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【崩壊する地方テレビ局】(上) 総務省と政治が画策する“統廃合”





20180430 24
地上波放送のデジタル化設備投資やリーマンショックの影響で、地方テレビ局の赤字経営が4~5年続いた時代があったが、ここ数年はやや持ち直したとされていた。しかし最近、再び地方局の経営危機が囁かれている。『フジテレビ』系列9社、『テレビ朝日』系列6社、『TBSテレビ』系列4社、『日本テレビ』系列と『テレビ東京』系列0社――。これは、2014年度決算で減収減益となった地方局の系列別の数だ。視聴率不振の影響を受け、フジテレビ系列は最多である。大阪の同系準キー局である『関西テレビ』は、経常利益が前年比85.4%。名古屋の『東海テレビ』も同84.1%と厳しい決算となった。大都市は未だ持ち堪えたほうで、山形県の『さくらんぼテレビ』と『テレビ新広島』の両局は経常利益が前年比約57%と急落した。TBSテレビ系列でも、宮城県の『東北放送』が経常利益前年比86.1%、『熊本放送』が同72.3%等、苦しい経営が続く局を抱えている。東北地方を担当する総務省関係者によれば、『秋田放送』で耐用年数が迫った社屋を新しく建て替えようと検討を始めたが、地元の銀行も経営の先行きに不安があり、融資話が難航しているという。東北地方の中でも、東日本大震災の被災地である岩手県の民放を取り巻く環境は厳しい。岩手県には、小沢一郎氏が主導して、1991年に民放3局目の『岩手めんこいテレビ』が誕生し、その後に4局目となる『岩手朝日テレビ』ができた為、飽和状態にある。岩手県の人口は、隣接する青森県と大差なく、約130万人だ。しかし、青森県の民放は3社で、1局あたりの人口では劣勢に立つ。

老舗の『IBC岩手放送』(※TBSテレビ系列局)のOBが語る。「地デジの設備投資は一段落したが、この借り入れの返済に追われて、岩手の各社は厳しい状態だ」。全国的にテレビ業界の広告の伸び悩みは深刻だ。『日本民放連研究所』の調査によると、地上波テレビの広告費は、2015年が1兆8384億円となる見通しで、前年比0.2%増加だ。これに対し、インターネット広告費は今年8690億円で、5.4%増の見通しとなっている。地上波テレビ広告費は、東京オリンピック開催以降の2021年からはマイナスに転じるという。人口減に伴い、ローカルスポンサーの経営は苦しく、地方局の営業収入は益々東京支社偏重になっている。ある地方局幹部は、「東京支社で営業収入の7割を稼いでいるのが現状だ」と語る。車・化粧品・飲料水といった、所謂ナショナルスポンサーを相手に、東京支社で営業してCM枠を埋めているのだ。愛媛県の民放関係者は、「地元企業のスポットはパチンコ店が多い」と苦しい台所事情を語る。パチンコ店のCMは地方局を席巻し、前述した岩手県でも同様だと地元民放社員が語る。「深夜は殆どがパチンコのCMで占められる。県内に他のスポンサーが見当たらない」。『かもめの玉子』というお菓子を作る『さいとう製菓』等、限られた地元企業しかCMを出稿しない為、各局は奪い合いだ。その場合、歴史の古いIBCが有利だという。ある地方局の役員は、「今の配分電波料より利益率の良いビジネスモデルはない」と言い切る。2000年代初頭、民放BS放送がスタートした際、放送業界に“地方局炭焼き小屋論”が広がった。衛星を通じて全国に一斉に放送が届くことで、地方局の存在感は薄れ、早晩“炭焼き小屋”のようになってしまうというショッキングな話だった。しかし、それから十余年、地方局はゾンビのように生き残っている。テレビのCMには“タイム”と“スポット”の2種類がある。タイムとは、特定の番組を提供し、その放送時間中に流れるCMだ。この内、全国に流れるものが“ネットタイムCM”と言われる。キー局が多額の番組制作費をかけるドラマやバラエティーは、殆どが全国ネットで放送される。その番組を提供するスポンサーは、全国に一斉に流れることを期待してCM料を拠出している。平日のゴールデンタイム(※19~22時)番組なら数千万円単位のCM料が支払われ、その中からキー局が其々の系列地方局に配分する。これが“配分電波料”である。系列局への配分法はキー局によって異なり、フジ型は固定制で、CMの売り上げに関係なく配分額が決まっている。日テレ型は歩合制で、CMの売り上げに応じて配分額が変動する。一方、スポットは番組と番組の間に流すCMで、放送範囲はキー局であれば関東地区、各地方局は自らの県域とエリアが特定されている。現状、各キー局のタイムとスポットの収入比率は半々だ。しかしここにきて、スポンサー企業の志向はスポットに傾きつつある。「人口減や高齢化の進行する地方には、CMを流す価値は減ってきている」と分析しているのだ。これは、配分電波料に依存する地方局の経営を直撃する。

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テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
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“文部科学省13階”、新国立競技場迷走の元凶――建設費はゼネコンの言い値、天下りOBに報酬1500万円





20180430 21
東京都港区虎ノ門。昭和8(1933)年に建てられた文部科学省の旧庁舎が、交差点に面するように佇む。残されたこの庁舎の裏に聳える中央合同庁舎第7号館東館。33階建てのビルの18階までが文科省のエリアであり、13階に渦中のスポーツ・青少年局やオリンピック・パラリンピック室が入居している。新国立競技場の総工費が決まり、世論の批判が吹き荒れていた先月中旬、霞が関を見渡す13階の一室で、文科省幹部の1人は涼しい顔でこう言い放った。「総工費が2520億円に膨れ上がったといっても、最終的にtoto(※スポーツ振興くじ)の売り上げを回せば済む話だ。財源は心配していない」。17日になって安倍晋三首相が計画案を白紙撤回した為、総工費は削られる見通しになった。しかし、この幹部の発言には、文科省の今回の問題における責任意識の希薄さと、この国のスポーツ行政を司る部局としての罪深さが端的に表れている。新国立問題の責任の所在を巡っては、様々な報道が溢れている。「相変わらず放言し続けている森喜朗元首相が、2019年に開催予定のラグビーワールドカップに間に合わせる為に強引に進めた」「問題になったデザイン案の選考に携わった建築家の安藤忠雄氏の責任は重い」――。其々嘘ではないが、事業の主体は『日本スポーツ振興センター(JSC)』であり、この独立行政法人に職員や天下り官僚を送り込んできたのは文科省だ。1300億円の予算でデザインが募集され、イギリス在住の女性建築家であるザハ・ハディド氏が応募した巨大な2本のアーチを特徴とする作品が、安藤氏をトップとする審査委員会で決定されたのは2012年11月だった。しかし、約1年後の2013年10月には、コスト計算をした結果、予算が3000億円規模に膨れ上がっていることが表面化した。

全国紙政治部文科省担当記者が語る。「この時、スポーツ局とJSCが計画を見直して予算を圧縮した筈だったが、全く意味がなかった」。デザインを見直し、競技場の床面積を25%程縮小したことで、1625億円まで下げた。それが今春になって再び3000億円を超えそうであることが明るみに出た。実は、昨秋頃には「JSCがゼネコン側から総工費が3000億円以上に膨らむ事実を突き付けられていた」(政府関係者)。別の全国紙政治部記者が語る。「この時点で表面化していれば、ラグビーW杯に間に合うスケジュールで計画を変更できた」。驚くことに、文科省の下村博文大臣の耳にこの事実が伝えられたのは、今年4月になってからだった。文科省は5月に“スタンド部分の一部(※1万5000席分)仮設化”・“屋根設置の先延ばし”で再び予算縮減案を出したが、焼け石に水。猛烈な批判を浴びた「超高級スタジアム」(競技団体関係者)計画が出来上がってしまった。JSCにはスポーツ局から職員が送り込まれている他、役員の内、鬼澤佳弘理事と吉尾啓介理事は文科省キャリアOBである。当然、スポーツ局との連携は密であり、4月まで大臣に情報を上げなかったのは、「三流官庁の中でも特殊な部署」(文科省関係者)と言われるスポーツ局の作為に他ならない。「2012年にデザインが決まった後に、文科省から要望のヒアリングがあったので、自分の競技に必要なものを提出した」。前出とは別の競技団体の幹部は、種目を伏せる条件でこう語った。こうした要望は政治家からも集められた他、新国立はコンサート会場等としてイベント収益を見込んでおり、広告代理店や音楽業界等からも合計200件以上が集まった。殆ど交通整理をすることもなく集めるだけ集めたスポーツ局は、最終的に大した選定もせずに、120件余りの要望を全て詰め込んだ。「『東京にオリンピックが来るからいいだろう』という認識はあった」。文科省関係者の1人はこう語り、「費用が膨らんだところで政府は予算をつけると見ていた」という本音を吐露する。今回の新国立は、スタンド部分は『大成建設』、屋根部分は『竹中工務店』との随意契約が交わされたが、抑々文科省にゼネコンと渡り合うノウハウなど皆無に等しい。ゼネコン側にとって、「研究施設くらいしか発注経験のない文科省の官僚など、赤子の手を捻るようなものだった」(前出の文科省担当記者)。文部官僚が意図的に膨れ上がらせた訳ではないが、ゼネコンの言い値を諾々と受け入れていたのだ。ここに、前述した“政府が出す”という甘い見通しが加わり、事態は放置されてしまった。呆れるほどの当事者能力の欠如だが、JSC側で担当していた文科省OBの鬼澤理事について、「ゼネコンとの打ち合わせに自分はあまり出席せずに、文科省の顔色を窺うばかりだった」(別の文科省関係者)という声も漏れてくる。計画白紙撤回の前日、建築家の安藤氏が会見を行なった後、報道陣の取材に対応した鬼澤理事は、厚顔にも「責任の一端はあるが全てではない」と官僚答弁を繰り返した。

