【トランプショック】(11) 大衆迎合の芽、世界に――ロビン・ニブレット氏(『イギリス王立国際問題研究所』所長)

20161220 03
――ドナルド・トランプ次期大統領は、世界の民主主義体制にどのような影響を与えるでしょうか?
「1945年以降、世界の秩序は統合的で、自由貿易を志向してきた。何よりも、アメリカが第2次世界大戦で勝ち、その下で各国が経済や社会福祉制度の再建に注力できたことが大きい。それがアメリカの利益でもあった。冷戦を経ながらも、ヨーロッパ連合(EU)の誕生や、中国の世界貿易機関(WTO)加盟等に象徴されるように、自由主義経済が拡張するのが前提だった」
「そのアメリカで、戦後初めて、こうした価値観に疑問を投げ掛けるリーダーが誕生した。既に、トランプ氏が環太平洋経済連携協定(TPP)離脱を表明したように、自由主義経済の拡張を前提とする戦後秩序は転換点を迎えた。自由貿易を志向する諸国にとり、当面は拡大ではなく、現状維持が最大の挑戦になる」

――イギリスもEU離脱を決めました。何故、欧米で保護主義やポピュリズム(大衆迎合主義)の動きが広がるのでしょうか?
「先進国の労働者層を中心に、『グローバル化の恩恵は期待ほど大きくはなかった』との認識が広がっている。新興国の台頭で、先進国の競争力は潜在的に低下。好景気が覆い隠したこの事実を、金融危機が炙り出した。先進国の政治は中道主義を掲げたが、人々の不満の受け皿になれず、イラク戦争等をきっかけに、既存政治への不信は深まった。ポピュリストたちは、この政治空白に浸透し、『昔はもっと安定していた』と囁いている」
「しかし、これは欧米だけの問題に止まらないだろう。『テクノロジーの発展が雇用を奪う』という不安や格差拡大等の問題は、新興国でも同じだ。トルコのエルドアン大統領ら強権的なリーダーは増えている」

――ポピュリズムの波に、どのように対処すべきでしょうか?
「政治家が国内の圧力に正面から向き合い、国民が経済回復を実感できるようにするしかない。先進国では古いシステムが温存され、疲弊している。例えばイギリスでは、社会福祉や公教育の現場の改善が何十年間も放置され、人々の政治不信に繋がった。これは、中国やEUの台頭とは関係のない純粋な国内問題だ」

――トランプ氏は、『北大西洋条約機構(NATO)』の役割を疑問視する発言を繰り返しています。欧州の安全保障に、どのように影響しますか?
「『トランプ政権の誕生がロシアを利する』との見方もあるが、判断するのは時期尚早だ。アメリカの中枢は、対ロシアの前線としてのウクライナやバルト諸国の重要性とNATOの実行力を十分理解している筈だからだ。尤も、モルドバで親ロシアの大統領が誕生する等、ロシアは周辺国への影響力を強めている。米中露を中心とした地政学リスクが戻りつつある」 (聞き手/ロンドン支局 小滝麻理子)


⦿日本経済新聞 2016年12月4日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR