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【劇場漫才師の流儀】(271) 牛丼が好き

劇場出番の合間によく食べているものがあります。デビューしてから50年近くになりますけど、ずっと変わっていないですね。デビューした頃は毎日のように食べていました。安いし、美味いし、早い。ここまで言ったらわかりますかね? そうです、牛丼です。今も劇場出番がある時は、1週間に3回は食べています。牛丼といえば『吉野家』・『松屋』・『すき家』とありますが、僕はどこの牛丼も大好きです。僕からすると味の違いはあんまりわからない。全部美味しい。最近は牛丼以外も色んなメニューがありますが、僕はスタンダードな牛丼並盛りをよく注文します。そして、ご飯は少なめ。出番の合間に食べるので、お腹をパンパンにすると喋り難くなってしまうんですよ。日によっては、お味噌汁をつけたり、漬物をつけたり、生卵をつけてもらいます。“つゆだく”とか“つゆなし”みたいな、つゆの量に関するオーダーはしません。そこはノーマル。つゆに漬かったご飯も食べたいし、漬かっていない白いご飯も食べたいので。ちょっと贅沢やけども、3回に1回ぐらい、うな丼も食べます。牛丼屋さんのうな丼も十分美味しいんですよ。うなぎ屋さんのうなぎとそんなに変わらんと思う。うなぎの大きさによって値段が変わってくるんですけど、僕は真ん中くらいのにします。少な過ぎず多過ぎずで丁度いい。牛丼とうな丼、両方食べたい時は“うな牛”がいいんですよね。うなぎと牛肉が半分ずつ乗っているやつです。

まぁ、あんまり上品な食べ方ではないという意見もありますが。「うなぎはうなぎで食べるべきや」と。うなぎのタレと牛丼のつゆも混ざってしまいますからね。でも僕は、その混ざった味も楽しんでいます。昔は新幹線の車内販売で、うなぎ弁当っていうのがありました。あれもよう食ったな。温かくて美味しかった。相方の阪神君もよう食べていました。今だったら2000円以上しそうやけど、当時はそんなに高くなかったと思います。そういえば最近、駅弁でうなぎ弁当を見かけなくなりましたよね。あなごめしはよう見るけど。また車内販売で始めてくれないかな。幕の内弁当ってあるでしょう。僕は、ああいう色んな種類のおかずが入っている弁当が、そこまで好きじゃないんです。どうしても苦手なものがひとつかふたつくらい入っているんで。でも、折角だから全部綺麗に食べたいじゃないですか(だったら好き嫌いなく全部食べなさい、という話なんですけれども)。そこへいくと、うなぎ弁当はシンプルで良かった。ただ、新幹線のうなぎ弁当には奈良漬が入っていたんです。あんまり好きやなかった僕は、いつものけていました。何で、うなぎには奈良漬なんやろ。それにしても牛丼って、つくづく日本の国民食ですよね。当たり前のように、どこでも、いつでも安く食べられる。本当にありがたいですよ。僕の体も、何割かは牛丼でできたようなものですから。 (聞き手・構成/ノンフィクションライター 中村計)


オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(ワニブックス)。近著に『漫才論 僕が出会った素晴らしき芸人たち』(ヨシモトブックス)。


キャプチャ  2023年8月7日号掲載
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テーマ : お笑い芸人
ジャンル : お笑い

【安田理央の「アダルトカルチャーの今と未来」】(42) 徹底検証! AIが作る官能小説はヌケるのか?

https://wpb.shueisha.co.jp/news/technology/2023/07/29/120138/


キャプチャ  2023年8月7日号掲載

テーマ : 恋愛:エロス:官能小説
ジャンル : 小説・文学

【Test drive impression】(299) 7人乗りの高級モデルが日本デビュー! ベンツの最新大型EV『EQS SUV』を公道チェック

https://wpb.shueisha.co.jp/news/car/2023/08/02/120199/


キャプチャ  2023年8月7日号掲載

テーマ : メルセデスベンツ
ジャンル : 車・バイク

【中小企業のリアル】(61) 東海メディカルプロダクツ(愛知県春日井市)――“生命”救うカテーテル開発す



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昭和30年代、東海高校(※愛知県名古屋市)の柔道部は、部員の誰もが「死んだほうがマシだ」と嘆く猛訓練で知られていた。ここで体力と精神力を鍛えられ、昭和33年、全国高校柔道大会団体優勝を成し遂げたメンバーの1人が、『東海メディカルプロダクツ』の筒井宣政会長だ。宣政氏は関西学院大学を卒業すると、父が経営する『東海高分子化学』に入社した。ビニール製の紐やテープ等、塩化ビニールの延伸製品を中心に扱っていたが、度重なる不況で会社は莫大な借金を抱えていた。新展開を図らなければ借金返済は覚束ない。商売の種を必死で模索していたら、ある商社の社員が「アフリカでは女性が髪を結う適当な紐がなくて困っている。髪の毛を小さな塊にして縛っていくのに1回20本程の紐を使うが、輪ゴムは直ぐ切れるし緩む。普通の糸は緩むし、水に弱い。ゴムや糸に代わるものを売れば、きっと儲かる」という話をしてくれた。そこで試作品をビニール紐で作ってみたところ、評判は上々だったが、大きな商社は売上高が小さいビニール紐など、面倒臭がって売ってくれない。普通の人ならそこで諦めてしまうのだろうが、そこは団体全国制覇の経験がある柔道家の偉丈夫だ。自分でアフリカに乗り込むことを決意した。単身、ナイジェリアの首都ラゴスに行った宣政氏は、日本の商社から紹介された貿易商を訪ねたが、全く相手にされなかった。ところが偶々、その貿易商の祖母が亡くなるという事態に出くわす。1週間にも及ぶ葬儀に参加し、「皆と同じ衣装を纏い、同じ食事を取り、1週間を一緒に過ごすことで、やっと仲間だと認めてもらえた」という。

商談は成立し、5年分の注文を受けて帰国した。このビニール紐はアフリカ諸国で大ヒットし、毎月大きなコンテナ4基ずつを送り込むまでに成長し、同社の売り上げは3倍増。借金も数年で返済できた。仕事は円滑に展開するようになったが、宣政氏の悩みは次女・佳美さんが三尖弁閉鎖症等7ヵ所の先天性の心臓疾患を持っていたことだ。治せる医師を探して全国の病院を夫婦で訪ね歩いたが、どの医師からも治すのは不可能だと言われた。アメリカの大学にもトライしたが、結果は同じだった。「手術中に亡くなる可能性が高い」「神業のような手術で成功しても、人工血管や人工弁を入れなければならず、それらは1年ぐらいしかもたない。このままの状態で静養すれば10年は生きられる」と言われ、断腸の思いで手術を断念した。実はその時まで、手術に備えてかなりの額の資金を貯めていた。それを心臓病の研究に寄付しようと主治医に相談したところ、驚いたことに「ご自身で人工心臓の研究をしてみませんか?」と提案された。「私も妻も、医学は全くの門外漢。そんな私達でも研究に参加できるのか、不安でいっぱいだったが、『必要性を最も感じている人間がやるほうが開発が早まる』のも事実と思い、決心した。『人工心臓が早く開発できれば、娘を助けられるかもしれない』という微かな望みもあった」。確かに宣政氏も妻の陽子さんも、心臓病やその手術法、人工心臓の仕組みや問題点等を調べ尽くしていて、知識は豊富だった。医師も、宣政氏の熱意を感じて提案したのだろう。素人の発想が専門家の固定観念を飛び越えるというのも、よくある話だ。医師の指導を受けつつ、個人レベルで研究を開始したが、何といっても資金が足りない。公的な助成金を受ける為には法人組織が必要だということで、1981年に実験施設として東海メディカルプロダクツを設立し、開発母体とした。苦労しながら人工心臓モデルを完成させ、大型犬による実験にも成功した。既に投入した私財は何億円にも及んでいた。だが、次の段階の動物実験を完了するには、獣医や飼育の専門家、医師を継続的に雇用する必要があったし、その先の臨床試験を終わらせて人間が使うということになると、更に何百倍もの資金が必要になることがわかった。「娘には申し訳ないが、これ以上は続けられない」と宣政氏は判断した。しかし、それまでの努力を無駄にするのは忍びない。人工心臓に取り組む過程で知った、大動脈内バルーンパンピング術(※IABP=Intra Aortic Balloon Pumping)に使用する装置の開発に切り替えた。これは動脈内にカテーテルを挿入し、心臓の脈動に合わせてバルーンを膨らませたり縮ませたりして、心臓の血液送り出し機能と酸素供給を補助する装置だ。既存の装置は全て輸入品で日本人の臓器サイズに合わなかったり、使用中にバルーンが破裂して患者が合併症を引き起こす例も多いという問題点があった。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【Global Economy】(320) 欧州の“脱・中露依存”は難路…経済安保上の重要物資を“自前”で調達

EUが経済安全保障の取り組みを強化している。今年に入って重要物資の域内調達を増やす政策を矢継ぎ早に打ち出し、企業も新工場建設に動き出した。ロシアに過度に依存したエネルギー戦略の失敗を踏まえた動きだが、貫徹には課題も多い。 (ロンドン支局 中西梓)



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「我々の経済には脆弱性がある。国家安全保障と経済回復力に関するリスクは増している」。EUの執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は先月、EUとして初となる経済安全保障戦略案の公表にあたって、こう強調した。戦略案は、これまでの開かれた市場と、経済安保のバランスをとりながら、サプライチェーン(※供給網)や重要インフラ、技術流出、経済的威圧の4つのリスクを小さくすることが狙いだ。世界経済を分断するデカップリングではなく、フォン・デア・ライエン氏が唱えるデリスキングの考え方を具現化した。EUは今年2月以降、これまで原則として禁止していた加盟国による特定企業への補助金を認め、輸入に頼ってきた重要物資の域内調達率を高める政策を相次いで打ち出した(※①)。戦略案は、各種政策の底流にあるEUの基本的な立場を示したものと言える。こうした動きを受け、EU域内では工場建設や鉱山開発等の新規投資案件が目白押しだ。アメリカの『インテル』やドイツの『インフィニオンテクノロジーズ』、スイスの『STマイクロエレクトロニクス』といった半導体大手の新工場建設や、電気自動車(※EV)等に欠かせないレアアース(※希土類)やリチウム等重要鉱物の開発計画も相次ぐ(※②)。EUが経済安保の強化を急ぐのは、ロシアのウクライナ侵略やコロナ禍で、重要物資を特定の国に依存する危険性を痛感したからだ。ロシアのウクライナ侵略前、EUが輸入する天然ガスの40%、石油の26%がロシア産で、エネルギー資源の多くをロシアに依存していた。ロシアは侵略開始後、天然ガスの供給を度々停止して欧州各国に揺さぶりをかける等、資源を“武器化”した。エネルギー価格の高騰に伴い、ユーロ圏の物価上昇率はピーク時に前年同月比で10.6%に達し、欧州経済低迷の要因となった。

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戦略案には、「ロシアのウクライナ侵略は、価値観や(政治)システムが違う“1ヵ国”への貿易依存のリスクを示した」と明記した。戦略案では名指しこそ避けたものの、念頭にあるもう一つの国が中国だ。中国政府は昨年春、ゼロコロナ政策で上海を約2ヵ月間に亘ってロックダウンし、世界最大のコンテナ取扱量を誇る上海港の機能が大幅に低下した。欧州を含む世界各国の工場は、部品や原材料不足による生産停止に追い込まれた。EUは、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーの利用拡大やEVの普及を進めているが、これらの製品生産に使われるレアアースやマグネシウム、ガリウムといった原材料の多くは中国に依存している(※③)。EUが重要原材料に指定する34の物資のうち、中国から最も多く調達している物資の数は11に上る。中国は、対立する国・地域への貿易を制限する経済的威圧を繰り返してきた。仮に欧州が対象となれば、ロシアの石油・天然ガスの二の舞となりかねない。5月に広島市で開かれたG7首脳会議でも、中露を念頭に、重要鉱物の供給多様化を連携して進めることで一致した。EUの取り組みはG7の動きと整合的で、“脱ロシア依存”に続き、“脱中国依存”を進めて経済安保上のリスクを低減したい考えだ。ただ、EUの経済安保強化には課題も多い。第一に、同様の経済安保強化策を打ち出すアメリカ等他国の支援策との格差だ。アメリカは昨年8月に成立させた『インフレ抑制法』で、EV購入者への税額控除等に3690億ドル(※約52兆円)を投じると決めた。更に、アメリカ国内での半導体生産を加速させる『CHIPS・科学法』では、5年間で527億ドル(※約7.4兆円)という規模の補助を打ち出した。中国等各国も半導体産業への巨額支援を続けている(※④)。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【NHKはどこへ】(18) 受信料制度は“不公平な税金”!? 制度見直しで揺れるBBCの行方

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昨年夏以降、スキャンダルや財政政策の失敗で3人目の首相を迎えたイギリス。トップすげ替え劇の陰で、今年まで議論が持ち越しになったのが、『英国放送協会(BBC)』の料金徴収の在り方だ。『日本放送協会(NHK)』の放送受信料に相当する、BBCのテレビライセンス料(※以下、受信料)制度は今後も続くのかどうか。イギリスの放送・通信業を管轄するデジタル・文化・メディア・スポーツ(※DCMS)省のナディーン・ドリス大臣(※当時)は昨年1月、自身の『ツイッター』で受信料制度の廃止を暗示した。ドリス大臣は反BBCの強硬派として知られる。若し廃止となれば、BBCの将来が危うくなるのは必至だ。続いて4月、政府は放送業の未来を描く白書で制度見直しを明記。これを踏まえて、夏には政府とBBCが話し合いを始める筈だったが、相次いで首相が辞任。10月末に成立したリシ・スナク政権で文化相を担うのは、リズ・トラス首相時代に任命されたミシェル・ドネラン氏。嘗て「受信料制度は不公平な税金。一切廃止するべきだ」と発言した人物だ。12月6日、下院のDCMS委員会に召喚されたドネラン氏は、過去の発言からは一定の距離を置いたものの、「受信料制度が長期的に持続可能なモデルでないことは否定できない」と述べた。今後、委員会を設置し、制度の在り方を探る。BBCは民間放送企業としての開局から、昨年10月で100周年を数える。1920年代から、BBCの国内活動資金の殆どは受信料収入による。最新の年次報告書(※2021~2022年)によると、受信料収入の総額は38億ポンド(※約6100億円)に達する。これに国際放送『BBCワールドサービス』運営の為の政府からの交付金、制作コンテンツを海外市場向けに販売する商業部門関連の収入を合わせると、収入総額は53億3000万ポンドに上る。

BBCは、約10年毎に更新される『王立憲章(ロイヤルチャーター)』によって、その存立が定められている。現行の王立憲章の有効期間は2017年1月から2027年12月末まで。この期間内は受信料制度の継続が決まっている。焦点となるのは、2028年以降どうなるかだ。受信料の金額は政府とBBCの話し合いで決定される。昨年1月、ドリス氏は159ポンドの受信料を今後2年間、2023~2024年度まで値上げしないと発表した。その後はインフレ率に上乗せした形で上昇する。現行の金額は2020~2021年度から続いているが、イギリスは今、物価とエネルギー価格の急騰が国民の生活を直撃している。インフレ率を加味すると、受信料収入は実質的に2桁の減収となる。受信料制度が“維持できない”理由は、メディア環境の激変だ。BBCを含むイギリスの主要テレビ局は、15年程前からオンデマンドサービスに力を入れてきたが、動画投稿サイト『YouTube』や、『NETFLIX』・『Amazonプライムビデオ』等の有料動画サービスが多くの人を魅了している。昨年7月、貴族院の通信・デジタル委員会が、受信料制度に代わる資金調達方法について調査を行なった結果を報告書として纏めた。複数の例が紹介されているが、一つ目が広告収入のみの場合だ。BBCの収入が減ってしまい、広告収入を主要な収入源とする民放へも負の影響がある。二つ目が有料視聴制。これも収入が減る見込みで、視聴者の幅も狭く限定することになる。“国内全体に価値あるサービスを提供する”というBBCの存在目的を果たすことができなくなる。三つ目は、所得額と関連付けた金額を徴収する案。価格が上下する、不公平感が出る可能性等が指摘された。四つ目が、通信税を導入する案。ブロードバンド環境の違いによって、これも不公平感が出る可能性ある。五つ目が、普通税の一部とする案だ。視聴する・しないに関わらず一定金額を徴収するが、住宅の価値によって決まるカウンシル税(※日本の地方税に相当)に紐付ける等で不公平感を解消させる。但し、住宅の価値が高くても収入が低い場合、逆に不公平感が増す場合もありそうだ。欧州ではドイツ、フランス、フィンランド、スイス、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク等、公共放送の受信料制度を廃止する国が相次いでいる。ドイツやスイスでは普通税の一部が使われ、フィンランドやスウェーデンでは所得税から公共放送用の資金を捻出。ノルウェーとデンマークは国家予算として割り当て、フランスは消費税を資金源とする。何らかの形で税金を投入し、公共放送を維持する流れがある。しかしイギリスの場合、税金と関連付ける収入源は時の政権や政治家の影響を受け易く、報道機関としての独立性を重要視するBBCにはそぐわないという見方が強い。『欧州放送連合(EBU)』は、公共放送の資金繰りについて考える時に守られるべき指針を出している。「安定し、適切かどうか」「政治的及び商業上の利益から独立しているか」「国民及び市場から見て公正か」「調達方法に透明性があるか」である。政府とBBCは、2028年以降の公共放送の新たな資金調達方法について、今月から本格的な話し合いを始める見込みだ。 (取材・文/在英ジャーナリスト 小林恭子)


キャプチャ  2023年1月28日号掲載

テーマ : テレビ・マスコミ・報道の問題
ジャンル : ニュース

【儲かる農業2023】(07) ケールから野菜・和牛へ大胆シフト! さかうえ流“カメレオン業態転換”

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農業界のカメレオン企業――。青汁の原料となるケールの生産主体から、大胆な業態転換に成功した農家がある。鹿児島県志布志市に本拠を構えるレジェンド農家3位の『さかうえ』がそうだ。代表取締役の坂上隆氏は、新しいビジネスモデルを切り開く“嗅覚”を持つ名物経営者だ。多くの農家が肥料・資材費の高騰に苦しむ中、さかうえは2019年6月期に5.8億円だった売上高を、2022年6月期に10.7億円へ倍増させた。特に注目したいのが、売上高構成比の激変ぶりだ。ケールが主体の露地生産事業の構成比は、全体の約4割から12%へ激減。代わりにピーマンの施設生産事業34.6%と、青果流通事業36.2%が激増し、畜産精肉事業が加わった。ケール農家から、ブランド野菜の生産・流通事業から畜産事業や飼料事業までを展開するコングロマリット農家へと進化したのだ。坂上氏は、僅か3年で業態転換できた秘密について、「今見えている“モノ”の動きから、将来起きるであろう“コト”の動きを先読みして投資する」と言い切る。坂上氏による業態転換は今に始まったことではなく、1998年にコンビニエンスストア『セブンイレブン』向けおでん大根、1999年に青汁向けケール、2000年にポテトチップス用じゃがいもを栽培する等、立て続けに大口の流通事業者や食品メーカー向けの受注獲得に成功している。「自分が作りたい農畜産物を作っても、天候や需給ギャップに振り回される。時代を先読みしたり、世の中の課題を抽出したりすることで、販売先のニーズが着実に生まれるものを作り続けることが大事」(坂上氏)という。坂上氏が病気で入院している時に大口受注が重なったことがある。『ファンケル』から「2000トンのケールを作ってほしい」との相談と、『カルビー』から「北海道でじゃがいもの収穫作業を2ヵ月間お願いしたい」との相談が舞い込んだのだ。「体を動かせないので、顧客先の仕事をどうやったら受けられるか一緒になって考えて、友人を巻き込んで引き受けた。顧客先が喉から手が出るほど欲しいタイミングでアクセルを踏み込まないと、チャンスを逃してしまう」(坂上氏)。そうした非日常体験の積み重ねで、農場経営の経験値が蓄積された結果、坂上氏の嗅覚が研ぎ澄まされていったようだ。施設生産事業へシフトする時も、「農家が殺到したトマトや苺は作らない。売上高1000億円分のピーマンを安定供給できる農家は少ない。だから、ピーマン栽培へ一気に投資した」(坂上氏)。畜産精肉事業や飼料事業に参入したのも理由がある。近年、野菜だけ、畜産だけ、コメだけといった農業の専業化が進んでいるが、鹿児島エリアではまだまだ畜産・飼料事業の商機が大きいとの判断があったからだ。現在、坂上氏の関心事はエネルギー問題と食料自給の課題。次の獲物を狙う坂上氏の嗅覚に衰えは見られないようだ。


キャプチャ  2023年4月8日号掲載

テーマ : 農業
ジャンル : 政治・経済

【京阪神・令和の三都物語】(26) 「大阪復活へ、今こそ“ものづくり”の力を」――鳥井信吾氏(『大阪商工会議所』会頭)インタビュー

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――大阪経済の足元の動向をどう見ていますか?
「新型コロナウイルスの感染拡大に加え、ウクライナ情勢や円安、原材料高騰等を背景に厳しい状況です。大阪商工会議所のアンケートでは、中小企業の約6割は価格転嫁ができていないという結果も判明しました。業種によって異なりますが、やはり中小・中堅企業が厳しいです。飲食業や観光業、宿泊業はインバウンド(※訪日外国人)がゼロになり、何とか2年超は補助金で凌いできました。しかし、原材料価格の高騰等もあり、未だ厳しい状況には変わりありません」
――大阪経済は長く苦境が続いてきました。
「歴史的には先ず、大阪拠点の大企業が東京に本社機能を移すということが起きました。そして、1985年のプラザ合意で急激な円高ドル安が進み、輸出型産業だった製造業が海外に出ていくことになります。中小企業も大企業と共に海外に打って出るか、業態等を変えてきました。そうした動きが何十年も続き、結果、関西からは本社機能だけでなく、大きな工場も消えました。勿論、中小企業の中には大企業の下請け構造から脱し、差別化できる製品で闘っているところもあります。けれども、全体的には空洞化してしまったわけです。関西財界の地図も変わってきています。以前は住友化学や野村證券等も本社は大阪でしたが、今はありません。あらゆるところで文化が変わってしまいました」
――中小企業が多く入会する大商の会頭として、どのように大阪経済を底上げしていく考えですか?
「アベノミクスによる金融緩和で株価は上がり、適切な為替水準も続いてきました。しかし、それでも経済成長できなかったのは、中国や韓国が台頭してきたからです。日本を超えるような技術力、コスト競争力、販売網等を持ち、対抗することができませんでした。技術革新やサプライチェーンへの付加価値の創造や、有機的な産業構造といったものの前提には、本来、ものづくりが据えられるべきです。しかし、日本では長らく、ものづくりが否定されてきました。脱工業化の流れで、アメリカはものづくりに代わってGAFAに代表されるITや金融といった産業が隆盛を遂げました。日本も同じ方向を目指しましたが、実現できませんでした。抑も、経済規模も社会基盤も異なるので太刀打ちできるわけがありません。勿論、これは大阪だけではありません。とはいえ、大阪はものづくりを中心にイノベーションを起こし、ユニークやニッチな産業を盛り上げていくという方向を改めて目指すことが大事です」
――イノベーションという観点では、東京に比べ大阪は起業数が少なく、元気がない印象です。
「大阪は経済が衰退する中で、東京のように都会化できませんでした。都会化というのは、例えば、アメリカで言えばニューヨークです。古いものを守りながらも、新しいものをどんどん吸収するような“求心的”な都市のことです。勿論、未だ大阪には人的資源が残っています。若い世代やスタートアップ、大阪に残る大企業には優秀な人材も多いです。そして、町工場には熟練熟達な経営者もいます。そういう人達が力を合わせて、新しい波を起こす必要があります。大商もスタートアップの支援に力を入れていきます。2017年から、大阪市内の町工場が連携する町工場ネットワークという仕組みを設けているのですが、これを今秋からスタートアップ支援にも活用していきます。スタートアップにはアイデアはあるけれども、実際に製品を作る段階等では必要な技術や人を持っていないことが多い。そこを、大商が間に入って繋ごうという試みです。例えば、大阪大学発祥の大阪ヒートクール(※大阪府吹田市)というスタートアップがあります。アトピー患者らの痒みを止めたりする為に、熱と冷気を出す機器を開発しました。開発には、大商が紹介した地元の中小企業の技術が生かされています。あと、大阪市内に、100年以上の歴史を持つ圧力計製造の木幡計器製作所という会社があります。ここは、東京の国立国際医療研究センターと組んで、呼吸器疾患の患者の呼吸筋力を測定できる機器を開発しました。これも大商が間を取り持ってきました。医療産業では、機器とデジタルを融合していく余地がまだまだあります。そして、中小企業は職人技術を持っています。手仕事から発した経験を積んだものづくりと、新しいスタートアップをどんどん連携させていきます」
――2025年の大阪・関西万博まで1000日を切っています。建設費の確保の進捗は?
「資金面では各企業の内諾も大体取れ、ほぼ固まりました。分割という仕組みもあるので、未だ着金していないものもありますが、目処はつきつつあります。大商の会員にも、これから協力を募っていきます」
――原材料費の高騰で、建設費が計画の1850億円から膨らむリスクもあります。
「今のところは、1850億円の範囲でやるということで、それ以上は議論に出ていません」
――仮に予算が膨らみ、もう少し協力を求められたらどうしますか?
「それは困りますね。ただ、資材調達等は予め進めているものもあるでしょうけれど…」
――大阪府は北部で発展が進む一方、南部はやや取り残されているとの指摘があります。こうした課題にどう取り組んでいきますか?
「個人的には過去に大阪府南部の独特の文化に感銘を受け、それ以来、凄く評価しています。同じ大阪でも、北部と雰囲気は全く異なります。人は賑やかで元気があり、オープンですし、それでいて団結力は強い。まさに“ディープオオサカ”と言えるでしょう。大阪全体も、府南部の“グレーターミナミ”の文化をもっと取り入れていくと、再生に繋がるのではないかと感じています。大商としては、グレーターミナミの活性化に力を入れています。柱は3つ。一つは、泉州水ナスなんかは非常に有名ですが、地域の農産物等“食”を生かした産業の振興です。あとはグローバル化を見据え、外国人が住み易い街づくりです。最後に、湾岸地域のGXの実現に向けた拠点化になります。非常にポテンシャルを持つエリアなので、関係自治体等と連携して底上げしていきます」
――新体制での抱負を改めて聞かせて下さい。
「関西圏全体で見れば、実はGDPはオランダに匹敵するような規模です。以前よりは衰退しましたが、巨大な経済エリアであることには変わりありません。まだまだ負けてられへん。日本は東京だけではありません。大阪・関西をユニークな地域にしていくつもりです」


キャプチャ  2022年10月22日号掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【東芝はどこへ】(23) 大きな声では言えない話…従業員持ち株会は今がお得

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「会社の株価の上昇には、社員も関心がある。大きな声では言えないが、持ち株会をやっている人は良い思いをしている筈。自分も積極的に買っている」。『東芝』の若手社員は、声を潜めながらそう語る。この社員の言う持ち株会とは『東芝持株会の』ことだ。給与や賞与からの天引きで一定額を持ち株会に拠出することにより、東芝株を購入・保有できる。社員が拠出した額の10%を会社が“奨励金”として上乗せしてくれる。給与から月1万円を拠出する場合、奨励金と合わせて1万1000円分の株を買える。奨励金の上限は、給与からの拠出に対して月5000円だ。東芝は現在、株式非公開化を含めて、新たな資本戦略を検討している。非公開化の過程ではファンドが東芝株を買い取る為、その期待を織り込み、株価は上昇トレンドにある。持ち株会に投じられた社員のお金も増えているのだろうか。給与から月1万円を拠出しているとの前提で、先月末時点での株式評価額を計算した。株価が今の2倍の1万円超だった2000年4月から拠出を始めていても、評価額はこれまで出した額の1.6倍になっている。不正会計が発覚した2015年4月から始めた場合だと、割安株価で購入できたことになり、足元の評価額は拠出額の2倍近くだ。昨年4月に始めた場合でも、25万円の拠出に対し、6万円の含み益が出ている。ベテランから若手まで、多くの社員が株高の恩恵を受けているのではないか。 (取材・文/本誌 吉野月華)


キャプチャ  2022年8月27日号掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

【企業人必読!キャリアアップの為の組織防衛術】第1部・製薬会社広報編(12) 本質を忘れた数値の議論



平目(上司へのごますりが上手な男性課長)「部長、今年も我が社の株主総会は無事に終わりましたが、来年は要注意ですね。我が社は女性の役員がゼロですから」
入鹿(頭脳明晰で仕事の速い女性部長)「確かに。キヤノンだったかしら? 女性取締役の不在を“物言う株主”から突かれたのは」
倉華(見た目と違って攻撃的な女性係長)「来年の株主総会の前には、うちにもマスコミから取材が来ると覚悟するべきですね。女性取締役の数や女性管理職の比率とかも」
入鹿「政府が東証プライムの上場企業の女性役員比率を、2030年までに30%以上とする目標を掲げたしね」
平目「うちも、部長のような方を役員にすればいいんですよ」
倉華「それは私も賛成ですが、うちは取締役が10人ですから、30%なら他にも2人必要ですね」
多古(ピント外れで軽率且つ未熟な男性新入社員)「入鹿部長の他に女性の部長っていましたっけ?」
倉華「1人いるけど、確か今年、定年を迎えるわ。部長だって数名しかいない状態なのよ」
多古「じゃあ、一気に倉華係長が役員なんてこともあり得ますね!」
平目「あっ、あるわけないだろう、そんなこと。序列ってもんがあるんだから。社内が混乱するよ」
入鹿「そうね。私も含めての話だけど、性別に固執して力の無い人が役員になったら、本人も周囲も不幸になるわよ」
倉華「『やっぱり女性はだめだ』なんて声が上がって、逆に女性活躍の足を引っ張る結果にもなりますね」
平目「入鹿部長なら大丈夫ですけど」
入鹿「部長という立場の能力と、取締役という立場の能力は全く別なのよ。私が取締役を務めるなら、まだまだ経営者としての識見や人脈が足りないわ」
多古「えっ、部長でも足りないんですか? 何が違うんですか?」
入鹿「そうね、例えば週刊誌への対応。広報部長なら取材への対応能力が問われるけど、取締役なら出版社との交渉能力が問われるのよ。人脈も、広報部長なら編集長だけど、取締役なら出版社の経営者クラスとの交際も必要になるでしょうね」
平目「なるほど! そこまで考えておられるなら大丈夫ですよ」
入鹿「いいえ、それに加えて、女性だからこそ発揮できる能力とは何か? それを私が考え、会社も発揮を後押しするという発想が必要なの。男性中心の現状を変えるにはね」
倉華「そうですね、確かに。“広報担当役員といえば女性”っていう 評価が、企業の間で定着することが大切なんですね」
入鹿「そうよ。女性目線で出版社に新規の雑誌やサイトを提言するとか、女性目線で記事の社会的弊害を指摘するのもいいわよね。例えば、『女性は不倫報道を下ネタと捉えていますよ』とか、『セクシーなグラビアはセクハラと感じますよ』とか」

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テーマ : 危機管理
ジャンル : ビジネス

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George Clooney

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