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【誰の味方でもありません】(53) シェアハウス今昔

10年程前から、若者たちの新しい居住形態としてシェアハウスが注目されている。正確にいえば、昭和の木賃アパート等、若者の共同生活は昔から存在した。1968年の建設省調査によると、共同住宅の内、専用風呂付きは5%、専用トイレ付きは22%しか存在しなかったという。つまり、多くの若者はシェアを当たり前にしていたのだ。状況が変わったのは、1980年代のワンルームマンションブームから。“財テク”ブームの折り、手軽な不動産投資の対象としてワンルームは最適だった。生まれた時から個室が当たり前になった世代からもワンルームは好まれた。しかし、都心の一人暮らしは窮屈なのに高価だ。そこで脚光を浴びたのがシェアハウスだった。リビングやバスルームを共有する生活ならば、同じ家賃でもっとレベルの高い場所に住めるという訳だ。意識の高い人々も、この流行を煽った。「多様な人々が一緒に住むことで生まれる繋がりが、個人の生活を豊かにするばかりではなく、新しいビジネスアイディアが生まれる」といった具合だ。そういえば、“シェア”や“ノマド”といった価値観を高らかに謳い上げる安藤美冬さんっていたな…。しかし、実際のシェアハウスはそれほど素敵なものではなかった。2014年に国土交通省が発表した調査によると、居住者がシェアを選んだ最大の理由は「家賃が安いから」。そこに「立地が良い」「即入居が可能」と続く。

「コンセプトが気に入った」「イベント等が楽しそう」と答えた人は1割程度に過ぎない。特に、窓の無い狭小ハウスに住む人の約半数は、月収が15万円以下だった。リベラル風に言えば、シェアハウスは貧困の温床だったのだ。しかし、そのシェアハウスも減少傾向にあるという。この数年で都心の景気が回復し、住宅事情も改善したからだ。結局、多くの人は好んで知らない人となんて住みたくなかった訳である。それでもシェアハウスには一定の需要はあり続けるだろう。旧来の常識では、「シェアは若者だけがするもので、結婚や育児を契機に独立していく人が多い」と考えられていた。だが、僕の周りには、子供を産んでもシェアハウスに住み続ける人が一定数いる。ワンオペ育児が問題になる昨今、子育てには寧ろ良い環境だという。そこでの住人は“新しい親戚”のようなイメージだ。友人は、家族と違って何ら法的に保証される関係ではない。友だちには婚姻届もパートナーシップ証明書も必要ない代わりに、気が合わなくなったらそれまでだ。しかし、友人関係とは得てして複数同時に結ばれるもの。初めは1対1で仲良くなっても、次第に双方がその友人を紹介していくからだ。つまり、誰か友人と別れようと思ったら、そのコミュニティーごと切り捨てる必要がある。しかし、それは時に親と絶縁するよりも難しい。シェアハウスに住まなくても、うっかりすると友人関係は親戚のようになってしまうのだ。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。近著に『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』(文藝春秋)。


キャプチャ  2018年5月31日号掲載
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テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

【この素晴らしき世界】(21) 多くを語らない男、なかやまきんに君①

なかやまきんに君という芸人をご存知でしょうか? “きんに君”というだけあって、ボディービルで鍛え上げたその体で色んなギャグを繰り出す芸人さんです。例えば、左右の胸筋を素早く交互に動かす“筋肉ルーレット”、上腕二頭筋に向かって「おい! 俺の筋肉! やるの? やらないの? どっちなんだい? やる!」と叫ぶネタ、ボン・ジョヴィの『it's my life』を流しながらポージングをして、程良きところでパスタに大量の粉チーズを「ヤー!」と叫びながらかけたかと思えば、大量の飴を「ヤー!」と叫びながら勢いよく投げ捨てるギャグ、「アーノルドシュワル…」と何秒かためてから、「ツェネガー」とネイティブっぽく発音する一発ギャグ…等、文字にすると全く伝わらないかもしれませんが、実際に見ると独特の感覚で面白いんです。普段はピン芸人ですが、 時々、『ザ 健康ボーイズ』というユニットを、有酸素運動マン(※こちらは普段は『サバンナ』というコンビの八木真澄君)と組んだりもして、真面目にネタを考え、お笑い大会にも挑戦しています。沢山いる吉本芸人の中でも、一際異彩を放っているなかやまきんに君。自分の思ったようにやる。誰の意見も聞かない。突っ走る。誰にも交わらず、そして多くを語らない。本人は至って普通のことをしているつもりでも、私から見たらとても変です。きんに君は大阪のNSCという吉本の養成所出身で、同期には『キングコング』・『南海キャンディーズ』・『NON STYLE』・『ダイアン』等面白い芸人が沢山います。

そんな中で誰かと仲良くなってコンビを組むこともなく、最初からピン芸人でキャラクターもぶれずにあのまんま。今回書くにあたって調べたところ、初めて気がついたのが、きんに君が福岡県出身だということでした。最近は『博多華丸・大吉』君の活躍でクローズアップされている福岡県出身の芸能人の面々。きんに君もここぞとばかりに名乗り上げたらいいのに、一切便乗していない。“福岡県出身”というキャラはいらないのか、「自分には筋肉キャラがあるのだから、寧ろ邪魔になる!」と思っているのか。兎に角、多くを語らない。そんなきんに君、ラッキーなことにデビューして直ぐにテレビ番組に呼ばれました。イジられキャラであり、スべりキャラでもあり、皆から愛されたきんに君。トントン拍子で芸能界の階段を登っていきます。そして、全国的に知名度を上げたのは、『スポーツマンNo.1決定戦』(TBSテレビ系)という番組での活躍です。ライバルのケイン・コスギさんとの激闘を繰り広げ、前人未到の4連覇を成し遂げる華々しい活躍を見せます。“スポーツ芸人枠”に見事収まり、お茶の間の好感度もとても良かった。このままスポーツ芸人として活動していけば、きっと仕事も順調なのに、そこは立ち止まることができないきんに君。誰の意見も聞かずに突っ走った結果、2006年10月の体育の日、ボディービルダーのメッカとして有名なロサンゼルスに、筋肉留学の為に旅立ちます。「筋肉留学って何やねん!」というツッコミはさておき、事前に英語の勉強を十分していなかったきんに君は、筋肉留学開始当初こそ言葉に苦労したものの、次第に仲間や友人もできました。一方で勿論、辛い事も沢山ありました。


東野幸治(ひがしの・こうじ) お笑い芸人・司会者。1967年、兵庫県生まれ。兵庫県立宝塚高校卒業後、『吉本興業』に入社。現在、『ワイドナショー』(フジテレビ系)・『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)・『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)・『梅沢富美男と東野幸治のまんぷく農家メシ!』(NHK BSプレミアム)等にレギュラー出演中。著書に『泥の家族』(シンコーミュージック)・『この間。』(ワニブックス)。


キャプチャ  2018年5月31日号掲載

テーマ : お笑い芸人
ジャンル : お笑い

【ヘンな食べ物】(88) 美形民族が誇るトルコ極小餃子

挽肉と細かく切った野菜を、手の平大の小麦粉の皮に包んで加熱した料理――つまり、餃子、焼売、小籠包、肉饅頭の類いは、食事によし、おやつによし、酒のつまみによしと三拍子揃った素晴らしい食品だ。これら餃子系食品はどこが発祥の地なのか定かでないが、実は東アジアだけでなく、シルクロード沿いに広くユーラシア大陸の西方へ伝わっている。チベットやネパールでは“モモ”と呼ばれる。ネパールではインドの影響で、カレーをタレにして食べたりする。ロシア料理の“ペリメニ”も水餃子みたいな料理だ。アフガニスタンでは、ヨーグルトをかけたペリメニのような料理を食べたことがある。“マントゥ”と呼ばれていた。中国語の“マントウ”(※漢字では饅頭)に由来する名称だろう。ヨーグルトというのが如何にも牧畜文化である。そして、つい最近、トルコでもマントゥが存在すると中東料理研究家のサラーム海上さんに教えてもらった。作るのはチェルケス人という、元々中央アジアから来た民族だそうだ。色白で美男美女揃い、トルコではモデルや芸能人として活躍している人が多いとのこと。しかし、この美形民族が作るマントゥ(※正式には“カイセリマントゥ”)は実に珍妙。無茶苦茶サイズが小さいのだ。「最高でスプーンに30個乗るマントゥを食べたことがあります」とサラームさん。聞き間違いかと思う。だって普通、餃子や小籠包はスプーンに1個載せるのがやっとだ。でも、30個は極端にしても、スプーンに7~8個は普通だという。何故、そんなに小さくするのか?

ひとつには、“小さくする=手間をかけていて偉い”という評価基準があるらしい。「うちの田舎のお婆ちゃんが作るマントゥはスプーンに40個も乗ったんだぜ」と自慢したりするという。人類にはアホの遺伝子が埋め込まれており、1つの価値観が定着すると、その社会集団の中ではどんどん過剰な方向に行くことがある。料理で言えば、“辛ければ辛いほどいい”とか“臭ければ臭いほどいい”とか。でも、“小さければ小さいほどいい料理”なんて聞いたことがなく、珍妙過ぎるので、サラームさんのお宅で実際に作り方を教えてもらうことにした。先ずは皮作り。これは基本的に餃子と同じ。作業時間短縮の為、ホームベーカリーに小麦粉、卵、塩、微温湯を入れたら勝手に作ってくれた。皮用小麦粉の固まりが捏ね上がると、麺棒で薄く伸ばし、それを小さく切る。この時、サラームさんが取り出したのは、“マントゥマティック”なるけったいなな道具。サランラップの筒ぐらいの棒に丸い刃が10個、等間隔で付いている。これを転がすと同じ幅に小麦粉生地が切れる、つまりピザカッターの集合体みたいな道具なのだ。極小マントゥを作る為だけに開発されたという、世界屈指の“ヘンな調理器具”だ。因みに、呼び名は“マントゥ”と“オートマティック”をかけている。これを生地の上で転がすと、1辺が2.5㎝の正方形が切り取れた。バンドエイドのガーゼ部分よりやや大きい程度か。笑ってしまうほど小さい。次に具作り。牛挽肉、玉葱とパセリの微塵切り、塩、胡椒、パプリカパウダー、プルビペール(※少し発酵させた唐辛子粉)を混ぜて捏ねる。大体、ハンバーグのタネ1つ分ぐらい。「4人分なのに、これだけでいいの?」と思ったが、いざ包み始めると感想は劇的に変わった。


高野秀行(たかの・ひでゆき) ノンフィクション作家。1966年、東京都生まれ。早稲田大学第1文学部仏文科卒。『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)・『アジア未知動物紀行』(講談社文庫)・『世界のシワに夢を見ろ!』(小学館文庫)等著書多数。近著に『間違う力』(角川新書)。


キャプチャ  2018年5月31日号掲載

テーマ : 海外旅行
ジャンル : 旅行

【寝言は寝て言え!】(53) リフレインだけが叫んでいる

森友→加計→森友→加計…。面白くないドラマの再放送を何度も繰り返し見ている気分です。相変わらず安倍政権を倒そうと、野党は必死にモリカケで攻めています。「未だやっているのか」というのが率直な感想です。しかし、政権も情報を小出しにしている為、長期戦になっている感が否めません。森友にしても加計にしても毎回再放送なので、パターンは決まっています。Aさんを国会に呼ぶ→安倍総理が「関わっていない」と証言→気に入らないから「疑惑は深まった。次はBさんを国会に呼んで話を聞くしかあるまい」と追及を続ける。最早収拾不可能だし、誰も着地点が見えていないのではないか? 根本的に安倍降ろしの一環でやっているだけですから、「多分、安倍が何か悪いことをやっているに違いない」という前提で話が進んでいます。しかし、直接の関与が認められる証拠や証言の類が全くないので、曖昧に追及を続けて時間を浪費するばかりです。拉致や核等北朝鮮問題が活発になる中、議題はいくらでもありますし、通常の法案の審議も重要です。はっきりいって時間の無駄なので、疑惑の追及は別の枠を設けてやって頂きたいものです。今月10日、柳瀬唯夫元首相秘書官への参考人招致が行なわれましたが、先程のテンプレート通り、「疑惑は深まった」とマスコミや野党は追及を強める方針です。

立憲民主党の蓮紡副代表も登場。「先ず確認をしますが、貴男の記憶は自在に無くしたり思い出したりするものなんですか?」と、二重国籍問題における自身のコロコロ変わる発言の記憶を自在に無くしたブーメラン発言でインターネット界隈に笑いを提供しつつ、柳瀬氏を厳しく追及していたのが印象的でした。重要な点として、国家戦略特区ワーキンググループ座長の八田達夫氏の参考人としての発言が挙げられます。八田氏によれば、獣医学部新設は岩盤規制の中でも最重要案件であるといいます。何でも規制緩和すりゃいいってもんではありませんが、報道によると、加計学園グループ岡山理科大学獣医学科の入試の倍率は16倍程に達しました。ニーズもあるし、これまで前愛媛県知事の加戸守行氏が述べたように、獣医師不足の四国にあって獣医学部の新設は悲願だった訳です。八田氏は参考人招致で、文部科学省や獣医師会の闇についても触れています。大学や学部を新設する時は、その質を担保する為に、大学設置審による専門家の審査を受ける必要があることが法律で定められています。しかし、文科省の対応はというと、八田氏によれば、「文科省は法律ではなく告示でもって、審査を受ける権利すら奪ったのです。これは日本獣医師会による政治家への働きかけによって、更には全国の既存獣医学部が文科省からの天下り役人を受け入れることによって実現された規制でございます」。これこそ大問題でしょう。そういえば、天下り問題で文科省を辞めた後、加計学園問題で発言している前事務次官がいたような…。野党的な発想で言えば、「疑惑は深まりました」。


KAZUYA YouTuber。1988年、北海道生まれ。2012年、『YouTube』に『KAZUYA Channel』を開設。著書に『日本一わかりやすい保守の本』(青林堂)・『バカの国 国民がバカだと国家もバカになる』(アイバス出版)等。近著に『日本人が知っておくべき“日本国憲法”の話』(ベストセラーズ)。


キャプチャ  2018年5月31日号掲載

テーマ : サヨク・在日・プロ市民
ジャンル : 政治・経済

【政治の現場・揺らぐ一強】(05) “不信”改憲論議に暗雲

20180531 08
首相の安倍晋三が“本題”に触れたのは、講演が終わりに差しかかった頃だった。「憲法に自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とうじゃありませんか」――。先月20日夕、港区芝公園のホテル。自民党総裁として、約800人の党所属都道府県議に向け、こう呼びかけた。党が地方議員向け研修会を企画した最大の眼目は、「憲法改正機運の全国展開」(幹部)だった。3月下旬に纏めた“自衛隊の根拠規定の明記”等4項目の憲法改正案について、組織力を駆使して全国各地に支持を広げる狙いがあった。だが、党執行部が安倍の到着前、憲法に関する講義を行ない、質問を募ると、手を挙げたのは3人だけだった。講演はメディアを入れずに約40分間行なわれたが、安倍はその大半を外交や経済の実績紹介に費やし、憲法改正のメッセージは僅か数分で切り上げた。聴講者の1人はその姿を見て、「会場の空気を察したのだろう」と推し量った。会場の空気を重くしていたのは、不祥事続きで支持率を落とす安倍内閣への不満と不安だ。ある県議は会場を出た後、「来年に統一地方選を控え、皆、腹の中では怒っている。最早改憲どころではない」と本音を語った。

尤も、安倍は改憲を諦めている訳ではない。自民党の憲法改正案作りが佳境を迎えていた3月20日夜。安倍は元衆議院議員の中山太郎ら党の歴代憲法族議員を首相公邸に招き、夕食を共にした。93歳の中山は憲法族の重鎮だ。第1次安倍内閣時代の2007年には、憲法改正の手続きを定める国民投票法の成立に尽力した。「もう少しだ。総理の責任で国会発議に向かってほしい」。中山がこう励ますと、安倍は静かに頷いて、中山と手を結んだ。安倍は2020年の新憲法施行を目指し、①2018年に国会で憲法改正案を議論②遅くとも2019年夏の参院選前に国会発議③2019年秋までに国民投票――という段取りを思い描いてきた。9月の党総裁選で圧勝して憲法改正の推進力とするシナリオに黄信号が灯る中、安倍周辺は「先ずは足元を落ち着かせることが先決だ。それまでは抑制的にならざるを得ない」と語る。実際、自民党の憲法改正案は宙に浮いている。速やかに衆参両院の憲法審査会で議論を始める予定だったが、野党が政府批判を強める中、審査会開催の目処が立っていない為だ。衆議院の審査会で与党筆頭幹事を務める自民党の中谷元は先月19日、与野党の幹事の会合で「5月3日が憲法記念日であり、国民の憲法への関心も高まる。各党の意見を述べて討論できる場が必要ではないか?」と開催を求めたが、野党は拒否した。中谷は25日にも野党筆頭幹事の山花郁夫(※立憲民主党)に電話で働きかけたが、山花は「国会情勢がこういう状況なので」と取り付く島もなかった。安倍が悲願とする憲法改正への歩みは、自らが束ねる政府の不祥事という逆風により、足踏みを余儀なくされている。自民党憲法族議員の1人は、現状をこう分析する。「改憲論議は安倍さんの主導だからこそ活発化したが、安倍さんの主導だからこそ動かなくなった」。 《敬称略》


キャプチャ  2018年5月1日付掲載

テーマ : 政治のニュース
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【政治の現場・揺らぐ一強】(04) 拉致問題、諸刃の剣

