【テレビの裏側】(72) 『水曜日のダウンタウン』、攻めているのにスポンサーが絶えない理由
5月8日に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ系)の企画“新元号を当てるまで脱出できない生活”が、インターネット上で“神回”と絶賛され、SNSのトレンドランキングで関連ワードが1&2位を独占した。この企画に挑戦したのは、2016年に『キングオブコント』でファイナリストとなったお笑いコンビ『ななまがり』。スケジュールに余裕があり、2人とも大卒の為、漢字に関する知識がありそうというのが起用された理由だ。5月8日の回は同企画だけで丸々1時間放送されたが、これは番組史上初の試みだった。「水曜日のダウンタウンは、現在、最もチャレンジングな番組ですね。昨年、お笑いコンビ・コロコロチキチキペッパーズのナダルを番組スタッフが駅前で拉致したところ、本物の誘拐と勘違いされて警察沙汰になったことがありました。それ以来、拉致するスタッフは“只今、撮影中で迷惑をおかけ致します”なんて書かれたフリップを持ち歩くようになりました」(バラエティー番組スタッフ)。同番組では、“水戸なら今でも印籠の効果あるんじゃないか説”という企画が水戸市から訂正を求められ、『放送倫理・番組向上機構(BPO)』に意見書が提出されている。昨年暮れには、『安田大サーカス』のクロちゃんを遊園地に監禁&一般公開するという企画を生放送。視聴者が遊園地に殺到し、大渋滞&騒音問題で再び警察が出動する事態となっている。
コンプライアンスが厳しくなる昨今、これだけトラブルを起こせば即刻打ち切りとなりそうなものだが、「打ち切りどころか、『スポンサーになりたい』と希望する会社が後を絶たない」と広告代理店関係者は語る。「水曜日のダウンタウンのスポンサー企業の商品がよく売れているんですよ。CM効果がかなり高いので、『警察沙汰だけ回避してもらえたら、攻めた企画も問題ない』と理解を得られているのです」。CM効果の中で、とりわけ最近注目されているのが“視聴者層”だ。視聴者数と視聴世代のデータを集めている『AbemaTV』等のインターネットTVは、特に視聴者層を意識しているという。「一番、インターネット広告に力を入れているのがトヨタ自動車。若者の車離れが叫ばれているだけに、若者にバズる企画であれば投資は惜しまない方針だそうです。AbemaTVでは、トヨタ自動車がスポンサーについてくれそうな若者向けの企画を常に募集していますね」(放送作家)。前回も指摘したように、視聴率至上主義の時代は終わりつつあるのだ。問題は「キー局幹部に新しい波をキャッチできていない人が多数いる」ことだと、制作会社スタッフが嘆く。「兎に角、バズればいいんだと思い込んでいて、『話題になることをやれ!』と変な仕掛けを提案する人がいますね。バズるのと炎上するのとは紙一重なんですけどね…。『SNSのフォロワー数が多いタレントや放送作家を使えば話題になる』と思い込んでいるプロデューサーもいる。で、然程話題にならないと『アイツは意外と人気ないな』と文句を言う。最早邪魔でしかないですよ」。嘗て時代の先端にいた地上波のテレビマンが、変化の波を掴めていないのは何とも皮肉である。
2019年6月7日号掲載
コンプライアンスが厳しくなる昨今、これだけトラブルを起こせば即刻打ち切りとなりそうなものだが、「打ち切りどころか、『スポンサーになりたい』と希望する会社が後を絶たない」と広告代理店関係者は語る。「水曜日のダウンタウンのスポンサー企業の商品がよく売れているんですよ。CM効果がかなり高いので、『警察沙汰だけ回避してもらえたら、攻めた企画も問題ない』と理解を得られているのです」。CM効果の中で、とりわけ最近注目されているのが“視聴者層”だ。視聴者数と視聴世代のデータを集めている『AbemaTV』等のインターネットTVは、特に視聴者層を意識しているという。「一番、インターネット広告に力を入れているのがトヨタ自動車。若者の車離れが叫ばれているだけに、若者にバズる企画であれば投資は惜しまない方針だそうです。AbemaTVでは、トヨタ自動車がスポンサーについてくれそうな若者向けの企画を常に募集していますね」(放送作家)。前回も指摘したように、視聴率至上主義の時代は終わりつつあるのだ。問題は「キー局幹部に新しい波をキャッチできていない人が多数いる」ことだと、制作会社スタッフが嘆く。「兎に角、バズればいいんだと思い込んでいて、『話題になることをやれ!』と変な仕掛けを提案する人がいますね。バズるのと炎上するのとは紙一重なんですけどね…。『SNSのフォロワー数が多いタレントや放送作家を使えば話題になる』と思い込んでいるプロデューサーもいる。で、然程話題にならないと『アイツは意外と人気ないな』と文句を言う。最早邪魔でしかないですよ」。嘗て時代の先端にいた地上波のテレビマンが、変化の波を掴めていないのは何とも皮肉である。

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