【特別対談】 小池百合子、偽りの都民ファースト――片山善博(前鳥取県知事)×郷原信郎(弁護士)

都政の改革者か、将又破壊者か――。地方自治に精通した前鳥取県知事と、コンプライアンス問題に詳しい元検事が、小池都政の“偽り”を喝破する。

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郷原「小池百合子さんが東京都知事に就任してから、早いもので9ヵ月余りが経過しました。彼女は“東京大改革”を旗印に一大旋風を巻き起こし、新聞各紙の世論調査でも、未だに7割を超える非常に高い支持率をキープしています。その一方で、“豊洲移転”問題を始めとする数々の難題に直面しているのも事実です。これまでの小池都政について、片山先生はどのように評価されていますか?」
片山「昨年7月の東京都知事選で小池百合子知事が打ち出した公約や、その後の言動から察するに、知事の掲げる東京大改革の要諦は、情報公開の徹底にあるのだと思います。確かに、“のり弁”と呼ばれた黒塗りばかりの資料に象徴される都議会を含めた都政の非公開体質、また根回し・談合体質にメスを入れた点については評価すべきでしょう。振り返れば、都政の混迷は鈴木俊一元知事時代の末期から続いてきました。知事がリーダーシップを発揮できず、都の職員と都議会自民党等との癒着の構造が生まれ、“ドン”と呼ばれる存在まで現れた。そうした構造が石原(慎太郎元知事)さんの時代に強化され、猪瀬(直樹)・舛添(要一)の両都政でも基本的に変わることはなかった。つまり、意思決定のプロセスが不明瞭な、情報公開という点では極めて劣悪な環境にあった訳です。その意味で、小池知事が改革に乗り出したことの意義は、決して小さくありません」
郷原「私も、小池知事が誕生した時には、かなり期待を込めて見ていました。『これまでの都知事とは違って、都議会との柵が無く、圧倒的な支持率を誇る彼女であれば、東京都という巨大自治体の官僚体質にも斬り込んでくれる筈だ』と。小池知事の強みの1つとして、コンプライアンスを武器にしていることが挙げられますが、これは私自身が活動する際のテーマでもある。しかも、彼女は単に法令遵守を唱えるだけではなく、社会の要請に柔軟に応え、都民の利益を重視するスタンスを前面に押し出してきました。コンプライアンス的なフレーズを巧みに使い、その方向性も基本的には正しいので、中々正面から批判し難い訳です」
片山「ただ、ここに来て私が危惧の念を抱いているのは、『小池知事がコンプライアンス・説明責任・情報公開の徹底という基本路線から、自分自身は除外しているのではないか?』という懸念です」
郷原「仰る通りだと思います。実際に、都政を任されてからの小池知事の活動を見る限り、そこに確固たるポリシーがあるようには思えません。寧ろ、“都民ファースト”という言葉を背景にして、融通無碍な、謂わばやりたい放題の状態になっている。内実が伴わないまま、イメージ先行で物事を進めていくことで、都政に悪影響を及ぼしつつあります。その結果、泥沼状態に陥っているのが、築地市場の豊洲移転問題です」

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テーマ : 小池百合子
ジャンル : 政治・経済

【中外時評】 トランプ現象、始まりは9.11

フェンスで囲われた一帯には瓦礫がうず高く積もり、あちこちから未だ白い煙が立ち上っていた。2001年11月下旬、9.11同時多発テロから約2ヵ月後に訪れたニューヨークのグラウンドゼロには、未曽有のテロの爪痕が生々しく残っていた。それから16年。先月下旬に再訪した同地は、姿を大きく変えていた。『世界貿易センター』の跡地には、全米一高いビルや大型ショッピングモールが聳え、新たな観光名所として活気に溢れていた。約3000人の犠牲者の名を刻んだ追悼記念碑の隣に『9.11博物館』がある。平和に満ちた屋外から中に入ると、景色は一変する。崩落した世界貿易センターの鋼鉄の残骸や、焼け焦げた消防車等、当時の惨状を示す展示が並ぶ。印象深かったのは、政治指導者らの肉声で綴った短編映画だ。当時、国家安全保障担当の大統領補佐官だったコンドリーザ・ライス元国務長官の証言があった。「テロを受けて北大西洋条約機構(NATO)は、一加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃と見做す第5条を、史上初めて適用した。旧ソビエト連邦のヨーロッパ攻撃を念頭に置いていた条文が、(テロリストの)アメリカへの攻撃に適用されたのだ」。テロ直後にライス氏とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が交わした会話も興味深い。「当時、米露は軍隊を相互監視し、アメリカ軍が警戒態勢を取るとロシア軍も追随するのが常だが、プーチン大統領は『アメリカ軍が警戒態勢なのは承知しているが、ロシア軍は警戒態勢を解除した』と伝えてきた」。ライス氏はこの時、東西冷戦が終わったことを実感したという。今年5月、ドナルド・トランプ大統領は、NATO首脳会議で第5条支持を明言せず、ヨーロッパの首脳たちを仰天させた。後に支持を表明したが、トランプ大統領は恐らく9.11当時の経緯を知らなかったのだろう。米露関係も今は当時と比ぶべくもない。

同時テロ直後の世界は、アメリカに温かかった。多くの外国人が働く国際都市・ニューヨークへの攻撃は、グローバル経済への挑戦と受け止められた。ジョージ・W・ブッシュ大統領(※当時)の“テロとの戦い”は、“反グローバル化との戦い”とも共鳴した。振り返れば、この時が“グローバル資本主義の盟主”としてのアメリカの終わりの始まりだったのかもしれない。9.11博物館の映画は、テロ後のアフガニスタンのタリバン政権打倒までで終わり、その後のアメリカの迷走ぶりには一切触れていない。アメリカは当初のテロへの報復を越え、海外にアメリカ流民主主義を広げる戦いに戦線を拡大。大量破壊兵器の開発疑惑を根拠に、2003年のイラク戦争に突き進み、国際信用を失った。国内でも厭戦気分から孤立主義の傾向が強まった。そこに2008年のアメリカ発の金融危機が追い打ちをかけ、グローバル化・自由貿易への不満が燻り始めた。ブッシュ大統領の後任のバラク・オバマ前大統領は、国際協調とグローバル化でアメリカの再生を目指したが、昨年の大統領選でトランプ氏当選の原動力となったのは、孤立主義・反自由貿易の思潮だった。その原点には、9.11でアメリカが負った深い傷がある。アメリカと共にイラク戦争を戦い疲弊したイギリスで昨年、国民が『ヨーロッパ連合(EU)』離脱に賛成票を投じたのも偶然ではないだろう。イラク駐留アメリカ軍司令官を務めたデヴィッド・ペトレアス元長官に、“9.11”の意味を聞いてみた。「9.11は人類の歴史を変えた出来事だ」と答えたが、その後は「今はそれを振り返るより、現実に直面する問題に取り組む時だ」と多くを語ってはくれなかった。9.11の3ヵ月後の2001年12月11日に『世界貿易機関(WTO)』に加盟した中国は、それを足がかりに高速成長を遂げ、今では『一帯一路』等国際構想を語る。一方のトランプ大統領は、今月初めの『20ヵ国・地域(G20)』首脳会議で、アメリカが主導してきた国際秩序の破壊者のように振る舞った。9.11以降にアメリカ国民が抱いた不安から生じた孤立主義や反グローバル化の感情。たとえトランプ大統領がいなくなっても、簡単には拭い去れないだろう。その根っこの問題に対処しない限り、アメリカの真の復権は難しいかもしれない。 (上級論説委員 藤井彰夫)


⦿日本経済新聞 2017年7月27日付掲載⦿

テーマ : 国際政治
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【不養生のススメ】(04) 小さくなっていく日本人

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最近、気がかりなことがある。それは、日本人が小さくなっていくことだ。昨年7月の科学雑誌『eLife』に、『インペリアルカレッジロンドン』等の約800人もの研究者らが、『世界保健機関(WHO)』と共同で“過去100年間における世界200ヵ国の人々の身長の変化”について報告した。研究者らは、1896年から1996年の間に生まれた対象者が18歳以上になった時、つまり1914年から2014年の身長データを解析した。結果、日本人男性の平均身長は、1896年生まれの156.2㎝(※世界ランキング187位)が、1996年生まれは170.8㎝(※同102位)。女性の平均身長は、1896年生まれの142.3㎝(※同195位)が、1996年生まれは158.3㎝(※同112位)になった。これまでの研究で、身長が高い人は一般的に心臓病や脳卒中を患う可能性が低く、長生きする傾向が報告されている。戦後の経済成長と共に、日本人の栄養状態が著しく改善し、平均身長や寿命が延びた。ところが、日本人の平均身長は、1960年代初期に生まれた世代で頭打ちになった。栄養状態が改善されて、遺伝的な潜在能力の上限に達した可能性がある。但し、気がかりなのは、男性は1979年、女性は1977年に生まれた世代をピークに、毎年平均身長が少しずつ小さくなっていることだ(※左グラフ)。肥満に比べて、身長の低下はそれほど注目を浴びないが、この傾向は深刻に受け止めるべきだと思う。厚生労働省は、子供の栄養素の偏り、朝食の欠食やダイエット等の問題に注意を呼びかけているが、大人の歪んだ“痩せ願望”や、それに伴うバランスの悪い“○○制限食信仰”を改善しない限り、子供の健全育成の実現は無理だ。

抑々、痩せる為に頑張らなくても、私たちの体の殆どの部分は、加齢と共に驚くほど自然に萎縮していく。無理なダイエットをすれば、当然、体の病的な萎縮を促し、老化が進む。例えば身長。誰もが加齢に伴い、身長は低下する。1999年の『アメリカ国立老化研究所』の研究者らの報告によると、男女とも30歳頃から身長の低下が始まり、その速度は加齢に伴って高まり、特に70歳以降に加速した。具体的には、男性だと30~70歳までの間に平均3㎝、80歳までには平均5㎝、身長が縮んだ。女性は30~70歳までの間に平均5㎝、80歳までには平均8㎝と、より大きく減少した。特に急速に身長が低下する人は、骨粗鬆症のリスクが高まり、骨折、高齢者の寝たきりの原因になる。『公益財団法人 骨粗鬆症財団』によると、日本の総人口の10%弱、即ち約1100万人が骨粗鬆症で、予備軍まで含めると2000万人に達すると言われている。因みに、『ロチェスター大学医療センター』の報告では、顔の骨も加齢に伴い縮小し、周りの筋肉や皮膚が皺となり、老け顔になる。更に、南カリフォルニア大学と北京大学等の研究者らの大規模追跡調査では、身長の低下と認知機能の低下に強い関係が認められた。より多く身長が縮んだ人ほど、短期記憶・基本的な計算・日付の認識等の標準的な認知機能のテスト成績が大きく低下した。次に筋肉。サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉が減少していくこと。「筋肉組織の量と質の低下は40代より前に始まる」とも言われ、そして徐々に減少していく。以前の研究報告では、40歳以降、一般的には10年代毎に、8%以上の筋肉量を失い、更に70歳以降に加速するということだった。筋肉が減ると、体を動かしたり支えたりする機能が衰えて自立性を失う。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者は、サルコペニアが肥満に関係なく、筋肉量が少ないことが、糖尿病の発症の早期予測因子であることを示した。更に、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らによると、老化に伴い心臓の筋肉も縮小し、血液を送り出すポンプとしての機能が低下するという。そして脳。脳の重さは出生時に約400gで、青年期までに約1.2~1.4㎏まで大きくなるが、20歳を超えると発育が止まり、少しずつ小さくなる。特に脳の重さは、40歳以降、10年毎に約5%の割合で減少し、70歳を超えると加速する可能性が広く知られている。特にアルツハイマー型認知症では、脳が早く萎縮していく。他にも、生殖器や膀胱の容量等も、加齢と共に萎縮していく。つまり、生活の質の高い自立した人生を送る為には、痩せるより痩せないように努力することのほうがよっぽど重要だ。

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寺の子が悩める青春を経て初の“テクノ法要”を実現した志――『YMO』に衝撃を受けた住職の夢は「西本願寺でテクノ法要を」

どのお寺も、法要こそ存在の根幹。方法も宗義と共に定められているが、在家には難解との声も聞く。ところが一転、老若驚くほど大好評な法要を実現した住職がいる。福井市の浄土真宗本願寺派照恩寺の朝倉行宣住職(49)だ。その志とは?

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5月3日、福井市は朝から夏日だった。市中心部から約8㎞の東郷地域は、清流が流れ、麦の穂が風に戦ぐ。JR越前東郷駅から徒歩5分、浄土真宗本願寺派照恩寺には、朝10時を前に市内外から続々と老若男女が集まり始めていた。照恩寺の音楽法要『極楽音楽花まつり』が目当てだ。それも、門徒でもない人たちが、朝早くから近くはない田舎のお寺まで足を運んだのは、“テクノ法要”があるからだった。慣れない様子で、お年寄りに交じって本堂の外陣に坐る若者も決して少なくない。外国の青年の姿もある。定刻の10時過ぎ。暗闇にした堂内に、鐘の音が鳴り響く。法要開始の合図だ。電子音楽が流れ、本尊の阿弥陀如来がピンク色に輝いた。アップテンポな旋律と共に、柱や欄間が赤・青・緑と色とりどりの光の映像で彩られる。仏前にサークル状に立てられた光のスティックも点滅し、ダンスホールのようだ。ふと音が止み、一瞬の静けさのあ後、本尊がまばゆく黄金色のライトで輝いた。うねるようなリズムに合わせ、朝倉住職を始めとする式衆の『正信偈』が響き渡る。「きみょうむりょうじゅにょらい なむふかしぎこう」と、正面の4本の柱に張り出された和紙がくっきりと照らされ、「帰命無量寿如来」「南無不可思議光」「法蔵菩薩因位時」「在世自在王仏所」…と、正信偈の経文が映し出された。経文はコーラスのついた読経と音楽に合わせ、次々と流れるように映し出され、プロジェクションマッピングによる光の文様は渦のように形を変えていく。天井にはミラーボールのように光が跳ね、本尊からは光明が発光するかのようだ。誰一人、余所見をする人がいない。老いも若きも、忘我の様子で目を見張っている。こうして、あっという間に、潮が引くように静かなフィナーレが流れると、思わず合掌する姿も。時間にして約30分。

この日、午前と午後の2回に亘って行われた光と音楽のテクノ法要は、インターネットの動画配信サイト『ニコニコ生放送』でも生中継され、その時間を楽しみに、1万9000人を超えるインターネットユーザーが参加したという。「かっこいい」「鳥肌が立ちそう」「南無阿弥陀仏」等と、興奮したコメントが溢れた。「極楽浄土の世界を伝えたい」。そんな思いから、朝倉住職がこの光の劇場のようなテクノ法要に踏み切ったのは、昨年5月の花まつりが初めてだ。昨年秋の報恩講が2回目で、今回が3回目。詳しくは後述するが、楽曲も照明も全て朝倉住職がプログラムしている。その技術は、20代の時にクラブでDJや照明のアルバイト経験で培ったものというが、並の思いでは務まらないのは容易に想像できよう。それにしても、伝統的な法要を現代的に、しかも光とテクノ音楽でアレンジするのは、かなりのプレッシャーだった筈。誰も手掛けたことがないのだから。それに、完全を期そうとすればするほど機材も必要だし、お金もかかるもの。照恩寺の門徒は約100軒。師父の朝倉成宣前住職(78)も朝倉住職も、兼職しながらお寺と寺族を支えてきたから、余裕は無い。だが、この3度の開催だけでも、テクノ法要は確実に発展を遂げてきた。朝倉住職が語る。「前回・前々回は、お内陣の中だけを照明していました。でも、今回は表の欄間や柱にもプロジェクターで光をあて、光のエリアを増やしたのです。表まで光をあてることができたので、お浄土の光を浴びているような感覚を演出することができました」。これを実現させたのは、朝倉住職の熱い布教への思いは勿論だが、人々の強い期待があったのは間違いない。実は、今回の斬新な法要の機材は、インターネットを使った勧募“クラウドファンディング”を通じた資金援助で揃えたのだ。5月3日の法要に向けて機材を揃える為に、目標額を30万円と掲げて、「テクノ法要の実現に力を貸してほしい」と呼びかけた。リターンの品は額に応じて、テクノ法要の音源CDや手作りの念珠を準備。すると何と、約2週間で42人が支援に応じ、支援のコメントと共に39万8000円が集まったのだ。1人あたり平均1万円近くの支援を、菩提寺でもないお寺の法要の為に行ったことになる。この資金を基に、朝倉住職はプロジェクター・マッピングソフト・照明器具を買い揃えることができた。そんな前段もあったから、多くの人が楽しみにしていたという訳だ。実際、反響は上々。前回のテクノ法要にも参加したという門徒の40代の女性は、満面の笑みで「前回と全く違う。迫力があるし、凄くよかったです。何より、こんなにお寺に若い人が来るのがありがたい」と話す。門徒のお婆さんでさえ、「極楽の家があそこにあると思ったよ」と確信を込めてにっこり。門徒ではないが、同僚に教えてもらい、市街から車で来たという25歳の女性は嬉しそうに、「普通の法要だったら、先ず来なかったと思う。でも、私もテクノ音楽が大好きで、『お寺でテクノ法要をする』というから興味が湧いて来たんです。来てわかったことは、お年寄りから若い人まで、皆が同じ空間でお寺の法要を楽しめる。これって凄いことだと思いました。仏教ってほんと、自由なんですね」。そうなのだ。“テクノ”と冠してはいるが、行うのは法要なのだ。お寺の法要を実現させる為に、見知らぬ人が支援した。門徒でもない人たちが駆け付けた。更に、インターネット中継で2万人近くが参加した。物珍しさもあるとはいえ、そこには惹き付ける何かがあったに違いない。

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【風俗嬢のリアル】(07) シズカの場合――手土産の無い名古屋の客たち

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長野のデリへルを終えたシズカは、愛知へ移動し、JR名古屋駅から数駅先にある、とある箱へルで働いていた。店は、風俗のテナントばかりが入った、地元では有名な風俗ビルの一室で、デリへルばかりを渡り歩いてきたシズカにとって、初めての店舗型へルスだった。周辺は飲食店やオフィスビルの並ぶごく健全な通りで、看板1つ出ていないそのビルは、何も知らなければまさか風俗ビルとはわからない外観だ。しかし、「名古屋在住の殿方なら知らぬ者はいない」と言われるほど、風俗のメッカとして有名なビルだという。「そこに出入りする女の子は皆、風俗嬢だってわかるから、マスクして出動する子が多いんですよ」。余所者であるシズカは、そんな女の子たちをよそに、堂々と顔を晒して出動していた。名古屋の店での在籍期間は、約1ヵ月。客の支払う金額は50分約1万5000円程で、女の子の手取りはその約半分だ。店内は20部屋程に分けられ、女の子たちは其々の個室で、専用のコスチュームを着て待機している。店の営業は深夜までだが、シズカは専ら昼をメインに出勤していた。「今日は5時間働いて、お客さんは4人。結構みっちりでしたね」。名古屋に来て、今日で3週間目である。店は忙しく、ひっきりなしに客が付いているようだった。「多分、期間限定って書いてあるから。それと、プロフィールの前職欄に『東京タワーで働いていました』って書いてあるんですよ。その2点に惹かれてやって来るお客さんが多いです。第一声が『東京タワーで働いていたって本当?』って言う人ばっかり。今日も4人の内、2人のお客さんと東京タワーの話で盛り上がりましたもん。1人は70歳くらいのお爺ちゃんで、昔の写真を封筒に入れて、『オープンから1年目の東京タワーだよ』って見せてくれましたね」。

実際にシズカが東京タワーで働いていたのは、学生時代のアルバイトで半年程の期間だ。それでも、プロフィールで“東京の女”をアピールできるのか、多くの男性が反応しているのは面白い現象であった。「名古屋に来て驚いたのは、皆、必ず時間内にイってくれることですね。シャワーに入る時間を抜いて、10分前にタイマーをセットすると、3分前くらいに皆、綺麗にイってくれて、残りの1~2分は脱力して、いい感じの時にタイマーが鳴る。ほぼ皆。それが出来なかった人は2~3人しかいない。『名古屋って凄い』と思いましたもん」。因みに他県では、時間内に射精できない客がザラにいるという。果たして名古屋人の特徴なのか、箱へルのしきたりなのか、シズカにもわからないようだ。「でも、手土産は全く無い。ジュース1つ無い。ここまで一切無いのは、全国回って初めてですよ。大体コンビニで買ってきてくれたりするけど、自分のお茶は買ってきても私には無い。指名のお客さんも、いつもいるほうなのに、名古屋では2人しかいないし、1回こっきりのお客さんが殆どですね。性欲を発散したいだけで、女の子側に気に入られようとは思っていないんだと思う。そういうドライさはかなり感じますね」。それでも、デリへルと違って移動時間のない箱へルは、シズカにとって居心地のいい職場だったようだ。店には寮が無く、シズカは近場で一番安いゲストハウスを自分で探して宿泊していた。今回、名古屋に1ヵ月いるのは、「ゲストハウスの長期割引で、長くいたほうが安く利用できるから」というシンプルな理由だった。「観光も見たいところが多いし、丁度いいかなって」。しかし、安いだけあって、長野より遥かに粗末なゲストハウスなのであった。ドミトリーには2段べッドがギュウギュウに押し込められ、10人寝れば人の熱気でムンムンする。ペラペラの布団はサイズが一回り小さく、足がはみ出そうだ。木の床は、スリッパで歩く度にギィィヤァァと呻き声のように響き、シャワーはチョロチョロとしか出ない。たった1日でも泊まるのを躊躇するレベルのタコ部屋である。しかし、驚くべきことに、このゲストハウスでシズカは珍しく人間関係を楽しんでいた。「ゴールデンウィークが明けたら、残っているのは長期滞在者と常連さんばっかりで、サークルみたいなノリで、皆、仲良いんです。私も学生時代のキャラになって、毎日ウィーイって盛り上がっていますよ。この前も皆でゼリーパーティーやったし」。コミュニケーションが嫌いと言っていたシズカからは信じられないような台詞だ。宿泊客の3分の2は外国人で、東南アジア・中東・ヨーロッパ、アメリカ等多国籍だという。オーナーは日本人で、日本人スタッフも数人いたが、皆40歳前後で、人生に挫折して生き方を模索しているモラトリアムばかりであった。しかも、全員が世界一周を経験してきた元旅人で、一癖ある変わり者ばかり。シズカにはそんな環境が性に合っていたらしく、毎日ハイテンションで暮らしているようだった。

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<画像5枚> 「第2のジャニーズを作る」が口癖…自称“社交界のプリンス”が利用した著名人との親密写真

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旧皇族末裔の竹田恒泰氏と熊谷容疑者(右)。「竹田氏の“皇族”の肩書を利用したがっていた」(関係者)。

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片岡鶴太郎氏等、大物芸能人をパーティーで見かけると、写真を撮る為に直ぐに近付いていったという。

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【霞が関2017夏】(08) 内閣府、育たぬ官庁エコノミスト

『加計学園』問題等で何かと話題の内閣府。国家戦略特区や規制改革が注目されるが、その源流の1つは、長期的な日本経済の分析を担っていた旧経済企画庁だ。国内総生産(GDP)等の統計データを集計し、分析結果を政府の経済政策の決定に生かしてきた。だが近頃、その屋台骨に異変が起きている。内閣府で経済分析を担当する職員は、“官庁エコノミスト”と呼ばれる。外務大臣を務めた大来佐武郎氏や、政府税制調査会会長を務めた香西泰氏等、多くの人材を輩出してきた。しかし、最近の内閣府の官庁エコノミストは、「日銀と比べると人材不足が目立つ」(民間エコノミスト)という。内閣府が人材不足に陥っている原因の1つとして、関係者が指摘するのが、海外の大学院へ留学する職員が少ないことだ。財務省は毎年20人前後の総合職が入省し、「殆どが海外の大学院に留学する」(財務省)。経済産業省も、年40人前後の入省者(総合職)の内、半数以上が海外の大学院で修士号を取得する。経済分析で内閣府と比較されることの多い『日本銀行』は留学者数を公開していないが、40人前後の入行者(総合職)のう内、「半数以上が海外の大学院で修士号を取得する他、博士号を取る人もいる」(日銀関係者)という。一方で、内閣府には毎年十数人が総合職で採用されるが、海外の大学院に留学したのは、直近10年の平均で4.4人に留まる。内閣府の景気動向指数研究会の座長を務める立正大学の吉川洋教授は、2012年に行われた内閣府幹部との『内閣府“官庁エコノミスト”への期待』と題された対談で、「官庁エコノミストは、内閣府に入ってからも大学院レベルの経済学を勉強してほしい」と話していた。だが、足元の2015年度で留学したのは2人、2016年度も僅か3人だ。その全員が、経済学等経済分析に関わる分野を専攻する訳ではない。勿論、新卒採用時にも修士号保持者を採用しているが、学部卒も含めて「官庁エコノミスト採用なんて年に1人か2人」(旧経済企画庁出身の内閣府幹部)。財務・経産省や日銀と比べると、大学院で学んだ経験のある職員が不足している可能性がある。

「次は経済分析とは関係ない部署かもしれない」――。経済分析を担当する部署の中堅職員は漏らす。内閣府は2001年の省庁再編で、旧経済企画庁・旧総理府・旧沖縄開発庁等が統合してできた。内閣府になったことで扱う分野は広がり、子育て・防災・青少年の非行防止等、様々なテーマを取り扱う。携わることができる仕事の幅が広がった半面、官庁エコノミストを志望する内閣府の職員にとっては、キャリアパスが描き難くなっている。経済企画庁OBで、『日本経済研究センター』研究顧問の小峰隆夫氏は、「経済企画庁から、経済以外の分野が多い内閣府になったことで、大学で学んだ経済学を生かしたい人は、財務省や経済産業省を志望するようになった」と見る。ある経済官庁の若手職員は、「内閣府に入ることも少し考えた」とした上で、「制度を変えて国を良くしたいなら、現場のある他省に行く。経済分析をしたいなら、政治の横槍の無い大学や、待遇が良くて知名度もある日銀のほうが魅力的」と話す。別の若手職員も、「内閣府は全体の方針を作れるのが魅力だが、権限が小さい。各論になると結局は他の省庁」と話す。霞が関では、今月5日から“官庁訪問”が始まった。総合職試験の合格者が各省庁を訪れ、面接を受ける。19日まで10日間(※土日祝を除く)の長丁場だ。最高気温が30℃を超える暑い最中、将来の官僚たちが熱い志を抱き、門を叩く。今年度の総合職試験の申込者数は、前年度比6%減の2万591人で、2万人を割り込んだ1970年度以来、47年ぶりの低水準だった。新規採用者の3割以上を女性にする目標が課されていることもあり、省庁間で優秀な人材の争奪戦は激しさを増している。自分の分析が政府の経済政策や予算編成に生かされるのが、日銀や民間エコノミストには無い官庁エコノミストの魅力だろう。内閣府自身が官庁エコノミストに必要な能力を考え、キャリアパスを整えることが、職員の能力向上や、他省庁・日銀・民間シンクタンクとの人材獲得競争に勝つ為に欠かせない。研修の充実や人事制度の改革が、官庁エコノミストの復権へのカギになりそうだ。 (吉田悟巳)


