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【Global Economy】(198) コロナショック、揺らぐ成長…新興国で急速な財政悪化

新興国への成長期待が揺らいでいる。新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う景気後退や財政悪化が進み、感染封じ込めも綱渡りの状況が続く。『国際通貨基金(IMF)』は初めて、新興・途上国のマイナス成長を予測した(※①)。新興国は黄昏の時代を迎えるのか? (大阪本社経済部 杉目真吾)



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「世界の公的債務残高は今年、GDPの世界合計の100%を超え、過去最高に達する」――。IMFチーフエコノミストのギータ・ゴピナート氏らは今月10日、こう予測した。新興国を中心に、企業の破綻回避や所得補償等、新型コロナウイルスへの財政対応は約11兆ドル(※約1177兆円)に上っている。今年はアルゼンチンやレバノン、エクアドルが既にデフォルトに至った(※②)。「政府のデフォルトは過去最多になる」(格付け会社の『フィッチレーティングス』)との見方もある。膨らむ債務の一方で、感染拡大は止まらない。『世界保健機関(WHO)』によると、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者は今月12日集計分で約23万人と、過去最多を更新した。中でも、インド(※約2万9000人)、南アフリカ(※約1万3000人)、メキシコ(※約7000人)等新興国への感染拡大シフトが目立つ。多くの新興国は海外に働きに出た労働者からの国内送金に頼り、国内の労働力も貧しい地方からの出稼ぎに依存している。都市封鎖(※ロックダウン)に伴う経済活動の停止は、こうした出稼ぎ労働者の失業に直結する。労働基盤を失った人々は都市に居住できなくなり、感染の恐れがある“人の移動”を誘発する。ブラジルやインド等、貧困層が密集する地域のある国も多く、感染拡大防止に手こずる要因だ。封鎖を緩める動きも出るが、経済の悪化に歯止めをかけるのは難しい。『世界銀行』によると、ウイルスの感染爆発では、最大6000万人が1日の生活費が1.9ドル未満となる“極度の貧困”に陥る可能性がある。『アジア開発銀行(ADB)』は、途上国の貧困層が最大4億人程度増加するとみる。

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アメリカの資産運用会社『アライアンスバーンスタイン(AB)』のアドリアーン・デュトワ氏は、「人の命や暮らしを直撃するコロナショックの深刻さにより、新興国では前例のない政策支援が正当化されている」と指摘する。特に、新興国の中央銀行による量的緩和策は、「金融政策と財政政策の線引きが曖昧となり、政策ツールだったものが政治パフォーマンスに変容しかねない」(『全米経済研究所』のジョナサン・ハートレイ氏)との懸念もあり、あまり実施されてこなかった。しかし、3月以降はチリやコロンビア、ハンガリー、メキシコ、南アフリカ等の中銀が、金融市場安定化や資金調達の支援を名目に、次々と緩和に踏み出した。アジアでは、インド中銀が国債を流通市場から買い入れ、インドネシア中銀は4月、イスラム債を政府から直接買い入れたのを手始めに、一般的な国債買い入れにも乗り出した(※③)。「あらゆる手を尽くして景気の悪化を防ぐべきだ」という中銀への圧力が強まる中、政府に財政資金を供給するマネタイゼーションという“禁じ手”に挑む形だ。ブラジルでは5月上旬、個人・中小企業への緊急給付支援策に伴い、現金が不足しかねないとして、中銀が造幣局に対し、臨時の紙幣増刷を指示する異例の事態も起きた。今後の焦点は、物価上昇率が加速しているトルコと、感染拡大の中心となりつつある中南米だ。トルコは主要新興国の中でも、返済期限が近い満期1年未満の対外債務を多く背負っている。短期対外債務は今年4月末時点で約1200億ドルと、デフォルトを繰り返してきたアルゼンチンの約2倍の規模だ。国債格付けも投機的水準にある。通貨リラの価値が下落すると、返済負担が一気に増えかねない。トルコはリラの取引制限等を打ち出し、通貨安を防ごうと懸命だが、予断を許さない状況だ。

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南米では、アメリカに次ぐ世界第2位の感染国となっているブラジルで、経済活動再開を優先したいジャイール・ボルソナロ大統領と、感染拡大防止に権限を持つ州等との対立が激しい。政策運営の不透明感がマネー流出への圧力となっている。比較的、経済規模の大きなペルーやチリ、メキシコ等でも感染拡大が目立ち(※④)、医療崩壊の瀬戸際にある。一般的に感染症が広まり易いとされる冬を迎えつつあり、北半球の新興国以上に苦しい闘いを強いられる。『日本総研』主席研究員の牧田健氏によると、新興国の成長率が2000年以降に高まったのは、中国経済の高い成長による資源需要の増大に加え、中国が先導する形で貿易が活発化したことが大きい。コロナ禍で中国経済の勢いが弱まる中、資源国の成長は弱含み、資源依存からの脱却を急ぐ必要に迫られる。一方、『東南アジア諸国連合(ASEAN)』を始めとした新興工業国では、従来の飛躍的な成長期待は剥がれ落ちたが、大幅な落ち込みは回避できそうだ。“脱中国”の受け皿としての産業集積と、急速に進むデジタル化が内需を押し上げる。IT産業を中心に、一足飛びに最新技術の導入が進む“リープフロッグ(蛙跳び)”が起こりつつあり、労働集約型の産業構造が大胆に変わる可能性もある。コロナショックは、新興国の革新の契機ともなりそうだ。


キャプチャ  2020年7月17日付掲載
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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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