【アパレル進化系】(03) 高品質、日本製の底力

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品質重視の原点回帰は、アパレル再興のカギだ。国内の縫製工場の底力を生かした“メイドインジャパン”の新たな息吹がある。博多ラーメン店『一風堂』の新ユニホームに、2020年の東京オリンピック関係者が着るウェア――。衣服生産をインターネットで仲介するべンチャー企業『シタテル』(熊本市)が生み出した成功例だ。好みが細分化され、目が肥えた消費者に対応しなければならない時代。高品質で小ロット(少量)の生産が求められるようになった。コストが安い大量生産でないと、海外工場への発注は難しい。2014年3月に創業したシタテルのビジネスモデルは、こうしたニーズを上手く捉えた。全国に散らばる250の縫製工場と連携し、データベース化。閑散期等で余裕のある工場の活用や、工場の強みを踏まえ、服を作りたい依頼主と工場を橋渡しする。

アパレルメーカー等、発注側の登録数は今、4000に広がった。社長の河野秀和(42)は、インターネットを通じて不特定多数の人に業務を外注する“クラウドソーシング”に着想を得たという。工場側の期待も大きい。岐阜県各務原市の皮革縫製加工工場『ヴァード』は、シタテルを通じて受注したレザージャケットの開発を進める。「我々の技術を生かし、世界で勝負するデザイナーと出会う可能性があることも魅力だ」。社長の野田耕兵(68・左上画像左)は期待する。生地を作る製織や、縫い上げる縫製等の国内工場は、バブル崩壊以降、壊滅的な打撃を受けた。衣料品の自給率に当たる国内生産比率は、1991年の48.2%(※数量ベース)から、2016年には2.7%にまで激減。大手総合アパレルメーカーが人件費の安い中国等に生産を移した為で、事業所数も4分の1に落ち込んだ。日本製衣服の魅力を世界に広げたい――。神奈川県鎌倉市の『メーカーズシャツ鎌倉』は、2012年、マンハッタンの中心部に出店。品質の高さが評判を呼び、2015年にはニューヨーク2号店も開いた。主力は79ドル(約8700円)のシャツ。開店当時から通う輸入販売業のデュウェイン・マーティン(49)は、「生地や品質が良く、価格も良心的だ」と愛用する。鎌倉のシャツは全て、国内14ヵ所の協力工場で縫製される。「ベテラン職人がいる日本でしか作れない商品がある」。会長の貞末良雄(76)は未来を見据える。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月3日付掲載⦿

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【アパレル進化系】(02) 大手蝕む“商社依存”

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大手総合アパレルメーカー『三陽商会』の苦境が続いている。チェック柄を特徴に絶大な人気を誇ったバーバリーブランド。イギリスの『バーバリー』からライセンスを得て、45年もの間生産を続けた“ドル箱”商品だった。しかし、2015年に契約が切れると、経営は急激に悪化。リストラが止まらない。自社ブランド『サンヨーコート』やライセンス生産の『ポールスチュアート』等、多くのブランドを手がけるが、穴埋めには程遠い。起死回生とばかりに、今年5月、コートの新ライン『ブルーフラッグ』を決定した。新たな販路としてセレクトショップ等に営業をかけているが、契約は未だ数件程度に留まるという。先月28日の記者会見で、社長の岩田功(58)は「百貨店以外の販路がそう多くある訳ではない」と説明する。手探りは続く。企画・製造・問屋の機能を併せ持つ総合アパレルメーカーという業態は、日本特有のビジネスモデルとされる。

三陽商会・『オンワードホールディングス』・『ワールド』・『TSI』の大手4社が苦境に陥っている理由に、商品開発力の低下を挙げる関係者は少なくない。衣料品卸の専門商社『蝶理MODA』(東京都渋谷区)が先月上旬、都内で開いたアパレル業者向けの商談会には、2日間で約900人が詰めかけた。嘗ては洋服の生地を多く揃えたが、今はマネキンの周りに洋服のサンプル約300点が並ぶ。アパレルメーカーの担当者が服を手に取り、デザイン・色合い・素材の特徴等を細かく尋ねる。商社が提案したサンプルをベースに修正を施して注文を決め、商品を仕入れるケースが多いという。「嘗ては、素材を見ただけで服を発想できるのがアパレル会社だった。今は、要となるテザインまで商社に任せることが多くなった」。蝶理MODAの担当者は明かす。2000年代以降、海外で自社開発の服を大量生産する『ユニクロ』等の製造小売業(SPA)が台頭し、大手アパレルの商社依存は一段と深まった。高品質の服を安価に提供するユニクロ等に対抗する為、コスト削減に追われた為だ。商社は日本から中国やベトナムへと生産地を移し、企画から生産までパッケージで提供。“商社丸投げ”と称されるようになった。その結果、「アパレルは開発力を失って品質低下を招き、消費者にそっぽを向かれた」(大手商社)。大手アパレル4社は、この3年間で1500店以上が閉店に追い込まれた。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月2日付掲載⦿

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【アパレル進化系】(01) 服は安く、持ち続けず

百貨店を主な販路に衣料品販売を牽引してきた大手総合アパレルメーカーが、大きな岐路に差し掛かっている。多様化する消費者のニーズを掴みあぐね、販売の落ち込みが止まらない為だ。アパレル産業は、この難局を乗り切り、新たな進化を遂げられるのか?

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先月下旬の夜。東京都の菅本裕子(23)はスマートフォンを使い、自分の動画配信を始めた。着ていたブラウス等のトップスを、多数の“視聴者”に向かって売る為だ。「かわいい」「サイズはいくつ?」――次々と視聴者のメッセージが寄せられる。“出品”されたトップスは、僅か数秒で買い手がついた。「生のライブ配信なので、服の魅力を伝え易い。大事に着てもらえたら」。菅本は笑顔を見せた。個人同士で中古品の売り買いができるフリマアプリが人気の『メルカリ』(東京都港区)。先月6日に始めたメルカリチャンネルは、利用者が衣服等を売る時に動画でアピールできるようになった。買うだけでなく、売るのも楽しい。メルカリは2013年のサービス開始後、僅か4年で国内のダウンロード数が5000万件を突破した。月間の取引額は100億円を超え、急成長を続ける。最新のレンタルサービスも一味違う。2015年に定額レンタルを始めたエアークローゼットもインターネット中心。在庫は300ブランド・10万着以上。プロのスタイリストがインターネットを介して、自分に似合う服を選んでくれるのが人気だ。都内には1ヵ所、実店舗も。複数のコースがあるが、月9800円のコースなら、1着あたりの販売価格が1万~3万円ほどの服が借り放題だ。

雑貨店員の女性(39)は、「色々な種類の服が気軽に楽しめて便利」と満喫。会員数は12万人を超えた。レンタルでも中古でも、割安に沢山のファッションを楽しもうとする消費者。ある民間調査では、フリマアプリ利用者の5割超は、中古で売るのを前提に店頭やインターネットで洋服等を買う。メルカリの担当者は、「今の若い人は、ものをずっと持ち続けることに執着が無い。“賢く回していく”という意識がある」と話す。今時の消費者のニーズを掴む新興勢力。これに対し、『オンワードホールディングス』や『三陽商会』等の大手総合アパレルメーカーは厳しい。全国百貨店の2016年の衣料品売上高は、ピーク時の半分だ。大手アパレルも店舗閉鎖に追われる。中古やレンタルの新興勢力は、ファッションを楽しむ人が増えれば、アパレルメーカーや百貨店とも一緒に成長できると言う。だが、販売減でリストラに苦しむアパレル側に、その余裕は無さそうに見える。『そごう・西武』の幹部社員(53)は、1988~1994年頃、輸入ブランド等を集めた西武渋谷店で多忙を極めた売り場を知る。「当時は情報が百貨店側にあった。店に来ないとトレンドはわからなかった」。今はスマホやインターネットの普及で、誰もが手軽に情報を得られ、発信もできる時代だ。ファッション通販サイトの『ソゾタウン』は、流行を押さえた個性的な品揃えで若い世代の支持を集め、急成長する。トレンドの発信地だ。運営する『スタートトゥデイ』の株式時価総額は約9700億円(※昨日現在)。『三越伊勢丹ホールディングス』と『高島屋』を合わせた額を2000億円近く上回る。 ファッション誌『ViVi』(講談社)等に携わったカリスマ編集者の軍地彩弓(53)は言う。「ライブの動画配信による着こなし提案等のサービスで、アパレルEC(電子商取引)は、これまで以上に服を売り込む力が高まる」。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月1日付掲載⦿

テーマ : 経済・社会
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“バノン主義”は衰えず――消えぬ格差・中国台頭、“新たな内戦”の可能性

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アメリカのリベラル派は、あれだけ対立してきただけに、スティーブン・バノン氏が大統領首席戦略官・上級顧問を解任されたことで、今後、寂しい思いをするだろう。ドナルド・トランプ大統領はあまりに無知で、敵として満足に戦える相手ではない。そうした中で、バノン氏は“邪悪な天才”・“偏見に満ちたイデオロギー信奉者”・“策略の達人”・“バノン大統領”等と呼ばれ、重要な役割を担ってきただけに、リベラル派は彼の離脱で心にぽっかり穴が開いてしまった感じだろう。ただ、今回の辞任はどういう主張の人が勝利したのかはっきりとしない。バノン氏の解任は、白人ナショナリストの敗北を意味するのだろうか? だとすれば、トランプ大統領を恐れ、嫌悪してきた人々は戦う目的を失ったということなのか? この点について、リベラル派はそんな風に思う必要はない。バノン氏が象徴してきた脅威は、彼の離脱で消滅はしないからだ。少し大袈裟な言い方をすると、その脅威は3つの戦争の危機に集約できる。貿易戦争、内戦、そして世界戦争だ。バノン氏が政権を去ったからといって、これらの脅威が突然消えた訳ではない。というのも、バノン氏はその背景にある経済的・社会的・国際的な緊張関係を上手く利用こそしてきたが、それらを創り出した本人ではないからだ。“バノン主義”が今後も存続し、恐らく更に力を増すであろうことを理解するには、先の3つの戦争の脅威について、1つずつ考える必要がある。

バノン氏が解任されたのと時を同じくして、パトリック・ブキャナン氏等保守派の論客は、“新たな内戦”の可能性について公然と警鐘を鳴らすようになった。バノン氏は、ホワイトハウス内の白人ナショナリストを代表する存在と広く認識されていた為、彼がクビになったことで、「大統領が極右から距離を置くようになるのではないか?」との期待が高まっている。だが、その可能性は低い。この1年間、トランプ大統領は自分の言動がどの程度まで許されるのか、主な論客より的確に見極めることに成功してきた。バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義団体らと反対派が衝突した事件に対するトランプ大統領の発言は、確かに多くの人を憤慨させた。だが、彼は又しても国民感情を正しく読み取っていたようだ。『CBSテレビ』が最近実施した世論調査では、共和党支持の有権者の68%が、この騒動には「双方に責任がある」というトランプ大統領の見方に賛同を示した。これは、過激なナチス支持者らが街頭で主張していたよりも、白人の怒りがずっと幅広く、深いものであることを示している。トランプ大統領は、今後もそうした怒りを自分に都合のいいように上手く利用するだろう。そしてそのことは、アメリカ社会が今抱える亀裂を更に深刻にするだろう。内戦になる可能性は極めて低いが、政治的な二極化と、それに伴う暴動や国内テロの発生は避けられないだろう。バノン氏は“白人ナショナリスト”と見られることは恐らく拒絶するが、経済ナショナリストであることは否定しないだろう。彼が首席戦略官として受ける最後のインタビューとなったアメリカの左派系メディア『アメリカンプロスペクト』による取材で、「アメリカは既に中国と“経済戦争”を繰り広げている」と発言した。バノン氏の解任は、『国家経済会議(NEC)』委員長のゲーリー・コーン氏率いる“グローバリスト”の勝利を意味すると言われているが、様々な経済の長期的トレンドは、バノン氏が必要だと主張する経済ナショナリズムに勢いを与える根拠となっていくだろう。バノン氏が解任された今月19日、アメリカ政府は中国によるアメリカの知的財産権の侵害について、正式に調査を始めた。調査には時間がかかるが、これが原因で米中対立が深刻になる危険は十分ある。トランプ政権では今なお、バノン的な経済ナショナリストたちが貿易政策を主導しているからだ。通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は、中国の対米貿易黒字を“是正”する必要があるというトランプ大統領の見解に同調している。また、国家通商会議を率いるピーター・ナバロ氏は、『中国がもたらす死』(※未邦訳)の著者でもある。

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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

【誰の味方でもありません】(15) 極東有事とエリート官僚

防衛大臣が辞任した7月28日深夜に、北朝鮮から弾道ミサイルが発射された。毎日新聞電子版に“こんな時に”というタイトルが躍っていたので、「こんな大変な時期に大臣が辞めて困る」という記事かと思ったら違った。省内が混乱している“こんな時に”、北朝鮮にも困るという趣旨の発言が、防衛省職員からあったらしい。新聞記事なので実際のニュアンスはわからないが、お気楽とも思える発言だ。有事はいつ起こるかわからない。事実、政府はテレビCMまで活用して、北朝鮮のミサイル落下の危険性を訴えていた。避難訓練までする自治体もあったようだ。そのミサイル発射を、防衛省が“こんな時に”で済ませられるなんて…。この1年近く、マスコミでは防衛大臣だった稲田朋美議員の“資質”が問われ続けてきた。その騒動を見ている中で、僕は1つの疑問が拭えなかった。「組織としての防衛省は、有事に対応できる“資質”があるのだろうか?」と。マスコミには防衛大臣の批判材料がリークされ続けた。トップが気に入らない場合、あらゆる手を使って潰しにかかる組織なのだ。だが、本当に北朝鮮の危機が切実なものであったならば、大臣潰しをしている暇など無かった筈。北朝鮮だけではない。中国等隣国との有事に備えるという名目で、防衛費の増額が要求されてきた。

しかし、最近の騒動を見る限り、「防衛省は大臣潰しに夢中になれるくらい、有事に対する危機感が希薄だった」と思われても仕方ない。尤も、北朝鮮は厄介な隣国ではあるが、その行動には一定の合理性があると考えることは間違っていないと思う。最近、一番腑に落ちたのは、『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)の説明だ。同書によれば、北朝鮮が教訓としているのはリビアのカダフィ政権だ。リビアは米英との交渉で核兵器開発の放棄に応じた。アメリカは見返りとして経済制裁を解除し、国交正常化が実現した。しかし、2011年に『アラブの春』が起こる。この内戦で、欧米は反政府勢力を支援する軍事介入を行い、カダフィ政権は崩壊に追い込まれ、カダフィ自身も殺害された。核の放棄に応じても、欧米は平気で裏切ってくる――。その“教訓”が、北朝鮮を核兵器開発に向かわせているというのだ。だから、北朝鮮が核ミサイルの開発に成功しても、それで大戦争を始める可能性は低いと考えていいと思う。しかし、有事は偶然から勃発することがある。身内潰しとリークが横行する防衛省は、有事の際、本当に国民を守ってくれるのだろうか? 戦争中でも、トップが気に入らなかったらリーク合戦が起こるのではないか? ある政治家から、「戦争が起こったら財務省に任せたい」という冗談を聞いたことがある。確かに、彼らは増税の為なら一致団結できる組織。それを財務省の友人に言ったら、「ウチに任せると、先ず仲の悪い経済産業省と文部科学省を誤爆します」と返された。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。近著に『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』(文藝春秋)。


キャプチャ  2017年8月17日・24日号掲載

テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【ビジネスとしての自衛隊】(12) アメリカが同盟国に向ける視線…現実路線へ転換だが日本の役割拡大も重視

20170824 07
発足して約3ヵ月半が経過したアメリカのドナルド・トランプ政権。この新政権に対し、「日本の安全保障政策をどう見ているか?」と現時点で確定的な評価をするのは時期尚早だ。各省庁の次官や次官補代理等の幹部が指名、議会公聴会を経て就任して活動するまでは、幹部ポストは事務方が代行しており、彼らの考え方が新政権の考えを反映しているとは限らない。トランプ政権では、幹部の指名が過去の政権よりも大幅に遅れている為、尚更そうである。しかし、この3ヵ月半のトランプ政権の動きを見ると、同政権の安全保障政策がどのような方向性を持つかを見い出せる。その方向性と、トランプ政権にとって日本がどのような位置付けなのかを考えてみよう。「トランプ政権は現実路線に転換したのか?」――。『北大西洋条約機構(NATO)』事務総長がワシントンを訪問した際、トランプ大統領が「NATOは時代遅れではない」という発言をしたことは、ある意味象徴的だった。トランプ大統領は、昨年の大統領選拳期間中、「駐留アメリカ軍経費を100%負担しない国からはアメリカ軍を撤退させる」「NATOは時代遅れ」等、挑発的な発言を行っていた。今年1月の大統領就任式の際も、自分の政策判断の基本原則は“アメリカファースト”だと明言した。その為、政権発足直後は「トランプ政権下でアメリカの安全保障政策が大きく変容するのではないか?」という懸念が、日本等アメリカの同盟国の間で高まっていた。