⦿日本経済新聞電子版 2017年7月11日付掲載⦿

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【大機小機】 中国は民主化しないのか

近く日本で公開予定の香港映画『十年』の試写を見た。5人の若手監督の短編からなるオムニバスで、地元の映画賞で最優秀作品に選ばれた。10年後を見据えた香港の近未来を描く。タクシー営業に中国の共通語“普通話”使用が義務付けられ、地場の広東語しか話せない運転手が頭を抱える。文化大革命期の紅衛兵に似た制服の少年団が言葉狩りに駆け回る一編では、漫画の『ドラえもん』まで禁書になっていた。“一国二制度”で高度の自治を保証された筈の香港が…。映像から、制作者の危機感がひしひしと伝わる。『十年』は、中国本土で上映を禁じられている。イギリスからの返還20周年となった今月1日、香港の記念式典で演説した中国の習近平主席は、「中央の権力への挑戦は決して許されない」と独立派や民主派を牽制した。中国共産党政権の民主化嫌いは今に始まったことではないが、習政権になってから反動ぶりが目立つ。人権派弁護士の拘束等は一例に過ぎない。先月施行された『インターネット安全法』は、“安全”の名の下、インターネット運営者への規制を強め、中国で集めたデータの海外移転を阻む等、情報の国家管理を一段と強化する内容だった。『Facebook』は先月末、「利用者が20億人を超えた」と発表した。世界人口の4人に1人強だ。Facebookの接続状況を光で見せる世界地図では、人口密度の高い地域が白く光り、極北の地やサハラ砂漠等が黒く見える。例外が黒い中国で、国内でFacebookを使わせないよう規制している。新聞の見出しで見ない日が無いほどのAI(人工知能)ブームだ。だが、薔薇色の未来ばかりではないAIの“両刃の剣”性は、夙に指摘されている。人間の自由な活動を支援する頼もしい助っ人にもなれば、息苦しい監視社会の看守役にもなり得る。「全人類の知能を超えるAIが出現するシンギュラリティー(技術的特異点)は2045年頃」と専門家が予測している。偶然だが、返還後50年の一国二制度の終点とほぼ重なる。“その時”を、言論の自由や法の支配が保証された社会で迎えるのか、そうではない体制下で迎えるかでは大違いだ。中国が民主化するのか、しないのか――。21世紀前半の世界の大問題だ。 (手毬)


⦿日本経済新聞 2017年7月12日付掲載⦿

テーマ : 中国問題
ジャンル : 政治・経済

消えゆくアベノミクス、試される日本のM&A――日本の買収攻勢は続くとみられるが、お粗末な買収の厳罰化が起こる

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“アベノミクス”という言葉が、古着のしまい込まれた棚にある“クールブリタニア(格好いいイギリス)”や、“歴史の終わり”“BRICS”の仲間入りをするのに、然程時間はかからないだろう。こうした言葉たちが齎した概念は、嘗て胸躍るような時代精神の粋があったが、今では表で着られないほどすり切れてしまった洋服のようだ。“アベノミクス”――安倍晋三首相が推進する、今や息切れしている経済再生プログラムの総称は、当然の結果として、その運命を辿るのかもしれない。だが、少なくとも、日本企業の思考に決定的な変化と、外に目を向ける新世代のディールメーカーの創出を促した後で去ることになる。アベノミクスは、誕生から5年近く経つ。海外企業買収に3500億ドル以上注ぎ込んだ日本の記録的な買収攻勢も、同じくらい続く。「日本の対外M&Aが“意味を持つ”のは、これが初めてだ」と、『JPモルガン』のバンカーらは言う。調査会社『マージャーマーケット』によると、2017年上半期に145件を数えた日本の対外M&Aは、2015年に打ち立てられた過去最高記録にほんの数件届かないだけだ。M&A専門のバンカーは既に、「年内に保険・医薬品・化学業界で大型案件がある」と仄めかしている。海外企業買収は昨年、日本の全てのM&A活動の価値の7割を占めた。金額ベースで見ると、日本が2016年に纏めた対外M&A(※調査会社『ディールロジック』によると、約1000億ドル)は、1980年代全体、つまり日本が“世界を買う”ことで悪名を馳せた10年間の実績の3倍近くに上る。インフレはブームの一部しか説明できない。本当に変わったのは野心の大きさだ。「アベノミクスが歴史の彼方に消えたら、この祭りがあとどれくらい続くか定量化せよ」という圧力に曝され、アナリストらは最近、先を争うようにこの現象を分析している。そして、似たような結論に達した。「日本企業の経営幹部は、人口が減少し、国内の成長が鈍り、世界中で競争力と市場シェアが低下する」とみている訳だ。

