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【石井ふく子の「世間の渡り方」】(26) 社会的距離という“溝”

新型コロナウイルスにはうんざりです。13歳の時に結核に罹り、治るまでに1年半かかりましたが、その経験より辛い。結核はいつ頃治るのか見当がつきましたし、治療法もわかっていましたが、新型コロナウイルスはわからないことばかりだからです。正体がよくわからないまま、世界中に広まり、大勢の方の命を奪いました。緊急事態宣言後に感染者が減り、これで一安心なのかと思ったら、全然違った。予測がつかないので、必要以上に不安な気持ちになります。「こんな病気なんだ」「こうすればいいんだ」とはっきりすればいいんですが、テレビ等で発言する方の解説はバラバラ。「第2波は秋に来る」と言う方もいれば、「もう来ている」と断言する方もいます。深刻に捉えている方が殆どであるものの、楽観視されている方もいる。ここまで四分五裂の状態では、誰の言葉を信じていいのかわかりません。だから余計に怖くなるのです。今でも無暗に出歩かないようにしています。自分が罹るのが怖いのも然ることながら、感染を広めてしまっては申し訳ないですから。外に出掛けるのは整体の時くらいです。次のドラマの準備は家の中で始めています。プロデューサーの仕事は電話である程度はできるのです。勿論、本当は電話で済ませたくありません。脚本家とのドラマの中身の打ち合わせを電話で行なうのは難しいですし、役者さんへの出演交渉も電話では失礼にあたります。お会いしてお願いするのが筋だと思っていますので、違和感を抱くばかりです。それでも今は誰とも向き合えません。会うことを望むと、相手に迷惑をかけてしまう。スタッフ同士も同じ。どのテレビ局も感染防止に懸命です。収録現場のスタッフはシールドを付けて作業をしていますし、なるべく人と人が近付かないようにしています。コロナ禍でドラマの中身も変わっていくでしょう。ラブシーンは勿論できませんし、ハグもいけない。握手も駄目。でも、私の作品はホームドラマなので、極力変えないつもりです。勿論、役者さんにはマスクを外して登場してもらいます。

これは、どのドラマも同じだと思いますけどね。役者の顔がマスクで隠れてしまったら、味気ないです。その上、眼鏡をかけたら、まるで変装ですよ。誰だかわからなくなってしまいます。だけど、変えなくてはならないところも出てくるでしょう。『渡る世間は鬼ばかり』(TBSテレビ系)の場合、中華料理店の『幸楽』と食事処の『おかくら』は、世間と同じようにお客さんを減らさざるを得ないと思います。幸楽は出前を増やすことになるでしょう。おかくらも弁当の販売を始める。テイクアウトです。でも、登場人物たちが感染で苦しむ姿など視聴者の方も見たくないでしょうから、あくまで小さな変化にとどめるつもりです。気が滅入ることばかりの日々の中で、楽しみは電話でのお喋り。懐かしい方も含めて、沢山の方から電話を戴きます。連日、2~3時間も電話でお話ししています。脚本家の橋田壽賀子さんとは毎日です。コロナ禍のせいか、それとも年齢のせいなのか、このところ橋田さんは少し弱気になっているので、私はいつも怒っているんです。橋田さんに厳しいことを言えるのは私だけですから…。この間も「最近は書かなくていいから、気が楽よ」等と気弱なことを口にしたので、「嘘よ。未だ書きたいでしょ」と言い返しました。それでも橋田さんは反発しませんでした。コロナ禍の前なら「もう電話なんかくれなくてもいい」とひねくれることもあったのですが、今は「また電話ちょうだいね。元気が出るから」って。コロナ禍のせいで人と会えないから、淋しいのでしょう。そんな私も、「橋田さんに電話しなきゃ」と毎日思っています。目に見えず、正体も完全にはわかっていないウイルスを相手にしていると、気が付かないうちにイライラしがちですが、そうするとトラブルに巻き込まれ易い。防止や予防は勿論、大切です。しかし、お仕事や日常生活で、社会的距離から“溝”が生まれているような気がします。思いがけない事件や事故も増えている。コロナ禍によるイライラのせいで寛容さや冷静さが失われてしまい、我慢ができなくなっているせいでもあると思います。普段なら笑って済ませられることが、そうできなくなっている。だからこそ、いつかは日常が戻って来ると信じ、焦らない気持ちを持ち続けることが必要だと思っています。


石井ふく子(いしい・ふくこ) テレビプロデューサー・舞台演出家。1926年、東京都生まれ。東京女子経済専門学校(現在の新渡戸文化中学校・高等学校)を卒業後、『新東宝』の女優等を経て、1950年に『日本電建』へ入社して宣伝部で務める。1961年に『東京放送(TBS)』へ入社。プロデューサーとして『肝っ玉かあさん』『ありがとう』『渡る世間は鬼ばかり』等、数々のホームドラマをヒットさせる。1985年に「テレビ番組最多プロデュース」(1007本)、2014年に「世界最高齢の現役テレビプロデューサー」(87歳342日)、2015年に「舞台初演作演出本数」(183作品)でギネス世界記録に認定。2014年4月より淑徳大学人文学部表現学科客員教授に就任。


キャプチャ  2020年9月12日・19日号掲載
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テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

【村西とおるの「全裸で出直せ!」】(69) 監督といえば野村だ長嶋だ黒澤だなんて片腹痛いというの…監督といえば村西とおる

彼女の部屋に足を踏み入れました。10畳程の広さのワンルームの室内は、女の子らしいピンクの色調で華やかに飾られてありました。彼女の好きな匂いなのでしょう、男心を擽る甘い香水の香りが漂っています。部屋の奥には、ピンクのカバーがかかったセミダブルサイズのベッドが置かれていました。彼女に誘われるままに部屋を訪れた以上、そのベッドの上で然るべき性愛のパフォーマンスを行ない、責務を果たして一刻も早く立ち去ることを考えたのです。彼女から「部屋に遊びに来てほしい」と望まれてから半年程経っていました。彼女とは、彼女が“処女喪失ビデオ”に出演してからのおつきあいでした。撮影が終わってビジネスライクに関係も終えたつもりでしたが、ビデオの中とはいえ、“処女を捧げた男”への彼女の執心は、尋常なものではありませんでした。1週間に二度、三度、また会ってほしいとの連絡が入ったのです。正直なところ鬱陶しく感じましたが、初めての男への乙女心だろうと優しく接することを心がけていました。全ては時間が解決する筈と、甘い考えを持っていたのです。が、彼女は諦めませんでした。「一度でいいから私の部屋に遊びに来てほしい」とせがみ続けたのです。「一度きりなら」と心が動きました。それほど惚れているのなら…との浮いた“男前の”気分もありました。

そしてその日、お別れのセックスをするつもりで彼女のマンションを訪れたのです。が、目を凝らして室内を見れば、自分は危険な立場に追い込まれていることを知りました。壁という壁に、数十本の包丁が突き刺されてあったのです。その包丁の先は、私の事務所に所属する女優たちの雑誌のグラビア写真に突き刺され、壁に貼られていました。部屋の壁一面が、まるで包丁の密林のような風景になっていたのです。不気味でした。身の危険を感じたのです。振り向けば、そこに目から妖しい光を放つ部屋の主人の彼女がいました。数分前、私を部屋に迎え入れた時に見せていた可憐な表情とは打ってかわって、何かに取り憑かれたような形相の彼女の手には、長さ30㎝程の出刃包丁が握られていたのです。それを目撃した瞬間、「ギャア!」と声にならない声を上げると同時に、出口の扉に向かい、一目散に駆け出していました。背中で「キィー!」という彼女の奇声が上がり、何かが肩を掠めた感触がありました。包丁の先であることは間違いありません。“空を飛ぶように”とは、あの時の懸命な自分の体の動きを言うのでしょう。素早い足の運びは、確実に100mを人類初の9秒を切る程のものではなかったでしょうか。暫く外を走り、上着を脱ぐと、肩口の部位がスパッと切り裂かれていたのです。


村西とおる(むらにし・とおる) AV監督。本名は草野博美。1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売や英会話教材のセールスマン等を経て裏本の制作・販売を展開。1984年からAV監督に転身。これまで3000本の作品を世に送り出し、“昭和最後のエロ事師”を自任。著書に『村西とおるの閻魔帳 “人生は喜ばせごっこ”でございます。』(コスモの本)・『村西とおる監督の“大人の相談室”』(サプライズBOOK)等。


キャプチャ  2020年9月24日・10月1日号掲載

テーマ : 人生を豊かに生きる
ジャンル : 心と身体

【大手町企業研究会】第1部・ソフトバンクグループ(05) “孫頼み”脱却なるか

20200930 07
「一人の天才が地球を、人類を救う。私はあり得ることだと思っています」――。『ソフトバンクグループ(SBG)』会長兼社長の孫正義は今月1日、オンライン画面越しに約140人の大学生らに語りかけた。4年前、優れた才能を持つ若者の支援の為に財団を設立しており、節目には激励の言葉を贈る。これまでに10億円超の私財を投じ、219人に留学費を提供する等してきた。孫は19歳の時、“人生50ヵ年計画”を作った。20代で名乗りを上げ、30代で軍資金を貯める。40代でひと勝負をかけ、50代で事業を完成させる。そして、60代で事業を継承する――。今日11日に63歳を迎える孫は、“次世代への投資”に力を入れる。先月末、東京大学とAI分野の共同研究を始めたのもその一つ。グループとして今後10年間で最大200億円を出資すると表明した。教育活動に熱心な一方で、肝心の事業継承に対する意欲は薄れているように見える。後継者育成を目指して始めた『ソフトバンクアカデミア』は、今年で10年を迎えた。学んだのは20~30代の社員や外部経営者を中心に約670人に上るが、意中の人物は明らかにならない。2014年には『グーグル』出身のニケシュ・アローラを後継者候補として迎え入れ、翌年、副社長にした。「本当のグローバル企業にならなければならない」。側近だった元衆議院議員の嶋聡は、移動車の中で孫が繰り返していた言葉が、ニケシュの登場で腑に落ちたという。

だが、「もうちょっと社長を続けたい欲が出た」と一転して社長続投を決め、僅か2年でニケシュは去った。支払った報酬や退職金は300億円を超える。今年6月の株主総会では、「69歳の誕生日を過ぎたら退場とは言わないでほしい」と、70代での続投宣言まで飛び出した。元社長室長の三木雄信は、「孫は逆境に燃えるタイプ。新型コロナウイルスで世界が変わり、自分が先頭で引っ張るという思いを強めている」と見る。「SBGの最大のリスクは孫正義だ」――。元側近や金融機関の関係者らは口を揃える。SBGの取締役会では、名物経営者が離れる動きが目立つ。『ユニクロ』を展開する『ファーストリテイリング』会長兼社長の柳井正は、孫のお目付け役として18年間名を連ねたが、昨年12月に退任した。中国IT大手『アリババ集団』を一代で築き上げた馬雲(※ジャック・マー)も13年間在籍し、今年6月に退任した。「孫に強くNOと言える人がいなくなった」。嶋は危惧する。SBGは6月、取締役13人の内、社外取締役を2人増やして4人とした。それでも、ガバナンスへの懸念は社内外に根強くある。外資系金融機関の幹部は、こう不安を口にする。「色々なアイデアが日々飛び交い、社長の一存で全て変わる。掴みどころがない」。SBGの子会社は今や1400を超え、世界で8万人の社員を抱える。孫が独断に走れば巨艦を揺るがし、市場にも影響を及ぼしかねない。40年程前、カネも実績もなかった創業時に手を差し伸べてくれた10人(※故人含む)を、孫は“恩人”と呼ぶ。毎年5月に感謝の日を設けてSBGの休日とし、胡蝶蘭等を贈る。その一人、元『上新電機』常務取締役の藤原睦朗は、こう話す。「主力となった投資事業は孫でなければ引っ張れない。だからこそ、志を伝え、共感を得る努力を続けなければいけない」。“孫頼み”を脱却できるか。グループは大きな経営課題に直面している。 《敬称略》


キャプチャ  2020年8月11日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【大手町企業研究会】第1部・ソフトバンクグループ(04) 携帯電話事業が屋台骨

20200930 05
ソフトバンクといえば、スマートフォンを思い浮かべる人が多いだろう。『ソフトバンクグループ(SBG)』の本業の儲けを示す営業利益を見ると、投資事業が大きく増減するのに対し、子会社の携帯大手『ソフトバンク』は毎年5000億~1兆円を稼ぐ。コロナ禍で揺れた4~6月期、携帯電話端末の販売台数は前年同期より16万台少ない。物販関係に限ると、売上高は約300億円減った。それでも、携帯電話子会社の売上高は0.7%増、営業利益は4.1%増と堅調だった。最大の理由は、通信料を中心にした利用料収入にある。ソフトバンクのスマホの契約件数は2400万件。携帯電話市場でのシェアは24.9%を握る。契約者から毎月、安定的な収入があり、4~6月期も約4120億円と前年並みの水準を確保した。「端末を売らなくても設かる」。業界関係者が明かすのも頷ける。「この環境下でも事業を伸ばすことができる。自信が湧いてきた」。ソフトバンク社長の宮内謙は余裕の表情を見せる。2022年度には“営業利益1兆円”を達成する新たな目標を掲げた。SBG会長兼社長の孫正義にとっては、最大の孝行息子である。携帯電話事業は孫と宮内が二人三脚で育ててきた。2006年4月に買収したイギリスの『ボーダフォン』の日本法人で、孫が社長、宮内が副社長に就いた。孫が展望を示し、宮内が具体化する間柄と言われる。買収から半年後、孫は早速、『NTTドコモ』と『KDDI(au)』に“宣戦布告”する。「どこの割引が一番安いかという議論はもう終わり」「他社が対抗値下げした場合には、24時間以内に更に値下げを発表する」。こう公言していた孫は、午前2時、3時に担当者にメールで指示を出す程で、東京都内の本社は当時、“不夜城”と呼ばれていたという。

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実際に他社の料金プラン改定を受け、即座に対抗策を打ち出した回数は10回以上に上った。2007年に導入した『ホワイトプラン』では、月額980円でソフトバンク同士の通話やメールを原則無料にし、契約数を大きく伸ばした。シェア拡大には、『Apple』の『iPhone』も貢献した。孫はアメリカでApple共同創業者のスティーブ・ジョブズに直談判し、2008年の日本独占販売に繋げた。だが、激しいシェア争いは様変わりした。ドコモ・auと並ぶ3強の一角に定着し、近年、嘗てのような大胆な値下げは見られない。安さ重視の客層を取り込む役割は、グループの格安ブランド『ワイモバイル』と『LINEモバイル』に託す。ライバル社の首脳は、こう皮肉る。「ソフトバンクは2018年に上場してから、投資家の視線を気にして無理をしなくなった」。ここにきて、“無風”の業界に再び波が立ち始めた。今年4月、『楽天』が携帯電話事業に本格参入した。一代で楽天を築いた会長兼社長の三木谷浩史が、月額2980円という安さで殴り込みをかけた。その姿は、嘗ての孫と重なる。自前の通信ネットワークは、地域がごく僅かに限られる。技術力もはっきりしない。「決定的に大きな脅威になるとは思えない」。宮内はこう分析するが、将来的に値下げ競争が激しくなるとの見方は根強い。携帯電話大手3社の収益力は高い。売上高に占める営業利益の割合(※営業利益率)は20%前後と日本企業の中でもトップクラスで、儲け過ぎ批判が付き纏う。総務省も、3社が実質的に利益を分け合う現状を“協調的寡占”と問題視する。競争を促そうとする政府の圧力は当面避けられないとみられる。通信業界は高速・大容量通信規格の5Gに主戦場が移り始めている。サービスの質や多様性がより問われる。携帯電話子会社がグループの屋台骨を支え続けられるのか、予断を許さない。 《敬称略》


キャプチャ  2020年8月9日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【大手町企業研究会】第1部・ソフトバンクグループ(03) 決済から宅配、一本化

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投資会社としての色合いを強める『ソフトバンクグループ(SBG)』にも、力を入れる実業がある。その一つが、スマートフォンによるキャッシュレス決済、100億円還元で話題を集めた『ペイペイ』だ。『ヤフー』の運営会社『Zホールディングス』は7月末、主要な金融サービスの名称をペイペイに統一していくと発表した。『ジャパンネット銀行』が『ペイペイ銀行』に、『ヤフー保険』が『ペイペイ保険』に変わる。金融サービスの総ペイペイ化は、スーパーアプリ構想の実現に向けた一環として位置付けられる。コンビニでの買い物から食事の宅配、インターネット通販等、生活に関わる多種多様なサービスを、一つのスマートフォンのアプリで完結させる。これをスーパーアプリと呼ぶ。ペイペイはその中心となる。サービスの決済手段になれば、手数料収入だけでなく、利用者の購買情報が手に入る。「知名度のあるペイペイの名前が付くと、利用者にとっては安心感に繋がる」。あるキャッシュレス決済業者は警戒感を示す。だが、銀行も保険も証券も其々の分野での存在感は大きくない。例えば、ジャパンネット銀行の口座数は470万で、『楽天銀行』や『イオン銀行』等に比べて見劣りする。金融サービスの質を高められるかが課題となる。

2018年6月のペイペイ設立は、SBG会長兼社長の孫正義が主導した。既にこの時、視線の先にはアジアで次々に誕生するスーパーアプリの姿があった。中国の巨大IT企業『テンセント』が提供する『ウィーチャット』は、中国や東南アジアで利用者が10億人を超えるとされる。ペイペイのシステム開発では、インドで人気のスマホ決済アプリ『Paytm(ペイティーエム)』の技術者を招いた。新興企業向け投資ファンド『ソフトバンクビジョンファンド(SVF)』の投資先である。ゼロから事業を始めるより、輸入したほうが手っ取り早い。狙い通り、設立から僅か4ヵ月でサービス開始にこぎつけた。ペイペイ社長の中山一郎は、こうしたビジネスの取り込みを“兎ジャンプ”と呼ぶ。そのペイティーエムも、中国でスーパーアプリ『アリペイ』を展開する中国IT大手『アリババ集団』の出資を受けた。アリババはSBGの重要な出資先の一つだ。孫は、グループの企業同士が連携して成長する戦略を描く。ペイペイを核にしたスーパーアプリ構想は、その試金石と言える。ヤフーは来年3月頃、『LINE』との経営統合を予定する。LINEもキャッシュレス決済を手がけ、両社はスーパーアプリの実現に意欲を示す。主導したヤフー社長の川辺健太郎は、孫の愛弟子の一人。2000年に取締役を務めていたIT企業が、孫が会長だったヤフーと合併したのを機に関係が生まれた。LINEとの統合では一度だけ孫に相談し、「スピーディーにやるべきだ」と全面的な賛意を得たという。それでも、海外の巨大IT企業との規模の違いは歴然としている。ヤフー&LINEが統合後に研究開発費を年1000億円まで増やす計画であるのに対し、GAFAの一角である『Amazon.com』は3兆円を超える。スーパーアプリの日本での実現を疑問視する見方も根強い。立教大学ビジネススクール教授の田中道昭は、「小売店や銀行のサービスがしっかりしている為、インターネット通販の必要性が海外に比べて低い。中々難しいのではないか」と分析する。中山も、「未だ道半ばにも至っていない」と認める。孫は、SBGの投資事業を「単なるマネーゲームではない」と説く。目に見える実業に結び付けられるか。成否は未だ見えない。 《敬称略》


キャプチャ  2020年8月7日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【大手町企業研究会】第1部・ソフトバンクグループ(02) 大型投資、巨額の借金

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「何が起きているんだ」――。コロナショックが広がる最中の3月19日、『ソフトバンクグループ(SBG)』の株価が2600円台と、僅か1ヵ月でほぼ半減した。CFOの後藤芳光は、値動きを示すチャートに険しい眼差しを向けた。1株当たりの価値を高める為、5000億円の自社株買いを発表したのに、歯止めはかからない。翌20日からの3連休、会長兼社長の孫正義と外国人副社長2人、後藤の4人による緊急幹部会が昼夜を問わず、断続的に開かれた。「追加の対策が必要です」。後藤は孫に迫った。連休明けまでに、1年間に4.5兆円の保有資産を売却し、手にした現金を借金返済等に充てる計画を纏め上げ、株価は漸く反転した。会議では“上場廃止”まで俎上に載った。言い出したのは孫だ。これまでに何度か「上場を止めたほうが面倒な手続きがなくなる」と周囲に漏らしている。SBGの株価急落は、買収され易くなったことを意味する。「孫には、子供のように育てた会社を奪われる恐怖があったのではないか」。大手証券幹部は、こんな見方を示す。孫を止めたのは後藤だった。「上場を維持したほうが、資金調達等で大胆な戦略が取れます」。上場廃止案は立ち消えになった。SBGはこれまで、借金をてこに大型投資や買収を繰り返してきた。上手くいっている時はいい。しかし、一度逆回転に入れば資産の損失が膨らみ、経営不安に繋がりかねない。SBGの3月末時点の有利子負債は8兆円に上る。危うさが付き纏う経営手法と財務体質への不安が、株価の急落を招いたと言っていい。

20200930 03
借金をして積極的に事業を拡大する手法を、日本企業の多くは好まない。これに対し、後藤は「上場企業のリスクを取らない無借金経営は悪だ」と言い切る。SBGは、中国IT大手『アリババ集団』の株式を約16兆円分保有する。出資額は約20億円なので、殆どは含み益になる。アリババ株を売却すれば資金繰りが行き詰まることはないとの自信があるのだろう。だが、取引銀行の一部からは「これ以上、貸すことはできない」との声が出始めている。SBGが注力する『ソフトバンクビジョンファンド(SVF)』の投資先の大半が未上場で、実態が見え難いこと等が理由だ。SBGは市場でも巨額の資金を調達している。1995年以降、計9兆円分の社債を発行し、保有する個人投資家は60万人を超える。実務を担う後藤の右腕で、キャピタルマーケット部長の川村玲子は、日本企業として最大規模の社債調達を成功させた“ボンド(※債券)ガール”と称される。財務戦略の礎は、後藤を連れて2000年に『安田信託銀行』(※現在の『みずほ信託銀行』)会長から転じた故・笠井和彦が築いた。「この会社は信用を作るところから始めなければならん」と繰り返し、銀行等に対して有言実行を重ねてきたという。孫のご意見番でもあった笠井の思いは継承されているのか。昨年、SBGが海外子会社の株式をグループ内で移動させ、巨額の損失を作り出して税負担を減らしたことが批判を浴びた。税制改正のきっかけにもなり、財務省幹部は「行き過ぎた節税は国民の理解を得られない」と憤る。今月には、国税当局から、2019年3月期の税務申告で約400億円の申告漏れを指摘されていたことも判明した。 投資事業への傾倒で、SBGの財務戦略は複雑さを増す。築き上げた信用が揺らげば、巨大化したグループの行方は盤石とは言えない。 《敬称略》


キャプチャ  2020年8月6日付掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

中国の新型コロナウイルス水際対策に航空各社から不満の声



20200930 01
新型コロナウイルス感染者の国外からの流入を水際で防ぐ為、中国民用航空局が導入したサーキットブレーカー措置に疑問符がついている。中国は3月以降、全ての航空会社に対し、国際線は1社1路線、週1往復の運航に制限してきた。これを段階的に回復させる為、6月に新たな仕組みを発表。入国時のPCR検査で陽性の乗客が3週連続ゼロであれば週2往復への増便を認める一方、陽性の乗客が5人以上なら1週間、10人以上なら4週間の運航停止になる。初期の運航停止はダッカ―広州便にとどまり、“効果あり”と見られたが、7月にはタイの航空会社の2路線でサーキットブレーカーが発動された。8月には上海とアブダビ等を結ぶ3路線で陽性者が規定をオーバー。特にコロンボ―上海便は乗客23人が陽性だった。だが、出国者の感染管理は本来、各国の衛生当局が責任を負う話であり、航空会社のできることは体温検査が精々。東南アジアの航空会社関係者は、「賞罰のように便数を増減させる中国のやり方は間違いだ」と憤る。

                    ◇

インドが8月9日、軍事機器の輸入を段階的に制限していく方針を明らかにした。国内における武器製造力を高めることを目的とする。インドは世界第2位(※2019年)の武器輸入国であり、ナレンドラ・モディ首相は以前から武器の輸入依存に警鐘を鳴らしていた。ラジナート・シン国防大臣によると、禁輸の対象は、高度技術兵器システム、アサルトライフル(※突撃銃)、大砲、輸送機、軽戦闘機ヘリコプター等を含む全101機器で、2020年から2024年にかけて積極的に国内生産に切り替えていく。『ロイター通信』によると、今年6月にインド軍と中国軍が国境地帯で衝突して以来、インドの武器購入は加速していた。7月にはロシア製戦闘機を33機購入し、他59機をアップグレードした。今回の政策は、武器輸入依存からの脱却と同時に、新型コロナウイルスの拡大を受けて自国経済を上向かせる目的もあるようだ。

                    ◇

香港での国家安全法施行により、同地の外国報道機関駐在員へのビザ発給については、中国本土から派遣された国家安全部門が実質的に判断することとなった。これまで、香港の入管当局が外国人記者のビザ申請について取り扱ってきたが、今後は当局に新たな国家安全班が増設される。ここが、今後設置される中国本土からの事実上の出先機関と連携していくとみられている。既に現地メディアへの弾圧は始まっているが、今後は外国メディアもターゲットになるとみられ、『香港外国特派員協会』等が反発している。今後は国際社会からも批判を浴びそうだ。

                    ◇

中国人民解放軍が大学でのリクルートを強化している。人民解放軍では近年、農村部での青年層の減少等から新兵獲得が難航したことで、大学卒業生の獲得に力を入れてきた。上海市内の募集拠点では、新兵の内に占める大卒者の割合が2006年に17%だったが、2018年には90%に達した。今年は新型コロナウイルスの影響により、企業の採用状況が不透明だ。一方で、大学卒業生も874万人と過去最多になる見込みの為、買い手市場になることが期待される。軍にとってはコロナ禍が“追い風”になる。

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テーマ : 中朝韓ニュース
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【創価学会は今】(18) 60年前の映像を全国の会館で…“池田大作が蘇った”作戦で選挙へ突入



20200929 05
巨大宗教団体『創価学会』の池田大作名誉会長の第3代会長就任60周年記念映像上映会が、7月10日から始まった。全国各地の会館で順次開かれているというが、狙いは何か。「記念映像の中身は、1960年5月3日、両国の日大講堂で行なわれた池田氏の会長就任式の模様を中心に、第2代会長・戸田城聖氏の遺訓や構想を受け継いだというものだ。創価学会は、これまで新型コロナウイルスの影響で、2月中旬以降、会館や集会での活動を自粛してきたが、愈々動き出したということだ。目的は秋にも予想される総選挙へ向けた活動であり、全国の婦人部・壮年部に対する士気を高めようとするものであることは間違いない」(学会元幹部)。映像のタイトルは『指揮はわれにと 不滅の第三代会長就任式』。池田氏は、全国の代表者約2万人が集まる中、「若輩ではございますが、本日より、戸田門下生を代表して広宣流布を目指し、一歩前進への指揮を執らせて頂きます!」と宣言した。元気溌剌な池田氏の姿は流石に迫力があるが、何故今、会長時代の映像を流すのかと疑問を抱く学会員は多い。東京都内在住の現役学会員は、「池田先生のお元気な姿に、熱いものがこみ上げてきたが、そうであればあるほど、現在、先生が闘っている病気が心配になる」と洩らす。池田氏は既に今年1月、92歳を迎えているが、健康状態の悪化が言われてもう10年以上になっているのだ。原田稔会長は“記念映像”の上映にあたって「池田先生のお心を学ぽう」と言ったが、2030年の学会創立100周年を強調することも忘れなかった。明らかに池田氏“Xデー”後の学会の在り方を模索しているのである。