更に、『国家安全保障会議(NSC)』にスティーブン・バノン首席戦略担当官を正規メンバーとして加える一方で、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長とダン・コーツ国家情報官が実質的に降格させられた。この為、安全保障問題や政軍関係の専門家の間では、「安全保障政策についてしっかりした知見を持たない一部のトランプ大統領側近が、アメリカの安全保障上のリスクを拡大させる」との強い懸念も高まった。しかし、これまでのところ、『環太平洋経済連携協定(TPP)』脱退や移民規制の強化等、内政や経済問題については選挙期間中の発言をほぼ踏襲しているが、安全保障問題では現実路線だ。NSCについても、辞任したマイケル・フリン国家安全保障担当大統領補佐官の後任として、現役の陸軍中将であるハーバート・レイモンド・マクマスター氏が就任。バノン首席戦略担当官が外れ、ダンフォード氏とコーツ氏が再び正規メンバーに復活する等、NSCの正常化も進んでいる。勿論、バラク・オバマ政権時代の安保政策との相違は、既に露呈している。シリアが自国民にサリンガスを使用した事実が判明するや、巡航ミサイルによる限定的爆撃を行ったことがその一例だ。北朝鮮問題でも、レックス・ティラーソン国務長官やマイク・ペンス副大統領共に日韓を訪問した際、「戦略的忍耐の時期は終わった」と発言し、“全ての選択肢”を視野に入れた政策レビューを行っている。同時に、米中首脳会談でも、貿易政策を交渉材料に、北朝鮮の脅威に対してより真剣な対応を中国に求めた。これは、オバマやジョージ・W・ブッシュ両政権時代には見られなかったことだ。ペンス副大統領が訪日中に“力による平和”に言及したことも、国防費増額を選挙公約の一部に掲げていたトランプ政権の方針としては想定の範囲内だろう。いずれにせよ、政権発足当初の懸念とは裏腹に、こと安全保障政策では基本的に現実的な路線を取る可能性が非常に高い。2月に訪日したジェームズ・マティス国防長官は、日本の駐留米軍経費負担(※思いやり予算)を「コストシェアリングの模範的ケース」と非常に前向きに評価した。だが同時に、「アメリカと日本が引き続き防衛力に投資し続ける重要性」も強調。更に、その後のヨーロッパ訪問では、NATO27ヵ国の国防大臣を前に、国防費増額を最後通牒であるかのように厳しい口調で要求している。これは、現実路線に舵を切ったトランプ政権のもうひとつの特徴である“同盟関係の重視”を背景にした言動だろう。NATOへの見解を180度転換したのは前述の通り。それ以前からも、ペンス副大統領・マティス国防長官・ティラーソン国務長官は、アジアやヨーロッパ訪問の際に、様々な場面で同盟関係の重要性を強調している。

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テーマ : 自衛隊/JSDF
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【ヘンな食べ物】(50) 謎のタイワインと虫の缶詰

ヒアリが話題なので、本欄もアリ食について書いてみたい。アリの成体を常食する場所は知らないが、アリの卵はタイやミャンマー等で食されている。私も何度か食べているが、印象に残っているのはタイ東北部だ。彼の地は、世界でも最も昆虫食のバリエーションが多く、“昆虫食のメッカ”とも呼べる地域なのだが、「新たに“虫の缶詰”が開発された」というニュースを聞きつけ、バンコクから列車とバスを乗り継ぎ、10時間以上かけてサコーンナコーンという田舎町へ取材に行ったのである。2000年代の初めのことだ。場所は『サコーンナコーン農業貿易研究所』。日本の農業試験場に近い存在だ。訪れると、研究員の人に温かく迎え入れられたが、「虫の缶詰を作ったきっかけは、ここで開発したワインに合うつまみを作ろうと思ったことです」と言われ、頭の中が“?”で一杯になった。熱帯多雨のタイでは葡萄は作れない。そして、少なくとも当時、タイではワインなどバンコクに住む富裕層しか飲んでいなかった。しかも、そのつまみに虫? 「私のタイ語が余程下手なのか?」と思ったが、研究員の人はちゃんとワインのボトルを持ってきた。その人の説明で段々謎が解けてきた。ここでは、土地の特産品を研究開発している。ワインも葡萄ではなく、土地の果実を使用したもの。“赤ワイン”用には、マオという深紅の実がなるヤマブドウに似た植物を使用している。とても丈夫、というか野生に近い植物なので、無農薬で育ち、ビタミンEも豊富である。「健康にとても良いんです」と研究員の人は強調する。

因みに、白ワインはタクローという別の果実を使用しているとのこと。早速味見させてもらうと、どちらも味といい香りといい、ワインそのもの。ただ、惜しむらくは酸味が強過ぎるし、コクも足りない。聞くと、製造して出荷まで3ヵ月という。熟成させてないのか。「1年ぐらい寝かせたら熟成して美味しくなるだろうに…」と少々歯痒い気分になり、実際にそう指摘したのだが、研究員の人は「最近は土地の名物として人気が高く、注文に生産が追いつかない状態なんです」と答える。「研究所がそんなに目先の商売に走らなくていいだろう」と思うのだが…。それにしても驚きなのは、研究所のスタッフの誰ひとりとして、外国でワインの作り方を学んでいないこと。それどころか、ワインを碌に飲んだこともないらしく(※高級品だから無理もない)、ヨーロッパで出版されている“ワインの作り方”みたいな本を読みながらワインを開発してしまったという。しかも、葡萄ではなく、全く別の果実を使って。それでも、ここまで完成度の高い商品を創り上げてしまうのだから、タイ人の食のセンスと鋭敏な味覚には恐れ入るしかない。続いて彼らは、その天性の美食センスで“虫の缶詰”に取り組んだ。現地で食される多種多様な昆虫の中から、栄養面と味覚の両方から“ワインに合う虫”を徹底的に探した。因みに、缶詰に拘ったのは、商品流通の意味だけでなく、「虫が捕れる時期が主に暑季の初めと雨季の初めに限られるので、オフシーズンにも食べられるように」という配慮である。厳選されたのは、モグラコオロギ・ゲンゴロウ・蚕の蛹・バッタ、そして赤アリの卵だった。虫の捕獲は、近所の農家に委託している。捕獲と言っても、夜中にライトを点けて、その下に水を張った大きな容器を用意しておくだけ。朝になると、容器の中に虫がわさわさ浮いているという何ともシンプルな仕組みだ。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。


キャプチャ  2017年8月17日・24日号掲載

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【寝言は寝て言え!】(15) 社会の木鐸であるならば

マスコミには“報道しない自由”があります。国民にとって有益で重要な情報を、敢えて報道しないことが多々あるのです。今はインターネット時代ですから、重要なことを隠したり、捏造すると直ぐにバレて炎上します。しかし、それでもそういうことを続けているから、マスコミ不信は加速するばかりです。7月に『加計学園』問題を取り上げた閉会中審査の一部マスコミ報道は、まさに国民を馬鹿にしたものでした。インターネットでは中継含め、映像が全編配信されています。対するマスコミ報道は、紙面や放送時間の都合で切り貼りしたものになるのは仕方ないことです。しかし、その切り方がえげつない! 文部科学省の前川喜平前事務次官の発言を多く取り上げる一方、今治における獣医学部新設の当事者である愛媛県の加戸守行前知事の発言は、無いかの如く扱われました。朝日新聞は7月11日の社説で前川氏の発言を取り上げ、「国会の場で、国民の代表の質問に答えた重い発言である」と持ち上げていますが、同じく“重い発言”である筈の加戸氏発言は無視しているのです。詳報でも触れる程度で、核心部分は報じていません。加戸氏は、獣医学部を作ろうにも『日本獣医師会』の猛烈な反対があったこと、東に定員が偏り、私学は水増しして入学させているので、西は養成される獣医師の数が少ないこと、それでいて、獣医師空白地帯の四国で、鳥インフルエンザや口蹄疫に対処せねばならなかったことを語りました。

長年の念願にも拘わらず、岩盤規制によって跳ね返され続けた獣医学部新設が、漸く国家戦略特区で進むことになったのです。加戸氏は、前川氏が言うように行政が歪められたのではなく、「歪められた行政が正された」と発言しました。インターネットで見ていた人は合点がいったでしょうが、マスコミ報道では殆どカットされていたので、知らない人も多いでしょう。マスコミ、特に朝日新聞は、安倍おろしの一環として加計学園問題を殊に熱心に取り上げています。しかし、首相が指示した形跡は今のところ無く、前川氏の思い込みや認識の違いによる水掛け論に終始しているのが実態です。7月24日の閉会中審査における自民党・小野寺五典氏の質疑も見物でした。前川氏は、総理から直接意向とやらを聞いた訳でなく、勝手に忖度して「加計学園だ」と確信し、それでいておかしなことに、部下や関係各所に相談等もせず、後になって「行政が歪められた」と騒いでいたというのが明らかになったのです。前川氏の返答の意味不明さに失笑した方も少なくなかったでしょう。しかし、新聞やテレビではこうした場面は無かったことにして報道し、加計学園がとんでもない大事件であるかのように見せています。「もういいよ」と思っている国民も多いでしよう。北朝鮮がミサイルを飛ばし続け、中国は大陸棚延張を目論んでか、尖閣周辺の日本のEEZで無許可海洋調査。韓国は慰安婦ビジネスと並行して徴用工ビジネスを盛り上げる兆候が見える。でも、日本の報道は加計加計加計…。重要なことを取り上げず、伝えるべき情報を伝えない。これではマスコミ不信は高まるばかりです。


KAZUYA YouTuber。1988年、北海道生まれ。2012年、『YouTube』に『KAZUYA Channel』を開設。著書に『日本一わかりやすい保守の本』(青林堂)・『バカの国 国民がバカだと国家もバカになる』(アイバス出版)等。近著に『日本人が知っておくべき“日本国憲法”の話』(ベストセラーズ)。


キャプチャ  2017年8月17日・24日号掲載

テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

アメリカの再三の防衛誓約は日本の疑いの反映――殆どは日本の直接要請によるもの、過度の防衛要求は日本の不安を露呈

20170824 06
ギリシャの哲学者であるプラトンは、「聞こえのいい話を繰り返すことに害は無い」と言った。そして今日、アメリカは日本の防衛に対する責任を改めて確認する。ドナルド・トランプ大統領就任以来、実に28回目となる。相次ぐ日本防衛に対する再確認は、一部は民間や世論、そしてアメリカ政府が主導したものだが、殆どは日本の直接的な要請によるもので、安倍晋三首相がトランプ大統領に面会した初めての国の首脳になってから始まった。27回目の再確認は昨日16日、日本への着任を前にしたウィリアム・フランシス・ハガティ駐日大使が行った。そして17日には、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)で新たに任命された日本の外務・防衛大臣が、同じ趣旨の新たな再確認を引き出す為に会談に臨む。これは恐らく、安堵を齎すだろう。だが、アメリカが再確認するほど、アメリカの防衛コミットメントに対する日本の信頼が揺らいでいることを確認する時が来る筈だ。日本が今週、再確認の文言を改めて求めた熱意は、見かけ上は理に適っている。日本の子供たちは夏の間、ミサイルの避難訓練を行っている。また、トランプ大統領の“炎と怒り”の誓いや、血も凍るような北朝鮮の発表、そして北朝鮮による核開発の進歩で危機が“新たな段階に”突入したとする公式評価が、差し迫った日本の安全保障環境を形作っている。過去には安全保障問題や、「より積極的な姿勢を持つ必要がある」と明確な強硬路線を取ってきた安倍首相は、アメリカと北朝鮮の舌戦が勃発する中で、地政学的な立場を敢えて目立たせないようにしてきた。今のところは少なくとも、抜け目なく立ち回ったように見える。しかし、これも全て、「アメリカは戸惑い無しに日本を攻撃から守り、その為には核兵器の使用も辞さないだろう」と知っている、安倍首相を囲む国内外の状況にかかっている。敵味方の誰も動揺を見せるべき時ではない。

安倍首相にとって、どんな小さな弱みも北朝鮮と中国に察知されてしまう地理的な坩堝の中で、揺るぎない日米安全保障条約を示せる最適な手を決断することが問題になってきた。後から考えると、何十年も前から日本には大規模なアメリカ軍基地が至る所にあり、「利益は口にするまでもなく明らかだった」という含みを持たせた上で、アメリカの“確固たる関与”を控えめに演出することも、ひとつの手だったかもしれない。安倍首相が過度に再確認を求める手段に出れば、結局は、新たな確認の度にポーカーで言う“テル”と解釈されるリスクが高まる。つまり、「日本が本当は心中穏やかでない為、呑気にしてはいられない」というヒントを与えることになる。安倍政権は、疑いの理由を匂わせたかもしれないが、トランプ大統領は見逃すことのできない3つのヒントを日本国民に与えている。先ず、トランプ大統領は大統領就任以降の最初の7ヵ月間で、アメリカの地政学的な立場における深い理解や歴史、根本的な目的に対する理解が浅いことを日本に示した。日本は、「自国の幸福に対するアメリカの関心が例外になる」との自信が持てない。2つ目に、トランプ大統領はオバマ前大統領が取ってきた立場のほぼ全てに反感を持っているのは明らかだ。日本には、トランプ大統領の反感の中に、「オバマ前大統領の中心的な政策“アジア回帰”や、北朝鮮や中国の長期的な封じ込めに、日本のような重要な同盟国を巻き込もうとした試みが含まれるのではないか?」と考える人もいる。アメリカが『環太平洋経済連携協定(TPP)』を離脱する決断をトランプ大統領が即座に下したことは、日本にとって特に衝撃的だった。3つ目は、トランプ大統領のあからさまな“アメリカ第一主義”が、日米同盟の発足以来、燻り続けている恐れを高めている。つまり、アメリカの特定の大統領は、いざとなれば、日本人を防衛することで、アメリカ国民の生命を危険に曝すのを躊躇う可能性があるという恐れだ。これまでのところ、とても堅実に見えた状況への日本の不安は、トランプ大統領率いるアメリカと世界で最も強固な同盟国との関係において試金石となる。その他の国々、特に現時点で韓国は、アメリカとの関係を軍事上・外交上の計算の中心に正しく据えている。だが、日本にはアメリカが憲法に組み込んだ軍事的な制約と平和主義が明記されている。そして、それが日本自身の中核をなしている。 (Leo Lewis)


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年8月17日付掲載⦿

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自民党の放送族議員に異変…川崎・佐藤“仲間割れ”で総務省が困惑

20170824 02
自民党の小さなグループの分裂劇が、放送業界で大きな関心を集めている。放送族のドンと言えば、党情報通信戦略調査会会長の川崎二郎氏と衆議院議院運営委員長の佐藤勉氏。5月に佐藤氏が谷垣グループを離脱し、麻生派・山東派と合流したことで、両氏に決定的な亀裂が生じた。実際、先月の情報通信戦略調査会の会合や、自民党放送関係議員と『日本民間放送連盟』の井上弘会長始め民放キー局首脳との懇親会に、佐藤氏はいずれも姿を見せなかった。NHKの受信料制度の改革や、BS4K放送のスタートに向けて、国会議員の力に頼りたい総務省幹部は、「やり難くなった。どちらに先に説明に行けばいいのか」と困惑気味に語る。結果として、情報通信戦略調査会は「開店休業状態で、暫く実質的な議論はできないだろう」(自民党政調会幹部)との見通しだ。佐藤氏は、秋には放送内容への規制強化策等を柱とする提言を纏める予定だが、「川崎氏の了解を得られないとオーソライズされないから、先延ばしにされるのでは?」(放送業界関係者)との見方も出ている。課題山積の放送業界は、「只でさえ票にならない放送関係議員は人材不足で政治力も弱いが、一層先細ってしまう」(民放連幹部)と懸念するが、両氏の溝は深く、「当面、見守っているしかない」と諦めの境地のようだ。


キャプチャ  2017年7月号掲載

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