【CIA公開文書の衝撃】(下) CIAが秘密裏に企てた“昭和天皇生前退位計画”

今年初頭、アメリカの『中央情報局(CIA)』は突然、全世界に向けて、CIA創設以来の膨大な数の過去の機密文書をアーカイブ公開した。「これは、バラク・オバマ政権のドナルド・トランプ大統領に対する牽制ではないかと考えられている。ただ、機密文書とは言っても、暗殺やテロ行為等非合法活動に関するものは、その存在自体が除外されている。それでも当時、CIAが何に対して重要な関心を持っていたのかがわかって興味深い」(シンクタンク研究員)。このアーカイブに“hirohito”とキーワードを入力すると、111件の文書がヒットする。その中身は、最高機密扱いが6件、機密扱いが6件含まれる。この12件のCIA文書からは、日本の政治状況を見ながら、昭和天皇を排除しようというCIAの目論見が窺える。機密文書を要約するとこうだ。「サンフランシスコ講和会議で国際社会に日本が復帰すると同時に、昭和天皇が退位するという説があるが、吉田茂首相は明確に否定した」(外国情報報道局、1952年1月31日)。GHQは日本の占領政策で、天皇は戦犯とせず、人間宣言をさせた天皇によって天皇制は維持された。これは、日本に大きな混乱が生じることを避ける為だった。「アメリカ政府には『昭和天皇は戦犯だ』という意見も根強く、天皇制廃止・生前退位が真剣に検討されていたが、吉田茂はそれを一蹴していた」(同)。それを裏付けるように、次の最高機密文書は、具体的なCIAの日本への政治工作が記されている。
緒方竹虎は、『朝日新聞』の副社長から自民党の官房長官まで務めた、自民党を発足させた有力な政治家だ。その緒方の周囲で、天皇の生前退位の策謀があったというのである。実は、緒方竹虎自身がCIAのエージェントでもあったとも言われている。「緒方は吉田と総理の座を争うほどの政治家でしたが、アメリカの意向を強く受けていた。機密文書の中国人は、その動きを確認していたのではないかと考えられる」(同)。だが、緒方は病に倒れ急逝。計画は実行に移されなかった。昭和天皇は天皇であり続けた。現在、日本では天皇陛下の生前退位の議論が活発化している。そうした時期にこの文書が公開されたのは、果たして偶然だろうか? 「謂わば、過去のCIAの対日工作の一端が明らかになったのに、日本ではあまり問題となっていない。現在の天皇の生前退位に、アメリカ政府も強い関心を持っている。当然、今後の日米関係にも影響があるとして、『何らかの工作を現在も行っている』と考えるのが自然。つまり、現政権にも緒方竹虎のようなCIAエージェントが存在している可能性がある」(同)。天皇陛下の生前退位は、陛下ご自身の意志とは無関係なところでも進行している。果たしてその裏に、嘗ての緒方竹虎のような政治家が存在しているのか? 因みに、公開された文書は5月22日、突然、検索できなくなった。国家の機密は再び闇に消えるのか――。 (取材・文/本誌取材班)『緒方竹虎による裕仁天皇の退位の可能性』 情報入手 1952年4月後半(公開範囲・アメリカ政府職員)
情報源(※実名は黒塗り)アメリカ在住中国人のエージェント。日本訪問時に情報入手。接触したのは、日本政界の緒方竹虎の派閥関係者
1. 皇太子明仁と親しい緒方竹虎は、吉田茂の後継として、2年以内に総理となると目されている。
2. 同時期、天皇裕仁には退位する可能性がある。その後、皇太子が即位する。吉田首相の辞任と天皇の退位は同時に行われる。
3. 緒方は皇太子からの信任が厚い。その関係は、皇太子の家庭教師時代から続いている。緒方は朝日新聞に在籍していて、終戦後の日本で最も影響力のある人物の1人だ。
