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【WATCHERS・専門家の経済講座】(60) “デジタル円”発行できるか――福本勇樹氏(『ニッセイ基礎研究所』金融研究部主任研究員)

20200731 06
「日本はキャッシュレス後進国とされています。クレジットカードや電子マネー等キャッシュレスで決済する割合は、2016年に2割程度となっており、主要国平均の4割と比べて見劣りします。理由として、銀行口座の残高内で即時決済するデビットカードの普及の遅れや、治安が良い為、路上で現金を奪われる可能性が少ないこと等が挙げられます。政府がキャッシュレス化の推進に本腰を入れ始めた契機は、インバウンドの急増だったと思います。訪日客向けのアンケートでは、『日本での旅行でクレジットカードが使えない』『両替をするのが面倒だ』等の不満がありました。訪日客を更に増やす為、キャッシュレス化の推進が必要と判断したのです。その後、キャッシュレス化には様々なメリットがあることがわかってきました。現金を取り扱う業務は人手がかかりますが、キャッシュレス化すればこうした作業が必要なくなり、収益性の高いところに人を配置できるようになります。更に大きいのが購買データの活用です。現金決済でデータを取ろうとすると、誰が何を買ったのかを見た目で判断して記録する必要がある。キャッシュレス決済なら、誰がどこで何を買ったのか、正確に把握できます。データを使ったビジネスは、AmazonやApple等GAFAと呼ばれるアメリカのIT企業大手が得意としています。ですが、日本でもキャッシュレス化が進めば、インターネットやスマートフォンを使ってサービスの基盤を提供する日本独自のプラットフォーマーが生まれ、消費者に魅力のある新しいサービスが提供されるのではないか。そんな期待が高まっています」。

昨年10月の消費増税に伴い、政府はキャッシュレス決済へのポイント還元制度を導入した。購入額の最大5%を還元する仕組みで、先月末に終了した。「還元制度によってキャッシュレス決済の比率は約27%まで上昇し、効果は大きかったと言えます。コンビニやドラッグストア、外食は元々、現金の扱いを減らしたいという意向を持っており、一気にキャッシュレス決済を推進しました。スマホでのQRコード決済が普及した影響もあり、少額の買い物でも現金を使わない人が増えています。それでも、制度の対象となった中小・小規模店の参加率は半分強にとどまりました。レジが一つしかない店も多く、キャッシュレスによるコスト削減効果が薄い為とみられます。今後、キャッシュレス決済が更に広まるかは不透明です。カードやQRコードによる決済は、入金まで15~30日かかるのが一般的。新型コロナウイルスの感染拡大により、資金繰りに苦しむ店の間で、キャッシュレス決済に必要な端末を返却する動きが増える可能性があります。政府は9月から、マイナンバーカードを活用した還元策であるマイナポイントを始めますが、ポイント還元制度程の効果は見込めないでしょう。ポイント還元制度では決済事業者が上限を決めたものの、多くは使えば使うほどポイントを受け取ることができました。一方、マイナポイントは決済手段を一つに絞る必要があり、上限額も5000円。マイナンバーカードの作成手続きの煩雑さが敬遠される可能性もあります。日本は欧米に比べて、小売店が決済事業者に支払う手数料が高い。海外の決済事業者は、手数料のかかるリボ払いを消費者に利用してもらうことでも収益を上げていますが、日本の決済事業者は主に小売店からの手数料で儲けるという、ビジネスモデルの違いがあります。決済事業者が、小売店にお金を支払う際の銀行振込手数料も高い。こうした費用負担がキャッシュレス化の妨げになります。ですが、決済システムは社会的なインフラであり、キャッシュレス化に伴うコストは本来、政府や日本銀行が負担すべきです。最終的には、日銀がデジタル円を発行する必要があると思っています。デジタル円の発行には、多くの課題があるのも事実です。カンボジアやウルグアイ等一部で、中央銀行によるデジタル通貨を試験運用する動きがありますが、経済規模の大きい日本が全面的にデジタル円を導入した場合、膨大なデータを適切に処理することができるのかという問題があります。サイバーセキュリティーや災害時の対応も課題になります。キャッシュレス化が進むスウェーデンやイギリスでは、高齢者やIT弱者への配慮から現金を残すべきだとの意見が高まっています。日本でも暫くは現金と共存する形で、デジタル円の導入を模索すべきです」。 (聞き手/経済部 戸田雄)


キャプチャ  2020年7月22日付掲載
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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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