20180531 07
韓国大統領の文在寅と『朝鮮労働党』委員長の金正恩が『板門店宣言』に署名した後の一昨日夜。首相の安倍晋三は首相官邸で記者団の前に現れた。「日本が蚊帳の外に置かれる懸念はないか?」と問われると、即座に否定した。「全くありません。トランプ大統領と完全に(対北朝鮮の)基本方針について一致している」。南北・米朝間の対話の動きは、2018年に入って急速に活発化した。3月にはトランプが、韓国政府高官から正恩が早期に会談したい意向であることを伝えられ、「よし、会おう」と即決した。米朝首脳会談は、安倍にとって青天の霹震だったようだ。周囲には「考えていたより早かった」と漏らした。安倍はトランプとの個人的な信頼関係に縋った。今月17・18日の2日間、トランプの別荘があるフロリダ州パームビーチを訪問し、首脳会談3回、夕食会2回、それにゴルフと、計約11時間もの時間をトランプと過ごした。トランプは安倍の要請を受けて、6月初旬までに想定される米朝首脳会談で日本人拉致問題を取り上げることを約束した。「安倍-トランプの蜜月関係が生きた」。政府内にそんな安堵感が広がった。

訪米中、週刊誌でセクハラ疑惑を報じられた財務省事務次官の福田淳一が辞任の意向を表明した。政府関係者は、「満点と言えた訪米の成果の報道が、国内問題で霞んだ」と悔しがった。相次ぐ政府の不祥事等で内閣支持率の下落傾向が続く。政権の推進力だった経済政策『アベノミクス』の効果に陰りが見え、来年10月には消費税率10%への増税が控える。経済に代わる政権浮揚策は、当面、安倍が得意だと自任する外交しか見当たらない。外交には、こんな成功例もある。小泉内閣当時の2002年9月に行なわれた日朝首脳会談の後、本紙の全国世論調査(※定例)で内閣支持率は一気に約20ポイント上昇し、66.1%となった。小泉内閣以来となる日朝首脳会談の実現を模索する安倍は、日朝国交正常化後の経済協力を謳った『日朝平壌宣言』に言及することが増えた。「核やミサイルだけでなく、拉致問題を動かさない限り、北朝鮮への経済協力はしないぞ、ということだ」。安倍は周囲に狙いを語る。トランプとの信頼関係と、経済協力をてこに、拉致問題を進展させようとしている。安倍が拉致問題に初めて触れたのは1988年。自民党幹事長だった父・晋太郎の秘書時代だ。安倍は拉致問題を政治家としての“原点”と位置付け、正面から難題に取り組む姿勢が、国民から強い支持を集めた。それから30年。高齢化が進んだ拉致被害者家族は、未だに解決の道筋が見えず、苛立ちを募らせている。今月22日、拉致被害者家族らが東京都内で開いた集会で、途中退席する安倍に対し、会場からは拍手や声援に混じって、「もう帰るのか」との野次も飛んだ。拉致問題の解決は安倍にとって宿命であり、その成否は政権を左右しかねない諸刃の剣でもある。安倍外交の真価を問われる場面が近付いている。 《敬称略》


キャプチャ  2018年4月29日付掲載

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【政治の現場・揺らぐ一強】(03) “政高党低”変化の兆し

20180531 06
今月13日夕、大阪市天王寺区の焼き肉店で開かれた自民党府議らとの懇親会で、首相の安倍晋三はビール片手に笑顔を絶やさなかった。話題は自ずと、『日本維新の会』が進める大阪都構想に集中した。構想に反対する自民党大阪府連は、安倍が憲法改正で連携を図ろうと、維新関係者との会食を重ねることに不満を募らせていた。維新が「首相官邸は都構想に賛成している」と強気に出る度に、府連は神経を逆撫でされた。だが、安倍は懇親会の席上、あっさりと都構想を否定してみせた。「最近ね、“官邸の意向”って流行っていますから。殆ど言ったもの勝ちになっていますけど。私は全然聞いていないですから」。満座は安堵の笑いに包まれた。スマホを向けていた府議らは、安倍の発言を“確かな証拠”として動画に収めた。府連幹部は「言うことを聞いてくれなかった首相も、総裁選に向けて余裕が無くなったのだろう」と、安倍の胸中を推し量った。“安倍一強”に振り回されたのは大阪府連だけではない。首相官邸を前に存在感が霞む自民党本部も、“政高党低”と揶揄されてきた。政調会長の岸田文雄が昨年8月に就任した直後、安倍は消費増税分の使途変更を掲げた。

10月の衆院選公約の目玉政策が官邸の“トップダウン”で決まり、党の政調機能強化に乗り出していた岸田は「面目丸潰れ」(政調幹部)となった。しかし、内閣支持率低下が続く中、共に9月の総裁選を睨む両者の関係には変化の兆しが見える。「トップダウンからボトムアップへ、政策の視点を変えていくべきだ」。岸田は18日、自ら率いる岸田派のパーティーで語気を強めた。派がパーティーで公表した政策骨子でも、ボトムアップを柱に据えた。安倍の政治手法との決別と映るだけに、岸田から事前に発言内容を聞いた前経済再生担当大臣の石原伸晃は、「ちょっと過激だな」と危ぶんだ。それでも岸田は表現を変えなかった。安倍との対立を避け、禅譲路線を取ってきた岸田が、遂に「反安倍に舵を切ったのか」(石破派中堅)――。党内は色めき立ち、安倍と距離を置く元幹事長の石破茂は翌19日、「(岸田と)似たような方向だ」と秋波を送った。竹下派からも、「ボトムアップという点では岸田派と竹下派は近いものがある」(副会長の船田元)との声が上がった。その裏で、党を仕切る幹事長の二階俊博もじわりと存在感を高めている。『森友学園』・『加計学園』問題等、政府の不手際には「うんざりだ」「しっかりやってもらいたい」と辛口発言を連発し、「政府があって党があるんじゃない。党があって政府があるんだ」と周囲に漏らす。しかし、総裁選での安倍連続3選支持を公言する二階に、安倍が強く出る気配はない。二階はロシアの政府関係者らと会談する為、外遊に出発する前日の25日、官邸を訪れた。安倍は来月の日露首脳会談の地均しとして、ウラジーミル・プーチンと関係が深い元首相の森喜朗を派遣する腹づもりだった。先方の招きで持ち上がった二階訪露の煽りで、森の派遣は立ち消えた。政権浮揚策と頼む対露外交の筋書きが狂った安倍はそれでも、二階に「しっかり頼みます」と声をかけただけだった。 《敬称略》


キャプチャ  2018年4月27日付掲載

テーマ : 政治のニュース
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【不養生のススメ】(14) コーヒー“発癌リスク”の嘘





20180531 05
最近、“コーヒーが癌を引き起こす”というニュースを耳にした読者がいるだろう。ニュースの出どころは、去る3月28日、カリフォルニア州(※以下、CA)上位裁判所の判事による、「CAでコーヒーを売る場合、発癌性のリスクを警告するラベルを表示しなければならない」という判決だ。この判決は、2010年にCAの非営利団体『毒物に関する教育研究評議会(CERT)』が、『スターバックス』や『ダンキンドーナツ』等のコーヒー生産者・流通業者・小売業者91社に対して提起した訴訟による。CERTは、被告が消費者に、コーヒー豆を焙煎した時に生じるアクリルアミドと呼ばれる化学物質に晒されることを警告しなかったことに対して告発した。警告無しで販売したコーヒーは、1カップにつき1日最大2500ドルの罰金が科される可能性がある。昨年10月、『セブンイレブン』は90万ドルを支払い、和解に合意した。因みに、アクリルアミドは紙、染料、プラスチックの製造等に使用される化学物質だ。2002年にスウェーデンの科学者が食品中のアクリルアミドを発見した。アクリルアミドは、穀類、芋類、野菜類等に含まれているアミノ酸と糖類を、120℃以上の高温で長時間加熱することで、“メイラード反応”と呼ばれる化学反応が起きて生じる。ポテトチップス、フライドポテト、パン、スナック、コーヒー等にアクリルアミドが確認されている。メイラード反応の結果、食品の独特の良い香りと味が生まれる。

ところで、CERTの訴訟はCAらしいケースだ。CAは、“プロポジション65”として知られる、1986年に成立した『安全飲料水及び有害物質施行法』という法律の下、癌、又は生殖毒性を引き起こすと考えられている化学物質のリストを作成している。1990年以降、アクリルアミドもプロポジション65のリストに含まれている。州内の10人以上の従業員を抱える全ての企業は、リストにある化学物質を消費者に明確に警告する義務があり、個人や民間の団体は違反した企業を訴えることができる。このケースから、「コーヒーは止めよう」「日本もCAのような規制が必要ではないか?」と懸念する読者もいるかもしれない。プロポジション65の賛成派は、「消費者に危険な化学物質の情報を伝え、危険な毒物から身を守ることに役立つ政策である」と主張する。ところが、多くのアメリカ人は「プロポジション65は行き過ぎた規制だ」と感じている。現在、プロポジション65のリストには、煙草の煙、アスベストやヒ素等の危険な物質から、アスピリン、飲食品用の缶・瓶の成分やアルコールまで、約1000の物質が含まれている。CAに住む筆者の友人は、「癌や生殖毒性を引き起こすことを警告する表示は、誕生日のプレゼントの箱にまで貼ってあった。車、レストラン、病院、ホテル、スーパーマーケット、駐車場、ディズニーランド等至る所にあるせいで、逆に注意を惹かない」「そのうち、表示の素材にも発癌性の警告が必要になるかもね」と笑う。アメリカの月刊誌『ポピュラーサイエンス』は、「コーヒーが癌を齎すと聞いたことがあるかもしれないが、CAに住めば全てが癌を齎す」と皮肉る。実際、CAでの判決にも拘わらず、アクリルアミドが科学的に癌を引き起こすかどうか結論は出ていない。1994年、『世界保健機関(WHO)』傘下の癌専門組織『国際癌研究機関(IARC)』は、動物で行なわれた研究に基づいて、アクリルアミドを“ヒトに対して恐らく発癌性がある”物質(※2A)として分類した。但し、注意すべきことは、IARCの判定は、物質や環境の発癌性の強さや、どれだけの量を摂取すると癌が発症するかというリスクを評価するものではないということだ。その物質に発癌性があるかどうかを、科学的根拠の強さにより5つのグループに分類したものである。『アメリカ癌協会(ACS)』によると、飲料水中に人間が摂取するレベルよりも1000~1万倍も高いアクリルアミドを混ぜて実験動物に与えると、癌のリスクが高まることが示されている。ただ、これまでの研究では、人間において癌のリスクは見い出されず、「アクリルアミドが人間の癌のリスクに影響するかどうかは不明」と結論付けている。それに、“コーヒー=アクリルアミド”ではなく、コーヒーはそれ以外にも沢山の成分を含む食品だ。

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テーマ : 医療・病気・治療
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【不養生のススメ】(13) 安らかに死なせない未熟な日本





20180531 03
多くの日本人が患う癌。病気が進行すると、様々な症状による生活の質の悪化に苦しむ。特に、痛みは最も辛い症状の1つだ。そんな中、1986年に『世界保健機関(WHO)』は、世界中の癌患者を痛みから解放する為に、『WHO方式癌疼痛治療法』というガイドラインを提唱した。その後、痛みの管理は劇的に改善した。ところが、それでも取り除くことができない痛みがある。モントリオール大学麻酔科のグリゼル・バルガス・シェーファー准教授によると、WHO方式癌疼痛治療法によって70~80%の癌患者の痛みが軽減した。言い換えれば、20~30%の癌患者は痛みから解放されていない。また、コロンビア大学医療センター緩和医療サービスのクレイグ・ブリンダーマン所長らの報告によると、入院患者の約40%は、人生の最期の3日間に中等度から重度の痛みを持ちつつ、死を迎えている。現状、痛みで苦しむ終末期の患者には3つの選択肢がある。1つ目は痛みを受け入れ耐えながら死を迎える、2つ目は鎮静を受けながら死を迎える、3つ目は安楽死だ。「痛みは御免、鎮静を受けたい」という読者も多いと思う。筆者も不養生と言われても、人生の最期を痛みで苦しみながら死を待つより、寿命が少し縮んでも、家族や友人に別れを告げて鎮静しながら安らかに死を迎えることはいいのではないかと思う。但し実際、鎮静の定義は曖昧だ。関西で終末期医療に携わる医師は、「日本における鎮静議論は、かなり混乱している」「浅い鎮静、深い鎮静、一時的な鎮静、持続的な鎮静の良し悪しは勿論のこと、開始時の状態に関して様々な意見がある他、安楽死との混同があるので一種、タブーだ」という。

