【警察・腐敗する正義】(01) 刑事とヤクザに翻弄されるマスコミの実態…『山口組』分裂で情報漏洩の犯人捜しが始まった!

20161216 04
“マル暴”とは、警察における暴力団担当の通称である。暴力団犯罪が火急の社会問題だった昭和の頃は、全国に捜査4課が置かれており、その名残で“4課”とも呼ばれる。刑事たちは、単純に“暴力”と言ったりする。北海道警察のように捜査4課が残っている場合でも、警視庁のように組織犯罪対策課になったところでも、取締りの主役は暴力団だ。どの言い回しを使っても、暴力団や警察には通じる。その為、警察の記者クラブに詰め、この部署を担当する記者は“マル暴担当”・“4課担”となる。ここ最近は暴力団の総数自体が減少し続け、しかもヤクザたちが法に詳しくなって犯罪が巧妙化した為、あまり仕事は無いらしい。「殆ど事件が無いんです。毎日廻ってもネタにならない。だから、2課・4課は新人が手始めに仕事を覚える為に回される。花形には程遠い閑職です」(テレビ局報道局員)。4課担当へ配属が決まると、「貧乏籤を引かされた」と零す記者もいる。当方等といったさしずめフリーの4課担当は、貧窮の極北ということになるだろう。 しかし、記者クラブの4課担と筆者とでは、取材の方法論が全く違う。暴力団取材の場合、暴力団から直接談話を取ってきさえすれば、警察とのパイプは不要なのだ。実際、記者クラブは暴力団担当でありながら、暴力団には接触しない。警察がくれるプレスリリースをせっせと写し、右から左に流すだけの仕事をしている彼らは普段、一次情報に触れることが無い。何もかもが間接情報で済む為、女性の4課担なんてのもいる。おまわりさんとて、むさ苦しい男たちに夜討ち朝駆けされるより、若い女性相手のほうが口が緩むらしい。だから理論上、フリーのジャーナリストが警察に質問を受けることはあっても、警察に教えを請う必要はない。

筆者の場合、フリーになって10年程は、警察とのパイプが全く無かった。皆無ではなかったのだが、1年に2~3回、馴染みと酒を飲み、カラオケに行く程度だ。当然、支払いはこっち持ちで、幾許かの“車代”を渡す。その対価は警察資料だ。山口組の場合、5代目時代までは直参1人ひとりの生年月日・出生地・本籍地・犯歴等が詳細に記載された写真入りのファイルが手に入った。押収した代紋バッジ等をくれる時もある。筆者の古巣である『実話時代』(獨歩舎)というヤクザ専門誌の編集部は、こうした刑事からかなりのコレクションを頂戴していた。押収品の横流しだから、今、メクれたらかなりのスキャンダルになるだろう。個人情報保護法が施行された後、警察の態度は一変した。警察資料はコンピューターで管理され、プリントアウトの履歴が残る為、突如として“プラチナペーパー”と化した。過去の暴力団報道には、警察資料を書き換えただけのものも多い。最早、そんな楽な仕事はできない。というより、居丈高になっても損ばかりで、警察と反目するのは無意味である。持ちつ持たれつな良好な関係を築いておいて、損は無いのだ。お互い、暴力団を調査する仕事と考えれば同じ穴の狢である。その為、今は記者其々に懇意にしているマル暴がいて、筆者も例外ではない。警視庁の某刑事は、長年、『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)の“エス(スパイ)”と言われている。ここまで露骨ではなくても、刑事だって情報が欲しい訳で、新聞や一般誌の記者ともパイプを作っているだろう。刑事たちの仕事ぶりは様々だ。格差はかなりあって、担当する暴力団以外の情報も即日、きちんとした物証と共に入手するプロフェッショナルもいるし、マスコミに嘘八百を並べ立てる事情通でしかない場合もある。県警によってびっくりするほど違っていたり、プロがプロとして評価されず、折角の情報が生かされないケースも珍しくない。但し、不良刑事はどこにでもいる。例えば、彼らはネタ元に情報料――つまり取材協力費を支払うことができる為、ネタ元のエスと組んで会食をでっち上げ、白紙の領収書を使ってそれを横領したりするのだ。「警察のチンケな悪さは、一昔前は全員がやっていた。裏金作りだったかもしれない。けど、俺たちが渡す小遣いは自分のポケットにしまうだろう。警察の安月給では到底買えない億ションに住み、高級外車・腕時計・ベルトをしているのは、昔から4課と相場が決まっている」(在京の山口組2次団体幹部)。暴力団のマル暴評を鵜呑みにはできないが、精度の高い情報を取る為には、暴力団と密接な関係を築かねばならない。暴力団もマスコミ同様、警察の捜査情報を知りたい訳で、マル暴の刑事には常に買収の誘惑が待ち構えている。

20161216 05
筆者も一度、警視庁に某団体の内部情報を話し、3万円を貰ったことがある。話してもいい程度の内容でしかなかったし、警察のエスになる気は毛頭ないので断ったが、結局、受け取った。茶封筒に“警視庁”・“この封筒は再生紙から作られています”と印字してあったので、暴力団関連コレクションに加えたかったのだ。勿論、「2度目は固持する」と伝えた。当年の確定申告には、当方が取材を受けた謝礼として申告した。警察から謝礼を受け取った直後から、それを方々の媒体で書くのだから、自分から刑事とのパイプを壊したようなものだ。しかし、筆者にも秘密のパイプはある。何しろ、警察筋の談話は、たとえ浅い内容でも原稿を書く時の彩りになって重宝する。出所を隠したいネタの場合、一旦、刑事に当てた上で「警察から聞いた」と書くことによって、ネタ元の暴力団員を守ることもできる。懇意の刑事との関係は、暴力団とのそれより数段気を遣う。表沙汰になれば暴力団から勘繰られるし、刑事もこれまでのように情報はくれないだろうからだ。誰と繋がっているかは決して口外できない秘密なので、現場で出会っても周囲に関係がばれないよう、敢えて声はかけない。山口組が分裂し、暴力団とマル暴がクローズアップされると、“警視庁”とか“○○県警”と書くのは勿論、“警察筋”とも書き難くなった。警察内部で情報漏洩の犯人捜しが始まるのだ。暴力団たちもそれを知りたがる。分裂騒動が落ち着きを取り戻し、ヤクザたちが記者を敵・味方で判別し始めた頃、山口組の組長に罵られ、ネタ元をゲロするよう執拗に迫られたことがあった。当然、そんなことを言える筈もなく、拒否するので堂々巡りとなり、深後の罵声は2時間以上も続いた。「お前のことだから、どうせ録音しとんやろうな。上等や。ヤクザ舐めとったら殺してしまうぞ! 吐かんと許さん。はよ言え!」。右から左に流すつもりでも、寝入りばな、睡眠導入剤を飲んだばかりの電話はしんどかった。組長に指摘された通り録音していたので、翌日、文字起こしをしようと思ったが、あまりに辛くてそのまま放置しているほどだ。

この時、偶々筆者の知り合いが、罵る組長の酒席に同席していた。電話を代わったその知り合いは懇願口調だった。「あんたが言わな朝までになる。何でもえぇ、適当に名前言ってくれんと帰れん」。知り合いは最早泣き声だ。少し考え、トラブルメーカーとして有名な警視庁某刑事の名前を挙げることにした。高圧的な態度で義理場を闊歩し、暴力団と揉め事を起こしたり、特定の記者と癒着して現場をかき回す同刑事には、ほとほと困っていたのだ。2015年末に珍しく電話がかかってきて、「週刊誌の記事、読みましたよ。『警視庁の情報が量は多いが精度が今一』と書いてあって、皆が『頑張らなきゃな』と発憤しているんです」と嫌味を言われたし、最近では「鈴木が山健組に刺されたらしい(※カマシ=脅しを入れられたという意味か?)」と彼方此方で吹聴しているというから、筆者のことは大嫌いなのだろう。仕返しである。刑事の名前を聞いた山口組幹部は、「あんなこしゃな刑事がネタ元か。お前もカスやな」と嘲笑した。しかし翌日、組長は彼方此方の警察に「鈴木のネタ元は○○刑事だ。癒着だ、不祥事だ」と捻じ込んだらしい。流石は暴力団。その時は「口外しない」と約束したのに、まるで守る気がない。同刑事からは直ぐに電話があった。先ずは無関係の雑談だ。こちらを油断させ、話を引き出す作戦である。一旦、電話は切れた。5分後、2度目の電話は厳しい詰問調だった。「鈴木さんさぁ、そんなことを言った訳?」。話しの進め方が流石、年季の入った刑事で、感心させられた。記者の仲間内で、同刑事が兵庫県警のマル暴と仲良くしたがっているのは有名な話だ。しかし、相手にされていない。丁度いい。「いや、向こうの組長が貴男の名前と兵庫の○○さんのことを挙げたんです」「ヘぇ~そうなんだ。話が逆になっているねぇ。じゃあ、6代目のとこ連れて行ってあげるよ。そのことをちゃんと話してよ」。新幹線の乗車中で面倒だったので、適当に話を合わせて電話を切った。直ぐに彼方此方から問い合わせがあった。「『鈴木さんが山口組に脅され、警視庁と兵庫県警のネタ元を喋った』ってなっています!」。当然、この2人の刑事は筆者のネタ元ではない。刑事が彼方此方に垂れ込んでいるのだ。ガセに踊らされる暴力団や、それを利用してマスコミ操作を行う刑事を見て、記者クラブの4課担当たちの「暴力団担当は貧乏籤」というボヤキを思い出してしまった。さらりとした記事に見えても、暴力団報道は気苦労の連続である。記事の背後には、其々の記者の戦いが潜んでいる。ヤクザと警察という猛者を相手に、綱渡りを繰り返す記者たち――。暴力団報道の行間を想像するのもまた一興、新しい読書の楽しみになる。 (取材・文/フリージャーナリスト 鈴木智彦)


キャプチャ  キャプチャ

スポンサーサイト

テーマ : 警察
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR