【内向く世界】(03) “短期主義”の限界…突破口は技術革新

20161215 05
「反グローバルにアメリカ第一主義と、気になる問題は多い」――。『トヨタ自動車』の幹部は、アメリカ大統領選後の世界をこう話す。もう1つ注視するのは資本市場だ。資本主義は儲け優先主義に陥り、格差を広げた。イギリスの『ヨーロッパ連合(EU)』離脱や、アメリカのポピュリズムにも影響したとされるそうした市場の短期主義は今後、別の国にも波及するのか。幹部は、「(ドナルド・トランプ氏の勝利は)反グローバルより本音を語ったことへの支持」とみる。節度の無い物言いがマネーと結び付けば、短期主義に一段と拍車がかかる可能性はある。だが、大きな流れとして、資本主義が短期主義と長期主義のどちらに振れるかと言えば、「長期だ」と強調する。根拠は、ここ4~5年の技術の進歩だ。コンピューターの情報処理能力が飛躍的に向上し、人工知能(AI)を載せた自動運転車や、それを使った未だ見ぬ高付加価値なサービス産業が、今後5~20年の間に多数出現する。一方、AIが加速するのは「物理や化学分野の研究開発」とも言う。従来はできなかった解析が、ディープラーニング(深層学習)を使って短時間で可能になりつつあり、両分野では「20世紀の発明・発見が陳腐化するような技術革新・新産業の誕生が相次ぐ。一番近くにいるのは、自動車を含む日本企業だ」と言う。

トヨタは2014年以降、“年輪経営”の呼称で長期経営を前面に打ち出してきた。厳しくなる環境規制対応、2020~2030年代に花開くとみられるAI等に、年間1兆円の研究開発費を充てる。一方で、同社の未来観と市場の理解にはズレも生じている。例えば、『AA型種類株式』という新型株を昨年売り出した時だ。新株は“5年間売却できない”等を条件に、元本保証や有利な配当を約束した。『ディスラプティブ』と呼ばれる破壊的創造型技術の「今後20~30年を見据えた研究開発費に充てる資本に」と考えたが、短期売買の多い米欧投資家等からは「大人しい日本人個人投資家を優遇し、選別している」と指摘が出た。ただ、変化の兆しはある。AA株には約1000件の質問が寄せられた。1つひとつ丁寧に対話をした結果、「約3分の2は“長期”に理解を示した」とトヨタは言う。アメリカでは、年輪経営が始まった2014年に、コンサルティング会社『マッキンゼーアンドカンパニー』のトップであるマネジングディレクターのドミニク・バートン氏が、『長期に照準を』との論文を執筆。「情報革命で予想される雇用の喪失・流動化に備える為、人の再教育に時間をかけよう」と企業の取締役会や機関投資家回りを始めた。短期主義には経営にスピードを与え、産業の新陳代謝を促す効果もある。しかし、時間をかけて技術革新を生み出す長期の視点が無ければ、資本主義は持続しない。そう確信する企業・個人が増えているのは確かだ。 (編集委員 中山淳史)


⦿日本経済新聞 2016年11月27日付掲載⦿
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