【変見自在】 愚兄愚弟

日本の敗戦後、軽井沢に籠っていたスイス公使のカミーユ・ゴルジェが、GHQにダグラス・マッカーサーを訪ねてきた。ゴルジェは、日本の『精工舎』が気に食わなかった。スイスの向こうを張って、いい時計を安く売る。だから、「日本の時計工業を潰してほしい」とマッカーサーにせっついた。「いいですとも」と高慢な最高司令官は言って、「即座に首相の幣原喜重郎を呼びつけて労働組合法を作らせた」(共同通信)。斯くて、日本に“労働者”という汚らしい言葉が生まれ落ち、皇居前にまで赤旗が翻るようになった。組合が騒ぎ、賃上げを要求し、生産コストが高くなれば、日本の時計も高くなる。「高い日本の時計がスイスに敵う訳もない」と、愚かな最高司令官は読んだ。残念ながら、精工舎は真面な企業で、潰れることはなかった。それどころか、時計工業界に革命を齎すクオーツ小型化の特許を取り、スイス時計工業界はその特許のおこぼれに与って生き延びている。ただ、その組合法ができたおかげで、「日本を駄目にする」というマッカーサーの期待に応えた組織が誕生した。あの日教組だ。「教師は聖職なんかじゃあない。労働者だ。だから、もっと休みをよこせ」とか。その癖、「単なる労働者ではない。勤務評定されるのは嫌だ」とか、「自分の教え方や能力がバレてしまう全国統一テストは廃止しろ」とか。挙げ句、馬鹿な癖に「文部省の学習指導要領にある歴史は受け入れかねる」とまで言い出した。斯くて教育は停滞し、教科書には朝日新聞の松井やよりが書いた「マレーで日本軍は赤ん坊を放り上げて、銃剣で突いた」作り話が堂々載ったりした。同じ頃、イギリスも戦勝国なのに、妙な自虐史観が流行っていた。トラファルガー海戦のホレーショ・ネルソン提督に代わって、支那に阿片を売った話や、マハトマ・ガンジーを牢屋に入れた話が歴史教科書を埋めていた。

寺脇研に先駆けてゆとり教育も実施し、為にクラスの半分は自分の名前すら書けなくなっていた。時の首相、マーガレット・サッチャーは、自虐と退行の学校教育の立て直しを模索した。そして、光は東方から来た。日本の学習指導要領と全国共通テストが、その光だった。彼女はそれを真似た。授業で教えるべき歴史の内容を決め、国語の授業では、赤尾のマメ単にある3800語を必須とした。サッチャーのカリキュラムが各学校に配られた。教師は反発する。「教育に政府は介入するな」とか。彼女はお構いなしに、次の手を打った。カリキュラムに即したレベルを試す全国テストの実施だった。カリキュラムを無視した教師のクラスは当然、点が低い。減俸になる。逆に、いい点を取れば昇給した。児童は名を書けるようになり、トラファルガーの勝利を心から誇った。“英国病”は治癒に向かった。全米50州のテストでいつもビリだったテキサス州知事のジョージ・W・ブッシュは、サッチャーが示した日本式学習指導要領と共通テストの組み合わせの成果に目を剥いた。単純な彼は直ぐ、それを真似た。成績で学校を競わせるバウチャー制度も採り入れ、結果、テキサスはビリを脱出し、気が付いた時は全米トップ10の常連州になっていた。ブッシュは、その勢いで大統領になった。その頃、日本で文部大臣に鳩山邦夫が就任した。彼は、日教組の邪魔で細々とやっていた全国テストについて、「偏差値教育を助長する」とか言い出して一切禁止を申し渡した。世界の教育界を目覚めさせた日本方式は、本家本元で潰され、日本の児童生徒は馬鹿なまま残された。大罪を犯した鳩山邦夫は先日、鬼籍に入った。彼の兄・由紀夫は、首相在任時代に日本の海を勝手に“支那人との友愛の海”と名付けた。先日は、「沖縄が独立して支那の属国になる」と仄めかして、支那人を喜ばせた。まるで幇間だ。それに比べ、弟は未だマシと言われる。でも、弟も実は似たようなものだった。棺の蓋を閉じて初めてわかることも多々ある。


高山正之(たかやま・まさゆき) ジャーナリスト・コラムニスト・元産経新聞記者・元帝京大学教授。1942年、東京都生まれ。東京都立大学法経学部法学科卒業後、産経新聞社に入社。警視庁クラブ・羽田クラブ詰・夕刊フジ記者を経て、産経新聞社会部次長(デスク)。1985~1987年までテヘラン支局長。1992~1996年までロサンゼルス支局長。産経新聞社を定年退職後、2001~2007年3月まで帝京大学教授を務める。『高山正之が米国・支那・韓国・朝日を斬る 日本人をますます元気にする本』(テーミス)・『アジアの解放、本当は日本軍のお陰だった!』(ワック)等著書多数。


キャプチャ  2016年12月15日号掲載
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