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【どうする福祉・縮む日本の処方箋】第2部・医療×介護(03) 高精度の画像診断、AIが現場救う



20200610 05
X線やMRIの画像を映すコンピューターと向き合い、専門医が目を凝らしている。広島市にある医療ベンチャー『エムネス』の画像診断センター。全国各地の人間ドック等で撮影された画像を、AIを使って遠隔診断する国内最大級の施設だ。くも膜下出血に繋がる恐れがある脳動脈瘤のMRI検査では、脳を輪切り状に撮影した画像を調べた後、AIが疑わしい部位を表示。見落としかどうか検証して、医師が診断を下す。昨年6月に大学病院から移ってきた島村泰輝さん(32)は、「疲れるとどうしてもミスをし易くなるが、見落としてもAIが見つけてくれる。心が凄く楽になった」と話す。このAIは、エムネス社長で専門医の北村直幸さん(51)が、東京都内のベンチャー企業と共同開発した。背中を押したのは、約20年前の辛い経験だった。大規模病院に勤めていた時、30代の女性が診察に訪れた。腹部のあちこちに癌が転移し、既に手術できない状態だった。半年前に地元の病院で撮影した画像を確認すると、膵臓に癌が見えたが、当時の診断結果は“異常なし”だった。女性の地元は、画像診断専門医がいない医療過疎地だった。患者がどこにいても適切な医療を受けられる環境を作りたい――。その思いが、今日の遠隔診断とAI開発に繋がった。使ってみた印象では、AIが脳動脈瘤を見つける精度は約8割で、日常診療における医師の約6割を上回るという。熟練した北村さんでも見落とすことはある。診断は自身を含む医師2人で行なうが、2人とも見落としてAIが発見するケースが、月に1回程度あるという。「人間は集中力をずっと維持できない。AIの精度が100%に近付けば、将来はAIだけで診断する時代が来るだろう」。

東京都世田谷区の老人ホーム『SOMPOケア ラヴィーレ駒沢公園』。朝比奈啓子さん(93)が昼食の席に着くと、AIを搭載したロボットが足元にやって来た。表情をくるくると変えたり、鳴き声を上げ、構ってほしいとアピールする(※左上画像、撮影/鈴木健児)。夫の入院をきっかけに昨年9月に入居。その後、入居した夫の最期を看取った。施設で暮らす寂しさはあるようだが、長女の島田和子さん(67)は「ロボットが近くに来ると、母の顔がふわーっと明るくなる。優しい気持ちになるのでしょうね」と話す。ロボットを製作したのは、ベンチャー企業の『GROOVE X(グルーブエックス)』。50以上のセンサーを搭載し、会話はできないが、可愛がってくれる人を覚えて傍に行く。施設内の地図を自分で学習して、自由に動き回る。ホーム長で介護福祉士の春田愛さん(43)は、「無条件に笑顔を引き出す存在」と話す。認知症が進むと言葉や行動意欲が乏しくなるが、一緒に歩いたり、呼び掛けたりすることで、ケアの質の向上に繋がっている。産業分野で活用が進むAIが今、医療や介護の分野でも変革を齎す技術として注目されている。AIを使った医療や介護で実用化が最も進んでいるのは、X線等の画像から病変を検知し、医師を手助けする画像診断だ。背景には、装置の普及と医師不足のギャップがある。『経済協力開発機構(OECD)』の2017年統計によると、日本にあるCTとMRIは計約2万1100台で、人口当たりの台数は先進国の中で圧倒的に多い。この為、医師は膨大な画像を読まなくてはならず、負担が大きい。医師の多田智裕さん(48)は2年半前に起業し、内視鏡の画像診断を支援するAIの開発を始めた。胃癌の診断で使うと、医師が3時間近くかかる量を約45秒で解析できるという。「画像を読む時間を短縮できれば、患者と向き合う時間がもっと取れる」。早期の胃癌は、約2割が見落とされるという。AIで発見率が高まれば、抗癌剤や手術等患者の負担が大きい治療が減り、医療費の削減にも繋がる。大腸の内視鏡検査で病変が見つかると、医師は切除が必要かどうか判断を迫られる。不慣れな医師は判断できず、全て切除してしまう傾向があり、患者は医療費が嵩み、感染症にかかるリスクも増える。

昭和大学横浜市北部病院の医師、三澤将史さん(39)は、AIを使った大腸の内視鏡検査に手応えを感じている。「切除が必要かどうかまで示してくれる為、不要な治療をなくせる。病変の見つけ方を学習できる等、若手医師への教育効果もある」と話す。医療用AIは、データベースを基に的確な診察・治療を医師に助言するシステムや、熟練医並みの技術を駆使する手術装置の開発も進む。介護の現場では、入居者が食事をどのくらい取ったかをAIが画像で認識して管理したり、日誌の文章を自動作成したりして人手不足をカバーし、介護の質を高める試みも。在宅の高齢者をAIを使って見守り、病気で倒れた時に発見したり、認知症の傾向を見つけたりして、要介護者を減らす取り組みもある。ただ、高額なものも多い上、現場が使いこなせるのか等、普及には課題もある。『産業技術総合研究所』招聘研究員の岡本茂雄さん(62)は、「業務効率の改善にとどまらず、介護の質や在り方を進化させる視点が、AI開発に必要だ」と指摘した。AIへの期待度と現状を物語るデータがある。『内科系学会社会保険連合』が昨年末、医師168人から回答を得たアンケートでは、79%が「AI診療に期待している」と回答し、「期待していない」(3%)を大きく上回った。その半面、AIを使用しているのは僅か2%にとどまった。AI医療機器はアメリカで約30件承認されたが、日本は未だ3件。企業が世界最大の市場であるアメリカで実用化を急ぐ為だが、審査体制の違いも影響している。申請から承認までの審査期間は、アメリカでは6~9ヵ月のケースが多いのに対し、日本は1年程度。安全性や有効性等の審査基準が定まっていない為、時間がかかるという。AI医療機器は、如何に多くの診察データを学習できるかが、開発のカギを握る。アメリカは患者情報の利用に寛容な社会性があり、大量のデータにアクセスできる。一方、日本は個人情報の取り扱いが壁になり、診察データを利用できるか明確になっていないことが多い。『三菱総合研究所』の藤井倫雅主任研究員(41)は、「国内で普及するには10年かかる」とした上で、「国は開発の指針作りや人材育成、審査基準の確立の他、保険点数の加算で導入意欲を高めることも必要だ」と指摘する。活路はある。日本が世界トップの技術力とシェアを誇る内視鏡だ。『日本医師会』の羽鳥裕常任理事(71)は、「内視鏡を中心にAI医療を発展させ、日本中の力を結集して世界に向かっていくべきだ」と提言する。


キャプチャ  2020年3月21日付掲載
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テーマ : 社会問題
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Author:George Clooney

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