【歪んだ外国人実習】(04) 介護の現場“青田買い”…語学力不足、質低下の懸念

20161215 01
「日本語の歌が聴いてみたいです」――。今月上旬、東京都板橋区の特別養護老人ホーム『ケアポート板橋』で、フィリピン国籍の介護福祉士であるマリーゼル・トレドさん(32・右画像)が、入所している70歳代の女性に優しく話しかけていた。女性が童謡を口遊むと、笑顔で拍手を送った。同国で小学校の教師をしていたというトレドさんは、2008年度に始まった『経済連携協定(EPA)』に基づく介護人材の受け入れ制度で、5年前に日本に来た。EPAで今年度までに来日したのは、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヵ国から計2740人に上る。女性は入所当初、精神的に不安定だったという。トレドさんと親しくなってから安定したといい、「外国の人だけど、一緒にいると凄く安心する」と表情を緩める。トレドさんも、来日時は片言だった日本語が格段に上達し、「日本人と変わらない仕事を任され、やり甲斐がある」と話す。小清水一雄施設長(46)は、EPAで採用して今も働く5人について、「非常に優秀で、欠かせない即戦力」と評価する。厚生労働省によると、介護の有効求人倍率(今年9月現在)は、全職業平均の1.15倍を大きく上回る2.52倍。「2025年度には約38万人の介護職員が不足する」との推計もある。

新たな担い手として期待されるのが、外国人技能実習生だ。今月18日の新法成立に伴い、物を扱う仕事が中心だった技能実習の対象職種に、“介護”が追加されることになった。ただ、実習生はEPAのように介護の資格等は必要ない。来日に必要な語学力は、簡単な日常会話ができる日本語検定4級(N4)程度となる見通し。「N4程度では、専門用語が飛び交う介護現場では通用しない」と、東京都内の別の特養ホーム施設長は警告する。このホームでは、結婚等で日本に永住する複数のフィリピン人が働く。十数年も日本で暮らし、日常会話に不自由は無いが、読み書きは不得手だ。採用したばかりの約10年前には、ゼリー食や通常食等に分けられた食事の入所者名を読み間違え、別の人に配膳するミスが相次いだという。今でも、服薬管理や介護記録は日本人の職員が担う。「介護のミスは命に関わる」と施設長は語る。こうした懸念を踏まえて政府は、2年目も実習を継続する要件として、日本語検定3級(N3)程度を求めるとしている。この水準に届かなければ帰国を余儀なくされるが、N3は難易度が高く、働きながらの合格は至難の業とされる。介護事業者が今、凌ぎを削るのが、実習生の“青田買い”だ。先月下旬、滋賀県で2つの特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人『湖北真幸会』の佐武晃幸理事長(52)は、電話の相手に「しっかり日本語の勉強を進めるように」と指示した。指示を受けたのは、フィリピンの首都・マニラにある日本語教室の女性スタッフ。同会は昨年7月、技能実習の拡大を見越して教室を開設し、現地の大学や看護学校を卒業した実習生候補の男女12人を学ばせている。授業料は無料で、運営費は年間数百万円に上るが、佐武理事長は「質の高い人材を確保する為の必要経費だ」と話す。淑徳大学の結城康博教授(社会保障)は、「語学力や介護技術の低い実習生が多く働くようになると、介護現場の安全が脅かれかねない」と、安易な実習生頼みに警鐘を鳴らし、こう提言する。「実習生の学習時間の確保を事業者任せにせず、国がルール作りを進め、講師派遣等の支援も行う必要がある」。


⦿読売新聞 2016年11月22日付掲載⦿
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