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【どうする福祉・縮む日本の処方箋】第2部・医療×介護(04) 老いた伴侶を看取る、団地は“縮図”



20200610 06
東京都西部の丘陵に広がる『多摩ニュータウン』(※右画像)は、多摩市、八王子市、稲城市、町田市を跨ぐ、広さ2853㏊に及ぶ敷地に整備された集合住宅が立ち並ぶ団地だ。先月下旬、永山地区の公民館で、認知症患者を介護する家族が集まる『いこいの会』の会合が開かれた。患者も家族も高齢の女性が目立ち、自然と互いの苦労話が交わされる。竹山フミさん(※仮名、90)は昨年、認知症の夫を90歳で看取った。「穏やかだった人なのに、暴力的な言葉を発したり、妄想を抱いたりした」。病気は人格をも蝕んでいった。“壊れていく人間”をたった1人で受け止める地獄だった。認知症に関する講演会等に「貪るように参加して勉強した」というが、不安や悩みが解消することはなかった。傍で大きく頷いた新井美智子さん(※同、79)は、要介護5(※7段階で最も重い介護レベル)の夫(83)を1人で世話している。夫は72歳でアルツハイマー型認知症の診断を受けた。「認知症はものを忘れることだけだと思っていた」が、世話をしてみると「身体の全ての機能を失っていくことがわかった」。夫は、目の前にあるタオルは見えていても、どう使うのかがわからない。現在、特別養護老人ホーム2ヵ所に入居希望を申請している。しかし、待機者が多く、一人暮らしの患者が優先されることもあり、入所は実現していない。近くに息子が住んでいるが、仕事が忙しく、手助けは望めない。デイサービスやショートステイを利用するが、介護を一手に担う実情は変わらない。

自身の体調も気がかりだ。40年近く生活する自宅は、団地の3階だ。エレベーターは無い。長年、腰痛にも苦しめられてきた。2週間に一度、骨粗鬆症と膝の関節症を和らげる為の注射を打っている。最近は、新型コロナウイルスに感染しないよう、玄関にアルコール消毒液を置いた。多摩ニュータウンは昭和46年に入居が始まった。当時は“仕事は都心、住居は郊外”というライフスタイルが人々の憧れで、首都圏のベッドタウンとして発展した。それから50年近く経ち、様相は一変した。全域の人口は、令和元年度で前年比0.07%減の22万3948人。65歳以上の高齢化率は前年比0.5ポイント増の24.4%で、東京都の平均22.6%を上回る。団地ごと高齢化したニュータウンは、謂わば日本の縮図だ。脳梗塞と認知症を患っていた夫を20年近く介護し、数年前に看取ったという宮本良子さん(※同、72)は、「同じ団地に住む近所の友人がお茶に誘ってくれても、夫の世話をしている最中で断ることばかりだった」と語った。近所づきあいは次第に遠退いていった。そんな時、いこいの会を知って参加。「悩みを聞いてもらい、わんわん泣いた」。宮本さんは自身の経験を振り返り、「認知症の家族を介護する人は相談する場所がなく、悩んでいる人が多い」と強調する。団地は昭和45年からの数年間に供給のピークを迎え、現在では全国約3000ヵ所に立地し、その半数が三大都市圏に集中している。国土交通省によると、入居開始から40年以上経つ団地は3割を超える。高齢化が進む団地では、世帯主とその家族にとって介護や認知症ケア等の問題が切実だ。そんな中、住民が主体となり、高齢者の認知症予防や生活支援に取り組む地区がある。大阪府堺市の『泉北ニュータウン』は、開発から50年以上経ち、住民はピークだった平成4年の16万4587人から、11万9713人(※昨年12月現在)に減少した。65歳以上が3割超を占める。「元気にしてるか、体はどないや」。先月13日、堺市南区庭代台にある府営住宅の集会場に、近所の高齢者たちが集まってきた。月に一度開かれるこの行事『喫茶あいあい』には、毎回30~40人が参加する。コーヒーや菓子を楽しみながら、顔を合わせてお喋りする。10年程前から始まった。他にも合唱したり、食事会を開いたり。メンバーの一人である高橋喜久子さん(76)は、「体が悪くならないよう、元気を維持する場所作りが必要だ」と話す。

埼玉県上尾市にある『UR都市機構』の『尾山台団地』の集会所では、月に一度、『オレンジカフェ』と呼ばれる集まりが開かれる。認知症治療の専門医や理学療法士らを講師に迎え、認知症に関する勉強会や予防に向けた体操教室等を行なっており、近隣住民も足を運ぶ。参加者は、認知症の家族の世話で気付いたことや困ったことについて、情報を交換する。『上尾市社会福祉協議会』尾山台団地支部会長の吉村陽子さんは、「認知症を知る為に何かしたいという住民の声から始めた」と話す。横浜市栄区の戸建て団地『上郷ネオポリス』は、造成した『大和ハウス工業』が昭和47年から販売を開始し、現在約900世帯、約2000人が暮らす。購入時の世帯主は30~40代が中心だったが、高齢化の波に晒され、今では65歳以上の高齢者が半数に上り、約20戸が空き家とみられる。この団地に昨年10月、コンビニ併設型のコミュニティー施設『野七里テラス』ができた。家事等生活面から介護施設等の相談に乗る他、医療・介護施設との連携や在宅介護等の地域包括ケアに取り組んでいる。国交省の団地再生に関するモデル公募事業として、『まちづくり協議会』と大和ハウスが協定を結び、東京大学の研究者らの協力を得ながら実現させた。ただ、施設を造るだけでは、家にこもりがちで悩みを抱える高齢者や家族を十分ケアできない。そこで、上郷ネオポリスまちづくり協議会の座長である吉井信幸さん(72)らが考えた仕掛けが、コンビニと連携して団地内5ヵ所を回る移動車による巡回販売だ。移動車が来ると、住民がぞろぞろと家から出て集まってきた。顔を見知っている程度で交流もなかった住民同士が、何とはなしに会話を始め、軈て井戸端会議に。巡回販売のきっかけは団地内の商店街が十数年前に閉鎖されたことだが、高齢者の交流が進むことで「認知症予防に繋がる」(大和ハウス事業推進部長の瓜坂和昭氏)という。吉井さんは、「高齢者が介護や医療を受ける側として、『私たちの為に何でもやってくれ』という行政依存型では立ち行かなくなる。動ける高齢者が行動しなくては」と話す。上郷ネオポリスでは、戸外で交流を始めた高齢者が、今度は子供やその家族等若い世代と触れ合う光景もみられるようになった。団地に失われていた賑わいも戻りつつある。タワーマンション花盛りの時代に、敢えて団地ならではの人の繋がりに着目し、健康に不安を抱える高齢者を支え、街自体を活性化する――。ハードルは高いが、事例が積み重なれば、高齢化社会の集合住宅と医療・介護の新たなモデルとなるかもしれない。


キャプチャ  2020年3月23日付掲載
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テーマ : 社会問題
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Author:George Clooney

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