【ここがヘンだよ日本の野党】(08) 志位和夫に転向のススメ


前略 日本共産党委員長・志位和夫様
退院お祝い申し上げます。頸椎の傷も癒えられ、復帰なさるとの由、心からお喜び申し上げます。安倍晋三総理の自民党総裁選が確実視される中、一強体制が齎す閉塞感は日本を覆い尽くしています。モリカケ疑惑のように、総理のお友だちばかりが甘い汁を吸い、貧富の差は拡大する一方の現状に、多くの国民は不満を募らせています。自民党総裁選挙を前にした世論調査の多くでは、自民党支持者以外の有権者は石破茂氏を安倍総理以上に支持しているではありませんか。対する野党は、『松下政経塾』出身の頭でっかち、嘴の黄色い有象無象が離合集散を繰り返し、全く無力です。閉塞状況を打開できる野党は御党以外にないと深く確信し、我が国とその政治を回天させる秘策をご提示致すべく、この書状を認めました。反共学生だった私は、何を血迷ったのか、1980年代に御党の友党である中国共産党治世の大陸に遊学しました。当時は今から想像できぬほど貧しく、民主集中制と標榜しながら自由も民主もカネもない暗黒大陸でした。一方の我が国はジャパンアズナンバーワン、我が世の春を謳歌、高度経済成長を実現させた自民党こそ正しいと感じざるを得ませんでした。ある夜、同学と安酒を呷りながら青臭い議論をし、「帰国後は自民党に入党する」と酔余の末に口走って、御党を支持する進歩的同学に“総括”されかかったことがあります。しかし、そんな反共・反動であった私ですら、知らず識らずの内に御党に心を奪われているのが、現在の政治状況であります。
2015年9月、委員長は国民連合政府構想を打ち上げられ、1人区での野党統一候補者擁立と独自候補の取り下げという選挙協力に踏み切られました。戦前・戦中・戦後を通じ、一貫して変わることなく戦ってきたと独善的な偽りの看板を掲げてこられた御党が、コペルニクス的大転回をされたのかと大いに目を見張りました。平和憲法施行の際には、受け入れられないとした御党が、今では護憲の守護神を自任されている――。そんな変節に目を瞑っても好感せざるを得なかったのです。2016年参議院選挙で反自民野党勢力は1人区で11勝と、前回の2勝から大躍進したことが、御党への期待が元反動学生だけではなかったことを物語っています。丁度1年前、小池百合子という新たなトリックスターは、反安倍一強支配の民意を見事に集約するかに見えました。しかし、民進党代表の甘さと自身の排除発言から、野党共闘は雲散霧消。一強支配を更に強固にさせただけでした。しかし安倍政権は、高度経済成長を実現し、全国至る所が焼け跡だった敗戦国を20年足らずで世界の一等国に復帰せしめた自民党とは、大きく乖離しています。野党が結集して安倍政権を打倒するしか、この国に未来はない。御党とその前線に立たれている委員長こそキーマンであると確信しております。昨年の総選挙では、野党候補が一本化できていれば84選挙区で逆転可能だったと耳にすれば、その思いは強まるばかりです。金権政治家の代名詞である田中角栄は、味方を増やすのではなく敵を少なくすることこそ政権を握る要諦と心得ていました。今、御党に求められているのは、この角栄精神以外の何物でもありません。御党の友党である中国共産党は、自身よりも圧倒的に強大だった蒋介石率いる中国国民党と国共合作を結び、騙され騙した末に政権を奪取しました。その間には、結党以来の農地解放等の重要綱領を凍結・棚上げしています。これは、御党では最も忌み嫌われる大転向でありました。偽装ではあったかもしれぬこの大転向こそが、政権に導いたのではありますまいか? また、友党は1978年以来、共産主義の看板を下ろさずに改革開放という大転向を遂げて、政権の座を維持。今や世界の誰一人として、友党を共産主義政党とは認めることはありません。そこで以下、具申致すものであります。転向されては如何でしょうか? 御党は戦前・戦中・戦後を通じて、多くの転向者を輩出されました。その多くは各界で成功を収められています。政財界の黒幕で、1960年安保の際には総理の外祖父と対立した田中清玄、経済界から『フジテレビ』初代社長に転じ、マスコミに君臨した水野成夫、そして現在のマスコミのドンにして、総理の指南役である『読売新聞』主筆の渡邉恒雄――。皆、御党からの転向者であります。日本のインテリ中のインテリであり、厳しい党内闘争で鍛え上げられた彼らは、転向することで闘争能力を更に向上させたのですから、功成り名を遂げたのは当然の理です。そして彼ら転向者は、この国を良くしたいとの理想を左右の思想の別なく実現したのです。委員長は東大ご卒業。現在の政党党首の中では屈指の学歴をお持ちになり、その明晰な頭脳は、『ポツダム宣言』を巡る党首討論の論理構成で政界屈指であることが証明されています。また、宮本顕治議長の罷免を求め、分派活動を企んだ東大大学院の同志を粉砕されて頭角を現された実績は、闘争能力の証明でもあります。頭脳・党内闘争の実績とも、先に挙げた先達と遜色ない委員長が転向されれば、先達と同様、いやそれ以上の功績をこの国に捧げられることは間違いないと確信するものであります。