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テーマ : 政治のニュース
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【WATCHERS・専門家の経済講座】(13) EV、世界の期待乗せて――大森真也氏(『住商アビーム自動車総合研究所』社長)

20180430 20
「自動車市場で、世界的に電気自動車(EV)への移行が注目されています。デジタル分野の技術革新が進む中、自動車の進化はどう進むのでしょうか? 自動車は他の工業製品と異なり、発明から1世紀以上を経ているにも拘わらず、“再発明”が無い。例えば時計は、機械式からクオーツ式になりました。車も改善は重ねてきたのですが、根本的な変化はありませんでした。しかし今、車は再発明の時期を迎えようとしている。その1つがEVです。元々機械だった車に、電気的な要素が増えています。ICT(情報通信技術)やAIの進化が背景です。その中で車に求められる価値観は大きく変わってきました。嘗ては高出力や格好良さが求められましたが、今は安全・快適・環境に集約されてきた。安全では、人に代わってシステムが運転する自動運転。快適さの面では、人がハンドルを握る手が汗をかいたらエアコンの温度を下げる等、車はセンサーの塊になりつつあります。更に大きな流れとなっているのが環境です」。2015年12月にパリで開かれた気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前に比べ2度未満に抑える目標が掲げられた。「COP21の合意で、温室効果ガスの排出が多い車へのプレッシャーが大きくなった。地球温暖化対策や大気汚染問題への対応が求められている為、EVが選択肢となっているのです。アメリカで最大の自動車市場であるカリフォルニア州のZEV(Zero Emission Vehicle)規制は、EVが注目されるきっかけになりました。メーカーはエコカーを一定台数以上、販売しなければいけない」。

「今年からは大幅に強化され、日本が得意としてきたエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)は、エコカーの対象外となりました。これもEV化を後押ししています。EVが注目されているもう1つの要因は、世界の主要国の産業政策と関連しています。車の電動化というのは、自動車産業があまり強くない国にとって大きなチャンスになる。“ゲームチェンジ(流れの変化)”に懸ける国が現れています。フランスとイギリスは昨夏、2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を禁止すると発表しました。ドイツに独り占めされている自動車産業を、電動化で先駆けることによって強化したいという思惑があるのです」。中国は、2019年から自動車メーカーにEV等の“新エネルギー車”を、中国国内で製造・販売するノルマを課す。「中国は“EV大国”を目指しています。2016年に世界で売れたEVの半分は中国での販売です。中国がEV化を推進するのは、工業化で大気汚染が進んだからだけではない。自動車産業を発展させる手段と考えています。約3万点の部品が必要なエンジン車を作るのは大変ですが、約1万点に減るとされるEVには新規参入し易いのです。今後のEVの普及には、2つのステップがあるとみています。2020年に一旦、EVの成長は緩やかになるでしょう。各国政府はEV購入の為の補助金を出していますが、お金が尽きてきます。更に、『EVを動かす電気を、石炭を燃料にした火力発電に頼れば、空気は綺麗にならない』と問題視する世論が出てくるでしょう。次の転機は2030年。現在、車に積む電池の主流はリチウムイオン電池です。これに比べて、開発が進んでいる全固体電池は、充電時間が短く、容量も大きい。EVの走行距離が長くなると期待されています。第2世代の全固体電池が2030年頃に出てくれば、EVの本格的な成長に繋がります。日本はHVの量産化に逸早く成功し、市場を作りました。電動化で先んじたことは事実です。EVでも他の国にないものづくりの力が生かせる。2003年に設立された『テスラ』は、先ず高級路線に絞って成功しましたが、大衆車を作った経験がなく、安くて良い車を作るのに苦戦しています。EVには新規参入し易いのですが、“良いEV”を作れるかどうかは別です。消費者のニーズに合った良いものを作る技術は日本の基盤。新規参入組には真似できない、高品質のEV作りに徹することが、何より大事だと思います。車が“所有”するものから“使用”するものへと変わっていることも忘れてはいけません。車の販売台数は増えなくても、ライドシェアや公共交通のニーズは増えます。車はお金を貯めて買って、車庫にしまっておくものではない。乗ることで素晴らしい体験ができることが求められています。日本のメーカーも、こうした観点で車作りを進める必要があります。 (聞き手/経済部 松原知基)


キャプチャ  2018年4月25日付掲載

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【Global Economy】(85) “習主席一極”、影を落とす…中国の経済成長、“質”に軸足

中国の習近平政権は、2期目の目標として“質の高い経済発展”を掲げた。習主席の経済チームは、これを実現できるのか? 影を落としているのは、習主席の“一極体制”だ。 (編集局次長 佐伯聡士)





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「全面的に改革を深め、対外開放を拡大し、高質量発展(※質の高い経済発展)を推進せねばならない」――。先月20日の全国人民代表大会(※日本の国会に相当)の閉幕演説で、習近平国家主席(64)はこう宣言した。経済発展の重点を、成長率から成長の“質”に移す姿勢を鮮明にしたものだ。中高速成長を想定した“新常態(ニューノーマル)”よりも踏み込んだと言える。全人代では、質の高い発展という目標達成に向け、習政権2期目の経済チーム(※写真①)が発足した。日中関係筋は、「当面の最大課題となるアメリカとの通商関係と金融リスクへの対応を念頭に置いた布陣だ」と言う。対米交渉役として習主席の期待を集めるのが王岐山国家副主席(69)。昨年の中国共産党大会で最高指導部を引退したにも拘わらず、異例の起用となった。今後は、節目節目で対米交渉の経験が豊富な王副主席を使い、通商摩擦の沈静化を図る思惑とみられる。経済チームの中核を担うのは、副首相に昇格した劉鶴氏(66)だ。劉副首相は、習政権のマクロ経済政策の司令塔である党中央財経指導グループの弁公室(※事務局)主任を務め、鉄鋼の過剰生産設備の削減等“供給側の改革”を進めてきた。ハーバード大学でも学んだ改革派経済官僚で、習主席の経済ブレーンだ。今回の全人代で、同指導グループは党中央財経委員会に格上げされた。習主席の主導の下、体制が強化されるとの見方が強い。もう1つの重要課題である金融リスク対策では、2人の実務派の緊密な連携がカギを握る。経済通の朱銘基元首相を支えた“四天王”の1人、中国銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席(61)と、国際派で知られる中国人民銀行の易綱総裁(60)だ。

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劉副首相が金融リスクを如何に警戒しているかは、今年1月下旬、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムの年次総会(※ダボス会議)での講演から窺える。劉副首相は、「重大リスクの防止、貧困脱却、環境汚染対策という3つの堅塁攻略戦を戦い抜くことを決めた」と強調した。難題を容易に攻め落とせない陣地にたとえ、金融リスクの防止を1つ目の戦いに位置付けた。副首相就任直後の先月下旬には、人民銀行等の幹部に対し、「健全で安定した金融の発展を促さねばならない」と号令している。質の高い発展には無論、農村の貧困人口の減少や主要汚染物の排出総量の大幅な削減が欠かせない。それだけではなく、サービス産業の付加価値の更なる向上や、過剰な設備投資を是正することも求められる。名目国内総生産(GDP)に占める第3次産業の割合が3年連続で50%を超える等、サービス経済化は進んでいる(※グラフ②)。固定資本形成の対GDP比率は40%台で、過剰な設備投資が続いている。ただ、今後の調整がこの3年間のペースで続いた場合、2020年には30%台に低下する見通しだ(※グラフ③)。そうなれば、持続的な質の高い発展に繋がろう。この分野では、経済チームが一定の成果を上げる可能性が大きい。だが、やはり最大の関門は、劉副首相の指摘通り、シャドーバンキングや地方政府の隠れた債務等のリスクが問題化しないよう、効果的に抑えることだ。「2017年、中国経済が直面した情勢は非常に複雑で厳しいものだった。“ブラックスワン”や“灰色のサイ事件”が起きた」。経済チームの重要閣僚の1人である国家発展改革委員会の何立峰主任(63)は、全人代期間中の記者会見でこう語った。高利回りを謳う保険商品の大量販売で急成長した『安邦保険集団』が、海外の不動産に巨額投資を繰り返す等の手法が問題視され、公的管理下に置かれた。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【Global Economy】(84) 安保が人質、アメリカの交渉術…米韓FTAの二の舞、日本警戒

アメリカと韓国の自由貿易協定(FTA)は、ドナルド・トランプ政権の要求で大幅に見直された。安全保障を“人質”に取るやり方は、日本にとっても他人事ではない。日米首脳会談でも通商問題は大きな議題になった。“アメリカ第一”の矛先をどう躱していくのか? (調査研究本部主任研究員兼編集委員 佐々木達也)





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「米韓の貿易関係はアメリカ国民に不利なものだったが、私はそれを解決する」――。今月17日の日米首脳会談で、トランプ大統領は北朝鮮問題に関連し、韓国との通商関係についても触れた。先月、米韓FTAの見直しで合意した直後には、アメリカ政府高官が「アメリカの通商交渉の歴史の中で極めて大きな勝利だ」と強調した。トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)見直しや対中国の貿易赤字削減等を目指すが、目立った成果は未だ無い。その中で、交渉開始から2ヵ月半ほどのスピード合意に至った米韓FTAの見直しは、11月の中間選挙に向けて格好のアピール材料だ。アメリカ政府が“歴史的勝利”と誇る合意内容は、どのようなものか? 柱は、アメリカの不満が強い自動車分野だ。2012年の米韓FTA発効後、韓国の対米貿易黒字は増加した(※グラフ①)。2016年以降は縮小傾向だが、FTA発効前と比べれば高水準で、中でも自動車関連の黒字拡大が目立つ。2017年は、韓国の対米貿易黒字の9割以上が自動車関連だ。韓国ではアメリカ車の輸入の伸びは鈍い(※グラフ②)。『ゼネラルモーターズ(GM)』は韓国で現地生産するが、工場の一部閉鎖を決め、生産撤退の観測が出ている。韓国の自動車輸入全体は増えているものの、日本メーカー等がFTA発効を受けて、アメリカで作った車を韓国に輸出している影響だとの見方もある。日本市場同様、韓国でアメリカ勢は苦戦する。今回の合意では、アメリカの安全基準を満たせばそのまま韓国で販売できるアメリカ車の台数を、1社あたり現在の2倍の年5万台に上積みする。アメリカが韓国製のピックアップトラックにかける関税の撤廃時期は、2021年から2041年に先送りする。

20180430 13
現地報道等によると、『現代自動車』は関税撤廃を前提にピックアップトラックをアメリカに輸出する計画を立てていたが、見直しを迫られる可能性がある。アメリカへの生産移管が進めば、影響は無視できない。製薬分野では、韓国で開発された新薬の薬価を優遇する制度について、アメリカが改善を求め、2018年中に法改正することで合意した。製薬はアメリカが強みを持ち、強く譲歩を迫ったとみられる。FTAの枠外でも注目される合意があった。鉄鋼分野で、韓国はアメリカへの輸出量を、2015~2017年の平均と比べ70%以下に抑制する。アメリカは安全保障を理由に、鉄鋼とアルミニウムに関税を上乗せする輸入制限措置を発動したが、韓国は輸出削減と引き換えに対象から除外された。輸出入の数量制限は、『世界貿易機関(WTO)』ルールの基となった関税貿易一般協定(GATT)で一部例外を除き、禁止されている。価格が変動するだけの関税措置より、数量を制限するほうが保護貿易の度合いが強いとされる為だ。「今回の合意はWTOルールに反する」との指摘がある。更に懸念されるのが“為替条項”だ。アメリカ政府によると、輸出に有利になるような為替の操作を禁じ、金融政策の透明性や説明責任を確保することで合意する見通しだという。アメリカは、「韓国の経常収支の黒字が増えたのに通貨のウォンが安いのは、韓国が通貨安へ誘導している為だ」と問題視していた。『みずほ総合研究所』の菊池しのぶ主任研究員は、「農業分野を守ったこと等で韓国内にも好意的に受け止める声はあるが、安全保障問題と絡められ、韓国側が要求を呑まざるを得ない部分が多かった」とみる。米韓FTAは発効当初、韓国が輸出を有利にする通商戦略で日本に先んじたとされ、日本の産業界に危機感が広がった。しかし、保護主義を掲げるトランプ政権の下では、大国との2国間交渉の難しさを象徴するものともなっている。トランプ大統領は先月29日、「北朝鮮と(非核化の)の合意成立まで、(正式合意を)延期するかもしれない」と、安全保障を材料に更に韓国を揺さぶった。

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テーマ : 経済
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【岐路に立つウェブ広告】(15) 「優良メディアは運用型を選ばない」――ギデオン・リッチフィールド氏(『MITテクノロジーレビュー』編集長)インタビュー

『MITテクノロジーレビュー(MITTR)』は、マサチューセッツ工科大学を母体とする科学技術専門メディアだ。AIの普及等を受け、幅広いビジネスパーソンを購読者として獲得している。前職の『クオーツ』での経験を含め、デジタルメディアの経験が豊富なギデオン・リッチフィールド編集長(※今月就任)に、メディアは広告とどう付き合うべきかを聞いた。 (聞き手・構成/本誌 杉本りうこ)

20180430 11
創刊に携わったビジネスメディアのクオーツは良質な枠売り広告、MITTRは購読料が主たる収益源だ。両メディアが運用型広告を選ばなかった理由は2つある。1つは、運用型広告は質が低いものが多いことだ。表示される商品や表現は、読者である知的なビジネスパーソンに相応しくない。出稿企業も、質の低い運用型広告の隣に自社の広告が表示されることを嫌がる。もう1つは、運用型広告の単価はずっと下がり続けていることだ。出稿量が潤沢で市場全体の規模が大きいからこそ、単価はこれまでも、そして今後も下がり続ける。メディアが収益源として依存し続けるのは、根本的に難しいのだ。だから、優良な顧客層を持つメディアなら、運用型広告を選ぶのは賢明ではない。私自身は編集者で、広告業務には関わってこなかった。だが、運用型広告はクオーツが目指すビジネスではないということは、メンバーの明確な総意だった。だから、見るに値する美しい広告だけを、適切な大きさと位置で表示してきた。収益的にも昨年は黒字。今年もその延長線上にある筈だ。細かい数字は私にはもうわからないが。一方、MITTRは有料購読型だ。技術そのものを理解し、それを如何に人間社会に役立てるかを考える上で役立つ良質な情報を、知的な読者に有料で提供している。読者は我々の努力と成果に、敬意と対価を払う意思がある。MITTRだけでなく、良質なメディアは今どこも、記事そのものでの課金を志向している。直近では、『ワイアード』がペイウォール(※一部のコンテンツを有料化し、無料閲覧を制限すること)を導入したのが好例だ。嘗て、多くのメディアが「広告こそがデジタル時代のマネタイズ策だ」と信じた。だが、今明らかなのは、「この策は十分には儲からない」という事実だ。この流れの中で最も重要なのは、どんな読者層を持ち、彼らが何を求めているのかを、メディア自身がクリアにすること。それが明確になって初めて、何でマネタイズすべきかがわかるのだ。


キャプチャ  2017年12月23日号掲載

テーマ : ITニュース
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【儲かる農業2018】(04) 『日本政策金融公庫』と民間金融機関がタッグ…狭まる『JAバンク』包囲網

農業分野を対象にした金融ビジネスを巡り、『JAバンク』と『日本政策金融公庫』が熾烈なバトルを繰り広げている。防戦一方のJAバンクの地盤沈下は留まりそうもない。

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「あんまり、うち(※JAバンク)の仕事を奪わないでね。昔は仲良くしていたのだから」――。ある地方農協の組合長が、日本公庫の営業担当者にクギを刺した。農業分野を対象にした金融ビジネスを巡り、JAバンクと日本公庫がバトルを繰り広げている。近年の農業への融資状況を見ると、総額では横這いが続いているが、日本公庫のシェアがJAバンク等農協系統のそれを奪う形で急上昇している。一方、農協系統の融資金額は減少の一途を辿っている。日本公庫の方針は明確だ。地方銀行・信用金庫・信用組合と連携して、有力な担い手農家への投融資を積極化させるというものだ。この方針は、民間の金融機関にとっても渡りに船である。地方の産業基盤が弱まっており、貸出先の開拓に苦慮している地方の金融機関にとって、農業分野への投融資は“ラストリゾート”以外の何物でもない。2016年に農業参入した企業数は約2700社に上り、金融機関にとっても「農業は最後の成長企業である」と判断しているのだ。日本公庫と民間金融機関が連携した協調融資の実績は、2016年度で1762億円(※1031件)。今年度も上半期だけで1106億円(※648件)に上り、通期では2000億円を超える勢いだ。融資だけではない。日本公庫と地銀・信金・信組と組んで組成する“農業投資ファンド”も、雨後の筍のように増加している。昨年、全国に散らばる9信組(※北海道・北央信組、東京・第一勧業信組、岡山・笠岡信組等)が参加した農業投資ファンドに日本公庫も参画したことは、大きな話題になった。単に運転資金や設備資金を融資するに留まらず、規模拡大意欲のある農業法人にファンドが出資し、農場経営の指導や技術支援を行なうところまで踏み込むことになるからだ。

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まさしく、これまでJAの営農部隊が取り組んできた業務と重複する分野であり、信組・公庫連合がJAの領域に乗り込んできたとも言える。尤も、民間金融機関の農業支援のレベルには温度差があることも事実だ。昨日や今日、農業に関わった素人に、プロ農家を支援したり、農業法人の将来性を判断したりといった能力が備わっている筈もない。その為、日本公庫が創設した農業経営アドバイザー制度の資格を取得する銀行・信金マンが激増している。2017年度のアドバイザー合格者数は、JA・信連1121人であるのに対して、銀行・信金等は1483人。やはり、民間金融機関が前のめりになっている様子が窺える。抑々、民間金融機関が日本公庫とタッグを組みたがる背景には明確な理由がある。日本公庫には、認定農業者が有利にお金を借りられる『スーパーL資金』という最強商品がある。5年間実質無利子で融資を受けられることから、大量の農家が日本公庫に流れているのだ。民間金融機関には、「JA系統を除けば独り勝ちの公庫と組むことで、少しでも農業分野へ食い込みたい」という意図が透けて見える。片や、民間陣営にJA包囲網を築かれた格好のJAグループは、心中穏やかではない筈だ。実は、JA陣営にも日本公庫と並ぶ特権制度が温存されている。それが、『農業近代化資金』と呼ばれる助成金だ。国・都道府県が借入者の利子負担を軽減することで、JAバンクもまた、有利な商品を提供できている。それを以てしても、JAバンクの劣勢を覆す処方箋は見つかっていない状況だ。


キャプチャ  2018年2月24日号掲載

テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

【100年人生に備える大人の勉強ガイド】(04) 学びとは自分を知ること――菊池桃子氏(戸坂女子短期大学客員教授)インタビュー

40歳で法政大学大学院に入学して雇用政策を学び、現在は母校である戸板女子短期大学の客員教授としてキャリア教育を担当する女優の菊池桃子さん。嘗てのトップアイドルは何故学び直し、そこから何を得たのか? (聞き手・構成/本誌 中山一貴)

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「障害を持つ娘の人生を守りたい」――。私が大学院で学び直したいと思った一番の理由でした。社会人が通える大学院のガイドブックを読んで見掛けたキャリアカウンセラーに相談すると、法政大学大学院のある研究科を紹介されたのです。乳児期の脳梗塞で左手足に麻痺が残った娘を守りたいという親心から始まった大学院生活でしたが、意外な気付きがありました。私が後輩に専門用語等を解説する姿を見て、同級生や先生方が「菊池さんって教えるのが好きだよね!」と。“ジョハリの窓”というフレームワークがあります。自分が知っている自分と知らない自分があって、周りの人が自分の潜在的な能力に気付かせてくれる。大学院のような学習共同体で学ぶことが、自分を知るきっかけになったのです。大学院での学びは芸能活動にも役立っています。ドラマに出る時に、例えば女性の社会進出のような社会的課題や変化がわかった上で演じられる。インタビューを受ける時も、以前は自分の記憶を基に話していましたが、社会の動きについての関心が高まり、話題が広がったことを感じています。

