FC2ブログ

【INSIDE USA】(47) 学校の先生が大量にリストラ…新型コロナウイルスが襲う財政難の矛盾

州財政の苦境が、新型コロナウイルスの感染拡大で深まっている。連邦政府の追加支援を得られなければ、景気の大きな足枷になりそうだ。非農業部門就業者数が前月比250万人増と幅広い産業で雇用者数が増え、失業率も改善した5月の雇用統計。だが、例外的に雇用者数を大きく減らした業種が州・地方政府である。コロナ禍が深刻になる2月以来の減少者数は約160万人と、2008年のリーマンショック時の約2倍に達した。州・地方政府の雇用者急減は、財政の厳しさが背景だ。殆どの州政府は州法等で均衡財政を義務付けられている。だが、コロナ禍による景気悪化で落ち込む税収と、失業で貧困者向けの医療保険(※メディケイド)に頼る人が増えた歳出を受け、各州とも州予算の一部を削減し、赤字回避を急いでいる。同時に、州政府からの補助金削減を受け、市町村等の地方政府も緊縮財政に追い込まれた。深刻なのが初等教育への影響である。アメリカでは地方政府が初等教育を運営する。その財源の内訳は地方政府が45%、州政府による補助金が47%、残りの8%が連邦政府だ。州政府からの補助金依存度が高いだけに、州政府の緊縮財政は地方政府の初等教育を直撃する。2月から5月までの州・地方政府による雇用者減の内、約半数が地方政府による教育関連の雇用だった。初等教育の窮状は、リーマンショック時の悪夢の再来である。当時も州・地方政府は教育関連の予算を大きく減らした。だが、その後の回復は鈍く、予算規模が削減前の水準に戻ったのは2017年になってからだった。

今回の州財政の悪化は、リーマンショック時を上回りそうだ。州政府が埋めなければならない2021年度の財政赤字は、3000億ドルを超えると見込まれる。リーマンショック時の1.4倍に相当し、教育予算への影響は深刻にならざるを得ない。教育予算の削減は、雇用の悪化を通じて地方経済を疲弊させるだけでなく、格差の拡大に繋がりかねない。初等教育は貧困から抜け出す重要な手段で、州政府による補助金の削減は地域間の教育の格差を広げてしまうからだ。また、州政府の補助金削減を埋め合わせる財力は、各地方の豊かさに左右される。地方政府の税収は固定資産税に偏っている為、貧しい住民が多く住む地方は地価も低く、固定資産も少ない。教育予算を増やす余裕に乏しいのが現実である。厳しい州財政に救いの手を差し伸べられるのは連邦政府だ。連邦政府は均衡財政を義務付けられておらず、財政赤字を増やせる。これまでの感染対策予算にも、州政府への財政支援が含まれてきた。しかし、州政府が求める一層の支援上積みには懐疑的な声が一部にある。州政府によるこれまでの無駄遣いを棚に上げ、連邦政府に頼るべきではないというわけだ。実際にはリーマンショックの反省を生かし、州政府は万が一の為の基金をこれまでにない水準にまで積み上げていた。新型コロナウイルスの衝撃が、州政府の想定を上回っていただけだ。寧ろ、州財政の予想以上の悪化の背景には、セーフティーネットへの歳出増等を通じて、景気の悪化を和らげる役割があったことは見逃せない。このまま連邦政府の追加支援を得られず、困窮した州政府が医療の歳出削減等に踏み込めば、セーフティーネットは弱体化する。今後のアメリカ経済にとって不安材料だ。


安井明彦(やすい・あきひこ) 『みずほ総合研究所』欧米調査部長。1968年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、1991年に『富士総合研究所』(※現在のみずほ総合研究所)入社。在米日本大使館専門調査員・みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長・同政策調査部長等を経て、2014年より現職。著書に『アメリカ 選択肢なき選択』(日本経済新聞出版社)。共著として『ベーシックアメリカ経済』(日経文庫)・『全解説ミャンマー経済 実力とリスクを見抜く』(日本経済新聞出版社)等。


キャプチャ  2020年7月11日号掲載
スポンサーサイト



テーマ : アメリカお家事情
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

产品搜索
广告
搜索
RSS链接
链接