【ブラック企業をブッ潰せ!】(02) 「改革無き電通は存続危うし」――川人博氏(弁護士)インタビュー

『電通』は、昨年末に過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の以前にも、過労死で社会に断罪された。過労死問題に長年取り組み、遺族代理人を務める川人博弁護士に、過ちが繰り返される理由を聞いた。 (聞き手/本誌 後藤逸郎・酒井雅浩)

20161219 15
電通が今回、大きな社会的責任を問われた要因の1つに、2000年3月の最高裁判所判決がある。入社2年目の男性が、1991年8月に24歳で首吊り自殺した事件で、過労自殺で会社の責任を認めた初めての最高裁判決だ。私は、その事件でも代理人を務めた。最高裁判決を受けた差し戻し控訴審で、2000年6月に和解が成立した。電通は、「このような不幸な出来事が二度と起こらないよう努力する」と謝罪をした。あの約束は、取り敢えず世間の批判を抑える為だったのか。未だ16年前、そんなに古い話ではない。電通は一体、何を学んだのか、怒りが込み上げる。最高裁判決の後、電通は本社移転を機に、「入退館時間を記録するゲートを設け、労働時間を管理して、長時間労働を減らす」と対外的に説明した。高橋さんのケースでは、記録が残っているにも関わらず、社員本人が作成する“勤務状況報告表”の時間外労働が月70時間を超えないよう、指導していた。直接の上司は勿論、人事・管理部門の責任が問われて然るべきだ。今回の事件に象徴されるように、電通の長時間労働の体質は全く変化していなかったと言わざるを得ない。司法から明確に責任を指摘されたにも関わらず、だ。

電通が、このままの労務管理体制で今後も存続できるとは思えない。長時間労働・深夜労働・パワハラの問題は、企業経営全体にネガティブな影響を齎している。今は優れた才能を持ったクリエイターがいるが、多くの有能な人材が早期退職している。これからは、電通に優秀な人材は集まらず、会社全体が段々と劣化していくだろう。「そのうち、社会の批判も収まるだろう」という安易な気持ちがあるなら、企業自体存続の危機だ。この機会をラストチャンスと考えて、企業改革に乗り出してもらいたい。2014年11月に『過労死防止法』が施行された。超党派で成立し、不十分な点はあるものの、政府も「過労死を無くそう」と取り組んでいる。今回の問題を曖昧にするのは、過労死防止法の理念に背くことになる。また、政府は過労死防止法とは別に、働き方改革や女性活躍社会を推進している。今回の問題に毅然とした対応を取らなければならない。過労死を起こさない為に、労働基準監督署の是正勧告を受けた企業名を公表すべきではないか。特に過労死の労災認定が出た場合は、全ての企業名を公表すべきだ。電通では、2013年に当時30歳で病死した男性について、労基署が過労死と認めているが、公表されていない。更に2010年以降、中部支社(愛知県名古屋市)や関西支社(大阪府大阪市)、また本社は、高橋さんが亡くなる4ヵ月前に長時間労働の是正勧告を受けているにも関わらず、改善されなかった。公表することは、企業に対するプレッシャーになると同時に、労働者保護に繋がる。非常に重要な論点だと思っている。長時間労働を強いる企業で、従業員が自分の身を守る為に一番大事なことは、入社する前。その企業の実態を理解した上で入社するか、判断してほしい。「電通は忙しいみたいだ」ということは誰でも知っているが、これほど酷いとは思わない。先ず、企業をよく研究する。また、労働関係の法令や労働時間等、最低限の知識を身に着ける。入社してからは自己防衛として、退職・転職を勇気を持って考えることだ。頭では考えても、中々退職に踏み切れない例が多い。重症化したら理性的な判断ができなくなる為、初期の段階で「この会社、ちょっとおかしいのではないか?」と思った時に、真剣に退職を考えられるかどうか。自己防衛は、それに尽きる。


キャプチャ  2016年12月13日号掲載
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テーマ : ブラック企業
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