【歪んだ外国人実習】(05) 低待遇で質高い人材、限界…漸く動き出した制度改革

20161221 01
今月11日、東京都新宿区のビル建築現場に、外国人技能実習制度で来日した20代のベトナム人3人の姿があった。コンクリート製の壁面パネルにドリルで穴を開け、金具を組み込んでいく。彼らを受け入れたのは『明南建設工業』(神奈川県橫浜市鶴見区)。重いパネルを運ぶきつい仕事だが、若い日本人社員に支払える給与は、手取りで月20万円ほど。2000年代に入ると若者が集まらなくなり、社員の平均年齢は50代に達している。そこで、昨年から同社が頼るのが実習生だ。“寮”として会社近くのアパートの部屋を借り上げ、テレビや家具を備え付けた。1人につき約70万円かかったが、手取りは月15万~16万円で済み、日本人よりも人件費を抑えられる。3人は毎日、手作り弁当を持参、夜も自炊する。井上保樹社長(66)は、「今の日本の若い子に同じような生活は無理。実習生がいるから会社経営が成り立っている」と話す。給料日前には3人をスーパーに連れて行き、肉や卵等を好きなだけ買ってあげるという。国土交通省によると、ピーク時の1997年に455万人だった鉄筋工等の技能労働者は、昨年に約27%減の331万人になった。東日本大震災の復興需要に加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設ラッシュが本格化すれば、人手不足は一層深刻化しかねない。

建設業界だけではない。総務省の調査では、日本の労働力人口は1997年以降、約189万人減少して、昨年は約6598万人となった。実習生の受け入れ窓口となる各地の監理団体からは、「牡蠣養殖で働く日本人は60~70歳代で、後継ぎがいない人ばかり。実習生がいなければ、日本の牡蠣は駄目になる」(広島県の団体)といった切実な声が上がる。問題は、それほど頼られる存在にも関わらず、殆どの実習生が最低賃金で働き、労働環境も中々良くならないことだ。昨年、新たに実習生として入国した外国人9万7004人の内、中国人の割合は39%。4年前の74%から大幅に減った。中国の賃金水準が上昇し、実習生として来日するメリットが薄れたことが大きい。代わって、ベトナムやフィリピンからの実習生が増えているが、これらの国でも賃金水準が上がれば、待遇を改善しない限り、実習生の“供給源”は狭まっていく可能性がある。将来的に質の高い人材が供給され続ける見通しが立たない中で、政府は技能実習制度の拡大に打って出た。今月8日に『技能実習適正実施・実習生保護法』等2法が成立したことに伴い、これまでの74職種に初めて対人サービスの“介護”が加わり、実習期間も最長3年から5年に延びる。「当面の人手不足を回避したい」との思惑が滲む。「実習という名目の裏で、過酷な低賃金労働や人権侵害が蔓延している」との批判を考慮し、同法には新たな監督機関の新設等の適正化策も盛り込まれた。ある法務省幹部は、「『制度は労働力確保ではなく、国際貢献の為にある』という理解が深まると期待している」とし、「制度の目的は堅持すべきだ」という認識を示した。一方、国士舘大学の鈴木江理子教授(移民政策)は、「多くの中小零細企業は、国際貢献まで考える余裕は無い。国内産業の維持を目指すなら、外国人労働者の定住が可能な別の制度を検討すべきだ」と指摘する。導入から23年経ち、歪みが限界に達しつつある技能実習制度。新法を是正に繋げることができなければ、制度の目的自体の正当性が一層問われることになる。 =おわり

               ◇

田中洋一郎・安田泰治・山下真範・藤亮平・板垣茂良・木村雄二が担当しました。


⦿読売新聞 2016年11月25日付掲載⦿
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