トップ釈放後の『神戸山口組』に波紋広がる! 井上邦雄組長の“オレ様自慢大演説”で遂に底が割れた“親分の器量”

『会津小鉄会』本部での乱闘騒ぎに関与したとして勾留されていた『神戸山口組』の井上邦雄組長が釈放された。取り調べにはヤクザとしての模範的な立ち回りを見せたが、その一方で、『任侠団体山口組』に非難された“親分の器量の無さ”を露呈したとの評が飛び交っている――。 (取材・文/フリージャーナリスト 柳沢十三)

20170929 09
2017年7月7日、神戸山口組の井上邦雄組長(※『4代目山健組』組長兼任)が処分保留となって、京都府警下京署から釈放された。井上組長が乗っているとみられる車両は、窓にカーテンが下ろされ、内部を伺い知ることは全くできなかった。釈放直後の井上組長を収めようと、警察署前に集まったカメラマンのフラッシュを浴びながら、車両は猛スピードで走り去った。井上組長は6月6日、兵庫県警に携帯電話の機種変更に関する詐欺容疑で逮捕されている。その後、勾留期限一杯の同16日、今度は京都府警が、1月に京都の名門老舗組織である会津小鉄会本部(※馬場美次6代目会長・当時)で発生した乱闘事件に関与したとして再逮捕した。この2度の逮捕により、勾留は凡そ1ヵ月間にも及んだのである。この釈放の知らせを耳にして慌てたのは、主にマスコミ関係者だった。「6月18日に井上組長は京都地方検察庁に送られたこともあって、『これで起訴ほぼ間違い無し』と思い込んでいました。それだけに、釈放には驚きましたが、今になって思えば気になる動きが直前にあったのも事実。井上組長と同じ傷害と暴力行為等処罰法違反(集団暴行)の容疑で逮捕されていた山健組の幹部や組員らが、続々と釈放になっていたんです。どうやら、会津小鉄会本部で負傷した関係者が、出していた被害届を何らかの理由で取り下げたらしく、これでは当局としても、流石に起訴に持ち込むのは難しかったんでしょう」(大手紙関西支局社会部記者)。

井上組長は、京都まで迎えに来ていた寺岡修若頭(『侠友会』会長)、高橋久雄幹部(『雄成会』会長)らと共に、神戸の山健組本部に向かった。そこでは驚きの対面が待ち構えていたという。7代目会津小鉄会の金子利典会長を筆頭とする同会最高幹部らが、山健組本部近くの関連施設を訪れていたのだ。「現在、7代目会津小鉄会は、金子会長が率いる組織と、原田昇会長が率いる組織の2つがあります。こうした分裂に至るきっかけとなったのが、1月に起きた6代目山口組系と神戸側系との乱闘トラブルです。その際、金子会長派を神戸側系、つまりは山健組組員たちが応援した為、井上組長は今回逮捕されることになりました。だから、金子会長らは井上組長にお詫びする気持ちで駆け付けたようです」(大手テレビ局社会部記者)。他にも豪華な親分衆の面々が、数多くの山健組の幹部・組員らと共に施設内に並んでいた。『3代目侠道会』の池澤望会長、『5代目浅野組』の中岡豊組長、『浪川会』の浪川政浩会長も、井上組長を出迎えたという。浪川会長は、神戸側が指定団体となる直前に、自身の率いた組織が“特定抗争指定団体”となった経験があることから、暴対法をレクチャーする講師として招かれている。その会合には、池澤会長と中岡組長の姿もあったのだ。「浪川会長と井上組長は兄弟分であり、2016年3月に東京都内で神戸側が会合を開いた際、混乱が発生して警察が出動する可能性が高いことを知りながらも、浪川会の東京事務所を貸したほどの間柄です。池澤会長も寺岡若頭とは兄弟分で、長らく絆を紡いできました。一方、中岡組長は6代目側の親戚友好団体として、付き合いを今も続けているんです。事実、この2日前の同4日、他の親戚友好団体と一緒に6代目側の総本部を訪問しています。6代目側と神戸側のどちらとも組織として親戚付き合いすることは不可能ですから、井上組長の社会復帰を個人的にお祝いしたというのが正解と思われます」(実話誌系フリー記者)。また、2日後の同9日にも山健組にサプライズ訪問があった。『住吉会』の加藤英幸総本部長(『幸平一家』13代目総長)が東京から足を運んだのである。予てから、井上組長と加藤総本部長は非常に親しい間柄として業界でも有名だ。神戸側が発足後に初めて定例会を開催した2015年9月5日にも、加藤総本部長は旗揚げを祝う為、個人的に山健組本部を訪れている。加藤総本部長は、今回も個人的な関係を重んじて、労いの為に訪問したとみられる。2時間近く滞在し、本部を後にした。

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<画像2枚> スクープ撮! 『EXILE』ATSUSHIと3年愛の美人教師

20170929 07
東京都内の高級レストランで撮られた1枚。この日を境に、ATSUSHIと彼女との真剣交際が始まったという。

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【有機EL&半導体バブル】(12) 有機EL装置・素材は液晶需要の恩恵も

20170929 06
有機ELと半導体の投資が活発化しており、現在の株式市場のテーマの1つとなっている。特に、製造装置や素材で日本勢が存在感を示している。現在は液晶が主流のディスプレイだが、スマートフォン向け中小型等では有機ELも台頭しつつある。有機ELの新型スマホへの搭載を見据えた投資が活発な上、液晶では中国で国策に乗った大型パネル工場投資の案件が進行中だ。この為、ディスプレイ製造装置メーカーが恩恵を受けている。液晶と有機ELの構造には共通点もある。液晶分子や有機ELの発光材料の動きを制御する“バックプレーン”という部材は、両者でほぼ同じものである。『アルバック』はバックプレーンの製造装置を手がけている為、液晶と有機EL両方の投資増の恩恵を享受している。また同社は、有機EL特有の構造である発光層等の蒸着工程で使われる装置も展開している。更に、“クライオポンプ”という部品では有機EL向け用途で、事実上の世界基準とも言えるデファクトスタンダードの地位を確保している模様だ。一方、有機EL製造装置がメインになっている銘柄としては、自動車やディスプレイを含む各他産業分野向けに生産設備を供給している『平田機工』が挙げられる。同社は早くから有機ELの知見を積み重ねてきた。様々な装置を提供することが可能だが、現在は特に付加価値の高い“蒸着装置”に注力している。この装置は『キヤノントッキ』が提供する有機EL製造ラインに組み込まれて販売され、急速な伸びを見せている。

素材・部品の関連では、韓国に拠点を持ち、ディスプレイ用光学フィルムや有機EL向けタッチセンサー等を展開している『住友化学』が注目される。有機EL搭載の新型スマホ向けでは、光学フィルムを中心に業容を拡大する可能性が高いようだ。『日本写真印刷』も注目される。同社のタッチセンサーは現在、主にスマホではなく、タブレット端末に供給されている。同社のタッチセンサーは、液品に付ける外付けタイプ。しかし、スマホの液晶ディスプレイでは、“インセル型”という液晶に内蔵する形式が勢力を伸ばしている。インセル型はパネルの薄型軽量化が可能な為だ。ただ、有機EL搭載スマホではインセル型が技術的に困難となる為、同社の外付け型が飛躍する可能性がある。事実、同社は設備投資・人員増強を進めたスマホ向け需要取り込みの準備が最終段階を迎えている模様だ。スマホの高容量化、データセンター向け需要の増加、自動車の電装化等、複数の成長要因を持つ半導体。半導体各社は、大容量化の為に、1枚の基板に如何に細かい線幅で回路を描くかという“微細化投資”を続ける。また、NANDフラッシュの積層化(※基板を積み重ねて回路を増やすこと)等、新たな技術に関連した投資も活発である。旺盛な投資意欲を背景に、半導体製造装置大手の『東京エレクトロン』や『SCREENホールディングス』等は好調な需要を享受している。チップの切断用装置等を手がける『ディスコ』は、装置の他にブレード(※切断する刃)等の消耗品も手がける。消耗品は、装置が稼働すれば安定的に需要が発生する。装置販売のみに頼らないビジネスモデルの為、業績安定感は高そうだ。高水準な受注の継続性に関する警戒感等は出始めているものの、当面の間、半導体製造装置は株式市場の中心的テーマとなりそうだ。また、時期は不透明だが、ハイテク産業の育成を急ぐ中国での国策的な投資案件も出てくる可能性があり、中期的に注目される。材料分野での注目はシリコンウエハーか。シリコンウエハーは、特にリーマンショック後に大きく値下がりし、メーカーの投資意欲は低下している。一方で、ウエハーの出荷面積は過去最高水準に達しており、足元は深刻な需給逼迫状態となっている。この為、今年初めに主力の直径300㎜品を中心に値戻しがあったが、依然として増産投資に回す価格水準には届かない。ウエハーメーカーが増産投資に動く為には、更に大幅な値戻しが実現する必要がある模様だ。ウエハー世界大手の『信越化学工業』・『SUMCO』は今後、値戻しによる採算改善を享受する可能性がある。また、モニターウエハーの再生事業を行っている『RS Technologies』も稼働が好調だ。モニターウエハー とは、製品用ウエハーと共に半導体製造ラインに投入される。抜き取られた後、ラインの稼働状況やウエハーの出来栄えの評価に使われる。モニターウエハーを洗浄等で再生すれば、新たなモニターウエハーを買わずに済み、コストダウンに繋がる。再生事業を手がける同社は、ウエハー関連の中堅企業として注目できそうだ。 (『三菱UFJモルガンスタンレー証券』投資アナリスト 松丸修) =おわり


キャプチャ  2017年6月13日号掲載

テーマ : テクノロジー・科学ニュース
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【不養生のススメ】(06) 患者が望まぬ“胃ろう”の悲劇

20170929 05
先日、日本の看護師に、誤嚥性肺炎で入院中の独居の80代認知症患者の悲惨なケースを相談された。患者は、認知機能と嚥下機能の低下によって、口から食べることが困難だった。会話すら難しく、“胃瘻”とは何かもわからなかった。ところが、突然見舞いに来た内縁の妻の「治療をして生きていてほしい」という希望で、医師は胃瘻を開始した。患者はチューブを引き抜かないように拘束され、つなぎ服を着せられた。拘束すると、拘束するバンドから抜け出そうと体を動かし、皮膚が擦れて床ずれができた。患者は直ぐに寝たきりとなった。看護師は、「この一連の流れは本人が望んでいるのだろうか? 意思確認ができない状態で、無理に胃瘻を始めて管理することは、一体誰の為なのだろうか?」と悩んでいる。実は、アメリカでも認知症患者に胃瘻をすべきかどうかの議論が盛んだ。抑々、胃瘻とは人工的に皮膚と胃の間に穴を開けてチューブを通す処置である。1979年に、アメリカで開腹せずに内視鏡を用いて胃瘻を造る手技が開発された。胃瘻を比較的安全で容易に造ることが可能となった。認知症になると食べ物の味や香りがわからなくなる為、食への関心を失ったり、空腹を感じなくなったり、食べ物を飲み込み難くなるな等の摂食問題が頻繁に起こる。ハーバード大学医学部のスーザン・ミッチェル教授らによる2009年の『ニューイングランドジャーナルオブメディシン(NEJM)』の報告によると、22の医療介護施設(※ナーシングホーム=NH)にいる323人の重度の認知症患者を調査したところ、86%が摂食障害を起こしていた。つまり、認知症が進行すると、誰もが摂食障害に陥る可能性があるのだ。

これらの摂食障害は、栄養不足による体重減少や脱水等の問題を引き起こす。そこで、摂食障害のある認知症患者にも、栄養投与の為に胃瘻が利用されるようになった。ところが、最近の研究で、認知症患者に胃瘻をしても延命効果が無いことが示された。例えば、2012年のブラウン大学の研究者らの報告によると、全米のNHにいる約3万6000人の対象者の内、5.4%が摂食障害の発症後1年以内に胃瘻を導入した。結果、胃瘻の導入もそのタイミングも延命に効果は無かった。それどころか、胃瘻は認知症患者に害を及ぼすことが報告されている。胃瘻の主な合併症は、栄養剤の漏れ、嘔吐や下痢と皮膚の炎症等がある。重度の認知症患者は、合併症による苦痛を上手く伝えられないことが多い。その為、患者の負担になる治療が行われる一方で、痛みの軽減は不十分であり、混乱や不安等の症状が悪化することがある。「認知症は心の病気であって、体の機能はそのまま保たれている」と誤解されがちだ。重度の認知症の平均寿命は、進行癌の患者の平均寿命と似ている。前述のミッチェル教授らのNEJMの報告によると、重度の認知症患者では、摂食障害以外に肺炎や発熱発作が頻繁に起こり、6ヵ月以内に死亡するリスクが高い。18ヵ月の観察期間に、重度の認知症患者の半数以上が死亡した。何故、それでも胃瘻をするのだろうか? 理由の1つは、家族が愛する人の飢餓による死を受け止めることを恐れる為だ。アメリカ人の家族も日本人の家族も同じである。但し、ミッチェル教授らのNEJMの報告では、認知症の経過や予後がわかっている代理人を記した事前指示書を持つ患者は、苦痛な治療は受けなかった。代理人の多くは家族である。やはり、患者は判断力がある内に、認知症を理解している家族に自分の意思を示すことが重要なのだ。最近、多くのアメリカ人高齢者は、事前指示書に胃瘻による人工栄養の有無等延命治療の希望を示している。『疾病予防管理センター(CDC)』が発表した『国立衛生統計センター(NCHS)』による高齢者対象の調査では、在宅ケア患者の28%、NHにいる患者の65%、ホスピス退院後の患者の88%が事前指示書を記録していた。その割合は、加齢と共に増加している(※左上表)。NHのデータは2004年、在宅ケアとホスピス退院後の患者のデータは2007年であり、現在は更に増加している可能性がある。

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テーマ : 医療・病気・治療
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【Deep Insight】(45) カリスマの後継、負う重荷

『Google』の会長だったエリック・シュミット氏は2011年、IT関連の会合で「プラットフォーム戦略を上手く活用している会社が4つある」と語った。自社と『Apple』・『Facebook』・『Amazon.com』のアメリカ勢だ。4社の頭文字を繋いだ“GAFA(ガーファ)”は、IT産業の主要プレーヤーを表す言葉として定着した。長く業界に君臨した『マイクロソフト』の名は、そこに無い。主戦場がパソコンからインターネット、更にスマートフォン(スマホ)へと移り、競争の第一線から後退する――。そんな見方が専らだった。ところが、である。2012年に9位まで落ちた時価総額の世界順位は今、3位。しぶとくITビッグ5の一角に留まる。何故だろう? 4~6月期決算は、純利益が1年前から倍増した。牽引役はクラウド事業だ。「社内で行うこと全てを変革している」。サティア・ナデラCEOの下、パソコンのソフトを売る会社からの変身が進む。同社創業者のビル・ゲイツ氏は、基本ソフト(OS)で業界標準を握り、頭脳産業の鉱脈を掘りあて、カリスマになった。21世紀に入り、検索等インターネットサービスでGoogleの優位が鮮明になった頃、「挽回できるのか?」とゲイツ氏に尋ねた。「うちが劣勢? 証拠を示せ」。怖い顔で詰め寄られたのを覚えている。ゲイツ氏の親友で2代目CEOに就いたスティーブ・バルマー氏も、ソフトを売りまくって会社を大きくした。『ヤフー』の買収を試みるが失敗。従来の延長線上の経営が温存された。漸く変化し始めたのは、2014年にインド出身の“サラリーマンCEO”ことナデラ氏が登場してからだ。モバイル分野での出遅れという現実を受け入れ、手を打った。OSを一部タダにし、宿敵だったAppleやGoogleのOSに対応するソフトも用意した。「タブーと思われたことをトップが自ら実践し、社員の気持ちが変わった。そこに魅力を感じ、入社する人も増えた」。『日本マイクロソフト』の平野拓也社長は話す。現実空間に様々な映像を重ねて表示し、まるで目の前にあるように操ることができる『ホロレンズ』という端末も作った。ブラジル出身の開発リーダーであるアレックス・キップマン氏は、新たなスターとして脚光を浴びる。過去の呪縛から脱しつつあるマイクロソフトと対照的なのが、“ウィンテル”としてパソコン全盛期を謳歌した盟友の『インテル』だ。スマホ向け半導体でガリバーになったのは『クアルコム』。今後、有望な自動運転用は、『エヌビディア』が注目の的だ。ライバルに押され続けるインテルは4~6月期、四半世紀ぶりに業界首位の座を失った。

パソコン用CPU(中央演算処理装置)に頼る構造が響き、韓国の『サムスン電子』に逆転を許した。インテルにもカリスマCEOがいた。ICを発明したロバート・ノイス氏、“ムーアの法則”のゴードン・ムーア氏、そして今もなお経営者のお手本とされるアンディ・グローブ氏だ。メモリーからCPUへと軸足を移す決断、黒子の部品会社らしからぬ“インテルインサイド”の販促――。3人は思う存分、敏腕を振るった。後継の3人はどうか? 「常に前任者たちの影を意識しなければならなかった」と、グローブ氏の後任であるクレイグ・バレット氏が米紙に心情を明かしたことがある。次のポール・オッテリーニ氏も、ムーアの法則の維持に必死だった。現CEOのブライアン・クルザニッチ氏も同様だ。先人たちが築いた偉大な歴史を守る重圧が、新分野への挑戦を鈍らせたかもしれない。「前任者を否定すれば済む」といった乱暴な話ではない。だが、経営環境の変化は嘗てなく激しく、カリスマの敷いたレールをそのまま走るだけの後継者では心許無い。それが、ウィンテルの明暗が示す教訓だ。時価総額首位のAppleさえ、ティム・クック氏のCEO退任を求める声が投資会社から聞こえてくる。「スティーブ・ジョブズ氏の遺産を引き継いだだけでビジョンが無い」が理由だ。カリスマ後の経営の難しさは、洋の東西を問わない。例えば『ソニー』。井深大・盛田昭夫・大賀典雄という創業者世代の3氏が、家電から音楽・映画・ゲームにまで跨る複雑な組織を生み、ソニーの名前を世界に轟かせた。しかし、その後は斬新な製品やサービスが乏しい。ピリッとしない経営が続く最中に聞いたグループ重鎮の言葉を思い出す。「創業者世代は次の世代の力量がわかっていなかった。運営できないほど巨大なものを残したのは失敗だ」。今、ソニーは業績が上向く。“復活”の評価も出始めたが、「事業売却で身を縮め、売り上げやシェアを追わない方針に舵を切り、やっと現在の経営陣でも切り盛りできる規模に落ち着いてきた」といった総括も可能に思える。そして、この人はどう着地するのか? 『ソフトバンクグループ』の孫正義社長だ。自ら選んだ筈の後継者にバトンを渡す計画を撤回し、10兆円ファンドを立ち上げた。6月の株主総会では、「引退していられない。燃えている」と訴えた。孫社長の人脈や行動力への依存度が高まるのに比例し、後継者選びのハードルも上がる筈だ。カリスマという存在には、閉塞を破り、革新を呼び込む突破力がある。ただ、長期の成長を目指す企業経営の観点からは、取扱注意のリスク要因と考えざるを得ない。 (本社コメンテーター 村山恵一)


⦿日本経済新聞 2017年8月9日付掲載⦿

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【憲法のトリセツ】(14) 見えてきた安倍首相の改憲カレンダー

20170929 03
安倍晋三首相が、「日本国憲法(※現憲法)に自衛隊の存在や教育の無償化を明記する改正を行い、2020年に施行したい」との考えを表明しました。仮に、その年の正月から実施となると、周知期間が1年は必要でしょうし、2018年の内には国民投票が終わってなければ間に合いません。安倍首相は悲願の改憲に向け、どんな手順を考えているのでしょうか? 一昨日、『憲政記念館』であった『新しい憲法を制定する推進大会』に、安倍首相が現職の首相として初めて出席しました。この会合は、改憲派の国会議員が毎年開いているもので、嘗ては『自主憲法期成大会』と称していました。そこに顔を出すというのは、「安倍首相が愈々改憲へと踏み出す決意を固めた」というサインです。ロシア、イギリス訪問の後に予定されていた北欧行きを急遽取り止めての出席ですから、安倍首相の並々ならぬやる気が窺えました。安倍首相は初当選以来、一貫して改憲を訴えてきました。改憲に意欲と言われても、「何を今更」と思われるかもしれません。でも、2012年に首相に返り咲いてからは権力基盤を固めることを重視し、改憲よりも経済再生に力を注いできました。その封印を愈々解く――。安倍首相は大会挨拶で、「機は熟してきた。今、求められているのは具体的な提案だ」と言い切りました。

このタイミングで改憲に本格的に取り組む決意を固めたのは、どうしてでしょうか? 1つは、政権復帰から4年が過ぎ、「反対が多いがやらなければならない」と考えていた政策課題(※特定秘密保護法や安全保障法等の制定)は、目下、審議中の組織犯罪処罰法改正でほぼ終了し、支持基盤の保守層の間で、改憲待望論というか、「いつまで待たされるのか?」という声が広がりつつあることが挙げられます。2つ目は、「この時期を逃すと改憲は難しくなる」という判断があるようです。2012年と2014年の衆院選、2013年と2016年の参院選に4連勝して得た衆参の3分の2。次に来るのは、2018年12月に任期満了を迎える衆院選です。野党第1党の民進党の支持率は低迷が続いているので、自民党が政権を失うほど負けることはないでしょう。しかし、安倍首相への飽き、長期政権に伴う緩み、加えて2012年問題と呼ばれる若手議員の質の低さ等を考慮すると、「次の衆院選で自民党は20~40議席失うのではないか?」というのが永田町の相場観です。改憲勢力を合わせた3分の2を割り込みます。そう考えると、今の議席がある2018年12月までに国民投票の発議を終えることがマストになることがおわかり頂けると思います。次に、国民投票のカレンダーを考えましょう。国民投票法では、発議から投票まで60~180日間置くことになっています。日本で選挙以外のワンイシュー(単一争点)で投票が行われるのは史上初ですから、与野党の憲法担当者は“最初は180日間”で合意しています。つまり、発議から投票まで半年もあるのです。発議は国会開会中にするので、2018年12月の衆議院の任期満了までに機会は4回です。今の通常国会、秋の臨時国会、来年の通常国会と臨時国会です。流石に今の国会でいきなり発議は考えられないので、実際には3回です。しかも、会期の冒頭でいきなり行うこともないでしょうから、発議があり得る時期は、今年11~12月頃、来年6~7月頃、来年11月~12月頃の3回です。其々、半年後を考えると、投票日は来年5~6月頃、来年12月~再来年1月頃、再来年5~6月頃になります。投票日が通常国会の会期の終わり近い5~6月頃となると、只でさえ激しい護憲派と改憲派の対立が、国会審議の場でぶつかることになります。そう考えると、実は色々な条件を一番満たすのは、来年6月頃に発議し、12月頃に投票を迎えるスケジュールになります。それまでに衆議院解散をしていなければ、12月にある衆議院の任期満了選との同日投票ということです。「国民投票と衆院選を重ねてよいのか?」。そう考える向きもあろうかと思います。憲法96条は、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と定めています。つまり、「普通の国政選挙とダブルでよい」ということです。この日程は、安倍首相には大変都合がよい。2018年9月には自民党の総裁選があります。そこで3選を目指すのですが、発議が実現していれば、「国民に信を問う首相を答えが出る前に交代させるのか?」と主張して、無投票3選に持ち込み易くなります。

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テーマ : 憲法改正論議
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プエルトリコへのアメリカの嘆かわしい救助対応――関心薄いメディアの異常性、ヒラリー・クリントンに促された海軍の情けなさ

20170929 02
アメリカ自治領プエルトリコが、1度ならず2度までハリケーンに直撃され、前例の無い壊滅的被害を受けている。先週、1928年以来最大の勢力でプエルトリコを襲ったハリケーン『マリア』は、時速155マイル(※約250㎞)の暴風を伴って上陸、豪雨を齎した。340万のプエルトリコ住人は、数ヵ月続く可能性がある停電に見舞われ、水や通信手段を奪われた。道路は冠水し、病院や家は破壊され、今や公衆衛生上の危機に瀕している。被害の規模に比べて、これまでのアメリカ政府の反応は恐ろしく不適切だ。マリアと、その前にテキサス州を襲った『ハービー』という2つのハリケーンのアメリカ本土来襲時に比べた救助対応の遅れについて、ドナルド・トランプ大統領はわかり切ったことを並べて釈明している。アメリカの自治領であっても州ではないプエルトリコについて、「大海に囲まれている島だ」とトランプ大統領は言った。だから、「必需品や人員を送る際に輸送上の問題が加わる。今まで、必要な援助物資の殆どは空輸されている」と。確かに、救助活動は拡大しつつある。破産状態にあるプエルトリコの救助費負担を免除したトランプ大統領は、現地を視察する計画だ。だが、アメリカ本土のフロリダやテキサス等、被害がより限定的な地域に比べ、プエルトリコの惨事に対するアメリカのメディアや政府の関心が遥かに薄いのも事実だ。

2016年の大統領選でトランプ氏のライバルだったヒラリー・クリントン元国務長官に促されて、海軍の病院船が今週派遣された。マリアがプエルトリコを直撃するという事前警告があったことを考えれば、抑々、より大規模な備えをすべきだったのだ。今回の危機で、アメリカの旅客・貨物輸送等に関する不可解で保護主義的な商船法(『ジョーンズ法』)の廃止を求める議論も復活した。ジョーンズ法は「アメリカの内航船は全てアメリカ建造でアメリカ船籍でなければならない」という法律で、元々、第1次世界大戦の直後、軍事需要に応えられるアメリカ商船を十分確保する為に可決された。この法律はプエルトリコ住民に人為的コストを押し付け、貿易を歪め、プエルトリコが貧窮する要因になった。『国際通貨基金(IMF)』によると、アメリカからプエルトリコへの輸入品の価格は、同法が適用されない近隣の島々と比べて、少なくとも2倍に上る。燃料・エネルギー費も比較すると高い。ジョーンズ法の一時的適用免除の要求は当初、アメリカに退けられた。プエルトリコの知事は、「緊急に承認されるよう期待している」と語っていた。プエルトリコがこの災害から完全に立ち直れるのかははっきりしない。だが、ジョーンズ法から免除されれば、様々な場所からの緊急物資が直ちに届き、今後の経済刺激に繋がるかもしれない。プエルトリコを苦しめる経済・財政危機は、この20年間でアメリカへの脱出者を着々と生み出してきた。若し、復興の取り組みの優先順位を上げられず、官僚主義的な障害が取り除かれなければ、マリアは住民流出を深刻化するだけだ。この悲劇は一部、プエルトリコの置かれた特異な立場が齎した結果と見做さざるを得ない。プエルトリコは定期的に、州としてアメリカに加わるかを巡って投票し、結論が出ないままできた。州として加われば、議会に議員を送り、その窮状について切迫感を高めることができるだろう。そうなれば、結果として、必要な資源がもっと早く動員されていたかもしれない。それと同時に、プエルトリコの人たちに対して、「この秋のハリケーンで同胞のアメリカ人を支援したのと同様の切迫感を持って援助できない」という言い訳等はできないのだ。


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年9月28日付掲載⦿

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南アフリカの政治スキャンダル、企業に広がる余波――「深刻な判断の過ちを犯した」、大統領と繋がるグプタ家の謎

20170929 01
南アフリカで、監査を担う国際会計事務所『KPMG』とコンサルティング会社『マッキンゼー』が、インド系富豪のグプタ家に関連した政治スキャンダルの影響で、一段の打撃を受けている。このスキャンダルを巡っては、既にイギリスのPR会社『ベルポッティンガー』が破綻に追い込まれている。KPMGは19日、南アで更に2社の監査契約を失い、他の契約の見直しにも直面した。顧客は同社との距離を置こうとしている。マッキンゼーは、南アの最大野党『民主同盟(DA)』から、グプタ家関連企業に対する経営コンサルティング業務を巡って不正行為と談合の汚職疑惑を受けている。グプタ家は、「ジェイコブ・ズマ大統領との繋がりを使って国営企業の契約を不正受注した」と非難されている。DAは19日、グプタ家の関係者が所有する『トリリアンキャピタル』との業務を巡り、マッキンゼーに対する申し立てを行った。グプタ家は、国営電力会社『エスコム』との大型契約の受注で圧力をかけたとされている。

