【「佳く生きる」為の処方箋】(32) あなたの心臓、休んでいますか?

冬至を迎える12月は、1年で最も夜が長い時期。人は人生の約3分の1を眠って過ごしますが、この睡眠に問題が生じると、心臓にも悪影響が及ぶことをご存知でしょうか? その代表が『睡眠時無呼吸症候群』。睡眠中に呼吸が何度も止まり、激しい鼾を伴います。睡眠中に舌の付け根が喉の奥に沈んで、気道が塞がれ、呼吸ができなくなってしまうのです。肥満の人・顎が小さい人・首が短く太い人・扁桃腺が大きい人等がなり易いと言われます。患者数は約200万人。40~60代の男性に多いですが、「女性も閉経後に増加する」との報告があります。何しろ、睡眠中に何回も息が止まるのですから、いくら寝ても体は休まりません。朝からぐったりと疲れていたり、頭痛がしたり、日中に猛烈な眠気に襲われたり…。居眠り運転を起こし、大事故に繋がった事例もありますから、病気の名前を耳にした方も多いことでしょう。実は、この睡眠時無呼吸症候群によって最もダメージを受ける臓器が心臓です。この為、不整脈等が起こり易くなりますし、元々心臓の病気があれば、それも悪化することになります。睡眠中に何度も呼吸が止まると、血液中の酸素が足りなくなり、体は酸欠状態に陥ります。血中酸素飽和度は、健康な人では96%以上ありますが、睡眠中に呼吸が止まると82~83%程度にまで下がってしまう。これは酸素吸入が必要なレベルで、まさに虚血状態。全身に血液が流れていかないのと同じ状態です。すると、心臓は「これは大変だ!」とばかりに懸命に働いて、血液を全身に送り出そうとします。本来、休む筈の睡眠中に、まるで運動をしている時のように酷使される訳です。このような状態が続けば、心臓は確実に疲弊します。

実際、「睡眠時無呼吸症候群の人の半数近くが、睡眠中に不整脈を起こしている」と言われます。中には突然死を起こすような危険な不整脈が起こることも。通常、危険な不整脈は心臓の病気・高血圧・遺伝的な素因等があって起こることが多いのですが、そういった背景が無い場合は睡眠時無呼吸症候群が関わっていることもあるのです。若し、「鼾が酷い」と家族から指摘されたり、昼間に我慢できないような睡魔に襲われたりするようなら、睡眠時無呼吸症候群を疑って検査を受けることをお薦めします。鼻にマスクを当て、気道に空気を強制的に送り込む『CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)』が効果的です。また、不整脈が気になる人も一度、循環器科で心電図検査を受けてみるといいでしょう。不整脈には、脈が速くなる“頻脈”、遅くなる“徐脈”、脈が飛ぶ“期外収縮”の大きく3種類があります。期外収縮は健康な人にもよくあるもので、24時間ホルター心電図計で調べると、8割以上の人で数個以上見つかります。不整脈は心配しなくてよいものも多いですが、中には命取りになるタイプもありますから、先ずは危険な不整脈でないかどうかを明らかにしておくことが重要です。動悸・胸苦しさ・目眩・失神等、自覚症状が強い人は早めに受診を。また、血栓を生じて脳梗塞の引き金になる『心房細動』にも気を付けて下さい。高血圧や糖尿病等の持病がある人は要注意です。余談ですが、同じドキドキでも“ときめき”は嬉しさや興奮等からくる一時的な反応で、不整脈とは異なります。小学生の頃、祖母に貰ったお小遣いを握り締め、「あのプラモデルを買おう!」と玩具屋に走った時の胸の高鳴りは、今でもよく覚えています。そんなドキドキなら、何歳になっても歓迎でしょう。


天野篤(あまの・あつし) 心臓外科医・『順天堂医院』院長。1955年、埼玉県生まれ。日本大学医学部卒。『亀田総合病院』『新東京病院』等を経て、2002年に順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。2012年2月18日に天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀。2016年4月より現職。著書に『一途一心、命をつなぐ』(飛鳥新社)・『この道を生きる、心臓外科ひとすじ』(NHK出版新書)等。


キャプチャ  2016年12月22日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR