【揺れる退位】(02) 負担軽減、“公平性”の壁

20161221 03
『天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議』は、専門家へのヒアリングで、天皇が高齢になった場合の負担軽減策についても意見を聞いた。退位や摂政設置を前提とせず、幅広い可能性を追求する観点からだ。天皇の活動の内、首相の任命等の国事行為は、憲法で具体的に決められている。この為、被災地訪問等、“象徴”としての公的行為をどこまで削減したり、他の皇族と分担したりできるのかが、負担軽減のカギとなる。ヒアリングに招かれた16人の専門家は、「陛下の過重な負担を軽減する必要がある」との認識では概ね一致した。だが、ヒアリングを通じて浮き彫りになったのは、「公的行為の内、何を削減できるのか?」という線引きの難しさだった。線引きを考える際のキーワードは“公平性”だ。陛下は2012年12月の記者会見で、「公的行事の場合、公平の原則を踏まえてしなければならない」と述べられ、負担軽減に当たっては公平性を重視する考えを示された。被災地の視察や競技大会等への陛下の参加について、「誰もが納得するような客観的な基準も無く一部を取り止めると、国民に不公平感が出る可能性がある」と懸念されたとみられる。

ヒアリングで「負担軽減は難しい」と主張したのは、「公的行為の範囲は政府でなく、時の天皇が決めるものだ」とする専門家だ。フリージャーナリストの岩井克己氏は、「公的行為は、天皇の意思によって行われる“自発的な運用”の問題であり、一律にスキーム(枠組み)を当て嵌めて削減するのは難しい」と指摘した。また、元最高裁判所判事の園部逸夫氏も、公的行為について「国が要請し、在り方を積極的に示すことは馴染まない」とした。両氏は、「陛下が公務の縮小に消極的である以上、退位以外に負担軽減の方法は無い」と結論付けた。更に、日本大学の古川隆久教授(日本近現代史)も、「公的行為を取捨選択して削減対象を決めても、異論が出て実現しない」と疑問を呈した。代替案として、公務の内容で削減対象を選ぶのでなく、陛下の公務を“週40時間以内”等と決め、「総量を規制して、その範囲でできることをやる」という手法を提案した。そして、憲法学者でもある京都大学の大石眞教授は、公務の内容による明確な基準を示した。「天皇の公務は、憲法に根拠がある国事行為と、国事行為に付随する“準国事行為”に限定し、それ以外の被災地視察等の活動は他の皇族方で分担できる」とした。具体的には、国事行為の「国会を召集すること」(憲法第7条2号)に伴う“国会開会式でのお言葉”等を、準国事行為の例に挙げた。ただ、現在の公的行為に比べ大幅に減ることになり、大石氏自身も「国民の目にはあまりにもドラスティック(過激)に映るかもしれない」との懸念を示した。一方、宮中祭祀等、天皇の歴史的な役割を最優先に考える保守系の専門家の多くは、「抑々、公的行為は天皇本来の役目ではない」として、「思い切った削減が可能だ」と主張した。この他、「天皇の意向を前提としながら、政府が基準を作って、公務の負担の軽減を行う」(慶應義塾大学の笠原英彦教授)といった意見も出た。天皇の負担軽減策を巡って飛び交った多種多様な主張は、意見集約の難しさを改めて印象付けた。

■訪問先で活動、昭和天皇の3倍
昭和天皇(87歳で崩御)が現在の天皇陛下と同じ82歳だった1年の活動件数を比べると、国事行為は1000件余でほぼ同じだが、公的行為は昭和天皇が344件、現在の陛下が529件と約1.5倍だ。特に、身体的な負担も大きい国内各地へのご訪問に伴う活動は、昭和天皇の42件に対し、現在の陛下は約3倍の128件に上り、増加は顕著だ。現在の天皇陛下は、ご年齢を重ねるほどに公的行為も増えている。政府は、陛下が前立腺癌の全摘手術を受けられた翌年の2004年から、一部行事へのご出席を取り止める等の公務の見直しを続けてきたが、大幅な削減には至っていない。宮内庁の西村泰彦次長は先月7日の定例記者会見で、平成に入って天皇の公務が増えた背景について、副大臣等の認証官の新設や、冷戦終結に伴う国の数の増加、自然災害の頻発等を挙げ、「必然的に増加した」と述べた。


⦿読売新聞 2016年12月8日付掲載⦿

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