【迷走する所得税改革】(04) 税と連動、企業手当も焦点

20161215 04
「不利益変更で訴えられないのか」「手当は廃止すべきか」――。人事管理や賃金について助言する『北見式賃金研究所』(愛知県名古屋市)では、配偶者手当等に纏わる企業の相談が増えている。『トヨタ自動車』は今年1月、扶養手当の内、妻の年収に応じて支払う分を段階的に減らし、子供1人当たり2万円を支給する制度を始めた。トヨタの影響力が絶大な名古屋市周辺では、見直しを検討する企業が増えているという。「女性の就労促進の最大の障害は、企業の配偶者手当だ」。政府関係者の言葉だ。税の配偶者控除は、103万円を超えても“特別控除”でカバーされ、控除額が階段を下りるように減る。こうして、妻の収入が103万円を超えた途端に、103万円以下だった時よりも、家計全体としての収入が減る逆転現象を防いでいる。ところが、多くの企業の配偶者手当や扶養手当も、税に連動して打ち切りの基準が“103万円”となっており、これらの手当については手取りの逆転現象が生じるのだ。人事院によると、昨年に配偶者手当等の支給基準を“妻の年収103万円”に設定していた企業は58%、“130万円”が21%に上る。

政府・与党は、38万円の配偶者控除が受けられる基準を事実上、103万円から引き上げる案を検討中。財務省幹部は、「税制改正論議をきっかけに、企業の手当にも焦点を当てたい」と語る。2014年10月に安倍晋三首相は、「女性の就労拡大を抑止している仕組みや慣行について、国民的議論を進める」と宣言。国家公務員では、来年度から年収130万円未満が基準の配偶者手当を削減し、子供を持つ職員への手当を拡充するよう、人事院が勧告した。政府内には、年度内に纏める働き方改革に、企業の手当見直しを盛り込むことを目指す動きも出始めた。政労使会議を通じて賃上げ圧力を強めた構図の再来だ。『第一生命経済研究所』主任エコノミストの柵山順子氏は、「共働き世帯が増える中で、配偶者手当は時代遅れ」と指摘する。手当が定着したのは戦前だ。政府は1939年に慢性的なインフレを防ぐ為、賃上げを凍結する『賃金臨時措置令』を制定した。一方で、一定の収入以下の労働者には扶養家族を対象とした手当を認め、配偶者手当が広がった。高度経済成長期にも女性の就業率は低いままで、手当制度が残った。働き手不足に悩む経済界にも、「手当見直しを急がざるを得ない」との機運がある。来年度税制改正で配偶者控除の取り扱いが固まれば、来年の春季労使交渉でも「配偶者手当の見直しが争点の1つになる企業が増えてくる」(財界幹部)との見立てが多い。手当廃止等で浮いた財源は、子育て支援や基本給引き上げに回す案が想定される。手取りが減る世帯も多くなりそうで、労組の意見集約は難しい。トヨタも、配偶者を扶養手当の対象から完全に外す2021年まで5年間の経過期間を設けた。誰しもが賛同する女性の就労促進。政府・企業が改革の足並みを揃えなければ、只のスローガンに終わる。 =おわり

               ◇

上杉素直・飛田臨太郎・中村亮・辻隆史が担当しました。


⦿日本経済新聞 2016年11月12日付掲載⦿
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