【政治の現場・長期政権の展望】(05) カギは2人の“仕事師”

20161221 02
首相の安倍晋三には、10年前の忘れられない場面がある。「郵政選挙で勝利し、残り3年の衆議院任期がある。私が自民党総裁の任期制限を無くす話を進めるから、首相を続けて下さい」。当時、官房長官だった安倍は、首相の小泉純一郎にこう進言した。小泉が2005年9月、郵政民営化を争点に衆議院解散・総選挙で勝利し、順風な政権運営を手にした2006年のことだ。選挙に強い首相のイメージが広がり、党内で“小泉続投論”への期待が膨らんでいたが、小泉は受け入れなかった。安倍はその時、総裁任期の延長に踏み込まなかったが、現在、自民党幹事長の二階俊博は、嘗て安倍が試みた役回りを果たし、党の歴史を変えた。二階は、今年8月3日の幹事長競任から1ヵ月後には、総裁任期延長の方向性を固めた。同党の政治制度改革実行本部に各派閥の参加を取り付け、来年3月の党大会で決定する段取りだった。派閥領袖とのパイプ等、党内に張り巡らせた人脈の力がものを言った。9月上旬、安倍は上機嫌に「二階さんが流れを作っているんだ。俺も、まさか来年の党大会に諮るなんてことまでは考えていなかった」と周囲に語った。党内議論は10月下旬に決着し、“連続2期6年まで”と規定されていた総裁任期は、“連続3期9年まで”となった。安倍の2期目の任期は2018年9月までで、3期目を全うすれば、2021年9月まで務めることになる。首相在任9年の長期政権を可能にする道は、あっさりと決まった。安倍と二階は詳細を詰めた訳ではなかったが、安倍の望んだ通りの展開となった。

安倍と二階の距離感は、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、変遷してきた。第1次安倍内閣で党総務会長だった二階は、第2次内閣では総務会長代行に止まり、当初、安倍とつかず離れずの関係だった。2015年秋の党総裁選を睨む安倍が二階の取り込みに動き、2014年9月の人事で二階を総務会長に据えると、“戦略的互恵関係”と呼ばれるようになった。二階が幹事長に昇格した今、2人は互いを支え合うことで自らの権益を拡大する“戦略的パートナーシップ”と評されている。前任の幹事長である谷垣禎一が黒子役に徹したのと比べ、二階は自ら政治の流れを作るスタイルだ。“静”と“動”で対照的だが、安倍にとっては共通性がある。2人とも、首相の座を脅かす存在ではないことだ。「二階さんは最後の党人だ。信頼できるんだ。上には逆らわない」。安倍は、二階に幹事長就任を要請した8月1日、起用理由を周囲にこう語った。幹事長は、約250億円の資金を預かる党の“金庫番”でもある。“ポスト安倍”を目指す有力者から、寝首をかかれる事態は避けたい――。2014年9月に幹事長の石破茂を交代させた安倍にとって、今夏の人事でも、外務大臣である岸田文雄の幹事長起用案は無かった。安倍が仮に2021年9月まで首相を務めると、首相在職日数は戦後歴代最長の佐藤栄作を抜く。現実味を帯びるのは、突破力と老練さを兼ね備えた二階と官房長官の菅義偉が安倍を支える体制があるからだ。政権運営に死角が生じるとすれば、2人が対立した時だ。菅は二階を「政権をきちんと支える方だ」と立て、今のところは良好な関係を保つが、火種となり得るテーマはある。首相官邸と沖縄県が対立するアメリカ軍普天間飛行場移設問題を尻目に、二階は独自ルートで同県知事の翁長雄志に接近している。また、二階が10月、無所屬の浅尾慶一郎(神奈川4区)を自民党会派に入れたことには、菅の地元である神奈川県連が反発した。長期政権の命脈は、官邸と党本部に控える2人の“仕事師”が握っている。 《敬称略》

■幹事長起用に変遷
安倍首相は、2006年9月に自民党総裁に就任して以来、5人の幹事長を起用している。第1次安倍内閣の発足時は、身内の森派(現在の細田派)で近い立場だった中川秀直氏を起用し、足元を固めようとした。総裁と異なる派閥から幹事長を選ぶ“総幹分離”の慣習に拘らない人選だった。2007年の参院選で敗れた後は、盟友の麻生太郎氏(麻生派会長)を頼り、政権運営を立て直すことを狙った。野党時代の2012年9月、党総裁に返り咲いた際は、国民的人気が高かった石破茂氏(当時は無派閥)を起用した。同年12月に政権を奪還し、第2次安倍内閣発足に伴う党役員人事でも、衆院選勝利の功績として石破氏を留任させた。だが、“ポスト安倍”を窺う石破氏と次第に溝ができ、後任に総裁経験者の谷垣禎一氏(無派閥)を充て、官邸と党の連携強化を目指した。


⦿読売新聞 2016年12月3日付掲載⦿

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