このところ、学会は“人間主義の世界宗教”を前面に押し出す。作家の佐藤優氏は「創価学会SGIは、キリスト教、イスラム教と共に将来、三大宗教になるだろう」と学会系メディアで盛んに喧伝しているが、SGIを中心に学会を平和団体に変えていこうとする原田会長ら執行部の“布石”ではないか。『YouTube』等を通じて、池田氏に関するプライベートな写真や夫人や息子たちのファミリー写真等も出ている。これまで学会幹部も見たことがないような写真や映像を敢えて出すことで、先の記念映像同様、学会員の活動を鼓舞する狙いが隠れているようだ。来年夏には公明党・創価学会が天王山と考えている東京都議会選挙が控えている。秋の衆議院解散→総選挙はできれば避けたいものの、衆院選と都議選の時期をできるだけ離したい創価学会は、「しぶしぶ総選挙の準備に入った」(全国紙政治部記者)とみられている。それが公明党の代表選にも影響している。任期満了に伴う公明党代表選は9月に行なわれる予定だが、山口那津男代表(68)の7選が有力視されている。山口氏はこれまで「世代交代を図っていきたい」と言ってきたが、衆議院解散の可能性が高まったことで、党の顔は変えられない情勢だ。「山口代表は前代表の太田昭宏氏からバトンを受け、2009年から既に6期11年の長期在任期間となる。しかもその間、無投票で再選を繰り返してきた。だが、昨年の参院選では比例区の得票数を前回の2016年より100万票以上減らし、650万票まで落ち込んでしまった。池田大作氏がしっかりした判断ができれば、とっくに責任論に発展していた筈だ」(元公明党関係者)。公明党の国会議員や地方議員は、議員在任中に69歳か在職24年を超えてはならないとする内規があるにも拘わらず、例外も多い。公明党を創設した池田氏の思いとは明らかに違うのだ。創価学会内には、保守主義色の強い安倍晋三首相に批判的な勢力もいる。特に憲法改正論議やカジノを含む統合型リゾート実施法等では、「山口代表はもっと強く反対すべきではないか」との意見も出ている。前出の元公明党関係者は、「安倍政権が続いている限りは、山口代表で行くしかない。次の政権になれば、石井啓一前国土交通大臣が代表になることはほぼ確実だ」とみる。だが、学会の機関紙『聖教新聞』ではこのところ、頻りに公明党が政権の最前線に立って活躍していると喧伝する。これも、学会員を選挙マシーンとしてフル稼働させる為である。例えば、同紙の座談会では、婦人部幹部が「公明党の山口代表が安倍首相に直談判して実現した、この給付金(※一律10万円)について『公明党のおかげで家計が本当に助かった』との喜びの声を各地で聞きます」と称賛していた。新型コロナウイルス対策では、長谷川重夫理事長が「実は、(政府の)専門家会議は、今年2月14日、公明党が政府に設置を提案したものです」と明らかにしている。嘗てなら「政教一致だ」と批判されたことが、今や堂々と学会内で話されているのだ。

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テーマ : 創価学会・公明党
ジャンル : 政治・経済

【地方銀行のリアル】(42) 愛知銀行(愛知県)――女子行員による現金窃盗事件の余波



20200929 07
「犯行の手口といい、直接の逮捕容疑といい、前代未聞の事件ではないか」――。コンプライアンス部門に籍を置くメガバンク関係者の一人は、こう呆れ返る。勤務先から現金500万円を盗んだとして、『愛知銀行』の女性行員(※当時60)が愛知県警に窃盗容疑で逮捕されたのは、新型コロナウイルスが再び猛威を振るう兆しを見せ始めた今年7月1日のことだった。犯行の舞台となったのは蟹江支店(愛知県蟹江町)。近鉄名古屋線の近鉄蟹江駅から三重県桑名市方面に向かって1.3㎞程進んだところにある、比較的こぢんまりした支店だ。10年前からこの支店に勤務する当該行員の出張に当たって、業務を引き継いだ別の行員が同日、金庫内で1万円札を1000枚重ねた札束、通称“大束”の一番下の紙幣が5000円札になっているのに気付き、庫内の現金不足が判明。被害届が提出されたのを受けて捜査が進められた結果、支店内のロッカーから現金500万円がみつかる等、この女性行員の犯行が炙り出されたのだ。現金は、2日前の勤務時間中に盗み取られたものだったという。一般的に“銀行員の犯罪”と言えば、顧客の財産を騙し取る詐欺罪か、顧客の預金を着服するといった業務上横領罪と相場が決まっている。どちらも法定刑は10年以下の懲役(※単純横領罪は5年以下の懲役)。その点では窃盗罪と同じだが、まさか銀行の金庫内に保管されている現金を直接抜き取るような輩が現れようとは「殆ど想定外」(大手行幹部)だっただけに、銀行界に与えた事件のインパクトは絶大だった。

だが、驚くのは未だ早かった。逮捕を機に愛知銀行が内部調査を進めたところ、7月中旬になって帳簿上の現金の残高を記した出納手許現金精査表と、実際に金庫内にある現金残高との間に約9246万円にも上る差額を発見。何れもこの女性行員が数年に亘って盗み取っていたことが明るみとなったのだ。しかも、その手口がまた「大胆不敵」(金融筋)だった。女性は1999年にパートとして採用され、2009年に正行員に昇格。2010年から蟹江支店に転じ、現金を管理する出納係を一人で担っていたという。その立場を利用して、大束の上下1枚ずつを1万円札にしたまま、中身を5000円札にすり替えるといったもので、事情通は「何やら安っぽい身代金誘拐ドラマのワンシーンを見せられているかのよう」と苦笑い。抜き取ったお金は生活費の他、家電製品・服飾品や高級ブランドバッグの購入、高級エステティックサロンの利用料金等に充てていたらしい。それにしても、こんな杜撰且つ単純な「偽装工作」(同)がよく何年にも亘ってばれなかったものである。愛知銀行では女性が出納係の他、顧客の資産運用相談業務もこなし、投資信託や保険商品といった預かり資産の獲得実績も高かった。勤務ぶりに特段問題がなかったばかりか、寧ろベテラン行員として管理職や他の行員からも頼られる存在だったという。女性に対する強い信頼感と安心感から脇が甘くなってしまったとの見方を滲ませる。だが、1万円札と5000円札とでは抑々大きさからして異なる。縦は共に76㎜だが、横は1万円の160㎜に対し、5000円は156㎜。「銀行員なら感触で直ぐに違いがわかる」(地元地銀幹部)。それに、金庫内への現金格納時には役席が毎日状態をチェックする仕組みの筈だし、出納残高も無論、確認される。支店では最低月1回以上は不定期に現金の精査が行なわれることになっており、しかもそれは担当者に一切手を触れさせない形で実施されることになっている。その上、年1回は本店監査部による抜き打ちでの現金検査もある。おまけに、その手法は支店内検査より数段、厳格だ。愛知銀行では「何れも巧妙に躱された」と弁解しているが、大手地銀関係者の間からは「1回や2回は検査の網をすり抜けられても、多数回は絶対に無理。盗んだ金額も、女性一人で使うには大き過ぎる。役席始め上司も実は共犯で、一部は未だどこかにプールされているのではないのか」といった“疑惑”の声さえ上がる。

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【地方大学のリアル】(09) コロナ禍で大量退学の危機――“GMARCH”でも10%の可能性、大学淘汰が進む契機に



20200929 08
新型コロナウイルス感染は第二波、第三波といったサイクル説を超え、社会に常在化しつつある。経済活動の停滞も長期化が必至となってきた。その中で、目立ち難いが、大きな痛みを受けているのが大学生である。キャンパス封鎖、講義のオンライン化による学びや友人関係での喪失感だけではない。親の収入減、学生自身のアルバイト消滅等、経済的苦境がより募っているからだ。学生が大学を見限り、退学する動機は急速に高まっており、キャンパス封鎖の続く大都市圏の私大にとって、夏休み明けに“時限爆弾”が炸裂しかねない。7月末、全国の国公私立大学がオンライン一色に染まった前期を終えた。「太平洋戦争の学徒出陣か、1970年安保闘争以来と言える、異常且つ未体験の学期だった」と大学関係者は振り返る。勿論、感染が終息したわけではなく、9月下旬に始まる後期も対面型授業は限られ、80~90%はオンライン講義の見込み。それも、状況によっては再び全面オンライン講義という但し書き付きだ。「幼稚園でも登園できるのに、何で大学は登校を許さないのか」。東京都内の私立大学で教職課程をとる女子学生のひとりは、“園児以下の扱い”に憤慨する。大学のオンライン講義は玉石混淆とはいえ、初期トラブルは解消され、安定化してきた。ただ、「高い学費に見合った充足感や学生間の議論による高揚感がない」というのが、学ぶ意欲の高い学生に共通する感想だ。大学がキャンパスでのリアル講義に向かわないのには、2つの隠れた理由がある。

第一は、レピュテーションリスク。感染拡大初期に京都産業大学で学生のクラスターが発生し、大学には非難が殺到。就職戦線では一部企業が京産大の学生を説明会、採用面接から外すといった動きに出た。大学は“第二の京産大”にならないよう神経を尖らせている。加えて、一般には知られていないことだが、日本の大学は慢性的な教室不足状態にあり、対面授業で十分なソーシャルディスタンス(※3人掛け机に1人のみ着席等)を確保しながら、受講希望の学生を収容できるのは、都内の大学ではゼミを除く全講義の25~30%にとどまると私大関係者は指摘する。地方で広大なキャンパスを確保できる大学は別として、大都市圏の私大の多くは文部科学省の設置基準ぎりぎりの教室面積で学生を集め、何とか収支を合わせている。大学が“学生の健康と安全の為”を表向きにしながらオンライン講義に固執するのは、「現有キャンパスではソーシャルディスタンスを確保できない」という事情がある。そうした大学側の事情があるにせよ、学生、とりわけ新入生の失望感は深く、後期開始と共に大都市圏の私大では退学ラッシュが起きると各大学は懸念する。「GMARCHでゼミを担当する教授に、退学予備軍のチェック要請が出ている」。6月半ば、都内の私立大に激震が走った。GMARCHとは、明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学に学習院大学を加えた、近年、難関化したと言われる大学群。全国区で学生を集められる知名度が強みだ。早慶上智とは格差はあるにせよ、合格すれば入学したいブランド校の筈だが、一部の学部では今春の新入生と2年生で退学可能性のある学生が10%以上と見込まれている。コロナ禍以前でも大学、とりわけ“Fラン”と蔑称される三流以下の大学は、1年間に5~10%の学生が退学していく。元々、大学教育についていく学力のない学生に加え、大学で勉強を続ける意味を感じられず、専門学校に鞍替えする学生もいる。実用的な専門学校を潜在的に志向していた学生には、教養課程や第二外国語は苦痛以外の何物でもないだろう。日本の大学進学率(※短大含む)は54.67%(※2019年)で、明らかに大学教育を必要とする人材需要を超えている。大卒の肩書き自体も、Fラン大ではほぼ意味を持たない。Fランより遥かに上位の都内の中堅私大ですら、地方公務員試験を中級・二級職(※短大卒程度)にダウングレードして受験する学生が年々、増えている。

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