芸能活動と子育てをしながら通っていたので、勉強時間について1日何時間と決めるのは難しかったです。そこで、30分を1単位として、1日最低2単位を勉強時間に充てるようにしました。朝と夜に1単位ずつだったり、朝に2単位だったり。1単位しかこなせなかったら、次の日に3単位こなしたりもしました。1週間毎に計画を立てて、なるべく前倒しで単位を消化するようにしていました。3年間かけて修了し、2012年8月から縁あって母校の戸板女子短期大学の客員教授になりました。キャリア教育、特に女性のキャリアについて講義しています。最近はゼミ形式で学生とディスカッションもしています。ゼミの1週間前にテーマを決めるのですが、インバウンドやAI等、話題のニュースを取り上げます。その為、産業新聞のような専門紙にも目を通し、VR等の最新技術についても、なるべく一足早く情報を集めるようにしています。この頃感じるのは、知らなかったことを知ること全てが学びだということ。教育機関に戻るだけではなく、人に会ったり本を読んだりすることも全てが学び。そんな気付きを踏まえて、生涯学習について講義することもあります。今、ある目標があります。ドラマでも舞台でも映画でもよいのですが、65歳になったらこんな役をやりたいというはっきりしたイメージがあるのです。誰かに先にやられたら困るので手の内は明かせませんが(笑)。今はひたすらインプットする期間だと思っています。自分が知らないことを知るのは楽しい。一生涯、自分の好奇心と向き合いたいです。


キャプチャ  2018年2月24日号掲載

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【鉄道大戦争2018】(04) 新幹線よりも在来線の強化を…一枚岩で纏まらない山形県

20180430 05
東北には2つの基本計画がある。福島-山形-秋田間を結ぶ奥羽新幹線と、富山-新潟-秋田-新青森間を結ぶ羽越新幹線だ(※左図)。どちらも音頭を取るのは山形県。「山形新幹線(※福島-新庄間)があるのに何故?」と疑問に思う人も少なくないだろう。山形新幹線は、新幹線と銘打つものの、実際は在来線を走るミニ新幹線。東京から福島までは新幹線として疾走するが、福島で分岐して山形方面に向かうと、在来線区間の為、速度はがくんと落ちる。急カーブや踏切等がある為だ。新幹線区間は直線が殆どで、踏切も無い。つまり、新幹線とミニ新幹線とではインフラ構造がまるで違うのだ。「フル規格化が実現すれば、最短で2時間26分かかる山形-東京間の所要時間が、約2時間へ短縮する」と、山形県総合交通政策課の担当者は意気込む。しかし、切望する理由は時間短縮だけではない。山形新幹線は輸送トラブルが多いのだ。踏切があるので自動車との衝突事故も起きるし、野生動物も線路内に飛び込む。強風や吹雪も大敵だ。フル規格になれば高速化に加え、安定走行の為の風雪対策も講じられるようになる。

が、現状の福島-新庄間は在来線並みのレベルに留まる。「走行キロ当たりの輸送障害は、フル規格新幹線の33倍に及ぶ。1日平均で0.5~1便が運休・遅延している」(前出の山形県総合交通政策課)。フル規格の新幹線を導入し、定時・安定運行してほしいというのが県の考えだ。「フル規格化の議論は今を置いてない。この機を逃すと、次にいつチャンスが来るかわからない」。問題は、県内が一枚岩で纏まっていないことだ。日本海側の庄内地域にある酒田市は、フル規格化と併せて、山形新幹線開業時からの悲願だった庄内延伸の実現に奔走する。在来線の陸羽西線の新庄-酒田間にミニ新幹線を走らせようというのだ。フル規格化だけでなく、何故ミニ新幹線を推すのか? その理由は、陸羽西線の利用者数が年々低迷していること。「大きな災害に遭ったら復旧されず、そのまま廃線にされかねない」と、市企画振興部の担当者は懸念を示す。陸羽西線にミニ新幹線が走れば、少なくとも廃線の心配はない。庄内地方は山形新幹線への依存度が小さい。鉄道で酒田-東京間を移動する場合、新潟経由で羽越本線と上越新幹線を乗り継ぐ人もいる。同じく庄内地方にある鶴岡市は、更に新潟寄りなので、上越新幹線への依存度がずっと増す。羽越新幹線の実現を目指す新潟-秋田間の沿線自治体は、新幹線の実現を最終目標としつつ、実現性の高い取り組みを段階的に求めている。先ず新潟駅では、上越新幹線と羽越本線の同一ホームでの乗り換えに向けた工事が今春完了予定。今後は待ち時間を短くするダイヤ改正や、停車駅の少ない速達型特急の新設を求めていく。「新幹線は時間もカネもかかる」(酒田市の担当者)。地元にとっては、新幹線よりも、現実的な利便性向上のほうが先決のようだ。 (取材・文/本誌 大坂直樹)


