【火曜特集】(459) 政府の本音は「潰れても構わない」!? 飲食業界って日本に本当に必要ですか?
度重なる緊急事態宣言の発令により、休業要請や酒類の販売停止が求められ、長らく苦境に陥っている飲食業界。抑も、どうして飲食業界は他の業種と比べて制限が多いのか? そこには、政府の「飲食業など潰れても構わない」という本音があった――。 (フリーライター 星野陽平)

7月8日、西村康稔経済再生担当大臣が東京都に対する四度目の緊急事態宣言の発令に際し、酒類を提供する飲食店が休業要請に応じない場合、その店舗情報を金融機関に提供する考えを示したことが大きな批判を浴びた。西村大臣によれば、「店舗の情報を関係省庁や金融機関とも共有し、金融機関からも応じてもらえるように働き掛けを行なってもらう」とのことで、有り体に言えば「酒類を提供するなら金融機関に圧力をかけてお金を貸さない」ということだろう。現在、暴力団員、又は暴力団との密接交際者だと判明すると金融機関との取引が停止されることになっているが、飲食店も酒類を提供するならば同様の措置を取るということである。結局、西村大臣の発言は撤回に追い込まれたものの、飲食店に酒類提供の停止が求められていること自体は変わらず、「何故飲食店だけが槍玉に挙げられるのか?」といった批判の声も出ている。確かに、“国民の命を守る為”という大義名分はあるが、緊急事態宣言で休業要請が行なわれているのは、酒類やカラオケを提供する飲食店だけである。こうした事実が如実に示しているのは何か。それは、飲食店という存在の社会的地位の低さである。飲食店が社会からそのように見られている理由としては、先ず、経済に占める割合の意外な低さが挙げられるだろう。今回、緊急事態宣言が発令された東京都の『くらしと統計2021』の中の“経済活動別(産業別)GDP構成比(名目)の比較”を見てみると、“宿泊・飲食サービス業”のGDP比率は僅か2.2%に過ぎない。宿泊を除けば、“飲食サービス業”のGDP比率は2%を下回るだろう。更に、“酒類やカラオケを提供する飲食店”に限れば、その割合は更に低くなる。
“宿泊・飲食サービス業”よりもGDP比率の低い産業は、他に“電気・ガス・水道・廃棄物処理”(※1.6%)しかないが、このような公共サービスはライフラインそのものであり、新型コロナウイルス対策といえども犠牲にすることはできない。一方、飲食店の場合はそうでもない。飲食店がなくとも、スーパーマーケットや弁当屋等で惣菜を買ってきたり、自宅から弁当を持参したりすれば事足りる。コロナ禍で推奨されているテレワークをしていれば、自宅で食事をすればいい。よって、飲食店がなくとも世の中は問題なく回るのである。繁華街を歩けば飲食店だらけのようにも見えるが、経済全体に占める割合は実は微々たるもの。飲食店に対する締め付けは、政治家が「新型コロナウイルス対策、しっかりやっています」と有権者にアピールできて、尚且つ経済へのダメージが少ない選択肢として、格好の標的になっているわけだ。況してや今回、休業要請がなされているのは“酒類やカラオケを提供する飲食店”である。酒を飲まなくても人は生きていけるし、寧ろ酒を飲めば酔っ払って飛沫を飛ばしまくって、ウイルスの感染拡大に繋がるのは必至だ。そんなものは規制されて当然と言える。飲食店が経済に占める割合が少ない理由のひとつには、先ず“賃金が低いこと”が挙げられるだろう。飲食店は毎日営業しているのが当たり前で、休みは少なく、給料は安く、残業代など以ての外という劣悪な労働環境のところが少なくない。その理由は、誰でもできる業態だからだ。料理をしたことがないという人は先ずいない。小学校の授業には家庭科という科目があって、基本的には国民全員が料理をできることになっている。それなりに美味しい料理を作る為には、ある程度のノウハウも必要だろう。だが、巷にあるチェーン店の料理にはマニュアルがあり、研修を受ければ誰でも同じ水準の料理を作れるようになるのだ。飲食店は最も安易な業態とも言える。飲食店を利用したことがない人はいないし、料理を作ったことがない人もいない。どこの街にも多くの飲食店がある。よって、脱サラしようという人が真っ先に思いつくのが飲食店ビジネスというわけなのだ。とはいえ、誰もが思いつくビジネスで儲けることはかなり難しい。飲食店を始めるのに学歴や免許等は特に必要なく、初期投資のコストも低い。誰でも簡単に始められる上、参入障壁が低いこともあって、利益率が圧迫されるのだ。更に、飲食店はビジネスモデルがパクられ易いという事情もある。人気店となって行列ができたり、店舗数が増えたり、マスコミで紹介されたりすると、あっという間に目立ってしまい、他の店にビジネスモデルをパクられてしまう。飲食店は流行の移り変わりが激しい上に、直ぐに競合店が出てくる為、中々儲けられないのだ。消費者の側も、飲食店に落とすカネは極力絞る傾向が根強い。1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本経済は長期停滞に陥り、それに伴って我が国では低価格のモノやサービスが求められるデフレが進行した。その最たるものが飲食店である。飲食店は消費者心理に配慮して低価格戦略を重視しながらも、単に安いだけでは消費者を引き寄せることはできず、味も良くなければならない。そんな競争が繰り広げられた結果、飲食店は全く儲からない残念な産業になってしまったのだ。そうしたこともあって、飲食店はいくら沢山の店舗があったとしても、市場規模自体は大したことはないのである。また、儲からない産業であるから、賢い人間は業界に参入してこず、業界団体を作って政治家に献金をしようとかといった気の利いたことを思いつく人もいない。政治力も弱いのだ。

7月8日、西村康稔経済再生担当大臣が東京都に対する四度目の緊急事態宣言の発令に際し、酒類を提供する飲食店が休業要請に応じない場合、その店舗情報を金融機関に提供する考えを示したことが大きな批判を浴びた。西村大臣によれば、「店舗の情報を関係省庁や金融機関とも共有し、金融機関からも応じてもらえるように働き掛けを行なってもらう」とのことで、有り体に言えば「酒類を提供するなら金融機関に圧力をかけてお金を貸さない」ということだろう。現在、暴力団員、又は暴力団との密接交際者だと判明すると金融機関との取引が停止されることになっているが、飲食店も酒類を提供するならば同様の措置を取るということである。結局、西村大臣の発言は撤回に追い込まれたものの、飲食店に酒類提供の停止が求められていること自体は変わらず、「何故飲食店だけが槍玉に挙げられるのか?」といった批判の声も出ている。確かに、“国民の命を守る為”という大義名分はあるが、緊急事態宣言で休業要請が行なわれているのは、酒類やカラオケを提供する飲食店だけである。こうした事実が如実に示しているのは何か。それは、飲食店という存在の社会的地位の低さである。飲食店が社会からそのように見られている理由としては、先ず、経済に占める割合の意外な低さが挙げられるだろう。今回、緊急事態宣言が発令された東京都の『くらしと統計2021』の中の“経済活動別(産業別)GDP構成比(名目)の比較”を見てみると、“宿泊・飲食サービス業”のGDP比率は僅か2.2%に過ぎない。宿泊を除けば、“飲食サービス業”のGDP比率は2%を下回るだろう。更に、“酒類やカラオケを提供する飲食店”に限れば、その割合は更に低くなる。
“宿泊・飲食サービス業”よりもGDP比率の低い産業は、他に“電気・ガス・水道・廃棄物処理”(※1.6%)しかないが、このような公共サービスはライフラインそのものであり、新型コロナウイルス対策といえども犠牲にすることはできない。一方、飲食店の場合はそうでもない。飲食店がなくとも、スーパーマーケットや弁当屋等で惣菜を買ってきたり、自宅から弁当を持参したりすれば事足りる。コロナ禍で推奨されているテレワークをしていれば、自宅で食事をすればいい。よって、飲食店がなくとも世の中は問題なく回るのである。繁華街を歩けば飲食店だらけのようにも見えるが、経済全体に占める割合は実は微々たるもの。飲食店に対する締め付けは、政治家が「新型コロナウイルス対策、しっかりやっています」と有権者にアピールできて、尚且つ経済へのダメージが少ない選択肢として、格好の標的になっているわけだ。況してや今回、休業要請がなされているのは“酒類やカラオケを提供する飲食店”である。酒を飲まなくても人は生きていけるし、寧ろ酒を飲めば酔っ払って飛沫を飛ばしまくって、ウイルスの感染拡大に繋がるのは必至だ。そんなものは規制されて当然と言える。飲食店が経済に占める割合が少ない理由のひとつには、先ず“賃金が低いこと”が挙げられるだろう。飲食店は毎日営業しているのが当たり前で、休みは少なく、給料は安く、残業代など以ての外という劣悪な労働環境のところが少なくない。その理由は、誰でもできる業態だからだ。料理をしたことがないという人は先ずいない。小学校の授業には家庭科という科目があって、基本的には国民全員が料理をできることになっている。それなりに美味しい料理を作る為には、ある程度のノウハウも必要だろう。だが、巷にあるチェーン店の料理にはマニュアルがあり、研修を受ければ誰でも同じ水準の料理を作れるようになるのだ。飲食店は最も安易な業態とも言える。飲食店を利用したことがない人はいないし、料理を作ったことがない人もいない。どこの街にも多くの飲食店がある。よって、脱サラしようという人が真っ先に思いつくのが飲食店ビジネスというわけなのだ。とはいえ、誰もが思いつくビジネスで儲けることはかなり難しい。飲食店を始めるのに学歴や免許等は特に必要なく、初期投資のコストも低い。誰でも簡単に始められる上、参入障壁が低いこともあって、利益率が圧迫されるのだ。更に、飲食店はビジネスモデルがパクられ易いという事情もある。人気店となって行列ができたり、店舗数が増えたり、マスコミで紹介されたりすると、あっという間に目立ってしまい、他の店にビジネスモデルをパクられてしまう。飲食店は流行の移り変わりが激しい上に、直ぐに競合店が出てくる為、中々儲けられないのだ。消費者の側も、飲食店に落とすカネは極力絞る傾向が根強い。1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本経済は長期停滞に陥り、それに伴って我が国では低価格のモノやサービスが求められるデフレが進行した。その最たるものが飲食店である。飲食店は消費者心理に配慮して低価格戦略を重視しながらも、単に安いだけでは消費者を引き寄せることはできず、味も良くなければならない。そんな競争が繰り広げられた結果、飲食店は全く儲からない残念な産業になってしまったのだ。そうしたこともあって、飲食店はいくら沢山の店舗があったとしても、市場規模自体は大したことはないのである。また、儲からない産業であるから、賢い人間は業界に参入してこず、業界団体を作って政治家に献金をしようとかといった気の利いたことを思いつく人もいない。政治力も弱いのだ。
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