【労基署ショックが日本を襲う】(01) 高まる長時間労働是正の機運…ターゲットは現場から大企業へ

長時間労働の是正が声高に叫ばれる中、労働基準監督署がその実現に向けて本腰を入れ始めた結果、ビジネスモデルの転換を迫られる企業が出てきた。更に、残業減少による年収減を危惧する声も聞こえる。日本人の働き方や残業代はどうなるのか? 労基署が新たに狙いを定めた企業・業界で起こっている地殻変動から読み解いていく。

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労働問題の“番人”たる労働基準監督署の“標的”が、俄かに変わっている。これまで、労基署の重点ターゲットと言えば、建設現場や工場の作業員、そして長時間運転のトラック運転手といったブルーカラー職場が定番。労働者の命に関わる安全管理の観点から監督指導するのが、伝統的な仕事だった。ところが、ここ最近、労基署が急速にホワイトカラー職場へと軸足を移しているというのだ。現場での労働災害が減少していることも影響しているが、それ以上に、労基署を取り巻く環境が一変したことが大きいだろう。変化を読み解くキーワードは、“長時間労働の是正”だ。記憶に新しいのは、世間に長時間労働の実態を知らしめた広告代理店最大手『電通』の過労自殺問題だが、それはきっかけの1つに過ぎない。今、まさに首相官邸が推進している“働き方改革”は、日本企業で常態化している長時間労働の是正が一丁目一番地だ。2014年11月には『過労死防止法』が施行され、厚生労働省は、その元凶たる長時間労働の撲滅に注力中である。また、継続審議中である労働基準法改正案の中身が「長時間労働を助長しかねない」と危惧する声も上がっている。こうした流れが大きなうねりとなり、是正の機運が嘗てないほど高まった結果、長時間労働が常態化しているホワイトカラー職場へと押し寄せているのだ。東京労働局労働基準部の岩瀬信也部長は、「2年前に潮目が変わり、ホワイトカラーの長時間労働に着眼した監督指導が求められている」と労基署の新潮流を解説する。長時間労働対策に舵を切った労基署は、従来の重点対象に加えて、会計士・研究員・投資銀行マン等、深夜残業が当たり前だったホワイトカラーのエリート職業にも積極的に手を広げ始めた。こうした職場の中には、想像を絶する過重労働を強いているところもあり、労基署の取り組み自体は正しい。ただ、長時間労働が減ることは残業の減少に直結する。ある業界では、社員の長時間残業に依存したビジネスモデルの前壊リスクが危惧され始めた。更に、一般のサラリーマンにとっては、残業代の減少が年収減に繋がるリスクも浮かぶ。本格的に動き始めた長時間労働是正の取り組みは、日本に如何なる影響を及ぼすのか。本腰を入れる労基署と、翻弄される企業――。双方の視点から掘り下げていく。


キャプチャ  2016年12月17日号掲載
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