【政治の現場・長期政権の展望】(04) 人事握り、官僚を“採点”

20161215 02
安倍内閣で画期的とされるのは、首相官邸が中央省庁の局長級を直接コントロールする統治手法の確立だ。80歳代の高齢男性の車が、横浜市で登校中の小学生の列に突っ込んだ事故を受け、首相の安倍晋三は先月24日、再発防止に向けた局長級のワーキングチームを設置した。「公共交通サービスを確保していくべきだ」「自動ブレーキを活用していきたい」。初会合で、国土交通省総合政策局長の藤田耕三は、こう提案した。交通規制を所管する警察庁交通局長・井上剛志の他に、経済産業省審議官の三田紀之、総務省地域力創造審議官の時沢忠ら各省幹部も出席し、町づくりや自動車の新技術等のアイデアが出された。来年6月頃を目途に新たな政策を打ち出す方向だ。イギリスの『ヨーロッパ連合(EU)』離脱が決まった際も、直ちに会議が設置された。政策課題が浮上すると官邸が各省幹部を招集するスタイルは、安倍内閣が定着させた。今や、官邸の下に多くの省庁横断チームがあり、各省は世論が納得する政策を打ち出すよう求められる。ポイントは、官邸に集められる役人の多くが局長級であることだ。謂わば、局長を篩にかけるテストの意味を帯び、結果を出した局長が事務次官に上り詰めることができる。“採点者”は官邸だ。

嘗ては、役所の論理で次官まで昇進できた。課長・審議官・局長と、節目のポストで加点を重ね、最終的な“持ち点”によって次官が選ばれる相場があったからだ。安倍内閣の前と今では、出世の風景が変わった。ある経済官僚は、「官邸での会議は、単なる会議ではない。人生が懸かった場だ」と語った。高齢者の事故も、EU離脱も、キャリア官僚にとっては、30年以上積み重ねた役人人生がそこで終わるかどうかの節目になる。2012年12月の第2次内閣発足以降、安倍や官房長官の菅義偉は、「人事権を握ることで官僚機構を使いこなす」との方針を貫いてきた。2014年5月には、幹部人事を一元管理する為の『内閣人事局』が発足し、“力の源泉”となっている。今年6月の次官人事は、農林水産省次官・奥原正明の抜擢人事が注目の的となった。定番の次官コースから外れ、同期が次官に就いていただけに、“官邸主導の逆転人事”とされた。奥原は経営局長として、農地の大規模化を進める『農地中間管理機構(農地集積バンク)』の創設やJA改革を進め、省内で“急進的な改革派”と異端視されたが、「農政改革を目指す菅らが評価した」との見方が出た。政治任用の色彩が強くなった次官には、“事務の政務官”という異名がある。政務官は、大臣と副大臣に次ぐ政治家のポストだ。安倍内閣が発足した2012年に40歳代だった課長クラスは、2021年まで内閣が9年間続けば、次官の適齢期になる。経産省の中堅官僚は、「次官を目指すには、官邸を見て仕事せざるを得ない」と語った。尤も、官邸主導の強まりには批判もある。10月21日の衆議院内閣委員会で、民進党の高井崇志議員は「安倍政権の人事に役所は戦々恐々としている。正論も言い難く、イエスマンが多くなる」と追及したが、菅は否定し、「私は、課長も含めて、幅広く意見を客観的に聞いた上で判断している」と答えた。人事権の集中は、魅力ある政策を引き出すこともある一方、行き過ぎれば、省庁側に無力感と組織の弱体化を齎す可能性も孕む。内閣人事局という“道具”を使いこなす力量が、長期政権を左右する。 《敬称略》

■官房長官執務室で協議
内閣人事局は、首相官邸向かいの中央合同庁舎8号館に事務局を置いている。現在の局長は萩生田光一官房副長官が務めるが、次官人事を実質的に決める人事検討会議が開かれるのは、首相官邸5階にある菅義偉官房長官の執務室だ。ここに菅氏や萩生田氏らが集まり、次官・局長・審議官級の幹部計約670人の人事を随時協議する。今夏の人事では、安倍外交を支える外務省総合外交政策局の秋葉剛男局長を、次官級の外務審議官に起用した。年次が上の一部局長を飛び越えての抜擢だ。また、官邸で経済政策を担った柳瀬唯夫首相秘書官を、経済産業省の筆頭局に位置付けられる経済産業政策局長に据えた他、同じく首相秘書官経験者の山田真貴子氏を総務省で女性初の官房長に昇進させる等、官邸主導の人事が続いている。


⦿読売新聞 2016年12月2日付掲載⦿

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