【霞が関2016冬】(01) 曲がり角の地域商標…特許庁にライバルも

特許庁が10年前に創設した『地域団体商標制度』が曲がり角を迎えている。“長崎カステラ”や“琉球泡盛”等、地域の特産品を商標として使える制度で、登録件数は598件に増えたものの、ブランド価値の向上まで結び付けた例は僅か。農林水産省が昨年6月、似たような役割を持ちながら、不正利用等への罰則権限がより強い『地理的表示保護制度(GI)』を導入したことで、存在感が薄れている。今後、其々の商標が10年間の登録期間の更新を迎える中で、登録件数が減少していく恐れもある。通常の商標は、主に名前とマークやデザインを組み合わせて登録するが、地域団体商標は、商工会や『農業協同組合(JA)』等が“地域名+商品・サービス名”の組み合わせで特許庁に出願できる。例えば、『長崎県菓子工業組合』は“長崎カステラ”の権利を持つ。商標として認められれば、団体に入っている生産者が独占して名前を使って生産や販売ができる。以前から使っている生産者は、商標になってもこれまで通り、その名前を使うことができる。地域団体商標は、10年毎に更新すれば権利を持ち続けることができる。出願料は1万2000円で、審査に通り、商標として登録するのに2万8200円かかる。10年目の更新料は3万8800円だ。ブランドを守り、勝手に名前を使う等された場合に警告や賠償請求をし易くなるのを期待して、商標登録する団体が多い。例えば、千葉県の“勝浦タンタンメン”は、元々取っていた商標と組み合わせてブランドを守っている。勝浦タンタンメンと書いた幟旗で商標を取っており、食品メーカーが勝浦タンタンメン味のカップ麺やお菓子等を販売する際に使用料を取っている。年間1000万円ほどの収入があるという。しかし、知的財産として積極的に活用できている例は未だ少数派。権利を取っただけで十分に生かしていない地域が多い。

2007年に商標を取った“静岡茶”は、「他に取られてしまうといけないので取ったが、地元ではあまり使われていない」(茶業会議所)という。『山崎製パン』や『伊藤園』等の飲食料品メーカーから「商品名に使いたい」との要望があり、使用料収入は多少入ってきた。ただ、「お茶どころということもあり、自分の農園や地域の名前を商品名に使いたい生産者が多い」(同)為、登録した“静岡茶”の名称は地域には根付いていない。地域団体商標の存在意義を揺るがしかねない制度も、政府内に登場した。農林水産省が昨年6月に導入した『地理的表示保護制度(GI)』だ。登録した地域以外で不正に名前が使われた場合、国が取り締まり、罰金を課すこともできる等、強い権限を持つ。GIの登録は農産品に限られるが、『ヨーロッパ連合(EU)』諸国を始め、導入している国は多い。国内農業にとって、国際的なブランド価値の向上が課題になる中で、期待できる効果は、GIが地域団体商標を上回る。GIは既に、“夕張メロン”等21件の農産品が登録されている。“神戸ビーフ”や“市田柿”等、地域団体商標と合わせて取っている産品もある。GIというライバルが登場する中で、今後10年間の期限を迎え、更新時期を迎える地域団体商標が相次ぐ。「積極的に更新しよう」という声は乏しく、「効果は具体的には見えないが、取り敢えず更新しておく」といった意見が目立つ。特許庁も、商標を活用してもらう為の支援に必死だ。出願や更新にかかる費用を半額補助する制度や、相談窓口等を設ける他、『日本貿易振興機構(JETRO)』を通じて、地域団体商標を取った産品を海外で売り込む後押しも進めている。地域の生産者からみて、利用する価値の無い制度は不要だ。10年という節目は、制度の存在価値を検証する良い機会と言える。制度を存続する為の改革に終わるのではなく、日本の産品の価値向上に繋げ、成功例を1つでも多く作っていく必要がある。 (光井友理)


⦿日本経済新聞電子版 2016年12月6日付掲載⦿
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