1月30日に放送された『池上彰のニュースそうだったのか』(テレビ朝日系)の内容が酷かったと各方面から聞き、録画を視聴したが、番組内において池上氏は全く事実に反する発言を行なっていた。キャスターとしてもジャーナリストとしても完全に失格。しかも訂正や謝罪を行なわず、言い訳や視聴省への責任転嫁に終始するという行動に出ている。池上氏は番組内でこう述べた。「新疆ウイグル自治区の、あそこの多くの住民が強制収容所に入れられているとか、香港の民主化運動の人たちが次々に捕まっているという、ああいう問題に関してトランプ大統領は、これまで何も言ってきませんでしたからね。全然、人権問題に関心がなかったわけですね。ところがバイデン大統領、あるいは民主党というのは人権問題を重視するので…」。本誌読者にとっては周知の事実だろうが、ドナルド・トランプ前大統領は繰り返しウイグル問題、香港問題において人権を守る為に強い姿勢を示してきた。トランプ大統領は2019年7月、中国で迫害を受ける人々をホワイトハウスの大統領執務室に招き、ウイグルでの人権弾圧や強制収容について直接話を聞いている。昨年6月には、ウイグル人権侵害の責任者に制裁を科す『ウイグル人権法』に署名。中国政府高官や中国企業が対象となった。香港についても2019年11月、人権尊重や民主主義の確立を支援する『香港人権・民主主義法』に署名。昨年7月には中国当局による香港の自治侵害に制裁を科す『香港自治法』に署名し、香港問題でも中国政府高官に対する制裁を実施している。「トランプ大統領は人権問題に強く取り組んできた」というのが紛れもない事実であり、池上氏は自らの不明を恥じて訂正・謝罪すべきである。
しかし、驚くことに池上氏は言い訳に走る。自身が出演するYouTubeチャンネル『池上彰と増田ユリヤのYouTube学園』において、トランプ前大統領はウイグルや香港問題で後ろ向きだったという「証言がある」と、信憑性が不明な証言を根拠に弁明した。事実を根拠にするジャーナリストとしてあり得ない発言で、まさに恥の上塗りである。ジャーナリズムにおいて、信憑性が不明な証言を事実より優先することはあり得ない。即ち、池上氏は自らをジャーナリストではないと認めたわけである。この動画において池上氏は視聴者に対し、「動画に来て“BAD”を付けるのはどうかと思うんだよね」と述べ、共演者の増田氏は「YouTubeというものを使うということに対するマナーといいますか、その使い方というか、どうなんだろうという疑問を持ちました」と同調した。池上氏を低評価する視聴者の行動を非難したのだ。これは自由な言論活動を批判するものであるし、YouTubeでの評価を気にするなら評価ボタンは非表示にできる。視聴者への責任転嫁に他ならず、酷い言いようである。しかも、「意図的にやられているんじゃないか」と陰謀論まで展開する始末だった。訂正・謝罪をするなら番組の次回放送で行なうべきだったが、生放送だった次回放送でも訂正・謝罪はされなかった。これにより、更に大きな批判を池上彰氏とテレ朝は受けているが、当然である。テレ朝は、事実に反する情報を伝える司会者を許容するということなのか。であれば、テレ朝はジャーナリズムの看板を下ろすべきだし、抑々、放送法に違反している。メディアによる明らかに事実に反する発信は、アメリカの政策に対する日本国民の誤解にも繋がり、延いては日米関係そのものに影響を及ぼしかねない。強い批判になってしまったが、私は元ジャーナリストとして、そして一国民として、池上氏の番組司会者としての今回の振る舞いは許容できない。池上彰氏は言論活動を引退するべきではないか。
和田政宗(わだ・まさむね) 参議院自民党国会対策副委員長。1974年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、『NHK』に入局。新潟放送局や仙台放送局等を経て2013年に退職。同年の参院選で宮城県選挙区から『みんなの党』公認で出馬し初当選。2014年に『次世代の党』、2017年に自民党入党。著書に『日本の真実50問50答 わかりやすい保守のドリル』(青林堂)・『日本国憲法“改定”』(すばる舎)等。近著に『世界は日本が大スキ! こんなにも世界から信頼されている日本』(青林堂)。

2021年4月号掲載
テーマ : 報道・マスコミ
ジャンル : 政治・経済