【内向く世界】(04) “反大企業”の波…難題解決で“共益”導く

20161216 06
ギリシャのレスボス島。太陽に輝く白壁の簡易住宅に暮らすのは、内戦・圧政・テロから逃れたシリア難民たちだ。スウェーデンの家具大手『IKEA』が建設を支援した。難民の生活改善へ簡単に組み立てられるシェルターを、中東やアフリカに提供する。『イケア基金』のペール・ヘゲネスCEO(最高経営責任者)は、「政府や援助機関だけではなく、企業も難民問題に対応する義務がある」と話す。世界で高まる“アンチビジネス(反大企業)”の波。税テクを駆使して払うべき税金を払わず、ロビイストを使って政策決定プロセスを歪め、安い労働力目当てに海外展開し、国内雇用を破壊する…。こんな負のイメージを企業に貼り付ける言説も目立つが、少し待ってほしい。「何があっても共に前進しよう」。アメリカ大統領選で、ドナルド・トランプ氏から中国生産を批判された『Apple』。ティム・クックCEOはトランプ氏当選後、社員を鼓舞するメールを送った。内向きに傾く世界。グローバル企業の間で、社会との接点を探る動きが広がる。北海道中頓別町で今夏、社会実験が始まった。嘗て、同地を走った旧国鉄天北線は、30年近く前に廃線になり、公共の足は1日4往復の路線バスぐらい。高齢者が最寄りの総合病院に行くには、バスと鉄道を乗り継ぎ、丸1日かかる。

同町が頼ったのは、『ウーバーテクノロジーズ』のライドシェアサービスだ。インターネットで送迎を頼むと、登録する15人の運転手の中から都合のつく人が、自分の車を配車する。同町役場の笹原等氏は、「ウーバーを高齢化や過疎に悩む町民の足として定着させたい」と話す。ウーバーは未上場ながら、10億ドル以上の企業価値を持つ“ユニコーン(一角獣)”企業の筆頭格だ。見方によっては“グローバル資本主義の先兵”的な存在だが、地域の課題と真摯に向き合う。インターネットによる民泊仲介の『エアビーアンドビー』も先月、ラグビーのワールドカップを控えて、宿泊施設不足に直面する岩手県釜石市と提携した。「社会問題の解決を政府任せにせず、企業自ら取り組むことで、持続的な富の創造が可能になる」。ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が唱えた“shared value(共益)”の考え方に共鳴する企業が増えているのは、反グローバルに傾く世界と無関係ではない。社会との共生と自社の成長を両立できるモデルだからだ。“反企業”のうねりは、20世紀初頭のアメリカで独占企業に対する『反トラスト法』が強化される等、幾度か浮上しては、企業と社会の新たな関係性を形作ってきた。各国の財政余力も限られる低成長時代。企業が新たな“公共”の担い手として、政府の手に余る課題解決に尽力できれば、閉じがちな世界を前に進める原動力となる。 (編集委員 西條都夫)


⦿日本経済新聞 2016年11月28日付掲載⦿
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