコブ・ルー元財務長官ら大物ゲストの講義も頻繁にあるという。ダリオ講堂という部屋があった。世界最大のヘッジファンド『ブリッジウォーターアソシエーツ』の創業者であるレイ・ダリオ氏が寄付したという。ブリッジウォーターは、同学院で採用イベントも開いたという。外にも、半導体の『紫光集団』、不動産の『華夏幸福基業』等が寄付した教室もあった。米中企業が優秀な人材を取り合う構図が浮かぶ。シュワルツマン学院の特徴の1つは、全寮制であること。生徒は全員が校舎内に住み、1年間寝食を共にする。2階から5階は全て寄宿舎で、ホテルの大きめのシングルルームほどの部屋が並ぶ。生徒らは、寄宿舎内のリビングに夜遅くまで集まって語り合う。

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香港でくすぶるアグネス・チャン氏政府起用説――教育関連ポストの可能性が浮上、“中国政府寄り”と民主派に警戒論も

20170628 01
香港出身で日本で活躍したタレントのアグネス・チャン(陳美齢)氏(61・左画像)を、香港政府が教育局長(閣僚)等教育関連のポストに起用するという観測が燻っている。行政長官に当選した親中派の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏(59)と面会し、教育改革に関する提言をしていたことが明らかになった為だ。アグネス氏登用への賛否両論は、教育システムを巡る香港の分断も浮き彫りにしている。アグネス氏は8日、香港のラジオ局のインタビューで、林鄭氏から教育局長への就任を要請されたかについて、「仮定の質問には答えられない」とした上で、林鄭氏と共通の知人を交えて複数回会ったことを認めた。提言に関心を示した林鄭氏に「香港への思いはありますか?」と尋ねられ、「勿論あります」と答えたという。少女時代に広東語ポップスの歌手としてデビューし、日本に活躍の場を移したアグネス氏。テレビ局への子連れ出勤の是非を巡り、日本で議論を巻き起こした1987~1988年の所謂“アグネス論争”を機に、教育問題への関心を強め、スタンフォード大学大学院で教育学の博士号を取得した。家庭教育にも熱心で、2016年に出版した『スタンフォード大に3人の息子を合格させた50の教育法』は、中華圏でもベストセラーとなった。アグネス氏の動静が香港で関心を集めるのは、教育改革が政治的な争点になっている為だ。議論の中心は、小学3年生・6年生・中学3年生の全生徒が強制的に受けさせられる共通試験『TSA』の存廃だ。TSAは、中国語・英語・数学の3科目で生徒の学力を測定し、教育内容を改善する狙いで、2004年に導入された。

だが、現実には小中学校をランク付けする手段と化しており、どの学校も上位に入ろうと試験対策に血道を上げている。公立小で働く女性教師(32)は、「教師は補習に追われ、成績の悪い生徒の親は家庭教師を探さなければならない。関係者全員に重荷になっている」とこぼす。特に、小3段階での実施には、「幼い子供に過度のプレッシャーを与えている」との批判が強い。保護者団体からは廃止を求める声が広がるが、現職の梁振英行政長官は要求を突っぱねてきた。アグネス氏は、4月に新刊『香港の学生に幸せを取り戻す40の教育提案』を発売。「香港の教育制度はペーパー試験偏重で、富裕層だけがエリート教育を受けられる等、社会階層の固定化を招いている」と批判した。TSAについても、強制参加を止めて選択制にする等、抜本的な見直しを提言している。“社会の亀裂の修復”を最優先課題に掲げる林鄭氏も、長官選の公約で小3のTSAの廃止に前向きな姿勢を示していた。「アグネス氏の登用は、教育政策を転換するシグナルになる」との見方もある。一方、民主派の間では、アグネス氏の起用を警戒する声が強い。2014年秋に長官選の民主化を求める学生らが道路を占拠した『雨傘運動』に対し、アグネス氏は「香港の民主主義を破壊する」と批判する等、中国政府寄りの発言を繰り返してきた為だ。中国政府には、「民主化運動や香港独立論が若者に広がるのは、香港の教育システムに問題があるからだ」として、「中国人としての愛国心を養う“国民教育”を義務化すべきだ」との意見が燻る。アグネス氏も「独立を志向する本土派の若者が、立法会(議会)議員の就任宣誓で中国を“支那”と発言したのは教育の失敗だ」と主張し、「抗日戦争等歴史教育を強化すべきだ」と訴えた。国民教育を“洗脳教育”と批判し、義務化に反対してきた民主派との溝は深い。香港政府の閣僚に就任するには、中国政府の承認が必要だ。日本やアメリカでの生活が長く、イギリスのパスポートを保持しているとされるアグネス氏の閣僚就任を北京が容認するかは、不透明感も強い。アグネス氏も「教育局長にはならないだろう」と語る一方、顧問等他のポストで次期政権に協力する可能性は否定していない。香港返還20周年にあたる7月1日に発足する新政権の陣容が固まるまで、アグネス氏の処遇を巡る論争は続きそうだ。 (香港支局 粟井康夫)


⦿日本経済新聞電子版 2017年5月12日付掲載⦿

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売れるものなら転落劇も売る! “暴露系”バラエティー番組の黒い裏側

芸能人が過去の悪事を告白し、懺悔する番組が近頃流行中だ。タブーを自ら解禁し、セールスポイントに変換する者がいる一方、自分の犯した悪事を公言せずに“無かったこと”にしようと企てる者もいる。あの芸能人が昔やったこと、知っていますか? (取材・文/本誌取材班)

20170628 04
3月31日に放送された特別番組『今夜解禁!ザ・因縁』(TBSテレビ系)が、現在、テレビ業界内でちょっとした話題になっている。「嘗て結婚間近と言われながら破局した曙と相原勇(※右画像)の二十数年振りの再会が、この特番の目玉。理由も聞けずに捨てられた恨みを、散々、テレビやインタビューで話してきた相原に対し、曙は『別れは告げたつもり』とバッサリ。怪我で思うような相撲が取れず、苦しんでいた曙に結婚を迫るばかりだった相原に原因があったことがわかり、“然もありなん”な結末となりました」(テレビ雑誌記者)。だが、話題になっているのは、この結末ではなく、対峙した曙に「こんなことを何年も喋って」と責められて言い返した、この一言だ。「だって求められるから」。この『ザ・因縁』だけでなく、現在のテレビ界は暴露・告白・懺悔系番組が花盛り。“あの人は今”な嘗てのテレビの人気者が、離婚・不倫・借金・傲慢・闘病等による“転落劇”を赤裸々に告白するような番組が、人気を得ているのだ。実際、この『ザ・因縁』も、視聴率は15%を超える好成績を記録した。「現在のテレビの視聴者層のメインターゲットは、情報弱者の40~50代以上の女性。スマホで得られる最新のトレンドよりも、嘗てテレビで見ていた人気者の転落劇のほうが引きがある。“爆報!THEフライデー”・“金スマ”(共にTBSテレビ系)等のシリアス系から、“しくじり先生”(テレビ朝日系)・“有吉反省会”(日本テレビ系)等バラエティー色の強いものまで様々ですが、何れも出演者探しに躍起。一度や二度断られても、ギャラを吊り上げてでも担ぎ出しに必死。相原と曙は、各局が何年も狙っていた大ネタでした」(放送作家)。

相原と曙が『ザ・因縁』でどれだけのギャラを手に入れたのかは不明ながら、高額ギャラと共に、「テレビの最前線に一瞬でも返り咲けるのなら…」という、嘗ての人気者やその所属事務所が多いことが、こうした番組を成り立たせていることもまた事実だろう。「告白ゲストのギャラを吊り上げたといっても、今の時代、100万円を超えることはなく、タレント本人がネタなのだから、彼らに語らせる以外に企画性や趣向を凝らす必要もない。しかも、その内容についての批判は、番組やテレビ局よりもタレント本人に向けられる。様々な規制や、大手芸能プロとの関係性から、“自主規制”という名のタブーが増えテレビからダイナミズムが失われていく中、本人が自分のことを喋るぶんには規制がかけ難い為、タブーにも切り込んでいけるのも、番組的には大きなメリットと言えるでしょう」(ディレクター)。とはいえ、こうした番組も、流石にドラッグ・性犯罪・反社会勢力との親密交際、その他の法に触れる不祥事を起こした者に登板のチャンスが与えられることは殆ど無い。「2009年にシャブで逮捕された酒井法子が、2013年の“さんまのまんま”(関西テレビ・フジテレビ系)でキー局バラエティー復帰を果たしましたが、その後、キー局でのりピーを積極的に起用しようという動きはありません。昔は“大麻半年、シャブ1年”と言われ、直ぐに復帰が可能で、芸能界の甘い体質が批判もされましたが、今は不祥事タレントを起用するとインターネットやSNSが炭上し、タレント批判・番組批判、更にスポンサー批判となって拡散され、株価に大きな影響を与えてしまう。その為、番組もスポンサーも思い切った記用には腰が引けています」(キー局編成担当)。冒頭、タブー破りの暴露系番相が花盛りと言ったが、所詮、相原勇も曙もテレビに出られる程度のタブーだったということか。現代のテレビに、本当のタブーに挑む気概などないのである。


キャプチャ  2017年6月号掲載

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ジャンル : ニュース

「カネ返さなくていいからiPhone7Plus契約してきて」…西成に蔓延る“iPhone闇金”の実態

20170627 12
大阪の西成といえば、4人に1人が生活保護者で、日本一治安が悪く、国内で唯一暴動が起こる街…等、正直、イメージは良くない。兎に角凄いところだという先入観を抱きながら、筆者は昨年と今年の2度、計3ヵ月間、西成に潜入取材を敢行した。そこで筆者の目に映った西成の印象は、意外なものであった。「西成って治安が悪いイメージあるでしょ? でも、それは昔の話やで。20年ぐらい前はシノギ(※路上強盗)がおったけど、今はもうそんなんおれへん。そこら歩いとるのは生活保護のじいちゃんばっかりやし、貧乏人襲っても意味ないやん」(街の住人)。確かに、ドヤ街を歩けば高齢者ばかりで長閑なところだ。危険な印象は全く無い。橋下徹前大阪市長指揮の下、“西成特区構想”が進められ、西成はクリーンな街に変わりつつある。昔はそこら中にあったというゴミの山は無くなり、公衆便所は日に3度業者が清掃している為、清潔感がある。治安は悪くないし、街は思ったほど汚くもない。意外だった。だが、一見綺麗になったように見えても、西成の地域性は色濃く残っている。夜中にドヤ街を歩くと、覚醒剤の売人らしき男がウロウロしているし、警察に摘発された泥棒市も、規模こそ小さくなったが、未だに毎朝開かれている。そして目を引くのが、ドヤ街周辺の電信柱に貼られているチラシ。闇金のものと思われるが、「即日融資・福祉相談可・年金可」「生活保護の方、相談ください」等、如何にもこの街の住人をターゲットにした触れ込みである。闇金はトイチの金貸しで、生活保護受給者であれば、初回は2~3万円ほど貸してもらえるという。3万円借りたとすれば、1ヵ月後に9000円の利子。保護費でギリギリ返済できる額だろうか。業者としては薄利多売なのだろう。

「即日融資は助かるけど、返済遅れたら大変やで。夜中にバール持って押しかけて来て、玄関メチャクチャに叩かれたり、ドえらい目に遭うこともある」(経験者)。中にはこんな業者もいる。実態を探る為、筆者は電柱のチラシを見て電話をかけてみた。「生活保護受けていますが、お金を貸してもらえませんか?」。その業者は、5万円まで貸してくれるという。指定された場所で待つと、40代半ばくらいの男が2人でやって来た。男は優しい口調の関西弁で、筆者にこう説明を始めた。「生活保護で家賃払ったら残り8万やろ? 今日、5万借りて、次の支給日に5万と利子合わせて返すの大変やで。もういくらも残らへんやん…。でな、えぇ方法があんねん。お金返さんでもえぇ方法がある」「えっ? お金返さなくていいんですか?」。借りたお金を返さなくて済むとは、一体どんな方法だろうか? 「iPhone7pus契約してほしいねん。今から携帯ショップ行こか。一遍に2台契約できるからな。2台と引き換えで5万渡す。そのお金は返さんでえぇで」。男は頻りに「振り込め詐欺に使ったりせぇへんよ」という。では何に使うのかと訊くと、本当かどうかわからないが「中国に売る」と答えた。なるほど…そういうことか。SIMカードを抜いた白ロム状態で渡し、契約料や機種代金はこちらの負担。キャリアからの請求をぶっちぎる覚悟があれば“旨み”はあるが…。大方話を聞いたところで、「すみません、それなら止めときます」と言うと、それまで優しい口調だった2人の態度は豹変した。「何やコイツ。ここまで来て止めるってどういうことや?」と1人が言う。「そうやなぁ、俺らおちょくられとるなぁ」と続けてもう1人。チラチラこっちを見ながら、態と聞こえるように言うのである。「どないする? コイツ刺したろか?」。先の経験者の「ドえらい目に遭う」という警告を思い出した筆者は、謝りながら足早にその場を後にすることにした。結果として、業者にただ喧嘩を売ってしまっただけであった。しかし、携帯キャリアのブラックリストに入ることになるのは勘弁してほしい…。昔に比べると随分綺麗になった西成であるが、一歩入れば未だにこのような暗黒面は残り続けているようだ。 (取材・文/フリーライター 長田龍亮)


キャプチャ  2017年6月号掲載

テーマ : 社会ニュース
ジャンル : ニュース

「数十年後は定年が無くなる」…“定年”撤廃する『大和証券』、狙いは2つの効果

20170627 11
大和証券グループ本社は来月、営業職を対象として定年制度を撤廃する。2013年から営業職について70歳まで継続雇用することにしていたが、今後はその年齢上限を無くす。実質的な定年の撤廃で、大企業としては珍しい取り組みとなる。週5日のフルタイム勤務となり、給与体系は一般の社員と同じ。賞与も、営業成績等に基づいて同じ基準で支払われる。契約上は嘱託社員となり、1年毎に更新する。年1回の健康診断と人間ドックによって健康状態を確認、本人の希望に応じて原則、働き続けてもらう。現在、大和証券における最高齢の営業担当者は、神戸支店に勤めており、来月に68歳の誕生日を迎える男性社員。2年後に70歳以上として働き続ける最初の社員となる見通しだ。定年廃止は、給与体系や人員配置の考えを変えなければ、中長期的に人件費が膨らむ恐れがある。にも拘わらず、大和証券は何故このような決断をしたのか? 狙いは大きく2つある。

先ず、顧客への営業体制強化だ。高齢の顧客からの資産運用や相続の相談が増える中で、「同世代の社員が継続的に営業やコンサルティングを担当することで、信頼獲得と業績向上に繋がる」と判断した。もう1つは、中高年を中心とした社員のモチベーション向上が見込めること。日本企業では、役職定年を迎えたり、定年後再雇用の対象となったりすると、給与が大幅に減るケースが多く、中高年社員の意欲減退の要因になっている。今回の制度改定で、営業担当者にとっては生涯に亘って働き、成果に応じた給与を得られる環境が整ったことになる。大和証券では、2015年に45歳以上の社員を対象に研修プログラムを拡充し、積極的にスキル向上を果たした社員は給与が優遇されるよう人事制度を変更する等、働く意欲に配慮してきた。人事担当の望月篤常務執行役は、「超高齢化が進む中で、数十年後には社会から定年という概念が無くなる可能性がある。スキルを高めながら働き続けられる選択肢を用意することが重要と判断した」と説明する。今回の定年廃止の推進役となったのは、今年4月に就任したばかりの中田誠司社長CEO(※右上画像)だ。営業体制の大幅見直し等、矢継ぎ早に改革策を繰り出している。コンサルティングをAI(人工知能)で自動化するロボアドバイザーといった新技術が登場している外、金融庁がフィデューシャリーデューティー(顧客本位の業務運営)を求め始める等、大和証券のような対面証券はビジネスモデルの改革を迫られる。鈴木茂晴最高顧問・日比野隆司会長と歴代トップが進めてきた働き方改革を推進し、成功に導けるか? 中田社長の手腕が問われている。 (取材・文/本誌 広岡延隆)


キャプチャ  2017年6月26日号掲載

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