『聖隷三方原病院』緩和支持治療科の森田達也部長は、昨年の『週刊医学界新聞』に、「これまで鎮静と安楽死は、医師の意図(※目的が苦痛緩和の為の就眠か、患者の死亡か)によって区別しようとしてきたが、鎮静と安楽死の間にグレーゾーンが存在することが明らかにされつつある」と指摘する。鎮静と安楽死の区別について、安楽死が合法であるオランダのエラスムス大学医療センターの研究者らによる報告が参考になる。研究者らは、オランダ全域に亘る410人の医師に、深い鎮静211人と安楽死123人のケースについて個人的なインタビューを行なった。ここでは、鎮静は“人工栄養や水分補給無しで、患者が死に至るまで薬物を継続的に投与して、深い鎮静・昏睡状態を維持すること”、安楽死は“死を早める意思がある患者の要求により、致死的薬物を投与すること”と定義される。結果、鎮静と安楽死を選択した患者は、どちらも主に癌患者であったが、鎮静を受ける患者は、安楽死を選んだ患者よりも不安(※37%対15%)と混乱(※24%対2%)を抱いていた。また、安楽死を願う患者は“尊厳を失うこと、改善しない苦しみ”、鎮静を願う患者は“身体的・心理的苦痛”の除去を重視していた。鎮静を受けた患者の38%が24時間未満に、96%は1週間未満に死亡した。一方、安楽死を選んだ94%の患者は1時間未満で死亡した。寿命が短縮したかどうかは、鎮静の場合、短縮無し、或いは24時間未満が40%、1~7日は33%、1~4週は21%、1ヵ月以上は6%と推定された。一方で安楽死は、短縮無し、或いは24時間未満が1%、1~7日は26%、1~4週が51%、1ヵ月以上が22%(※左表)と推定された。つまり、鎮静の場合も医療行為により寿命が短縮する。アムステルダム大学のゴバート・デン・ハルトグ博士は『医学ヘルスケアと哲学』誌に、「深い鎮静は、医師が食物や水を提供しないことを決めている為、安楽死の一種ではないか?」と疑問を投げかけている。東京都内の緩和医療専門医は、「ガイドラインでは、これまで行なっていた水分・栄養補給等は基本的に継続する。ただ、実際は医療者の裁量。点滴を中止したこともあるが、そういう点では予後を短くしようとしていると言われても仕方ない」という。『欧州エンドオブライフ協会』の報告によると、深い鎮静を受けた患者の内、イタリア(※35%)、スウェーデン(※56%)、ドイツとスイス(※60%)、デンマークとオランダ(※64%)は、人工栄養又は水分補給を受けていない。但し、深い鎮静を受けている患者に人工的な水分補給を開始すると、却って浮腫、腹水、気管や気管支の分泌物増加を引き起こして、余計な苦痛を誘発する可能性がある。その為、ハルトグ博士は、「この時点では、深い鎮静で、最早患者の苦しみは無いと仮定しても、人工的な水分補給は考慮するべきではない」と言う。

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【ドクターXは知っている】第2部(18) 解熱鎮痛剤…慢性的な痛みには“お守り”だが常用はダメゼッタイ!

頭痛・歯痛・膝や腰の痛み、また発熱等の症状に広く処方されている解熱鎮痛剤。ロキソニン等、処方薬と同じものが市販薬として手に入る場合もあり、医師は常備薬としての習慣的使用や乱用に警鐘を鳴らす。 (取材・文/フリーライター 浅羽晃)

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患者が直面する苦痛から解放することは、医療の大事な役割のひとつだ。地域密着型のプライマリーケアを提供する『武蔵国分寺公園クリニック』の名郷直樹院長も、「熱を下げ、痛みを軽減するということで、解熱鎮痛剤は効果が非常にはっきりした薬です」と有益性を認める。その上で、「リスクも高い薬であることを認識すべきです」と言う。「特に高齢者は怖いですよ。腰や膝の痛みで整形外科に通い、痛み止めでロキソニンを継続して飲んでいて、ある日突然、腎機能が悪くなるということは稀なケースではありません。副作用である胃潰瘍の出血によって、救急へ運ばれるという人も多くいます」。更に、日常生活に支障をきたす厄介な副作用を引き起こす恐れもある。一般的に頭痛の処方は、緊張性頭痛にはロキソニン等の非ステロイド性抗炎症薬、偏頭痛にはレルパックス等のトリプタン製剤というように使い分けるが、どちらも服用を継続すると薬物乱用頭痛のリスクが高まるのだ。薬物乱用頭痛とは、解熱鎮痛剤の使用過多により引き起こされる症状。通常の頭痛よりも頻度が高く、持続時間も長くなる。多くの場合、薬が原因で頭痛が悪化している事実に気付き難い為、更に痛み止めを飲み、症状を悪化させるという悪循環に陥り易い。治療は原因薬剤の中止が基本だが、その過程で痛みが激しくなるリバウンドが起こる。解熱を目的とする場合も、安易な服用はリスクが伴う。中でも、インフルエンザによる発熱に、ロキソニンやアスピリン等の非ステロイド性抗炎症薬の使用は厳禁。薬がライ症候群やインフルエンザ脳炎・脳症の発症因子となる可能性があるからだ。現在、インフルエンザの解熱にはアセトアミノフェン配合薬が使われるが、抑々インフルエンザでは熱を下げるとウイルスが増殖してしまう。解熱鎮痛剤は根本的な治療となる薬ではないことを心得よう。


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