キャプチャ  2018年2月14日増刊号掲載

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【ここがヘンだよ日本の司法】(04) 「信頼を喪失した検察は捜査レベルも低下している」――落合洋司氏(弁護士・元検事)インタビュー

人気ドラマ『HERO』(フジテレビ系)の監修者としても知られる落合洋司弁護士。捜査機関として検察の機能が低下している理由を分析してもらった。そして、弁護士の間で問題となっている格差についても言及。法曹界は失われた信頼を取り戻すことができるだろうか? (聞き手・構成/フリーライター 鈴木光司)





20180430 03
木村拓哉主演で人気を博したテレビドラマ『HERO』。その検察シーンの監修も務めた元検事の落合洋司弁護士から見て、古巣でもある検察はどのように映っているのか? 朝鮮半島の軍事的緊張の前で目立たなくなったが、依然根深い問題である森友疑惑から話はスタートした。ずばり、森友問題は国策捜査とならないのだろうか? 「国策捜査かと言われれば国策捜査ではないと思います。与党に『籠池(泰典元理事長)さんをやっつけてやりたい』という思惑はあったでしょう。ただ、実務的な意味でも告発は難しいのではないか。報道されている中では、大阪府が業務妨害や文書偽造等で告発を検討しているとも言われていますし、府議等も同様の動きがある。五月雨式にそれらの告発を受けていけば、検察はやるでしょう。抑々、国策捜査というのは、告発が出るから行なうという感じじゃなくて、上から『やれ』という指令が降ってきて捜査態勢が組まれる。鈴木宗男さんの件とか、昔の住専なんかはそうです。森友に関しては、その動きも無いし、これからも無いと思う。だから国策捜査とは言えない。ただ、与党(=自民党)の思惑は見えるので、国策捜査という大きな括りの中に感じる人がいてもおかしくはないですけどね」。その森友問題が検察に告発されるとなれば、大阪地検となるだろう。しかし大阪地検は、2009年の障碍者郵便制度悪用事件において、地検特捜部による証拠の改竄が発覚。厚生労働省の村木厚子元局長らに無罪判決が下りるという大失態を演じたことが記憶に新しい。一部で「後遺症もあり、及び腰になっている」という噂もあるのだが…。

「森友案件はやり難い対象ではないので、(立件することは)問題ないでしょう。地検が改竄事件の後遺症で及び腰になっているのではないかというのもないと思います。ただ、あの改竄という不祥事が起こってしまった原因は、中にいた者の1人として、ある程度は推測できる。それは従来、特捜部がやってきた手法というのが完全に行き詰まってきたというか、もっと言えば破綻をきたしてきたということが大きい。それがわかり易い形で現れたのが、例の大阪地検特捜部の事例だと思うのです。抑々、知能犯の事件というのは、昔から見立て――これは今でもそうですが、『ここはああだろうこうだろう』ということを先ず立てて、そのシナリオに沿って捜査を進めていく。つまり、『ここはこういう風になっている筈だからこういう調書が必要』となる訳です。それがここ20年くらい、極めて難しくなっている。当たり前ですが、特捜部にも調書を取るのが上手い人もいれば、そうではない人もいる。しかし、『取れなければ取れないでいいよ』という訳にはいかないので、怒鳴りつけたり脅かしたり、壁に立たせたりと、かなり強引に調書を取ってきた面も嘗てはあった。そういうやり方が国民からも批判を受け、従来型の事件捜査が困難になったのです」。国民としては、強引な取り調べは歓迎できるものではないが、それだけで捜査能力が低下するほど検察の足腰は弱いのだろうか? 「もう1つ原因があります。ここが大切なのですが、信頼感を喪失した捜査機関には良い情報が集まらない。国民の信を得ていれば、『あそこに持っていけば(事件を)捜査してもらえる』ということになり、自ずと情報も集まる。東京地検特捜部というのは元々、そういう下地があって大きな事件をやっていた。それなのに、大阪のような不祥事があると情報も集まらなくなり、捜査も行き詰まる。更に付け加えるなら、検察も事件捜査をやらないとノウハウが喪失していくのです。贈収賄とか選挙違反とか、調書の取り方を始め、『こういうところはこういう風に押さえなくちゃいけない』というノウハウ。それをやらないと段々、捜査をやったことがない人が増えていく。そして、やったことがない人が増えると捜査ができなくなっていく…。完全に悪循環ですよね」。実際問題として、落合弁護士によれば、東京地検特捜部ですら独自調査の贈収賄をやらなくなっているという。警察が送ってくる案件をぱらぱらとやり、後は公正取引委員会や証券取引等監視委員会(SEC)等から上がってくる程度だというのだ。これでは、“天下り”の東京地検特捜部と雖も、先行きは不透明だ。

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