多くの人は今、「買収こそが救いだ」と確信している。あらゆる兆候を見る限り、資金コストは低水準に留まる公算が大きい。世界の標的企業には事欠かず、エネルギー等の分野では、政府が積極的に対外M&Aを推進している。企業が買収の軍資金として現金を貯め込んでいる為、自社株買いは今年急減した。斯くして、猛烈な買収攻勢が続くとみられる。だが、「取締役会の思考の変化がずっと続くか?」とか、「新たなM&A取引の習慣が、対象企業の適合性や買い手の能力にどの程度勝るのか?」といった面が、アベノミクスの退潮によって大きく試されることになる。日米双方の研究によれば、国境を跨ぐM&Aは長期的に失敗しがちなことが知られており、日本企業の冒険心の無いサラリーマン本能は特に大きな脆弱性を齎す。ある試算によれば、日本企業は今年3月期に、思惑通りに運ばなかった買収案件で、合計180億ドル以上の評価損計上を発表した。ブームの間、疑わしいM&Aに対する罰は一貫して軽かった。長期化する日本の対外M&Aラッシュと、この買収攻勢を先導する企業の株価は、安倍氏の首相就任以降、東証株価指数(TOPIX)の価値を2倍に膨らませた強気相場によって、真剣な監視の目から守られてきた。だが、一部の市場ストラテジストに言わせると、“安倍プレミアム”は急激に消え去る可能性がある。表面上進んでいる改革は、世論調査での首相の高い支持率と共に、アベノミクスの物語にとって常に欠かせないものだった。今やどちらも霧消した。「投資家が若し、『市場の活気は持続不能な操作の産物だ』と判断したら、より大きな災いが現実になる」と言う人もいる。2013年初頭以降、『日本銀行』は12.6兆円相当の上場投資信託(ETF)を買い入れることで、国内株式市場を支えてきた。同じ期間の外国人投資家による購入は13.8兆円だったが、日銀は9月末までに外国人の買いを抜く見込みで、アベノミクスの空想に致命的な打撃を与える可能性がある。『東京証券取引所』を傘下に持つ『日本取引所グループ』の清田瞭グループCEOは今月、「日銀が買い入れを継続したら“恒常的な歪み”が生じる」と警告した。猛烈な調整が生じた場合には、過去5年間の経験により、日本がM&Aに精力的だったのと同じくらい、M&Aに巧みになったかどうかに鋭い目が向けられるだろう。お粗末な買収への罰は厳しくなる。「1985年から2001年にかけて行われた日本企業のM&Aの内、成功したのは8%だけだ」と結論付けた同志社大学・松本茂准教授の著作は、役員室で必ず見かける本になった。『日本電産』のCEOで、著名なディールメーカーの永守重信氏は、大まかに「日本企業の買収の2%しか成功しない」とみる。その推測は重く立ちはだかる。日本の買い手企業にとって、高値掴み・シナジー(相乗効果)の欠如・ガバナンス(統治)の失敗が、最も一般的な落とし穴だ。アベノミクスに触発された3500億ドルの買収攻勢は、多くの企業がこうした穴に落ちるリスクを高めている。 (Leo Lewis)


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年7月26日付掲載⦿

テーマ : 安倍政権
ジャンル : 政治・経済

偏っていた独メディアの難民危機報道――懸念を持つ人を顧みず、保守とリベラルの溝は深まる一方

20170728 03
ドイツのメディアは、2015年の難民危機の際、あまりにも批判能力を欠いていたことで、アンゲラ・メルケル首相が自由に門戸開放政策を実施できるようにし、難民流入に危機感を募らせた人々が、当然ながら抱く懸念の代弁はしなかったことが、調査で明らかになった。フランクフルトの『オットー・ブレンナー財団』が委託作成した報告書によると、報道が過度に偏っていた為、同国のリベラル派と国家主義者・保守派との間のイデオロギー対立の溝を深める結果となった。報告書は、「2015年の秋の終わり頃まで、懸念や恐れ、抵抗感を持つ人が増えているのに、それを論じた社説は殆ど無かった」とした上で、「あったとしても、説教を垂れるようであり、(反移民感情が最も強い)東部では軽蔑した論調だった」と記している。

ドイツの週刊紙『ツァイト』のシニアエディターだったミヒャエル・ハラー氏が主導したこの調査は、ドイツのメディアが移民危機をどう扱ったかを最も総合的に分析している。調査は、「新聞各紙が、急進右派と、難民の流入で政治的な不安を抱いたり『社会に取り残された』と感じた世間一般の人々とを、全く区別しようとしなかった」と指摘。「(移民政策に)批判的な報道をするどころか、ジャーナリストは単に“政治エリートの見解やスローガンを取り入れた”だけだった」という。メルケル首相は2015年夏の終わりに、シリア、イラク、アフガニスタンでの戦争から逃れてきた何十万人もの難民の為に、ドイツの国境を開放する決断を下したが、ドイツのメディアのほぼ全てがこの決断を称賛した。各紙は、新たに生まれた“歓迎文化”に関する記事で埋め尽くされた。これを象徴するのが、2015年9月にミュンヘン駅に集まった群衆が、ハンガリーから到着した難民を出迎えて、お菓子や玩具を手渡す姿だ。報告書は、「歓迎文化は普通の庶民を“(窮地にある人を助ける)良きサマリア人”に変え、新参者に親切にするよう促す時にメディアの一部の部門が使う“魔法の言葉”のようになった」としている。だが、2015年の大晦日にケルンで起きた、主に北アフリカ出身の男たちによる女性への集団性暴行事件は、報道の転機となった。報告書は、「難民に関する記事の論調は、“より控えめ”で“懐疑的”になった」と指摘している。 (Guy Chazan)


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年7月25日付掲載⦿

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