【揺れる退位】(01) “象徴の務め”が焦点

天皇陛下の退位を巡り、政府の『天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議』が行っていた専門家16人からのヒアリングが終わった。有識者との議論を通じて浮かび上がった論点を整理し、今後の行方を展望する。

20161215 03
「日本の歴史と文明の中心軸をなしてきた天皇の役割は、国家国民の為に祈って下さることだ」――。保守派の論客であるフリージャーナリストの櫻井よしこ氏は、先月14日のヒアリングで、歴代の天皇が国家と民の安寧を祈ってきた“祭祀”こそが、天皇の本来果たすべき役割であることを強調した。全3回のヒアリングでは、櫻井氏を含めた7人の専門家が、「現行憲法や明治憲法が制定される以前からの“歴史的な役割”を最優先に考えるべきだ」と訴えた。「天皇は祈るだけで、他に何もしなくてよい」「存在するだけで有難い存在」といった主張は、有識者側も一定の想定はしていたが、“憲法上の役割”を聞く質問に耳を貸さず、持論を繰り返す専門家が相次いだことは想定を超えていた。有識者会議は、ヒアリング8項目の最初に「日本国憲法における天皇の役割をどう考えるか」を置いた。「“象徴天皇”の役割を明確にすることが、議論の出発点になる」と考えたのだ。天皇陛下は今年8月のビデオメッセージで、“日本各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅”を“天皇の象徴的行為”として重視しているとの考えを述べられた。その上で、高齢により“象徴の務め”を果たせなくなるとして、退位の意向を示唆された。

憲法は、天皇について“国事に関する行為のみ”行うと規定している。憲法に定めのない“象徴の務め”を天皇の役割と位置付けるか否かが、退位の賛否を判断するポイントになった。“歴史的役割”を最優先に位置付ける7人に概ね共通するのは、天皇を「神道の文化的伝統の中心的継承者」(東京大学の平川祐弘名誉教授)と位置付け、「それによって保ってきた伝統的な権威があったからこそ、現行憲法下でも“象徴”として国民に慕われるに至った」との考え方だ。櫻井氏らは、「仮に、陛下が述べられた“象徴の務め”を“天皇の役割”に位置付けると、務めを遂行できる能力が“天皇になる為の資格要件”になってしまい、その後の皇位継承が不安定化する」とも指摘した。こうした考え方に立てば、陛下が重視する“象徴の務め”は、天皇の本来果たすべき役割ではなく、「実行できないから」といって退位する必要はない。実際、7人とも退位には反対するか、慎重な考えを表明した。これに対し、残る9人の専門家は、憲法が定める国事行為の他、陛下が述べられた公的行為等の“現代的な役割”を重視する考えを示し、条件付きも含めて退位を容認する意見を表明した。憲法学者である京都大学の大石眞教授は、「天皇の在り方は、現在の天皇の意思と関係なく、“国家的制度”として考えるべきだ」と指摘。その上で、「天皇の本来の公務は、憲法が明記する“国事行為”と、国会開会式でのお言葉等国事行為と密接に絡む“準国事行為”に限られるが、被災地訪問等も“公人”として“社会儀礼的な範囲”で認められる」との考えを示した。また、国士舘大学の百地章客員教授(憲法)は、「現代の国民は、天皇に“国民統合の為の具体的な行動”を期待している」として、「“象徴の務め”も必要だ」と説明。「『祈るだけでいい』と祭り上げることは、嘗てのような神格化や政治利用に繋がる恐れも出てくる」(フリージャーナリストの岩井克己氏)との指摘も出た。陛下が身を以て示してこられた“象徴の務め”を、どう考えるか――。議論の入り口から真っ二つに割れた意見対立は、「制定から70年を経た憲法下で、“象徴天皇”に何を求めるのか?」という国民への問いかけだ。

■政府、活動を3つに分類
憲法第1条は、天皇を「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と定めており、政府は天皇の活動を、国事行為・公的行為・その他の行為という3つに分類している。この内、憲法に明確な規定があるのは国事行為のみだ。憲法第4条2項は国事行為の委任、第6条は首相と最高裁判所長官の任命を規定し、第7条で衆議院の解散や国会の召集等10項目を列挙している。全て「内閣の助言と承認」が必要となる。公的行為は、天皇が“象徴”としての地位に基づいて行う公的な活動だ。被災地の慰問や国民体育大会への出席等が含まれ、内閣が責任を負う。その他の行為は、国事行為と公的行為以外の活動で、国民の幸せ等を祈る祭りを執り行う宮中祭祀日や、大相撲の観覧、学問的な研究活動等がある。


⦿読売新聞 2016年12月6日付掲載⦿

スポンサーサイト

テーマ : 天皇陛下・皇室
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR