【揺れる退位】(03) “天皇制の安定”不可欠

20161222 02
天皇の退位を認めると、天皇制は不安定になるのか――。退位の是非を考える上で、最も重要な論点の1つだ。『天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議』のヒアリングでは、専門家16人の内、退位に慎重・反対の考えを示した7人は、「退位を認めると、天皇の権威や皇位継承が不安定化し、延いては天皇制の存続自体が危ぶまれる」との考え方でほぼ一致した。麗沢大学の八木秀次教授(憲法)は、「天皇は能力原理を排除し、男系継承という血統原理に基づいているが故に、地位を巡る争いが無い」と主張した。「天皇は連綿と続く皇統と、伝統的な皇位継承ルールを唯一の根拠に即位するからこそ、その地位への疑問が提起されることが無かった」との考えだ。「公的行為を熟せないことを理由に退位を認めると、次代以降の天皇の能力次第では地位に疑問が出て、不安定になりかねない」との懸念がある。また、「“象徴”としての権威が現天皇と前天皇に二分される恐れがある」として、「天皇と前天皇が共存することで、象徴としての国民統合の機能が低下する」(慶應義塾大学の笠原英彦教授)との指摘や、「退位が政治利用されかねない」という危険性を訴える声も相次いだ。

一方、陛下の負担軽減という現実対処の必要性や、「憲法は退位制度の創設を禁止はしていない」(東京大学の高橋和之名誉教授)等の理由から退位を容認する考えを示した9人の専門家も、“天皇制の不安定化”や“権威の二分化”に対する懸念は共有している。この為、容認派のほぼ全員が、「“一定の年齢に達する”という客観的な条件を設けることで、天皇制の不安定化を避けるべきだ」とした。日本大学の古川隆久教授は、「(将来の天皇が)『持病や障害を持っているので、私は辞めなければならない』と思われてしまう」との可能性を指摘し、「高齢のみを理由とするのが一番単純明快だ」と強調した。専門家からは、高齢による体力の衰えには個人差もあることから、年齢に加え、本人の意思表示や“活動に支障があること”を条件に加える等、様々な方策が提案された。中には、高齢の天皇が在位を続けた場合、天皇の権威が脅かされる可能性を指摘する意見もあった。反対・慎重派とは全く逆の視点だ。国士舘大学の百地章客員教授は、「天皇が高齢者特有の病気になった場合、病状等に国民の注目が集まり、天皇の尊厳さえ冒されないとも限らない。そのような場合でも、“存在そのものが尊い”と言い切れるだろうか?」と問題提起した。退位を認めた場合、退いた天皇の活動をどこまで認めるかも議論になった。「新天皇の象徴としての地位を脅かさないように、活動を制約すべきだ」との意見が多く、古川氏は「完全に引退して頂く」とし、呼称は伝統的な“上皇”等ではなく、“前天皇”を用いることを提案した。一方、退位容認派、反対・慎重派を問わず、専門家からは、与野党が対立する事態への懸念も相次いだ。笠原氏は、「国論を二分するような議論は、陛下も大変ご心労になる」と、国会に慎重な対応を求めた。政府は、有識者会議が来月にも纏める論点整理を国会に示し、与野党による議論を求める方針だ。国会審議が紛糾し、退位の是非が政治問題化することのないよう、各党が冷静に議論できる環境を整えることができるかどうかも、試金石となる。

■憲法は禁止せず
憲法第2条は、「皇位継承は皇室典範で定める」と規定している。皇室典範は第4条で「天皇が崩御したときは皇位継承順位第1位の皇族が直ちに即位する」としており、退位には触れていない。政府は過去の国会答弁で、“退位の強制”や天皇の恣意的な退位等の懸念があることを理由に、「法律上、退位は認められない」としてきた。一方で政府は、「憲法は退位制度創設を禁じておらず、法改正によって導入は可能だ」との解釈も示している。退位は江戸時代までは珍しくなかったが、明治憲法下の1889年に制定された旧皇室典範で否定された。歴史上、退位を巡って政治が混乱したこともある。奈良時代の孝謙天皇は退位して上皇となったが、後継の淳仁天皇を廃して再び即位した。1156年には、崇徳上皇と後白河天皇が皇位継承を巡って対立し、源氏や平氏を巻き込んで戦った『保元の乱』が起きた。


⦿読売新聞 2016年12月10日付掲載⦿

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テーマ : 天皇陛下・皇室
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