マッキンゼーは、トリリアンに対する支払いや、支払いの承認を否定。更に、「(トリリアンに対して)エスコムが行った支払いを承認するよう依頼されたことは一度も無い。正式な取り調べや捜査には全面的に協力する」としている。KPMGは、KPMG南アフリカがグプタ家関連企業の監査で「危険信号を見落としていた」と認め、南ア拠点の幹部8人が退陣した。グプタ家とズマ大統領は疑惑を否定している。KPMGインターナショナルのジョン・ビーマイヤー会長は19日、「KPMG南アフリカで起きた不祥事に対して」謝罪した。「KPMGインターナショナルは、独立した弁護士の支援を受けて調査に着手した。調査により、南アフリカ歳入庁(Sars)向けに作成した報告書に多くの欠陥があり、長期間に亘ってグプタ家の業務継続の決断に多くの過ちがあったことが判明した。KPMG南アフリカは、こうした関与について深刻な判断の過ちを犯した」と同氏は言う。KPMGが18年間、監査を手掛ける金融サービス会社『サスフィン』は、「KPMGに関して最近、広く報道されている懸念を考慮して」新たな監査機関を探すと表明した。南アの投資会社『フリサニ』も、2年間監査を担当したKPMGを外したことを認めた。KPMGは既に、資産運用会社『シグニア』を顧客として失っている他、イギリスの『バークレイズアフリカグループ』、南ア大手銀行の『ネッドバンク』、不動産投資信託の『ハイプロップ』もKPMGとの関係を見直している。南アの投資銀行で資産運用会社の『インベステック』は、20年来のKPMGとの関係解消の是非を議論する為、「20日に監査委員会を開催する」と明らかにした。 (Madison Marriage・Joseph Cotterill)


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年9月20日付掲載⦿

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【変見自在】 報道は自由さ

彼女の親の親は半島から来た人だから彼女は外国人だが、日本では日本人と変わりなく学校に通えた。ただ、中学の時、日本ではそう当たり前ではない妊娠をして、軈て出産した。異国の地で年端もゆかぬ身で子を育て、食べていくのは大変なことだが、日本ではそんな無責任な外国人にも生活保護が出る。尤も、そんな正気とも思えぬ制度が元々あった訳ではない。先人のたゆまぬ努力と暴力があってこその賜物なのだ。生活保護制度が発足したのは昭和25年。働き口も無い。おまけに、父や夫が未帰還とかの家庭も多かった。そうした家庭の為に始められたのだが、在日朝鮮人が「俺たちにも生活保護を出せ」と言い出した。根拠は、終戦後に金天海が立ち上げた『在日朝鮮人連盟』の基本方針“我々が住みやすい日本を実現する”にあった。基本方針は日本の法に優る。役場の窓口が「外国人はダメ」なんて言ったら袋叩きにできた。神戸市長田区役所が先ず痛め付けられ、山口県万来町もやられ、全国に被害は広まった。「このままでは窓口係が皆、殺される」。厚生省は局長通知の形で、在日への生活保護支給を認めた。そんな訳で、幼い母も生活保護を受けて遊んで暮らしていたら、ミナミで若手俳優と行き会った。俳優は若いのに、経産婦の落ち着きをもつ彼女に1日で参って、彼女を連れて飲み歩いた。とは言え、彼女は未だ17歳。日本の法では、夜遊びには“保護者の承諾”が必要とされていた。日本の法の上にいる人たちが、ここでは日本の法で保護されるというのもよくわからないが、兎も角、俳優は書類送検された。朝日新聞はそれを、「少女(17)と知っての悪質行為で書類送検」と報じた。

生活保護を受け、夜な夜な繁華街で遊ぶ母が“保護すべき少女”に当たるのかどうか。そういう問題点に、朝日は一切触れなかった。肝心な点は全て書かないという意味で、朝日の『新潟の86歳老人の後悔』(9月13日付夕刊)は出色だ。老人とは、新潟に住む元呉服商の小島さん。自分の街の港から北朝鮮に帰る人たちを見て、心から支援するようになった。『すばらしい国朝鮮』なんてミニコミ紙も出して、祖国に帰る何万もの朝鮮人を見送った。6年支援して、機会があって北朝鮮に行った。そこは地獄だった。人々は「端切れでもいい、送って」と哀願した。彼らは絶望と飢餓の中で死んでいった。小島さんは打ちのめされた。軈て横田めぐみさんの拉致を知る。過去の償いのつもりで、今は拉致被害者の救出に命を懸けている。北朝鮮は碌でもない国だ。でも、この話が何で朝日新聞に載るのか? 記事を書いた北野隆一編集委員は、社の資料室を覗かないのか? お前の新聞が朝鮮人帰還の旗振りだったことが山とある。「北朝鮮は地上の楽園」と岩垂弘が書き、第一船が出た時は、「新潟港にマンセーの声が響き、チマチョゴリの女が舞った」と高揚感が紙面を埋めていた。北の楽園報告では、「アパートが次々建てられ工場は24時間フル稼働」で「帰還者は職と生活一切が保証されている」とある。北野は自社に不利な記事は書かない。それでも馬脚は出る。小島さんは1964年に北に行って地獄を見た。しかし、朝日はそれ以降も「北朝鮮は地上の楽園」を描き続け、更に20年間、新潟港から地獄に向かう船が何隻も出て行った。朝日が金日成と結託していたかどうかは兎も角、向こうの要請で帰還事業を進めたのは間違いない。北は地獄という実態がばれた1976年、朝日は連載『北朝鮮のナゾ』でやっと楽園説を否定した。小島さんに遅れること12年だ。そして今、地獄の北朝鮮に10万もの朝鮮人を送り返した張本人は、「新潟の小島さんだった。彼は責任を感じて反省している」と報じる。長年の誤報の責任を86歳の老人に転嫁する。何とも立派な新聞だ。


高山正之(たかやま・まさゆき) ジャーナリスト・コラムニスト・元産経新聞記者・元帝京大学教授。1942年、東京都生まれ。東京都立大学法経学部法学科卒業後、産経新聞社に入社。警視庁クラブ・羽田クラブ詰・夕刊フジ記者を経て、産経新聞社会部次長(デスク)。1985~1987年までテヘラン支局長。1992~1996年までロサンゼルス支局長。産経新聞社を定年退職後、2001~2007年3月まで帝京大学教授を務める。『高山正之が米国・支那・韓国・朝日を斬る 日本人をますます元気にする本』(テーミス)・『アジアの解放、本当は日本軍のお陰だった!』(ワック)等著書多数。


キャプチャ  2017年9月28日号掲載

テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済

【誰の味方でもありません】(20) あなたはレフェリー?

知人から「ドヤ街に行こう」と誘われた。それ自体はいいのだが、理由を聞いてちょっと頭を抱えてしまった。「社会学者として“社会の底辺”を見ておいたほうがいい」と言うのだ。僕が職業柄、様々な社会階層の人に出会ったり、世界の様々な場所に赴いたほうがいいことまでは同意できる。しかし、ドヤ街を安易に“社会の底辺”と分類してしまう態度が引っかかったのだ。勿論、日本の平均から考えればドヤ街に住む人の平均所得は低いだろうし、既存の社会からドロップアウトした人も多いかもしれない。だけど、何故その場所を、赤の他人が“社会の底辺”と決め付けることができるのだろう? 嘗て、歌手の中島みゆきが、こんな架空対談を行ったことがある。聞き手も答え手も共に彼女の創作だ。「挑戦するんだけど常に失敗続きの敗残者と、安全圏を死守する日々で成功を収めた者とでは、どちらを支持する?」という質問に対して、こう答えるのだ。「1つ忘れているよ。失敗と成功の境界線を引くレフェリー気取りの奴、あたし、レフェリー以外は全部支持する」。みゆき、かっこいい! そうなのだ、僕たちには気付かずにレフェリーになって、他者の成功や失敗を決め付けてしまう瞬間がある。だけど本当は、成功者か失敗者かなんて他人に決められる類の問題ではない。同様に、ドヤ街を“社会の底辺”と決め付けるのもレフェリーの傲慢だ。

考えてみれば、現代社会にはどこを見渡してもレフェリーが溢れている。「私は不倫もいいと思うんです」「政治家が不倫なんてとんでもない」。時には寛容を装って、時には正義感を身に纏い、社会の様々な事象に対して審判を下すレフェリー兎に角多い。何故か? 逆説的だが、レフェリーでいる限り、他者の審判から逃れられるからではないか。社会にレフェリーが多いということは、自分自身が何らかのジャッジを受ける機会も多いということだ。しかし、上から目線で評価を下すレフェリーになってしまえば、自分だけは安全圏に身を置くことができる。つい先日も、自分では不倫を楽しむ主婦が今井絵理子を猛烈に批判しているのを目撃した。勿論、実際にはレフェリーもまた他者からの評価に曝されている。レフェリーの代表格である週刊誌やワイドショーのコメンテーターは、しばしば批判の対象になる。「当事者でもないくせに何様目線で物を言っているのだ?」と。尤もな意見だと思う。しかし、ここでいきなりレフェリーの擁護に走るが、社会というゲームを進行していくには、時にはレフェリーも必要なのだと思う。安楽死の是非等、この社会にはまだまだ決着の付いていない問題が沢山あるからだ。しかし、1人の絶対的なレフェリーに支配されてしまう社会は怖い。それならば、多様なレフェリーがいたほうがいいだろう。という訳で、今週もまたレフェリー気取りで偉そうなことを書いてしまった。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。近著に『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』(文藝春秋)。


キャプチャ  2017年9月28日号掲載

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
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